紅茶に浸したマドレーヌさんが投稿した初音鮨(東京/蒲田)の口コミ詳細

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紅茶に浸したマドレーヌのレストランガイド

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この口コミは、紅茶に浸したマドレーヌさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

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初音鮨蒲田、蓮沼、京急蒲田/寿司

1

  • 夜の点数:4.8

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.7
      • |サービス 4.8
      • |雰囲気 4.8
      • |CP 4.8
      • |酒・ドリンク 4.8
1回目

2016/08 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味4.7
    • | サービス4.8
    • | 雰囲気4.8
    • | CP4.8
    • | 酒・ドリンク4.8
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

ご近所にこんなお鮨屋さんがあるなんて最高!...「初音鮨」、ご主人のどこまでも明るく屈託のない飄々としたお人柄とは裏腹に、こちらのネタのこだわりはピカイチだ


数年前まで、蒲田と聞くと、とりあえずとんかつ屋さんやお好み焼き屋さんの何店かが脳裏をよぎるものの、銀座、赤坂、六本木といった東京の代表的な繁華街と比較してしまうと、どうしてもグルメの印象は一段も二段も劣っていたかのように思う...ところが今はどうしてどうして、"カマタ"の3字が連なれば、そこに寄り添うように「初音鮨」の店名がピカリと輝きを放ち、東京の代表的な繁華街と言っては言い過ぎかもしれないけれど、この街も食の街としていよいよ無視できない存在になりつつあるかのように思えてくるから不思議なものだ。

2016年8月29日(月)、17:30。「初音鮨」さんへ3度目の訪問をはたす。着座してビールを飲むうちに、いつものように本日のシャリのご説明が始まる。「初音鮨」には摘みは存在しない。押し通して握りで通すスタイルだ。ほどなく一品目が饗される。

1.3.1kg久里浜の地蛸の握り(3点前菜のひとつ)
うん、1品目から旨い。磯に打ち上げる潮の香りを感じると同時に、岩肌に苔むしたように息づく藻の囁きを感じる...

2.岸和田の鰯の握り(3点前菜のひとつ)
鰯の流れるような潤味(うるおみ)のある味わいにほっと胸をなでおろす。鰯の個性的な香味が後を追いかけるように鼻腔を駆け抜けていく。

3.いかのばちこの握り(3点前菜のひとつ)
スミイカの心地よい食感、そして、ばちこの天にも舞い上がるような芳香の向こうに仄かにたゆたう苦味...素晴らしいの一言である。

ここで土佐しらぎくのお目見えだ。上品でフルーティな果実香。雑味のない含み香から、ほんのりした甘みが感じ取れるお酒だ。

ここで、本日の鮪のお披露目だ。164kgの大間の鮪(石司商店)。続いて、1kg弱の千葉の大原の鮑のお披露目...

4.千葉の大原の鮑...1kg弱の握り
鮑は、大原の最高級品だ。これがたっぷりの肝と一緒に饗される。濃厚な牛乳を潮の香りで包み込んだような風味に、肝の苦味が相俟って食べ手を至福の高みへと誘ってくれる。

5.豊後水道の大分と愛媛の間の八幡浜であがった4kgの白甘鯛の握り
白甘鯛の身肉(みしし)をかたまりのまま塩漬けにしたあと乾燥させ、味を濃縮させている。一口でいただくが、その生ハムのような底深い味わいにうっとりする。

乾坤一。辛口。香りは控えめだけれど、切れ味するどい爽やかな日本酒。

6.琵琶湖、2kgの天然鰻の握り
天然鰻はふっくらと焼き上げられている。一口食めば皮目と身肉から溢れる鰻の良質な脂を感じ取ることができる。わさびとの相性も抜群だ。当然鰻に蒸らしは入っていない。蒸らして鰻の旨みを流してしまっては台無しだ。

7.鮪の赤身の握り
赤身はうまい!赤みが奏でる血潮の香りに聞き耳をたてるように味わってしまう。

8.鮪の赤身の漬けの握り
仕事を施した赤身から仄かに感じ取れる鉄の香りにうっとりとする。

大那 夏越し純吟。旨味のあるまろやかな味わいが特長的なお酒だ。

9.鮪中トロの握り
やはり中トロは、鮪の中で一番旨いと思う。くどすぎない脂が、ほのかに化粧を施すように鮪の血潮を柔らかく包み込む。

10.鮪中トロの漬けの握り
10年分の鮪の出汁が染み込んだ漬けタレで中トロにひと仕事施した漬けは、また中トロを全然異なる表情に仕立て上げている。

11.細かく叩いた千葉の伊勢海老とミソを合わせた握り
伊勢は9月から解禁。今日のは千葉県産のものだそうだ。生きた伊勢海老を日本酒を使って締めあげ、茹でた後、細かく叩いてミソと一緒に鮨ネタにしたてあげる。一口でいただくが、伊勢海老から海老の甘味が溢れ出す。

12.標津(しべつ)のいくらの握り
時期的に鶏の卵黄とまではいかないけれど、実に濃厚な味わいである。

日高見 芳醇辛口純米吟醸 弥助。お鮨に合うお酒、弥助。弥助とは花柳界でお鮨のことを指すそうだ。一口含むが、穏やかな香りの吟醸酒である。

13.利尻の紫雲丹の握り
唐津とかも最近夏場はよく目にしますね。というと、大将、「唐津とかは、地元の鮨屋さんが漁師さんから直引きしていて、よりっかすが東京の方にくると思うんですよ。だからうちは雲丹は北海道のものです」とのこと。真冬の舌に絡まってくる濃厚な味感ではなく、真夏の駆け抜けるような爽やかさが印象的な雲丹である。

14.岩手の松茸と鱧の握り
鱧。そのぬくもりあるテクスチャで、口中を繊細な鱧の風合いに染め上げ、後を追いかけるように松茸の華やかな香りが舞い上がる。

15.鮪大トロの握り
「初音鮨」さんでだされる大トロは、トロけるトロではない。筋を噛んで甘味を感じ取れるのが「初音鮨」さんの大トロである。

16.鮪大トロの漬けの握り(炙り)
大トロの脂の旨みは強力だ。そこに少量の山葵が溶け込み、爽やかな着地点へと誘ってくれる。

17.6種の鮪を使った巻物
豪華な巻物。これまでの鮪を全て使って、最後に巻物にしたてていただく。最後にこの巻物で、今日の6種の鮪の余韻を愉しむ。

最後にかんぴょう巻きと玉で一通りとなる。何度来ても愉しませてくれる寿司の名店「初音鮨」。ご主人の素晴らしい口上と極上ネタへのこだわり。今後もこのスタイルを貫徹していただきものだ。

。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。

2016年6月記す

『親方の名口上は相変わらず!...「初音鮨」、しかしでも、今日はさらなるエンターテイナーのパフォーマンスに、参加メンバーの間にどよめきが湧きおこる!!』

2016年6月29日(水)、20:00。今日は敬愛するグルマンさん仕切りの初音鮨貸切の会にお呼ばれする。総勢9名。いずれも舌の肥えた面々である。1回転目のお客さんが退出した後、ご主人が待合室のわれわれをカウンター席に招(しょう)じいれてくれる。さぁ、いよいよ中治劇場の開演である!

...と、実は、今夜、この会に中治劇場とは別にもう一つのお愉しみがあると、このとき誰が予想したであろう!...なんと、今夜のメンバーの中に、タレントさんが参加されていて、その方が、お食事の間、今日のメンバー全員の生年月日と名前から占いを披露されたのだ!(もちろん、お名前は伏すけれど、その方のイニシャルはGIさん...)余談ながら、GIさんによる、不詳マドレーヌの占いの結果は巻末に掲載させていただきます。

...まぁまぁ、それは一旦おいておくとして、親方から本日のシャリのご説明がなめらかに始まる。

「それではまず、シャリの味見から...これは、今炊きたての、酢を落としてきたところのシャリになります。まずはこの、風を入れる前のシャリを召し上がってみてください、お手を...はい。どうぞ今日の出来を見てみてください。...これが時間が経つうちに、だんだん冷えて粒が落ち着いてまいりましてね、バラけがよくなってしっかりしてまいります。そのあたりで中トロをお出ししようと思います。最初に酸味がたったところでは、さっぱりとしたネタとの相性を見ていただこうと思います。それからだんだんにシャリの枯れていくさまをお愉しみください。今のこれは、赤子のシャリの生まれたて。それで徐々に冷えてまいりましてね、最後は冷えて粒が立ったドライになったもので鉄火巻き、かんぴょうをお愉しみいただこうと思います」

と、ほどなく一品目の握りの支度に入る。"さっぱりしたネタ"の一品目は久里浜の蛸というわけだ!

1.久里浜の蛸(4.5kg)
オス。ランダムな吸盤の突きぐわいですぐにオスと分かる。一口でいただくが、いささかも噛みにくさがなく、身肉(みしし)に蛸の脈打つ血潮を感じる。

2.淡路島の沼島(ぬしま)のマナガツオ(3kg)
「マナガツオ、白身なのになぜカツオというかご存知でしょうか?...実はマナガツオは、四国の室戸あたりまでカツオの群れとぶつかって一緒に泳いでるんです。で、本当のカツオの方は、紀伊半島からどんどん北上していって関東の千葉のもっと北までいって戻ってくるんですが、マナガツオは紀伊半島の手前で瀬戸内に入っちゃうんですね。そこでカツオとは袂を分かつ。なので、昔は京都の方はカツオを食べるチャンスがない。鰹節しか知らない。鎌倉沖で獲れたカツオは、一匹一両といいましてね、えー、今の価格で言うと10万円程度。完全にバブってます。...で、どうしてもカツオを食べてみたい、そこで、以西で対抗馬を立てたのがこのマナガツオで、白身なのにこういう名前がついたという一説がございます。でも、実は、愛娘(まなむすめ)、愛弟子(まなでし)、カツオが大好きで一緒についてくる。それで愛(まな)のカツオということでマナガツオという名前が付いたという一説もございます...」

柔らかな白身で脂がのっているにも関わらず、淡白で上品な味わいが交差する。

3.アオリイカとバチコの握り
アオリイカはイカの王様である。4、5月くらいから夏にかけて内湾部にやってくるイカである。肉は厚く、身も豊かで独特のねっとりとした、しかも力強い風味が鼻腔をくすぐり、甘味もあって申し分ない。これに酒肴の王様、バチコをあわせるのだからこんなに贅沢なことはない。噛むほどに口中にあふれる滋味に目頭が熱くなる。

ここで本日の鮪のお披露目がある。塩釜の120kgの鮪 築地 石司商店である。

4.房総 大原の鮑の握り
この時期はやはり鮑だ!しかも房州産のものといえば、鮑の最高級品である。コリコリとした歯触りの中から、濃縮した牛乳を潮でくるんだような風合いで食べ手の気持ちを解きほぐしてくれる...

5.小浜の鯵の握り
塩で2週間くらい熟成させた一品。鯵は本来旨みが強い魚だが、熟成させることで、鯵の旨みがひと切れひと切れに悩ましいほどに濃縮されている。

6.琵琶湖の天然鰻(1.8kg)の握り
ふっくらとした天然鰻の串焼きが付け台にそっと置かれる。その脂したたる身肉(みしし)の分厚さを眺めるにつけ、豊かな気持ちになってくる。これをシャリとあわせてワサビを少量のせていただく。食した途端、いささかの抵抗もなく、口中に肉厚の身が一気にほどける。

7.塩釜産、赤身の握り
いよいよ鮪だ。鮪は冬場のイメージがあるけれど、夏場の爽やかな感じのものも、どうしてどうして、中々に素晴らしい。一口頬張れば、赤身の血潮の風味を、上品な脂が緩和して、ここよりほかはないという旨みの一点に着地させてくれる。

8.塩釜産、赤身の漬けの握り
仕事を施した赤身から仄かに感じ取れる鉄分がたまらない。彼方に鮪の血潮のさざめきが感じとれるかのようだ。

9.千葉の初鰹の握り
冬場の戻り鰹がつきたての餅のようなネットリとした食感を持っているのに対して、この上り鰹は凛としている。そして仄かに香る金気臭の残留香にカツオの味わいの本質が感じ取れる...

10.三河湾の巻き海老の握り
付け台にガラスの蓋付きの器がどんと載せられる。中には活きている車海老が入っている。親方がガラスの蓋を少しだけずらし、お酒を注いでいく。車海老はお酒を飲むほどにバチバチと跳ね上がり、身を紅潮させてゆく...

存分にお酒を飲ませた車海老を茹であげ、シャリとあわせて握っていく...人肌のぬくもりから口の中に海老の甘みが広がる。

11.塩釜産、中トロの握り
実に端正な一品である。やはりマグロは中トロが旨い。鮪の脂に、鮪の血潮が、ほのかに化粧を施すように、まろやかな衣をまとわせている。

12.塩釜産、中トロの漬けの握り
漬けにして一手間加えたもの。これもまた基本は実に端正な味わいである。そこに熟成をかけた滋味が加わって、悩ましき濃緋色の存在感を食べ手につきつけてくる。

13.紫雲丹(ホント?ってくらいバフン雲丹に近い存在感)の握り(産地はナイショだそう...)
ひとつひとつの香りの分子が緻密に濃縮された力強い香気にうっとりとする。バフン雲丹のような濃厚で感情を内に秘めたような力強さを感じる。

14.塩釜産、大トロの握り
この塩釜の大トロは、トロけるトロではない。筋を噛んで甘味を感じる逸品。わたしは、トロけるトロより、こういう存在感のあるトロが断然好きだ!夏場の涼やかな大トロも大変結構だ。

15.熊本の天然鮎の握り
やはり鮎は香りの魚である。ゆっくりといただきながら、気高き"清流の女王"が放つ余韻を存分に愉しむ...

16.塩釜産、大トロの炙りの握り
表面に火を入れ、香ばしさを増したトロも絶品である。トロの味わいに焼き目の香ばしが加わり、より味わいに深みが増す。

17.塩釜産、赤身、中トロ、大トロの巻物
豪華な巻物。これまでの鮪を全て使って、最後に巻物にしたてていただく。最後にこの巻物で、今日の6種の鮪の余韻を愉しむ。

18.かんぴょう巻き、玉
かんぴょうまきと芝海老入り玉の握りで一通りとなる...

さぁ、最後にGIさんのマドレーヌ占いで締めくくってみたい。

GIさんに生年月日と名前をお渡しすると、まずは運勢の分別分類の作業が始まる。そして、手相を見せてください、という流れになるので、両手を出すことになる...

「うわ、またすごい手相していますね...根が非常に真面目なのと、でも一方でかなりいい加減なので、なんとかなるよ、みたいな、感じでやってきたタイプですね。でも、運がめちゃくちゃいいですね...真面目な自分とテキトーな自分とぐるぐるぐるぐる回っているようなタイプですね。余計なことを喋る癖があるのに謙虚が入っているので、抑える自分とワっといくのが混ざっているタイプですね。...うん、でも、チョー、エロいですね。そして優柔不断なタイプですね。攻め込まれると圧倒的に弱いですね。守備力があんまりないので..そしてすごく優しいですね。サービス精神と、なにか人にやってあげようという気持ちがある人ですね。真面目な割にも運で救われるというタイプです。酒と女と博打は要注意。必ず失敗します。でも明るいので、陽気なのがよいですね」

う~ん、これが自分なんですか...即座に返す言葉が見つからず、ワラワラしていると、もうすでに占いの終わった女性陣からGIさんに再度声がかかる。「あの、なんかわたし長所ありましたっけ?」GIさん、もう今日は引っ張りダコである。

。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜。

2015年10月記す

『初音屋!っと付け場に向かって大向うを唸ってみたくなる...「初音鮨」、付け場で演じられる中治劇場は、食が最高のエンターテインメントの1つであることを改めて思い出させてくれる!』

1品1品客に手渡しで饗される鮨たちは迫力に充ち、ひたすら食べ手を圧倒してくる。かつそこにはご主人、中治 勝(なかじ かつ)さんの哲学がきっちり詰めこまれている。とはいっても、そこは緊張を強いるような堅苦しい空間などではなく、つけ前に着席した客たちはひたすらユーモアに満ちた数時間を堪能することになる...

(中)「松茸、今年は少しはいいかなと思っていたんですが、今週に入ったら急に値が上がっちゃいましてね。もう、なんだろなぁという感じですね...うちにいらしていただくお客さまは外車にお乗りになられている方が実に多いんです。でも、おかしなことに、どなたも松茸だけは国産がいいっておっしゃるんですね。アレ、いつもおかしいなぁと思うんですよね。でも、まぁ、許して上げてますけどね」

なんの屈託もなくさらりと口から漏れる言葉たちがまとうユーモラスな呼吸に思わず微笑みがこぼれてしまう。以下、中治劇場で演じられた話術の妙とその鮨哲学について、できるだけ詳細に書き綴っていきたい!

本日は、actis1001さんご夫妻のえコムさんと4名での会食である。すでにのえコムさんはこちらには何度も足を運ばれており、色々と教えていただきながらのお食事会となる(のえコムさんありがとうございました!)結果、中治劇場開演後は、4名とも笑いの絶えない会となった。今回もまたとても素敵な会となった!

「初音鮨」のスタートは、まずは本日のシャリの説明からとなる。大きなシャリ桶に入ったシャリがつけ台に載せられ、まずお客は少量ずつ本日のシャリをいただくところからスタートする。

1.シャリの説明
(中)「炊きたてのシャリでございます、まだ、酢も馴染んでいません、塩も暴れています。ですから一口いただいてむせないようにお気を付けください...」

とご案内がある。さらに、

(中)「本日はまず、さっぱりとした手つかずの綺麗なシャリで白い魚を愉しんでいただきます。そうこうするうちに、シャリはだんだんと冷え、酸化が進んで酢がたってまいります。このタイミングがシャリの最も働き盛り、パスタでいうところのアルデンテの状態になりますので、ここで中トロを愉しんでいただくという寸法になります。おあとここからは、シャリの方は、どんどん枯れてまいりますので、煮たものや焼いたもの、蒸したもので一緒にお愉しみでいただいて、最後は海苔巻きでしめていただく、という段取りになります」

と淀みなくご説明くださる。続いては、本日の鮪の説明という流れになる。

2.本日の鮪の説明
まずは、大間産の立派なじゃばらが青磁のお皿に載せられて付け台にドンと饗される。添えられた紙に、"築地鮪仲卸石司(いしじ)商店"の文字が見える。続いて、153.4キロの赤身、大間の1本釣り生けじめの鮪がドンとその姿を現す。

(中)「木曜日に上がった鮪で、競り場に上がったのが土曜日のものになります。で、木、金、土、日、月(本日)と5日間熟成させて、本日切ってもらったものです」

とご案内がある。

(中)「本日は、これらの鮪を使って、赤身、中トロ、トロをそれぞれ漬けたもの、漬けてないもので6貫のご用意となります」

とのことだ。このド迫力に、いやがおうにも期待が高まる。ここから、握り鮨のコースがスタートする。まずは、握りのスタイルについて、中治さんからご説明がある。

(中)「うちは、お醤油の小皿もなければ、お手元もございません。全て手渡しでお召し上がりいただきます。指先に載せた鮨ネタをひっくり返すようにして舌の上に載せてお召し上がりください」

3.佐島の地蛸の握り
1品目が饗される。佐島の地蛸のオス。

(中)「オス、メスの見分け方なんですが、足の吸盤のランダムなのがオス、力瘤のような吸盤がところどころ見えたらオスなんです。逆に綺麗に揃っているのがメスになります。やはりオスは力強い味感になります」

とのことである。

一口でいただくが、頬の筋肉が緩むくらいに旨い。いささかも噛みにくさがなく、筋肉の中に蛸の脈打つ血の流れを感じるかのようだ。さらに感じるか感じないかくらいにそこはかとなく漂う磯の柔らかい風味にうっとりする。

4.明石の鯛の握り
まず、ご主人自慢の明石の鯛の切り身がトレーに載せて付け台に饗される。まずそのアピアランスが素晴らしい。鱗が黄金色に輝いている。

(中)「エビを食べて仕上がってくると、鯛のウロコはこういった金色に輝いてくるんです」

とのことだ。さらに握りは、腹と背、2種の仕込みの異なる鯛の身肉(みしし)を使って握られる。

(中)「腹の方は1週間熟成したものになります。これに対して背は今朝までピンピン生きていたものです。いわばプリプリとシットリのコラボです。さらにこれは塩だけで仕上げています。こういう良い素材に昆布なんかの味を足すのはダメなんです。昆布を足すということは味が足りないからであって、こうした良質な鯛は塩だけで充分なんです...スグ噛まないで、舌の上に載せたら3秒お待ちください。脂が活性化してきたら噛み始めてみてください」

2つの食感が充分愉しめる。やはり鯛は白身魚の王者の風格がある。独特の力強い香味を感じる。

5.宮城県産真牡蠣(新物)の焼き牡蠣を使った握り
(中)「10月1日から始まる宮城県産真牡蠣の新物になります。サイズ的にはまだかわいいですね。先週までは岩牡蠣をお愉しみいただきましたが、夏牡蠣は真牡蠣が始まればもうご遠慮ですね。やはり、真牡蠣はリアス式海岸がダントツによいです。リアス式海岸というのは、森が海岸まで迫っているという意味なんですよ。川の水が植物プランクトンを育んでそれを牡蠣が食べてどんどん育つ。今日はその焼き牡蠣の握りになります」

とのことである。小粒ながら文句なく旨い!海がこぼしたひと粒の涙をまる呑みしたような芳醇な味感にただただ酔いしれる。

ここで、付け台にガリが饗される。砂糖を全く使わない生姜そのもののガリ。パンチがあるため、舌に載せないで奥歯で噛んでくださいとご案内がある。「次のお魚に行くのに、前の印象を切るのにお使いください」とのことである。

6.5日熟成のコハダの握り
(中)「わたしはシンコという魚は使わないんです。脂がのって美味しいというのは、油脂、つまりカロリーです。で、そういうときにみなさん脂に何の旨みを感じているかというと、脂の中に含まれるカルシウムなんです。例えば豚骨スープにしてもカルシウムの溶け込んだ旨みが人を満足させてるんです。これと同じように魚の旨みも骨にある。シンコってのは、コハダになりかけの稚魚でございますから、骨がまだ充分成熟してなくて美味くない。これに対して、成熟したコハダというのは骨が成熟していて旨い。さらに、この時季からどんどん旨くなっていく。コハダはニシンの仲間ですから秋冬が旬なんですね」

さらに、中治さんのコハダ愛は続く...

(中)「コハダに塩を振って、酢に漬け込むことによって、まず酢を受け入れる素地ができあがります。で、酢が馴染んでくることによって、中骨を酸が溶かし、お酢が溶かす、という具合に熟成が進みます。4日目くらいになるとちょうどカルシウムが身に染み込んできて、出汁を形成してくる、ここがコハダの最高に旨いタイミングなんです」

さらに、一風変わった「初音」のコハダの握り方についてもお話しされる

(中)「うちは、皮目を上にするのではなくて、ひっくり返して握ります。今まで見たことのないコハダの握りでしょうが、これが、舌で温っためて、身肉に染み込んだコハダのカルシウムを一番美味しくいただく握り方なんです。(皮目でプロテクトされた方を舌に載せてしまっては、身肉のカルシウムを充分に感じることはできないので、台無しなんです)コハダの握りは皮目を上に握るもんだからって教わって、その通りにやってるひとじゃ、どうしてこういうふうにするかは絶対にわからないでしょうね」

一口でいただくが、今まで食べたコハダの握りの中で一番旨いかも知れない!こんなにコハダの骨をしっかりと感じ取ったことはない!

7.28度に保温した赤身の握り、漬けの握りとの食べ比べ
(中)「冷たく冷やした魚を食べちゃうと、確かに新鮮だという印象を持ちますが、魚の味わいという観点では2割くらいしか人間の舌には伝わらないもんなんです。だから、うちの赤身の握りは28度に保温しています。これをみなさんの舌の上で、温め直していただこう、っていうことなんです。みなさんの舌の温度を36度5分と仮定して、鮨を口に含んでから、36度5分のオーブンで温めながら火を入れていっていただく、そんな感じをイメージしているんです。さらにその際適度な唾液が欲しい。5秒待つことで唾液が出てきます。なぜかというと酢飯ですから、酸っぱさによって唾液が出てきます。その状態で、ゆっくりと鮪を愉しんでいただくというのが、一番鮪の美味しいいただき方なんです」

漬けてない方は、鮪の血潮の香りをぐっと感じる。漬けは香ばしく旨みの強い漬けタレで、この血潮の鮮烈さがまろやかに抑えられている。

8.ミル貝の握り
(中)「本物のミルの甘味というのは、本当に繊細なんです。だからこのミルの甘味を存分に感じていただくには砂糖は邪魔。でもネタに自信がないところは砂糖を使っちゃんですよね」

シャリシャリとした食感の中に、上品な甘みがほのかに漂う。

9.中トロの握り、漬けの握りとの食べ比べ
食材の温度の議論は、中トロでも続く。

(中)「冷たいお鮨だと、5秒も口に入れていたら冷えて舌がかじかんで来ちゃう、この温度(28度)だから5秒待てるってことも言えるかもしれませんね。ですから、普段はパーティーフード、フィンガーフードでお鮨は冷たいのがあたりまえなのが現代ですが、職人の握りたてを食べられるチャンスがつけ前ですから、こういうカウンターのお店にきていただくのは、お鮨を適温でいただくチャンスと思っていただくのも良いかもしれません」

やはり中トロは、鮪の中で一番旨い!鮪の脂が、過剰すぎず、ほのかに化粧を施すように鮪の血潮をまろやかになだめてかかっている。また、10年分の鮪の出汁が染み込んだ漬けタレで仕上げた漬けもまた、素晴らしい味わいである。

10.大トロの握り
この大間の大トロは、トロけるトロではない。筋を噛んで甘味を感じる逸品。わたしは、トロけるトロより、こういう存在感のあるトロが断然好きだ!

11.淡路の鱧の白焼き(熱々)と岩手の松茸の握り
(中)「鱧は夏場は痩せててダメ。祇園祭のときはダメです。築地の荷受の担当者は、全員11月の鱧がマックスに美味しいといいますよ。で、鱧は白焼きが一番いいですね。7分焼き上げてきます」
ここで岩手県産の松茸が付け台に載せられる。鱧の白焼きと松茸が一緒に饗される。一口口に含むと、鱧は、その持ち味の、ぬくもりあるテクスチャで口中を満たし、それに香りのたった松茸がドンときて、ずーっと余韻が続く。最高のマリアージュだ!

12.珍しく入った鹿児島県産のアオリイカ(もう名残)とバチコをあわせた握り
アオリイカはイカの王様ですね!とお声がけすると、まったくそうだとのお応え。今日はたまたま入荷があったとのことである。これと大好きな珍味バチコとあわせた逸品。文句なく旨い!

13.秋田県産の鰻の握り
秋田産天然鰻の握り。穴子でなく鰻の握りとは珍しい。口中で甘くほろほろと解ける。

14.新いくらの握り
新いくらの醤油漬け。いくらが好きだとご主人に伝えると、大盛りにしていただく。一口いただくが、びっくりだ。まるで鶏の卵黄を食べているような濃厚さだ!

15.房総産アワビの握り
房総産アワビは関東の最高級品だ。ここのアワビは本物である。大きな切り身で鮨にしていただくが、アワビのほんのりと高貴な幽玄味がシャリを優雅に包み込む。

16.伊勢海老と味噌の握り
ここで伊勢海老登場。付け台に置かれた伊勢海老はギーギーと怒りの声を上げている。この生きた伊勢海老を日本酒を使って締めあげ、茹でた後、細かく叩いて味噌と一緒にまたたくまに鮨ネタにしたてあげる。一口いただくが、絶妙の火入れ加減。海老の旨みが凝縮している

17.カマシタトロの漬け握り(炙り)
カマシタの旨みは強力だ。そこに少量の山葵がカマシタトロの脂に溶け込み、爽やかな着地点へと誘う。

18.6種の鮪を使った巻物
豪華な巻物。これまでの鮪を全て使って、最後に巻物にしたてていただく。最後にこの巻物で、今日の6種の鮪の余韻を愉しむ。

19.かんぴょう巻き、芝海老入り玉の握り
かんぴょうまきと芝海老入り玉の握りで一通りとなる。
お料理、大将のお話と存分に愉しませていただいた。最後に中治氏に、握り一本で摘みを一切やらない理由について聞いてみる。

(中)「ええっとですね。摘みに走ると、鮨屋として、こう、どうしてもそこが逃げ場になってしまうんですね。例えば、牡蠣は摘みとして酢橘を絞って出せばいい、という固定観念ができてしまうと、鮨屋は牡蠣をどうやったら握りで美味しくいただけるか、という発想をしなくなってしまうもんなんです。だからぼくは10年前に握り以外はやらないと決めたんです」

これが、中治さんの鮨哲学だ!

  • 標津(しべつ)のいくらの握り

  • 細かく叩いた千葉の伊勢海老とミソを合わせた握り

  • 利尻の紫雲丹の握り

  • 豊後水道の大分と愛媛の間の八幡浜であがった4kgの白甘鯛の握り

  • 千葉の大原の鮑...1kg弱

  • 164kgの大間の鮪(石司商店)

  • 琵琶湖、2kgの天然鰻の串焼き(蒸らしなし)

  • 千葉の伊勢海老

  • 3.1kg久里浜の地蛸

  • 本日のシャリ

  • 3.1kg久里浜の地蛸の握り(3点前菜のひとつ)

  • 岸和田の鰯の握り(3点前菜のひとつ)

  • いかばちこ

  • いかのばちこの握り(3点前菜のひとつ)

  • ガリ

  • 164kgの大間の鮪(石司商店)

  • 164kgの大間の鮪(石司商店)、左から大トロ、中トロ、赤身

  • 千葉の大原の鮑...1kg弱

  • 千葉の大原の鮑...1kg弱

  • 千葉の大原の鮑...1kg弱の握り

  • 豊後水道の大分と愛媛の間の八幡浜であがった4kgの白甘鯛

  • 豊後水道の大分と愛媛の間の八幡浜であがった4kgの白甘鯛の握り

  • 琵琶湖、2kgの天然鰻の串焼き(蒸らしなし)

  • 琵琶湖、2kgの天然鰻の握り

  • 鮪の赤身の漬け

  • 鮪の赤身と漬け

  • 鮪の赤身の握り

  • 鮪の赤身の漬けの握り

  • 鮪中トロの漬け

  • 鮪中トロと漬け

  • 鮪中トロの握り

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  • 茹で上がった千葉の伊勢海老

  • 細かく叩いた千葉の伊勢海老とミソを合わせて

  • 細かく叩いた千葉の伊勢海老とミソを合わせた握り

  • お2人とも素敵な笑顔です!

  • 標津(しべつ)のいくらの握り

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  • 岩手の松茸と鱧の握り

  • 鮪大トロの握り

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  • 鮪大トロの漬けの握り(炙り)

  • 6種の鮪を使った巻物

  • 卵焼き

  • かんぴょう巻き

  • 三河湾の巻き海老、 存分にお酒を飲ませた海老を茹であげて...

  • 房総 大原の鮑

  • 塩釜の120kgの鮪 築地 石司商店

  • 琵琶湖の天然鰻(1.8kg)

  • 久里浜の蛸(4.5kg)

  • 久里浜の蛸(4.5kg)のサク切り

  • 久里浜の蛸(4.5kg)の握り

  • 淡路島の沼島(ぬしま)のマナガツオ(3kg)

  • 淡路島の沼島(ぬしま)のマナガツオ(3kg)の握り

  • アオリイカ

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  • ガリ

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  • アオリイカとバチコ

  • アオリイカとバチコの握り

  • 塩釜の120kgの鮪 築地 石司商店

  • 塩釜の120kgの鮪 築地 石司商店

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  • 房総 大原の鮑

  • 房総 大原の鮑の握り

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  • 小浜の鯵の握り

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  • 琵琶湖の天然鰻(1.8kg)の握り

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  • 紫雲丹(ホント?ってくらいバフン雲丹に近い存在感)

  • 紫雲丹(ホント?ってくらいバフン雲丹に近い存在感)の握り(産地はナイショだそう...)

  • 塩釜産、大トロの握りのサク切り

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2016/09/10 更新

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