14回
2019/01 訪問
この空間は至上のひとときを約束してくれる!...「鳥しき」、こちらはうかがう度に、心騒わぐ美しいレストランだ
「鳥しき」の暖簾をくぐると店内を静かに満たすお香の香りにいつも気持ちがすっと落ち着く。猥雑な居酒屋のような喧騒とは程遠い空間。カウンターに座るそれぞれ2組のお客さんたちは会話を愉しみつつ、皆しめやかに串に向き合って微笑みをこぼしあっている。店内に声高に力強く響くのは、大将とお弟子さんたちの掛け合い、そして炭の爆ぜる音と、忙しく空を切る団扇の音、それに時折トンカチで割られる備長炭の抜けるように澄んだ音だ。
着座後、ほどなく串の連綿が饗されることになるが、いずれの串も部位部位の個性を逞しく主張していて感動的である。
さびやきは、どこまでも柔らかく瀟洒でキレイな味わいに震えているし、くびかわや、せせり、はらみといった部位は、鶏肉が蓄えた健康的で良質な脂をたわわに蓄えて豊饒だ。(大根おろしと合わせていただくと滅法相性がよい!)
アキレス腱やかしわは、豊満な肉に力強い旨みを抜かりなく張り巡らせて圧倒的だし、やげんは、軟骨の周辺にまとわりついた肉が1串の旨みを増幅させていて悩ましい。血肝はひたすら感情を内に秘めて濃密にメランコリックだし、はつもとは、苦みと蕩けるような脂が層となって食べ手に迫ってくる。そして、はつや砂肝は、力強いの弾力の向こうに、静かに底を這うような滋味を漂わせている...
こうした串の連綿の合間合間に野菜の串が差し込まれながら、コースは進んでいく。この贅沢な3~4時間は何物にも代えられないものである。
本日いただいたのは、以下である。
1.さびやき
2.アキレス腱
3.すなぎも
4.くびかわ
5.しらたま
6.かしわ
7.やげん
8.おくら
9.はつもと
10.ぎんなん
11.血肝
12.せせり
13.厚揚げ
14.はつ
15.なす
16.はらみ
17.ちょうちん
18.手羽先
19.そぼろ丼
最後のそぼろ丼の上には、卵黄をポンと載せていただいて、崩していただく。これが滅法旨い!
しかしでも、この一串一串を、ゆったりといただく贅沢な時間は何物にも代えることはできない!わたしにとって「鳥しき」は、至高の空間で、最高の料理を提供するレストランである!
そぼろ丼
厚揚げ
血肝
くびかわ
鳥しき
さびやき
アキレス腱
すなぎも
くびかわ
しらたま
かしわ
やげん
おくら
はつもと
ぎんなん
血肝
せせり
厚揚げ
はつ
なす
はらみ
手羽先
そぼろ丼
そぼろ丼
2019/01/17 更新
2018/09 訪問
大自在(だいじざい)の妙境(みょういき)...「鳥しき」、焼き鳥に旨みをまとわせる焼きの技術は、まるで嘘みたいに軽やかで屈託がない
焼き場の池川義輝さんの仕事ぶりは、何時間見ていても飽きない。頭でじっくり考えながら焼いているというより、複数の串を相手に躍動する体の感覚と、指先が受け止める熱量と串の重みの感覚を頼りに焼きあげているという感じがするのだ。
意識して凝ったりはしていないのに、その呼吸、指先の感覚、視覚、香りで、その都度これしかないという味わいに的確に仕立て上げている、という感じがする。しかし、それは、何か誰にも真似のできない最高難度の技を見ているというより、いかにも軽妙洒脱に簡単な繰り返しを繰り返しているようにすら見える。
...千円札でおなじみの夏目漱石の「夢十夜」という小説の第六夜に、鎌倉時代初期の仏師、運慶の夢の話というのがある。わたしは焼き場の池川さんを見るたびに、この「夢十夜」の運慶の描写を思い出す。
「運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて、鑿の歯を竪に返すや否や斜に、上から槌を打うち下おろした。(略)その刀(とう)の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を挾(さしはさ)んでおらんように見えた。」
それを見て見物人の男が次のようにいう。
「あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋うまっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」
素人には到底見定めることができない、食材に埋もれた最高の旨みを、「少しも疑念を挾(さしはさ)」まず、「無遠慮」に見えるくらいの軽快な手捌きで掘り出していく職人の技。いつも焼き場の池川さんから、そんな空気感を感じるのだ。
これこそ、「夢十夜」の言葉を借りれば、「大自在(だいじざい)の妙境(みょういき)」に達している職人技だと思う。
2018年9月7日(金)21:00。「鳥しき」での素晴らしいお食事会について以下詳細に書き綴っていきたい。目黒駅周辺で待機するうちに、「鳥しき」さんから入店可の連絡が入る。目黒駅前の路地裏から入店して、池川さんにご挨拶する。
本日は、モンラッシェと、レスティニャックを1本ずつ行く。ほどなく、1串目がスタートする。
1.かしわ
タレの香ばしい香りと、かしわについた仄かな焦げ目のマリアージュが素晴らしいひと串である。
2.さびやき
絶妙な火入れ。この「鳥しく」のさびやきのレアな火入れは何度いただいても深くため息をつくほどに絶妙である。
3.はつ
強火で焼き上げて、表面だけに焼き目の膜が張っている状態で饗される。表面の膜と、中身の柔らかさのコントラストが愉しい逸品である。
4.やげん
出汁醤油でさっぱりと焼き上げられている。この軟骨の味わい、食感を出汁醤油でさっぱりといただくのがよい。おそらくタレよりも出汁醤油の方が相性は優れていると思う。
5.白玉
「鳥しき」の白玉は旨い。黄身が串にねっとりとまとわりつく感じがたまらないのだ。
6.オクラ
オリーブ油で仕上げてある。「鳥しき」さんでは、オリーブ油は、野菜の焼き物に使われている。
7.くびかわ
ゼラチン質の多い部位である。火入れでカリッとさせた食感とプルプルのゼラチン質の対比が面白い。
8.血肝
このとろりとした感じがたまらなくメランコリックである。ほのかな鉄の香りが食欲をそそる。自然派の赤によく合う。
9.アキレス腱
コラーゲンののり具合が丁度よい。焼を入れて程よい塩梅にコラーゲンを切っている感じがよい。
10.とうもろこし
これも夏の定番だ。焼とうもろこしの香ばしさがたまらなく旨い。
11.つくね
たっぷりと肉汁を含んでいて、ぷっくりとした仕上がりが美しい。これも「鳥しき」に来たら外せない一品である。
12.はつもと
胡椒だけでシンプルに焼き上げてある。滋味深い心臓周辺の肉で、タレは使わずそれ自体の旨みを味わえる工夫が嬉しい。
13.ぎんなん
ムッチリとした食感から甘苦いあの銀杏特有の風味がえも言われぬ存在感を漂わす。
14.せせり
頸の部位だ。よく動く部位で、一気呵成の強火の焼きで仕上げてある。仕上げはシンプルに胡椒だ。口中にあふれる良質な肉汁に思わず咽るような興奮を覚える。
15.厚揚げ
これも「鳥しき」さんにきたら、絶対にいただきたい一品である。火入れされ、軽く焦げを付けた焼き目が何とも香ばしい。
16.膝回り
ここもよく動く部位で、力強い味わいが特徴だ。鳥油と胡椒のシンプルな味付けであるが、これも「鳥しき」に訪問したら絶対に欠かせないひと串である。たわわな良質な脂ノリにいつも目が覚めるような思いがする。
17.ソリレス
ここも、わたしの大好きな部位である。腿の付け根の部位で、味わいが濃くて鶏の脂が力強いのが特徴である。
18.ちょうちん
お馴染みのちょうちんである。「鳥しき」のちょうちんは小さなレバと合わせてある。卵黄とこのレバの相性が申し分ない。
19.手羽先
言わずと知れた「鳥しき」のスペシャリテである。肉、骨、皮が一体となったダイナミックな部位である。一見、ステーキを思わせるほどの迫力がある。毎回思うのだけれど、「鳥しき」の手羽先は、とにかく肉の身離れが素晴らしい。焔立つような焼きあがったばかりの手羽先をほくほく言いながら頬張る。
20.じゃがいも
軽く塩コショウされている。強い串が続いた後のアクセントに丁度よい。
21.背肝
わたしは、この部位が力強い部位では最も好きかもしれない。クリーミーな味わいを感じるのだ。これもタレは使わずに塩コショウでシンプルにいただく。
22.親子丼
本日は親子丼で〆る。そぼろ丼も大好きだけれど、やはり「鳥しき」の親子丼は絶品である。
今日もまた、池川さんの焼き鳥を存分に愉しんだ!...いつも思うのだけれど、「鳥しき」を知ってしまうと、ほかの焼き鳥店の暖簾をくぐろうという気分になれなくなる。やはりここは、わたしにとって最高のレストランのひとつである!
くびかわ
アキレス腱
はつもと
はつ
鳥しき
モンラッシェ
かしわ
さびやき
はつ
やげん
白玉
オクラ
くびかわ
血肝
アキレス腱
とうもろこし
つくね
はつもと
ぎんなん
せせり
厚揚げ
膝回り
ソリレス
ちょうちん
手羽先
じゃがいも
背肝
親子丼
2018/10/08 更新
2018/07 訪問
繰り返し読み返す愛読書のような...「鳥しき」、自然派ワインと、鳥しきのひと串ひと串の相性に息を呑む!
「鳥しき」さんの暖簾をくぐるのは、もう12、3回目になると思う。でも、何度訪問を重ねても、あの分厚く串うちされた一串を頬張って、口中に、串に閉じ込められた肉汁が溢れるのを受け止める度に、瞳を閉じて「やられた...やられた...」と深い感動の渦の中で、言葉をまさぐり続ける自分を発見することになってしまう。...絶対擁護の店。「鳥しき」は、わたしにとって、繰り返し読み返す愛読書のように擁護したい貴重な店舗である。
ちなみに、わたしは、自分が本当に感動したお店のレビューしかこの食べログのレビューにはあげないことに決めている。なので、今後も1回1回の「鳥しき」体験は、この場で、できる限り丁寧に書き綴っていくことになると思う。
...少し余談に渡るけれど、わたしは、自分のレビュー件数を膨らませたいと思ったり、あるいはフォロワーの数を増やしたいと思ったり、はたまた、他人が羨むような一元さんお断りのお店の訪問したことに優越感を感じるような感覚は、一切持ち合わせていない。
そういう感覚は、端的に、料理ではなく、他人と向き合っているものだからであり、そもそも、わたしには、他人に嫉妬を感じたり、他人を嫉妬させようという性向がまったくない。逆に、ひとからそういった嫉妬のような感情を感じたとき、その凡庸な醜さに思わず目を背けたくなってしまう。
みんな単純に自分が愛するものを愛したらよいのである。それだけで何がいけないのか。他人との比較なんて全く必要ない。だから、わたしは「鳥しき」の素晴らしき個人的な体験を、今後も愚直に書き続けることになると思う。
...2018年7月7日(土)。今日はワイン通の友人との「鳥しき」訪問である。今回は彼女推奨のワイン持ち込みの会だ。...今回のワインはビオ2本であったのだけれど、「鳥しき」の串と自然派のワインがこんなに相性が良いのかと目から鱗であった。以下、その感動について書き綴っていきたい。
まず、1本目のワインは、ブノワ・ライエ(ラエ) ブラン・ド・ノワール(Benoit Lahaye Blanc de Noir)。辛口の白。泡である。野趣味があるけれど重々しさがなく、微発砲でドライ感がある。これは、最初のサビ焼から、くびかわ、とうもろこしの野菜あたりまでいくが、自然派の白と「鳥しき」の白い串との相性のよさに舌を巻く。そして、次の赤ワインと「鳥しき」の濃厚系の串の相性にしたたかに打ちのめされた。
2本目のワインは、クリザリード・ド・レール シャトー・レスティニャック(LA Chysalide de Lair Chateau Lestignac)。これが実に緻密で素晴らしい赤であった!..."緻密"。そう、味わいが万華鏡の煌めきのように緻密で複雑なのだ。1口目いただくと、まず蜜っぽい甘さがさざめくのだけれど、一方でその奥底にはブドウの皮の香が鈍く諧調を刻むのが感じ取れる...かと思うと、とうの昔に娘盛りは過ぎた熟成した花の香りが媚薬のように悩ましくグラスの縁のあたりを舞い、その艶やかさに心を奪われていると、ふわりと鄙びた土の香りが仄かに鼻先を通り抜ける...この豊かな香りの饗宴!...これが「鳥しき」の血肝から、最後の手羽先までの串の連なりに悩ましく絡みつくのだ!
「鳥しき」の串の連綿は以下のように続く。
1.サビ焼
2.かしわ
3.せせり
4.ぼんじり
5.ししとう
6.くびかわ
7.とうもろこし
8.かわ
9.肩
10.銀杏
11.白玉
12.血肝
13.膝周り
14.ハツ
15.焼豆腐
16.ちょうちん
17.ソリレス
18.手羽先
19.お茶漬け
20.焼きおにぎり
どれも素晴らしかったが、今回はシャトー・レスティニャックの緻密さと、膝回り、ソリレス、手羽先といった強い串との相性に度肝を抜かれた。次回は自分で今日のこのワインを持ち込ませていただこうと思う。
「鳥しき」は、決して鳥料理の美味しい店ではない。「鳥しき」は、その手の鳥尽くしのお店と比較されるような店ではない。ここは、あくまでもお鮨のように、ひとネタひとネタを、心地よい緊張感と一緒に付け台でいただく焼き鳥のお店なのだ。この形式から生み出される程よい緊張感が、ワインの味わいをさらに豊饒化してくれているのだと確信している!
かしわ
くびかわ
血肝
サビ焼
焼豆腐
とうもろこし
鳥しき
サビ焼
かしわ
せせり
ぼんじり
ししとう
くびかわ
とうもろこし
かわ
肩
銀杏
白玉
血肝
膝周り
ハツ
焼豆腐
ちょうちん
ソリレス
手羽先
ブノワ・ライエ(ラエ) ブラン・ド・ノワール
ブノワ・ライエ(ラエ) ブラン・ド・ノワール
クリザリード・ド・レール シャトー・レスティニャック
2018/07/20 更新
2018/06 訪問
串と炭火のわずか1cmの躍動感...「鳥しき」、この抜き身を突き付けられたような迫力に触れなくては、人はたやすく老いてしまうと思う
"...今、働く。素手で高熱をまとった串を返す。タレを浸した刷毛で串をなでる。素手が焼き鳥職人そのものであった。刷毛の湿り気が焼き鳥職人そのものであった。めくれあがる熾火。熾火の上で艶やかに光る黒い炭。積み重なった炭たちの熱気で肉汁が立てる薫香のざわめき。...その光景全てが焼き鳥職人そのものであった。そして、焼き鳥職人、池川義輝はその風景に染め上げられるのが好きだった..."
...焼き場に立つ池川さんの姿を眺めていると、思わず、作家"中上健次"風にこの目黒の路地裏の光景を語ってみたくなってしまう。...中上のような刻み付けるような簡潔な文章で、伝えたいそのものを直に伝える強い文章で。...この"路地裏"の名店には紛れもなく"中上=池川主義"的な呼吸が息づいていると思う。
2018年5月6日(土)、22:30。今回も素晴らしかった「鳥しき」訪問を以下詳細に書き綴っていきたい。
本日は、お連れさまとお店で直接落ち合う。比較的早くお席が空いたということで、わたしが先に入店し、カウンターの一角でお連れさまを待つ格好である。焼き場に立つ池川さんは不動明王のような迫力があるが、接客は常に腰が低くて誠実さそのものである。それもわたしにとって、「鳥しき」をやめられない要因のひとつである。
...ほどなくお連れさまが到着される。彼女は今回が「鳥しき」初訪で、とても愉しみにされている。さあ、さっそく「鳥しき」開演である!
1.かしわ
毎回これをいただく度に、白ワインとあわせつつ「鳥の部位のなかで、オレはかしわが一番好きだ!」と独り言ちている自分を見出す。...といっても、串が進むほどに、この"かしわ"の一語が別の部位に切り替わって、オマージュを延々と反芻し続けることになるのだけれど(笑)
しかし、でも「鳥しき」のかしわは掛け値なくスゴい。何がスゴいかというと、その火入れ加減にある。ここしかない一点でぷっくりと膨らませた焼き上がりにいつもやられてしまうのだ。
2.白玉
今日はここで"うずら"だ。少し、半熟加減のこの白玉がわたしは大好きだ。
3.砂肝
これが憎いばかりの逸品だ。朴訥さを感じる部位で、初見、華やかさはないのだけれど、噛み締めるほどに口中に弥増す(いやます)旨みに、思わず瞳を閉じて味わってしまう。
4.サビ焼き
ここでササミ。これも「鳥しき」さんの前半の定番である。湿り気を帯びた上品な一串を少量のサビのアクセントでいただく。このソフトな味わいが素晴らしい。
5.アキレス腱
前のササミとは一転して、コラーゲンそのものといった部位。でも、コラーゲンといっても、実に洗練されていてキレイな味わいなのだ。とろとろのコラーゲンとはいえ、味調が実にキレイだ。これを味わっても、鳥という食材は実に素晴らしい食材だと思う。
6.とりかわ
これは、絶対に大根おろしと合わせるのが旨いと思う。たわわな脂を、大根おろしの冷たさが優しくなだめる。このマリアージュがなんとも素晴らしい。
7.せせり
せせり。頸皮だ。このよく動く脂ののった部位を一串に集めて閉じ込めるように串打ちされている。なのに、それをぶっきらぼうに塩でさらりと焼き上げる。...あふれる頸の脂と、このあっけらかんとした塩のさらりとした仕上げがなんとも憎い!
8.銀杏
銀杏の苦みでホッと一息。
9.食道
これも洗練されているけれど、存在感を主張してくる。よく動く部位だからだろうか。...でも、これも赤というより、白でスッと洗い流したい。
10.ししとう
仄かな苦みでほっと一息。
11.焼き豆腐
この焼き豆腐も癒しの一品だ。ごま油の香ばしさが素敵なアクセントになっている。
12.軟骨
ヤゲン。ここに纏わりついた肉がまた旨みを増幅させる。
13.肩
いわゆる手羽元である。この濃厚な部位を塩で焼き上げる。ここが白い焼き物のぎりぎりの頂点のように思う。...さぁここからは、強度のある、つまり赤の合う串たちの連綿だ!
14.血肝
ほら来た!これは絶対に赤で合わせたい。しかしでも、このレバのトロりとしたテクスチャと感情を内に秘めたような味わいは、どうだろう!このメランコリックな詩情の悩ましさをぜひ味わっていただきたい!
15.はつもと
これは強い。旨みが焼きによってそっくり内側に閉じ込められている。これも塩コショウの仕上げである。
16.ぼんじり
これがなかなかユニークなのだ。「鳥しき」のぼんじりは、まるで天ぷらのような串なのだ。これは他の串とは違った面白さがある。でも、面白さだけではなく、口中にあふれる旨みは尋常ではない。
17.背肝
このクリーミーさは罪である。凄いとしか言いようがない。
18.手羽先
このステーキのような手羽先は、やはり「鳥しき」のスペシャリテである。ほぐれ具合といい、味わいといい、脂の乗り具合といい日本一の手羽先の焼き鳥だと思う。
19.はつ
いつもながら、この弾力感が素晴らしい。これがないと「鳥しき」に来た気がしない。
20.親子丼
今日は、親子丼でいく。オーソドックスだけれど、やっぱり笑ってしまうぐらい旨い。とろっとした卵と鶏肉とご飯のマリアージュ。それをまた、木匙で勢いよく掻っ込むのがいい!その頬張り感が旨さを増幅させるのだ。嘘だと思ったら試していただきたい!
...「鳥しき」は今日も素晴らしかった。お連れさまも大変満足されていた。今日のお連れさまは、非常にワインの造詣が深い方で、わたしも日頃から尊敬しているのだけれど、次回はワインを見繕っていただくことになった。なんともラッキーだ♪
...たった1回限りの人生だ。その1回限りの人生で、この焼き鳥店の串を味わわないことは、人生論的に、笑って茶化せないほどに深く不幸な事態ではないかと帰りのタクシーの中で本気で考え込んでいる自分を見出す。...みんな!「鳥しき」に行こうよ!
2018/06/07 更新
2018/03 訪問
焼き鳥を頬張る悦び!...「鳥しき」、傑作だとか、感動的だとか美しいとか、そうした言葉すら意味を失いかねない串をなんと表現すればよいのだろう!
躍るような団扇の音の向こう側から、スっと饗されるひと串をおもむろに頬張ってみる。...途端に口中は豪奢な脂の潤味(うるおみ)に充たされ、その後、響き続ける炭の薫香と鶏の香りを、瞳を閉じて肺の細胞ひとつひとつを使って体内に取り入れていくことになる。これがいつも裏切られることなく「鳥しき」で繰り返される"儀式"である。
目黒の裏路地のあの店舗に腰かけた途端、この"儀式"が、ほぼすべての焼き鳥の串で繰り返されていくのだけど、しかしでも、今日は改めて、"背肝"の凄さに驚いた夜であった。背肝。...つまり腎臓。「鳥しき」さんでは、背肝は精巣を付けて饗していただける。これが、たわわな脂の中に、悩ましいまでの白子の息づかいがハッキリと聴きとれて何とも素晴らしいのだ!
2018年3月10日(土)。以下「鳥しき」さんでの素晴らしい晩餐について書き綴っていきたい。本日のお連れさまといつものように21:00入店。本日は池川さんの正面だ!まずは、グラスビールで喉を潤しているほどにいつもの逸品が付け台に饗される。
1.さび焼き
シルクのような優しい舌ざわりの中、さびが仄かな刺激を舌に行き渡らせる。...やはり「鳥しき」の最初はこれでないといけない。
2.せせり
今日は、さび焼きにせせりの串の合わせである。せせりから感じ取れる脂は上品そのもの。「鳥しき」の串の素晴らしさは、コースが進むにつれて脂のりがクレッシェンドのように高鳴っていくところにある。
本日は、ソアヴェ クラシコ スアヴィアで合わせていく。フレッシュでフルーティーな白が「鳥しき」の立ち上がりにはマッチしていると思う。
3.はつ
仄かな苦みと、なんといってもこの弾力感!天井からつるされたボクシングジムのパンチングボールみたいな力強い弾力感が小気味よい。
4.やげん
鶏というのは、なんと素晴らしい食材だろうと思う。部位ごとに本当に色々な表情を愉しませてくれる。軟骨はコリコリとした食感の中に何か透明感のようなものを感じる。そしてまた、そこに肉のまとわりつく感じが素晴らしい。
5.白玉
この鶉がやめられない!少し柔らかい黄身の焼き上がりが素晴らしい。
6.食道
この部位の合わせは、絶対に大根おろしだと思う。この強い良質な脂と大根おろしの合わせは絶対のお薦めである!
7.かしわ
定番。旨味・脂乗り・旨味の観点で、最もバランスのとれた鶏の部位ではないだろうか。...「鳥しき」でこれを味わわない手はない!
8.砂肝
ざらついたテクスチャ。そして、味の華やかさという観点ではどちらかというと不愛想な印象を受けるのだけれど、噛むほどに個性を伝えてくる逸品だ。この砂肝がない「鳥しき」など想像もできない。
9.芽キャベツ
春を感じさせる一品である。ああ、「鳥しき」に春がやって来たなぁと実感する。
10.ぼんじり
このたわわな脂感。まるで揚げたような感触の部位である。
11.血肝
これが毎回悩ましい...このひと串だけは、乱暴に頬張ってはいけない。...一口一口そっと、...ほんとうにそっと、優しく包み込むように、串にささっている連なりをひとつずつ外すようにいただこう!...赤が滅法あう!
12.つくね
良質な脂の横行!まず、焼き台でつくねが焼き始められた途端、そのことがはっきりと感じ取れる。この焔立つつくねの香りに圧倒される。
13.心臓とレバをつなぐ血管(ハツモト)
渋い逸品である。旨味と滋味と感情を内に秘めたような佇まいに吐息が漏れる。
14.銀杏
この小ぶりの苦みにほっと胸をなでおろす。
15.焼き豆腐
これが、意外と「鳥しき」さんでの毎回の愉しみだったりする。表面はカリっと焼き上げられていて、中が熱々の焼き豆腐。実に香ばしい。
16.背肝
本当に旨い。肝の要素もありつつ、脂がたわわな感じもありつつ。...物凄い!この途方もない余韻は、やはり赤ワインで洗い流すのが正しいやり方に違いない!
17.ソリレス
この腿の付け根の部は悶絶ものである。このあたりからが「鳥しき」さんの最大の盛り上がりである。このあたりからは、是非、赤ワインをお薦めする。
18.茄子
これもやや早めの時節ものだ。
19.手羽先
まるでステーキのようなアピアランスだ。そして何より驚くのは、その食べやすさだ。人差し指で骨の先端を抑えて、もう一方の箸でほろほろと肉がはがれていく。良く動く部位なので、鶏の旨味がのりにのっている!
20.膝回り
鳥の旨味を味わわせるべく、塩コショウのみの味付けである。これをぜひ目一杯頬張っていただきたい。今まで食してきた焼き鳥は何だったのか本当に考え込んでしまうほどの逸品である。
21.ちょうちん
お決まりの卵管とレバの串である。レバの苦みと卵のトロッと感の相性が素晴らしい。
22.そぼろ丼
今日はそぼろ丼にしてみる。親子丼も大好きだけれど、このそぼろ丼がまた素晴らしい。わたしは毎回お土産はそぼろ弁当にしてもらっているくらいである。
今回も本当に素晴らしかった。一連のコースが終わるころは、電車はとうの昔に終わっているくらいの時間なのだけれど、それでも何回でも通いつめたいお店である!
血肝
さび焼き
ちょうちん
かしわ
膝回り
食道
そぼろ丼
背肝
鳥しき
さび焼きとせせり
せせり
はつ
やげん
白玉
食道
かしわ
砂肝
芽キャベツ
ぼんじり
血肝
つくね
心臓とレバをつなぐ血管(ハツモト)
銀杏
焼き豆腐
背肝
ソリレス
茄子
手羽先
膝回り
ちょうちん
そぼろ丼
ソアヴェ クラシコ スアヴィア
2018/03/21 更新
2018/01 訪問
目黒路地裏の門戸を開けた瞬間のあの胸のトキメキ!...「鳥しき」、この店の前に立つと、ただ芸もなく「鳥しき」、「鳥しき」とつぶやき続けている自分を見出す
2018年、年明け1発目の食べ歩きが「鳥しき」。この素晴らしいめぐりあわせにどう対処すればよいか。まずは17年のベスト10のことなど涼しく忘れ去って、さっさと18年のベスト1を決めてしまおう!言うまでもなく「鳥しき」以外にあろうはずがない!...「鳥しき」を訪問すると、いつもそんなふうに、無責任な放言をしてしまいたいくらいの凄さに打ちのめされる。その凄さは、食材の旨味と直に向き合う息詰まるような純粋さとでもいおうか...ひと串ひと串が食べ手の肉体と魂に直接迫ってくる稀有な薫香と味わいで構成されているところにこそある。
たったひと串でも、お客さんが旨いと感じるものを提供できるなら、焔立つ熾火を鷲掴みしても構わないくらいの池川さんの気迫から放たれる串の連なりが、わたしたちの心を深く揺さぶり続ける。それこそが「鳥しき」体験なのだ。ここで饗されるひと串を前にしたら、オツに澄まして程よく体裁を整えたフレンチやらイタリアンの一皿など、自分の猥雑さに赤面して早々に退散するべきだと本気で思ってしまう。
2018年1月6日(土)、またまたやられてしまった「鳥しき」体験を以下できるだけ詳細に書き綴っていきたい。...着座して、まずは、いつものようにシャサーニュ・モンラッシェをいただく。この熟した果実感が焼き鳥と非常に相性がよい。今日も池川さんのお任せでお願いする。
1.さび焼き
これが、通例の「鳥しき」の始まりだけれど、これから始まる迫力のある「鳥しき」の串の連なりを前にして、いつも実に繊細で優しいこの立ち上がりにホッと胸をなでおろす。クレッシェンドのように静かに響くこのささくれのない鳥のササミの純な旨味に心震える。(しかしこの逸品もやはり、旨味は凄い)
2.かしわ
焼き上がりの頂点で饗される肉汁が目いっぱいに閉じ込められた逸品。一口いただいて、口の中に広がる鳥の良質な肉汁に思わず目頭が熱くなる。
3.砂肝
荒めの塩が素晴らしいアクセントになっている。塩味とシャキシャキとした食感から静かに広がる鳥の滋味が何とも砂肝らしい。
4.白玉
とろりとしたこの「鳥しき」の半熟白玉がわたしは大好きだ!
5.食道
やはり、鳥の部位で旨いのはよく動く部分である。食道。鳥の旨味が凝縮している。それのみならず、身が締まっていて歯ごたえがよく、適度な脂身をまとっているのが素晴らしい。
6.おくら
オリーブ油の香りがおくらの存在感を際立たせている。焼き鳥の連なりの中でホッとする一品だ。
7.つくね
団子同士の詰まり具合、膨らみ具合がここしかないといった一点でとらえられている。この卓越した運動神経というか、凄い技術にいつも吐息が漏れる。
8.せせり
首の肉である。ここもよく運動する部位で肉質がしっかりとしている。弾力感から溢れるジューシーな肉の旨味に陶然とする。
9.ぎんなん
この甘苦いぎんなん臭が、快適な箸休めになる。
10.やげん
コリコリとした軟骨の食感が素晴らしい。粘着性のある肉の味わいと出汁醤油の風味がよくあっている。
11.血肝
艶やかな焼き上がりにいつもながら思わず息を呑む。これを思いっきり頬張る悦び!それはまさに、感情を内に秘めた鳥の最も貴重な部位を丸呑みにするような贅沢感そのものなのだ!
12.恥骨
骨周りの肉の旨味が軟骨とともに閉じ込められている。よく通った肉の熱で軟骨を一緒にいただく。ドライな胡椒の仕上げがこのひと串によく合っている。
13.心臓とレバをつなぐ血管(ハツモト)
さっくりとした歯切れの良さが小気味よい。
14.徳島の原木しいたけ
これも毎回その香りの高さに打ちのめされてしまう。しいたけの旨味が流れてしまっていないところが素晴らしい。
15.はつ
この弾力と滋味がやめられない。いかにも健康な鳥の脈動が伝わってくるような逸品である。
16.ぼんじり
鶏の尻尾にあたる部分の肉で、わずかしか取れない希少部位だ。筋肉が発達していて旨味が強く、脂も申し分なく載ってる。
17.えりんぎ
えりんぎは今が時期だ。それにしてもこの香り立つみずみずしさはどうだろう!問答無用に旨い。
18.手羽先
「鳥しき」さんの定番である。しかしでもこのステーキのような迫力と存在感には毎回驚かされる。「鳥しき」の串はどれも素晴らしいけれど、これはその頂点に君臨しているように思う。骨に肉が付着した格好で饗されるのだけれど、驚くほどに身離れがよい。肉を骨から剥がしたときに湧き上る湯気に毎回心打たれてしまう。
19.ひざまわり
と、手羽先をほめた次の瞬間にこの「ひざまわり」の文字の連なりが視界に入ると、「鳥しき」さんのスペシャリテはこっちの方かと心が揺らぐ。それほどにこの一品も素晴らしい。ゴマ油の風味の中で、贅沢なまでのたわわな鳥肉の旨味を味わう逸品で、もしこれがなかったら、きっと拍子抜けしてしまうだろうと思う。
20.ちょうちん
マゼラン ルージュと一緒にやる「ちょうちん」は格別だ。「鳥しき」のちょうちんは、肉の部分にレバが一緒に仕込んである。これが渋みというか、実によいアクセントになっているのだ。
21.じゃがバター
胡椒をふってシンプルに焼き上げられている。主役級の一品ではないけれど、その簡素感は実に好感が持てる。
22.焼きおにぎり
今日もまた、事前に言って焼きおにぎりをお願いしておく。これには焼き上げに数時間を要する。中には何の具材も入っていない。白米を握っただけの実にシンプルな逸品なのだけけれど、わたしはこれが大好きだ!必ず最初に言って焼いてもらうようにしている。今日はこれにトロっと卵黄を合わせていただく。素晴らしいマリアージュに溜息がでる!次回もこれで行こう!
23.腿のつけね(ソリレス)
これも迫力がある部位で、大好きな逸品だ。「手羽先」くらいからの「鳥しき」さんの怒涛のラインナップは本当に凄い!言葉を失い、ひたすら胸が熱くなる迫力を秘めている。腿の付け根の部位だ。運動する原動力を感じさせる迫力ある味わいに圧倒される。
24.親子丼
今日は、しめは親子丼でいく。やっぱり「鳥しき」の親子丼は最高だ!
新年初の「鳥しき」が一通りとなる。2018年の幕開けが「鳥しき」であったことは間違いなかった。改めてもうほかの焼き鳥屋さんにはいけないと確信する結果となる1月6日の晩餐であった。次は、3月に訪問予定である。この文章を認めながらもう次の訪問が待ち遠しくてしかたない!
トロっと卵黄を合わせた焼きおにぎり
ちょうちん
血肝
さび焼き
つくね
心臓とレバをつなぐ血管(ハツモト)
手羽先
ひざまわり
シャサーニュ・モンラッシェ
さび焼き
かしわ
砂肝
白玉
食道
おくら
つくね
せせり
ぎんなん
やげん
血肝
マゼラン ルージュ
恥骨
心臓とレバをつなぐ血管(ハツモト)
徳島の原木しいたけ
はつ
ぼんじり
えりんぎ
手羽先
ひざまわり
ちょうちん
じゃがバター
焼きおにぎり
トロっと卵黄を合わせた焼きおにぎり
トロっと卵黄を合わせた焼きおにぎり
腿のつけね(ソリレス)
親子丼
2018/03/10 更新
2017/12 訪問
B級グルメ礼讃!...「鳥しき」、2017年酉年の今年は、まさに「鳥しき」のものになるだろう
2017年11月3日(金)、ほぼ2か月に1回の巡礼となっている「鳥しき」再訪。本日のランナップは、以下の通り。
1.さび焼き
2.せせり
3.しらたま
4.砂肝
5.鳥皮
6.かしわ
7.はつ
8.ぎんなん
9.つくね
10.食道
11.おくら
12.軟骨
13.ちぎも
14.厚揚げ
15.はつもと
16.しいたけ
17.手羽先
18.ひざまわり
19.ソレリス
20.ちょうちん
21.親子丼
いつものように今日も素晴らしい出来栄えに溜息をつくほかなかったのだけれど、今年1年を振り返ってみると、ひょっとすると今年はわたしにとってB級グルメに打ちのめされた1年だったのかもしれない...とふと思う。「鳥しき」では毎回毎回、ふわりと漂う炭の薫香と池川さんの焼きの技術にしたたかに打ちのめされ続けた。...そして、B級という観点でいうと、もう一店...決して語ることのできない「S家の食卓」との素晴らしい出会いがあった!B級グルメ礼讃!
2017/12/15 更新
2017/11 訪問
もうほかの焼き鳥店には行けなくなる!...「鳥しき」、ここは何度お伺いしても、深く感動的である!
お料理を食べに行って、心底から心が震えるような深い感動というものを、年に何回くらい経験できるものだろうか...おそらく両手の指の本数にも満たないくらいの数ではなかろうかと思う。それはいわゆる"名店"というレベルの話ではない。"名店"などというものは、ミシュランガイドあたりをパラパラとめくればいくらも転がっていて、今更誰も驚くに値しない。
そうではなく、今問題にしたいのは、いただいた瞬間、ちょっとしばらくわたしに話しかけるのをやめてくれと、心の中で無言の訴えを訴えて、甘美な滞空時間を瞼の裏でゆっくり愉しんだ上で、深い吐息とともに静かにそっとその辺りに着地するような、そんな体験を味わわせてくれる店舗のことである。鳥しきはわたしにとって、まさにその体感を露骨に突き付けてくる稀少なお店のひとつである。
2017年9月30日(土)。7度目の鳥しきも滅法素晴らしかった!まず薫香。紀州備長炭の近火の強火で仕上げられた鳥肉の薫香に毎回打ちのめされる。おそらく、この素晴らしさは、完全に池川さんの焼きの仕事の素晴らしさに支えられているのだと思う。こういう仕事を目の当たりにしてしまうと、高級食材とは何ぞや、という疑問が思わず湧いてくる。
そこまで超高級食材を使っていなくても、素晴らしく美味しいお店というものはある。そういうお店は、シェフの、あるいはご主人の技術に支えられているわけで、わたしはそういうタイプのお店は大好きなのだけれど、鳥しきはわたしにとって、そういうお店のダントツ1位だ。今後もここは絶対に通い続けたい(いや、通い続ける)焼鳥屋さんである!
2017/11/13 更新
2017/08 訪問
"贅沢なB級グルメ"を堪能しよう!...「鳥しき」、こちらはもはや2か月に1回は訪問しないと気が済まない!
たぶん焼き鳥というと、世間一般的には"B級グルメ"に分類されるお料理だと思う。...でも、そもそも"B級グルメ"とはどんなお料理なのだろう?
たとえば、映画の世界にも"B級グルメ"と似たような響きの表現があって、"B級映画"などと呼ばれていたりする。この言葉も多くの誤解に支えられている感があるのだけれど、実は、映画でいうところのB級とは、A級が1流の品質を表現する言葉であるのに対して決して2流を意味するものではない。
それは、端的に映画製作の予算の規模を意味していて、品質を表現する言葉ではないのだ。だから、A級のバジェットを投じたにもかかわらず、映画作家の才能の乏しさゆえに、品質が低い作品が生産されてしまうという残念な事態が発生してしまうことはよくあることだし、またその逆に、B級レベルの予算を投じて作成された映画群の中に、ジョン・フォードの『幌馬車』のような珠玉の名画が紛れ込んでいるという皮肉な事態が、ごく自然に起こってしまうのが、映画の世界なのだ。
このB級を巡るちょっとばかり皮肉な現実が、料理の世界でもほぼ同様に起こっているというのがわたしの見解だ。そしてわたしは、その"贅沢なB級グルメ"を饗する最高峰が「鳥しき」さんだと思う。高額な超高級食材を仕入れに拘泥するのではなく、あくまでも調理人の腕で食べ手を魅了してやまないのが「鳥しき」さんの素晴らしさだと思う。
グルメは、「鳥しき」さんを通して、旬真っ盛りの市場に出回らない金鮎の素晴らしさとか、最高級生ハムの息をのむような滑らかさなどとともに、焼き鳥の最上の旨味を発見したのだと思う。2017年7月16日(日)、最高に"贅沢なB級グルメ"をいただいたお食事体験を以下詳細に書き綴っていきたい。
本日は21:00ぴったりにスマホに「鳥しき」さんからのご案内のメッセージが入る。お連れ様と連れ立って、さっそく店内に入る。池川さんから「お帰んなさいまし」と、ご挨拶をいただく。麦酒で喉を潤すほどに、さっそくコースがスタートする。
1.さび焼き
このふんわりとした柔らかさに毎回やられてしまう。優しい味わい。火入れ加減も抜群である。
2.せせり
弾力が素晴らしい。首の部分のお肉である。よく運動する部分であるため肉質はしっかり。
3.軟骨
肉の風味と軟骨の小気味よい触感が癖になる。
4.かしわ
タレに映える香ばしい焼き目が素晴らしい。このジューシーさと焼き目から漂う薫香を前にしたら、誰に向かってかわからないけれど、思わずありがとうとひとりごちるほかない。
5.鳥かわ
ゼラチン質の食感と表面のカリカリの焦げ加減が絶妙の相性である。
6.砂ぎも
これは、寡黙なひと串だ。あくまでも弾力で食べさせるその静かな佇まいが、一連の串の中で特異な存在感を示している。
7.食道
たわわな肉を縫うように串で打ち固めた感じがよい。あふれる脂に心を奪われる。
8.ズッキーニ
「鳥しき」さんでは初めてだ。でも、夏らしくてこういうのもよいものだ。
9.しらたま
今回のは中はしっかり焼きだった。これはこれでいいけれど、実は個人的には半熟が好きだったりする(笑)
10.ぎんなん
ぎんなんでもうひと呼吸。薄皮に包まれたぎんなん特有の弾力の向こう側に、塩気と仄かなぎんなんの苦味の世界が広がる。
11.血肝
この血肝のぷっくらとした膨らみがなまめかしい。口中で生命が溢れるように広がる滋味にうっとりしてしまう。
12.はつ
弾力と柔らかさが身上の一品。ざらざらとした粗目の塩が味わいを引き締める。
13.とうもろこし
これも夏らしい!焼きトウモロコシだ!田舎の夏休みを彷彿とさせるのどかで質朴な味わいだ。
14.ひざわまり
これは、「鳥しき」さんでは絶対にいただきたい逸品だ。よく運動して旨味が詰まった部位だ。鶏肉がいかに素晴らしいか、誇らしげに謳歌しているような逸品である。
15.厚揚げ
いつもの厚揚げがまたうれしい。表面のカリカリに焼き上げた香ばしい風味と中から現れる豆腐の優しい味わいが素晴らしいのだ。
16.はつもと
塩コショウでさらっと。強火で旨味が閉じ込められている。
17.ソリレス(腿の根元)
ひざまわりと並んで2台巨頭だと思う。ぶりんと大きな肉塊で強靭な鶏肉の旨味を感じる部位だ!
18.しいたけ
ここで、薫り高きしいたけの串をいただく。それにしてもこの炭としいたけの香りのマリアージュは罪というほかない。
19.焼きおにぎり
数時間かけて低温で焼き上げる「鳥しき」さんのこの焼きおにぎりが素晴らしい!中には、な~んにも入っていないのに溜息がでるほどうまいのだ。
20.手羽先
これはやっぱりいただいておかないといけない。手羽中。でもしかし、骨が飛び出した、この猛々しい獰猛なまでの佇まいにはいつも息を呑んでしまう。しかしでも、笑っちゃうくらいに身離れがよく食べやすいのだ。
21.ちょうちん
レバをいっしょに添えたちょうちん。いつもながら、この口中でトロける卵黄の悩ましさにやられてしまう。
今回も素晴らしかった!次の訪問は9月下旬。こちらはもはや2か月に1回は訪問しないと気が済まない、わたしの病みつきの店だ!
ちょうちん
さび焼き
手羽先
ひざわまり
鳥しき
さび焼き
せせり
軟骨
かしわ
鳥かわ
砂ぎも
食道
ズッキーニ
しらたま
ぎんなん
血肝
はつ
とうもろこし
ひざわまり
厚揚げ
はつもと
ソリレス(腿の根元)
しいたけ
焼きおにぎりのお供のスープ
焼きおにぎり
手羽先
ちょうちん
鳥しき
2017/08/03 更新
2017/05 訪問
"傑作"という言葉さえ色褪せて見える...「鳥しき」、ただ"旨い"とつぶやく他にどんな形容詞が必要だというのだろうか...
「鳥しき」さんの開始はいつも21:00とやや遅めの時間帯なのだけれど、入店5分もしないうちに食べ終えるのが惜しくて惜しくてならず、珠玉の串たちの怒涛の連打にあっという間に4時間という時間が経過し、深い溜息とともにコースの終わりを迎え、おみやを受け取ったのが午前1時。その日の風向きや陽光の加減で「すぎた」や「ペレグリーノ」になったりすることもあるけれど、このときばかりは、何のためらいもなく池川義輝こそが日本最高の料理人だとつぶやかずにはいられない。
2017年5月13日(土)、「鳥しき」。...とくに今回、「鳥しき」さんの"焼きおにぎり"が途轍もなく素晴らしかった!低温で1時間じっくりと焼き上げるこの一品は、とりわけ中に具が忍ばせてあるわけでもないごくシンプルな焼きおにぎりなのだけれど、カリカリにコーティングされた表面の中から現れる、蒸らし上げられた白米の旨味には落涙するくらいの旨さがあった!今回もとにかく素晴らしかった「鳥しき」さんでのお食事会について以下できるだけ詳細に書き綴ってきたい。
いつものように席について、わたしはグラスビールをお願いする。お連れさまはアルコールをいただかない方なので、お茶をオーダーして、喉を潤すほどに程なくコースがスタートする。
1.さびやき
定番の一品である。やはりよい。柔らかさが身上の一品である。優しく、仄かなサビのピリリ感が素敵である。鳥の生感を堪能できる逸品である。
2.せせり
首の部位である。頬張った途端に溢れる鶏の脂の良質さに感動する。
3.皮
表面はカリカリ。表面の裏側にゼラチン質のプルンとした食感を感じ取れるのが、この部位の素晴らしさだと思う。
4.ハツ
このブリンブリンの食感が何ともクセになる。表面はパリっと焼き上げられていて、弾力のある噛みごたえの向こう側に、奥深く滋味深い心臓の鼓動のを感じさせる血潮の味わいが広がる。
5.食道
あまい。「鳥しき」さんのタレの甘味だ。これがいつも秀逸だと思う。これは存在感のある部位である。しっかりと咀嚼してタレとのマリアージュを愉しむ。
6.かしわ
言わずと知れた4番バッター。鶏の腿と胸の串である。鶏の胸の恬淡な脂と腿の濃厚な脂を両方堪能する。
7.白玉
半熟でトロトロ。ここで、ちょっと気がついたけれど、「鳥しき」さんでは、焼き鳥は角串(かくぐし)で、野菜系は丸串(まるぐし)で調理される。
8.徳島産の椎茸
ジューシーである。そして香りが素晴らしい。焼き台をずっとみていたけれど、椎茸はあまりひっくり返さず優しく仕上げているようだ。
9.レバ
これがわたしは大好きだ!鶏の生命を丸呑みにしたような食感、味わいにいつも強かにやられてしまうのだ。しかも、「鳥しき」さんレバに対するエッジの立った包丁の入れ具合が何とも好きなのだ!
10.ヤゲン(軟骨)
打って変わって、コリコリの食感から鶏の旨みを堪能させる部位。この変化がまた好きなんだな。
11.銀杏
これも欠かせない一品。ムッチリとした食感から甘苦いあの銀杏特有の風味がえも言われぬ存在感を漂わす。
12.心臓とレバとはつもと
焼き台に載せた、はつもとから溢れる脂でコーティングされているのがよくわかる。これはタレに漬けず、軽く塩を振っているのみだ。
13.手羽先の先の皮
香ばしい。炭火ならではの肉の脂身とコラーゲンの香ばしいマリアージュ。コラーゲンがものすごい!
14.厚揚げ
これが、「鳥しき」さんでのお愉しみ♪焼き鳥の連打で打ちのめされた口の中をさっぱりと落ち着かせる。
15.つくね
これまた迫力のある逸品である。鶏の脂の旨味がめいっぱい閉じ込められている!
16.合鴨
これはまたやはり伊達鶏とは違った味わいのある一品である。伊達鶏とは違った存在感のあるしっかりとした肉の旨味が広がる!これもタレではなく、塩胡椒での味付けである。
17.ひざ周り
「鳥しき」さんの来たときのお目当てのひとつ!膝のよく使う部位だから、鶏の旨味が詰まっている!鶏の旨味を食べたいならココ!という部位だ。ただ、「鳥しき」さん以外であまりだされている印象がないけれど...
18.ソリレス(腿の根元)
"強靭"という印象の部位だ。いろいろな旨味が華やぐというより、鶏腿肉の旨味が直線的に伝わって来るという感じだ。
19.手羽先
これも「鳥しき」さんの来たときのお目当てだ!肉、皮、骨が一体になったダイナミックな一串で、骨についた肉の旨味から、肉自体の旨みから全て堪能できる一品だ。おそらくそれも焼きの技術によるのだと思うけれど、身離れも抜群でその旨さを堪能する。
20.焼きおにぎり 2個
これがすごかった。焼き方は、弱火でじっくり。低温で1時間ほどだろうか。最初に焼き台に載せたときよりかなりちっちゃくなる。おにぎりの中にはなにも入っていない実にシンプルな焼きおにぎりだ。表面がカリカリで中のモチモチ感がお米とは思えないほどだ。池川さんいわく、炭でしかできない仕上がりだという。お米は北海道産のものだそうだ。表面だけ焼き固めて中を蒸らし上げたような素晴らしい逸品だった。次回も間違いなくお願いすることになると思う!
焼きおにぎりで、一通りとなる。本日も素晴らしいの一言につきた。時計を見ると午前1時を回っているが、そんなこともはやどうでもよろしい。おみやはまた、そぼろ弁当(これが滅法旨いのだ!)。次回の予約を7月に決めて満足感たっぷりでお店を後にする。...あ、そうそう、帰り際池川さんから、池川さんのお師匠さんの猪俣さんが銀座の「炭割烹 北野」にいらっしゃるという話を聞いた。こんどぜひお伺いしてみよう。
レバ
焼きおにぎり 2個
心臓とレバとはつもと
さびやき
手羽先
厚揚げ
おみやのそぼろ弁当
おみやのそぼろ弁当
さびやき
せせり
皮
ハツ
食道
かしわ
白玉
徳島産の椎茸
レバ
ヤゲン(軟骨)
銀杏
心臓とレバとはつもと
手羽先の先の皮
厚揚げ
つくね
合鴨
ひざ周り
ソリレス(腿の根元)
手羽先
焼きおにぎり 2個
2017/05/21 更新
2017/03 訪問
薫香と鶏の凝縮した旨みにまたまたやられてしまった!...「鳥しき (とりしき)」、ここは誰がなんと言おうとやっぱり頭ひとつぬけた焼き鳥屋さんだ!
2017年3月16日(木)、21:00。机の上におかれたGalaxy S7 edgeが何の前触れもなく小刻みに蠢動(しゅんどう)する。高解像度HDディスプレイが瞬時点灯したかと思うと、なにやら見たことのある電話番号が、いささかよそよそしい気配を漂わせながら画面に浮き上がっている。「鳥しき (とりしき)」さんからの"入店可"のご案内である。
さっそく今日のお連れさまと1本路地を隔てたお店に向かう。店の引戸を開け、入店すると店内は一抹の煙たさもない。店内は焼き鳥屋さんとは思えぬ心地よい清潔感に満たされている。そして着座して気がついたのだけれど、店内に仄かなお香の香りが漂っているのが感じられる...この店内の空気感を肺の細胞1つ1つを使って吸い込めば、緊張感とはおよそ無縁の滑らかな感覚へと誘い出されて、ごくすんなりと武装解除してしまっている自分を見出す...
今日も、ワインと池川さんの焼き鳥を思う存分愉しもう!
1.さびやき
中が半生の状態で饗される。見た目の美しさといったらない...そして一口いただけけばその柔らかさに頬が緩む。ほどよく振られた塩と、おろしわさびが優しくささみを包み込む...
2.白玉
「鳥しき」さんの半熟加減の白玉がなんとも好きだ。小さいけれど、生命力を感じさせる卵黄の濃さがクセになる。
3.砂肝
強めの塩が降りかかった砂肝。塩のザラザラとした舌触りと、弾力のある砂肝の噛みごたえがなんとも心地よい。砂肝というと硬いイメージがあるけれど、「鳥しき」さんの砂肝は、決してぼそぼそしておらず、ひと噛みごとに口中に広がる肉汁に、雄々しいまでの身肉の存在感を感じる。
4.つくね
ミキサーした腿、胸肉に、存在感を少し残すくらいにみじん切りにした軟骨をあわせてある。じっくり肉汁を閉じ込めぷっくらと仕上げた丹念な仕事に感服する。最後にさっとひと潜りさせたタレの深みがつくねの旨みと絶妙なマリアージュを演じ立てる。「香ばしい」という言葉はこの逸品のために存在しているかと思うほどだ。
「鳥しき」さんの焼き鳥のタレは絶品だ!濃口醤油とみりんの味わいにザラメの甘味の強い主張があるタレである。しかし、それだけではない。えも言われぬ深みのようなものがある。焼き場の右手にタレが入った年季の入った壺があるのだけれど、池川さんはそこに何度も串をくぐらせて焼き物を仕上げていく。...おそらくその都度、焼いた鳥の汁や風味が調合されてタレに独特の深みを付与しているに違いない。
5.かしわ
これもタレとのマリアージュが抜群の逸品である。このここしかないといった一点で焼き上げられた腿肉と胸肉の弾力と旨みは脱帽ものである。
6.レバー(血肝)
注意しないと、とろりと串から外れてしまうくらいにレアに焼きあがっている。ひとくち口に頬張れば、肝の滋味がずしりとメランコリックに広がる。...絶品だ。
7.静岡県産芽キャベツ
今回初めていただく。季節の終わりだそうである。ホクホクとして、まるでとうもろこしのような香ばしさがある。
8.くびかわ(波)
肉の凝縮感を感じたかと思うと、その後、良質な脂が口中に横溢する。そのたおやかなリズムを刻む懐の深い旨みに圧倒される。下品なしつこさとは全く無縁の脂である。灯台下暗し。...今回、このくびかわの旨さをあらためて発見したような気がする。
9.せせり
首の部位である。肉質はしっかりしている。これを胡椒で仕上げていただく。しっかりと肉汁が閉じ込められ、ジューシーな逸品である。
ここでもう一回つくねのお目見えだ。(池川さん間違っちゃったかも...笑)
10.はつ
塩を振って、焼き台で一気呵成に焼き上げられた体である。ぶりんぶりんの食感が小気味よい。ボクシングの練習で使う、ジムの天井から吊るされたスピードバックを思わせる弾力と抵抗感だ。遠くに心臓を流れる血潮の脈動が感じ取れるかのようだ。
11.ひざまわり
これは何度食べても素晴らしい!こまめに何度もひっくり返しながら丹念に焼き上げられている。最後に表面に油を塗布して、塩をふりかけて饗される。よく動く部位であるため鶏肉の旨みが凝縮している。
12.厚揚げ
「鳥しき」さんでいただいて、毎回ホッとする。これがなければちょっと寂しい気分になるだろう(笑)
13.ぎんなん
薄皮に包まれたぎんなん特有の弾力の向こう側に、塩気と仄かなぎんなんの苦味の世界が広がる。うまい。
14.手羽元(かた)
手羽中でもなく、手羽先でもなく、今回は手羽元。肩の部位だ。よく動く部位で、これも濃厚な味わいだ。強火で一気呵成に焼き上げられているのがわかる。今回はタレをつけて饗していただく。
15.腿のつけね(ソリレス)
今回初めていただく。これがなんとも素晴らしかった。腿はパンチの強い濃厚な味わいのイメージがあるけれど、この腿のつけねはそれをさらにさらに濃厚にしたイメージだ。そのパンチ力に圧倒される。これも油をつけて最後は胡椒で味付けをしてある。
16.ちょうちん
お馴染みのちょうちんである。タレにくぐらせながら丁寧に仕上げた逸品だ。濃厚な卵胞とレバーの相性が素晴らしい。ここで、くびかわと芽キャベツをおかわりする。
17.そぼろ丼
今回初めていただく。そぼろ丼をいただくのはこれが初めてだけれど、「鳥しき」さんのそぼろがわたしは大好きだ。鶏ひき肉をタレで甘辛く汁がなくなるまで煎って作ったそぼろだ。コリコリと細かく響く軟骨の食感も素晴らしい。お弁当はそぼろのみの折詰にしていただく。
「鳥しき」さん、やはり今回も素晴らしかった。味もさることながら、池川義輝さんのお客さま対応が素晴らしい。これだけの人気店・有名店なのに、天狗になることなく1人1人のお客さんに対して実に丁寧に応対していらっしゃる。つい最近、とある予約至難の超有名店で、狐に包まれたのかと思ったくらい嫌な思いをした直後であったため(笑)、彼の素晴らしさが際立った夜であった。池川さん、ありがとう!
手羽元
腿のつけね(ソリレス)
ひざまわり
さびやき
そぼろ丼
つくね
レバー(血肝)
そぼろのみの折詰(おみや)
鳥しきさんの耐火レンガ焼き鳥台
さびやき
白玉
砂肝
つくね
かしわ
レバー(血肝)
静岡県産芽キャベツ
くびかわ(波)
せせり
つくね
はつ
ひざまわり
厚揚げ
ぎんなん
手羽元
腿のつけね(ソリレス)
ちょうちん
くびかわ
そぼろ丼
鳥しきさんの耐火レンガ焼き鳥台
鳥しきさん
そぼろのみの折詰(おみや)
鳥しきのおみや
2017/03/21 更新
2017/01 訪問
今でもしっかりとあの旨味を思い出すことができる!...「鳥しき」、ここの焼き鳥はやはり凄い!その肉厚でジューシーな存在感にまたまた打ちのめされる!
2017年01月20日(金)、本日のお連れさまと「鳥しき」さんの店前で落ち合って近くのバーで待機する。一本筋の違う路地に店を構える「BAR SEVEN」という小さなバーだけれど、ここはなかなかに居心地がよい。...20:50。そろそろお店からの電話が入ってくるころである。2杯目のソルティ・ドックを注文して待ち構えていると、21:00ピッタリに女将さんから連絡が入る。
金曜日の目黒の路地裏は三々五々の酔客で賑やかだ。路地をぐるりと回り、寒風をかいくぐるように「鳥しき」さんの暖簾をくぐる。今日は、焼き鳥にワインを合わせていくことに決める。ボトルで白を注文すると、ほどなく焼き物がスタートする。
1.さびやき
ささみの上に山葵がちょこんと乗ったお馴染みのメニュー。ささみは、言わずと知れた胸に近く脂の少ないあっさりとしたお肉。一口口に含むが、非常に肉質が柔らかい。やはりこの焼物は、濃厚な焼きものに行く前にいただくのが正しいやり方だろう。山葵との相性も申し分ない。
2.かしわ
鶏もも正肉。焼き鳥の代表格だ。噛みしめるうち、芳醇な肉汁をからませつつ鶏の重厚ともいうべき味わいが口の中に広がる。「鳥しき」さんのこのタレがたまらなく旨い!香ばしく程よい甘みがあって、最高の焼き鳥ダレだ!
3.砂肝
これも焼き鳥店お馴染みの一品である。砂肝は、鶏の胃の消化器の一部分。なんといっても弾力の強いゴリッとした食感が特徴だ。肉汁が少なく臭みもないので、鶏肉本来の素朴な味を楽しむことができる。まぶされた塩味加減も素晴らしい。やはりこれはタレでなく、塩でいただかなければいけない一品である。
4.食道
首の側面部分の食道とリンパに相当する部位。表面は脂が多く鶏の強い旨味が愉しめると同時に、歯ごたえはコリコリとしていて小気味よい。
5.うずらの卵
「鳥しき」さんのうずらの卵は、半熟に仕上げられていて、口の中でトロトロと溶ける。
6.やげん(軟骨)
やげんとは、鶏の胸軟骨である。程よい抵抗感のある噛みごたえが何とも食していて心地よい。
7.つくね
鶏の挽肉を丸めて固めた串物。「鳥しき」さんではつくねは、胸肉の擦り身に細かく砕いた軟骨を混ぜ込んで、つなぎに卵をつかって練り上げる。小気味よいコリコリとした食感の向こう側に鶏の旨味をしっかりと感じることができる。
8.せせり
鶏の首の肉。この部位もよく動く部分なので、身がぎゅっと締まっていて歯ごたえもあり、凝縮された肉の旨味を存分に堪能できる。
9.ぎんなん
ここで、ぎんなんでひと呼吸。塩気をまとった仄かなぎんなんの苦味が心地よい。
10.ししとう
さらに野菜の串が続く。今度は、タレをまとったほろ苦いししとうの香りが鼻先に漂う。
11.レバ
鶏の肝臓部。濃厚なねっとり感とトロリとした食感が堪らない。凝縮したコクとなめらかな舌触りを思う存分堪能する。新鮮で上質なレバで、言うまでもなく一片の臭みもなく、口の中で旨みが膨らむような深い味わいを感じる。
12.合鴨
一口いただくが、合鴨の身肉(みしし)の野趣あふれる旨みに加え、香り高い合鴨の皮の味わいがなんとも素晴らしい。また、甘いタレの味わいが合っている。
13.厚揚げ
これも「鳥しき」さんおなじみの一品である。素揚げの表面は香ばしく中は熱々の仕上がりである。
14.かた
手羽より脂は少ないけれど、淡白とはほど遠い。肉汁たっぷりの旨み溢れる上品な味わいが、なんといってもかた肉の最大の魅力だろう。皮の味、肉の旨味も堪能できる贅沢な部位である。
15.しいたけ
表面はほんのり焦げ目がついて、中はやけどするくらいに熱々の仕上がりになっている。しいたけの高い香りが何とも素晴らしい。
16.手羽先
やはり手羽先は焼き鳥の王様である。鶏の芳醇な身肉(みしし)の味わいと、上品でかつ迫力のある脂の味わいが混然として至福感に誘われる。
17.ちょうちん
「鳥しき」さんでは、ちょうちんにレバーと卵管(らんかん)を使う。弾ける卵黄と個性的なレバの味わいとの相性は抜群である。
18.ひざまわり
ぶりんとした身肉の食べごたえは抜群!しっかりとした食感とともに、まわりについたゼラチンと脂を満喫できる。一口頬張ると、豊潤な肉汁が溢れ出し、食べ応えは群を抜いている。
19.卵かけご飯
今日は卵かけごはんでさらっと〆る。わたしは、卵かけご飯は、卵黄と白身を完全に混ぜないで箸を若干入れた程度に適当に混ぜていただくのが好きだ。そうすると、黄身のトロリとした部分、白身に醤油がかかった部分、いろいろな卵の味わいを愉しむことができる!
20.お弁当
最後にお弁当をいただいて帰る。このお弁当が実に美味しかった。鶏のもも正肉、おくら、白玉、つくね、軟骨入りそぼろに椎茸が所狭しと詰められている。食べごたえのあるお弁当である。
「鳥しき」、やはりここは、素晴らしいと思う。帰り際さっそく次の予約(3月)をきっちりとって帰る。予約は2名までで、遅い時間(8:30以降)が取りやすい。今回は何人か飛び込みのお客さんが来られたけれど、みなさんお断りされていた。完全に不可能ではないのかもしれないけれど、やはり飛び込みで入店できる可能性が低いのかもしれない。
ひざまわり
手羽先
かた
やげん(軟骨)
砂肝
厚揚げ
ちょうちん
軟骨入りそぼろのお弁当
さびやきとかしわ
かしわ
さびやき
砂肝
食道
うずらの卵
やげん(軟骨)
つくね
せせり
ぎんなん
ししとう
レバ
合鴨
厚揚げ
かた
しいたけ
手羽先
ちょうちん
ひざまわり
卵かけご飯
鳥しきのお弁当
軟骨入りそぼろのお弁当
軟骨入りそぼろのお弁当
軟骨入りそぼろのお弁当
2017/02/01 更新
2016/11 訪問
うん、文句なく旨いと思う!...「鳥しき」、鳥喜、鳥さわ...都内、焼き鳥の名店は数あれど、やはりここはすごいと思う...特に手羽先の迫力に圧倒された!
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介されて、さらに予約困難になった感のある目黒「鳥しき」さん。一応、公式には、月初めの第1営業日に2か月分の予約を受け付けるとアナウンスされているようだけれど、現状、電話問い合わせで予約を取るのはかなり難しいとも聞く。
それが、以前よりお付き合いのあるグルマンさんからのお声掛けで、そんな「鳥しき」さんを訪問する機会を得てしまったものだから、興奮しないわけがない!感謝、感謝である!これは、万難を排してでも、目黒に駆けつけなくてはならない!
2016年11月1日(火)。当初2回転目の21:00から入店というお話しだったのだけど、1回転目のお客さんが早めに上がられたようで、急遽お連れさまからFacebookメッセージに連絡が入り、入店が20分繰り上がる。(早めに目黒に着いていたものだから助かった!)
お店はJRの目黒駅から目と鼻の先、路地を入ったところに楚々と佇んでいる。本日のお連れさまと店前で待ち合わせてしばらく待っていると、中から若衆のお声掛けがあり入店を促される。引き戸を開けて中に入ると、真正面に、焼きに余念のないあの池川義輝さんがドンと構えており、しっかりわたしの目を見て「いらっしゃいませ!」と元気よくお声掛けいただく。実に気持ちがよい。
まずは、ビールをコップ一杯いただき、今日は、ワインで合わせていくことに決める。お新香が饗された後、ほどなく、焼き物がスタートする。
1.さびやき
ささみは、ほんのり甘く身がやわらかい。心なごむようなやさしく上品な味わいだ。塩であっさりと焼いた淡泊な身に、わさびがことのほかよく合う。
2.せせり
希少部位。鳥の首の削ぎ身。身が締まっているのにぷりぷりでジューシー。たいへん旨い!
3.砂肝
砂肝とは、胃袋の一つ、筋胃(きんい)=砂嚢(さのう)のこと。さくっと歯切れよく、しかも歯ごたえのあるこりこりの食感がたまらない。味はさらっとして香ばしく、歯ごたえ・甘みとも高い。
4.うずらの卵
「鳥しき」さんのうずらの卵の焼き物は、半熟に仕上げられている。口の中でトロトロと溶けるさまは感動的ですらある。
5.首の皮
いわゆる鶏皮である。「鳥しき」さんの首皮は肉厚で、脂肪が多く柔らかく味は濃厚だ。「鳥しき」さんでは、七味唐辛子、山椒、大根おろしと3種類の薬味が提供されるけれど、これは大根おろしにくぐらせていただくのが一番のいただき方だと思う。脂肪が多くて濃厚な鶏皮を、大根おろしがさっぱりとまとめあげてくれる。
6.小玉ねぎ
ここで、小玉ねぎでひと呼吸。甘みがあって旨い。
7.軟骨
骨の部分は歯ごたえがある。肉の部分もはっきりした舌ざわりである。歯に抵抗する硬めの軟骨と、脂を含んで甘い肉との二重奏といったところだ。
8.つくね
むね肉をメインにつなぎに卵をつかって練り上げた鳥団子の串。串の中に細かく散りばめられた散りばめられた軟骨のコリコリとした食感が小気味良い。
9.レバ
タレで焼いた鮮度抜群のひと串お頬張る。身はぷりぷり。とろりと溶けて口に広がるレバー独特の濃厚な味とコクがすばらしい。思わず唸る逸品だ。
10.ぎんなん
ここで、ぎんなんでもうひと呼吸。薄皮に包まれたぎんなん特有の弾力の向こう側に、塩気と仄かなぎんなんの苦味の世界が広がる
11.かしわ
かしわとは、鶏のもも正肉。透明・新鮮な赤身にうっすら脂肪が差している様が美しい。ただ、ひと噛みすると、きちんと歯ごたえがあり、噛みしめるうち、豊かな汁気をからませつつ肉っぽい味が口の中に広がる。
12.おくら
ここで、おくらでもうひと呼吸。ネバネバ感の向こうに仄かなおくらの風味を感じる。
13.はつ
はつとは鶏の心臓。これが抜群に旨かった。ぶりんぶりんの存在感。ただし、さくっとした歯切れは砂ぎもよりずっと柔らかい。微かに清涼な血の匂いを感じとれる。これは鮮度がよいことが一口いただいただけでわかる。
14.かた
希少部位。手羽より脂は少ないのだけれど淡白ではない。肉汁がかなりたっぷりで、旨み溢れる上品な味わいだ。もも肉と胸肉のよいところをとったという肉質である。
15.厚揚げ
これも、焼き台で焼き上げられた一品だ。表面はほんのり焦げ目がついて、中はやけどするくらいに熱々の仕上がりになっている。
16.はらみ
希少部位。はらみは横隔膜だ。大変やわらかい。鶏肉本来の旨みを堪能できる部位といった感じである。「鳥しき」さんでは、周囲の皮と一緒に打っているところが面白い。バランスのいい食感と味わいが堪能できる。
17.しいたけ
ふくよかな香り、しこっとした歯応えにホッとする。
18.ちょうちん
レバーと卵管(らんかん)と卵を一緒の串に刺した一品。卵胞が一気にはじけて卵黄が口を満たすなかで、レバの滋味が存在感を表す。卵黄とレバの相性がなんとも素晴らしい。
19.ひざまわり
希少部位。しっかりとした食感とともに、まわりについたゼラチンと脂を満喫できる。一口頬張ると、豊潤な肉汁が溢れ出し、食べ応えは群を抜いている。
20.手羽先
これが今日一番であった!手羽先は、翼の先端から肘にかけて、翼を動かすためのさまざまな筋肉が寄り集まっている部分を指す。気合の入った火入れで仕立て上げられたこの一串、骨をはがすと湯気が立ち上る!骨周りの肉のプリプリの食感と鳥の深い味わいに舌を巻く。皮・肉・脂が渾然と融合し、脂と甘さのバランスは申し分ない。そして肉そのものの食べごたえも充分に楽しませてくれる。
21.親子丼
最後は親子丼でしめる。今年4月14日(木)~20日(水)新宿タカシマヤで開催された「春の美味コレクション」で好評を博した親子丼である。卵の火入れ加減が秀逸で、するりといただける。大変美味である。
22.お弁当
最後にお弁当をいただいて帰る。このお弁当が実に美味しかった。鶏のもも正肉、おくら、白玉、つくね、軟骨入りそぼろに椎茸が所狭しと詰められている。食べごたえのあるお弁当であった。
「鳥しき」さん。やはりここは、素晴らしいと思う。特に手羽先の一品には圧倒された。これは、他の追随を許さない逸品だと思う。本当に、今日お誘いいただいたグルマンさんには、感謝の一言だ。帰り際さっそく次の予約(1月)をきっちりとって帰る。予約は2名までで、遅い時間が取りやすい。
お食事の終盤、カウンターの向こう側にリオデジャネイロ五輪、柔道73kg級金メダリストの大野将平さんがいることに気づいた。73kg級だから、階級的には軽量級に属するのだろうけれど、カウンター越しに見ても、明らかに一般人とは異なる凄い体格で迫力がある!「鳥しき」さん、有名店だから、いろいろな有名人の訪問もあることだろう...
ちなみに、夜の遅い時間で、席に空きさえあれば、飛び込みのお客さんでも入店できるのは意外な発見だった。平日で、よる9時半以降なら試してみる価値はあるかも知れない。
ちょうちん
せせり
レバ
はつ
手羽先
かしわ
ひざまわり
厚揚げ
親子丼
お弁当
さびやき
せせり
砂肝
うずらの卵
首の皮
小玉ねぎ
軟骨
つくね
レバ
ぎんなん
かしわ
おくら
はつ
かた
厚揚げ
はらみ
しいたけ
ちょうちん
ひざまわり
手羽先
親子丼
スープ
お弁当
お弁当
鳥しき
鳥しき
2016/11/03 更新
その待機場所は、ときに目黒駅正面のマックであったり、あるいは一本路地を違えてひっそりと佇むオーセンティック・バーであったり、はたまた目黒通りに面した若いご夫婦がなさっている小粋な居酒屋さんであったりするのだけれど、「鳥しき」さんの予約の日の20時50分を越えたあたりの刻一刻の時の刻みは、手に汗握るものがある。
まず、テーブル正面にスマホを恭しく配置する。...そして、スマホの蠢動とともに、ディスプレイに「鳥しき」の文字が浮かび上がる瞬間に半ば気持ちを持っていかれつつ、その日のお連れさまと、そぞろに会話を交わすひと時が「鳥しき」訪問時の決まりきった儀式なのである。
2019年3月30日(土)。今日はきっちりと21時00分に眼前のスマホが明滅する♪待機場所でそそくさと会計を済ませ、いつものように期待に胸膨らませて「鳥しき」に入店する。着座後、ほどなく串の連綿が饗されることになる。本日はかしわからの始まりだ。
「鳥しき」さんの串は、どれも艶を帯びた肢体が見た目を華やかなものにする。でも実際に味わってみて、あえてその味わいを分類してみた場合どうなるか。
〇脂少なく、少量のサビとともにさっぱりと鳥の風味を味わわせる上品な串 ⇒ さびやき
〇脂たわわだけれど、脂自体がとてもキレイな味わいなので、上品な鳥の風味が際立つ串 ⇒ かしわ
〇感情を内に秘めたように、寡黙に鳥の旨みを閉じ込めた串 ⇒ すなぎも(弾力アリ)、血肝(悩ましくも口中で溶ける)
〇コラーゲンとともに鳥肉の旨みを感じさせる串 ⇒ やげん、アキレス腱
〇鳥の良質な脂の豊饒感を味わわせてくれる串 ⇒ 鳥皮、せせり、食道、腺胃
〇苦みに近い滋味と良質な鳥の脂を味わわせてくれる串 ⇒ 背肝、ハツモト、ちょうちん(レバにとろっと卵を添えて...)
〇脂ののった鳥肉の力強さを味わわせてくれる串 ⇒ 手羽先、ソリレス、ぼんじり、膝回り、ちこつ
これに、つくねのふっくりとした焼き上がりが付け加えられ、さらに諸種の季節野菜が添えられて、最後に絶品の丼もので締めとなる。この豪華な味覚の連なりにいつもやられてしまうのだ!
本日いただいたのは、以下である。
1.かしわ
2.すなぎも
3.さびやき
4.ししとう
5.やげん
6.血肝
7.くびかわ
8.しらたま
9.背肝
10.鳥皮
11.つくね
12.手羽先
13.厚揚げ
14.膝回り
15.ソリレス
16.ちょうちん
17.そぼろ丼
わたしにとって「鳥しき」は、至高の空間で、最高の料理を提供するレストランである!次回は5月の訪問である!今から楽しみだ♪