紅茶に浸したマドレーヌさんが投稿した緒方(京都/四条)の口コミ詳細

レビュアーのカバー画像

紅茶に浸したマドレーヌのレストランガイド

メッセージを送る

この口コミは、紅茶に浸したマドレーヌさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。 問題のある口コミを報告する

緒方四条(京都市営)、烏丸、大宮/日本料理

3

  • 夜の点数:4.9

      • 料理・味 4.9
      • |サービス 4.9
      • |雰囲気 4.9
      • |CP 4.7
      • |酒・ドリンク 4.7
3回目

2018/01 訪問

  • 夜の点数:4.9

    • [ 料理・味4.9
    • | サービス4.9
    • | 雰囲気4.9
    • | CP4.7
    • | 酒・ドリンク4.7

このしめやかな間人(たいざ)の珠玉の語らいに耳を澄まそう!...「緒方」、またしても、途方もないものを味わわせていただいたと深い感動の余韻に揺蕩(たゆた)う

高級蟹というと誰もが越前蟹を想起する。そして、その越前蟹といえば、三国やら津居山(ついやま)やら浜坂といった日本海の産地によって、黄色やら青やら白やらの異なる色のダグ付けがされ市場に出回るという事実ももはや周知の事実である。

しかしでも、これらがすべて同じ味わいかといったら、これが全く違うというところが、食材というものの何とも面白いところである。


 間人蟹(たいざがに)

この蟹は京都の日本海側の間人港で11月、12月に獲れる稀少な蟹であるが、これは他の越前蟹とは全く佇まいを異にする。

一口いただいてみると、どうだろう...しめやかで、ほっそりとした柳腰美人のような艶がある。...だけどその後、深々と小雪の降り募るように慎ましく、旨味が募っていくその佇まいに思わず言葉を失ってしまう...あれこそが間人蟹なのだ。わたしは、越前蟹は、色々なタグの色のものを一通りいただいたけれど、こんな感覚を味わわせてくれる越前蟹は、間人蟹をおいてほかにはないと言い切りたいと思う。


わたしに間人蟹の素晴らしさを教えてくれたのは、紛れもなく「緒方」さんである。こちらで2017年、年の瀬に間人蟹をいただけることに感謝して、12月3日(日)16:00、四条、町屋造りの「緒方」さんのお店の引き戸を開ける。

まだ誰もいないカウンターに通され、真ん中のお席に通される。緒方さんにご挨拶して、ほっと一息つくと、目の前の額縁に目が行く。毎回味わい深い絵画をかけておられるのだけれど、今回は、加倉井 和夫(かくらい かずお)さんという日本画家の柿の図とのことだそうだ。渋みがあって、眺めていると、静かな店内で心が落ち着いていく素敵な日本画だ...

まずは、純米吟醸をお願いする。わたしは焼き物にはとんと疎いけれど、素敵な徳利だ。...とほどなく、1品目が饗される。

1.間人の香箱蟹と外子のゼリー寄せ、新潟のモズクを添えて...猪口には外子
ガラスの器に盛られた美しい香箱蟹の冷たいお料理が饗される。この外子が緻密で何とも旨い。全く水っぽさがなく、味わいがしっかりしている。身肉(みしし)も、雄の派手やかさはないものの、旨味を小さな身内に健気に蓄えている感じが伝わってきて好感が持てる。

ここで滋賀県の松の司。飲み飽きせず、何杯でも飲めそうな感じがするお酒だ。

2.蕪とクエのお椀
クエの上質な脂が散るお出汁の味わいが、とにかく素晴らしい。脂の多い白身と言ったら、代表格はこのクエとのどぐろ(赤むつ)であるが、クエの脂はとにかく上質だ!そこに蕪のみを合わせたお椀のその簡素さに、自分がこの前のレビューで「"侘び"の精神そのもののお椀に現代の利休を感じ取る」というタイトルを書きつけていたことを図らずも思い出す。

3.明石の鯛と長崎の白甘鯛のお造里
やはり鯛は春の産卵を控えて、深場でいっぱい餌を食べているこの時期のものが調子が高いように思う。白甘鯛は申し分ない旨さだ!

4.湯通し鯛の皮、ゼラチン質
ここでちょっと面白いものが饗される。荒布(あらめ)を使ったお塩を添えて湯通し鯛の皮。食感が小気味よい。

5.岩手県雲子の揚げ物
簡素な揚げ物だけれど、これも仕事が感じ取れる逸品であった。まず、揚げ物特有の油っぽさが全く感じ取れない。そして、ぬくっと感情を内に秘めた雲子特有のあの存在感が最大限に引き出されている。そして楚々と漂う雲子の香りが素晴らしい。

ここで蘭奢待。国宝の香木の名前が付いたお酒だ。爽やかな甘みがあって旨い。

今日の間人蟹のお出ましである!いい顔をしている。緒方さん自信満々の逸品である!テンションが上がりまくる!

6.餅米をくるんだ柚の揚げ物、景色的に松葉の中にあしらって...
その前にこれも緒方さん定番の甘い揚げ物。これは、柚の甘みが主人公の一品。そこにアルデンテの餅米ががすこぶる素敵なマリアージュを演じ立てる。

7.間人蟹の四肢の根元の部分
とうとう出てきた間人蟹。...やはり何とも素晴らしい。この間人の、濡れそぼる秋雨のような、しめやかな味わいにまたしても打ちのめされる!...そもそも間人は市場にでないそうである。緒方さんは、特別なつてで直に引いておられるそうだ。

それにしても、他の追随を許さないこの素晴らしさはなんであろうか?緒方さん曰く「越前蟹は、三国、津居山、浜坂、香住といろいろな場所で獲れますが、そもそも蟹が食べているものが違うんです。ほかの蟹は大体砂地で生活していて色々なものを食べている(雑食)んですが、この間人のものは、泥の中でプランクトンばかり食べているんです。そうすると、こんな風に他とは一段も二段も違うこんな上品な仕上りになるんです」とのことだ。

8.間人蟹の足
これを2本まで饗していただき、間人蟹の身肉を堪能する。

9.田舎味噌と蟹味噌を入れた間人蟹の甲羅
これが、たまらなく旨かった!これは、日本酒じゃなきゃダメでしょう!という素晴らしすぎる逸品!

弁天娘でゆっくりとやる。またこの弁天娘と蟹味噌のお出汁のマリアージュが素晴らしかった。味噌の滋味に弁天娘のしっとりとした味わいが寄り添う。

10.大阪富田林の海老芋
サツマイモみたいに甘い味わいがする。これが「緒方」さんでの愉しみの1つだ。

ここで最後の締めとなるため、いつもの通り、3品すべていただく。

11.鯖寿司
これをいただくと、京都に来た、という感じがする。鯖寿司は京料理の一つだ。この肉厚な鯖の佇まいが素敵だ。

12.カマスとサツマイモの炊き込みご飯
カマスの味が濃い!サツマイモの甘みと合わせるのが面白いが、カマスの風味とご飯の温かさとサツマイモの甘味で幸せな気分になれること請け合いの一品だ!

13.手打ち蕎麦
これが毎回のお愉しみである。「緒方」さんの蕎麦は、茹で加減といい、蕎麦の仄かな香りのたち具合といい、実に秀逸なのだ。これを今日は鴨のつけ汁でいただく。

最後に、銀杏をくるんだ八つ橋で一通りとなる。...いや、今回の冬の「緒方」さんも間違いなかった!京都はなかなか遠いけれど、このお店もその春夏秋冬を味わうべく再訪しなければいけないお店である!次回は桜の季節に再訪だ!

  • 今日の間人蟹のお出まし!いい顔をしている!

  • 田舎味噌と蟹味噌を入れた間人蟹の甲羅

  • 間人蟹の四肢の根元の部分

  • 間人蟹の足

  • 間人の勲章

  • 京都四条 緒方

  • 加倉井 和夫(かくらい かずお)氏の柿の図

  • 純米吟醸 素敵な徳利...

  • 人の香箱蟹と外子のゼリー寄せ、新潟のモズクを添えて

  • 猪口には外子

  • 滋賀県の松の司

  • 蕪とクエのお椀

  • 明石の鯛と長崎の白甘鯛

  • 明石の鯛と長崎の白甘鯛のお造里

  • 湯通し鯛の皮、ゼラチン質

  • 岩手県雲子の揚げ物

  • 蘭奢待

  • 今日の間人蟹のお出まし!いい顔をしている!

  • 餅米をくるんだ柚の揚げ物、景色的に松葉の中にあしらって...

  • 餅米をくるんだ柚の揚げ物

  • 間人蟹の四肢の根元の部分

  • 間人蟹の足

  • 田舎味噌と蟹味噌を入れた間人蟹の甲羅

  • 弁天娘

  • 大阪富田林の海老芋

  • 大阪富田林の海老芋

  • 鯖寿司

  • カマスとサツマイモの炊き込みご飯

  • 手打ち蕎麦

  • 鴨のつけ汁

  • おこうこ

  • 銀杏をくるんだ八つ橋

  • 南禅寺 山門

  • 絶景かな、絶景かな。春の宵は値千両とは、小せえ、小せえ。この五右衛門の目からは、値万両、万々両……

  • 永観堂の紅葉

  • 永観堂の紅葉

2018/01/04 更新

2回目

2017/07 訪問

  • 夜の点数:4.9

    • [ 料理・味4.9
    • | サービス4.9
    • | 雰囲気4.9
    • | CP4.7
    • | 酒・ドリンク4.7

古都の夏を彩る食材を堪能する!...「緒方(おがた)」、もちろん鱧も鮎も絶品だったけれど、"侘び"の精神そのもののお椀に現代の利休を感じ取る

祇園祭初日の夕間暮れ、思いがけない通り雨が突然四条の街並みを駆け抜けていく...と、焔立つ夏の地熱が、街を洗い流した雨滴の粒と溶け合って、あたりは瞬く間にむせかえるような真夏の分厚い空気で満たされる...

2017年7月1日(土)。祇園祭初日のこの日、京都四条の「緒方」さんで古都の夏を彩る食材を堪能する。それにしても「緒方」で京都の夏を心行くまで満喫できるとはいかにも贅沢な経験だ。以下素晴らしかった「緒方」のお食事会についてできるだけ詳細に書き綴っていきたい。

19:00、お店の引き戸を開けて中に入るとお弟子さんのお出迎えを受ける。カウンター席にご案内いただくと既に本日のお連れ様は到着されている。とりあえずビールで乾いた喉を潤すほどに、本日のコースがスタートとなる。

1.五島列島の鮑の飯蒸し
鮑は旬だ。この噛みごたえがなんといっても素晴らしい。まるで切り餅を噛み締めたときのような抵抗感のある食感と、炭火焼きしたかまぼこを思わせる反り返るような弾力感の向こうに、幽玄味すら感じる奥深い鮑の味わいが顔をのぞかせる...

2.枝豆のすり流しに梅干し
このお椀が絶品であった!枝豆の青く清々しい味わいのその向こうに、一縷(いちる)の澄み切った梅の風味が細く長く響き続ける。シンと静まり返った言祝ぎ(ことほぎ)とでも言おうか。過剰な飾り立てを一切そぎ落とし、空豆と梅干しだけのあまりにも簡素な食材の組み合わせから閑寂な美しさを感受させる料理にひたすら感動する。まさに「侘び」の精神そのものといったお料理である。

3.少し炙った石垣貝、間人(たいざ)の白イカ、明石の甘手鰈、朴歯にくるんで...
石垣貝は、ものすごく立派な大ぶりなものだ。これに少し炙りを入れることによって、甘みを最大限に引き出している。山陰丹後では、剣先イカを白イカと呼ぶ。剣先イカの最高級品だ。まるでお菓子を食べているような濃厚な甘さがあるのだけれど、その甘味はイヤミがなく端正そのものだ。甘手鰈(あまてがれい)は、関東で言うところの真子鰈。夏の青空を駆けるような澄み切った味調が素晴らしい。

4.お塩と柚子を散らした鱧の湯引き
そのままで...とご案内がある。国産の鱧は夏場は産卵期を迎えて身は痩せるといわれるけれど、旨味をしっかりと感じることができる。優しい淡雪のように静かに降り募る旨味を耳を澄まして味わう。

5.宮城県産の金目鯛の揚げ物
最後の金目鯛とのご案内だ。金目の迫力ある脂乗りに圧倒される。しかしでも、金目のフライとはまた珍しい。

6.鱧の肝
鱧の肝のたまり煮だ。醤油と味醂でしっかりと煮詰めてある。肝はまったりとした味わいで最高の酒肴である。

7.加茂茄子の炊き物
京都の夏らしく賀茂茄子である。ものすごく肉厚でまさに茄子の女王の風格たっぷりである。この堂々とした存在感は他の茄子の追随を許さないものがある。

8.鮎の塩焼
鮎の塩焼きである。時期的には、もう少しといったところだろうけど、どうしてどうして立派なものである。珠のような香りとほろ苦さに夏の到来をじっくりと噛みしめる。

9.琵琶湖の鰻のかば焼き
天然鰻の蒲焼である。皮目が物凄くしっかりしている。噛みしめればバリッと音が立ちそうなくらいに香ばしく焼き上げられているけれど、逆に中の身肉(みしし)は、とろけそうに柔らかい。

10.鱧と湯葉のしゃぶしゃぶ
今度は鱧をしゃぶしゃぶでいただく。数回ささっと出汁汁にくぐらせて、湯葉と一緒にすぐに饗していただく。ぬくもりの中から、脂っこくない鱧の上品な風味が広がる。

11.すっぽんの葛炊き
ここで最後の締めのご飯となる。今回も3品すべていただくことにするけれど、まず饗されたのがすっぽんの葛炊きである。すっぽんならではの深い味わいだ。身肉は噛みしめるほどに少しずつ旨味が口中に広がる。

12.牛丼
この牛丼の牛肉が滅法うまかった!高級和牛を贅沢に使った牛丼に酔いしれる!

13.お蕎麦
最後に手製のお蕎麦をいただいて一通りとなる。間人蟹の時期の「緒方」さんからは、明滅するような花やぎを感じたけれど、今回の「緒方」さんからは、水墨画のように静かで澄み切った佇まいを感じた。実に素晴らしい。次回はまたまた間人蟹の季節の再訪となる!

  • お塩と柚子を散らした鱧の湯引き

  • 鱧のしゃぶしゃぶ

  • 鱧の肝

  • 鮎の塩焼

  • 牛丼

  • 加茂茄子の炊き物

  • 宮城県産の金目鯛の揚げ物

  • 下京区綾小路西洞院東入新釜座町726番地

  • 五島列島の鮑の飯蒸し

  • 枝豆のすり流しに梅干し

  • 少し炙った石垣貝、間人(たいざ)の白イカ、明石の甘手鰈、朴歯にくるんで...

  • お塩と柚子を散らした鱧の湯引き

  • 宮城県産の金目鯛の揚げ物

  • 鱧の肝

  • 加茂茄子の炊き物

  • 鮎の塩焼

  • 琵琶湖の鰻のかば焼き

  • 琵琶湖の鰻のかば焼き

  • 鱧のしゃぶしゃぶ

  • 鱧と湯葉のしゃぶしゃぶ

  • お新香

  • すっぽんの葛炊き

  • 牛丼

  • お蕎麦

  • じゅんさいの水物

  • 内観

  • 祇園祭が始まりましたね♪

  • 緒方

2017/07/19 更新

1回目

2015/11 訪問

  • 夜の点数:4.9

    • [ 料理・味4.9
    • | サービス4.9
    • | 雰囲気4.9
    • | CP4.7
    • | 酒・ドリンク4.7

蟹だ!蟹だ!蟹だ!祇園四条で間人祭(たいざまつり)!...「緒方(おがた)」、"ただ、花は、見る人の心にめずらしきが花なり..."


ただただ、花というのは、観客にとって新鮮なのが花なのである... 世阿弥

その季節季節に咲きほころぶ花...何の前ぶれもなく一瞬にして生命の悦びを歌い上げ、わたしたちの瞳をしたたかに打ちのめしたかと思うと、次の瞬間には掌(てのひら)からこぼれ落ちるように散りさってゆく生命の明滅そのもの...それが世阿弥の"花"である。

2015年11月19日(木)、京都四条和食割烹「緒方(おがた)」の優雅で豪華すぎる間人蟹(たいざがに)食べ尽くしの饗応は、この観世大夫の言葉を体現してあまりあるものがあった...以下、そのお食事体験をできるだけ詳細に書き綴っていきたいと思う。

"秘すれば花なり"...有名レビュアーのGattoさんのセンスあふれる「緒方」さんレビューを拝見して、まだ見ぬ京都の有名割烹のイメージに刺激的なまでの彩(いろどり)を添えていただいたものだから、京都に向かう新幹線の中で、久しぶりに世阿弥の『風姿花伝』を読み返えしてみることにする...

...うん、やっぱり花伝書は面白い。疾走する新幹線のかすかな振動に身を委ねながら、文庫本を読み進むほどに、世阿弥の"花"が、渇いた体に雪解けの湧水を取り込んだように、すうっと染み渡っていく...今日の晩餐がどんな饗応になるか、花伝書に綴られる言葉の連なりを辿りつつ、愉しみは弥増す(いやます)ばかりだ。

...本日は、クワトロ☆さんが経営される会社のオフィスに17:45に待ち合わせた上での「緒方」さん初訪である。いうまでもなく「緒方」さんはクワトロ☆さんのお奨めである。期待が高まらないわけがない!

とはいえ、烏丸(からすま)線四条駅から地上に上がってみると、端正なまでの碁盤目状の京都の街路に目がくらみ、普段、東京のくちゃくちゃな街並みに慣れきったわたしの方向感覚が、一気にブッ飛んでしまう...はたして東はどっちで北はどっちか...2つ、3つと間違いながらも、それでもなんとかクワトロ☆さんのオフィスまで辿り付き、合流に成功する。とはいえ、約束の時間5分オーバーだ(クワトロ☆さん、スミマセンでした!)お詫びしつつも、とるものもとりあえず、さっそく「緒方」さんへ繰り出そう!という運びになる。

四条通を西に12、30メートル進み、「やよい軒」というチェーンの和食店に隣接するコインパーキング脇の小路地を左折する。極めて風情のある小道を数十メートルいくと左手に楚々とした「緒方(おがた)」の揮毫(きごう)が闇夜の中に浮かび上がる...引き戸をあけて中に入ると若い衆のお出迎えがあり、カウンター席中央のご案内となる。とりあえずビールを注文して喉を潤していると、ほどなく本日の間人蟹(たいざがに)のコースがスタートとなる。

1.新潟のもずく(手前)と香箱蟹の突き出し、蟹のジュレを添えて...春海(はるみ)バカラの四つ椀(よつわん)に載せて
明治時代の大阪の古美術商、春海商店が、日本にあう懐石道具をバカラに発注して作った瀟洒な四つ椀(懐石家具)がそっと手前に饗される...中には麗しき香箱の先付が楚々と収まっている。バカラを掌に包み込めば、明治初頭、近世から近代に移りゆくあの時代の"枯淡"に触れたような気がしないでもない...お料理を一口いただくが、濡れそぼるように淡く募っていく蟹の風味が感じ取れる。音もなく雪の降り募るようなこの佇まいにしばし耳を澄ます...

2.信州小布施栗(おぶせぐり)と銀杏のすり流しのお椀
皮を付けたまま炊いた小布施栗を銀杏のすり流しにあわせた一品。派手さはないものの、これは驚きにあふれる逸品であった。銀杏のすり流しのあの独特の苦味のある風合いから、栗の甘い風味が漂いだす感じが途方もなく面白い。緒方さんにお声掛けすると、「この組み合わせ、一瞬、えっ、て思うんですけど、意外と合うんですわ」とのこと。

ここで、滋賀県、松の司(まつのつかさ)をいただく。香りがきれいで優しい酒質のお酒である。

3.明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて
「鯛は塩わさびで、赤貝はお醤油で...」とのご案内である。緒方さんいわく、鯛は、春のものは、卵を抱えてすっかり痩せていて、調子が高くありません。やはり、鯛は今のものが抜きん出ている、とのこと。一口いただき、鯛の身肉(みしし)の充実ぶりに舌を巻く。また、赤貝もすこぶるよい。身も肝も滋味あふるることこの上ない...赤貝は、今くらいから春までが最も良いとのこと。

きっかけは失念したけれど、ここで緒方さんとジビエ談義になる。熊とか出されないのですか、という話の流れのなかで、緒方さん、
「うちはやりませんね。でも、熊はどんぐりを食べているのがすこぶるよいと思います。でも熊は脂は美味しいけど、ボクは、身の方が獣臭くてどうも嫌いなんですよね。だからうちでは熊はやらないんです。でも脂は確かにいいと思います。脂が美味しいのは、ジビエ特有ですよね。うりぼうとかね...」
とのことだ。

と、すかさずクワトロ☆さんが、わたしに耳打ちする。
「うりぼうってボク、可愛そうすぎて食べれないんだよね...マドさん、アレ、スイカみたいな感じだから"うりぼう"っていうんですよ、知ってる?...ボク、"うりぼう"を最初に知ったのが『かってにシロクマ』なんだよね...」
...このお茶目さが、クワトロ☆さんのなんともいえないユーモラスな魅力なのだ!

ここで次の日本酒が饗される。白露垂珠。淡麗辛口を更にさわやかにしたような素敵な日本酒だ。

4.餅米をくるんだ柚の揚げ物、景色的に松葉の中にあしらって...
柚の甘みが主人公の一品。そこにアルデンテの餅米ががすこぶる素敵なマリアージュを演じる。これもまた、さっきのすり流しと同じように、その秀逸な甘味使いが、ほかでは味わえない一品である。

5.間人蟹の肩肉の焼き物
「間人は、上品なんですよね。食べ飽きないんです」とのご案内だ。
たとえば、三国と間人で、やっぱり違うんでしょうかね?とお聞きすると、断然違うとのお応え。
「うちでは、貸切りで、食べ比べ会ってやっているんです。同じ条件で、三国、間人、津居山(ついやま)、香住(かすみ)、と同じ日に上がったもので、食べ比べ会をやっているんです。多少個体差はあるんですが、食べ比べしてみると、意外とよくわかるんです」
とのこと。今日はやってくれないんですか?との質問には、
「食べ比べは、貸し切りの時しかやらないんです」
とのことである。これはいつの日か絶対に体験してみたい!

ここで、和歌山のお酒、雑賀(さいか)が饗される。口に含んだ際、上品な旨みを感じる。麒麟と馬が描かれた素敵な徳利が印象的だ。

6.間人蟹足の焼き物
焼き上げられた甲羅から漂う風味が、息が詰まりそうなくらいに鼻腔を圧倒する。しかしでも、身をいただくとその印象は様変わりする。甲羅の炙りから漂ってくる蟹を前面に押し出した風味は途端に陰を潜め、滴るような身肉(みしし)からは悩ましいまでの北海の幸の濃厚な存在感が漂う...その旨みを凝縮した絹のようなテクスチャにしばし陶然とする。

それは、松葉蟹の淡白にして淡雪のようなイメージとは裏腹に、圧倒的な存在感を濃密にただよわせている。無論、その存在感には、蟹を押し付けるような下品な感じはいささかもない。

この焼き物をいただきながら、どうして水揚げした場所ででこんなに味わいが違うんですか?という話題になる。緒方さんいわく、
「食べてるものが違うんです。普通松葉蟹は、砂地の上にいるんですが、間人は泥の中で良質なプランクトンを食べているので、他の松葉と食べてるプランクトンの数が全然違うんです...松葉蟹はだいたい1キロの大きさで大人になる。で、そこから毎年脱皮していくんですが、間人は大人になってから脱皮する数が少ない。1.5キロくらいにしかならないんですよ。2キロになるものはないですよ。三国とか、何年も歳を重ねて2キロを越えるようなものが揚りますが、間人で揚るものは、大人になりたてのものが多いんです」
とのことである。

ここで、間人蟹の爪酒をいただく。これが河豚のヒレ酒並みに存在感のある素晴らしい燗酒である。

7.田舎味噌を入れた間人蟹の甲羅焼き
間人蟹だけだと蟹味噌の臭みが出てしまうので、田舎味噌を合わせてあるとのことである。これ以上日本酒との相性がよい食べ物があるだろうか!お匙で掬って慈しむようにいただくのだけれど、ひと匙いただくごとに口中に幾重にも広がる旨みの残響に舌を巻く。クワトロ☆さん「これは、白ワインでやっちゃいけないでしょう。絶対に日本酒でしょう!ん~今日死んでもいい!」とひとりごちる。同感である!

8.雲子(くもこ)、鱈白子の焼き物
鱈白子の焼き物が饗される。関東では"菊子(きくこ)"と呼ばれるものだ。ほのかな焼き目がつくくらいに焼き上げられ、山椒で点睛を施されたそれを一口口に含めば、まさに雲間に漂うような至福感を感じること請け合いである。

ここで鄙願が饗される。お酒は辻村四郎さんの焼き物(徳利)で饗される。

9.大阪富田林の海老芋の炊きもの
海老芋といえば、いかにも京料理らしい。しかし驚きはお出汁だ。昆布の旨みが引き出されたこのお出汁が途轍もなく旨い。京都のお水の柔らかさを感じる逸品だ。少しだけ砂糖をいれて、お塩を少し...くらいのシンプルな味付けが心憎いばかりである。

10.鯖寿司、釧路厚岸、仙鳳趾(せんぽうし)産 牡蠣のカツ丼、鴨のつけ蕎麦
最後にお食事となる。3種類選べるが、少量づつ全ていただくことにする。

鯖寿司は海苔に巻いて饗される。酢飯のカドを、海苔の香ばしさがほどよく包み込んでいる。

仙鳳趾産 牡蠣のカツ丼。存在感のある仙鳳趾の牡蠣をひと房をそのまま揚げてから、ひと刷毛のソースを刷いてご飯の上に乗せた一品。海の豊饒が詰め込まれた味わいにうっとりする。

鴨のつけ蕎麦も文句なくよかった。つけ汁は、醤油とみりんだけで、2週間だけそのまま寝かせておいたシンプルなものだというけれど、味わいが実に緻密で旨い!

11.くわいと黒糖のカステラ
和紙に包まれたそれを、まずはしゃかしゃかと振って、黒糖をまんべんなくカステラにまとわせてからいただく。外はカリッとしていて、中はしっとりとしている。

これで「緒方」の間人蟹のコースが一通りとなる。

間人蟹...これは想像を超える松葉蟹であった。北海にまだ見ぬこのような味覚があったことにひとしきり感動する。

"ただ、花は、見る人の心にめずらしきが花なり..."

今日のこの日は、世阿弥の"花"の艶やかな息遣いを、紛れもなく感じ取った冬の一夜であった。

  • 蟹だ!蟹だ!蟹だ!間人祭(たいざまつり)開幕!

  • 足の長い端正な間人蟹(たいざがに)!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹..."ガニ"とはかくも美しいものであったか!

  • 間人蟹足の焼き物、湯気の立ち昇る...

  • 新潟のもずく(手前)と香箱蟹の突き出し、蟹のジュレを添えて...春海(はるみ)バカラの四つ椀(よつわん)に載せて

  • 田舎味噌を入れた間人蟹の甲羅焼き

  • お箸

  • ビール

  • 春海(はるみ)バカラの四つ椀(よつわん)

  • 新潟のもずく(手前)と香箱蟹の突き出し、蟹のジュレを添えて...春海(はるみ)バカラの四つ椀(よつわん)に載せて

  • 滋賀県、松の司(まつのつかさ)

  • 信州小布施栗(おぶせぐり)と銀杏のすり流しのお椀

  • 明石の鯛!!!

  • 明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて

  • 明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて

  • 明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて

  • 明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて

  • 蟹だ!蟹だ!蟹だ!間人祭(たいざまつり)開幕!

  • 間人蟹、足が長い!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 取り残された甲羅...

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 間人蟹をさばく!

  • 紅葉の中の白露垂珠...

  • 餅米をくるんだ柚の揚げ物、景色的に松葉の中にあしらって...

  • 餅米をくるんだ柚の揚げ物

  • 間人蟹の肩肉の焼き物

  • 間人蟹足の焼き物

  • 麒麟と馬が描かれた素敵な徳利に入った、和歌山のお酒、雑賀(さいか)

  • 田舎味噌を入れた間人蟹の甲羅

  • 間人蟹足の焼き物

  • 間人蟹足の焼き物

  • 田舎味噌を入れた間人蟹の甲羅焼き、炭火でじっくりう焼き上げる

  • 間人蟹の爪酒

  • 田舎味噌を入れた間人蟹の甲羅焼き

  • 雲子(くもこ)、鱈白子の焼き物

  • 辻村四郎さんの焼き物(徳利)で供される、鄙願

  • 大阪富田林の海老芋の炊きもの

  • 鯖寿司

  • 釧路厚岸、仙鳳趾(せんぽうし)産 牡蠣のカツ丼

  • 鴨のつけ蕎麦

  • 鴨のつけ蕎麦

  • 鴨のつけ蕎麦

  • くわいと黒糖のカステラ

  • くわいと黒糖のカステラ

  • 間人の証!海運丸はひたすら行く!

  • 明石の鯛と山口の赤貝のお造り...紅葉をかき分けて

  • 北大路魯山人の急須

  • 鳥海 青児(ちょうかい せいじ)の日ノ丸盆の洋画...その向こうに映るのは、果たして...

  • 京都四条和食割烹「緒方」中庭

  • 京都四条和食割烹「緒方」

  • 京都四条和食割烹「緒方」

  • 京都高台寺臥龍池

  • 京都東福寺

  • 京都東福寺通天橋より望む...霞みがかった紅葉の妙

  • 京都東福寺に紅葉の散る

2015/11/22 更新

エリアから探す

すべて

開く

北海道・東北
北海道 青森 秋田 岩手 山形 宮城 福島
関東
東京 神奈川 千葉 埼玉 群馬 栃木 茨城
中部
愛知 三重 岐阜 静岡 山梨 長野 新潟 石川 福井 富山
関西
大阪 京都 兵庫 滋賀 奈良 和歌山
中国・四国
広島 岡山 山口 島根 鳥取 徳島 香川 愛媛 高知
九州・沖縄
福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
アジア
中国 香港 マカオ 韓国 台湾 シンガポール タイ インドネシア ベトナム マレーシア フィリピン スリランカ
北米
アメリカ
ハワイ
ハワイ
グアム
グアム
オセアニア
オーストラリア
ヨーロッパ
イギリス アイルランド フランス ドイツ イタリア スペイン ポルトガル スイス オーストリア オランダ ベルギー ルクセンブルグ デンマーク スウェーデン
中南米
メキシコ ブラジル ペルー
アフリカ
南アフリカ

閉じる

予算

営業時間

ページの先頭へ