2回
2025/08 訪問
ミシュラン三つ星へ
ラクレリエールの柴田シェフが1年の準備をかけミシュラン三つ星をとりに復活した。
mærge、、造語である。その意味はHPに記載している。名もない食材に光をあて調理し、生産者と食べ手を結びつけるのがコンセプトである。
そして、スタッフ、、、アランデュカス東京の上岡氏をスーシェフに、サービスにはシェイノなどの名店を経てきた高橋氏、ソムリエにはオストラルやランベリーを経てきた飛田氏、パティシエには奥村氏と素晴らしいラインナップ。
コースは税・サービス料込みで約4万になる。
*アミューズ
・富士の介のほうれん草クレープ
・セップとさつまいものタルト
・荒間鶏とセロリラブ、じゃがいものガレット
・雲丹のフラン
どれも素晴らしいアミューズ。ここでコンセプトが入る。荒間鶏は産卵の鶏で、既に役目を終えた老鶏。これがいい味わいでとても老鶏とは思えない。
*キャレドブール
おそらくこの店の代表格になるだろうか。四角いクロワッサンに好きな食材をのせて頂く。
今回はキャビア、ポークリエット、サラミ、赤玉ねぎのマリネ、コンテチーズ、ハーブサラダなど。
私の選んだものはキャビアとハーブ、サラミとコンテチーズ、赤玉ねぎのマリネ、ハーブ。
とても楽しく美味しい。クロワッサンはバターの香りがよく、クロワッサンそのものが美味しい。
これは是非定番で!
*桃のガスパチョ
まず、桃、生ハム、コンソメゼリー、メキシカンマリーゴールドのオイルの入った皿が提供される。
その後、桃とトマトのスープが注がれる。桃がとても甘いので、トマトの酸味がいいバランス。コンソメゼリーの旨さと生ハムの塩味がいいアクセント。マリーゴールドの香りがとても清々しい。
*ハヤの清流仕立て
ここでコンセプト。ハヤはウグイ、オイカワなど地方によって呼び名が変わる。釣りなどで取れるが、ハヤは唐揚げや天ぷら、甘露煮などで調理するため、単純に焼いても美味しくはない。また、生かしておかないと痛みやすいので、釣りの場合、リリースされる方も多いと聞く。このハヤを調理する。まずは軽井沢から直行の生きたハヤを見せて頂く
。この後、朝日米のピラフ、ハーブ、ライムの泡の入った皿。その後、葡萄の葉に包んだ三枚おろしのハヤと枝豆、万願寺とうがらしが添えられる。葡萄の葉をとって、全てを混ぜ合わせて頂く。
ピラフはハヤの出汁とハヤの内臓を使っている。
ハヤの美味しさがわかる。内臓のほろ苦さもいい。ライムの香りが後味を爽やかにする。これで思い出すのはラクレリエール時代の鮎の皿だろう。
*鱚のクレープ
クレープに鱚をのせ、上にオーストラリア産トリュフをかぶせる。ソースはタヒチ産バニラとディル、トリュフのソース。これはソースがメインの料理。
バニラの甘い香り、ディルの爽やかさ、これがトリュフのクレープに合う。鱚の淡白な魚なのでソースには当然合う。
*鮑のナージュ
鮑を二つの調理法で提供。一つは水貝に鮑の出汁、うに、木の芽とそうめん。もう一つは蒸し鮑に鮑の肝とマデラ酒のソース。高橋さんから、最初に水貝を食べ、その後蒸し鮑、最後に水貝を頂くという事をおすすめされた。次の料理の流れでという事だった。
水貝は生なので、歯ごたえと海の香りが全て。鮑の出汁は素晴らしく美味しい。木の芽の香りも合う。ウニの甘さも相まって、贅沢なそうめんである。
蒸し鮑は王道の鮑の肝のソース。鮑の肝にマデラ酒を合わせたソースは肝の味わいとマデラ酒の甘さがよく、蒸し鮑にぴったり。濃厚なソースだから、最後に水貝に戻ってリセットする、という事だろう。
*茶色丸ハタのグルノーブル風(写真撮り忘れ)
骨付きのハタを炭火焼きに。ソースは焦がしバターにトマト、レモン、ジロール茸を入れたもの。
焦がしバターの風味にしっかりと酸味をきかせたソースはハタのような脂ののった白身魚にはぴったりのソースだろう。こちらのソース、高橋さんとお話したのだが、コートドールのエイとキャベツのシェリー酒バターソースに似ているところがある。バターソースにしっかりと酸味をきかせるところがポイント。
*口直し
鬼灯とヨーグルトの皿に、葡萄、梅干し、茗荷を凍らせたシャーベットをかけたもの。しっかりと酸味がきいており、さらに、爽やかな香りが口の中をリセットしてくれる。
*梅山豚の燻焼き
藁の香りをつけて焼いた梅山豚のロース肉は、しっかりとした赤身で歯ごたえもある。一切れは塩が振ってあり、もう一切れにはソースをかける。ソースは唐辛子の辛みをきかせたソース。噛み締めると肉の旨さが滲み出る。軽い燻製香も肉の風味との相性がいい。グリーンアスパラ、おかひじき、人参のピュレが添えられている。グリーンアスパラはみずみずしい。おかひじきの歯ごたえ、人参のピュレの甘さがいいお供である。辛みのきいたソースは夏らしく、わりとさっぱりとしたもの。脂の多い部位はよく焼いてあるが、香ばしくソースとの相性がいい。
*デザート1
ラベンダーのアイスクリーム
ラベンダーアイスの中にブルーベリーやラズベリーゼリー、すみれの香りのクリーム。そして最後の演出ですみれの香りの煙を入れる。
肉料理の後ということで、爽やかな香りで甘さも軽く仕上げたデザートにしたとの事。
ラベンダーとすみれの清々しい香りとフルーツの味わい、甘さ控えめのアイスやクリーム。肉料理の後に最適なデザート。
*デザート2
桃の皿
メニューにPerfumeと記載されている。意味は香水とか香料(3人組女性グループではありません、、笑)実はこのデザートは薔薇の香りが凄い。先程のデザートはメニューにVioletと記載されていた。だから、すみれの香りいっぱいのデザートだった。
桃のスライスの下に薔薇のアイスクリーム、さらに薔薇のシロップのサヴァラン。桃は十分に甘く、アイスクリームやサヴァランは薔薇の香りがいっぱい。デザートでこれだけ香りを楽しめるのはなかなかない。特に今年の夏のような猛暑だと、うってつけのデザートと思う。ただ、香り重視なので好みは出るかと思うが。ただ、さすがに奥村さん、コースに合わせて素晴らしいデザート。ちなみに、パンに合わせるバターやオリーブオイルも奥村さんの選択。特にバターは有塩のクロテッドクリームのようなミルク感のある味わいだった。
*ミニャルディーズとダージリン
飲み物はカップを選べる。さて、ミニャルディーズだが、ここでコンセプトが入る。
・摘果みかんのクレームブリュレ
・イチジクのパウンドケーキ
・焼きたてカヌレ
・ハーブのホワイトチョコレート
摘果みかんは、簡単に言えば間引きされたみかん。まだ実が小さいうちに間引く。皮もまだ青く、ピンポン玉くらいの大きさ。これを使ってクレームブリュレ。このみかんは、柑橘系の香りはするが、みかんの香りでもない。初めての香りなので、何とも言えないが、香りは爽やかなのでカスタードやキャラメリーゼには合う。摘果みかんは味もないので香りだけ。
カヌレはお客様の提供に合わせて焼き上げる。まわりのキャラメリーゼはカリカリだが中はしっとりというか柔らかい。空気がまだ含まれているからだろうが、これは素晴らしい。
ミシュラン三つ星となると料理だけでない。サービスはもちろん、寛げる内装や、席の配置など、ハードもソフトも整えないとならない。そして、その総指揮者が柴田シェフである。私は高橋さんとよくお話をさせて頂き、様々なレストランの表裏のお話をお聞かせ頂いた。どんなに指揮者がよくても演奏者がダメなら成り立たない。だからこそ高橋さん、飛田さん、上岡さん、奥村さんという経験十分な一流の方々を招聘しサポートを受けながら三つ星へ向かっていく、という事だろう。
また、シェフレセプショニストの伊藤さんの力も大きい。入店から退店まで全く不都合など微塵もなかった。若いギャルソンの方々も料理の説明はもちろん、質問にもしっかり対応できる。無理なお願いで個室や厨房も見せて頂いた。
私のような庶民だと、この予算はなかなか難しいが、三つ星とるまで定期的に伺いたい、、
最後に柴田シェフともお話させて頂き、ラクレリエール時代のお話もさせて頂いた。
柴田シェフの味をしっかり感じ取れる、三つ星用のコースメニューだが、時にクラシック、時にモダン、時にクレリエール時代の味、そして、今回の素晴らしいコンセプト。
これからお店がどのようになっていくか、楽しみしかない、、、
個室
本日使用のハーブ
アミューズ 富士の介
アミューズ さつまいも、セップ
アミューズ ガレット
アミューズ 雲丹のムース
キャレドブール
キャレドブール
桃のガスパチョ(スープ入れる前)
桃のガスパチョ
ジャスミンティーとライチ
ハヤ
ハーブ
ハヤの清流仕立て(ハヤを入れる前)
ハヤの清流仕立て
鱚のクレープ バニラソース
鮑
鮑
口直し
口直し
ナイフを選べる
梅山豚の燻焼き
飲み物の器
デザート1
デザート2
ダージリン
ミニャルディーズ
ミニャルディーズ
お土産のパウンドケーキ
2025/09/19 更新
オープンして4カ月ほどたったmaerge、、、
既にミシュラン一つ星を獲得している。まずは、最初の通過点だろうか。
前回の初訪問は、ラクレリエール時代の味を残しながら、新たなコンセプトのコースを提供していた。
今回は、柴田シェフの進化だろうか、全てが新しいと感じる、それでいて完成度の高いコースとなっていた。
今回のコンセプトは"森林浴"とでも言うか、、、
香りに葉ではなく、"木"を使用している。
料理やデザートのところどころに木の香りを使ってハーブ類とは別の爽やかさを演出している。
スタートだが、寒くなったこともあり、何か温かいものをと飛田さんにお願いしたら、実はノンアルコールペアリングで出している、緑茶と昆布のドリンクを温めて出して頂いた。これが、とても美味しく身体も胃も温まった。
アミューズ
・炭の衣のコロッケ
・荒間鶏とコンソメゼリー
・菊芋のタルト
・せいこがにのビスク
コロッケの中はじゃがいもと鱈。ブランタードをコロッケにしたもの。この順番で頂くよう、との事で食べてわかったが徐々に濃厚な味わいに。ビスクは蟹の旨さが濃厚で素晴らしい。
・キャレドブール
今回は、キャビア、ハーブ、蓮根の組み合わせに、リエット、コンテチーズ、生ハム、赤玉ねぎマリネの組み合わせにした。美味しく楽しい。自分の味も作れる。スクエア型のクロワッサンそのものが美味しいから上に乗せるものは何でも合うだろう。我ながらと思ったのはキャビアと蓮根の取り合わせ。
・新蕎麦のフラン
まず、皿にフラン、牡蠣、きのこ、蕎麦の実、マッシュルームソース、その後コンソメベースの出汁を注いで頂く。コンソメベースの出汁には、蕎麦の実、杉の芽、椎茸などを一緒に煮出している。これを食べると蕎麦の香り、香ばしさ、卵の風味、牡蠣の美味しさ、きのこの味わいと同時にコンソメの旨さが広がる。実はコンソメに和の風味が移っており、これがとても心地の良いスープ。寒い日にはとてもいい皿である。
ここでパンオレが出る。
・白子のムニエル
鱈の白子のムニエル。ソースはエストラゴンビネガーにベルモットで香りつけ、そこにトマトを加えたもので酸味を効かせたソース。前菜という事もあり、濃厚な白子の味わいにあえてさっぱりとしたソースにした。春菊、銀杏、ロマネスク、パースニップなどの野菜が添えてある。ソースの酸味が白子の味わいとよく合うし、後味がさっぱりとなるので、あっという間に食べてしまった。前菜のカテゴリーなのだが、ボリュームはある。
・天草の大鰻
実は、ここから鰻を使った前菜が3品出てくる。
まずは鰻の海苔巻き2種類。岡山県の朝日米を使って目の前で海苔巻きを作って頂く。一つは、白ワインビネガーで、いわゆる酢飯で鰻を巻いたもの。もう一つは鰻の皮で米を炊いたもので巻いたもの。
最初はまさしく"鮨"であるが香りは洋風。しかし、鰻はいわゆる蒲焼き風なので、ビネガーのシャリに合う。
もう一つは鰻重の海苔巻きバージョンというべきか。これは、間違いなく美味しい。
最後は、まず、大きな白トリュフを見せて頂いた。香りが凄い。そして、壺のような食器の中に、鰻の白焼、きのこ、汲み上げ湯葉、赤ワインのソースが入っており、最後に白トリュフを散らす。
白トリュフの香り、鰻の美味しさに湯葉の食感と甘さ、きのこの風味、それを赤ワインのソースがうまくまとめている。それでいて、全ての食材の味が明確。これはよく考えられた料理だろう。
ここでカンパーニュが出る。
・ボタンエビのワイン漬けのそうめん
中華で紹興酒漬けがあるが、これを洋風にしたもの。ワイン、シェリー酒やハーブなどをブレンドした漬け汁にボタンエビを漬けたもの。そうめんの上にウニ、そしてボタンエビを乗せ、シェリービネガーを凍らしたものを振り、最後に蟹の出汁をかけたもの。箸で頂く。ボタンエビはまさしくワイン漬け、エビの強い甘さに香りが素晴らしい。しかし、これをウニと一緒に出汁で頂くと和風になるのが面白い。出汁もしっかり冷やしており、さっぱりとした味わいが鰻の後に心地よい。
・小甘鯛鱗焼き
小甘鯛を鱗焼きしたものに、聖護院かぶを使ったソース。甘鯛の下に聖護院かぶ、舞茸、椎茸をひき、ソースをかけてもらう。ソースは聖護院かぶに白味噌、カチョカバロチーズ、生クリーム、発酵生クリーム、柚子の果汁で作ったもの。チーズや生クリームを使っているが、味噌の風味や柚子の香り、微かな酸味があり味わうと意外と爽やかな仕上がり。甘鯛の身にも、きのこ類にもよく合う。
・口直し
熟した柿に柿の皮を漬けたビネガーを液体窒素で凍らしたものを散らしたもの。柿がとても甘いが、ビネガーの口溶けがさっぱりとして口直しに最適。
ここで、最後に赤パプリカのパン
・留辺蘂牛フィレの炭火焼き
今回、肉料理は5種類から選べる。選んだものは留辺蘂牛フィレの炭火焼き(プラス2,200円)。
鳩と迷ったが、こちらにした。焼き加減は文句なし。炭火で焼いた香りもいい。ソースは肉汁を使ったソースとシェリービネガーのソース。肉には塩が振ってあり、まずはソースなしで頂く。肉に甘さや旨みがしっかりあり、塩だけでも十分美味しい。肉汁のソースはもちろん合うがシェリービネガーも酸味が肉の甘さを引き立てる。ガルニはアンディーブ、ピスタチオのソースをかけたイチジク、別皿で盛り付けたハーブサラダ。アンディーブの酸味もいいがピスタチオソースをかけたイチジクはとても良かった。
・デザート1 杉のアイスクリームに抹茶のブランマンジェ(写真撮り忘れ)
杉の香りのオイルと木の汁を抽出してアイスクリームと混ぜ合わせたもの。それに抹茶のブランマンジェを添える。その上に杉の新芽、グラニースミス(グリーンアップル)の角切り、ディルを添える。とにかく香りは森林の香り。グラニースミスの酸味、抹茶のブランマンジェの濃厚な味わいにディルの香りがほのかにして、香りのデザート。
・デザート2 日本酒のアイスクリームによもぎゼリー橘の香り
砂糖で作った球状の中にアイスクリーム。割ってみると日本酒の香りのアイスクリーム。横にはよもぎゼリー。甘酒と洋梨のソースに橘の香りの泡。こちらも香りを楽しむデザート。日本酒の香りと橘の香りが和を感じる。後味も香りが口の中に残りとても心地よく落ち着く。
・ミニャルディーズ
ベルガモットのギモーブ、バラのゼリー、そして桂の香りのチョコレートに焼きたてカヌレ
桂の香りのチョコレートはほのかに木の香りがする。カヌレは定番となりつつあるが、このカヌレは今までで一番美味しいと思っている。
今回はデザートに木の香りを使って爽やかにフィニッシュしている。シェフパティシエの奥村さんのアイデアだろう。素晴らしいデザートである。
ちなみに、帰りに頂いたパウンドケーキの材料にはヒバと記載があった、、、
前回はクレリエール時代の味わいも活かしたコースだったが、今回は全く新しい柴田シェフの味である。楽しさもあり工夫された料理であるが、気を衒っている訳でもなく、しっかりと何を食べてもらいたいか明確にわかる料理である。イノベーティブなコースだと時折、一体何がメインなのかわからない料理なんかもあるが、このコースは食べ手に何を味わってほしいのか明確なのである。だから、どの皿もしっかりと記憶に残る。また、コースの流れがしっかりとしているので、前後の料理の繋がりがいい塩梅なのである。柴田シェフと奥村パティシエのコンビで、今後どのようなコースになるのか、、
そして、サービスもスタッフが進化し続けている。その日の料理をしっかり理解し、受け答えも素晴らしい。若い方々が多いのに。こういうところはしっかりとチームワークがとれているのだろう。レストランは楽しむところ、、、本当に理解されている。
そんなお店だからこそ、まずは三つ星をとるまで、季節ごとに訪問しようかと思っている、、、