4回
2019/02 訪問
京都の未在さんに一年半ぶりの再訪です。
月日の流れは早いものですね。
折角ですので円山公園を散策しながら。本日も気持ち急いて門が開かれるだいぶ前に到着してしまいましたが、ご苦労なことに寒い中で薄着の若い衆たちがせっせと準備をしてくれていました。
それにしても建物の佇まいの風格たるや、素晴らしいの一言。
初訪問のマイレビュア様3名を含む6名で。自分は3回目の訪問となり、少し余裕のある先輩風を吹かせてしまいました…笑。
店内に入るとカウンター席の向こうに坪庭がぱっと開ける開放感のある造り。其処には無駄のない侘び寂びの精神が息づいているよう。
茶懐石の作法で煮えばなの白米と汁を交互に、そして店主より一献、長寿祈願の盃を頂き向付に箸をつけます。
一品ごとにゲストに長寿や福を招くその心遣い、一座建立を大切にする石原氏の心優しき想いに終始胸が詰まるよう。若い衆もその想いをしかと受け継ぎ、きびきびと礼儀正しく、自然とこちらも背筋が伸びる気持ち。此処に来ると、スタンプラリーのように食べ歩きをしている現状を顧みて、ふと我に帰る思いがしました。
やはり此処は自分にとって大切な場所。
食の師匠に初めて連れてきてもらった時の感動を忘れることはありません。お元気でしょうか…師匠。
次回は東京オリンピックが終わる頃、未在2020。
もう既に今からワクワク楽しみで仕方ありません。
2019/02/12 更新
2017/09 訪問
1年2ヶ月ぶりの再訪に心急く思いで開門の30分前に到着。
すると庭の木々に水やりをしている若い衆がニコっと笑顔で挨拶してくれました。少し気まづく門の近くで外観の撮影をしていると、写り込まないように避けてくれたりと気を遣わせて邪魔をしてしまいましたね。その後も次々に若い衆が笑顔で声をかけてくれます。門をくぐる前からこの心地良さ。あ~やっぱり未在に来たのだなぁ~とこの時、既に胸一杯。
17時30分に門を通され、庭の腰掛で熱々のおしぼりと紫蘇の香煎茶を振る舞われました。例によって写真はこれだけ。さてさて、いざ。
店内は香の仄かな匂いが癒しをくれます。凛とした空気の中、石原さんが笑顔で迎え入れてくれました。久々の再訪でしたがお元気そうで何よりです。壁には何気なく尾形光琳の掛け軸。所々の生け花や置物に至るまで何もかもがいとあわれなり。
最初は茶懐石の作法で。以下は簡単にその流れ。
全員に店主から折敷が手渡されると、「それでは、どうぞ」の掛け声。左手に飯碗、右手に汁椀の蓋を両手で同時にとり、そのまま飯碗の蓋を下に汁椀の蓋を上にして合わせるように重ね、折敷の右外に置きます。煮えばなの白米と汁を交互に戴き、店主より盃に一献注いで頂いたあとに向付に箸をつける流れ。
食事中にメモを取りながら食べる雰囲気ではありませんので、以下は記憶に残っているものだけ。
・八丁味噌汁、白米煮えばな
・向付 梨(あり)と鳴門金時、デラウェア、クコの実、松の実
・店主より一献、菊酒(長寿祈願)・未在白扇
・翡翠銀杏
・造里 鯛(明石)、剣先烏賊・えんがわ、〆鯖、鮪(ボストン180kg、北海道8.8kg)
・お椀 丸豆腐と小豆、松茸
・八寸 子持ち鮎(琵琶湖)の唐揚げ、煮蛸と蛸の子、鯛の手毬寿司、鯖ともずく酢、いくら玄米、鴨のロースト、小芋、玉、枝豆、煮秋刀魚など
・焼物 黒毛和牛(奥出雲)炭火焼、鷹ヶ峰唐辛子、林檎と日本蜜蜂の蜂蜜ソース
・口直し 生うに(由良)、万願寺唐辛子と茄子のピューレ、ピーナッツかぼちゃ
・炊合 穴子(対馬)と冬瓜
・揚物 出西生姜
・強肴 紅ズワイガニ、鮑(房総)、時鮭
・お食事 おこげと出汁、香物
・抹茶(八坂神社の御神水)と菓子(栗、大納言小豆、白小豆)
・水菓子(50種類フルーツ、すももシャーベット)
・日本酒(黒龍・鍋島 ひやおろし)
〆て38000円。
もう一品一品あれこれ述べるのも野暮というもの。
この上なく楽しませて頂きました、とだけ。
本日も一座建立、食後は石原さんと世間話で盛り上がり、別れを惜しむつかの間のひと時。
若い衆が丁寧に提灯で足元を照らして車まで見送ってくれました。
文句なしで記念すべき☆5.0第10号。
次回は干支が2つ変わる頃。
2017/09/21 更新
2016/07 訪問
未だ此処に在らず
八坂神社の奥、円山公園内。
瓢箪池を渡って坂道を上った先に在ります。
タクシーなら東大谷(ひがしおおたに)北門、または長楽寺(ちょうらくじ)参門と伝えます。
店主は石原仁司氏。
ミシュラン三ツ星に輝く日本料理の名店。
予約は1年以上待ちですが、マイレビ様が貴重な席にお声を掛けて下さり初訪問。心から感謝。
「未在」とは禅の言葉で「修行に終わりはなく、常に向上心を持って上を目指す」という意味だそうです。
円山公園を散策しながら向かいましたが初訪問だと少し分かりづらく、スマホのGPSを駆使してようやく辿り着きました。
18時一斉スタート。15分前までに入店厳守。17時30分頃には店内に案内して頂けます。
まずは待合室で冷たい煮梅の食前酒を振る舞われました。
当店はカウンター席での料理撮影禁止。この梅酒だけが唯一撮影を許されています。
店内はカウンター席のみ。
青々とした新緑が眩しく、水の流れる風情ある坪庭が何とも京都らしく。
何気なく活けられた花、掛け軸に至るまで趣深くて心が癒されるようです。
この日の献立は覚えている範囲で。
・茶懐石 ご飯と八丁味噌汁、上鴨川の京茄子
・造里 鯛(愛媛)、黒鮑(下関)、剣先烏賊(対馬)、鮪(中トロ、漬け、皮炙り)
・焼物 鱧(チリ酢、梅肉、肝)
・お椀 グジと汲み出し湯葉の真丈、よもぎ麺
・箸休め 才巻き海老とじゅんさい、ゴールドラッシュとピュアホワイト2種の玉蜀黍ソース
・焼物 奥出雲和牛の炭火焼 実山椒ソース
・八寸 琵琶湖産稚鮎唐揚げ、海胆もずく酢、海老せんべい、蛸、鴨のロースト、茶豆、鰻山椒煮、鯛のちまき
・炊合 賀茂茄子と?(失念)
・鱧の子と煮凝り
・お食事 出汁茶漬け、お新香
・抹茶
・水菓子 夏蜜柑ゼリーとマンゴー、49種類のフルーツ
・氷菓子 生姜シャーベット
ゲストが皆揃うと、店主の石原氏が一組ずつ挨拶に。
程よい静寂に包まれて凛とした空気が流れ、自然に背筋がピンとしました。
初めに供されたのは、炊き立てやわらかなご飯と繊細な味付けの八丁味噌汁に京野菜の茶懐石。いきなり京都らしさ全開のスタート。店主の石原氏より丁寧に作法の説明がありますので初訪問でも臆することはありませんが、折角ですので予め作法を学んでから伺うとより楽しめるでしょう。お造里は聞いていた通り圧巻の盛り付け。今日はこれでも少ない盛り付けの方だとか。驚きです(笑)。美しく細やかに包丁が入れられた剣先烏賊はお見事。見た目と食感で同時に楽しませてくれますね。これまた丁寧に包丁が入れられた鱧は3種のソースにつけて。肝ソースが大変旨し。ふわりと口中でとけるような食感は流石としか言いようがありません。お椀には緑色のよもぎ麺が初夏らしく。湯葉真丈と丁寧に引かれた出汁の味わいもまた格別でした。和牛炭火焼に実山椒の組み合わせは大好物。京懐石で肉料理が供される店はあまり多くないと思いますが、とても嬉しいです。そして圧巻は八寸。季節がら祇園祭に合わせてでしょうか、団扇の形をした器に盛り付けられたお料理達の煌びやかで華やかなこと。食べてしまうのがもったいなく思える程でした。まずは熱々の稚鮎の唐揚げから、その後はお好きな順番にどうぞと説明を頂き、しっかり目に焼き付けてからいただきました。鰻の山椒煮と鯛のちまきが特に心に残る美味しさです。お食事が出汁茶漬け。コース終盤で腹八分以上にもかかわらず、胃袋と心に染み入る優しい出汁の味わいで、いくらでもおかわりできそうなほど。
そして満腹に心地良さを覚えた頃、ふと美しい坪庭を背景に灯りでスポットライトが当てられると、石原氏がお茶を点てはじめます。
それまで会話で盛り上がっていた我々も、その凛とした美しい所作に釘付け。日本の美が其処には在りました。
49種類というフルーツの盛り合わせデザートの後に、さらに余裕があればもう一品というお申し出を断るゲストは当然ながらおらず(笑)。生姜シャーベットは、氷菓子をいただきながらも冷え切った身体を中から温めるという店主の心優しきお心遣い。
まさしく「一座建立」。石原氏とこの日この時間を此処で共有出来たことはかけがえのない経験です。常連一見を隔てない心のこもった最高のおもてなしに心まで満たされた夜でした。
店主の石原氏はとても気さくな方で、食後はいろいろとお話しもさせて頂き、写真撮影にも快く応じて頂きました。若い衆たちのフレンドリーで細やか丁寧な接客も心地よく。最後は提灯を持って夜道の階段下まで見送りに。いずれこの若い衆の中からも未来の巨匠が生まれるのでしょう。
次回の再訪予約は早くて1年と2か月後。一般予約は1年後までの受付だそうで、実質は一見予約不能。
「ご馳走さまでした」と店を後にすると、「良いお年を!」との若い衆の元気な応えに、そうきましたかと(笑)。
ちょうど1年後よりは季節も変わって楽しめるかなと前向きに捉えることにしましょうか。
「未だ此処に在らず」
いつか未だ辿り着くこと叶わぬ日本料理の頂きが在る処まで。
その過程を今からでも遅からず愉しんで行けることに、喜びを感じずにはいられません。
2016/09/01 更新
予約時には東京オリンピック後の熱の冷めやらぬ京都を想像していましたが、予想以上に静まり返った祇園を通り抜け、晩夏の円山公園を散策しながら未在へと辿り着きました。
京料理の最高峰に君臨する、ミシュラン3つ星、未在。
思えば20年以上前、食べ歩きが高じて京都一人旅をするようになり、SNSも食べログもない頃にる〇ぶを片手に京都市内を徘徊していました。そのうち食べログが登場し、長らく全国1位に君臨していたのが当店であったと記憶しています。鮨さいとう、松川、カンテサンスと名だたる店が上位を独占し、指をくわえて雲の上の存在に憧れを抱くこと幾数年。諦めとともに、もしかしたらという希望も抱きつつ。
その後、食べログで初めてのグルメ師匠クワトロさんとの出逢い。全てはそこから始まりました。
雲の上の存在だった名店に次々とお誘い頂き、夢のような日々。当店への初訪問もクワトロさんのお誘いでしたね。長年の夢が叶い歓喜したことを今でも覚えています。そう、ここは特別な思い出の地。
今回は2名の初訪問マイレビュア様をお連れしました。初めて来た時の、門が開く15分前から胸を高鳴らせて待ちわびた、あの感動を味わって欲しかった。しかし幹事として集合も帰りの時間もまとめることが出来ず。食後の感想も聞けずに解散となってしまったのは心残り。最後に一人残って円山公園を反省しながらのホロ苦い帰途。今回は幹事失格ですね。ご参加くださったマイレビュア様方、至らぬところばかりで申し訳なく。
話は逸れましたが、石原さんの御料理は本日も素晴らしかった。西日本ではやはり別格の領域。ピンと背筋の張る茶懐石のもてなし、満月豆腐の松茸椀の吸い地、八寸の美しさと止まらない酒、京都ならではの牛肉料理も美味しかった。テキパキと礼儀正しい若い衆も相変わらず心地よく、最高の時間を楽しませて頂きました。このような時期でなければ、石原さんと食後にお話でもしたいところでしたが。
ここ数年の石原さんの和やかなもてなしと完成された料理をみると、もしかしたら未だ此処に在らずの到着地点に達したのかもと思えてなりません。それだけ全てが非の打ちどころなく、完成された印象を与えてくれるのです。初訪問の胸の高鳴りは未だ色褪せることなく、此処は自分にとって、いつまでも想い出の地で在り続けることでしょう。
・八丁味噌汁、白米煮えばな
・向付 梨(あり)と鳴門金時、デラウェア、クコの実
・店主より一献、菊酒(長寿祈願)・未在白扇
・翡翠銀杏
・造里 鯛(愛媛)、剣先烏賊・えんがわ、鮪(大間159kg、戸井59kg、ボストン170㎏)
・お椀 満月豆腐(丸豆腐)と小豆、松茸
・八寸 子持ち鮎の唐揚げ、鯛の手毬寿司、いくら、鴨のロースト、小芋、枝豆、など
・焼物 黒毛和牛(奥出雲)炭火焼、鷹ヶ峰唐辛子、日本蜜蜂の蜂蜜ソース
・口直し 生うに、万願寺唐辛子とジュレ
・炊合 穴子(対馬)と冬瓜
・強肴 毛蟹(北海道)、鮑、鱒
・お食事 おこげと出汁、香物
・抹茶(八坂神社の御神水)と茶菓子
・水菓子(71種類フルーツ、玉蜀黍シャーベット)
・日本酒(未在)