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2位
8回
2018/03訪問 2018/12/01
そろそろ桜の花が咲き始めた頃、鈴木さんで鮨をつまみながら魚の事から何気ない話まで色々と愉しむ。
穴子は絶不調期で、とてもお客さんの前に出せる代物では無いと3月の殆どは用意されていない。
◉真鯛
◉甘鯛
舌にツルリとあたる身質が心地良い舌触り。
グルタミン酸の旨味は穏やかだが、美味しさとは決して旨味成分だけでは無く、庖丁の入れ方や身の質の弾力からくる歯触り、口腔内を心地良く撫でていく舌触りも味の重要なファクターである事を改めて認識した。
◉九絵
◉天草産小鰭
鮗サイズで身も厚いが、脂の乗りは穏やかなのでいつもより締め加減は一寸柔らかめ。
◉江戸前産墨烏賊
まだまだ肉厚で甘味あり。
九州の方はもう身が薄いので厳しいと。
◉鮪 紀州勝浦191kg 赤身
あっさりとしてこの時期の鮪の風味だが、舌触りが良く、身質が柔らかくてシャリとの馴染みは良い。
◉鮪 紀州勝浦191kg 中トロ
先ずは鮪の持つ風味が端境期としての鮪の物とは思えない良い香り。
咀嚼していると中盤から旨味の伸びも良く、余韻が素晴らしい。
◉鮪 紀州勝浦191kg 大トロ
中トロよりネットリと絡み付く旨味ではあるが、旨味を感じる時間帯が中トロより短め。
◉愛知産鳥貝
こちらは完全なるフレッシュの素材。
質が少しでも悪いと生臭みと言うか、個性的な癖が全面に出てきてしまいバランスを崩すのだが、こちらではそんな心配一切ご無用。
良い鳥貝由来の瓜系の香りが素晴らしく、酢飯の酢と塩の味付けが多少の尖りをマスキングして甘味が引き出されて美味しくなっている。
◉赤貝
◉馬糞海胆
この日の馬糞海胆は明礬味が薄くて素材本来の甘くて潮の香りが愉しめる逸品。
◉車海老
◉淡路島産真鯖棒鮨
冬シーズン最後の棒鮨。
東の真鯖と比べると、旨味の濃さが幾分柔らか。
◉蛤
この時期ならではの凝縮した身の旨味がジワジワと押し寄せてくる。
◉鮪巻き
◉玉子
値上げ後初訪問。
◉鮃
◉赤甘鯛
◉金目鯛
◉船橋産小鰭
◉細魚 朧
◉銚子産赤身
◉銚子産中トロ 背の身の血合岸 103kg 1D
◉銚子産大トロ 腹の身 178kg 1W
◉勝浦産真鯖棒鮨
◉墨烏賊
◉赤貝
◉蝦夷馬糞海胆
◉車海老
◉穴子
◉鮪巻き
◉玉子
初手は奇しくも白身3貫の食べ比べの様になったが、鮃のツルリとした身の質感にジンワリとイノシン酸の旨味、(赤)甘鯛の更にツルリとした舌触りに噛みしだくとネットリとし、程良く脱水、凝縮された旨味、金目鯛は瑞々しい水分含有量に初めからわかりやすい脂の旨味を愉しむ。
鮪は3貫とも銚子で揚がったものだが、赤身と中トロは昨日仕入れた103kgフレッシュの背の身で中トロは血合岸。
大トロは178kgの霜降り。
背は食べてすぐに旨味がわかるインパクト系では無いが、あとからジンワリと良質な脂と鮪の仄かな酸味が追っかけて来て余韻も程々にある。
大トロは脂の旨味を堪能するに特化した様な味わいで、やや身の強張り、若干の筋を感じ、風味も赤身と中トロの部位とは一線を画した。個体からしてこれ以上の寝かせは限界の様である。
江戸前の小鰭は持ち味の風味が力強くてほんのりと海苔の香りも漂う最上品。
千葉勝浦の真鯖は文句無しの身の厚みと締まり。
噛み締めて旨味がジュワっと射出され、白板昆布の絶妙な甘味が酸と塩と超絶マッチしている。
今年の鯖は比較的豊漁とのことで、これはもう一度真鯖棒鮨を味わいに来るべき逸品である。
★値上げ前レビュー★
9月も末に今シーズン最後の提供となろう天然鰻を再度食べたくなり、懲りずに再訪(笑)。
【9月の鮨その2】
◉星鰈
◉九絵の炙り
品の良い脂の乗り。
◉北海道の鰤
この日一番の旨味溢れる個体。
ここのシャリが鰤の旨味をかなり引き上げていた。
◉大間産赤身
◉大間太平洋沖127kg中トロ
◉大間太平洋沖127kg大トロ
太平洋沖のは身の硬さが気になっていたが、本日で1週間寝かせた事で、身の熟れもやっと馴染んで来たと親方。
◉佐賀産小鰭
【別注】
◎浜名湖産1.1kg天然鰻
1kg超えは寝かせないと身がゴリゴリで硬くて旨くないとのこと。
前回の物と比べるて身の肉厚さが半端無い。
噛むと身からは程良き弾力で歯を押し返すかのように歯が身に入っていく。
野性味溢れる豊かな旨味の洪水と、サクっとした皮の食感とネットリとした皮目の脂の層の旨さたるや尋常じゃない。
シャリを少し頂戴し、山葵も添えて戴いてみる。
力強い鰻の旨味をシャリと山葵がしっかりと受け止める。
プチっとした食感から出るキャビアの塩分と濃厚な旨味が塩味のアクセントだが、シャリが加わることによって一気に料理の完成度が高まる。
◉真鯖棒鮨
本日は江戸前で肉厚な身の個体を仕入れ、身の締まりの良さ、弾力、旨味の伸びから余韻へのアプローチが大変結構だ!
◉墨烏賊
◉梭子魚
◉赤貝
◉新いくら
◉宮城産紫海胆
◉穴子
◉鉄火手巻
◉玉子
★値上げ前レビュー★
鮪も厳しい時期であるが、今日のこちらの鮪は言わば"神"だった!
赤身からして観ていてその色気のある深いルビー色からしてこれはと思った。
食べてみると、口に障る食感や雑味は無く、鮪由来の鉄分の香りが寄せる波の如く押し寄せて来る。
これはと思って親方にうかがってみた!
この日仕入れた鮪は7日前。
かなり良い品で、身の焼けも無ければ変色もしない身持ちの良い優れ物ですと親方。
その日のY他築地には本鮪がほとんど無く、Yでも例外では無かった。
鈴木で使えるブロックが無かったのだが、柵でも良いかと社長取っておきの部位を卸してもらったら、これが途轍も無く良い品質であったと。
中トロというか、霜降りの大トロと言えるその握りは、シルクの様な、綿飴の様なフンワリとした舌触りで軽いタッチの口溶け。
シャリとのマリアージュが半端無く利いており、鈴木の赤シャリの真骨頂を味わえた。
更にギアを上げてきた大トロは蛇腹。
筋など微塵も感じさせない完璧な寝かせも奏功しているのだが、やはり神鮪と言えよう。
霜降同様綿飴の如し口溶けでシャリと絡み合い、互いに旨味を引き立てあって、一緒に喉元へと流れ込む。
正にマリアージュである!
これは昨年の冬でもここまでの鮪は有ったかと思える程。
これの様々な部位が合わさった最後の鉄火手巻きが神味だった。
今日のお客さんはラッキーだったね。
鰻は以前から気になっていた品で別注文でお願いしていたものだ。
地元愛の浜名湖産の天然しか扱わないという。
この日は600gの物で有ったが、鰻の力強い風味、月を追う毎に乗って来る抜群の脂、筋肉質でそこそこ身の厚さと中々の素材だ。
白焼された物にキャビアを乗せて戴く酒肴だが、超力バージョンにしていただいた。
噛むとカリっと香ばしく焼き上がった皮目の旨味に身のプリっとしたモリモリの程良き弾力。
身から溢れる旨味と甘味に力強くもしつこ過ぎない脂。
醤油でも塩でも無く、キャビアの塩分で愉しむというのも面白い。
これは東麻布野田岩で初めて戴いた時に衝撃を受けた味だ。
まぁここまでは想定していた味だが、ここからあるアイテムを使ってシフトチェンジするよ。
親方にお願いして添えて貰ったシャリを鰻に添えて一緒に戴くと、とんでもない旨味溢れる佳肴となった。
人によっては鰻の強くもクドく無い脂でもキャビアと合わせるとやや脂が立ってくるだろう。
そこでキリリと引き締まったシャリを薬味的に使う事によって、鰻とキャビアの脂分を巧みに受け止め、旨味だけを引き立たせて更にギアが上がって行くのだ。
あくまでも当方的な感想だが、もっと磨けば初音鮨やうを徳の鰻と肩を並べる存在に成り得る可能性を秘めた逸品ではないかと思う。
浜名湖産の良い物が無い時は仕入れませんので無い時もあるんですよと言う事なので、有る時には当方としては必食すべき佳肴である。
【9月の鮨(その1)】
◉鮃
◉黒睦
◉大間産釣り134kg本鮪 赤身
◉大間産釣り134kg本鮪 大トロの様な中トロ(霜降)
◉大間産釣り134kg本鮪 大トロ(霜降別部位)
◉小鰭
◉墨烏賊新子
◉鯖棒鮨
◉津島産鰹
【別注】
◎浜名湖産600g天然鰻 シャリ添え
◉新物のいくら
◉蝦夷馬糞海胆 明礬味が強い
◉車海老
◉穴子
◉鉄火手巻
◉玉子
毎月1度は鈴木さんの握りを堪能すべく鮨鈴木へ足を運んでいるが、6月はタイミングが合わず未訪。
しばらく溜めておいたアーカイブから簡単な感想を一部添えて。
【5月の鮨】
◉真子鰈
◉伊佐木
◉神津島産黒鯥
◉銚子産114kg鮪赤身ヅケ
◉銚子産114kg鮪中トロ
◉銚子産114kg鮪大トロ
◉小鰭
◉春子
◉鯵
◉愛知産鳥貝
◉愛知産平貝
◉馬糞海胆
◉車海老
◉穴子
◉鉄火手巻き
◉玉子
【別注】
◉北海道産蝦蛄 カツブシ
◉???
この日の白眉は神津島産の黒鯥
黒鯥のフンワリとした脂のコクと身の熟れ具合が半端無く素晴らしい逸品。
その前の伊佐木の旨味も初夏に向けて脂の乗りも良くなって来て美味いなぁと思っていたところのこの身質。
正に今時期の鮪に比類する程の旨味のトータルバランスの素晴らしい素材は中々無いであろう。
親方に伺うと、築地でも神津島の物は品が殆ど無く、リクエストしていても中々手に入らないと言う逸品。
正に"神'だね!
旨味の濃厚さ
黒鯥 >>> 鯵 > 伊佐木
【7月の鮨】
この日は何と言っても岸和田の真鯵が白眉で、トップシーズンの出水の真鯵に勝るとも劣らない身質と旨味。
こんな神素材が大阪湾内にいようとは世間はまだまだ広い!(当方が知らぬだけw)
他には鳥貝の代わりにと供された石垣貝の身がぶ厚く、甘味も強くて香りも素晴らしくてシャリとの相性も申し分なかった。
そして久しぶりに登場の鯖棒寿司は胡麻鯖でのラインナップ。
秋以降に真鯖で登場予定だ。
◉青森産本アラ9k台
◉黒鯥 3日寝かせ
◉金目鯛昆布〆
◉噴火湾産定置網92kg本鮪赤身
◉噴火湾産定置網92kg本鮪中トロ
◉噴火湾産定置網92kg本鮪大トロ
◉小鰭
◉三重産1kg胡麻鯖棒鮨
◉岸和田産真鯵
◉岩手県産石垣貝
◉平貝
◉厚岸産馬糞海胆
◉長崎産車海老
◉穴子
◉鉄火手巻
◉玉子
【別注】
◉房州産黒鮑
◉蛤
◉干瓢朧巻き
4月は初めて夜の部で友人を連れて握りのみを堪能した。
しかし内容的には昼と変わらずで値段が上がるので、特に気張って夜訪問することも無い(親方にも言われた)。
何か昼と違う面(例えば鮪でも剥がしを施したり、昼には提供しない極上な種や部位を使用したりetc)をみせてくれるのかと期待したが、部位的にも技も同じなのでこちらでは握りだけなら昼が一番満足度が高いことは否めない。
それでも昼には単価的に出せない水松貝が出たし、16貫(+1巻)握ってもらったので頑張ってくれていることは感じ取れ、十分好感が持てる。
何よりも種質から観て、銀座鮨としては最上の部類に入る事は確かであろう。
【4月の鮨】
◉淡路産真鯛
2月までの淡路は最高の旨さであったが味わいは大分薄く淡くなっている。
◉縞鯵
◉宮崎油津産鮪赤身
◉那智勝浦産147kg中トロ血合岸 フレッシュ
◉銚子産137kg大トロ 1w
今時の鮪の味わいである。
赤身は厳しいが、血合岸は旨味と言うよりは鮪の風味を愉しむ具合。
大トロは中々秀逸で、シャリとの馴染み方が早く脂も軽い中にも寸時の余韻が心地良し。
◉佐賀産小鰭
◉細魚
◉出水産真鰺
鮪が落ちている分、〆物3貫は素材の旨味を存分に引き出された素晴らしい味わい。
小鰭も子を抱く時期で江戸前物は鮗(このしろ)サイズしか無く佐賀の皮目が柔らかい物を仕入れたと。喉元にグッとくる。
細魚も終息に向かっているが、本日の物は肉厚でイノシン酸もしっかりと存在感を表し、さっと酢に潜らせてから過度な味付をしていない朧を噛ませることによって細魚のイノシン酸の味わいが更に引き立つ。
〆物三兄弟の中で特に秀逸なのは鯵。
本日の個体には15分程塩を当て、握りる前に10秒程度酢に潜らせてから握る。
薬味に葱と生姜を添えられ、塩と酢で活性化した脂をサッパリさせることと旨味の輪郭をハッキリとさせる作用が機能していた。
◉三重産水松貝
こちらの仕込みはフレッシュで湯煎したりと火入れしないという。
湯に通すと黒皮を剥きやすくすることもあって施す職人も多いが、鈴木親方は生でも皮は剥けるし自分の好みはフレッシュという御考え。
初めの一噛みは水松貝の個性が出てくるので慣れていない人、貝類が苦手な人には合わないかもしれない。
当方は双方とも問題無く好きであり、素材本来の香りも逃さず戴けるところで悪く無い。
◉大分産赤貝
こちらも終盤だが、最後の咆哮を上げるが如し味わい。
◉平貝
◉墨烏賊
◉浜中産馬糞海胆
◉車海老
◉蛤
◉鉄火手巻
◉玉子
年明けからも毎月通っている鮨鈴木。
三ヶ月分の纏め上げのレビューとなる。
今のところ心和んで鮨を戴くには最適な店である。
味のブレも少なく安心して鈴木さんの鮨を愉しめている。
また、昼でも手を抜かない親方の姿勢が素晴らしい。
例えばネタは昼だとほとんどの店が事前に柵から切り置いてある物を俎板に並べてスタンバイするやり方だが、こちらは夜と同様客の目の前で柵から切り付ける。
(これ、結構多いパターンなので色々な鮨屋へ訪問して注目して観察してもらいたい!)
然るに空気に触れる時間も短いため、鮮度が断然違うしネタの乾きも違ってくるため、握りの味への影響にも繋がっていく。
刺身は柵から切りたての方が断然美味いということだ。
他の例だと、ラーメン屋のチャーシューだってカットしてある物は周りが硬くなり舌触りも悪くなり劣化も早い。注文を受けてラーメンが完成する刹那に切りたてのチャーシューだと味わいや旨味が全然違う。
また3月は一年のなかでも一番の端境期であり、どこの鮨屋も頭を悩ませながら仕事をしている。
しかし裏を返せば種の移り変わりでSTART&ENDを愉しむことが出来るとも言えよう。
ピークのモノを味わうのは難しい季節柄ではあるが、一年を通してどの様にネタが移り変わり、味わいが上がってくるのか楽しみではないか。
真の鮨喰いは3月を経験せずして鮨を語ることは仏作って魂入れずと言えよう。
今回は酢飯の酸味がやや柔らかく、塩分の尖りは感じずバランス型に寄った仕様のようだ。
【3月の鮨】
◉真鯛
◉九絵
◉那智勝浦 147kg鮪赤身
◉那智勝浦 147kg鮪中トロ
◉那智勝浦 147kg鮪大トロ カマ下
この時期としてはかなりの上物で、珍しく150kgに近い理想的な鮪が揚がったという。
今回は腹上一番のブロックからの提供。
先月の気仙沼の1本は真冬の鮪に勝るとも劣らぬ質であったという。
今年は千葉勝浦だったり気仙沼だったりと例年この時期には聴かない産地で極上物が揚がっている。
赤身は大人しめだが後発で酸味を感じ、中トロと大トロからはこの時期としては素晴らしい脂の質と乗り、鮪の香りを携えたモノ。
旨味の味蕾への到達初速が早く、サッと駆け抜ける余韻。正に春の一陣の風。
大トロの筋がやや硬めであったが、カマ下であること、これ以上の熟成は身の旨味を損ねることから今回の状態での提供となったと。
これは夜に剥がしで頂戴したい旨味のある部位だった。
◉小鰭
◉細魚
◉出水産真鯵
青魚3連弾は鈴木さんの真骨頂!
肉厚の其々の身は小鰭は〆、細魚と真鯵は酢洗いで。
親方も〆仕事は大好きだとのことで当方の好みとも大いに合っている。これからも楽しみ!
塩と酢で一際旨味が立った小鰭。
朧を噛ませるが、以前にも増して細魚の風味が上がって旨味も出している細魚。
噛む度に旨味が溢れ出る真鯵。
細魚の旨味は立たせるが旨味を損ねず邪魔をしない朧の仕事の変化に気がついた。
拝聴したところ、以前より甘味を低減させているとのこと。
奈可久や青木の奈可田系の朧はシッカリとした甘味があるのだが、チラシをやらなくなったためそこ迄甘味を立たせなくても良いのではという事になったのだという。
◉障泥烏賊
墨はもう子を抱いているのでアオリで。
◉大分赤貝
最後の咆哮。香り粘り良し!
◉愛媛鳥貝
これからに期待
◉海胆
◉車海老
◉蛤
穴子が無いので本日はこちらをと供される。
前回より歯切れ良くシャリとの一体感が増していた。
また蛤自体の旨味も上がっており満足度が高い。
◉鮪巻き
◉玉子
【2月の鮨】
◉鮃
◉九絵
◉三重産鰤
3日目だが身が熟れて脂も回って美味しい
◉那智勝浦鮪赤身 背
◉那智勝浦鮪中トロ 背
◉那智勝浦鮪大トロ 腹
フレッシュで軽やかな脂のノリ。
まるで作りたてのバターのような風味だ。
◉小鰭
◉エボ鯛 朧噛し
◉鯖棒鮨
◉墨烏賊
◉赤貝
◉馬糞海胆
◉車海老 小振りだが濃厚
◉穴子
◉鮪手巻
◉玉子
【1月の鮨】
◉気仙沼産3.2kg鮃
◉白甘鯛2.3kg
◉能登産鰤
◉大間産152kg鮪 赤身 背
◉大間産114kg鮪 中トロ 血合岸
◉大間産114kg鮪 大トロ カマ下
◉小鰭
◉細魚
◉高知室戸浜産鯖棒鮨
◉観音寺産赤貝
◉根室産蝦夷馬糞海胆
◉車海老
◉穴子
◉鮪海苔巻
◉玉子
【29.1.2追記】
12月は2回目の鈴木には両親を連れて再訪。
当方の美味いと思う店は全て連れていっているため、自然と舌も肥えている。
特に鮨にはうるさいのだ。
そんな中、鈴木親方の自然体かつ柔らかな人当たりで両親の心も解れて美味しくお鮨を戴けた。
どれもこれも全部美味かった!
この日の白眉は屋久島の一本釣りという2.3kgの縞鯵と123kgの大間の延縄本鮪霜降り。
双方ともサラリとした上質の脂ではあるが、後からグイグイと旨味が舌先から舌奥へ進軍してきて味蕾の奥に余韻として留まるのだ。
これは良いぞ~♪
また、最近江戸前の良い鯖が無かったので今回は小型ながらも金華山の身厚の鯖が手に入ったと。
この棒鮨が素晴らしく、鯖の嫌な面が一切無く良い面を存分に引き出した物。
鯖が苦手の母親もこちらの棒鮨には興味を持ち、10数年ぶりに鯖鮨を食べたが本当に美味しいと喜んでいた外連味無く美味い味であった。
当方の今年一の鮨は何だと問われれば、間違い無く鮨鈴木の”鯖の棒鮨”だと言えよう。母親の美味しそうに食べる顔を見て熟々思った次第w
随分立派な本山葵だったのでお伺いしたところ、御殿場産の真妻種の山葵でキロ単価が半端無く高価だそうだ。
以下この日に食べた内容。
◉鮃
◉鹿児島県産九絵 3.2kg
◉屋久島産縞鯵 一本釣り2.3kg 6日
◉大間産鮪赤身背側 184kg釣り 先週水曜 9日
◉大間産中トロ背側 〃 〃
◉大間産大トロ霜降 123kg延縄 先週土曜 6日
◉佐賀県産小鰭
◉金華山産鯖 棒鮨
◉赤貝
◉愛知県産平貝
◉浜中産蝦夷馬糞海胆
◉愛知県産天然車海老
◉対馬産穴子
◉鮪色々な部位の叩き巻
◉玉子 鞍掛
【追加】
◉水松貝
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【28.12.21追記】
本日は鰤、九絵、鮪、鯖が白眉。
今年も氷見が駄目らしく寒鰤宣言しない様だとのことで本日は富山の13kg超の物。しっとりとした身に脂の溶け出し具合が抜群に良く、こちらのシャリとのマリアージュも申し分無い。九絵は軽く炙られて握られるが奥から来る旨味成分が溢れ出す。双方とも嫌味でしつこい脂では無く質の高いコク深い味わいだ。
鮪は一昨日やま幸の社長が食べに来た時に仕入れた物(大間138kg延縄)で今季でもかなり極上物だったとのこと。鮪らしい独特の香りも感じられ、肌理細やかな赤ちゃんの肌の様な柔らかさで外連味の無い舌触り、口内に広がる濃厚かつ洗練された身と脂の旨味、それを受け止める炊き加減、調味加減の丁度良い酢飯とのコントラストによる複合的な美味さといったらこの上ない幸せ。特に血合岸の中トロは野趣溢れる鮪の本質的な旨味が感じられる秀逸なポテンシャルであった。ただ、例年の絶頂期の鮪と比較すると後味、旨さの余韻は残念ながら浅めだ。やはり餌となるスルメイカが今年激減している影響もあろうか。
鯖は小柴でここ数日は小型の物しか無くて苦慮していると仰られていたが、どうしてどうして厚みはキッチリとある立派な腰高な身の詰りと滑らかで癖のない旨味は流石だ。
海胆は馬糞が良い塩梅で素直な美味しさをシャリが包み込んで素材の甘味を引き立てていた。
穴子は大分脂が抜けて来ましたと親方。それでも肉厚で身はふっくらとして程良く甘味も立たせて穴子の奥底に眠る旨味を最大限に引き出そうとする軌跡がこの握りでよく現れている。脂が薄くなる冬から春は仕入れ時の目利きも重要だが、仕込や調味等の仕事でどれだけ穴子のポテンシャルを余す事なく引き出すかが重要なポイントとなろう。基本をしっかりと押さえられている鈴木さんの穴子もなかなかの一品だと思う。
この日味わった握りのラインナップは以下の通り。
◉下関産白甘鯛
◉富山産鰤13kg
◉下関角島(つのしま)産の九絵
◉大間産鮪138kg(縄)赤身
◉中トロ(血合岸)
◉大トロ(蛇腹)
◉小鰭
◉細魚
◉墨烏賊
◉赤貝
◉平貝
◉小柴産鯖の棒鮨
◉海胆盛り(浜中産馬糞、森産紫) はだて
◉車海老
◉対馬産穴子
◉中トロ手巻
◉玉子 握り
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【28.11初稿】
こちらは前々から気にはしていたが色々あって訪問のタイミングを逸していた。そんな時に信頼に足る友人より大変勧められ、それ程ならばと出張のある日に予約を入れて初訪問。
訪問のもう一つの決め手は当方鯖が大の好物で、バッテラ、棒寿司に目が無く試してみたくなったから。注文は初見だが、信頼置ける食べ友からの紹介なので昼のおまかせを事前予約済み。こちらの親方の鈴木孝尚さんは青木で12年修行されており、しっかりとした江戸前仕事の基盤は出来上がっているので安心して愉しめた。
結果からしてどの握りも満足のいく内容で驚いた。酢飯は奈可田の流れを汲む青木(親方は京橋与志乃で修行)の出なので米酢と砂糖も少し入っているものかと思ったが、これがどうして鈴木親方オリジナルと言えるシャリを完成させつつある。米酢も使うが青木では使われていない赤酢をブレンドしているのだという。塩の効かせ加減、酢のコーティングバランスは申し分無く、米の炊き上がりの張りのある仕上りで酢を纏わすことで適度な湿度が添加されており、噛めば米の旨味が弾ける。食感は噛んだ際の歯に跳ね返る弾力ある噛み応え、米の滑らかな舌触り、喉を通る際の喉越しと超力三重要点を見事にクリアしている。
創業当初は米酢でやっていたのだが、自分の仕事と仕入れる種との絡みからもっと円やかに旨味のあるシャリを構築していく方向性となったのだという。初めは塩を強くしてみたが不評で、試行錯誤の上で赤酢をブレンドしてみたらシックリ来たとのこと。親方自身はあまり酸っぱいのは苦手とのことで、しみづやとかみのような突出した酢加減では無いにしろ現在上手く馴れて来たと。それでも混ぜ始めた頃よりは酸味が効いてきたと親方。根幹のシャリに負けない上質な種への仕事も的確に為されており、種によって合う合わないの頻度は無かった。なので思ったより穏やかで優しい赤酢添加のシャリである。尻を蹴り上げて叱咤激励する鬼嫁タイプでは無く、穏やかながらも筋の通った気の利く良妻タイプ。それでも中盤から後半に至ってはシャリの味わいは増してくるので塩梅的には物足りないと言う感想には不成(ならず)、まるで椀の世界観にも通じる味わい。初め薄味で物足りないと思いきや、段々と味覚にフィットしていき最後にはビタッとアジャストしている。そんな見事な椀の極みの様な。
以上のことから基本嫋やか(たおやか)にコースは流れていく。ただし、瞠目すべき突出系の武器を兼ね備えつつもある。
そんなネタについては以下この日に戴いたおまかせの内容を参照すべし!
◉鮃
初手の白身の握りを戴くと、その店の技量、実力がわかる。フレッシュさも有りつつ見事な塩をしての脱水加減と寝かせ加減。ツルンと身の滑らかな舌触りで庖丁の入れ方の的確さも解る。身の熟れとシャリとの解け具合も申し分無い、美味い鮃の握りだ。
◉白甘鯛
水っぽさは無く程良い脱水加減で赤より旨味が強く凝縮されており、徐々に駆け上ってくる旨味エキスがシャリの力を借りて輪郭を露わにし出してくる。熟れ具合も丁度良い。一晩から二日程寝かせたものかな。
◉鮪赤身(200kg超 背の身)
赤身の鉄分の酸味に加えて脂の奥深いコクが顔を出して来た。
◉鮪中トロ(200kg超 背の身)
一番鮪の香りが立っており、旨味も充実していた。
◉鮪大トロ(100kg程 腹の霜降身)
しっとりとした保湿加減は背の方が合ったが、繊細な身の肌理細やかさはこちらに軍配。熟成日数は背の魚体の約半分だがシャリとの馴染みも申し分無い。
◉小鰭
漬け酢にも赤酢をブレンドさせたという小鰭は然程キツい〆加減では無いが不思議に物足り無さは感じない。皮目も柔らかく小鰭独特の風味も良い。
◉細魚
朧を噛ませて奈可田の仕事だ。
奈可久の細魚を思い出す懐かしい仕事。
閂の旨味の濃い塩で〆ただけの味わいも良いが、朧の存在が淡味の細魚の別な一面を掘り起こしてくれるこの握りも好きだなぁ。
◉鯖の棒鮨
本日一の白眉であり、只々旨味の集合体である。コースの中盤以降にインパクトのある鮨だ。しかし、これで完成形とせず、まだまだ美味くなる要素が秘められた発展系の鮨であると捉えて頂きたい!
青木でやられていた仕事ではあるが、親方曰く某テレビ番組での紹介まで鯖は普通に握って提供されていたのだと。何か他店と違う特色を出せないか考えてこの仕事を披露されたとのこと。青木との違いは上の昆布が向こうは真昆布でこちらは白板昆布。真昆布は硬いので提供されるまでにいくつかの工程を経なければならない。例えば柔らかくするために圧力鍋で蒸したりと手間暇がかかり、親方1人ではとても対処が出来ないと色々と苦心された結果が本日提供されている物だ。また白板だと味が染み込み易いのだという。
甘酢に漬けて柔らかな酸味と甘味、鯖の〆加減はやや穏やかだが鈍(なまくら)のような物足りなさは無い。そして酢飯の加減と三層からの酢の競演を口内での融合により完成する悦なる美味へと誘われる。昆布は白板を3枚乗せているがシャリとの一体感は損なわれておらず、一緒に食べても障らない。これは当方が関西以南地区で不満のある鯖棒寿司の弱点をクリアーした見事な逸品である。関西の寿司はどちらかというと和食の中の位置付けであるため、一握り、一欠片で完結させるような仕事とも違うし、和食の中の世界観を壊すような酢飯では無い。向こうの物はやや甘目で水分含有量も多く、中には柔らか目だったり様々だ。またシャリだけの勝負とはしない店もあり山葵葉や紫蘇が入ったり胡麻が入ったりと多様化している。それはそれで土地の食文化や店の個性もあるので、チョイスした店其々の味を楽しめばよい。そんな中でも塩と酢でキリっとしたシャリで最高に旨い鯖を乗せた棒寿司は食べたいと常々思っていたところ、この鈴木での出逢いは一つの願望が叶った当方アジャストの素晴らしい鯖棒寿司である。また、いづうのように乗せているが昆布は味付け用で硬いため外して食べる物もあり、鮨と一緒に昆布も食べれるようにと考えられている。
強いて言えば、これから鯖の旨味は増していくので、鯖の脂の旨味を更に引き立てるには酢〆の度合いにもっと遊びがあっても良い。当方思うに良質な魚の脂って、的確な塩と酢の〆加減を施すと、最上級なバターや生クリームのような濃厚かつ爽やかで円やかな旨味と変化する。旨味は強いが臭味やクドさは皆無の円やかな味わいとなる。
当方の最強の鯖の握りは今も昔も新橋しみづである。この超越した旨味を携えた鯖に近い種を導き出し、シャリとの融合を図って頂きたい。そうなれば数段進化した、見紛う事無き唯一無二の鈴木スペシャルと成り得るだろう。
さすればここ鈴木で鮨を食べた証(あかし)、強く印象に残る鮨としてこの棒寿司は一番のエントリーになろう。
◉赤貝
これから上がってくるであろう
◉いくら
敷き詰められたいくらの上にシャリが鎮座している逆転現象が起こっている。
これを観て、礼文島は酒壺の"丼うに"を思い出した。これはご飯の上に海胆が乗る通常のうに丼と完全に反対な、漁れたて海胆を丼一杯に盛り、ご飯が軽く乗っているという代物。正にそのいくらバージョンなのだ。いくらの味付けも醤油、酒、出汁のトライアングルの絶妙な塩梅で大好きな味わいだ。
◉馬糞海胆
今年の馬糞海胆は不漁でしたと。
それでも美味しい海胆は有るんだなぁ。
海苔の風味も宜しく美味しい組み合わせだ。何せ海胆は海藻を食べているんだから、海苔が海胆の邪魔するとか当方には当て嵌らない了見だ。
◉車海老
茹で上げの海老も美味いけど、自分的にはどうもシックリとこなかったという。
鈴木さんとしては茹で上げの美味さも良いが、冷まして塩が身に馴染んで甘味が開花してくる頃合が好きなのだと念持をお持ちである。とは言っても冷たく味の開かない物では無く適温での提供なので大きく甘味たっぷり味噌の香ばしい風味も馴染んで膨らんだ旨味を堪能させてもらった。
◉蛤
良い塩梅で輪郭のはっきりした味付けである。奈可田系の古風な煮物仕事に通じる、しっかりとした根幹の修行をされて来た職人の醸し出す大好きな味だ。
◉穴子
蛤同様煮物仕事が的確。
甘味をキチンと立たせないと穴子の真のポテンシャルは開花しないと当方は思っている。穴子の素材本来の力だけでは引き出されない魅力が濃口醤油、溜り醤油、砂糖(ザラメ)、酒、味醂等でパッと花開くのだ。ツメも伝統の深いコクとキレのある味だ。
◉鮪手巻
言うこと無し!またこの海苔の風味が良いのだ。
海苔は木更津産の江戸前で青木で使っている物と同様の海苔を仕入れているとのこと。
◉玉子
奈可田系の白身(鱧や鮃等)と山芋の玉子焼かと思いきや芝海老だという。
山芋の奥深いねっとりさと芝海老の香ばしい風味は美味しいがややしっとりさに欠けているかな。
次回はシャリと合わせて鞍掛で握ってもらおう。
3位
12回
2018/11訪問 2019/05/01
◉車海老、長芋、しめり海苔、美味出汁ジュレ
◉墨烏賊おかき揚げ、愛知県産藤九郎素揚げ
柔らかくもムチムチとした歯触り。
◉柿膾、大根、人参、胡瓜、水前寺海苔、アーモンド
胡麻クリーム
◉毛蟹の椀 鶯菜
ほとんどが毛蟹の贅沢な椀
◉青森の鮃、北海道の真鱈白子
醤油、ポン酢
◉大間産90kg背トロ
今週ほとんど鮪が取れなかった中での苦肉の部位だが流石の味。
やや筋はあるが硬さは上手く熟れており口に障るというレベルでは無いのも巧み。
◉柳鰈の一夜干し、蕪餡、新いくら、黄柚子
海水と同じ濃度の塩水に一晩浸けて焼き上げる。
背の身と腹の身のセット。
◉但馬牛A5のすきしゃぶ仕立、敷き豆腐、舞茸
◉羽田産穴子の煮焼き、焼き茄子、春菊、銀餡
◉淡路島産真鯛の鯛茶漬け
蕪かつら剥きに水菜、燻り人参、胡瓜
◉シャインマスカット、La France
La Franceと洋梨のすり流し、ワインジュレ
【日本酒】
◎天青 辛口純米
◎澤屋まつもと 純米大吟醸
◎横山五十 純米大吟醸
恒例の両親と盛夏時のまき村を味わう。
◉シマボタンエビ
芋茎
長芋
梅肉ジュレ
◉ゴールドラッシュ(玉蜀黍)手毬揚げ 新銀杏(翡翠銀杏)
◉島根産小豆羽太1.2kgの椀
加熱調理を経ると白身の王様の風格漂う小豆羽太。
まき村の吸い地とベストマッチ。
◉銚子外湾真子鰈 朝7時〆
塩昆布、塩、酢橘、山葵
◉噴火湾産40kg本鮪
湿り海苔 山芋 山葵
◉大原産雌貝鮑と利尻島産蝦夷馬糞海胆、冬瓜の吉野煮
もう言うことない美味!
◉鱧の炙り鮨
ポン酢、梅肉
◉鮎の一夜干しと天ぷら
一夜干し美味し!
◉但馬牛のすきシャブ風
◉羽田沖穴子のご飯、牛蒡、山椒
こ、これは•••
途轍も無く•••
う、ま、い、ぞぉおおおーーー!!!
もうこれは今まで食べてきた超力史上一番美味い穴子飯である。
江戸前独特の香りと牛蒡の根菜独特の香りが実にマッチしていて最高に美味い!
そう言えばどぜう鍋でも牛蒡は抜群に合うので欠かせないな。
◉岡山の桃のコンポート、シャインマスカット
桃は煮過ぎないで半生の状態
◎天青
◎越乃寒梅 無垢 純米大吟醸
◎墨ノ江 谷風
◎墨ノ江 600k
この日は両親と定番のまき村の料理を愉しむ。
梅雨時のまき村さんでの楽しみとは•••♪
【30年6月の献立】
◉【先付】3種
•南京、長芋、赤パプリカ、若布、生姜の酢の物
•玉蜀黍のかき玉揚げ
•皐月和え(白和え)
新蓮根、胡瓜、大根、アーモンド
◉【椀】
千倉産黒鮑と玉子豆腐の椀 吸い口 青柚子
夏の定番スペシャリテのなりつつある椀物。
◉【向付1】
天草産鱧
こちらの鱧は湯に落としていない。
水っぽくなるから。
塩で戴くと身がネットリとして来て奥底の旨味がグッと引き立てられてくる。
香りも塩の方が素材本来の風味をより強く感じられる。
◉【向付2】
佐渡産本鮪 剣先烏賊
定置網の30kgだったかな。
中坊サイズ以下で凄い旨味。
夏の国産本鮪としてはかなりレベルの高いもので、鮨屋も裸足で逃げ出す質。
銀座某鮨屋の親方からうかがった話では、鮪でも名を馳せた水谷翁もここの鮪美味ぇなぁと褒めていた程。
板長の話では、以前南大井に水谷翁が住居を構えていた頃はよく旧店にお見えになっていたという。
そう、ここまき村でも鮪の卸は当時藤田水産だったから卸繋がりでもあったのだ。
◉【蒸物】
4時間蒸した黒鮑 根室馬糞海胆 肝ソース
これは超白眉!!!
これも牧村板長のスペシャリテと言っても過言では無い、昨年も戴いた逸品。
もう何も語る必要の無い超絶美味。
器が鮑の形をしたもので裏にも趣向が施されていて観て楽しい、食べて楽しいの一時である。
◉【凌ぎ1】
江戸前梅雨穴子の一本寿司
加賀太胡瓜と新生姜の巻物
獅子唐揚げ
この独特の土臭い野趣溢れる風味と脂の乗りは江戸前でも羽田沖ならではの味わい。
梅雨時の栄養分を蓄え始めた頃の穴子は非常に美味。
昨年も戴いている羽田沖穴子の一本寿司は美味くて和食屋ナンバー1!
鮨屋ではないのでシャリは和食屋の味付けと炊き加減だ。
◉【凌ぎ2】
石川輪島産鰧(おこぜ)の色々
これは白眉!!
捌いてもずっと生きてた程の生命力豊かな魚でしたと。
身と内臓全てをこの一皿に盛り込む。
身には子を塗してあり一仕事されて美味しい。
皮は軽く炙って香ばしさを出したりと部位によって手当。
ポン酢と出汁の調合具合も申し分無く鰧を引き立てている。
食べ終わると皿が番傘模様であった楽しい趣向。
◉【強肴】
但馬牛イチボのローストビーフ
焼き茄子
イチボも美味いもんだ。
美味出汁も超美味い。
茗荷と和辛子が凄い良い働きをしている。
◉【食事】
岐阜長良川産鮎のご飯
これも昨年頂戴しているが、何と言っても蓋を開けた瞬間立ち昇って来る高貴な香りが堪らなく良い!
そして口の中いっぱいに広がる香魚たる鮎の風味。
丁寧に骨抜きした後に一夜干ししてイノシン酸を増幅させている。
◉【デザート】この日は珍しく2種
•静岡産マスクメロンのクラウン
スイカ
•牛乳プリンと小豆 抹茶ソース
◎【日本酒】
・天青風露 特別本醸造
・五凜 純米大吟醸 磨き45%
・澤屋まつもと 守破離
今日一は桑名産本蛤の椀。
これ程までに蛤の持ちうる要素がギュッと詰まった吸物は戴いたことが無い。
蛤特有の香りと強過ぎない絶妙なコハク酸の旨味の抽出バランスが優れていた。
この椀は長らく通い続ける当方にとっても初めての逢瀬であった。
◉ 【先付1】
・宮城県産紫海胆 生湯葉 菜の花 美味出汁
◉ 【先付2】
・飯蛸 ウルイ 辛子酢味噌
◉【椀】
桑名産本蛤の椀 若布 木の芽
◉【向付1】
豊後水道産2.0kg火曜日締め4日目虎河豚
余市の鮟肝
◉【向付2】舞鶴産30kg本鮪 赤身中トロ大トロ
◉【焼物】
甘鯛の焼き浸し 香味野菜黒胡椒掛け
独活、椎茸、京人参、牛蒡、三つ葉、さやえんどう
◉【焚物】車海老の叩き真薯 鹿児島産筍 薇 銀餡
◉【強肴】 但馬牛A5ランプ肉 低温真空調理 長崎県産アスパラガス バター
◉【凌ぎ】
喉黒炙り 湿り海苔
◉【食事】
・鯛茶漬
・南魚沼市塩沢産コシヒカリ
・香の物
本日の真鯛は淡路島産
香の物はキャベツで胡瓜、ラディッシュをサンドした物
と大根の糠漬
◉【デザート】
村田農園の苺と小豆餡 杏仁豆腐
◎【日本酒】
・澤屋まつもと 純米大吟醸
・日高見
・墨之江 谷風
・乾坤一 純米吟醸
※半合づつ
年明け早々まき村さんへ。
【30年1月の献立】
◉【先付】3種
•数の子ポテト和え
数の子と合わせるは、少々マヨネーズを入れたポテトサラダ風にしたもの。
•車海老 梅出汁ジュレ掛け 山芋 おくら
ジュレには梅を合わせてあるが、酸味が出過ぎぬ様抑えてサッパリと戴ける。
•生鱈子の炊いたもの 菜の花 胡麻クリーム
◉【椀】豊後水道産天然虎河豚の白子と自家製唐墨
唐墨椀は何度も戴いてきているが、虎河豚白子と合わせた椀は初めて。
吸い地には軽く葛でトロみを付けている真冬の椀らしい一品。
かなりのグレードアップ品であるが、サラマンダーで軽く焦げ目を付け香ばしさを出した白子は出汁の邪魔をせず浸透し、味に深みを与える。
エグい個性を立たせずに椀の世界の一役を担う一員としての存在。
あくまでも主役は吸い地をどう演出するか、コーディネートするかだ。
そこにはフンワリと摺り下ろした大根の存在が全ての素材の鎹(かすがい)となって見事に一つの世界へと纏め上げている。
言うなれば総監督の様な存在。
唐墨と河豚白子の二大スターにどうやってこの椀という世界を引き立て合い、演じてもらうか!
二大スターは椀の世界を壊しすぎぬ様、トロみが利かせてある吸い地の緻密な計算。
いき過ぎる(トロみが強すぎる)と二大スターを袖にするマドンナに成ってしまうところであるが、それでは物語が成り立たない。
ジャケにし過ぎず、絡むところは絡み、必要に応じて甘えていく巧みな操縦術と言うべきか。
また、吸い口の黄柚子や鶯菜の名バイプレーヤーぶりも忘れてはならない!
物語、世界観の中の一服の清涼感を醸し出す。
今回の椀も面白き趣向で恐れ入った。
◉【向付1】豊後水道天然虎河豚(2.0kg)
ポン酢には軽く叩いた余市の鮟肝が添えてある。
これを添えて戴くと、虎河豚のまた違った一面が垣間見れる。
それにしてもこの余市の鮟肝と自家製ポン酢との相性は神懸かり的な美味さ!
これだけで酒が進む(笑)
◉【向付2】舞鶴産本鮪(30kg)
◉【焼物】まき村風ぶり大根(氷見の寒鰤、風呂吹き大根 菠薐草)
寒鰤は軽く照り焼きにし、単体で戴いても十分に美味しいのだが、一緒に戴けば、お口の中で即席ぶり大根になる趣向。
ご飯と合わすほどの濃い照り焼きの味付けでは無く、あくまでもコースの中の一員としての立場を貫き通す。
◉【焚物】鹿児島産寒中若筍と若布 木の芽
早春への思い
◉【凌ぎ】豊後水道天然虎河豚の頭
アラの中でも河豚の頭の部位を丸ごと戴くのは初めて。
河豚本来の旨味とコクが力強い味わいで、そのままでも十分美味い。
まき村自家製のポン酢に合わせて食べると更に美味い!
◉【強肴】但馬牛A5のすきしゃぶ 白菜の芯
◉【食事】鯛茶(淡路島)
◉【デザート】紅マドンナ(苺)、クラウンマスクメロン、蜜柑のアングレーズソース
濃厚なアングレーズソースに負けない風味の果物に、仄かに利かせたミントの香りが心地良い。
◎澤屋まつもと 純米大吟醸
◎五凜 純米大吟醸 磨き45%
◎墨廼江 600k 大吟醸原酒
冬の食材を楽しみにまき村さんへ。
【29年12月の献立】
◉【先付】柿と紅白膾の胡麻クリーム掛け
これは昨年も戴いたまき村定番となりつつある先付。
観て鮮やか、食べて満足、正に誇れる日本料理!
大根と京人参は軽く酢漬けされており、ソースには酢は加えられていない。
短冊型に切られた柿は硬過ぎず柔らか過ぎずに適度にサックリとした歯触りが心地良く、甘味、旨味のバランスが素晴らしい。
柿の程良い糖度と大根と京人参の紅白膾の仄かな酸味が胡麻クリームとの融和を図っており、それはまるで胡麻ソースにはフルーツが入っているのかと錯覚してしまう程。
料理全体のバランスを取るためにそれぞれに施された切り付け、味付けが見事にお味に反映されている。
柿にコクがあるため、大根と京人参で酸味を、胡瓜は瑞々しく軽いタッチで柿と寄り添う。
緑のもみじと合わせるかの様に、緑々しい胡瓜を用いているのが憎い演出。
最後にアーモンドを散らして香ばしさを出し、水前寺海苔で塩の香りもアクセントにして風味に奥行きを持たせていた。
紅葉の器も翌日で今年のお役御免とのこと。
深い秋のひと時の爽やかな風の様に料理に彩りを与え、器も己のみでは射出せない膨よかな色合いを共に照らし合わすかの様に生き生きとしていた。
2枚だけ若い緑の葉との対比も良く、胡瓜と呼応していた。
◉【椀】車海老真薯の椀 鶯菜 黄柚子
何度か戴いている椀種だが、以前よりグレードアップされているこの椀。
3/2程は活の車海老をブツ切りにし、残りを擂鉢で当たって滑らかにつなぎとしての役割を果たす。
全てが車海老100%の素材の旨味が全面的に押し出してくる。
吸い地の昆布と鰹のバランスも良く、比重としてはやや昆布の割合高めに車海老の旨さを引き立てていた。
◉【向付1】豊後水道天然虎河豚
今回は1.3kgとやや小振りだが、以前より牧村さんはあまり大きな虎は使われない。
せいぜい2kg程だ。
しかし味わい至って深く、イノシン酸の旨味がジンワリと舌を覆っていく。
先ずはそのまま戴いてジンワリ、次に分葱を巻いてポン酢に付けて戴き更にジンワリとした旨味が口一杯に広がっていく。
三河と遠江も良いお味だ。
◉【向付2】氷見産寒鰤
虎河豚からの流れが見事で自然と鰤に舌がアジャストしていく
何たる綺麗な身の旨味、何たる綺麗な脂のコクで間違い無く今季一!
魚体12kgの堂々たる風格で切り身からも煌々と光を放っており、牧村板長の庖丁の冴えで切断面の滑らかにして口当りは撫でやかに心地良い。
背と腹と愉しめる様になっているのも嬉しい。
身と脂のバランスも神掛かっているね。
年を越すとバランスが脂の方に傾いていくため、刺身で戴くには12月までがベスト!
添え物の大根おろし、拍子木切りの山芋、本山葵、そして忘れてはならぬしめり海苔を乗せて戴いたところ、更に奥行きのある深遠なる旨味に天壌無窮(てんじょうむきゅう)が如し余韻に酔いしれる。
そこで手取川をキュッとやって味を膨らませつつも未練無く余韻を断ち切る。
また、深い紫蘇色の器が寒鰤の色合いと見事に調和している所も見逃せない。
◉【強肴】佐島産甘鯛、椎茸、江戸春(春菊)、蕪のソース
蕪のソースが秀逸で、すりおろした蕪を出汁で伸ばし、軽く吉野葛で整えた物だ。
出汁は蕪の個性を消さない程度に旨味を利かせてあり、蕪の風味を最大限に引き上げる仕様。
更にしっとりと焼き上がった甘鯛を優しく包み込み、脂と溶け合って旨味を伸ばしていく。
肉厚の椎茸が美味しいこと!
口直しの春菊は江戸前の物で、苦味やエグ味が柔らかく、風味があるのが特徴。
◉【酢物】津居山産松葉蟹
提供温度が冷た目であったのだけが残念。
身の入りや旨味は相応。
三国や間人等の近場の漁場物と比べればそれなりだが、十分に味わいある蟹だ。
◉【焼物】秋田産鴨葱、リンゴおろし、藤九郎銀杏
本日一の白眉!
肉厚で弾力のある見事な鴨肉には的確な火入れが施され、噛むとジュッとフレッシュな旨味が溢れ出てくる。
色々な所で鴨肉は好物なので戴いて来ているが、これ程しっとりとして瑞々しく旨味溢れる焼き方の鴨肉を戴いたのは正直初めてかもしれない。
皮目はカリッと焼き上げ、身と皮の間のゼラチンが上手く活性化しており艶めかしくネットリとしつつもサラリとした脂の旨味がまた身のコクのある美味しさを引き立て、口内は幸福感で満たされる。
また、葱は芯を抜いて美味しい外側だけをチョイこんがり焼いて、一口大に切られた鴨肉の上に鎮座し、葱の甘味と香ばしさが更なる旨味をアシストする。
添えてある大根おろしが憎い演出。
ただの大根おろしかと思いきや、すりおろした中に賽の目に林檎が仕込まれていた。
鴨肉ってちょっとした甘味を展開すると旨味が倍加してくる。
もう一つの添え物の銀杏も、大きな藤九郎銀杏だ。昔から変わらぬ一品で美味い!
控えめながらも華のある円形の器は九谷焼とのこと。
これ初めて観た!
◉【蒸物】湯葉と雲子 美味出汁餡
冬の味覚の雲子(真鱈の白子)にトロリとコクのある湯葉を合わせて蒸し上げ、仕上げに美味出汁餡を掛けた一品。
極少量の生姜の利かせ方が野暮ったく無くて良い。
これは身体の芯から温まる逸品だ。
こんなシンプルな一品にも我々素人目からは想像し得ない様な幾通りの工夫が凝らされているのであろう。
◉【食事】津居山産香箱蟹と松葉蟹の蟹飯
香箱蟹を使いたいがどうするかを考えた所、ご飯にする事で蟹の旨味を味わってもらう事となったという。
雌の内子と外子、松葉蟹の胴の部分をご飯と混ぜて戴く。
ご飯の出汁も蟹を使って旨味を利かせてほんのりと仕込まれた生姜も出しゃばらずに良いアクセントとなっている。
蟹の旨味がギュっと詰り、お焦げでは凝縮した香ばしい旨味を愉しめた。
◉【デザート】越後姫と山形ラフランス、ラフランスのソース
満足感のある甘味と後口のほんのりと酸味のバランスが素晴らしい均衡を保っている。
板長も越後姫と出会ってからは味のバランスに惚れ込み、仕入れているとのこと。
ラフランスもバランスの良い塩梅。
下のラフランスソースと上の白ワインのジュレが果物の旨さを引き立てている。
【日本酒】
◎天青
◎手取川 石川
色々とご配慮頂き、牧村板長を交えての料理談義、食材談義も愉しく、今回も豊かな時間を過ごさせて頂いた。
この日は両親を伴って定番のまき村へ。
ここが一番美味いし落ち着いて料理を愉しめるとずーっと好評を得ている。
さて、秋の味覚、頂戴しよう。
それにしても松茸をお願いしていたこともあり牧村板長とママさんから伺ったのだが、創業してから今年程松茸の不作の年は無く、また価格も酷く高騰してしまっており不本意ながらお客様にご負担を掛けてしまうことになってしまってと。
この時期、頼りの国内でも有数の松茸の産地の長野産は虫喰いで中にスが入ってしまっているのが多くてとてもお料理の前面に出せる代物ではないとの事で使えず。
しかも松茸が店頭に並んでいないという緊急事態が発生したのも板長の料理人人生でも初めてという松茸未曾有の年。
本日の品は長年のおろし業者の付き合いから岩手産の選りすぐりを調達可能となって今日お出しする事が叶いましたと。
傘の開いていない物は茶碗蒸しに、開いた物は土鍋ご飯で提供され、用途によって使い分けされていた。
【先付】車海老、帆立の酢ジュレ、山芋叩き、若芽
文句無しの美味しさで、酸味が程良く利いていてスタートとしてベストチョイスの先付だ。
海老も帆立も頗る甘い。
【椀代り】松茸の茶碗蒸し
香り鮮烈味深淵。
蓋を開けて香りがググンと立ち昇る。
こう来たかーと思った。
そして板長のニヤリと笑顔がw
松茸は傘が開いていない物を薄くスライスした生という今までこちらで戴いた事の無い新たなる試み。
土瓶蒸しでも松茸の良き香りや味は出汁に滲み出て最高に美味しいのだが、純粋に松茸の風味を愉しむのなら断然こちらが上だ。
出汁代わりの茶碗蒸しの熱で程良く蒸された松茸は単体では発揮し得なかった高貴なる香りを射出して旨味も活性化させていた。
ポイントはこの切り方だ!
薄くスライスする事で、熱を入り易くして旨味と香りの活性化を図っているのだ。
これは今まで有る様でお目にかかった事の無い逸品であった。
【向付】大間産本鮪(赤身、中トロ、大トロ)、鮃、達磨烏賊
この時期の大間にしてみればかなり美味い鮪だ。
上から赤身、中トロ、大トロと配置されており、鮪の部位違いの味を愉しめる配慮。
昔から牧村さんの鮪を戴いているか、一貫して味わいに疑問符が残るような物は無い事が凄い。
それは鮪おろし先が変わっても、それを客に悟られない様に質を落さず厳しく選び抜かれている眼力と人柄があっての事であろう。
有名おろしからピンの鮪を仕入れていてもいずれは自分の店が傾いてしまう。
愚かなピン争奪戦からは早々に撤退し(元々参加していないが)、そこで自分のコースの一員として担う役割を果たせなくなったところは、数多ある市場内の業者から適正価格で入れられるおろしから調達すれば良い。
またこの達磨烏賊(剣先)の庖丁の入れ方が見事で口の中でネットリと旨味が絡み付く。
【焼物、揚物】梭子魚若狭焼き、松茸コロッケ、和栗
松茸のコロッケはお初だ!
熱いうちにとのことで初めに手を付けた。
程良くマッシュされたジャガイモ、そっと後ろで引き立て役を買っている牛肉のミンチ、そして薄切りながら存在感を十二分に発揮している松茸とのコラボはコロッケ界の貴公子とでも言おうか。
大変バランス感覚に優れた配合だ。
旨味の強過ぎるジャガイモや牛肉だと松茸の存在感が希薄になり、何を主眼としているのかボヤけてわからなくなる。
また松茸もコロッケという料理の概念からはみ出さぬ様ある意味制御された感を受けた。
それが超絶的なバランスを生み出しているのだ。
梭子魚(かます)の質も良く、最高の火の入れ方で皮目香ばしく中フックラふわふわジューシーなのだ。
口直しの和栗も絶品!
【煮物】大原産雌貝鮑、芋茎
シーズン終盤になるが、立派な雌貝をじっくり蒸した物だ。
3時間程蒸し上げたものだ。
鮑の馥郁たる香り、ムチっとして歯に押し返してくる弾力は味付けは違うがしみづの蒸し鮑に似ている物がある。
初夏に戴いた千倉の黒鮑も秀逸であったが、蒸したり煮たりする素材としては雌貝の方が口当たり柔らかでムッチリとした弾力感も愉しめる。
芋茎の煮浸しも単品でも注文したい美味さ。
シャキッとした食感を残し、出汁を良く染み込ませてある。
【蒸物】毛蟹真薯 蟹味噌 銀餡掛け
周りのコーティング部分だけ擂り身で、中は全て毛蟹という贅沢極りない真薯だ。
上にタップリと添えられた蟹味噌は蟹と海のエキスが詰まった極上の旨味。
銀餡も良い。
【強肴】松坂牛シャトーブリアンの芯の芯
茄子の煮浸し、無花果胡麻だれ
今までジャンルを問わず食べて来た東京の牛肉の中でも一番美味いシャトーブリアンだった。
肉の表面は良い具合にカラメル化させて旨みを閉じ込めに成功しており、その後遠火でじっくりと火を通し、中のレアな部分はほんのりと温かい。
ここはお魚でもそうだが肉への火入れが絶妙で、当方の好みに合う。
赤ちゃんの柔肌の様な肌理の細かい舌触りと、牛肉の噛み締める美味さも愉しむことが出来た神牛だ。
そこから容赦無く肉の旨味エキスがジュワッと出てくる。
挿しの部位ではないので垂れる程ではないが、皿に肉汁が溢れること露一つ無く、肉の組織全体にエキスを纏わせている、内包させているという表現の方がピッタリと来る。
これを特製醤油と和芥子で戴くのだから泣かせる。
牧村板長は当方の泣き所(好み)を熟知されているので、塩とかでは無く和食屋の腕の見せ所の醤油をあてて来たことが嬉しい。
いちいち聞かなかったが、醤油もこだわりの料理屋なら自分の所で複数の種類を調合しているものだ。
かく言う火入れも凄い、肉質は元より極上、食べ方も申し分無い。
板長の料理の技術や感性のみならず、素材の調達力も十二分にうかがえる逸品であった。
口直しの域を超えた焼き茄子の煮浸しも瑞々しいが余分な水分は抜けて旨味が凝縮した物。
もう一つの口直しの無花果の胡麻だれは、コースの一品料理と言われても遜色のない出来と美味さ。
余計な水分を排し、旨味が凝縮して濃厚な無花果の風味と甘味を愉しむ。
胡麻だれにはアーモンドスライスもさり気なく散らされており、味に一層の深みを与えていた。
【食事】岩手産松茸ご飯
今日の食事は鯛茶漬けかと思いきや、留椀の味噌汁が提供され、これはと思った!
板長直々に配膳頂いた土鍋の蓋を開ける。
本日の主役はここでも登場で、たくさんの松茸に彩られた炊き込みご飯に皆声が上がる。
客が見える前からご飯を研ぎ、出汁に浸し、客の食の進み加減で炊き上げ始められた、正に我々の行動に寄り添う様にライブの調理が施された松茸ご飯。
松茸以外余計な物は一切排除された、先程の椀代りの茶碗蒸しと通ずる潔さ。
松茸の香り鮮烈、歯応え活き活き、出汁の旨味濃過ぎず薄過ぎず絶妙と松茸のコラボ、土鍋で圧力を掛けてふっくらツヤツヤな見事な炊き上がりに惚れ惚れする。
美味いとしか形容のしようが無い。
【デザート】岡山産シャインマスカットと梨のオーロラ
松茸が不作の中、これ程までに考え尽くされ、無いなら無いなりに別の角度で料理を構築する臨機応変に対応するまき村の料理で今回も両親は大変満足していた。
いつもよりやや値段が上がってしまったが、常識の範囲内で店の利益の方が減ってしまっている事を理解せねばなるまい。
おろし業者も損をしていれば、大岡越前の三方一両損だ。
それぞれで損はするが丸く収まる。
いつ来ても何か新たな発見のある、長年通っている常連でも新しいお客さんでも双方愉しめる、そんなお店だ。
初夏のまき村で、酷暑を迎え撃つお料理に舌鼓
【先付】玉蜀黍の手毬揚げ、蓴菜と夏野菜、胡麻和え
初夏の先付としては口当たりの良い身体に馴染みやすい物ばかり。
牧村さん定番の玉蜀黍の手毬揚げは当方が初めて食べた糖度が半端なく濃厚なポタージュを戴いている錯覚に陥ったものだ。
出汁と酢の加減も程良き塩梅でお腹がこれからのご馳走を受け入れ易くするための胃の柔軟体操をさせてもらっている様だ。
叩いて丸くなったオクラは単体で戴いてもよし、他の夏野菜にソースの様に付けて戴いてもよしで面白い趣向だ。
胡麻和えは椎茸の旨味とアーモンドが心地良いアクセントとなって複合的な美味さを奏でる。
【椀】千枚鮑の薄口仕立て(黒鮑と玉子豆腐)
以前にも椀で玉子豆腐の組み合わせはあったが、鮑とのコンビネーションは初めて。
飾り包丁を入れて薄切にされた鮑は軽く葛粉を纏わせてあるが、出汁に己の旨味を即座に馴染ませ、且つ葛粉のコーティングでカスカスになり過ぎぬ程度に旨味の排出を抑えてある。
加えて食感も良くし味蕾への旨味の到達を早めていた。
出汁は椀種からの旨味も融合してこの上無き美味さ。
【向付1】天草産活鱧の焼き霜造り
これから旨味を増していくのであろうなという味わい。
梅肉ポン酢でサッパリと戴くのだが、下味だけのお味でも十分美味しい。
【向付2】気仙沼産鰹、舞鶴産達磨烏賊(剣先)
達磨烏賊のモッチリとしてネットリと濃厚に舌に絡み付く旨味は艶めかしく艶冶。
塩で戴くと更にネットリ感が増す。
鰹も初春のものから初夏へ向けて養分を蓄えてきたもので、赤身の旨味が濃くなってきている。
佐賀の湿り海苔をちょっと付けて食べると味わいアップ!
【蒸物】千葉県千倉産蒸し鮑と宮城県産紫海胆、長芋拍子木
鮑の殻を模した鮑貝皿の波模様、彩りを考慮しつつ立体的な素材の盛り付けが見事だ。
鮑は黒鮑を使用し、4時間蒸したものを大振りにカットして口福感で一杯となる趣向。
美味出汁ジュレの利かせ方も秀逸で肝ソースとの相性も良好でバランス感覚に優れた皿だ。
鮑、海胆、長芋、肝ソース、美味出汁ジュレに散らされた穂紫蘇の苦味も加えて全て口に含ませ、噛合わせた時の幸福感たるや筆舌し難し!!
それにしても椀の時の顔と、蒸し物になった時の顔とは全くの別人(別貝?)で、個性の引き出し、引き立て方の素晴らしい演出を観せてもらった。
【凌ぎ1】羽田沖穴子の炙り寿司
ほぼ一尾を使用した贅沢な一本握りだ。
今年の羽田沖は赤潮が大量発生して今後は漁が出来ないため本日が最後になる予定ですと牧村板長より説明あり。
今夏を振り返ると夏場は羽田沖をはじめとした江戸前穴子を愉しむ唯一の時期なのにそれが叶わなかった。
というわけで、こちらで今夏最後の貴重な沖穴子ちゃんを♪
焼きにした時の初夏の江戸前産は何とも抜群の香りで満ち溢れるね~♡
煮炊きには脂分の多い対馬も捨て難いが、焼きについては羽田や富津等の江戸前野趣溢れる風味に筋肉質且つ繊細な身の肉質は唯一無二だ。
そして蒸しと炙りの仕事を施した穴子の筆舌し難い爆発的な旨味は梅雨穴子の真骨頂と言ったところ。
漬け焼きのタレはサッパリとして穴子の邪魔をしないが香ばしさと軽い旨味の添加の役割を果たす。
軽く振られた擂り青柚子の爽やかな香りも食欲を増す。
酢飯は砂糖の甘味も抱持し、酢の酸味は穏やかで、あくまでも和食のコースの中の一員であることを確証付けていた。
【凌ぎ2】銚子産金目鯛の炙り寿司
金目鯛も炙りを入れると余計な脂が抜けて旨味が凝縮する。
ちょい甘酸っぱ味の和食のシャリともバッチリ合う完成度の高い和食屋の寿司だ。
【焼物】広島産真魚鰹の漬け焼き
花菖蒲の絵皿に盛られた真魚鰹は、漬け焼きの味噌の調味が良く、上手い具合に身へ味が浸透している。
シットリホックリとした焼き上がりで瑞々しい。
添えられた大根おろしの他、鰹節を塗した伏見唐辛子の輪切りの仄かな苦味がよい口直しとなり、更に真魚鰹を美味しくさせてくれる装置となっている。
【強肴】佐賀牛ザブトンのローストビーフ、焼き茄子
脂肪分の少ないザブトンの部位にジックリと火を通し、程良い肉の繊維を残して噛んで歯応えを愉しみ、旨味が溢れ出す事を愉しむ。
グレイビーソースではなく鰹と昆布の出汁の餡が上手くまとめており、和芥子のアクセントで肉の風味を引き立てていた。
焼き茄子の瑞々しい甘味とホロ苦い風味で口直しにもなり、肉の旨味を際立たせる。
【食事】長良川産鮎御飯
超白眉!
土鍋の蓋を開けた瞬間、皆の歓声が湧いた。
何とも豪勢でダイナミックな鮎御飯なのだろうと。
当方も長年通っているが、これ程までに鮎を敷き詰めた鮎御飯は観たことが無い。
(1人2尾の計算)
鮎は一夜干しして旨味を凝縮させている。
牧村さんの魚の一夜干しはどんな魚でも絶品だからなぁ♡
鮎は卸してから丁寧に小骨を抜き、内臓と塩水を混ぜたに汁に漬けてから一晩干したものだ。
御飯の炊き上がるタイミングを見計らって直前に炙り、炊き上がったばかりのご飯の上に乗せ、再度蓋をして軽く蒸らして味を馴染ませる。
客の前で初めて鮎と御飯を混ぜ合わせて供する。
半身は御飯の上に添えられた。
肝の苦味と旨味が愉しめ無いのは残念であったが、鮎そのものの素材の味をここまで引き出しておられることに凄味を感じた。
下地の御飯への味付け具合も鮎を邪魔すること無く、主役を引き立てる秀逸な味わい。
それは旦那が外で思いっきり能力を発揮させられる様そっと寄り添う出来た伴侶の様な。
鮎自体タンパクな風味と味わいの素材をこれ程までに旨味を開花させ、小骨一つ無い安心感と信頼感で一杯な鮎御飯は牧村夫妻そのものの優しさが一杯詰まった超絶美味い御飯だった。
【デザート】クリームチーズのムース、マンゴー、ワインゼリー
最後まで手抜き無しの牧村さんのコースの締めにふさわしいデザートだ。
クリームチーズを口当たり良くムースにして酸味を和らげ、マンゴーの甘味を上手くコントロールして別次元の味わいへと昇華させている。
【日本酒】この日のメニュー外まき村セレクト
◎五凛 純米大吟醸
◎墨廼江 吟星四十
◎墨廼江 600k 大吟醸原酒(お味見♪)
3月のまき村へ
この日は雛祭り仕様の献立。
◉帆立、紫海胆、山芋の美味出汁ジュレ掛け
◉津居山産松葉蟹真薯の椀 鶯菜 柚子
ほとんどが松葉蟹の贅沢な真薯。
◉青森産鮃、壱岐産鮪40kg、佐島産障泥烏賊
創業時より藤田の鮪であったが、現在は米彦の鮪とのこと。
この米彦の鮪も中々侮り難しで小型のチュウボウなのに旨味をしっかり主張してくる良品。
◉鰆の付焼き 蕗の薹 大根おろしに山椒
付焼き地に蕗の薹の身を浸して旨味を地に移したモノを繰り返し塗って仕上げる。
身のしっとりとした火入れも素晴らしいが、蕗の薹の柔らかい苦味が甘味のある鰆の脂と相まって新たな味覚を愉しむ。
◉八寸
•桑名の蛤、独活・山芋・油揚の刻んだモノ
•室津産赤貝、若芽、加減酢(”生姜)
酢は千鳥酢でマイルドな酸味に甘味も程良く赤貝の甘味を牽引する。生姜の風味がアクセント。
•大分産車海老 菜の花 豆腐と白胡麻の白和え
•淡路島産飯蛸 ウルイ 梅肉ジュレ
◉桜の葉寿司
竹岡産細魚、出水産春子、空豆、薑
◉鹿児島蒲生の筍と山形のタラの芽の天麩羅
◉但馬牛のしゃぶすき仕立 トマト アスパラ
◉松葉蟹の蟹味噌
◉鯛茶漬
淡路島産真鯛、南魚沼産こしひかり、香の物(大根と胡瓜の糠漬)、刻み海苔
◉デザート
くろばくらぶの栃乙女、トチオトメのプリン、苺ソース、ワインのジュレ
◎鄙願 大吟醸 半合
◎五凜 純米大吟醸 磨き45% 1合
◎澤屋まつもと 純米大吟醸 半合
この日は再確認も含めて牧村板長と出汁談義をし愉しい一時であった。
2月のまき村へ。
今日がお初の友人を伴って。
今回目を引いたのは、2種の梅の器。
それに伴って梅を巧みに使った料理に早春を感じる。
◉前菜
[その1]牡蠣の海苔巻き、空豆、河豚の煮凝り、フォアグラゼリー、玉子、赤ワインで煮た小梅
1月にも出たラインナップ。
人気の声が大きくリクエストに応えて今月もという事になったと。
[その2]竹岡産細魚の昆布締め梅肉ジュレ
多面的な梅の器が目を惹き、梅のジュレとの親和性を深くする。
梅ジュレは出汁に梅肉を濾して馴染ませたモノで、クエン酸の嫌味な角は取れており美味出汁と完璧に融合。
軽く塩と昆布で〆られた肉厚な細魚の旨味を控え目にアシストして魅力を演出している。
叩いた山芋も良きアクセント。
◉椀
鹿児島産活車海老と玉子豆腐の椀 芋茎の葉 柚子
椀種と椀妻が平置きとなって意表を突かれた配置。
普通であれば、玉子豆腐を下に敷き、車海老を上に置き妻と吸い口をあしらうかと思われるが理由を聴き損ねてしまった。
単なるビジュアル的なためだけとは思えない牧村さんの深謀が込められていると推察する(意外と理由は無いかもしれぬがw)。
椀種の車海老は先程まで生きていた活のモノで葛粉を塗してさっと湯に潜らせて甘味が極限にまで引き上げられている。
もう一つの椀種の玉子豆腐に妻の芋茎の先端の葉の青み、吸い口の柚子があしらわれている。
豆腐は円やかでくど過ぎない吸い地と馴染んで染み染みと旨さを堪能する作りとなっている。
また双方同時に味わうと甘味の幅が限り無く広がる何とも奥床しき椀だ。
◉向付
・豊後水道の天然虎河豚薄造り
1.6kgで3日寝かせたモノ
塩でも試してみたくなり、ご用意頂いたモノは対馬の塩とのこと。
塩だと身がネットリとしてくるから面白い。
・長崎壱岐産30kg本鮪
チュウボウクラスでこれ程旨味ある鮪は記憶に少ない。
赤身だけで無く、中トロ、大トロと部位ごとの提供で食べ手の心を掴んで離さない心憎い演出。
しかし突出し過ぎない統制の取れた旨味は牧村さんのコースを通しての一品の位置付けとしてよく理解出来る。
それはこちらに初めて来店して食べたコース料理としてのワンパーツ→鮪の美味しさの意味合いから変わらない概念。
今は藤田ではないが、しっかりとした卸より厳しい目で選び抜かれたモノであることは間違い無い。
◉焼物
山口産ぐじ若狭焼き
◉八寸
•根室産馬糞海胆と生湯葉の美味出汁ジュレ
•噴火湾産甘海老と芋茎の美味出汁ジュレ 調味梅肉添え
•煽烏賊のおかき揚げ
•ほうれん草ともやしの共和え
•ドンコ椎茸の白和え(豆腐)
•浅蜊と蕗の薹のマリネ
煽烏賊のムチっとした肉厚な食感は適度な歯応えで抑えられ、身肉の歯切れよく衣の香ばしい風味が烏賊のポテンシャルを最大限に引き出されていた。
調味梅肉は、数種類の梅肉の果肉取り出し裏漉ししたものを合わせて、酒に梅の種を入れて煎り酒とし、梅肉と合わせた物を梅肉と合わせた物を出汁ジュレに添えているとのこと。
浅蜊と蕗の薹の旨味と苦味の利かせ方が超絶的で印象深く舌と心に刻まれる。
突出し過ぎない絶妙な苦味は心地良き大人の味わいで牧村さんの技量の高さを改めて感じ入った次第だ。
◉強肴
天然虎河豚の腹出しの白子焼き
そのままでもイノシン酸が十二分に顔を出している旨味が凝縮された虎河豚。出汁のポン酢も美味!
◉強肴
宮崎牛のしゃぶすき仕立て 白菜の芯
◉食事
鯛茶漬け(本日は淡路島のモノ)
伊賀焼きの土鍋
水分量を吸い込む量が違う
中蓋無くても上手に炊ける釜
◉デザート
いばらキッス(苺)
ペルーのビーナスマンゴー
愛媛のせとか(柑橘)
ヨーグルトソース
白ワインのジュレ
単なるフルーツの寄せ集めの様な感じも受けるが牧村さんの手に掛かるとかなりクリエーティブな仕事をされていることに気付く。
ヨーグルトは自家製で酸味を程良く抑えたソースとしての役割を担い、酸味の利いた物には円やかにし、甘味が立つ物には酸味をプラスしてくれる良い意味で中庸化させた旨味の演出。
特にせとかの酸味に滑らかなヨーグルトソースが渾然一体となって小躍りしそうな程の一体感が創生されていた。
またワインジュレが鋭角的に香りは立たせているが軽く煮切ってあるためアルコール分は飛ばして旨味を残したジュレとなっており、ヨーグルトとは別角度からの仄かな酸が全体の味を引き締める。
◎日本酒
•日高見 1合
•澤屋まつもと 1合
•天青 茅ヶ崎 半合
お初の可愛い鳩型の酒器(鳩燗)は直に土や炭に入れて燗酒に出来るモノだ。
今回は酒に合う料理に磨きがかかったモノであったことと楽しいひと時に酒が進み過ぎてしまった。
松が明けて1年振りに両親を伴いまき村へ和食初め。
献立の内容は1月初旬なこともあって正月料理の様相もチラホラあったが、まき村さんらしい緻密な仕掛けもあったり定番モノがあったりと緩急織り交ぜて愉しませてもらった。
【まき村2017年1月の献立】
【先付】鹿児島産車海老の梅肉和え
うるい、叩き山芋、美味出汁ジュレ掛け
梅干と梅干の種を一日煮出して旨味エキスを車海老と和え、ジュレと合わせた一品
普通の車海老のジュレ掛けに見せて、初手から仕掛けをバシバシと掛けてくる業師だ。
【椀】唐墨と焼餅の薄葛仕立ての椀
大根おろし、鶯菜、柚子
以前にも戴いた記憶のあるスペシャリテな椀だが、バージョンが変わっている様な。
先ずはフワリと吸い口である黄柚子の香りが鼻腔を通り、薄く葛でとろみが掛った吸い地を味わう。
玄妙にして深淵、正に和食の華。
そして、当方の一番大好きな調味"King Of WAN”だ!
どこで食べてもここの椀の吸い地の美味さには勝てない当方基軸の出汁だ。
香ばしくて柔らかい。
餅は焼かれているが、滑らかで障りない舌触りでまるで搗(つ)きたての餅みたいだ。
何気ないようで、これは凄い技だわ。。。
焼けた硬い部分ははがしたのだろうか?将又遠火で炙って硬くなるギリギリで引き上げたのか?この微妙絶妙の狭間の戦いだ。
そこに大根おろしをふんわりと盛り、雪鍋の様で雪鍋でない不思議な感触。
一寸蕪蒸かと思わせるような舌触り。
【向付】大間産鮪と青森産鮃
しめり海苔、酢橘、山葵
京焼の緑緑とした器で刺身が映える。
向付の大間の鮪はまだ12月の力のある旨味と肌理の細かい舌触り。寒鮃は絶好調だ。
山葵はしっかりと辛いだけではなく、奥底に甘味もあり、ネットリと粘り気がある優れもの。
また、この海苔と一緒に鮪を食すと鮪の香りが更に引き立ち、旨味を増す。
【焼物】まき村風氷見産鰤大根
大和芋、青海苔、春菊若芽
これも何気ない寒鰤の照り焼きなのだが、身のふっくら感とシットリとした保湿量で口の中は旨味のエキスで溢れかえる。
敷き大根の出汁の含ませ方など超絶的で、鰤と一緒に戴くと双方の旨味が更に上がる。
【八寸代り】
{一皿目}海老と春子の手鞠寿司 菜の花西京漬 マイクロトマト
{二皿目}フォアグラゼリー、カステラ玉子、蒲鉾、小梅赤ワイン煮、千社唐(チシャトウ)の西京漬、蕪サーモン、数の子ポテト
{三皿目}黒豆・空豆を炊いたモノ、干し無花果のワイン煮
簡素で質素にみえるが、どれもこれも一手間も二手間も加えられた家庭では決して真似の出来ない逸品ばかり。
観る人が観れば絶対に分かるであろう。
これを普通という観念からしか捉えられない御仁はまだまだ修行不足だ。
例えば、フォアグラゼリー。
これは鶏をミンチにしてレーズンと胡桃を入れて炊く。
型に一度流してフォアグラを真ん中に入れて固めて、上にポルト酒のゼリーを流して固めて完成する。
複雑多岐にわたる幾層もの複合的な味わいは幸福を感じずにはいられない美味さである。
小梅は針で細かく刺した物をワインで煮てほんのりと甘い仕上がりになっている。
千枚蕪をサーモンで巻いたモノも美味しかった。
聴きそびれたが、カステラ玉子の仕事は江戸前鮨の玉子焼きとは全く違った方向の仕事で、焦げ一つ無い見事な仕上がり。
凄いフワフワなのだが適度なムッチリと弾力もある何とも不思議な食感。
そして口の中でシュワッと無くなってしまうのだ。強いて言えばハンペンをムッチリとさせた様な食感。
焼いているのか蒸しているのか。。。しかしカステラは型に流して焼く物だからなぁ。
味は抜群に美味く、先月戴いた銀座しのはらの玉子焼きの上を行く仕事。
【炊合】鹿児島県姶良市蒲生産の早掘り初筍含ませ煮
若芽、木の芽
正に新春の幸の味!
寒風にさらされず、外気より暖かな土の中で温々と滋養を蓄えて成長してきた山の恵みを頂戴した。
若い味だが3月以降の成熟したモノには無い柔らかな身と風味が素晴らしい。
【強肴】佐島産天然虎河豚の白子焼
佐島でも虎河豚捕れるんですかい?!と思わず聞いてしまったあまり知られていないと思われる佐島の天然虎河豚。
その白子を軽く焼いて美味ポン酢で戴いた。焼き白子って何だか焼きおにぎりや焼餅のような薫り高い香りが堪らない。
【強肴】佐賀牛(A5)すきしゃぶ仕立
白菜の芯(しん)
昨年も戴いた、これも定番化しつつある肴。
通い始めて以来、最後に追加注文対応で牛肉を用意されていたが、現在はおまかせコースの1パーツとして登場する。
牛肉で蕊を巻いて食べると非常に美味い!
牛のコク深い味わいを蕊がしっかり受け止め、サラリとした旨味に落ち着かせている。
牛と蕊への加熱加減が素晴らしいため、この組み合わせが成り立つ。
また、割り下に和芥子を少量溶いてあるのが憎い演出で牛肉を重くさせない工夫がここでも観える。
【食事】鯛茶漬け
香の物、海苔
今更何も言うことの無い美味さだが、1月の真鯛の美味さは本当に別格で海の魚の王者だ。
それにテッパンの胡麻ダレの美味さと相まって、炊きたてのご飯の美味しさと美味出汁と合わさって美味さの四重奏だ。
今回初めてお目にかかったのは、人参の燻りガッコ。これだけでご飯一膳いけちゃうぞ!
【水菓子】こみつ林檎、越後姫苺、松浦さんの紅マドンナ
水菓子まで手抜き無しの選び抜かれたフルーツ達。
お初のこみつ林檎の甘くて且つ爽やかな酸味もあるバランスのとれた素晴らしい林檎だ。
【日本酒】
◎獺祭 発泡にごり酒 山口
◎横山 五十 純米大吟醸 長崎
◎澤屋まつもと 純米大吟醸 京都
【28.11.25追記】
今回は初めてお誘いを受けての素敵な方々と嬉しい訪問。
久方ぶりのまき村を愉しませてもらう。
どの品も隙の無い美味しさで巧みに旨味を引き出された。レビューされている他のレビュワー様方よりも此方には相当古くから来させてもらっているが、本質を捉える基本軸は変わら無い中で新たな仕事もチラホラと散見されて古い客にも飽きさせないご主人牧村さんの枯渇しないアイディアとホスピタリティの素晴らしさに毎回感じ入る。
また新しい顏でママさんのサービスに惚れて今はアルバイトで勉強し、来年度からこちらで勤める事になった可愛い仲居さんも登場して益々目が離せなくなった(笑)
【まき村2016年11月の献立】
◉柿の胡麻和え、大根と京人参の酢漬、胡瓜、水前寺海苔、アーモンド
皿から楓の赤が映える紅葉に実りの秋の象徴の一つ"柿"がメインの前菜皿。中に2枚だけ葉が若い緑な物があり対比が良いね。素材に柿と京人参の橙色と赤色、胡瓜の緑色との対比とも繋がっているのも見逃せない。
短冊切にされた柿に紅白膾(大根、京人参)の酸味の濃淡の付け方が憎い演出。さっぱりと清涼感のある胡瓜に磯の香りが仄かに香る水前寺海苔。アーモンドの香ばしいアクセントも見逃せない。
これらを纏め上げるマエストロは白胡麻を軽く煎った物を擂鉢で丹念に当たった調味ペースト。柿の甘味、膾の酸味、水前寺海苔の塩味、口直し的な爽快感ある胡瓜と一見バラバラな素材に軽く下味をつけて胡麻ペーストと馴染みやすくしてある点も見逃せない!
システマティックな話を例えにすると、柿の胡麻和えという完成された料理は一つのシステムだ。
柿を始めとする野菜・藻類は主役のソフトウェア(アプリケーション)、調味はミドルウェア、胡麻ペーストはOSであろう。どれが欠けてもシステムは成り立たない。どれかのバランスが悪ければ上手く機能しない。
特に料理人の腕の見せ所はミドルウェアの当て方だ。ここを間違うとどんなに高級なソフトを導入しても料理の完成形となるシステムに対するパフォーマンスも下がり、献立たるハードを制御するファームとも上手く噛み合わないことにも繋がる。
まぁ、例え話が過ぎたが要は料理人の施し一つで最高品質の素材の生き死にが決まるという事だ。
◉車海老の椀 (輪島塗)、鶯菜、(吸い口)黄柚子
只々感嘆、正に日本料理の華。
これは以前に数度出逢っている椀種であるが、まき村の椀の3本の指に入る程大好きな味わいだ。
車海老から射出される甘味が半端無い。
真薯は口当りも完全に擂鉢で当たったフワフワな口当りな物と庖丁で粗めに叩く程度に留めてプリっとした食感を残して別角度からの旨味の捉え方が素晴らしい。
そして何よりも当方には牧村さんの吸い地が好きで好きで堪らない。井之頭五郎ならば「この吸い地、俺にドンピシャ!」と心で呟き捲るであろうこと必定。これぞ椀の吸い地と言える鋭敏なバランス感覚に溢れる超絶的な出汁加減。旨味をキチンと利かせ、塩分の乗り加減も程良いので物足りなさは皆無。始めから最後まで全く飽きる事無くいつまでも吸っていたい出汁だ。椀種と合わさって更に旨味を増すこの感動は社会人としてヒヨッ子だった頃から現在に至っても少しも変わっていない稀有な存在である。
◉大間の鮪と舞鶴産九絵 (器は乾山写し)
鮪は大間で赤身部分からは酸味がキリッと利いて且つ脂の旨味が広がる。シットリとした身の肌理細やかさに喉を通ったあとの心地良い旨味の余韻。しかしコースの中の一部として出しゃばった旨味では無い健気さを兼ね備える秀逸な鮪だ。
やはり鮪を選び抜く牧村さんの目利きの確かさが如実に現される魚だ。とても1.6kで提供される鮪の旨味ではない。既知の事だが改めて鮪は京都より東京だと思わされる。
九絵の身は柔らかくシットリとしているが淡味。身の旨味はこれから徐々に乗って来るであろう。ポン酢は美味いのでやや勝ってしまうので酢橘をチョッと絞って少しだけ付けて食べるのが良い。
◉津居山産松葉蟹
本日津居山から届いた活の松葉蟹を店で茹で上げる。
今日の蟹は良いですよ~と牧村さんが太鼓判を押された蟹は殻からはちきれんばかりのぷっくらとした身。身離れも良く、一噛みするその刹那、爆ぜる炭の如く瞬く間に蟹の旨味が広がる。茹で加減が丁度良い!只々甘い蟹身はそのままでも美味いのだが牧村さん特製の蟹酢に付けると身の甘味に統制が取れて別次元の味へと変化する。この蟹酢が只者では無く、酸味が非常に柔らかく角が取れており、生姜の絞り汁を一垂らし程度に落としてあって仄かだが爽やかな生姜の香りが愚直な甘味を引き締める。
また爪の身に蟹味噌も乗せてあってこれがまた得も言われぬ美味さ。チョイと味噌だけ味わい、ニンマリとして酒を呑む。そしたら贅沢にも爪の身と味噌を一口でやっつけてしまった!一口の幸福がカラダ全体を駆け巡る最高の逸品。
◉鰆の柚子幽庵焼き、茸のディップ(松茸、舞茸、椎茸、シメジ)、烏賊の塩辛(1日前に仕込んだフレッシュな塩辛)、いくら酢飯
幽庵地の柚子の効かせ方が神業で、ほんのり香る爽やかな風味がアッサリとした幽庵地のレベルアップを図り、鰆の本質的なポテンシャルを一にも二にも引き出していた。単体でも十分に美味しく、鰆の質の良さを如実に表されていた。皮目が美味いねぇ。
また、茸のディップが物凄い働き!当方もこちらには長く通っているが、この仕事は初めてである。松茸、舞茸、椎茸、シメジと4種の茸から射出されて幾重にも折り重なるグアニル酸の旨味が半端無く美味!そのままつまんでも物凄く美味いのだが、このディップを鰆に添えて食べるとイノシン酸とグアニル酸の旨味が見事に融合して複合的な美味さが顕現するのだ。籠めた力が此一時に発現するかの如しだ。
塩辛は提供前の前日に仕込んだフレッシュな肝。烏賊は軽く塩をして旨味を凝縮させてあり、新鮮な肝と合わさり酒が止まらなくなる。いくらは素材本来の旨さを邪魔しない塩がメインの控え目な塩梅で、以前のいくらと調味が違う。猪口の下に忍ばせている柔らかい酢飯と合わせての計算尽くの塩梅なのであろう。
◉帆立の煎餅揚げと海老芋揚げ出しの銀餡掛け 藤九郎銀杏 針柚子
微小に砕いた煎餅の衣の歯触りと、揚げたことによる香ばしい風味が大変素晴らしく、銀餡のビタっと来る塩梅と合わさってただの帆立が極上の逸品と化していた。帆立の甘味が半端無く、揚げの熱の入れ加減が絶妙でほんのりレアな感じと外側のホロリとした熱の入った貝柱の美味さったら他の帆立料理と比べてもレベルの違いを観た。
◉三重松坂牛のシャトーブリアン、茄子
醤油 辛子
癖の無い松坂牛の風味と旨味が外側をコーティングする焼き方で封じ込められており、噛むと肉汁が口内で弾け飛ぶが如く溢れ出すのだ。また風味良し辛味良しの辛子と醤油が単体で食べるヒレ肉よりも数倍にも倍加させた旨味と変化させる。牛肉と醤油って物凄く相性が良く当方はこの組合せが一番好きな食べ方である。何気に茄子の煮浸しも最高に美味い。
◉淡路島産真鯛の茶漬
今更何も言う事はない美味さ。
淡路島はこれからグングン脂と旨味が増してくる時期物として絶好調になる産地。この日の真鯛も素晴らしい品質で牧村さんの目利きの凄さに驚嘆する。これを戴くと京都をはじめ関西の料理屋にも全く引けを取らないと思わせてくれる。
なんせ創業から一貫して超一流の鯛茶漬を提供し続けられておられる。40代前半の新進気鋭の頃からずっと味あわせて戴いている身としては白身は関西なんて言う言葉も敬意はありつつも、東京でも美味い真鯛を出す店があるぞと強く言い続けて来たことが皆に評価されると当方の事の様に嬉しいのだ。
◉越後姫とラフランス ワインゼリーとラフランスのすり流し
最後のデザートまで隙が無い。
越後姫はお初だが糖度が凄いのに酸味が程良く利いてクドく無い口当り。ラフランスのすり流しソースも素晴らしい。
【日本酒】
◎獺祭スパークリング
◎加賀鳶 純米吟醸
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【28.2.3追記】
年明けてからのまき村で、大事な客人と舌鼓を打ち鳴らした。総じて味の強弱、バランス感覚が優れているなぁと感じるコース仕立てだった。
【まき村2016年2月の献立】
◉厚岸産牡蠣のと芹の湯葉蒸し 卸し生姜
寒いこの日のスタートとして好ましい品。大きな牡蠣はふっくらとしておりトロットロの湯葉が旨さを優しく包み込む。少量の生姜が全体を引き締めて良き仕事をしている。美味出汁餡は味強目だが、熱い料理でメリハリつけるには良い塩梅であった。芹の風味が春の訪れを予感させる。
◉竹岡産細魚と菜の花の梅肉ジュレ和え
昆布〆は3時間程。〆具合、脱水加減が丁度良く旨味を最大限に引き出していた。梅肉ジュレとの親和性も頗る高かった。
◉佐島産甘鯛の椀 芽蕪 大根 椎茸 (吸い口)柚子
備長炭で焼かれた甘鯛香ばしい香りが椀内を席巻しており、蓋を開けた瞬間に甘鯛とお出汁の複合的な香りが一気に立ち昇る。柔らかい吸い地の心地良さとの調和が素晴らしかった。下に敷かれていた大根の含め煮も絶品!椀は山中塗りの寒椿。ちなみに甘鯛だが、日本海側の甘鯛が有名だが、鮮度や輸送の事から近場の佐島であがる甘鯛は刺身などで使う事が多いとのこと。今回は椀種として焼き入れての扱い。
◉豊後水道虎河豚1.8kg
3日熟成のもの。牧村さんにお聞きすると外海より内湾の豊後水道や瀬戸内海あたりで揚がったものが美味いので好んで使っているとのこと。身によるが、良い天然虎河豚は最低3日間は寝かさないと身が活かって包丁が上手く入らないとのこと。また死後硬直も溶けて美味しい成分(イノシン酸)も存分に発揮されるとのこと。今回の皿は牧村さんお気に入りの物で、6枚しか手に入らなかったものとのこと。
◉山口県仙崎産本鮪 熊本の生海苔
この時期の鮪は段々濃厚な旨味は落ちてくるが、鮪の風味も良くサラリとした良質な脂が心地良く躍る。辛口の乾坤一が脂を拭い、旨味を引き立てる。しかも赤身は一切れで、他は上質な大トロ霜降りがふんだんに盛り付けられて幸せ一杯!またこの大トロは単体で食べてもクドくなくしっとりとした肌理と脂が美味い。鮪のトロが苦手な人は今の時期から夏場の物がお勧め。鮪の価格高騰は今に始まった事ではないが、現状のコースで今の金額での提供となると、以前の◉◎水産の鮪は仕入れられなくなったという。某有名高級鮨屋達が金に糸目を付けずに仕入れて行くので値段が吊り上がるようだ。しかし本日の鮪はや◎幸や◎田◉産にも引けを取らない良い鮪であった。牧村さんの眼力と引きの強さを改めて感じた次第である。
また、添え物の生の海苔が素晴らしい味わい。海苔の形に成形する前のもので軽く味が付いている。以前から美味しい鮪は提供されていたが、通常の海苔を正方形に切った物と山芋等がは添えられていたが、今回は生海苔と趣向を変えて出てきた。こいつを鮪と山葵をつけて戴くと、鮮烈かつ風味も豊かな味わいで鮪のお味が数段階アップするのだ。本当、鮪と海苔の相性って凄い合うのね♡
◉鰆の蕗の薹焼きと丹波黒豆
幽庵に近い地に蕗の薹をカラッと揚げたものを付けて鰆を漬ける。蕗の薹の苦味が鰆の、特に皮下の旨味の脂を苦味が和らげて調和させていた。
◉鹿児島産若筍と山口産車海老、空豆の銀餡掛け 木の芽(山椒の若芽)
車海老には葛粉を打って餡の乗りを良くする技法。若筍の鮮烈な香り、甘味、仄かな独特の風味が春の訪れを感じさせる。木の芽と戴くと更に春が近づく♪銀餡の塩梅はスタートの湯葉蒸しとは正反対に出汁の旨さがメインの柔らかな味付け。ちなみに筍は早いところでは11月あたりから出荷されているとのことで鹿児島等の九州、四国、また京都でも出始めるのだとか。お値段も高そうだ。
◉豊後水道虎河豚の白子
濃厚な白子の旨味を一口で頬張る幸せ。そして激熱かと思われた白子は口内で丁度良い温度加減になっていた心使いに感心した。
◉豚の角煮にポテト餡掛 京人参 菠薐草
豚の角煮は3時間程煮込み余分な脂を落とす。甘過ぎない豚の味わいを引き立てる味付け。ポテト餡がコクを増して和芥子がピリッと引き締め役。人参を炊く際に梅干しを入れ、途中で抜くとのこと。これで人参独特のエグ味や臭みを取り除くという。
◉鯛茶漬け
本日は淡路島産の真鯛1.8kg。大体2kg前後のものを朝〆して夜に使っているとのこと。
特製の土鍋で炊いたお米の蓋を開けた時の香りたるや堪えられ無い良い香り。炊き具合も硬さ、甘さ、香り、旨味、そして張り。トータルバランスが完璧で、このご飯だけでフィニッシュしても全然惜しく無い出来。胡麻ダレを塗した鯛をご飯に乗せて食べる幸せ、ご飯に乗せた身に熱々の出汁を掛けて食べる幸せ、最後にお焦げの香ばしい香りとパリっとした歯触りの心地良さ。この一品だけでもあぁ、ここに来て良かったなぁ〜と毎回毎回染み染みと思わせてくれる。
◉苺ミルクプリンと蜜柑ゼリー
新作のデザート(ていうか自分が来れなくて食べていないだけか?)。特に愛媛産の蜜柑を丸ごと絞り、そのままの旨さをゼリーにして封じ込めているのだから自然な甘さと香りと酸味を感じれる。これが本当の素材の味。
【日本酒】
◎加賀鳶山廃純米
鮪トロや味わいの強い肴に切れ味鋭いこちらの酒がピッタリ
◎加賀鳶純米大吟醸
虎河豚刺しや細魚のようなあっさりだが旨味の強い魚にピッタリの酒
◎乾坤一 純米吟醸
加賀鳶より辛口の酒で、後半の虎河豚の白子や豚角煮のポテト餡掛けの濃厚な味を引き立てて余韻をスパッと切るのに打ってつけの酒
総じてコース内容にメリハリがあり、強く押してきたと思ったらサラッと引いたり、全てを味わい尽くして完成するものだと感じさせてくれる。最近は材料自慢のどれもこれも強い旨味ばかりを提供する店も増えている。こういったコースの妙を手頃な値段で味あわせてくれる貴重な店である。今晩もご馳走様でした!
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【27.12.1追記】
1年数ヶ月振りのまき村へは両親を連れて再び帰って来た。今回は個室を用意して頂いた。先ずはママさん、次いでご主人の牧村さんが御挨拶にみえられた。御二人とも20年前とちっとも変わっていない。若々しくて優しくて。そして温かい。この御二人の提供される料理を戴けると思うだけで心躍る。弟子は今2人のようだが両人ともにこやかでサービスも丁寧。ご主人とママさんの薫陶を受けているだけあって大変人あたりが良い。本日の献立は以下のとおり。
【まき村2015年12月の献立】
◉車海老と湯葉の美味出汁ジュレ掛け
岩海苔、芹(先端の細身の部分)
◉鱈白子と唐墨の蕪みぞれ椀
◉青森産寒鮃、塩昆布、浅葱、酢橘
◉大間産鮪、のす前の海苔、山芋
◉子持ち柳鰈、大根、京人参
◉津居山産背子蟹、蟹酢ジュレ
◉仙台牛すき焼き風2枚、白菜ずい 70度の温度でシャブシャブする。余分な脂だけ落ちて旨味だけが残る。
◉鯛茶漬け
◉洋梨(ラフランス)のすり流しとカボチャのプリン
◎日本酒:獺祭発泡にごり酒
◎加賀鳶純米大吟醸
どれも手の込んだ、食べる客のことを思って丁寧に作り込まれた料理の数々。
才巻の車海老の甘さと湯葉の甘味が美味出汁のジュレをかすがいにして複合的な味わい。穂先の芹も香りとサクサクとした食感が良いアクセント。真鱈白子と唐墨を椀種に、すり流した蕪のみぞれ椀。白子のコクと唐墨のまったりとした旨味を蕪のみぞれが出汁に溶け合っていた。
青森の寒鮃は塩昆布に酢橘を一垂らししたものが、鮃のグルタミン酸の美味さを倍加させていた。大間の鮪も絶好調ではないか。牧村さんのコースの一品としての鮪は100kgを超えるとバランスを崩すとのことで、最良サイズで80kg台と聞いたことがある。初めはあっさり、そしてじわじわと両端の舌が旨味で席巻されていくのだ。本当に100kg以下の鮪とは思えない美味だった。
柳鰈は子持ちで。軽く一夜干しされていそうな身の熟れ、子のほっくりした旨味、薄めの銀餡が風味を増す。京人参の仄かな酸味は梅干で味付けされているのだそう。含め煮の大根の出汁の含ませ方といい味付けといいほっこりと安心できる味。食べていてどんどん身体の強張りが無くなっていくような、リラックスできる味わい。今日は蟹食べれるかなと話していたら、津居山港であがった背子蟹の外子、内子、味噌、身と余すところなく全てを味わえる逸品。味付けもサッパリで、蟹酢のジュレが酢の物らしさを演出してすっきりとする程。仙台牛は熱の通し具合がよろしく、70度のすき焼き風の出汁にくゆらせる仕事。熱の通ったレアな仕上げで肉の旨味を活性化させる。大きな薄切りの肉に潜んでいたのは白菜の蕊(ずい)の部分。サッパリしているが甘味のある蕊と仙台牛を供に食べると肉の脂を蕊が受け止めて1つの味を形成している。
食事の用意は特製の土鍋で炊き上げたご飯の登場。蓋を開けた瞬間から米の良き香りが鼻腔をくすぐる。メインの鯛茶漬けだが、一杯目はそのまま白ご飯に特製胡麻ダレにまぶした真鯛を乗せて食べるだけでも最高の美味さ!2杯目は数枚乗せて出汁を掛ける。米の香りと甘味が出汁を掛けてもご飯が決して負けずに存在感を更に高めていく。最後に御焦げの部分を戴き、残りの鯛の身を乗せて出汁を掛けても御焦げの香ばしさがまた別の美味さへと繋げていく。
日本酒は獺祭発泡にごり酒、加賀鳶純米大吟醸の2種を愉しんだ。発泡にごり酒はフルーティで辛味より米の甘味が前面に出たもの。炭酸もあいまって胃も活発化し、食前酒にはぴったりの酒。加賀鳶はこちらではよく飲む日本酒。辛口が飲みたいというとママさんが、こちらか乾坤一をすすめてくれる。店内のラインナップで一番辛口なのは乾坤一なのだそう。適度な辛味とキレのバランスが良くてどの料理にも合う優れものだ。
今回も総じて満足。いつも食べ物にはうるさい両親もここでは美味いの連発で、にこにこ顔である。とある割烹料理屋の1人分の御会計がここの3人で頼んだ料理及び酒代を入れて似たような数字になるので、かなり適正価格でCPも良いと思うが如何に!次回の予約も辛うじてゲットしたため、更に2月後にまた再訪する。
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【27.11.20追記】
まき村の予約が12月に取れたし、忘れぬうち昨年再訪した時のメニューをレビュー。
【まき村2014年6月の献立】
◉玉蜀黍揚、無花果の胡麻ソース、穴子と胡瓜の酢の物
◉鮑葛打と玉子豆腐の椀(越前塗の夏椀)
◉真子鰈と白烏賊
◉毛蟹の三杯酢
◉賀茂茄子の揚げ浸し、美味出汁
◉岐阜若鮎の一夜干しと芋茎の三杯酢(萩焼の紫陽花柄)
◉鮑の塩蒸しと蒸し馬糞海胆、稲庭うどん、肝ソースとジュレ掛け
◉宮崎牛あっさり出汁煮込とトマト、アスパラ
◉小芝産穴子の炊込みご飯
◉宮崎産マンゴーと苺、グレープフルーツ、のマンゴーソースとヨーグルトソース
◉日本酒:黒龍、乾坤一
1年前の話なので少しだけ…
岐阜の若鮎の際の皿はまき村さんお気に入りの皿で萩焼の紫陽花柄である。一夜干しにより良い具合に水分が抜けて旨味が凝縮していた。芋茎の三杯酢でサッパリして口内がリセットされる。
食事は前回鯛茶で間も無いし、良い穴子を仕入れてきたため本日は穴子飯をお勧めしますとのこと。もちろん乗っかり!
穴子のトロリとするがサッパリした脂とほっくりした身の旨味があっさり目の出汁で焚かれた南魚沼産の飯と良く合っていた。
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ここの鯛茶漬けが日本で、いや世界で一番大好きで堪らない。それは初めて鯛茶漬けなるものを食べた時といささかも変わっていない。今は全然食べれなくて正直イライラしている(笑)。
もう20年前になるだろうか。私が新人の頃本格的な日本料理を食べてみたくて色々と探し出した店の1つで、職場も大森であったこともあり定期的に通っていた。値段も手頃で本物の日本料理を頂き、大人の仲間入りをした気分になったものだった。ご主人牧村彰夫さんも当時は気鋭の若手ではあったがキレのある椀に味わい深き煮物が私の心と胃袋をグッと掴んだ。素材も値段と比較してもかなり良いものを厳選されていた。今ではミシュランの星が増えるごとに予約が取りにくくなり、移転して席数を減らし、1回転となってから尚更だ。今では2月前から取らないと満席になってしまう。特に3つ星になってから予約困難となり、昨年6月以降うかがえていない。以前はお品書きが一組毎に提供され、何がどういう名前の料理なのかよくわかる日本料理初心者には本当にありがたい店であった。
懐かし話ばかりしてても仕方が無いので、先ずは昨年4月に訪れた時の話を。以前の店と比較すると、カウンターが現在は6席と半数近く減らし、テーブル席も4エリアあったのを個室2部屋にして、今では1回転のみの営業。以前は席が空いていれば2回転目も受けてくれたがその分予約が今は取れない。私はおまかせの13,000円(サ、税別)でいつも腕をふるってもらっている。前は足りなければその日のおすすめの品(大体4品程)から別注文出来たが3つ星取った今はどうだろうか?誰か教えてくださいなw
【まき村2014年4月の献立】
◉車海老、帆立、蟹の土佐酢ジュレ掛け梅肉仕込
◉塚原物集女産筍の椀、蕨、木の芽
◉向付1:周防灘の赤貝と佐島の障泥烏賊
◉向付2:勝浦産鰹挟み造りの葛胡椒醤油
◉真名鰹のしとめ焼きと蕪油焼き、タラの芽、車海老頭素揚
◉高知県徳谷産トマトとジュレ
(本体とジュレはトマトの種類が別)(写真失念•••)
◉宮崎牛網焼きと空豆の甘煮
◉江戸前穴子とアスパラ、蕗味噌の銀餡掛け
◉鯛茶漬け
◉宮崎産マンゴーとグレープフルーツ、メロン、苺、アングレーズソースとミントジュレ
忘備録からおこしたが、今思い出してもよだれが出てくるよ(笑)。特に塚原の白子の筍の柔らかさと甘味といったら他の筍とか別格。軸の部分と穂先の部分を巧みに使い分けて味わいと食感を楽しめるようになっていた。椀の出汁もいつもの牧村さんのキレのある昆布と鰹節の見事な調合がもたらす味わい。苦目な蕨や木の芽が筍の甘味を引き締め出汁が全てを繋ぐかすがいとなって一体感のある見事な椀であった。本当に椀の中は小宇宙の如しやw。トマトは物凄く甘くて今までに食べたことの無い物。色々とイタリアンも食しているがこれ程までの強い甘味と旨味を併せ持った素材は無かった。宮崎牛は辛子醤油とジュレ状ポン酢の2種で、大き目なブロック状の香ばしく網焼きされた牛ちゃんをサッパリと食べれて脂のキレも良し。食べ手を飽きさせない牧村さんの優しさと工夫が現れていた。鯛茶は安定した美味しさ。新店になって御飯も土鍋で炊くようになり、お焦げというオマケが登場しはじめた。一年中鯛茶は食べれるが、私は冬の子を身籠るまでの間の真鯛が一番美味しいと思っているし、実際そうである。産地は佐島がメインだが、その都度時期により最良のものを仕入れている。
ママさんには、いつも優しく接して頂き感謝しています。牧村さんも以前と変わらず優しき笑顔と腰の低さで只々感心する。正に実った稲穂の如しや(笑)。昔から若い衆も無駄口を叩かずキヒキビしており、また柔らかなサービスでストレスを感じさせない。うちの家族は全員この店が大好きです。だから早く予約取らせてまた鯛茶を食べさせてーなー(涙)
4位
2回
2017/12訪問 2018/01/06
今2017年も終わりに近づいている。
この日はラスト末廣家でいつも通りの超力メニューで舌鼓を打ちまくる。
思えば2013年の夏に鮮烈オープンしてから初めのうちは様子見であったが、2014年からはほぼ毎週通っていると言っても過言では無い。
オープン3日間はラーメン一杯300円だった事も覚えている。
残念ながらそのオープン記念ラーメンは都合が合わずに戴いてはいないのだが、その後には初訪してデフォルトのラーメンとライス、海苔増しで味わっている。
ここのスープは通えば通うほどに本質が観えて来る。
ここまで4年半経っているが、一度もスープの旨味、キレが悪いなどと思ったことが一度も無い、ラーメン界では奇跡と言えよう。
味が落ちる店は沢山観てきたが、ここは創業時より旨味とキレが増しているのだ。
直系のスープは醤油を利かせたタレで塩分濃度が濃い目だが、末廣家のスープは決して塩分等の調味料に頼らずとも力強い旨味を発揮している。
味わいブレずに安定している上で、更に上を目指している末廣大将の熱い想いを機会がある毎に伺ってきた。
その一面を少し紹介しておこう。
創業時と比べて豚や鶏等大きく材料は変えていないとのことだが、スープに豚ガラや鶏ガラを投入する際の温度、スープを焚く温度等を色々と試行錯誤しながら細目にチェックし、現在に至っている。
家系のスープはどこも継ぎ足しで作っているが、休業日の日、特に正月休みや夏休み等の長い休みの日が最も苦労されているという。
スープの味は火が付いている間は料理人の腕次第だが、一度火を落してからは湿気や寒さ暑さ等気温によってスープが急激に劣化していく。
スープと脂が分離してしまうのだと。
脂にスープの旨味が取られてしまうため、攪拌して混ぜ込んだのだがスープに旨味が溶け込むことはもう無かったとのこと。
常に火を入れて面倒みてあげないと、そのスープがそっぽを向いて使い物にならなくなってしまうというのだ。
まるで駄々を捏ねる子供の様だ。
大きく変えていないという材料も、例えば九州の赤鶏の良い丸ガラを購入して焚いて凄く良い味を出す事で少し変化を加えたりしている。
スープの話ばかりしているとまた長文になってしまうので、また折をみて紹介していこう。
鶏脂(チーユ)も創業当時からは丼に合わすやり方を変えている。
今までの六角家をはじめとした家系で観てきたものは、スープと同じ寸胴(2本目)に鶏皮を大量に投入してグラグラ焚いて皮からチーユを抽出している光景だ。
しかし末廣家ではいつの間にかIHクッキングヒーターの上にチーユを入れた金属のタッパ鍋に入れて一定の温度でスタンバイしている。
観察しているとニンニクを皮付きのままチーユの中に投入している。
鶏脂は質が安定しないことが課題とのことで、旨味を大きくブレさせない為の工夫の1つだ。
また全てでは無いが、九州の赤鶏から鶏油を取り、コクが増幅しつつも透明感溢れるサラリとした力漲る風味だ。
創業当時は630円であったが、材料高騰でどうしてもと値上げせざるを得ない状況となった際でもたった10円、640円となり20円と小幅な上げ幅でなるべく客に負担を掛けないで美味しいラーメンを食べてもらいたいとする大将の心意気が凄くわかるし嬉しい(現在660円)。
使われている材料の質と技術のクオリティ、盛りを考えてもこの値段では他店では無理であろう。
先に述べた通り素材力も上がっており、ボリュームも以前より増して来ているので全く妥当な価格であり、逆に心配してしまう程だ。
とまぁ、2013年の創業当時から現在の2017年末までの店の軌跡を辿ってみた。
その中でも今年はあるトッピングにハマってしまい、今ではデフォルト注文をしている鉄板が万能ネギだ。
それもメガで。
普通の量の万能ネギでさえ、他店に行けばネギバカクラスの盛りである。
普通サイズの100円に80円をプラスするだけで、普通の倍の量が丼に配置される。
それは正にてんこ盛りだ。
2013年から全てのトッピングを試したが、末廣家渾身のスープに非常に馴染み易くて美味しくなるのは万能ネギだと確信した。
長葱よりも万能ネギは繊維が柔らかくもシャキッとした歯触りは心地良く、歯切れが良いので万能ネギの旨味が出やすくスープにエキスが溶け合い円やかさの中にもパンチを出す。
よく噛んでいるとニンニクの様な風味が発生してくるので、家系直系の名物薬味の生行者ニンニクや生姜を投入して味変をしなくても十分力を発揮して美味しさ極まる。
もちろんキャベツ(生)も忘れてはならない鉄板トッピングだ。
デフォルトのほうれん草だって、他店の家系店とは盛りが違うし質も違う。
スープが冷めぬ様小ロットづつ適度な温度の湯を掛けて温度を戻して盛り付ける細やかな配慮も味につながっている。
細かい事だが、ネギの切り方も当初の輪切りから小口切りに切り替えている。
スープとの馴染みが良く、ネギの風味も生かされるからだという。
野菜は全て国産の生を仕入れていることを付け加えておこう。
他店はほとんど中国産、下手したら冷凍物もある様だ。
丼も常温でただ積まれてある物をつかっていた初期から現在では事前に湯煎にかけておき丼を温めている。
ラーメン作成時に湯煎から出してタレ、スープを投入してあまり時間を掛けぬようになっている。
こうした変化の積み重ねが、修行店、将又有名ラーメン屋を超えていくのだ。
客も馬鹿では無いからよく観ているよ。
来年もこの万能ネギとキャベツのトッピングは鉄板で愉しませてもらおう。
末廣大将と末廣家のラーメンの成長はまだまだ伸び代があり、更なる高みを目指されていると期待したい。
今後とも末廣家から目が離せない!!
【28.12.30追記】
今年の総決算として本年最後の末廣家へ。
この日は師匠店『吉村家』との食べ比べで後攻でこちらへ。
腹ごなしに丁度良いので、吉村家から末廣家まで歩いて行ったが、50分かからず到着。
ほぼ毎週通い続けて末廣家の味をしっかりと舌にインプットされての食べ比べであったが、完全に末廣家の圧勝であった。
本日はラーメンにキャベツ(生)といつもの布陣(無いのはライスと海苔増しくらいw)。
やはりここは落ち着けるねぇ。もうここは当方のホームだ(笑)
店員は適度な緊張感と和みの会話はあるが、疲れたとか腑抜けた言い草は無し。そんなこと言っていたら大将の雷が落ちるであろうw
直系の流れを汲むラーメンだから麺相はほぼ同じなのだが、同一日に双方味わった当方が観た所ではこちらはスープの色が鮮やか。
あちらは普通の薄茶色でこちらはやや桃色掛った茶色とでも言おうか。
師匠店と弟子店の違いを簡単に言えば、スープの奥行き。
こちらは基軸のスープの乳化具合も良く、タレ、チーユ(鶏脂)との一体感、バランス感覚が素晴らしい。
良い豚肉の甘味のある香りが鼻をくすぐり、口に入れると細かい旨味の微粒子がパーンと咲き乱れるが如し。
その後の旨味の余韻も心地良く続く。師匠店のスープはこちらよりも円やかさを欠いており、そのため醤油の利きがよく目立ってしまうのであろう。旨味の余韻も浅かった。
そして連食のため後攻は不利なのに、こちらの麺がとても美味しく感じたのだ。
同じ酒井製麺のはずなのに、モチモチした食感に噛むと小麦の風味がフワリとしてきて。
何故だろう?と当方なりに考えたのだが、スープと麺との兼ね合いであると睨んでいる。
スープの出来、美味さ次第で麺を生かすことにも殺すことにも成るのだと改めて認識した。
以前大将に開業時と3年経った現在とでスープを取るのに変わったことは何かあるかお聴きしたことがあるが、基本的には同じだと言うことの後に、豚で言えば部位の割合を変えてスープを取っていますとのこと。
一番大事なのはスープを冷凍にした物は使えるかもしれないが、大将の考えている豚の甘い香りのする極上のスープとは別物になるため休日も大将1人出勤してスープの面倒を見ていることだ。
そして今年になってからの変化としては、1日でもスープの面倒が見れない場合には潔くスープを廃棄して、新しいスープを焚くのだと。
このフレッシュのスープが実に美味かったと。継ぎ足しでスープを焚いて取っていくが、火を入れて面倒見てあげないとすぐスープは自分が思っている様な味わいから遠ざかるのだと仰る。また、投入する生ガラはある温度で保冷した物でないとスープにばらつきが出て美味しく仕上がらないと言う。
師匠店を退店し、自分の城を持ち、直系家訓の”味は技なり”を守って研究に研究を重ねて3年経っても味がガタ落ちせず、緩やかだが上昇傾向に旨味を持って行っている稀有な店。
具材も以前にも増して美味しくなっている。野菜は国産のものにこだわられており、味の落ちる輸入物、冷凍物は一切使用しない。
なのでキャベツでも葱でも野菜本来の旨味が濃くて甘いのだ。本日は無農薬の鮮度の良いカイワレが手に入ったのでと試食させて戴いたのだが、これがキッチリとピリっと辛くて風味が素晴らしかった。コクのあるスープの余韻をエッジの利いたカイワレの辛味で口内がサッパリとし、リスタートさせてくれる優れものではないか。季節にもよるが、生で食べてもキャベツの甘味がこちらのスープと非常に合う。
これほど家系で野菜にこだわりを持って取り組んでいる店を当方は知らない。
ただ一点不満な点もある。
それはご飯の炊き上がりにムラが有り過ぎ、下手なときは米が柔らか過ぎていることだ。
ラーメン、スープと合わせて一緒に食べるのだから、炊き加減はやや硬めの方が良いと思う。
2度程経験したが、特にメッコの様なご飯だった時は流石に閉口した。スープご飯にしたらグチャグチャのネトネトになってしまう。
こんな出来損ないのご飯でチャーシュー丼をやってもらっても美味しく無い。それから当方はチャーシュー丼を食べていない。
当方の友人からもラーメンは良いがご飯がウィークポイントだねと言われているのも仕方が無い。その通りだから言い返せなかったし。
客も多いので中々大将に伝えることが出来ていないのだが、これはご飯メニューを出されている中で致命傷と心得てもらいたい。
米がスープを吸っても美味しく食べれる様に今後適切な炊き上がりを期待したい!(大将、頼みましたよ!)
とプロでも無い当方がこれだけ語らせていただくのも生意気ではあるが、ほぼ週1、少なくても月2〜3回は末廣さんのラーメンを食べて当方なりに辿り着いた3年間の総決算でもある。
このまま味を落とさぬ様、現状の味に満足せず、且つ大きく外すことはせずに精進をお続けいただきたい。
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【28.3.28追記】ガッツリ祭り‼︎
たま~に開催する『ガッツリ祭り‼︎』。今日は何故か照ノ富士が後ろで「ライス、大盛ね!ライス、大盛ね!」とずっと囁いていたw
ここはライス単品140円だが、大盛は無料なのだ。大将が心尽しとばかりにてんこ盛りに盛ってくれた。頼めば盛れる範囲でもっと盛ってもらえるかもしれないが、これでもこれ以上盛ったら崩れてしまうレベル。照ノ富士さんも満足そうな顔をしていらっしゃる。若い頃はこれに軽く麺中盛にしていたが、今は普通盛で十分。
御飯に一番合うラーメンは、当方は家系ラーメンだと確信している。その中でもここ末廣家のラーメンは日本一飯に良く合うのだ。日本一ということは世界一ということである。その根拠を説明しよう!下記①〜⑤の食べ方でここのが一番美味いし飯に合うからである。
①たっぷりスープを持ち上げた麺をライスにバウンドさせ、麺を啜り、間髪入れず飯を喰らう!
②スープに海苔を浸し、ライスにその海苔を巻いて喰らう!
③①と②の往復
④スープカレーの様にレンゲにライスを乗せて、スープに浸して喰らう。
⑤ライスのみ喰らう。そしてスープを啜る
⑥終盤に近づいたらライスにスープをぶっ掛け、残った海苔も乗せてスープ茶漬けにして喰らう!
と、こういった超力バリエーションを駆使して食べると在り来たりなラーメンと御飯が更に美味しく、楽しく食べれるではないか。当方も日本全国色々なラーメンと御飯を食べ歩いたが、御飯を美味しく食べる一翼を担うべきラーメンとしてここのが一番美味いなぁ。しかしあくまでも今のところである。この味の水準をしっかりと保ってこれからも精進していって頂きたいと切に願う。
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【28.2.24追記】
ほぼ注文するものはラーメン(たまに中盛や大盛)、キャベツ(生)、海苔、通常ラーメンの際のライスとなっている。今回味玉は特大サイズのものがあると言うので、通ってから初めて味玉を注文してみた。大きさは確かにデカイ!味付けはアッサリ目。黄身がかなりトロンとした生タイプで白身の周りの部分だけが固まっている仕様。あまり好みの味付けではないが、まぁ偶には良いだろう。
ラーメンの味は相変わらず美味いし安定している。開店して3年目だが、ここまで味のブレが無く一定のレベルを保って客に提供していること自体、今のラーメン業界でも珍しいものなのかもしれない。
ヤバい!末廣家ヤバい!w
【27.7.13追記】
本日はチャーシュー麺海苔多目とキャベツ(生)。今日は大将自ら麺場担当。久々である。
茹で上げのタイミング、動きはキレがある。
固めをオーダー。先にキャベツが来たが、当方いつも先にツマんでラーメンを待つことを観ていた大将が、『今のタレ掛かっているのか?』と店員に指摘。無かったので自ら当方に『タレはお掛けした方が宜しいのですよね』と丁寧な受け応え。どちらでも良かったが、いつもの提供をキチンと観て覚えていてくれていた大将に感謝しつつお願いした。鶏油とスープの投入の間の僅かな時間のやりとりだが、気遣いがとても嬉しい。中々どうして出来ないことである。久々の大将作のラーメンは麺茹でが完璧で麺の硬さが素晴らし過ぎる。
芯を残さず噛み応え十分に仕上げてある。硬めだと麺の風味も良く感じ取れて好きだなぁ。スープもシッカリと出汁が取れており旨味が抜群。チャーシューは言うこと無しに美味。精魂込めて作られている珠玉の一杯であった。
それにしても先日の六角家とこちらを比較して、こちらは豚骨を大量にグラグラ煮上げているが、不快な臭みは全くといってよい程感じなかった。
意識しなければかなり臭い系にナイーブな人でも特に問題無いと思われる。それだけしっかりと仕事後に掃除が徹底的になされていることがよくわかる。こういったガラ系を煮込む店が掃除を怠るとスグに臭い匂いが染み込んでいくから。
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【27.7.9追記】
喰い直しじゃ~!いやな気持ちを払拭するために喰い直しじゃ~!
六角家で悲しい思いをした翌日即訪問。ラーメン白髪ネギトッピングと窯焼きチャーシューめし。久しぶりなのでデフォルトで。チャーシューが香ばしくしっとりと焼き上がっていて堪らない。角切りになったチャーシューがゴロゴロと散りばめられて。マヨと輪切りのネギとチャーシューが良く合うんだなぁこれが。ラーメンも昨日の魂の抜けたようなスープとは打って変わり魂魄がしっかりと感じとれるwコク、キレ有りで安定しているホッとする味わい。家系でもこれだけ味の開きがあるものかと。麺も酒井製麺なのに違うのかな?同じ硬め注文なのにくぐらせるスープでこれ程までに食感と味わいが違うのかとつくづく思う。
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【27.6.30追記】
しばらくは、通った際に食した品のバリエーションを写真付きで掲載していこうと思う。
本日はラーメン固め海苔多め。キャベツ(生)とニラ辛子を別皿でトッピング。ここのラーメンには猛烈にキャベツと合う!それも生が良い。ニラ辛子は動物系スープの口直し効果が有り、ピリッと口中を引き締める。
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ここ白楽六角橋は、家系の雄『六角家』発祥の地であり営業中である。その横に堂々と同じ家系ラーメンの『とらきち家』が起業し、六角家を呑み込む勢いで客の胃袋を掴んでいる。両店より六角橋商店街寄りのここ『末廣家』は、家系ラーメン総本山の吉村家直系スタイル。吉村家が横浜に移ってきてから月1で食べていたが、こちらが出来てからは末廣家に通うようになった。多い時で週1、少なくても月1〜2回は交通費使って食べに行く。
しっかりと吉村さんの味を継承し、トッピングも安めに設定されている。スープはややマイルドで本家の醤油の尖った感じが取れていて自分的にはこちらの方が好み。他の家系のような動物系コッテリスープが前面に出すぎず、醤油をキリッと効かせて弛れた味に成らず全体を締めている。毎回感心するが、スープのブレが殆ど感じられない。毎回安定したスープの出来なのだ。大将がしっかりスープを管理しているので、骨の継ぎ足し時でも薄くならず臭くならずに一定の品質のスープが提供されることが素晴らしい!
麺は安定の酒井製麺。丸みを帯びた中太タイプのモチモチした食感。昔から食べてきた大好きな味。チャーシューも窯焼きされていて程良いスモーキーフレーバーを醸している。嬉しいことにほうれん草は他店より山盛りで提供されるのも良いポイント。
別売りトッピングで私の好きなキャベツは悲しいことに原価が跳ね上がって本日は100円となっていた。最安値の時は50円であったと記憶する。"白髪"ねぎと言いつつ青い部分も1/3は入ってきているが、花咲葱坊主が出来た屑葱の様な嫌な臭いは無いので許容範囲か。ライスは140円と高いが大盛無料。食べれない人には割高感があるだろう。とは言え総じてトッピングは安めで気軽に頼めるのが良い。御飯の最大の友である海苔も増して70円と妥当な値段。素材もよろしく安物の海苔のようにスープに浸したらスグにバラバラになることも無く、よーーくスープに浸した海苔を御飯に巻付けて食べるのが最高に美味い!
豚星(移転済)やくり山のような大行列はそうそう作られることはないが、店内はいつも程良く客が出て入り客足は絶えない。大将をはじめ店員の接客や雰囲気も昔の吉村家や六角家のようなトゲトゲしい感じは無くリラックスして美味しい家系ラーメンを食べられる最良店である。
5位
3回
2017/02訪問 2017/03/11
本日はしみづ未体験の友人をお連れしての訪問。
当方お目当の子持ち槍烏賊と鯖はしっかりと用意されており準備は万端。
この2品は当方からして今年の1月で17年目という歳月を経て継続して戴いてきた中でも真冬のしみづの龍虎であり双璧だ。
これらを初体験がてら、是非召し上がって頂きたく思っていたのでホッと胸を撫で下ろす。
また、本日はこの時期には有り得ない素材、持ち味を十二分に発揮し突破力に富んだ素材達が我々を歓迎してくれた揃えであったことも付け加えておく。詳細は後程。
今宵も当方ならではの視点からわかりやすく紹介しよう。
【つまみ】
◉菜の花芥子和え
春の訪れはすぐそこ♪
◉安房勝山産鮃 身と縁側
もう鮃は南下を始め、江戸前の千葉辺りのが質が良いとのこと。
良き白身の好みのポイントとして
①プリッとしてモチモチした弾力ある歯応え
②つるりとした滑らかな舌触り
③テンポ良く来る継続的な旨味
が挙げられるが全てを兼ね備えた品である。
また②は庖丁の入れ方も重要で、清水さんは以前にも増して素材への当たりのインパクトが最小限→組織の破壊も最小限になっていると見受けられ、ストレスを与えない切り口になっているのであろう。正に官能的♡
官能的な言い方をさせて頂くと、ディープキスの巧い女性が滑らかな舌を絡ませ合う時のあの恍惚とした気分と似ている。
気持ちの良い鮃の身が舌に絡んで口内と脳髄を恍惚とさせるのだ。
◉蒸し真牡蠣
以前までは塩辛的な仕事だったのだが、ノロウィルス対策で仕事を見直したとのこと。
蒸すことにより、旨味を大量に外に流出させる事無く旨味を引き立てられていた。
ホッコリとした身の旨味にサックリとした柱の心地良い歯触り。
◉子持ち槍烏賊
網で獲る漁のモノは6月くらいまで市場に出回るが、一本釣りする槍烏賊は3月末までが限界とのこと。
子への火入れ具合が抜群で生っぽくてゼリーみたいな食感では無く、加熱し過ぎてポソポソでも無く、モチモチと心地良い食感と旨味の出方のバランスが超絶的なのだ。
槍烏賊の身はパキッとした歯応えで食べる物を悦にすること請け合いだ。
◉焼津産〆鯖
久しぶりにつまみで戴いたが、他店のそれより群を抜く美味さ。
まだ脂が乗って美味いですよと親方も仰るとおりだ。
それ以上に脂の質が非常に良く、塩と酢で〆られた事により肉厚な身の旨味も活性化し、親方お勧めのタップリと山葵を乗せて戴くと山葵の辛味が身と脂の美味さを高みへと昇華させる。
辛味が全く感じず爽やかさのみが広がるのだ。
それにしても鯖、鯵、鰯、秋刀魚等の青魚の最上質な脂に塩と酢が交わると、搾りたての牛乳からとったバターや生クリームの様な乳製品を思わす滑らか且つ濃厚、それでいて爽やかさな旨味をまとったモノに化学変化が起こるなぁ。
◉ノレソレ加減酢
熱を入れて奥底の旨味を活性化させている。
加減酢の程良い酸味がノレソレの奥底の甘味を引き上げていた。
◉鮟肝 山葵と奈良漬で
美味いに決まってる♪
【握り】
◉細魚
◉墨烏賊 もう日によってアオリと墨との優劣の配分が変化しており、本日はパキッとした歯触りの良い墨烏賊ですと。
◉鮪赤身 千葉勝浦産150kg
◉鮪中トロ 島根県産80kg 頭部後方の背トロ
◉鮪大トロ 千葉勝浦産150kg
赤身と大トロが千葉勝浦産とのこと。
正に僥倖という言葉がピッタリと当てはまる逸材だ。
日本有数の鰹の水揚げで有名な産地であるが、この時期の千葉勝浦の鮪など食べた事は無いが当方の鮨喰史の中でも鮪の質がガタ落ちの1月以降のシーズンにこれだけの逸材が現れたのは4〜5年前の長崎で上がったモノ以来の凄い奴だ。
本当に極稀ではあるが、真冬物を凌ぐ化物が現れるのだとか。
特徴は旨味の初速と余韻の素晴らしさ。
赤身のこの時期に有り得ない酸味の効きが素晴らしく肌理細かいシットリとした鮪。
大トロの野武士の様な風味、脂の乗りから旨味への味蕾への到達速度の速いこと。
そして余韻が真冬の最も美味い時期の鮪と同格。
いや、今シーズンに限っては、色々な店で食べて来た中シーズンを通してナンバー1の旨味に溢れた恍惚として魂を奪われる美味き鮪だ。
これが藤田の鮪の真骨頂だと改めて思った次第。
餌についてお聴きしたところ、漁場では青森のようなスルメイカが生息していて捕食している様だとうかがい、得心。
◉小鰭
やっと旨くなってきたと親方。
今年はグッと旨味が増して来るのが非常に遅かったという。
例年では11月も後半になると小鰭は身も厚くなり旨味も増して来るのだ。そして春先には子を抱いてしまうため、味が抜けて来るのだ。
この美味しくなったこの時期をおいて最高の小鰭の握りを食べ逃すことは鮨喰いとして、我、最も此れを戒む!
◉蛤
レアな食感も残しつつ火入れで香りも旨味も際立った蛤はツメを伴い、最高のタッグパートナーのシャリと出逢って幸せを得る。
◉閖上産赤貝
今年の閖上は全然ダメだったが、やっと良くなって来ており本日はその閖上だと。
ネットリとした口当たりからサックリと噛み心地の有る食感を得、胡瓜の様な独特の風味が爽やかで旨味がグングンと押し寄せて来るのだ。
こちらの赤貝への手当は以前から存じ上げているが、他店では見掛けた事の無い仕事だ。
殻から剥きたてでは無いが、ほぼそれに準ずる風味が備わる。
エッジを利かせたシャリが、赤貝の甘味を更に引き上げている。
◉春子
本日のは魚体が大き目なので軽く昆布〆してからの提供。
いつもの酢〆の仕事とはまた別角度からのアプローチが面白い。
同じ種類の物でも素材の質や大きさ、脂の質等に合わせて手当を変えてくるところは流石だ。
◉野付産青栁
今季トップクラスの青栁で、珍しく親方が太鼓判を押されたモノだ。
先程の赤貝以上に甘味が強く、シャリの酸味が感じられぬ程だ。独特の潮の香りが堪らない。
歯切れも良くシャリとの馴染みがここ数年来のモノとは別格だ。
◉野付産大星小柱
サクッとした繊維質に甘味ある身の旨味が信条。
◉〆鯖
もう言うこと無い涙物の超絶美味。
シャリと合わさって更なる高みへと飛躍された味わいは達観の極み。
◉車海老
当然ながらに甘い!
◉大間産紫海胆
この海胆はこちらの煮切との相性が凄く自然で浸透性が高くアジャストした素晴らしく香りと甘味が絶品でシャリとのマリアージュが完璧。
◉対馬産穴子
煮方がやはり素晴らしく、脂の抜けを感じさせない仕事。ツメも絶品だ。
◉干瓢、朧を半巻づつ
◉玉子
◎日本酒1.5合
◉蛤汁
年明け早々しみづへ。
魚は揃っていなさそうでそれなりに取り揃えられており流石である。
本日は外気温5度と寒いのでかなり久しぶりに熱燗でもらう。
鮪の『剥き(すき)身』はつまみとしてはこちらでは初めて戴く品。
海苔と山葵と鮪を煮切で繋いで見事な旨味のトライアングルを形成。
ちなみに剥き身とは、皮と身を切り分けた時に皮側に残っている身をスプーンや蛤の殻等でそぎ落とした物で、擦(こす)れば擦るほど脂が染み出して旨味も出てくる。よく『中落ち』と間違われるか混同される方が多いが、中落ちは主に脂分の無い赤身で3枚におろした際に骨と骨との間にある身をスプーンや蛤の殻等で刮(こそ)げ取る物だ。
牡蠣は昨年までの塩辛のような凝縮させた旨味を味わうタイプから蒸しに変更した。珍しさは影を潜めたが程々の旨味。
塩辛代わりの海鼠(なまこ)の海鼠腸(このわた)掛けも随分久しぶりに出会う。観て食べて青海鼠と判ったが、サクサクと心地良き歯切れは中々のもの。海鼠腸の旨味は普通
聞くところによると、青森は津軽海峡の青とのこと。先日某所で戴いた能登産の物とはまた違った歯応えに味わいで愉しめた。
握りでは大トロと鯖が良かった。
鮪は三厩で日本海側の物。
赤、中とも舌触りは肌理細かく素晴らしいが旨味の奥行きと余韻は例年より浅い。
しかし大トロは別格で、鮪らしい個性的な風味と甘味のある脂の廻り具合に肌理の細かさが上手く噛み合ってシャリとのマリアージュが完璧に決まっていた。
間違い無くしみづでは今季一番の良き鮪である。
鯖はこちらのスペシャリテとも言える出来栄えで巧みな〆仕事が光る逸品。
生半可な鯖は店の種札としてラインナップに乗せない上質な鯖は塩と酢で〆ることで脂の具合が濃縮して円やかになっている。
まるで旨味の塊を味わっているかの如しだ。
ここより高価で良い鯖はまだまだあるのだろうが、仕事を施して極上の逸品と為しているものは、ここの鯖以外でどれ程あるのだろうか。
【つまみ】
◉鮃
◉真蛸
◉鮪剥き身(すきみ)
◉蒸し牡蠣
◉青森産津軽海峡の青海鼠と海鼠腸
◉鰤焼
【握り】
◉細魚
◉墨烏賊
◉三厩産鮪赤身
◉中トロ
◉大トロ
◉小鰭
◉蛤
◉縞鯵
◉北寄貝
◉鯖
◉赤貝
◉車海老
◉海胆
◉穴子
【追加】
◉玉
◉干瓢、朧半巻
◎熱燗1合
蛤潮
【28.7.26追記】
近頃巷に流行るもの
お任せ、お仕着せ、ブロイラー
正直者はアホウドリ
高級食材争奪戦
泣きをみるのもアホウドリ
新規開店蓋開けりゃ、お任せ一本、2万から
取れぬ取れぬと煽り立て、自分の予約は人任せ
神とも思えぬレビュー内容 、神も仏も無ぇものか
一部の神は紙の舌
上位店舗に舞い降りる、何処を観ても紙ブロガー
得点上がるその刹那、禿鷹共がやって来る
店の写真も悉く、禿鷹共が占拠せり
成金、痴れ者、経費族
身銭を切らぬ愚者(おろかもの)
カタログ網羅でヨロシク哀愁
クワバラクワバラ 云々
ここはお好みでも任せても客の好きな様に食べられる昔では当たり前だったのが、今と成っては稀有な江戸前鮨屋となってしまった。以前はここも3回転させて一時窮屈な気分にもなった嫌いがあるが、今は何時何分スタートとかいう完全ブロイラーでは無く、来店する時間帯によっては店側との都合さえ合えばいつでも入店可能である。そして使われているネタから比して会計は極めて適正価格だ。昔はもっとこういう店はあったと思うが、かの赤本が日本に上陸してから更に様相は変わってしまった。それも良い方向にとはとても言えない。お好み対応していた店が一斉にお任せお仕着せとなり、融通が利かなくなった。また予約しても半年後や一年後とかいう鮨屋もある程で常軌を逸している。
最近鮪の質が云々言う方々もおられるが、藤田から引いているので最上位顧客のすきやばし次郎や水谷に腹上一番は行ってしまうため、どうしても次の部位になってしまうのは仕方が無い。それでも十分満足の出来る質である。もちろん季節や環境を考えて召し上がられて仰られているのだろうとは思うが、必要最低限鮪の旬と産卵期はおさえて味わってもらいたい。
さて、夏の今時の鮪は産卵期も終えて秋から養分を蓄えて行く時期であるため、脂はサラッとあっさりしているのがこの時期の特徴。それでも脂が抜けた分、赤身の血の成分(ヘモグロビン)がこの時期はよく香りも上々なので通人や鮪を食べ慣れた御仁は冬より夏の鮪を好んで食べる人も多い。流石にこの時期の鮪を鶴八巻(鉄火太巻)で頼もうとは思わないが、自分が食べてみて「これは!!」と思う鮪であったならば是非お勧めする。赤身、中トロ、大トロと豪快に巻いていく。今は初音鮨をはじめ他の鮨屋でも同様な鮪太巻を提供している鮨屋はいくつかあるが、この形態の巻物は鶴八が元祖であると思われる。もし他にもっと古くから鮪オールの巻物を提供しているという店があれば御教示いただきたし。ついでに年末に食べた当方が美味い!と思った鮪を鶴八巻にして戴いた時の写真をUPする。ちなみに今月の鮪はもう佐渡では無く噴火湾の定置網だという。何だか季節が早まっているなぁ。以前は7月末ならまだ上等な佐渡の定置があったものだが…80kgに満たない魚体の物だったが大トロまで用意されていた。3連弾戴いて一番美味かったのは中トロ。今時の鮪にしてはコク深い脂に100kg超えの鮪には持ち合わせていない見質の肌理細やかさと夏鮪らしい酸味の加減。トータルバランスが素晴らしかった。
他のネタは房州の鮑が絶好調になってきており、馥郁たる香りで口内が席巻される。肝がもっとコクが出て来れば言うことなし!ネタが少ないからと仕込んだ煮烏賊は白烏賊(剣先)。以前は鯣でもやられていたが今年のバージョンはこちら。味わいの余韻の好みは分かれると思うが、見質の歯切れはこちらに軍配があがるね。
穴子がかなり美味い!この日は富津産とのこと。ここの煮方が穴子の持ち味を存分に引き出している。身はトロリと柔らかく舌で押し出しただけでホロホロと溶けていく様。あまりに美味いので久方ぶりに穴キュウ巻をお願いした程だ。縞鰺も太平洋側のものに風味と風格が出て来て夏のネタが揃い踏みとなり、楽しくなって来た!
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【28.4.15追記】
2月3月は忙しかったのと、店の空きが無くタイミングが合わなかったため鯖の時期を逃してしまった。4月は両親を連れて久々の訪問。この日は貝類が7種類もあり、貝大好きのうちの両親も御満悦。ちなみに貝は赤貝、水松貝、鳥貝、平貝、蛤、青柳、小柱。鮑は出始めているが、美味くなるのはGW明け辺りからと。
白魚と槍烏賊下足のオリーブオイルが出た。白魚は生だと最後に苦味が残るので熱を入れると美味しくなるのだと。白魚の良いのを天麩羅にすると美味い。こちらでは軽く塩茹でた白魚をオリーブオイルと合わせる。捥ぎたてのような鮮烈なオリーブオイルと白魚が良く合うのだ。白魚のフンワリとした身と旨味をオリーブオイルの円やかさとマリアージュすることで深みを増す味わいに。槍烏賊下足も甘味を増した。蛍烏賊ボイルと沖漬け(店漬け)も酒が進む。大好物の子持ちの槍烏賊に間に合った!子は程よく熱が通ってネッチョリせずにモチモチした食感に。ツメも山葵も美味い!子がスライムみたいな店や茹で過ぎカチカチの店ありと仕込みは様々であるが、しみづの子持槍烏賊が一番好っきやねん♡
お初のものが、髭鱈の酒蒸し。酒、出汁等に昆布を入れた調味液を掛けて蒸したもの。髭鱈は西でよく使われる素材だが、東京の日本料理屋でも近頃用いられているという。最後に浅葱が入ったポン酢を少し垂らし木の芽を添えて完成。馴染みの深い真鱈と比べると旨味が濃く身は柔らか。
お初がもう1つ、鰯の握りである。種札は白くて真新しいが、開店当初の17年前に書いてもらったものだという。種札が出ているということは握りが可能ということ。つまみで鰯は何度か戴いているが真鰯である。握りでは片口鰯(神奈川ではシコイワシ)を塩と酢で〆た物を片身で4枚(2尾)程を一貫で握る。大羽等の真鰯は何度も戴いてきているが、これは他では食べたことの無い独創的な握り。煮干しになる鰯になる位なので旨味の凝縮が凄い。〆加減が大変結構で、鰯の美味さを存分に引き出され、強いシャリとの相性もバッチリ決まっている。大羽ではやらないのか尋ねたところ、脂が強過ぎて握りに向かないんですと。真鯵も出水はもう脂が強過ぎて4月は仕入れていないという。この日は島根の浜田産。塩して軽く酢を潜らせ馴染ます程度で握る。もうこちらで戴く〆鯵の握りの絶品さ加減は半端無いなぁ。しかし今日の白眉は片口鰯であろう。両親も大変気に入ったと話していた。
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【27.12.22追記】
鮨好きレビュワーさんのレビューを見ていたら我慢出来なくなり電話したところ一席空いていたため速攻で訪問。
先付は滑子おろしに。もうそんな時期かと思い耽ると今日は冬至ではないか!冷を頼んでいつもどおり超力スタイルで切ってくれる。鮃もグンと旨味を増して来たが今日は縁側は無し。真蛸の美味さは他店では味わえない甲殻類のエッセンスがギッシリ。伊勢海老や蟹、鮑を喰らう海の王者というのもこちらの蛸を戴くと素直に頷ける。牡蠣の軽い塩辛も月毎に旨味を増して絶好調だが、ご主人曰く今月がピークで最後とのこと。鰤の炙りが出た。昨年は七味を供されていたが今回は和芥子。強過ぎないサラッとした脂だが、身のシットリ感がとても艶かしく口中を駆け巡る。旨味だけでなく舌触りや食感も非常に重要なファクターであることを改めて確認した形である。真鱈白子も以前は塩水でボイルしていたが今回の仕事は少し醤油を垂らしてボイル。見た目は塩水のものと変わらない。醤油の接点でポン酢との馴染み加減がしっくり合っていた。摩宙さんが立派な生きている本水松(ミル)貝を殻から外し、水管の黒い皮を丁寧に剥いでいた。こちらでは内臓の提供はしていない。していないが…
本日の鮪は赤身、中、大と大間ではあるが全て魚体が別物とのこと。赤身は90kgほどで小型だが、赤身独特のヘモグロビンの風味と旨味が強くシャリとのマリアージュも完璧。先日あらいで戴いた血合い岸の赤身も大変秀逸で一番と思ったが、これも負けていないなぁ。150kg級に負けない旨味。中トロと大トロは150kgで別魚体で中はかなり後から旨味が押し寄せて来た。競馬で言えば第4コーナーを回って猛追するサラブレッド、ミスターシービーのような強烈な追い上げ。大トロはミドルレンジで旨味が押し寄せる。口に入れた瞬間に心地良き脂の香りが席巻し、中盤から押し寄せる美味しさ。冬の鮪の美味さも千差万別で、毎年違う顔を見せてくれて大変愉しい。勿論このしみづのシャリが有ってのフルスロットルの美味さなのだ!他には別注の鰤が白眉。隣のお客さんとあれこれ話をしていて、チョット炙ってとリクエストが入り、当方も便乗注文した次第。つまみ単体でも美味かったが、シャリの酸味が甘く感じる程のコクの濃さと切れ味。忘れてはならない小鰭、鯖の旨味もギアチェンジして上がって来た。特に〆た鯖の香りとシャリによりサラッと感じさせる脂が泣かせる美味さ。先々週京・大阪でも鯖を戴いたが、素晴らしい鯖はキッチリ〆てあげないと、奥底に眠る本来のポテンシャルを引き出し切れないのではないかと思わせてくれる逸品!
また、こちらの貝類は比類無き美味さでどれも最上級品で銀座の超高級鮨店にも負けないというか勝る質。先程の剥き立ての水松貝を戴いたが、鮮烈で芳醇な海の薫りと甘味、歯切れの良い歯応えが得も言われぬ美味さなのだ。以前は黒皮を剥く前に軽く湯に通していたが、仕事と身の質を見直して今は生での提供とのこと。茹では甘味は広がるが鮮烈な香りは大人しくなってしまう。そしてシャリも強くなったことを勘案すると生での提供の方がより水松貝本来の旨味が愉しめると言えよう。赤貝はようやく閖上が上がって来たが、香りは大人しめ。穴子もまだまだ美味いが、ご主人も仰るように2月から子に養分がいくため5月あたりまでは弱くなると。それでも煮方が上手いので十分美味い。
今回の〆の巻物は紐キュウは次回以降にし、摩宙さんお勧めの胡瓜だけの半巻に干瓢も半巻で戴く。ご主人曰く夏場の露地物だと弛れた感じの物があるが、冬のハウスでもシャキッとした仕上がりになって風味も中々と。赤酢のシャリが胡瓜の風味を引き立ててるねぇ。こりゃ面白い!
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【27.10.27追記】
鮑はラインナップから消え、鰹も三陸から常磐、房州の良いものが無いため今秋はお終いとのこと(西ではまだ揚がっているが使わない。)。つまみでは今月より牡蠣の軽い塩辛仕立が出た。好い加減で脱水されており旨味が凝縮された一品。物によって塩する時間は違うが1日前後とのこと。牡蠣の内臓部分が物凄い旨味が濃く出ており、アミノ酸系のグルタミン酸含有量が高いことを実感できる逸品。秋刀魚の〆た炙りも極旨。酢〆加減が絶妙でこれまた酒が進むのだ。蝦蛄の煮浸しはつまみでも鮨でも戴いたが蝦蛄独特の風味と甘味がそのまま食べてもシャリに合わせても応えられない美味さ。
握りでは、こちらで初見参の甘鯛が中々良い。軽く塩をした後昆布で若干〆た物。ここのシャリと合わせても弾きかえされない甘味とネットリとした身肉の旨味が渾然一体となり喉を通り抜ける。蛤もやっと登場。汁物も蛤にチェンジ。
鮪は大間で130kg程の魚体。3連弾の中トロだけ別魚体で10日の熟成でギリギリとのこと。風味と脂の乗りが良かった。鯖も良かったが、本日のような良い物が中々無いのが考え物だと。小鰭は皮目から好い風味が有り良質な脂も乗り始めてキッチリ〆て旨味倍増。もう一貫おかわりして朧を噛ませて握ってもらった。強い酸味は朧が抑えてくれ、身肉と脂の旨さを感じやすくさせるための鎹である。
貝はまだまだと言うが赤貝などヘモグロビンの香りが嫌な匂いはせず胡瓜のような爽やかな香りと周りはネットリとした舌触りとサクっとした歯触りが良かった。また11月に訪問を期して店を出た。
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【27.9.25追記】
9月某日夜。鯖は残念ながら、まだご主人のお眼鏡に叶う物はなかったそうでラインナップに名乗りを上げていなかった。本日戴いたラインナップを一通り。
[ツマミ]
豆腐のオリーブオイル掛け、鮃、真蛸、房州蒸鮑と肝、秋刀魚炙り
[握り]
鱚昆布〆、墨烏賊、大間産120kg鮪赤身、中トロ、大トロ、小鰭新子、煮烏賊(白烏賊)、伊豆諸島先縞鯵、北寄貝炙り、赤貝、能登産真鯵酢〆、車海老、いくら、海胆、鰹、穴子塩とツメ、干瓢と朧半巻、玉子
[飲み物]
日本酒1、鮑汁
鰯は8月で終了し、今月は秋刀魚が登場。軽めに酢締めされた物を軽く炙って供する。外側を香ばしく炙り上げ、中はしっとりレア状態。煮切りと少々の浅葱が振り掛けられてある。毎年この肴を楽しみに来る常連も多いことであろう。当方もその1人である。ほんのりとした酢締めが脂の旨みを引き立て炙りで旨みも出易くなり活性化されている。これ握りでも食べたいなぁとご主人に申し上げたところ、ここの酢飯とはどこか合わないという認識のため、やってもそれ程味の膨らみはないであろうとのことで握らないと。目高鮑も最後の名残かなとご主人。肝も供され、海の滋味を味わう。来月あっても頭で終わりかとのこと。
握りで白眉は伊豆諸島の縞鯵。本日の大トロと引けを取らない程の質の良い脂の乗りと身の肌理細やかさ。外連味が全く無い。シャリとのマリアージュが完璧。大間の鮪も具合が良くなってきた。結構な魚体が揚がって市場に出回っているが、使える魚体は一握りであったと。赤身は夏場の物のような酸味の中に中トロを軽やかにしたような僅かな脂の旨みが乗ったもの。鮪3連弾の中では中トロの具合が一番良く、シャリとの融合が一番高い握りであった。貝類が少ないので北寄を仕入れて炙っていますと一貫。ここのエッジの効いた鋭角なシャリが炙って旨み成分を立たせた北寄の甘さを更に引き上げ、癖も無く一つの融合体を形成していた。赤貝は9/3より市場に出回ってきたものの、ようやく味わい的に提供出来る物が出て来たとのこと。肉厚で香りもまずまずであった。これからが楽しみ。
真鯵は能登産でもう名残のものですとご主人。そろそろラインナップから消える予定。それにしても淡路の鯵はもう大分前から具合が良くないらしく、一時期しみづでも8月の鯵は淡路だったのが、もう何年も使われていない。鰹は軽やかな酸味を携えつつ戻りの脂の旨味もある。少々の浅葱のピリッと軽やかな辛味が鰹の身の旨味を引き締め、シャリとの三位一体の味わいが絶妙であった。
いくらは新物で香りも旨みも良し!穴子もトロトロで脂も身もまだまだ美味い!最後は朧半巻、干瓢半巻きと戴き、玉子の握りで締め。
やはりここは鶴八系でもキングの風格、美味さ、値段もお値打ちであった。
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【27.7.26追記】
7月某日夜。ツマミで鰯の酢締めが出た。今まで食べた記憶がないが、以前にも提供していたとのこと。ただし、小骨が多いので握りでの提供は無く、ツマミのみと。他にも北寄の柱と紐の炙りも初。それと鰹は塩タタキとなっていた。藁炙り、生と食べてきたが今シーズンからだと。
握りでは海胆が紫と赤の2種あったので両方食べてみた。赤のが味が強くて濃厚。凝縮された旨味というのか。身質の詰りがあるため軍艦にせずそのまま握る。鮑もツマミで戴いたが握りでも食べたくなり一貫。ここの鮑の握りには煮切りでは無く鮑の自ら射出した煮汁を凝縮させて、ゼラチン状になったものを握りに一刷毛。これが鮑の味わいを更に深め香り倍増。他店では見ない仕事。
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【27.6.21追記】
今回は連れと夜訪問。一度リタイアしていた赤貝がラインナップに復活していた。たまたま良質な閖上産であったので仕入れしたが、これが売れ切れたら本当に終了ですと。真冬の鮮烈な香りや旨味と比べると大分おとなし目であったが、最後にも紐キュウ巻を頂いて違いを愉しんだ。
この日一番印象に残ったのは〆た真鯵。身が肉厚であったが軽めの塩と酢で〆てあって強目の脂も身の熟れも程良くなり、ここのシャリとの融合による味の調和が素晴らしかった。相方も食した16貫のうち一番好きと言っていた。私のこの時期に好きな鯵の産地である出水は4月に入って今年は脂が強過ぎるため使っていないとのこと。本日は長崎産ですと。小肌はもう新子も出始めているが、数少ないがまだ脂を蓄えた良い小肌でややソフトな〆上げ。鳥貝もそろそろ終了だが銚子の良いものがあるうちはラインナップに名を連ねているかもと。鳥貝の握りを初めて食べた相方が、身のこなれ、甘味と香り、シャリとの一体感に吃驚していた。しかし今年も舞鶴と宮津は品質が良くなくて使えなかったそうだ。来年に期待したい!貝類は蛤も今月一杯になり、大分姿を消しそう。貝類好きな人は早めに召し上がった方がよろしいかも。
真子鰈や鰹、鱚、目高鮑は安定の美味さ!車海老や穴子も甘味や香りが上ってきた。
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ここを初めて訪れたのは開店した1年弱後。初めは昼のお決まりから試し、ご主人清水邦浩氏の若手とは思えない落ち着きのある、しっかりとした男前な江戸前鮨に惚れ込み、月1回夜にうかがうようになり早10数年。
初めの頃は鶴八の仕事、味、握りの姿であったが、様々な店を食べ歩き、良き所を取り入れ、時には教えを請い、自分の仕事を昇華して今の姿がある。
顕著なのは店の命である酢飯。当初は修行先とほぼ変わらぬものであったが、色々研鑽を積み、種質を上げていく過程で少しづつ探りながら最終的に赤酢と塩をキリッと利かせた昔ながらの酢飯に辿りつかれた。今若手鮨職人の店で赤酢の酢飯の店は多いが、清水さんが導入した頃にこのような超個性的な酢飯を提供する店は本当に数える程しかなかった。今でも酸っぱ過ぎると賛否両論あるが、ここの種質、仕事との融合を考えるとこれくらいの強い酢飯でないと種に負けて下卑たる味になってしまうだろう。握りは当初の丸みを帯びた荒々しい形からはやや端正な形に。とはいえ大きさは銀座の高級店のような小指のような小さい鮨ではなく、しっかり、どっしりとした鮨。イケメンの鮨ではなく男前な鮨なのである。
酢飯にあわせて種の調整も色々されていった。特に小肌はキツめに締め上げて熟成させる。石丸親方の小肌をはるかに凌ぐ締め方。この締め方に耐えうる小肌は肉厚で脂もよく乗ったもの。ここまで強い締めは日本橋吉野鮨のものしか思いつかない。個性的な酢飯に個性的な締めの小肌と合わさることにより、身と脂の旨味が渾然一体となっている。玉子も厚焼きから薄焼きに変わり、握りを重視した形となっている。鱚の脱水加減、鮪の熟成加減、貝類のピークを見極めた仕込み等々枚挙に暇がない。
今の時期は締めた鯵が抜群に美味い!鮑も香り高く大き目に切られたものを口の中に放り込むと幸せ一杯になる。
長年にわたってこの店を見てきているが、ご主人の向上心はまだとどまる所を知らない。これからもこの店の鮨がどう進化していくのか楽しみである。
6位
1回
2016/10訪問 2016/11/07
【28.11.3追記】
秋の味覚を愉しみにいつものにしむらへ。
いつも通りの皆さんの顔が異空間の祇園の中でホッと一安心させてくれる。
今回も色々と美味しいもんを食べさせて戴いたが、特筆すべきはやはり和食の華"椀"であろう。
今月のにしむらの椀は蕪蒸
普通の店だと蕪蒸しはコースも終盤の煮物・蒸物で登場するが、ここにしむらでは椀の世界でもこの蕪蒸しが登場することがある。前回は12月の背子蟹たっぷりの蕪蒸しがあまりにも秀逸で瞠目したことも記憶に新しい。
吸い地と椀種との駆け引きからの足し引き算も完璧で薄過ぎる某三つ星店の様な物足りなさは微塵も感じさせない超絶的な調和だ。
吸い地の出汁加減が絶妙で、当方には東のまき村と並んで西はにしむらの椀の吸い地が堪らなく好きだし味覚にも超絶的に適合する。小吸物的な松茸と鱧の土瓶蒸しも留椀の赤出汁も旨味・塩分濃度が心地良い絶妙な調味で悦に入る。ええ出汁を味わうと確実に緊張感が解け副交換神経が前面に出て来るねぇ。酸いも甘いも噛み分けてきた料理人としての歴史を味あわせてもらっているといおうか。大将は自分の10年前の料理など恥ずかしくて食べれない、不味いもんと外連味無く仰られる。当時も味わっているがそんなことは無く十分美味かったし、その味に惚れて京都へ来た時には通わせてもらっているのだが、創業してからの10年と10年から現在では料理に対する姿勢や熱の入れ様が違うという。当方は後半部からのお付き合いなので大将の料理の過程を少なからず観させて戴いているが、毎回蓋を開ける瞬間が堪らなく待ち遠しい西村さんの椀物の世界観。今後も楽しみだ。
もうひとつ、今回は器の話も少し。
色々な器がある中でもよく乾山写しという物を見聞きする。乾山写しとは、江戸元禄期の陶工、尾形乾山の器の「写し」のことで、数多の名人•名工達がこの乾山を写して勉強され、技術を磨いて来た。
こちらの乾山写しは九世白井半七による『竜田川』。これにはヴァリエーションがあり、10枚1組で入手されたとのことで当方も西村大将のコレクションの中でも一二を争う程好きな器だ。価値のわかる御仁であればこれ以上の説明は不要の垂涎の逸品である。しかもこいつは秋から初冬までの限定使用なので御目にかかれるのは今だけというレアアイテムで独特のデフォルメで紅葉と川だけで見事に秋を体現させている見事さに毎回感服する。また、大将の気まぐれもあるのでこの器を使うかは行ってみなければわからない。
この紅葉様の竜田川の皿に適当な様で適切に配置されている八寸は素材達が一層美味しく観える。皿だけでは成し得ない、料理を盛り込む事により季節の移ろいが奥深く具現化され、更には盛り込まれた料理の見栄えも良く、愛でて良し食べて良しの世界が完成するのである。
紅葉の皿に銀杏の葉と実、落ち松葉と暮れゆく秋、色付く柚子と迎える冬を愉しむのである。この至高の一体感は和食ならではだ。
◉胡麻豆腐
◉椀 [鳳凰と竜の富貴椀]
(蕪蒸(木耳 車海老 百合根 山葵)、ぐじ、雲子、粟麩 )吸い口は黄柚子
◉造り [六代目清水六兵衛の器]
真鯛と鮪
◉鯖寿司
◉八寸 [乾山写しは竜田川]
零余子(むかご)の白和え、柚子釜(牡蠣、帆立、長葱、椎茸)八丁味噌のタレ、唐墨(尾鷲)、イチョウ型薩摩芋のチップス、慈姑の揚物、銀杏素揚、松葉の蕎麦揚げ(海苔)
◉鰆の幽庵焼き 和歌山産松茸 [永樂妙全の南蛮写し]
◉炊合代りの鱧、舞茸、松茸の小吸物(土瓶蒸し)
[織部の土瓶]
◉???
◉京都牛の牛丼
◉自家製???
◉柿の栗ソース
◎早瀬浦
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【27.12.11追記】
年末の疲れを京都で癒されに来た。
仕事を終えて速攻で新幹線に乗車し、こちらに向かうのはもう定例化している。本日はどんな椀か、定番で来るか新作で来るか等々楽しみで仕方が無い。以下今回戴いた献立。
◉胡麻豆腐
◉椀物(蕪蒸し。聖護院蕪と赤蕪を混ぜて、背子蟹、若狭グジ、銀杏、木耳、生麩)
◉刺身(真鯛と鮪、鰤)真鯛は松皮造り、鮪は大間産200kg、鰤は富山県産
◉鯖寿司(八坂の雪)
◉八寸(柚子釜(炙った椎茸と下仁田葱、牡蠣、帆立、合せ味噌ダレ)、海鼠酢、鮟肝大根おろしと九条葱添え、海老芋、慈姑餅、尾鷲産唐墨)
◉天婦羅(白子、蓮根、薩摩芋)
◉焚物(真鯛のカマ、聖護院大根、振り柚子)
◉御飯、鰤西京焼き、香の物(昆布と白菜)、白味噌汁
◉ラ・フランス、苺(あまおう)の白ワインジュレ掛け
◎日本酒1(神蔵(京都))
この日一番感銘を受けたものは椀。
椀種は何と蕪蒸し!コース後半のメインに近い品をいきなり椀の世界で供するという大胆さに先ず驚く。そして種の上には蟹味噌が鎮座したシンプルだが大胆な佇まい。うーん、只者では無いなお主!吸い地はいつもよりやや出汁を効かせた形。しかしホッとさせてくれる味わい。蕪蒸しの銀餡の役割も担わせるための配合とお見受けする。椀種を食べて更に驚くことに背子蟹が待ち受けたいた。蟹脚、内子が内蔵されている。外子は食感とエグ味が出るため外されているのかな。若狭グジが脇役となる程の旨味と存在感である。何故背子蟹を椀種と聞いたところ、普通に皿に乗った剝き身の背子蟹は何処でも食べれるからうちでやっても面白くないでしょと実に単純明快。実に面白い。他に銀杏、木耳。最下層にそっと生麩を忍ばせてあるのも泣かせる。超力の好きな物のオンパレードではないか。蕪については聖護院蕪の他、先日より赤蕪も少し配合しているとのこと。そして変に生姜を効かせていなかったのがまた良い。山葵も不要。これだけの素晴らしい椀種に意外にアクの強い生姜を合せると今回の椀の世界観が打ち壊される危険性があったと思う。生姜や山葵を使わずとも素材のポテンシャルを引き出す技量がなければこんな提供の仕方は絶対出来ない。そこが一番感銘を受けた点である。
他には鰤が最高に美味!刺身ではカマ下の腹身の上部を。さらりとした脂から射出される旨味と身のしっとりとした肌触り。大間の鮪が霞む程の美味さ。真鯛も絶好調だが単純な旨味だけを言えば鰤には及ばないであろう。また、聖護院大根と真鯛の焚き合せが秀逸!真鯛カマ下はサラッと甘く煮てある。普通であれば潮煮等塩だけのところが多いが、見た目とは真逆とも言える味付けが施されていているのだ。ちょっとした兜煮のカマ下の部分の様な美味さ!その旨味が煮汁に溶け込んでおり、大根が得も言われぬ味わい。
最後の御飯ものでもサプライズが。焼き物でも堂々と登場できるクラスの鰤の西京焼きがおかずで登場したのだ。これまた3つ目の驚き!西京地もクド過ぎず鰤の旨味を十二分に引き出されている。そっと夫に寄り添う献身的な妻の様相。しかしご飯が進む進む。付け合わせも最高で何杯でも白飯が戴けるのだ。これは最強の西京めしである。
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ここも初訪問から10年は経つだろうか。1回目の訪問はそれ程良い印象は無かった。ご主人西村元秀さんの本質を見抜けず、表面的なところで評価していた気がする。周りが騒がしい客層で、大将も話好きな方でノリも良いのであまり料理に集中出来なかったのだ。それでも椀、刺身、煮物に光る物が有り、しばらく間を空けて再訪してみた。
2回目以降バカ騒がしい輩も居なかったため、じっくりと大将の繰り出す料理を味わえた。メニューは10,000~20,000円でメニューの基軸はどのコースも一緒であり、値段が上がる程一品内に高級素材が散りばめられていく。例えば八寸に唐墨が有無、焚物で鮑が有無等々。私は毎回15,000円のお任せでお願いしている。お任せの内容は、
胡麻豆腐、椀、刺身、鯖寿司、八寸、焼物または揚物、煮物または焚物、御飯物、味噌汁、香の物、デザートとなっている。
椀の出汁のキレが素晴らしい。鰹や昆布の効かせ具合、塩分、具材との調和から渾然一体となった味わいが鼻腔から口腔へと爽やかながら力のある深い味わいである。この椀だけでこの店に来たくなる。これぞ正統派の味といえよう。
刺身にはその時期で一番美味い真鯛ともう一、二品。大将に聞くと産地は指定せず、その日の市場で一番良い物を引いているとのこと。それでも瀬戸内のものは最上であると。この時期の鯛はそれ程美味いとは思わないが、冬にここで頂いた真鯛は比類無き美味さであった。本日は昆布締めの鯛と、熟成させた他は何もしていない身の食べ比べ。時には熟成具合や日数の違いを味あわせてくれたり、遊び心満載のお茶目な所が好感持てる。
煮物や焚物の煮方や出汁の効かせ方は自分の好みに非常に合っており、其々の旨味の頂点を見極めた調和の取れた一品となって客の前に提供される。この日は冬瓜がメインで周りを飾るのは恐ろしく柔らかい低温調理された鮑、紋甲烏賊、帆立生海胆を一つにまとめ上げる生姜がほんのりと効いた出汁餡。特に鮑の仕事は今まで色々な鮨屋、和食、中華と食べ歩いているが、これ程生の薫りを纏って柔らかく仕上げた物は食したことがない。これは大将があることをヒントに開発した調理で、遊び心満載なのだ。ここでは明かせないので知りたい方は是非お店に行って恐ろしい鮑を食べてから大将に聞いてみるのも愉しい。概要は教えてくれる。
八寸も酒呑みには堪らない品々が散りばめられており、どれも手の込んだもの。唐墨はここで仕込まれたものではないが、ハラの大きいぷっくらした物を一年分調達している。ここより美味い唐墨は食べたことが無い。山掛け御飯とローストビーフを組み合わせる弾力性の富んだ発想が面白い。普段考えもつかないことを掛け合わせ、一つの味を完成させていく錆びない発想力が毎回訪問して何かしらの料理に反映されているのだ。もちろんそれは味わいにも直結している。
鯖寿司もかなり名を馳せているが、開店当初はかなり苦労をされている。素材がピンの物でなくてはにしむらの鯖寿司は完成しない。極上の鯖を程よく締め上げ、仕上げに冬なら大藤の千枚漬、春~秋は白板昆布を乗せて供する。鯖特有の生臭味は感じられず、仄かな締め加減が鯖の脂の旨味を引き出して肉厚の身と酢飯の味が合わさる事により単体での旨味を倍加させている。これと日本酒がまた合うのだ。今の時期のあっさり目の鯖寿司(東山)が好みの人もいれば、私のように濃厚な脂と身が厚くなる冬の鯖寿司(八坂の雪)が好きな人もいる。好みの時期にテイクアウトを依頼して食べ比べしてみるのもまた愉しい。
7位
3回
2018/05訪問 2018/07/22
今回初体験の白旨味のつけ麺。
出汁の風味は黒旨よりも純粋に味わえるが、当方的には甘目のテイスト。
醤油由来の甘さか砂糖の添加かは不明。
しかし、ワンタンのスープの出汁は素晴らしく美味い。
こちらもやや甘さがあるが、かなりスッキリとした中でも出汁の風味、特に魚系の香りを素晴らしく感じさせてくれる。
麺は黒旨と同じ温かい麺の細麺とは別の中太麺。
麺は表層は滑らかで、モチっとしてパキュパキュした歯応え。
麺を啜り喉元を通る心地良さは屈指の出来栄え。
調理場のすぐ横の製麺エリアで毎日打っている自家製麺なだけに鮮度も抜群なので香りも豊か。
今日は久々にいそべで夜飲み。
当方の大好物の皿ワンタン(肉・エビ)に券売機には無いメンマ、仕上げに味玉をお願いした。
メンマは拍子木型でどっしりとしており、存在感のあるもので硬軟対比を付けた歯応えは今まで他のラーメン屋で体験した事の無い食感で愉しませてくれる。
ここのハイボールの絶妙な味わいが通い出した当初より好んでおり、本日は酒が進む進む。
初めてお代わりしてしまった(笑)
正体は缶物なのだがらどこのメーカーの物までかは確認出来なかった。
出来たらダースで取り寄せたい♡
〆はいつも通り黒旨でワンタン麺。
今日はつまみを多目に戴いたのでニコニコ(肉2個、エビ2個)でお願いした。
流石はいそべさんのお味だ!
いつもブレの無い、キリっと背筋が伸びる味。
スープの奥行きの深さに麺の深淵なる風味とコシに最後まで飽きの来ない最上のラーメンだ。
特に無化調のスープなのにこのコクと奥行きのある旨味は何だ!
色々な他店で無化調ラーメンをウリにしている店はあれど、ここまで当方を満足させてくれ、恍惚とさせてくれる一杯は無いね。
醤油の旨さも尖った部分はしっかりと制御されて大豆の円やかな美味しさを演出しつつ、鶏の旨味と煮干や節系の出汁の配合バランスも完璧で最後の一滴まで飲み干さないと気が済まない。
客のここのラーメンの完飲率は非常に高い!
ワンタンはツルリと滑らかな舌触り。
八雲はどちらかと言えば男性的な舌触りで、こちらは女性的でもある。
毎週来ても飽きない稀有な店である。
【28.7.12追記】
残業の後まだ間に合ったのでいそべへ。
腹ペコリーノ状態だが今日の暑さにもヤられているためハイボールで喉を潤す。苦い炭酸が堪らナス~♪ もちろんわんたんミックスの皿盛りもお願いしてしばし雲呑の美味さに身を寄せる。まだ切り落しが残っていたのでついでに注文。
ペコリーノの誘惑には到底勝てずに大盛で黒旨特製を注文。自家製麺は細いがクキクキとした腰に滑らかな舌触り。小麦の風味も感じ取れ、必要以上にスープを絡ませずに麺を味わう仕様である。スープは薄味だが、本鰹と鯖の削り節と千葉は大網白里の片口鰯の煮干で旨味の相乗効果を図り、幾重にも折り重なった旨味成分の融合性に当方はメロメロや。メンマは初回の頃と比べてはるかに歯応えをしっかりと愉しめるように変わって来ており、しっかり噛み締める分素材の風味も感じ取りやすくなった点は非常に良くポイント高い。もともと美味いメンマだったので嬉しい限り。これをつまみで別注文出来ればもっと嬉しいんだけどなぁ。
今年の1番好きなラーメンナンバー1だね。
【28.6.16追記】
3月に来て以来、月に2回は寄っているいそべ。本当はもっと寄りたいが夜の営業が月水金はやっていないのでタイミングが合わないと来れないのだ。最近はもっぱら角ハイボールで軽く喉を潤し、わんたん盛りやチャーシューをつまみながら一杯やるのが好みになっている。
チャーシューは豚と鶏の2種なのは変わらず。あまり好みでは無いがつい頼んでしまうのだ。最近は切り落としもあるのでそちらもチョイスしているが、今回の写真アップは通常の物。
絶対に注文すべきはわんたん皿盛りのミックス。肉と海老が3個づつの6個。これをポン酢の涙という福岡県産橙と佐賀県産酢橘のポン酢で戴くと、さっぱりと爽やかに食べれる。中々好みの肉わんたんの店が無いが、ここのは美味しい。肉の嫌な臭味が無く旨味溢れる味。海老もプリップリで食感、甘味、塩味が良い。
本日はつけ麺が解禁になっていたので試す。先ずは熱々のつけ汁と別盛りのわんたんがスープに浸されて提供された。ここの美味しい鶏の出汁に少し醤油タレを加えたスープに浸かっている。これだけでも単体で食べたい程美味い!つけ汁は醤油と酸味のエッジを立たせてクッキリとした輪郭を出している。単なる塩っぱい酸っぱいの汁ではないため後からじんわりと鶏や魚介の出汁が顔を出してくる。麺にはカットレモンと丼の縁にほんの少し柚子胡椒が添えてある。つけ麺は温麺に比べてやや太目。キリッと冷水で締めてあるので小麦の風味はあまり感じなかったが麺の滑らかさと歯応え、喉越しは良い。美味しいので飲んでいるのに麺があっという間に無くなってしまった。大盛りにしておけば良かったかな。
スープ割も可能で、美味しい鶏出汁と合わせて飲むと温麺では味わえなかった別の顔が見え隠れして面白い。結局本日も完飲してしまった。しかしここのスープは脂ギトギトの胸焼けする素材では無くスッキリ鶏出汁と魚介出汁のマリアージュなので健康にもそれ程害は無いと自分に言い訳を言い放って帰路についた。
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中目黒に八雲があった時はハマって月に2〜3回は通っていたが、池尻大橋に移転後はアクセスも悪くなった上に夜営業が少なくなったこと。平日は水曜だけ夜やっていたがなかなか都合つかずに訪問回数は激減。こちらで修行されていた店主が今年の1月に開業されたばかり。開店当初は昼のみの営業だったが3月下旬に訪問した際には曜日によっては夜も営業を開始したとのこと。店内はカウンターのみの8席+α。開店したばかりの店内は清々しい。
黒旨が気になっていたのと券売機で一番目立つ位置にボタンがあったこともあり、特製わんたん麺黒旨にした。特製はわんたんが肉と海老が3個づつ並んで盛られている。肉はジューシー、海老はプリプリで潮の香りをまとう。皮もトゥルンとして食感良し!麺は自分のところで製麺機を用いた自家製の細麺。クキクキとしたコシのある食感に小麦の風味が香る最後まで芯の通った麺である。スープは鶏がメインの動物系と鰹節や煮干し等の乾物魚介系のダブルスープ。出汁の風味が初めに鼻腔をくすぐり、醤油の程良き酸味とキレが心地良い余韻を誘う。一口、また一口とスープを飲むレンゲが止まらず、麺も食感と風味が良く箸が止まらない。薬味は分葱に三つ葉が風味良し。チャーシューは豚腿と鶏は胸肉かな。鶏のシットリ加減が素晴らしいが豚はややパサつき感が否めない。八雲では食紅に甘ダレ絡めてオーブンで焼いていたがこちらも煮豚では無く焼豚。同じ技法に思う。残念なのはメンマ。味付けや太さは良いが柔らか目のため食感が悪い。もっとコリコリサクサク感を出された方が麺とのバランスも良くなるだろう。
しかし総じて当方好みの美味いラーメンで久々にスープまで完飲した。次回は白旨を食べてみよう。角ハイボールもあるのでワンタンやチャーシューをつまみながら軽く飲むのも良い。
8位
11回
2018/10訪問 2019/05/14
【つまみ】
◉熊本川辺川産落ち鮎
◉九絵 牛蒡
◉長崎五島列島の目高鮑 余市鮟肝
今年最後であろう鮑だが、それも目高というここ数年あまり市場に登場しない希少種が登場。
膨よかな旨味、馥郁たる潮の香り、しなやかで軽やかな弾力は加熱する事によるポテンシャルの開花でキングオブ鮑にのし上がる。
余市の鮟肝に小宮親方の手が加わると超絶的で安定した美味さを約束してくれる。
◉浜中産馬糞海胆 淡路島産鮃
当たり前のように美味い!
鮃はこれから伸びてきそうだが、鮃としての風味が濃い。
浜中の馬糞も厳冬期に旨味を増していく。
◉羅臼産鰤の大蒜醤油 熊本の焼き茄子と言う名の茄子(丸茄子)
前回は山口のたまげ茄子
こちらのスペシャリテ『メジマグロの大蒜醤油』も突進した美味さであるが、またこの羅臼の鰤でやると何ともまぁ酒の進む佳肴になるのだ。
トロリと濃厚なたまげ茄子もコクがあって美味。
◉信州諏訪産松茸と天草産1.2kg鱧、菊花の椀
鱧は落とさず炭火でサッと炙って松茸と共に椀に盛り付け吸い地を張る。
さっと菊花を散らして蓋をして完成。
吸い地は正に至極の味わい。
塩分濃度が絶妙で薄過ぎず濃過ぎずのバランスの取れた吸い地。
鱧からはほんのり酢橘の香りが漂い、椀に盛り付ける際に数滴落としたか、椀種の下に忍ばせていた酢橘皮か不明であるが、直接的な味わいだったので数滴の方かと思う。
しかし出汁を濁す様な野暮な足し算では無いのは流石。
菊花の香りはおとなし目なので松茸の香りはバッティングせずに松茸の風味を底上げしてくれる。
松茸は切るとキュッキュッと音がする身が詰まってすの入っていない立派な個体。
虫喰いも無いので身は白くて綺麗だ。
今日の産地は信州産の中でも諏訪で取れたという珍しいもの。
鱧は脂の乗りより身の美味しさが椀種としての役割としてピッタリな個体。
1.2kgとやや大型だが身もフワリとして炭火で焼かれて閉じ込められた旨味が溢れる。
其々の椀種から旨味エキスが与えられた吸い地は飛躍的に高まっていく。
◉佐呂間産いくらと羽幌産牡丹海老の小丼
いくらも濃厚だけど、この羽幌の牡丹海老は北海道の産地でも礼文島、噴火湾とならんで超力が好きな産地ベスト3である。
それは即ち超絶美味ということだ。
◉宍道湖産天然鰻の小丼
こ、これは•••
う、ま、い、ずぉおおおーーー!!!
堪らん!堪らん!
宍道湖の旨味が堪らん!
本日一の超白眉!!!
一つだけ言うのならば、素晴らしく均等の取れた『超絶バランス』!
先ず鰻を口に運んで咀嚼した瞬間に溢れる素晴らしい風味がパァァンと弾ける如く口内に広がる。
かと言って強過ぎる訳ではなく滋味溢れる香りと旨味。
身質がしっかりとしており、身の繊維もしっかりと確認出来るのだが硬くはなっておらず、フックラほこほことした噛んでいて心地良い仕上がりとなっている。
香魚といえば鮎の代名詞だが、当方は天然鰻についても当てはまるキーワードだと確信する。
ていうかこの宍道湖を食べたらもう議論の余地など無い!
身の美味さ、皮目の風味、鰻のポテンシャルを高め、更なる高みへ引き上げる調理技術が伴って神の領域の味わいへと仕上がっている。
大自然の中で生き残って来た鰻はブヨブヨ脂では無く必要最低限の脂を携え、身は引き締まっている点で既にバランスの良い身質となっている。
しかし天然物は大自然と同じ目線で観ないといけない。
人間だって人1人それぞれ違うのだから、更に自然界の生き物など1つひとつ全く違う環境の中、食べる餌だって同種の物を漁っているとはいえ全く同じものでは無い。
力無い物はそれなりの物しか有り付けず、力有るものは、狩りも上手いグルメハンターだ。
今期一は言うに及ばず、今まで食べて来たあらゆる天然、養殖の鰻のなかでも別格南禅寺である。
炭火で焼かれてフックラと仕上がったその身の厚さは鰻専門店では見た事も無い分厚さ。
うを徳でも数多くの天然鰻を戴いてきた中かなりの分厚さの個体もいくつか見たが、これはピカ一。
親方も今期7度宍道湖を仕入れたが、こいつがナンバー1だという。
戴いてみると本日の皮目の焼き加減がいつもの様な皮パリとは違うところからも格の違いを見せつける。
身が厚い分いつもの感じで焼いていると皮が焦げてしまうというレベルの個体なのだ。
1.0kgを超えなくても個体の個性と育った環境でこれ程のモンスターが産まれ出るものだという事も教えてくれた。
腹の身は黄金色をしており、身に蓄えられた養分が身体中に満ち溢れており、好きに動き回れる野生の厳しい環境の中で生き残ってきた精悍な顔つきと身体つきは伊達じゃ無い!
いつもは調理が済んだ鰻は何も言わずに静かに持って来るのであるが、今日は違う。
焼き上がった鰻を親方が「これは凄いですよー、レベルが違う」と仰る位だから。
毎日素晴らしい天然鰻を観て触れて捌き、調理している親方談なのだから間違い無い、素晴らしい個体との僥倖であった。
ちなみにこの日の宍道湖産天然鰻は0.95kg、キロ32,000円とのこと。
値段も王様クラス。
【握り】
この日の鮪は戸井産1.1kg本鮪
◉本鮪大トロ 腹上
本鮪は正直な話、うを徳史上最高レベルの身質と旨味。
この日のシャリも当方が今までうを徳で戴いて来た中でも米の張り、水分含有量、赤酢と潮の調味加減と非常にバランスの取れた、こちらの店としてはハードタイプのシャリであった。
今回のシャリが鮪のポテンシャルを引き上げ、鮨としての完成度が高まっていたこともうを徳史上最高の本鮪と思わせてくれた一因であろう。
◉那智勝浦産皮剥の肝噛ませ
◉羅臼産鰤腹身
◉天草産小鰭(なかずみ)
◉小柴産墨烏賊
◉閖上産赤貝 捌きたて
◉高知産〆鰯
◉戸井産本鮪大トロ 砂ズリ
◉炙ったクエと松茸の海苔巻き
素晴らしい山の息吹と海鳴りとのマリアージュ(笑)
本日の山葵は御殿場本山葵キロ36,000円
◉デザート
信州甲斐路
岡山シャインマスカット
唐津ビオレソリエス
【日本酒】
◎天狗舞
【つまみ】
◉根室産秋刀魚有馬煮
◉長崎産九絵、礼文島産紫海胆
◉真蛸
◉宮城産鮑のバター焼き 肝ソース、茄子
超白眉!!!
宮城産の鮑(雌貝)はかなり巨大で1kgを超えていそう。
鮑は鹿の子に庖丁を入れられてからバター焼き、紐や肝などのモツは細かく叩いてから炒めてソースに。
旨味の隠し味は青森田子産ニンニク。
これが嫌味なくバチっと合うんだから不思議だ。
鮑はムチムチっとした弾力にバターで焼き付けた芳醇な香りと素材の持つ潮の馥郁たる香りという大地と海の合作は口内で最高の美味が実現する。
火入れも絶妙で中心部はほんのりレアーではあるが柔らかく仕上がっており、食感の違いなども愉しめた。
ソースはちょい甘で、バターの他に醤油、砂糖、味醂、酒等で味を整えていると。
鮑のエキスを十分吸収し、バターと甘味の相性は抜群である。
揚げ浸しの茄子が良い脇役となって鮑の旨味を引き立てる。
今まで食べて来た鮑ステーキの中でもかなりのトップクラスの皿となった。
◉対馬産鰹 炭火焼
皮パリになった戻り鰹の美味さは藁焼きでは持っていない皮目の美味しさを存分に引き出された逸品。
当方はこよなく藁焼きの土佐造りを愛してはいるが、ここうを徳の炭火で巧みに火入れさた鰹の叩きは他所では味わえない美味さである。
身を分厚く切るところは土佐造りに通ずるところ有り嬉しい仕様。
春の時より更に厚めに切り付けている(笑)
豪胆豪気な出で立ちの鰹の叩きである。
この日は茗荷と店先で育てている紫蘇の葉を刻み薬味に、おろし生姜を添えて。
◉淡路島産鱧と千歳産松茸の椀
椀の蓋を開けた瞬間から圧倒的な高貴な香り。
吸い地を口に含んだ瞬間魂を奪われるが如く精緻で艶冶な出汁の重層的な味わい。
鱧からの出汁と、鮪節、利尻昆布、酒、味醂、塩で味を整える。
骨切りされた鱧の身は皮目だけに塩を軽く振り掛け、湯掻かず炭火で皮目のみにサッと火を通す。
ちょっとした焼き霜の様相の鱧からも吸い地に旨味を存分に与え、刻みたてのフレッシュな松茸をこれでもかと投入されている。
この総合バランスから繰り出される風味は先に戴いて感動した鮑のバター焼きを凌いでしまう程の愉悦を味わえた。
吸い口の青柚子が下に忍ばせてあったのも面白い!
ちなみに本日の千歳産松茸 一箱7.5万円とのこと('◇';ゞ
◉千歳産松茸と琵琶湖産稚鮎の炊き込みご飯
薄くスライスした松茸に軽くうを徳特製醤油を塗していたので何をするのかと思っていたら、松茸ごはんを作っていた(笑)
昨年10月の最高騰した際の松茸ご飯の松茸の量より断然多いスライス松茸ちゃん♡
更にそこへ琵琶湖産の子持ち稚鮎をドサっと入れて。
松茸の生命力溢れる高貴な強い香り負けない香魚たる稚鮎の身や肝、プチプチとした子の香りが想像以上にマッチしているのだ。
この組み合せはどんな発想から産まれたアイデアなのかを聞きそびれてしまったが、非凡の才を十分発揮された満足度の高い炊き込みご飯(というより混ぜご飯)であった。
【握り】この日は長谷川奈津さんの器で
◉大間産120kg鮪蛇腹
◉行徳産小鰭
今日の〆加減が当方の最も好みとする位置に近い仕事でシャリとの馴染みも最高。
こちらで戴く小鰭はどちらかと言えば穏やかな〆加減なことが多いのだが、聞くと今日のは江戸前の小鰭とのこと。
身に厚みがあり、この〆に耐え得る素材でないとアグレッシブな仕事は成し得ないと。
◉式根島産赤烏賊
赤烏賊は剣先の脚の長いやつ
白烏賊は剣先の脚の短いやつ
◉青森産鮃昆布〆
◉石蔭貝(石垣貝)
◉大間産鮪中トロ
今までうを徳で戴いてきた鮪の握りの中で一番美味かった(笑)
赤身の酸味、脂のコク、身の赤子の様な柔肌の如く肌理の細かい身質。
兎に角シャリとのマリアージュが半端無く、様々な鮨屋で戴いてきた最高のピン鮪と比較してもその煌きは遜色無しだ。
◉大間産鮪赤身
◉淡路島産真鯵
◉羽田沖江戸前穴子
この何処か仄かに泥臭い野趣溢れる風味に独特の力強さ、且つクドさの無い質の良い脂の乗りは間違い無く対馬産とは別物の江戸前の穴子の美味さだ。
◉大阪湾産天然鰻 小丼
身の質、脂の乗り、皮目の香ばしさとコクは申し分無く美味!
それを支える酢飯が鰻を最高に美味しくしてくれる装置だ。
これぞうを徳の味!
◉新烏賊
訳あって手渡しで(笑)
ふんわり柔らかで滑らかな舌触り。
サクッとした食感は無いがネットリとした甘味を醸し出していた。
ちなみに本日の出水新烏賊 キロ1.5万円 ('◇';
◉デザート・ルビーロマン
一粒1,000円 一房20,000円という高価な仕入れ値の果物。
もちろん食べまた事は無い超絶美味。
・新甘泉(しんかんせん)
鳥取で開発された梨でかなり美味い。
【酒】
◎梅酒ソーダ割
◎月の井 大洗町 冷やおろし限定酒
◎鶴齢 新潟南魚沼 純米吟醸
この日は天然の丸(すっぽん)で唐揚げと潮汁を堪能した。
この日の丸は熊本県球磨川産2.4kg。
新たに調達された大皿は、加藤唐九郎(人間国宝)の弟子(息子)の加藤重高の作『織部叩き鉢』。
深い濃い緑の皿に深紅の如し鮪の赤身が良く映えて美しかった。
◉先付
・2時間30分蒸し上げた千倉産蒸し鮑
・京都満願寺唐辛子
・熊本産茄子
・愛媛県産ジャコ山椒
◉琵琶湖産稚鮎山椒煮と余市産鮟肝
◉山梨県桂川の鮎の塩焼
◉徳島県産天然岩牡蠣のフライ
凄くプックラとしたオムレツみたいな岩牡蠣。
濃厚でミルキィな旨味が次から次へと口一杯に溢れ出てくる。
カリッと香ばしく揚がったフライの衣の歯触りと巧く脱水させて味わいを濃縮させた技は見事!
世界一美味いカキフライだ、こりゃ♪
◉向付
・大分県産1.0kg城下鰈朝〆
・岩手産馬糞海胆 明礬無し
◉霞ヶ浦産560g天然鰻丼
【熊本県球磨川産2.4kgすっぽん】
◉丸唐揚げ
良く出来た養殖の様な脂の乗りとは別の、筋肉質な繊維にムキっとしているが硬く無い適度な弾力が噛み心地が良い。
噛むごとに旨味が口内に広がっていく。
下味は日本酒に塩少々と薄っすらと付けた程度だが、すっぽんの旨味を引き出すのに十分な量。
たまに添えてある塩を少しだけ振り掛けても美味い。
◉丸潮汁
すっぽんの汁を1時間30分程コトコトと煮詰めて味を詰め、薄口と日本酒少々で仕上がる。
塩と昆布は入っていない。
あまり煮詰めると汁が無くなるため、この程度の時間で仕上げるのだと。
こちらもギリギリの薄味であるが、芯の通った質の良い旨味がジンワリと広がっていく。
【握り】
◉佐渡産定置網90kg血合岸し
◉函館産2.8kg鮃
脂が乗りきって皮目がピンク色
◉平貝
◉氷見産5.4kgアラ
→九州のアラと言われている九絵とは別物で頭や顔付きも全く別。
◉障泥烏賊
◉九十九里産蛤
◉佐渡産定置網90kg大トロ
◉根室産鰯
◉網走産キンキの炙り
◉佐渡産定置網90kg漬け
◉玉子
【デザート】
◉メロン
【日本酒】
◎くどき上手
◎八海山 越後で候
◉塚原産白子(筍) の椀
クリアーで濃厚な大地の風味を堪能。
物集女産は苦味があるので椀種としては見送ったとのこと。
◉先付
・四万十川産ゴリ
・琵琶湖産モロコ
・大分産ドンコの煮付 10日煮込
◉浜名湖産稚鮎 天ぷら 初物
こりゃ美味い!
軽やかだがしっかりと鮎の肝の苦味と甘味、しっとりとした身の質が素晴らしい。
◉村上産天然山三つ葉
香りも味わいも段違い平行棒♪
◉向付1
・城下鰈 1.6kg 1日
・東京湾真子鰈 800g 同日
・噴火湾産蝦夷馬糞海胆
◉向付2
・勝浦産鰹の叩き
超白眉!!!
何だこりゃ~の美味さ。
初鰹でこれだけの美味さを堪能させてくれるとは想像以上の叩きだ。
皮は天然鰻の様にパリっと焼き上げ、切る時にサクっと軽い音がした。
身は分厚く切りつけ、何たる豪胆豪気な出で立ちであろうか。
炭火の香りが芳醇な鰹の旨味を引き上げるだけでなく、皮と身の間の皮目の脂の活性化した美味さは藁焼きを超えてるね。
うを徳は小宮親方ならではの鰹の叩きだ。
こんな鰹の叩きは初めて食べた!
これは当方の大好物の藁焼き土佐造りに匹敵する位置にある。
【向付の皿:西岡小十 絵班唐津 飾鉢】
◉花山椒鍋
[出汁]
・能登のアラ
・金目鯛
・鰹節
・利尻昆布
・物集女の筍
・京都丹波産花山椒
・フランス産塩
・焼津産黒鯥 3.0kg
・黒鯥白子と物集女産筍
・銚子産金目鯛
・対馬産赤鯥(喉黒) 750g
・北海道産黒毛和牛と物集女産筍
【握り】
今宵の友は岡晋吾 呉須色絵白金彩葡萄文六寸四方皿で
◉壹岐産90kg鮪中トロ
◉愛知産本水松貝(生)
活の捌きたてで野趣溢れる風味。
癖も味のウチ♪
◉船橋産小鰭
小鰭~なかずみ 身の厚みの分ややしっかり目に〆て
◉壹岐産90kg鮪大トロ(蛇腹)
◉淡路島産真鯵
◉城下鰈
身の具合からしてポン酢で戴くこととなった。
汽水湖に居るので1日で身が柔らかくなってしまうのだとか。
海水域で生息の江戸前は数日寝かせても身が弛れないそう。
◉能登産アラ
6日熟成
濃厚ながらも後口爽やかな味わい。
◉白烏賊
◉明石産白魚 木の芽噛せ
ほろ苦い旬の白魚に木の芽の風味がマッチ
◉有明産小鰭 新子~小鰭
なかずみ程ではないが、いつもよりアグレッシブな〆。〆仕事に負けない素材なのであろう。
◉竹岡産閂(細魚) 花山椒乗せ
◉壹岐産90kg鮪赤身
◉富山産蛍烏賊
◉鰹叩き小丼
あまりにも鰹の叩きが美味かったので、尻尾の余った方を酢飯と合わせて試したいとお願いし、提供頂いた。
やはりシャリと合わせると魚の美味しさが2倍にも3倍にも膨らんでいくなぁ。
◉フルーツ
宮崎産マンゴー、愛媛産黄金柑、沖縄産あてもや
◎賀茂鶴(広島)
◎月の井(茨城)
※其々1合
年が明けて小宮親方のおせちの疲れが徐々に取れつつある頃。
新年はアレでという話になった。
そう、きっかけはパエリア鍋はあれから活用されているかという話題になり、まだ1回しか使っていないという話を聞いてから。
だったらもっと活用してあげないとパエリア鍋がかわいそうだ!ということになり、今回のメインに据えてもらった次第(笑)
他にもこのパエリアに付随して親方独自のものや定番のもので存分に愉しませてもらった。
◉赤パプリカのムース
青森産鮃のガラと三田牛の出汁で撮った出汁を合わせたもの。
玉葱、人参、セロリ等香味野菜の出汁をムースと融合させている。
滑らかでコクがあって最高のスタートだ。
最近食前酒代りにハマっている梅酒ソーダ割りともバッチリ合っている。
◉愛媛八幡浜産白川(白甘鯛)の御頭 酒蒸し
「私は甘鯛なら断然頭の酒蒸しが好きですねぇ」
と小宮親方一押しの甘鯛食べ方だ。
当方と友人とで一尾の白川(白甘鯛)の頭を戴いたのでこれで白ぐじ頭は売り切れ。
それも八幡浜の最高級の白川を丁寧に下拵えし、器に入れて昆布と煮切り酒をたっぷり振り掛け、蒸し鍋にいれて火が通るまで強火で一気に蒸し上げるとのこと。
その美味さ、特に頭の部分の濃厚で濃密な美味さは、魚の頭の中では真鯛はゆうに超え、クエに匹敵する程と仰る通り当方も同意見だ。
しかもしつこさ、クドさが無くスッキリとした口当たりなのに深淵なる味わい。
特に頭全体のゼラチン質でプルプル、目の周辺にはDHAやEPAというグルマンには健康面からも必須であろう栄養素が大変豊富だ。
後半になると自ら射出した旨味汁で煮汁がトロントロンになる。
添えられた自家製ポン酢を少し投入して最後の汁まで啜ると得も言われぬ美味しさ。
この後の身や中骨の出汁はどうなるのか伺ったところ、身は後ほど焼きで提供し、中骨やガラはパエリアを炊く時のスープになるのだと!
これはこれは何て贅沢なパエリアなのだろうか?!
しかもこの白川、パエリアをやるために買ってきたもので、出汁以外は副産物というのだから贅沢極まり無い(笑)
こんな贅沢なスープで炊き上げるパエリアなど見た事も聞いた事も無い。
どんな風になるのか非常に楽しみになってきた。
◉新潟産ズワイ蟹焼き
◉佐渡産寒鰤の藁炙り ニンニク醤油和え
寒鰤は米藁で燻し炙って少し落ち着かせてからタレと合わせる。
タレの醤油は7種類をブレンドし、味醂や酒等と合わせた調味を施している(ご本人は調合具合は適当と仰る)。
そこに青森産のニンニクのスライスした物を投入し、少し馴染ませてから鰤の身を投入して絡ませていく。
寒鰤の力強い旨味や脂は米藁で燻し炙って少々落ち着かせ、薫香を纏った鰤ちゃんの最後のお召し替えにニンニク醤油で和えて完成。
北陸の冬の味覚の王者である寒鰤の野趣溢れる美味さを最大限に引き出したうを徳オリジナルだ。
これはメジマグロの方が先駆者だが、当方は旨味の強い寒鰤と合わせた方が好みだなぁ。
どちらもお酒の進み具合が加速すること請け合いだ!
◉青森産1.4kg鮃と釧路浜中産蝦夷馬糞海胆
じんわりと品良く力強い旨味がやってくる青森産の寒鮃の特徴がよく出た個体だ。
浜中の馬糞は絶好調!
この寒鮃で贅沢にも海胆を巻いちゃおうというのだから、万物の神のバチが当たらないか非常に不安になりながらも
巻き巻きして戴いてみた。
parfait!
鮃だけでは持ち合わせていないコクを海胆が補填したところ、奥底に眠る旨味要素を刺激して舌に新たな美味を運んでくる。
鮃も海胆もお互いに美味しくなり、高め合う素晴らしい組合せと楽しみ方の一つである。
◉八幡浜産白川 焼き
頭は酒蒸しで食べてしまっているので今度は身の方。
備長炭で遠火の炭火で丁寧に焼き上げられた白川は、最上な炭の薫香を纏いつつ、嫌味な香りは無くあっさり戴ける。
皮はパリッと中は保湿成分を蓄えてしっとりふんわりとした食感が流石である。
今回は鱗は除去されていたので次回、焼きや唐揚げがあれば皮もお願いしたいところだ。
◉うを徳特製パエリア
超白眉!!!
見た目も鮮やか、食べて衝撃!
こんなパエリア食べたことが無い。
やっぱりこれは唯一無二の鮨屋のパエリアだ。
オマール海老の味噌が緑掛かった鮮度抜群な色が特色だ。
ヒュメ・ド・ポアソンが最高級の白川から取った出汁なのだから芳醇な旨味が抽出されており、パエリア専門店やスペイン料理屋もシャッポを脱ぐ美味さだ。
お焦げがまた絶品!!これを喰わねば帰れまい!
具材は先程まで元気に生きていた活オマール海老(アメリカ産)、北海道の真牡蠣、玉葱、人参。
高いサフランを仕入れさせてしまって申し訳無いと思いつつ、大変美味しく頂戴した。
白川からの重厚なコク、オマールからの濃厚甘露な甘味、牡蠣から豊潤な風味、牛肉と野菜からは大地からの旨味が一つのパエリア鍋で集い、口の中で融合し、一つの味として完成される。
これはどなたが食べても感激する味ではなかろうか。
【握り】
◉ズワイ蟹の身とカニ味噌和え巻き
◉佐渡産寒鰤
◉大間産100kg本鮪 3日寝かせ 中トロ
◉大分産皮剥
◉能登七尾産〆鯖
◉出水産墨烏賊
◉大間産100kg本鮪 3日寝かせ 大トロ
◉青森産鮃
◉天草産小鰭
◉大間産100kg本鮪 3日寝かせ 赤身
◉佐島産蒸し鮑
◉穴子
◉玉子鞍掛
◉徳島産さくらももいちご
もちろん鮨もデザートも美味しく頂戴した。
◎梅酒ソーダ割り
◎新潟 鶴齢
◎くどき上手
竹内せいほうの犬の絵
この日は連れのリクエストによる色々な海老を堪能したいという事で海老祭り(尽くし)。
ビスクから始まる所や中華的な海老マヨなど純粋な和食の概念に拘らない自由闊達な発想から繰り出される料理。
それでも最終的な着地点はキチンと和食になっている点は流石と言えよう。
元々西欧料理からはじめられた小宮親方の料理人の道を我々も垣間見せて頂いている様で食べていて只々愉しいひと時であった。
冬の季節の様々な海老の他、甲殻類の蟹、うを徳スペシャリテと言っても過言では無い天然鰻等々こちらの欲求以上の答えをご披露頂き、連れも当方も大満足。
最後に我々にしか思いつかない食べ方で海老祭りを〆させて貰い満足満足♪
【つまみ】
◉オマール海老のビスク 車海老(養殖) 京大根
◉オマール海老の海老マヨ
◉秋田船川港産ズワイガニ
◉小柴産1.6kg寒鮃 函館産蝦夷馬糞海胆(小川)
◉タチポン(羅臼産雲子 ポン酢)
◉桜海老 生
◉桜海老 天ぷら
◉ズワイガニ甲羅酒
◉房州産伊勢海老具足煮 海老芋
【握り】
◉富山県産白海老小丼
◉氷見産寒鰤 腹の身
◉氷見産鰹叩き
◉大間産160kgトロ
◉小柴産鮃
◉大間産160kg中トロ
◉浜名湖産1.3kg 天然鰻小丼
◉大分姫沼産天然車海老
◉鹿児島出水産墨烏賊
◉氷見産寒鰤 背の身
◉大間産160kg赤身漬け
◉穴子
◉香住産こっぺかに
◉天かす丼
これは我々からお願いした食べ方で、流石の親方でも天かすだけの丼は提供されないので読書の皆々様は勘違いされない様。
元々これは、真鶴は岩忠という漁師料理の店で提供されている裏メニュー的なもので、金目鯛の煮付けとライスを注文したお客様だけの裏技。
漁師料理で出た天かすをライスの上に乗せ、旨味の煮詰まった金目鯛の煮汁を天かすの上から掛けて食べるとメチャクチャに美味いんだ!
これを応用してもらったという次第だ。
桜海老天の天かすは捨てずに酢飯の上に乗せてもらい、その上からツメを垂らしてもらって戴いたところ、メチャ旨!
カスのサクサク感がまだしっかりと残っており、桜海老の風味がカスにもしっかりと移っていて、酢飯のサッパリとした旨さと穴子だけでなく、金目鯛や喉黒等の美味いエキスが煮詰まった我流(うを徳オリジナル)のツメと合わせると素晴らしい香りを纏わせて風味も引き立つ。
◉愛知県産紅ほっぺ
◎想天坊(新潟長岡)
◎磯自慢(静岡)
今日はいつも以上に素晴らしい充実した内容であった。
ひとつづつ解説していると長くなるので割愛したが、天かす丼だけは誤解が無い様に説明を付記させて頂いた。
こんな食べ方しているの我々だけなので、親方がこちらを御覧になったら即バレだろうな(もう今までので十分バレているか(笑))。
次回はアレも登場する事になる。
お楽しみに!
【つまみ】
つまみの領域を超えたつまみ。
◉お浸し
山形もってぎ菊の花、京都壬生菜、岩手産松茸
松茸はサッと出汁で煮てある。
◉釧路産真牡蠣のフライ
◉愛媛県産中山栗渋皮煮
◉根室産秋刀魚煮
◉福岡産菱の実、落花生
◉岡山県児島湾産天然青鰻 煮こごり 蕪
◉松茸ご飯
◉愛媛県八幡浜産3.0超え白川、白川皮素揚げ、浜中産蝦夷馬糞海胆、
◉涸沼(ひぬま)産(茨城)産天然鰻
◉岩手産2.7kg真蛸
【握り】
◉江戸前勝山産真子鰈
◉小川原湖2.0kg天然鰻
GREAT!!
今期最高との誉れ高き天然鰻
◉大間産本鮪 大トロ
◉小川原湖2.0kg 骨煎餅
◉金目鯛
◉淡路島産〆胡麻鯖
◉噴火湾産100kg本鮪 大トロ
◉明石産真鯛
◉噴火湾産100kg本鮪 中トロ
◉釧路産〆鰯
◉式根島の赤イカ
◉有明産小鰭
◉鹿児島出水産新烏賊
◉岩手陸前高田産石景貝
◉噴火湾産100kg本鮪 赤身
◉岩手県産馬糞海胆
◉玉子 芝海老
◉デザート
・伊豆冬柿
・長野県ピオーネ
・旭川上川トマト
・エクアドルバナナ
この日は幾分体調が優れず、梅酒ソーダ割りで通す。
長野県産の梅で漬けた梅酒で本日のは一昨年漬けたモノだそうだ。
かなり奥深く、トロリと艶冶な味わい。
今回は友人の鰻を食べ比べてみたいというリクエストから2本を調達されていた。
また親方垂涎の器に盛り付けられた食材達は更に活き活きと輝きを放ち、目でも愉しめる。
天然鰻(霞ヶ浦) 1kg
天然海鰻(宮城) 400g
ちなみにこの日の宍道湖産はキロ2.5万也
【7月のおまかせ】
◉京都伏見産黒豆
◉厚岸産生牡蠣
◉煮物①
横須賀煮蛸 与論島産小芋 三浦産タコ大根 京都蕪 新潟夕顔 万願寺唐辛子
◉煮物②
大原産蒸黒鮑と山口萩産たまげなす(萩産の長茄子)の揚げ煮添え
◉広島太田川天然鮎の甘露煮
東京の独活の金平
◉桑名産青柳 秋田蓴菜 九条葱のヌタ
フランスの粒マスタードを合わせて
◉天然海鰻(宮城) 400g 白焼
脂の乗りは穏やかだが身のフックラとした美味さと皮のパリパリした心地良き食感に旨味の凝縮した味わいは正にうを徳オリジナル。
◉刺身 ※西岡小十の皿で頂戴した
明石産2.1kg真鯛、奥尻島産紫海胆
真鯛は昨日〆た物で産卵終り、養分蓄え始めて美味しくなったと。
奥尻島産はミョウバン添加だが、嫌な臭いや味覚は無く上出来な物。
海胆を鯛で巻いて食べると絶品。
◉天然鰻(霞ヶ浦) 1kg 白焼を鰻丼で
この肉厚な身を観よ!!
これは先の海鰻とは品質品格が別格で、焼く事により更に肉厚度が増したモンスター。
ザクっと庖丁を入れる音が心地良い。
身と皮の良質な皮下脂肪のむっちりとしたゼラチン質が堪らなく美味い!
7月なのに脂の乗りも抜群で、身質も強張っておらず繊維質がハラリと解れ、更にフックラとした仕上り。
噛む毎に身から旨味が溢れてくる。
これにうを徳の鮨飯を合わせて丼で戴くなど何と言う贅沢であろうか。
鰻の脂の旨味が溶け合って、酸味のある鮨飯が甘く感じる程。
それは鰻のタレを掛けられた銀シャリの如し。
それに匹敵する味わいを醸成されており、強い野趣溢れる味わいの天然鰻には酢の利いたシャリが殊更合う事が確信出来る。
友人も大層お気に召した様だ。
◉明石産真鯛の潮椀
ここまで様々な物を食べ続けて来たところで、食事(鮨)の前にホッと落ち着ける味。
出汁は使わず真水に利尻昆布に薄口をごく僅か加えているだけのモノだが、これが途轍も無く美味い!
それは誤魔化し様の無い素材本来の持つ旨味の素晴らしさと、食材の本質を余す事無く引き出す料理人の卓越した技量と味覚のセンスが光る。
【鮨】※北大路魯山人 草文四方皿で頂戴した
◉淡路島産〆胡麻鯖
◉噴火湾産100kg本鮪 大トロ
◉明石産真鯛
◉噴火湾産100kg本鮪 中トロ
◉釧路産〆鰯
◉式根島産赤烏賊
◉有明産小鰭
◉鹿児島出水産新烏賊
◉岩手陸前高田産石景貝
◉噴火湾産100kg本鮪 赤身
◉岩手県産馬糞海胆
◉玉子 芝海老
◉フルーツ
余市 さくらんぼ
沖縄 タダオゴールド
山梨産桃
【日本酒】
◎月の井(茨城県大洗)
◎八海山 純米吟醸(新潟)
◎くどき上手(山形)
今宵は年に一度の花山椒鍋回を催す。
今年は花山椒の値段が2倍程に跳ね上がった模様で昨年より花山椒の盛りは少な目(今年は福島産)。
この日は新たに仕入れたという器を拝見させて貰った。
須田菁華(九谷)の呉須赤絵(ごすあかえ)徳利にうっとりしてしまった。
線や釉薬は力強い面もあるのだが、白地の徳利が不思議に絵柄を柔らか味のある風態と為し、おだやかな表情を浮かべ、その雰囲気で心が和む。
鮨皿は、岡晋吾の呉須色絵白金彩葡萄文六寸四方皿で鮨映えのする皿だ。
岡氏は現代陶工家の雄だそうで存じ上げない作者だったが、葉や蔓の更に柔らかい温か味のある色彩に実葡萄に個性的な強味を感じる対比が素晴らしい。
図の配置も良い。
鮨の映りが良く美味しそうに感じる。
実際食べても美味しいとフォローをしておこうw
また、乾山写しの竜田川らしき皿も登場して、小宮親方の器道楽の虫が騒いでいるのかなと思いつつも、器に興味のある御仁であれば今回は堪らない日である。
色々と目で愛でて観て勉強させて貰いました♪
【つまみ】
◉滑川産の蛍烏賊と明石産蛸柔らか煮 片栗の花
◉琵琶湖産稚鮎山椒煮
◉茨城鹿島産蛤醤油焼き
◉北海道のとら豆
◉琵琶湖産稚鮎の天ぷら
◉信州のコシアブラ
◉浜名湖産銀宝
白眉!
水っぽい身質の銀宝も天ぷらにすることにより、衣の中で巧く蒸されて余計な水分も脱水して風味も増す。
もちろん味わいたるや白身の中でも典雅で優雅。
◉宮城産渡り蟹の花山椒酔っ払い蟹 3日寝かせ
◉愛知産白芋茎の酢の物
◉大分2.1kg城下鰈 カボス
◉釧路産蝦夷海胆
◉愛知産鳥貝の肝と城下鰈の肝 酒のみ
◉うを徳特製花山椒鍋
今年は天津小湊(勝浦の1つ手前)産金目鯛と浅草松喜北海道牛で愉しむ趣向。
金目鯛と甘鯛のアラを鰹節、鮪節と昆布で取った出汁と合わせ、京都大原の筍、ウルイを加えて一煮立ちしたところで1杯目に金目鯛、2杯目は牛肉をしゃぶしゃぶし、花山椒を乗せて戴いた。
色んなお味が折り重なった出汁で味わう雑炊はこの上なく美味い。
【握り】
◉鹿児島産鰹藁焼き生姜醤油
◉出水産真鯵
◉伊豆下田30kg産鮪中トロ
◉城下鰈
◉有明産小鰭
◉伊豆下田30kg産鮪大トロ
◉鹿児島鰹藁焼きニンニク醤油
◉伊豆下田30kg産鮪赤身
◉愛知産鳥貝
◉釧路産蝦夷馬糞海胆(写真紛失)
◉1.2kg琵琶湖産天然鰻丼
◉城下鰈の潮汁
◉徳島さんごじゅうトマト
◉静岡メロン 千疋屋
大分時が経過してしまったが、うを徳アーカイブを立ち上げる。
メモ的要素が大半を占めるが、感慨深い物については解説を加える。
ちなみにこの日は前年京都で戴いた鼈(すっぽん)の唐揚げが大変美味で気に入ったので、親方にお願いしてこの日を迎えた次第。
奇しくも養殖と天然の鼈ちゃんの食べ比べとなった。
同席の翁とも他店で鼈の唐揚げを味わってきた後なので、只只感慨深い物となった。
【つまみ】
◉琵琶湖産琵琶鰉(ひがい)
◉真鯛鱗揚げ
◉和歌山うすい豆と筑波の蕨
◉鹿児島県天降川(あもりがわ)産1.4kg天然鼈唐揚げ
唐揚げの場合なら天然の方が良いかと用意してくれた個体。
後程供される服部くんのお椀は、浜名湖の服部養鼈場の鼈で取った出汁の椀。
天然なので味の一発勝負的な要素があったが、これはしつこすぎずに綺麗な脂の旨味としっかりとした繊維質だが歯切れも良い肉の風味も抜群な美味しい鼈だった。
唐揚げにして旨味の一切を閉じ込められた鼈そのものを味わい尽くすには最善の料理法だと確信。
◉明石産真蛸 柔らか煮、早筍
桜煮は小豆の汁で炊くが、これは塩茹で
◉鳴門産真鯛2.0kg 湯引き、函館産蝦夷馬糞海胆
この日の真鯛は親方がかなりのモノと絶賛の個体。
三枚におろした際に観せて貰ったが、腹下の背あたりに付いている瘤(こぶ)があるのは美味い真鯛の証拠。
旨味成分の集合体とのことだ。
話には聴いたことがあったが、直に観たのは初めてのことで、大変貴重な物を観せて戴いた。
この真鯛は京は桂の親父さんの引いてきた真鯛と肩を並べる位凄い身質で野趣溢れる風味に旨味であった。
◉銚子産突っきん棒 真加治木 4日 (千住市場)
とっても香りの良い力強い風味。
◉岩手産鰆 藁焼 青森大蒜醤油
親方のスペシャリテのひとつ。
上手い具合に余計な水分を抜いて旨味が凝縮されている。
◉山城の菜の花 白味噌の酢味噌
◉天降川産天然鼈の肝
◉玉子焼
この日は車海老で
◉服部くんのお椀
ほんの少しの薄口醤油と酒のみで仕上げた至極の椀。
これも鼈の持てる力を最小の加減で加えた手当で調味した究極の技法ではなかろうか。
限りなく添加物極小の薄味だが物足りなさは皆無でクリアーな旨味を愉しめた。
【握り】
◉いくら
◉大分産赤貝
◉銚子産真加治木
◉天草産小鰭
◉大分産赤貝紐
◉千葉鴨川の鯖
白子が入って来ているのでそろそろ終盤と
◉氷見のメジマグロ
美味!
◉鳴門産真鯛
◉玉子焼
◉鹿児島県産養殖鰻の鰻丼
鮨まで戴いてこんなに食べて来たのに、鰻の焼き上がった香りと庖丁を入れた時のパリッパリッとした音が堪らないのだ。
焼きは蒸さずの皮パリ中フワで鰻の風味を存分に引き上げられた火入れの技術。
タレは甘味は控え目で鰻の持ち味を損なわずに味わいアップを図るモノ。
丼の御飯は鮨飯で、普通の白米で食べるよりも鰻との相乗効果の幅が広がり、何倍も美味い!
握りでは無いが、これも立派な鮨だね。
浜名湖産服部養鼈場の鼈
◉徳島県佐那河内村産さくらももいちご
◉徳島県産珊瑚樹トマト 樫山農園
◎想天坊(長岡)
◎鶴齢
【28.10.28追記】
実りの秋の味覚を頂戴しにうを徳へ。本日は天然鰻の他、松茸なども楽しみにして来た。今回の献立は以下の通り。
◉仙鳳趾真牡蠣と佐賀菱の実
牡蠣の旨味はまだまだだが、菱の実の甘い香りの素晴らしいこと。ほっこりと旨味有る実は最高の秋の味覚。
◉小柴産の太刀魚
◉白浜産黒鮑と肝、芋茎
限り無く終盤の時期であろう黒鮑であるが、馥郁たる香りも中々のもので旨味も十分である。肝も申し分無い。
◉明石産真蛸と大根
◉秋田県産渡り蟹と長野県辰野産松茸の椀 菊花
出汁は鮪と鰹の節のハーフ&ハーフで昆布は利尻から羅臼の最高級品に変えてみたとのこと。薄口、塩、酒で味を整えられた吸い地だけでも相当な美味さだが、松茸の持つグアニル酸が出汁の旨味をさらに底上げして抜群の美味さ。椀種の渡り蟹からも旨味が重なり後半は出汁の旨味が最高潮に逹する。
◉唐津赤海胆と大分産1.2kg城下鰈と生肝
築地に3枚しか無かった赤海胆の板。
赤海胆の凝縮した旨味で酒が進むねぇ。
城下鰈も白身の淡くも良質なアミノ酸が口の中でジンワリと滲み出てくる大好きな味。
◉松茸御飯(千葉印西産のコシヒカリと辰野産松茸)
鶴八分店の五十嵐親方の同級生の方が千葉は印西で米農家をやられており、持ち込みのお米で炊かれたもの。土鍋の高火力で炊かれた米はつややかで張りが有り、松茸と合わす事により米の旨味が更に引き立てられていた。良いお米でしたよ〜♫
辰野産松茸は張りが有り締りが良く大きな20cmは有る大物で傘も開かず蕾がしっかりとして旨味を蓄えている。今年の松茸は天候不順で不作のため出遅れもあり値段も倍近いらしい。味付けは薄口と塩少々。同週に戴いた辻留の松茸御飯も最高の美味だったが、こちらもほぼ同格並みのズバ抜けた美味さ!今週だけで生涯一の松茸御飯は二ヶ所で味わうという何とも贅沢な週である。
◉淡路島産1.2kg鱧と辰野産松茸の鱧松鍋。
松茸は切り付けるとキュッキュッと身の締まった音がしっかりと聞こえる。切り付けたそばから松茸の鮮烈な薫りが漂い心洗われる。身はパンパンで張りがあり瑞瑞しい。鱧はリズミカルにしっかりと骨切りをしてスタンバイ。出汁は椀と同様な配分の物にはもの骨を炙った物を投入して旨味とコクをプラス。鱧の豊潤な味わいが出汁に溶け込み、松茸の強い風味が出汁の味を引き締める。鱧は親方がシャブシャブして最高のタイミングで引き上げて戴いた。骨切りに些か粗さもあったが、これも生涯一の鱧松鍋じゃないか。
京味の鱧松鍋を食べた事は無いが、東京でこれだけの素材を集めて最高の技術と卓越した調味で絶妙なハーモニーを奏でられる料理人は中々いらっしゃらないのではないかな。
鱧の身のフワフワとした食感と身と脂の旨味に松茸の煮ても全くへたらないでピンとした張りと弾力は旨味がしっかりと内包されており噛み締めると赤松からの命の息吹が流れ来るかの如し清廉で芳醇な風味。傘が開いたヤツは身が硬くなり旨味も乏しくなるが本日のは別格の素晴らしい最高級品で煮ても風味が保たれて適度な歯応えを残していた。今日のは良いですよと親方も太鼓判を押されていた。この山海の幸の出会いは秋一番、いや日本の四季で一番の相性ではなかろうか。
その後残った出汁は雑炊に。もう堪らぬ美味さで卒倒しそうだ。
◉天草産1.1kg天然鰻
かなり身がふっくらとして肉厚な様相。備長炭で焼き上げた鰻は程良き炭香で食欲を唆り、皮はカリッと中はフワトロ・ヴァジーナ☆でしっかりとした身肉の繊維質から閉じ込められていた旨味が溢れ出す逸品。塩より当方は生醤油と山葵で戴いた物が口内での旨味の弾け方が半端無く、余韻も有るなぁ。
【鮨】永楽即全 黄交趾 青海皿
小宮さんが惚れ込んで購入された皿。
鮮やかだがシックな風体に松葉が踊っているかの如く配置されて、善五郎(16代 即全)の遊び心が垣間見れたようで楽しい気分になるではないか。
◉東京湾真子鰈
◉青森産中トロ
◉式根島たかべ
◉小鰭
◉石垣貝(石景)
◉大分産赤貝
◉赤身漬
◉いくら
◉鳥取境港産白烏賊
【デザート】
[無花果]
◉枡井ドーフィン
悪く無いが、ビオレ・ソリエスを食べた後にこちらを戴くと、水っぽくてねっとりさや甘味が弱く、ボヤけた味となるので食べ比べる際には十分に注意が必要である。
◉ビオレ・ソリエス(黒無花果)
格が違う無花果の王者。ねっとりとした果肉に無花果特有の風味が強く、品の良い甘味が素晴らしい。糖度は20から完熟品質の良い物ならば25を超えるそう。
[葡萄]
◉天山
◉シャインマスカット
◉長野パープル
◉紫園
【日本酒】
天狗舞山廃
鶴齢
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【28.5.3追記】
春満開の気候となりうを徳へ。本日は花山椒鍋をやるとのことで楽しみにして来た。今回の献立は以下の通り。
[つまみ]
◉佐島産鯛の子と白子 花山椒添
◉青森産鮟肝のスモーク(橅チップ) 与論島産石川小芋 新潟産車麩
◉京都物集女産筍 塩で
◉大分産2.1kg城下鰈(肝刺、身と縁側)
◉北海道吉岡産紫海胆
◉玉子焼
①(車海老、上白糖)
②(鱧、車海老と海老味噌、和三盆糖)
◉琵琶湖産1.8kg鰻(天然)
①白子の汁仕立 花山椒
②骨煎餅、鰭煎餅
③肝焼
④白焼 山葵に花山椒散し
◉琵琶湖産稚鮎の天麩羅
◉信州篠ノ井産コシアブラの天麩羅
◉長崎普賢岳産鼈(養殖)と花山椒の丸椀
◉花山椒鍋(出汁は鰹と昆布の半々、琵琶湖の半助、牛脂)
①山形牛(雷門松喜)と物集女産筍
②徳島産鰻(養殖)しゃぶしゃぶ、新潟新発田産の麩、京水菜
③ALL
④〆の雑炊(コノコ、独活)
[握り]
◉明石産甘手鰈(真子)
◉壱岐産80kg台本鮪大トロ
◉江戸前船橋産小肌(ナカズミ)
◉壱岐産本鮪中トロ
◉鹿児島出水産〆鯵
◉苫小牧産大星(小柱)
◉壱岐産本鮪赤身ヅケ
◉太巻(勝浦産鰹、穴子、イクラ、玉子焼②、椎茸、干瓢、山牛蒡、葉山葵)
◉さくらんぼ
①山形佐藤錦(LL特秀)
②山梨高砂(LL秀)
[酒]
◉生ビール(グラス)
◉而今(三重)特別純米
◉鶴齢(新潟)純米
他の食材の話をしていると大変長くなるため割愛し、メインの花山椒に絡む逸品の数々を紹介したい。花山椒は福島県逢瀬産の物。実のトゲトゲしい程の辛味や苦味では無く、優しく包み込むようなピリ辛さが合わせる素材の個性を陰らせずに主役の素材を立てる。正直あまり花山椒との出会いが無かった当方としては新鮮な味わい。山椒も大好きだか、この花山椒はもっと好きかも。本日合わせた素材達は鯛の子と白子、琵琶湖天然鰻、普賢岳産養殖鼈、山形産牛肉と物集女筍と小宮親方が色々な形で花山椒とのセッションをみせてくれた。
先付の鯛の子と白子の初手から花山椒とのセッション。子のホクッとした食感と白子の皮のプリっと弾ける食感からコクのある旨味が溢れ、柔らかな花山椒の辛味が淡くも芯のある旨味を包み込む。春への喜びを感じさせる逸品。
天然鰻は出始めでまだギアが上がっておらず、また白子に栄養が取られてしまったことも影響して脂はあっさり目でシットリさはまだまだで単体としては弱い。それでも厚みがあり、焼きも日向備長炭で丁寧に焼き上げられて香り良く仕上がっていたため、ピークの花山椒と合わせても香り負けはしなかった。柔らかい辛味の花山椒が春の息吹とともに目覚めつつある鰻の旨味と相俟って中々によろしい。
椀物の鼈のコクのある脂にも花山椒がエッジを効かせてサラッと戴ける。ちなみに丸椀は塩は使用せず、酒と薄口醤油少々で昆布も他の乾物も入れずに鼈だけの旨味で勝負する潔き椀。些か塩分が足りない様にも感じるが、中盤から終盤にかけてピタッとハマっていく。
メインの山形産牛肉の花山椒鍋では親方独特の出汁で戴いた。鰻の頭の半助さんはそのまま食べるより出汁にすることとし、鰹と鮪の削り節を半々、利尻昆布、山形牛の脂身に島根の味醂『李白』と薄口醤油を少々回し入れ旨味を抽出。筍→牛肉をサッと湯掻く程度で花山椒→水菜を投入して完成。先ずは牛肉と筍に花山椒で戴く。色々な素材からの旨味が牛肉を美味く焚き上げ、花山椒が身と脂のコクをシャープに演出する。また物集女筍のスイートコーンのような柔らかく甘い味わいが牛肉の甘味と融合するとまた別の美味さの世界を形成するね。惜しむらくは花山椒が無くなってしまい、2杯目以降のお代わりでほぼ花山椒無しとなってしまったこと。あ~。もっと、もっと、あたしゃあ花山椒を沢山食べたあ〜〜い!
ここまでで結構お腹が膨れて来たが、小宮親方お気に入りの皿を出して戴き、新たな気持ちで鮨と対峙出来た。川喜田半泥子(廣永窯)の弟子の坪島圡平の四方皿である。この皿に鮨が置かれると、鮨が活き活きと映り、広い皿の上を縦横無尽に版図を駆け巡っているかの如し。そんな気にさせてくれる名品。最後の特製太巻も美味しく頂戴して大満足の一時であった。
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【27.12.25追記】
11月某日の献立
[ツマミ]
球磨川産の子持ち鮎 衣かつぎ、丸十
岩手産天然椎茸と京壬生菜と京人参
松江の松葉蟹、香住のセイコ蟹 塩ポン酢
函館産鰤の藁焼きニンニク醤油
伏見産海老芋と北海道スケソウダラの真子(鱈子)の椀 鮪節と鰹節の半々
明石真鯛
八郎潟の天然鰻1.9kg 前日
余市産鮟肝と聖護院蕪
厚岸産蝦夷馬糞海胆
愛媛県八幡浜産虎河豚白子
宍道湖天然鰻0.8kg 5日間
明石真鯛1.7kg潮汁 利尻昆布、酒、塩、薄口
唐墨
[握り]
大間産鮪100kg大トロ(10日目)、淡路島産細魚、墨烏賊、青森産鮃、大分産鯖、出水産真鯵酢〆×2、鮪赤身漬け、中トロ、三重県産蒸鮑、苫小牧産青柳、
[デザート]長野産アリサの葡萄、弘前の林檎小蜜、讃岐ゴールド(キウイ)、
八海山
志太泉開龍(静岡)
自家製塩ポン酢は橙がメインの爽やかな酸味と塩気。6日解禁の山陰は松江の松葉蟹に付けて戴く。セイコ蟹は香住産で、身と味噌、内子と外子も合わせて愉しむ。藁焼きはメジを召し上がって貰いたかったが良い品が無いため函館の鰤で燻したとのこと。刻みたてのニンニクに煮切りを合わせて供される。この日一番の酒の大親友かもしれない。
今年最後となろう天然鰻の食べ比べ。八郎潟1.9kgと宍道湖天然鰻0.8kg。八郎潟は前日、宍道湖は5日間熟成。八郎潟も悪く無いが、宍道湖はファーストコンタクトの鰻の薫りが素晴らしく、身の質も味の奥行きも凄い!これと比べられる鰻は可哀想だ(笑)。
ブログを拝見して唐津焼の名工である西岡小十の皿について小宮さんとお話ししていたら、鮨の提供の際にこのとっておきの皿を出してくれた。シンプルなのだが、ほのぼのとしており何か遊び心があり、ホッとする皿。こういった素晴らしい皿で鮨を戴けると味が一段階も二段階も上がるねぇ。そして大事な鮨の話だが、先日から赤酢でシャリを仕込むようになっていた。とはいえしみづやとかみのような強烈なエッジが立っているわけでは無いが、ほんのりキリッとしたもの。初手から大間の大トロ霜降りであったが、以前のシャリだとネタに負けてしまう握りもあったのだが、今回のは負けていない気がした。個人的にはもっと尖らせても良い気がするが、まだ手探り状態なのだろう。うを徳のネタは銀座の一流店と比べても遜色無い種質なのだからもっと個性を出しても良いと思っていたところなので赤酢のシャリ導入は大歓迎である。もっともっと精進してこちらのネタと仕事に合うシャリを見つけ出して欲しい!
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【27.11.1追記】
10月某日訪問。この日の品は以下のとおり。
[ツマミ]
◉長野産松茸と東京三つ葉、湯葉のお浸し
◉菱の実ときぬかつぎ
◉唐墨入り焼き餅
◉大分産城下鰈1.9kg、肝添え
◉大原産鮑(雌貝)0.8kg
◉5日干しの塩辛
◉鰤シャブ(利尻産)12kg
◉八郎潟産1.3kg鰻
◉岩手産鰆のアラ煮(酒と塩だけの味付)
◉岩手産鰆の藁焼き大蒜醤油和え
◉八郎潟鰻の骨唐揚
◉宍道湖産鰻1.0kg
◉対馬産2.0kg九絵鍋(アゴ出汁)、白菜、エリンギ
[握り]
酢締め真鰯、土佐清水産縞鰺、出水産真鯵、江戸前産穴子、小鰭、墨烏賊、玉子焼き。
[デザート]
甲斐道とビオレソレース(無花果)フランス原産
愛媛中山産栗
【日本酒】大七(福島)、栄万寿(群馬)
お浸しだが、長野産松茸を単体で食べると香り高いが江戸前の三つ葉が強い香りと個性を放っていたため、一緒に食べるとキャラクターが掻き消されてしまって勿体無い。湯葉は大豆の味がして旨かったが松茸君の邪魔はしない素材。ピンの素材としては其々よろしいのだが、味の融合としては当方には均衡が崩れた一品に思える。菱の実は巨大で茹で上げた実は、始め良質な枝豆の香りがする。一口食すと筍の様な瑞々しい香り、食感や味わいは栗に似ている面白き実。人によって感じ方は変わるかもしれないので色々聞いてみたいものだ。城下鰈は肝を添えて。まだまだ旨味十分である。
鰆はアラは酒煮と身は藁焼きで頂いた。アラから出るゼラチン質が固まり、コラーゲンのゼリーがアラ身に纏わり濃厚な味わい。ただこれは好みが別れると思う。臭みは無いが意外に癖あり。藁焼きの身は大蒜醤油と和えて。藁で燻したことで柔らかな鰆の身の脂の旨味を引き立て、ニンニクがキレがあり脂の多少の癖やクドさを掻き消す。実は鰆よりメジマグロの方が藁焼きで食すのは美味いとのこと。鰤は出始めかと思ったが北海道では10kg超えの大物が漁れているのだとか。利尻で揚がったものを軽くシャブシャブで。昆布から取った出汁にほんの少し橙のポン酢を掛けて。影に寄り添うような出汁加減に橙の香りが鰤の旨味を倍加させていた。房州産鮑はかなり腰高な立派な物。身は馥郁たる芳香からはやや遠ざかるが塩の香りは満点。肝は残念ながら旨味が欠けておりモッタリかつザラつきがあって風味も悪く締まりが無い。時期的に厳しいため仕方が無いところ。
本日の天然鰻は八郎潟産1.4kg鰻と宍道湖産鰻1.0kg。しかもいつもより提供された量は多目でしっかりと味わえた。八郎潟は脂がやや多目で皮を完全にパリッと焼くことが出来なかった程。双方とも身の旨味、皮目の旨さは甲乙つけ難し。微妙な差だがはじめに一口食した際の香り高さはやや宍道湖が良かった。先月の宍道湖は腹の黄金色が濃く脂も強く乗っていたが、本日のはサラッとした脂にふっくらした身からは天然独特の野性味溢れるがクド過ぎない味と風味。食べ比べないと知り得ない天然鰻の本質を垣間見させて頂いた貴重な場であった。アラは2kg弱で鍋仕立。これから旨くなっていきそうな一品。
握りを少々頂いてフルーツを。本日の目玉は無花果と栗。フランスが原産だという日本育ちの無花果。甘味は控え目だが身の爽やかな風味と旨味が印象的。栗も濃厚だが品の良い味わい。某有名和菓子店がこの栗を使用しているのが分かる。今年は栗が不作で出来の良い栗が非常に少ないと小宮さんも嘆いていらした。
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7月以来の再訪。天然鰻と椀のクリアな旨さに惹かれてやってきた。
今回は天然鰻の食べ比べを予めリクエスト。今回のお任せの中身は以下の通り。
[ツマミ]
◉松茸、平茸、しろ菜のお浸し
◉根室の秋刀魚有馬煮と伏見の茄子
◉真子鰈2.5kg身と肝
◉襟裳産床伏
◉明石産真蛸
◉徳島産海老芋と銀杏
◉大阪湾産天然鰻800g
◉宍道湖産天然鰻800g
◉真鯛のアラと松茸の潮椀
[握り]
墨烏賊、胡麻鯖(淡路)、真子鰈、出水産真鯵、中トロ、北海道の真鰯、赤身漬け、小鰭、玉子(車海老)
[デザート]
長野パープル、信濃スマイル、瀬戸ジャイアンツ、シャインマスカット
[おまけ]
神津島産縞鯵
[飲み物]
日本酒1.5(くどき上手)
美味い素材には極上の御殿場産山葵をと御用意されていた。前回も感じたが、ピンの素材の山葵は金おろしでまぁるく円を書いて刷れば凄い粘度と空気に触れる事により甘味も風味も増す。この山葵だけでも酒が呑める。
この日の好みのネタを紹介する。
お浸しで入っていた松茸は岩手県久慈産。其れ程鮮烈な薫りを放つ物では無かったが、旨味、食感は申し分無し。初秋の真子鰈。2.5kgの身が厚く腰高な物。捌いた身は既に軽く黄金色した飴色。どんだけ旨味を携えているんだと見るからに思う。朝の活け〆とのこと。熟成させずとも身の旨味といい、フレッシュな身の香りと歯触りが素晴らしい。肝の旨さも言うまでもない。襟裳の床伏の薫りも旨味も宜し。明石の真蛸は塩茹でで。皮目のツルんとしたゼラチン質と身肉の程良い歯応えと甲殻類の薫り漂う味わいが秀逸。
本日最大の楽しみである天然鰻の食べ比べ。今回は大阪湾産と宍道湖産。始めに大阪湾、次に宍道湖産を食す。双方とも皮目をパリッと焼き固め、中はふっくらフワフワに仕上げられた素晴らしい焼き上がり。焼きの技術は申し分ない。口に含んだファーストコンタクトの薫り、旨味の濃密度、後味の良さは宍道湖に軍配が上がった。あくまでも本日の鰻ちゃんの状態と自分自身の体調や味覚からくる味わいからの結果なので、人によっては違う感想になることも有り得るし、千差万別で良いと思っている。
本日の椀は真鯛のアラの潮汁。そこに少しですがと松茸をプラス。軽く取られた昆布出汁に真鯛と松茸其々の旨味の相乗効果が発揮されていた。その調合具合や良し!当初の真鯛だけの椀より松茸のグアニル酸が更にこの椀の味を高め昇華させていた。塩分はほんのり感じる程度であるが真鯛のアラからの旨味は十分抽出されていた逸品であった。
また、デザートの葡萄達は小宮さん渾身の仕入れ。これがまた滅茶苦茶糖度の高い極上品。しかも皮まで食べれてしっかり皮の栄養分も摂取できた。本日同席戴いた方々とご主人を交えて食、素材の話や飲食店の話等濃い話題を交わし合い愉しき夜であった。
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7月も暑さが本格的になってきた某日、ある方とうを徳で席を共にした。天然鰻とフルーツが絶品なのだとか。謙遜だとして他の素材についても興味があり初訪問。そこには鮨店店主らしからぬ出で立ちの人がぬぼ~っとたっていた。事前情報がなければ物凄い不安になるところであるが、空気が明らかに別。また室内環境は決して褒められる内容では無く改善すべき点は多々あるが、入店してすぐ魚臭いとか埃っぽいとかいうことは無かったのは良かった。しかしつけ場に並んでいたこの日のラインナップは厳選された凄い顔触れであった。ご主人の小宮さんは父親が青木の父と兄弟弟子で奈可田で技を競い、御本人は京都で腕を磨いている。本日のおすすめを見繕って出してもらうことに。
[ツマミ]
◉琵琶湖産稚鮎煮浸しといさざ
◉浜名湖服部中村養鼈所産の鼈の内臓と鱧の白子のオリーブオイル焼、夕顔とモロッコインゲンの煮物
◉刺身(城下鰈の身と肝、釧路仙鳳趾産牡蠣と胡麻豆腐、葉山産障泥烏賊、岩手の馬糞海胆と奥尻島の紫海胆
◉木曽川産の天然鰻(700g)の白焼
◉うるか茄子
◉丸椀
◉北の極み(トマト)
◉城下鰈の潮椀
[握り]
江戸前鴨居産真鯵、城下鰈、城下鰈縁側、富津産鯒、舞鶴産鳥貝、小鰭、中トロ、玉子焼き。
[デザート]瀬戸ジャイアンツと桃
[飲み物]
日本酒1.5(東洋美人他)
ツマミの目玉はやはり今朝仕入れた生きた天然鰻。本日は木曽川産。重さは700gで大き過ぎず小さ過ぎず非常にバランスの取れた一品。私が入店した際には既に捌かれていたが、頭がまだ動いていた程の生命力豊かな鰻。腹も黄金色で背は緑掛った見ただけで脂がのっている良き品。奥の調理場でご主人が丁寧に焼き上げる。残念ながらガス焼という情報も入手済みであるため、どのように仕上げられるのか半信半疑ではあった。ガスでも小笹系のように上手くパリッと焼けていれば及第点なのだが。蒸さずに焼き上げた鰻は見るからにふっくらとしていて皮もパリッと焼けていた。サクッと庖丁を入れる度に香りがほんのりと漂ってきた。先ずは何も付けずに食べる。ふっくらしていてしっとりとした感触。野性味溢れるがしつこ過ぎない脂の乗り、筋肉質だが身切れの良い肉質。これらのバランスが絶妙で素材の良さを十二分に引き出されていた。素材は大事だが、ガスでこれ程の旨味を引き出すぬぼ~っとしたご主人の腕は並ではないことが良くわかった。また、この日の山葵が秀逸で、いつもの物より良質な物を仕入れてきたという。ここは鮫肌でなく金おろしだが、こいつは金でおろしても凄い粘りと甘味と鮮烈な香りを放っていた。物が違うとは正にこのこと。山葵の質によっては金でも十分に美味しくおろせることが分かった。塩、醤油と極旨の山葵をつけて頂いた。塩も美味いが私の好みは醤油が一番なのだよ。醤油の風味が鰻の味を更に引き上げる。初めて本物の天然鰻を食べた気がした。率直にご主人に伝えたところ、先日の宍道湖産より物が良く、今年の中でもかなりトップクラスですと。ご一緒した方も今季ナンバーワンだと仰る程の逸材であった。
服部中村養鼈所の鼈(すっぽん)が素晴らしい味。私は京都の大市で初めて美味い本物の鼈を頂いたが、そこと同じところの物。それでいて数倍安い。内臓は鱧白子とオリーブオイルでソテーし黒胡椒が効いた味。これも美味かったが、やや黒胡椒が口中を支配してしまい、内臓達の本来の味わいがややボヤけてしまったのは残念。例えば、小笹の様な煮切り醤油でつけ焼にしたら美味いと思う。ここのご主人の焼の腕ならつけ焼で更に旨さが引き立たせられることだろう。北の極みというフルーツトマトの味が驚愕する甘さ。糖度12は超えているのではなかろうか?作地を確認したところ、上川だという。上川よりさらに上の、私がよく行く名寄の隣町の下川でも大変甘いトマトがあり、これをジュースにして販売しているが(ふるさとの元気)、これのプレミアムバージョン(糖度12以上)の物とタメを張る糖度。他にはまき村で頂いた高知は徳谷産のトマトと肩を並べるかそれ以上の美味さ。甘いだけで無く程良き酸味も兼ね備えている。皮はやや硬い。
椀物を2種頂いた。丸椀は本来の鼈の旨味を最大限に引き出すため、鰹はおろか昆布も引かず、酒にほんの少しの薄口のみで仕上げた物。塩は未使用だという。一口吸い地を啜り上げると柔らかい鼈の旨味とほんのりと感じる塩分と下部に隠されていた吸い口(青柚子)。始めはやや物足りない味わいかもしれないが、二口、三口と啜るとジワジワと鼈の濃厚な旨味が口中を支配してくる。そして鼈の切身。肩、首、エンペラの身の美味いこと。脂は不飽和脂肪酸で食べても胃にもたれずサッパリとしているのが特徴。鼈は雑食性が高いため、環境によっては品質が偏る。質の良い天然鼈なら兎も角、何を捕食しているのか不明な鼈であれば、統制された養殖の方が泥臭さや雑食から来る特有の匂いもかなり抑えられる。服部中村なら自然に近い環境で、餌も質の良い白身魚を食べさせ自然に冬眠もさせると大市のご主人に以前聞いた。しかしグルタミン酸の昆布も引かずに、生姜も全く使用せずに臭みは皆無でイノシン酸単体の旨味でこれだけの味を出し、ギリギリの塩分で素材の力を底上げしているこの小さな椀の世界。一番凄みを感じさせる一品であった。もう一品の城下鰈のアラで出汁をとった潮汁も秀逸であったが、丸椀の凄さで霞んでしまった。
鮨はシャリを少し改良してみましたと主。鮨はおまけ程度と考えていたが言うほど悪くは無い。ベタつきや粘っこさは感じられず、以前より硬めに炊かれた米は口中で程良く解ける。しかし、上に乗っている種質とのマリアージュは不整合な品もあり。例えば終わり近き舞鶴産の鳥貝。これを握る直前に殻から取り出し、鮮度と強き香りを保ちながら生で握られたが、シャリが大人し過ぎるため、上の個性的な味を更に引き立てたり、癖を消したりする役割が為されていない。シャリは縁の下の力持ち。言うなれば夫婦のようなもの。シャリばかりが出しゃばる恐妻家の鮨も困り物だが、ネタばかりが突出した亭主関白な制御のきかない鮨も考え物。ここのご主人はとても勉強家で、今尚進歩し続けている。これから暴れ馬の如き極上の鮨種と適合させ、より高みを目指して頂きたい。
9位
6回
2019/04訪問 2019/05/16
春の筍が食べたくて、前回坂川大将にいつ頃が一番美味い時期かを伺っての訪問。
鳥貝は残念ながらまだ無かったが、次回以降のお楽しみにとっておこう。
【日本酒】
◎ 月の桂 立春朝搾り 2月4日
【お通し】
◉桜海老湯葉蒸し
◉筍たいたん 鯛の子含め煮 細魚押寿司 菜の花 空豆
【単品】
◉真鯛刺し
◉塚原産竹の子木ノ芽あえ
すんごい美味い木の芽和え。
◉桜むし
道明寺粉 蓬麩 甘鯛?
◉塚原産竹の子つけ焼
白眉!
今年の京都の筍は品質は良いのだが産出量がかなり少ないとの事(仕入値もかなりのものだという)。
九州の方は特に出荷量は変わらない様だが、筍の甘味やエグ味、柔らかさ等々の美味しさは京都産、中でも塚原が断トツと仰る。
軽く下茹でした筍を細かく鹿の子に庖丁をいれて炭火焼にする。
ある程度焼けてきたところで付けダレに潜らせて再度網へ。
仕上げに香ばしさと色付けの要素か、先程の付けダレより醤油が強いタレ(もしくは醤油そのもの)に軽く浸して仕上げの焼きに入る。
焼き上がった筍に、細かく刻んだ木の芽を散らして完成。
もう香りからしてやられるね、これは。
大きめの部位を焼いて貰って塚原の筍の旬を存分に味あわせて貰った。
玉蜀黍の甘い風味と類似するが、筍独特の香りに丁寧に炭火を当てて美味しさを引き出して付焼きの香ばしさと筍の持つ風味が融合して春のトップクラスのご馳走へと昇華する。
◉真鯛白子
超白眉!!
これは広島たこつぼで戴いた真鯛の白子に匹敵する超絶的美味。
親父さんは虎河豚の白子より、うちで扱う真鯛の白子の方が数段美味いと仰っていたのを思い出す。
春も盛りの張ち切れんばかりの真鯛の白子は濃厚な味の深さにその言に得心する。
◉白魚唐揚げ
そろそろ終盤の白魚を唐揚げで。
メチャクチャ美味い。
喜多で北さんのお料理と酒を愉しんだ後、こちらも素通り出来ないでしょ~と喜多から歩いて祇園へ。
丁度良い酔い覚ましと腹ごなしとなり、身体を整えてからの入店となった。
先月から丁度1月という短い間隔での再訪なのでメニュー的にはほぼ同じ。
なのでここは真鯛ともろこ焼き以外は前回食べていない物をチョイス。
お初のモノもあるよ。
真鯛 刺身
もろこ焼き
【お通し】
◎ 鰻八幡巻き
真蛸柔らか煮
◎ 氷魚(ひうお)
【単品】
◉鯛刺し
うーん。
先月の真鯛が神過ぎて今回のは前回程の身震いする感動は無い。
しかし高品質の身質と脂の乗りなのは間違い無い。
そう。
今から思い返しても、先月の阪川さんで戴いた真鯛は生涯最高の美味さであった。
なので鯛兜(あら煮)も戴いた次第。
◉かぶら蒸し
これもド定番で美味い。
蓬の生麩が入っているところが超力のツボ♡
◉カニの甲羅揚げ
所謂カニクリームコロッケとの事で初注文。
北さんに教えてもらった通りのものだった(笑)
柚子のマーマレードが一捻り加えた阪川オリジナルだが、当方的には蛇足。
◉半生このこ
これもお初の注文。
実はこれ、前回の12月にお隣さんがとても美味そうに食べていたのを涎が垂れる寸前まで我慢した一品なのだ。
生の海鼠腸や乾燥品のバチコよりもこの半生加減でちょい熟成していて旨味がましている所はこの半生このこは最強の美味さでんな。
日本酒と抜群に合うし、これはファンになっちゃう!
◉もろこ焼き
喜多でも戴いて来たが、こちらの身質が勝っているからかシットリさと旨味の余韻が素晴らしい。
同じ琵琶湖のものでも多少でも違いが出るのは面白い。
◉ゆず釜むし
これも初チャレンジ。
中の果肉をくり抜いた柚子釜にグジや車海老、シメジ等入れてじっくりと蒸し上げてある。
中の具材より柚子釜の皮の身のポソッとしつつもネットリとした独特の食感を愉しむのがこの料理の真骨頂か。
当方は柚子釜に合わせ味噌に鶏挽き肉、胡桃、生麩、松の実、山椒の芽等を炭火で柚子釜の下からグツグツやって食べるのかと思ったら違ったので少々面食らったけどこれはこれで美味い。
◉焼きと白子焼き
立派な白子の個体を見せられてしまうとどうも断れない。
気がついたら私も!といつも具合。
しかし頼んだ事に後悔しない逸品。
◉すっぽんどびんむし
ここで初めて戴いた時は正直大した事無いなと思っていたのだが、2007年から比べると味わいがグッと深くなり、今となると「えっ?!以前からこんなに美味かったっけ?!」と思わせてくれるほどの名品。
すっぽんの旨味を余す事なく注ぎ込まれている滋味深い、身体だけでなく心も解きほぐしてくれる、そんな優しくもボディのしっかりとしたお味。
今年の気が付けば師走。
あと半月で平成30年(2018年)もお終い。
サウナ→水風呂→サウナ→水風呂→休憩で
ととのったーーー!!!(((*\(*゚▽゚*)/*)))♡
身体も味覚も嗅覚も研ぎ澄ませて完了!
1年ぶりの京都で好き勝手に食べられる至高の食事処。
もう冬といったらこちらで絶対食べなければならないものがいくつかある。
もう何年も同じラインナップばかりでループしているが、その年その年で気候も環境も、ましてや個体が違うわけだからその年その季節の味わいの機微を味わい、愉しもうではないか!!
【お通し】
◎鮟肝と雲子ポン酢
◎ゆば煮
【単品】
◉鯛刺し
大鉄板その1!
真冬は養分を溜め初めて真鯛が一番美味くなる時期である。
そんな真鯛の絶頂期に坂川さんが選(よ)ってきた真鯛の美味しさは数ある日本の料理屋の真鯛の質、旨味を凌駕してくる。
薄い淡い味わいの多い真鯛とは全く違う、口に入れてからの真鯛の真鯛たる香りたるや一気にバーストや!
そして噛むごとに真鯛のグルタミン酸、追ってイノシン酸等のアミノ酸がグイグイと溢れ出てくる正に格が違うもの。
なので今回は刺しは真鯛だけにしてもらい、じっくりと向き合って愉しみたかった。
そして満足させてくれた。
◉こっぺかに
大鉄板その2!!
突出した旨味、即ちこっぺの味の濃さときたら、これも他店と格が違う。
こちらではずっと間人港から引いている雌蟹。
内子、胸の身の上に足の身。
更に堆(うずたか)く味噌と外子を盛り付け、他店のドレッセと比較しても独創的だ。
◉焼きふぐ
余力がある時に。
焼きと白子焼きといつも迷う。
今回は焼きで!
◉もろこ焼き
大鉄板その3!!!
何より一番京都で、阪川で食べたいものNo. 1。
こちらのカリッと香ばしく、しかもフワッとしっとり焼けたもろこを戴いた瞬間から、もうこのループから抜け出せない自分が居た。
昨年は極度な不漁だったが、今年の天然はまだ出始めだが順調のようだ。
なので3本頂戴しよう♪
◉海老芋の唐揚
軽く出汁で炊いてからカラリと揚がった海老芋は堪らなく美味い!
これも大鉄板に入れても何の不思議でもない逸品。
◉ぐじ唐揚
身も美味いが、やはりウロコのパリパリとした食感とにスナック菓子の様なジャンキーさを思わせる旨味が堪らないわ。
◉鯛あら煮
3kgの真鯛兜煮。
今回の真鯛が大変素晴らしい個体だったので、ついあら煮を頼んでしまった。
頭の半分を使うが、大将曰く「意外とペロッといってしまいますよ」というお言葉で踏ん切りがついた。
正に頼んで正解食べて美味し!
トロリとした粘度は控え目でややサラりとした煮汁。
真鯛の美味しさを邪魔せず、かつ、味を乗せてポテンシャルを引き出す的確な調味と煮炊き時間。
添えてある牛蒡の土の風味がアラの野趣溢れる風味とぶつかりあって美味しさをアップさせる。
【日本酒】
◎三千盛 辛口純米
◎土産(じゃこ山椒 大)
毎回定番の我が家のお土産。
大だけど1週間もつかもたないかで無くなる(笑)
★12月のお品書きより
【お通し】
◎桜えびの湯葉和え
◎鮟肝
【単品】
◉こっぺかに
間人産は風味も品格も一味違う。
◉真鯛刺
明石は二見産(加古川より西)のもの。
皮目の身の赤身の色が兎に角濃いのだ。
東の物と比較して明らかに赤の色が濃い。
広島たこつぼで戴いた糸崎の真鯛と肩を並べる程の美味さだ。
口に入れて滑らかな舌触り、噛んで湧き出る甘味、モチっとした食感、飲んで快感な喉越し。
この時期の明石界隈の真鯛はかなり旨味が上がってくるが、こちらの鯛は別格だ!
すぐに甘味が広がっていき、ジワっと出てくる鯛本来の旨味が半端無い。
これは良質な餌の味だ。
この真鯛の漁は釣りでも延縄でも無い方法で捕獲しているのだという。
罠籠の様な物で入って来た真鯛を捕獲するのだとか。
◉もろこ× 4
若いので脂の乗り、風味はまだだが流石の火入れだ。
◉若狭ぐじ糸造り
尻尾の部位を糸造りで。
じんわりと旨味が口内を駆け巡る。
添えられた柑橘は酢橘ではなく檸檬というのも狙いがある。
◉海老芋のかに身あんかけ
ホッとする美味しさ。
出汁で炊いて素揚げしたものに蟹身の餡掛けが堪らなく好きだ。
◉焼ふぐ
他の客のを観ていると、食べたくなる症候群が発症してしまう(笑)
もう説明は要らんでしょーーー!!
◉若狭ぐじ唐揚げ 皮
◉若狭ぐじ唐揚げ 身
皮も身も美味過ぎ!
塩だけで味わっても良し、出汁に浸して味わっても良し。
◉すっぽん土瓶むし
〆に欠かせない一品
【日本酒】
◎三千盛 1合
【お持たせ】
◎じゃこ山椒 お土産
京都初日に阪川へ再訪。
ここは季節毎に通いたい、その時期に適合した素材が経木メニュー以外でも坂川大将と相談しながら組み立てることが可能な大人の食事処。
お任せに辟易している方、食べ慣れて自分流の食べ方や考え方をお持ちの方なら十分愉しめるであろう。
一番のりして暫し大将とあれこれ話をしながら何がよろしいかを探っていく。
何かずっと日本海側や琵琶湖の漁が時化ていてぐじや鰤、京都の冬の名物であるモロコが全然揚がらないで困っていたとのこと。
しかし3日前にやっと揚がったと連絡が入り、本日は何尾食べても良いですよとお墨付きを頂いた(笑)
とは言え今冬ばかりか平時でも稀少なモロコ、皆んなで戴ける様提供数は大将にお任せした。
以下、この日に戴いたメニュー
【先付】
◉飯蛸の煮付け
◉氷魚の山椒煮
【お好み】
◉河豚ブツ
身皮トオトオミ(三河遠江)全てが一つの鉢皿に盛られ、白子は叩いてあってソースの様。
ポン酢をぶっ掛けて、薬味も全て混ぜ合わせて召し上がってくださいと大将からのお勧めの食べ方で戴いてみる。
河豚のジワジワ来る身の旨味と白子の濃厚で円やかな旨味がポン酢(酢橘、千鳥酢等)の酸味との融合した美味しさに顔が綻びっ放しだ。
強過ぎない程良き酸味加減も絶妙。
◉白魚の天麩羅
坂川さんが唯一自ら「白魚良いですよ~」と推してきた素材。
シンプルに素揚げに近い天麩羅で戴いた。
ふんわりとした柔らかい身に湯気と共にフォンとくる白魚の優しい風味。
そして止めどない旨味が塩の塩分で立った甘味と共に口内を駆け巡るのだ。
冬から彼岸にかけての美味しい海の贈り物だ。
◉かぶらむし
真鯛、穴子、木耳、百合根、蓬麩、蕪
銀餡のサラリとしつつも旨味もしっかりと確認できる精緻な塩加減
◉海老芋のかに身あんかけ
出汁で焚いた海老芋を揚げてかに身餡に生姜を添えて。美味しい出汁餡に海老芋は身体の中から温まり活力が湧いて来る。
◉諸子焼 3尾 長葱2本
琵琶湖の固有種"ホンモロコ"の別名で淡水魚。
ずっと時化て不漁だったが琵琶湖で3日前から天然が獲れるようになったとのこと。
天候不順でずっと不漁であまりにも獲れないため、他所では養殖も提供されているという。
ここ阪川ではホンマもんの天然物を味わえる。
諸子はお腹からジクジクプチプチと旨味エキスが顔を出しつつ音も出す。
炭火でしっかりと火入れしつつもしっとりとしてホクホクした身質に香り良い身の旨味が最高だ。
上下を返したり火の場所を変えたり炭を退けたり移したり、諸子ちゃんを一度退去させたりと細目に諸子を操り、旨味を逃さず香ばしく焼き上げた技も見事た。
付け地に焼き上がった諸子を置くと、ジュッという音がして更に美味さを引き立てる。
諸子の味は他に例えようの無い味で諸子は諸子としか言いようがない。
炭火で焼いている時の香りと口に入れた時の風味が諸子の信条だ。
酸味を利かせたタレも渋い旨味の立役者。
分かりやすく言えば、鯵の南蛮漬けの南蛮地(漬けダレ)のやや酸味を利かせて甘味を抑え、鰹節で旨味を上げたモノだ。
また、状態の良い天然物は変な淡水魚の癖など無く、風味豊かな旨味が凝縮しており恍惚とする。
◉肉炭火焼
山葵醤油で 他に辛子醤油と大根おろし醤油がある
ヒレ140gの炭火焼
肉の繊維がしっかりとして適度な粘りもあり歯触り良し。
炭火で焼き固められた肉は噛んで旨味が溢れ出る。
不自然な感じはせずシンプルで素直な牛の味。
大将の生まれ故郷で馴染みのある牛舎のモノで不自然に人の手が介在していない牛の力で育った美味しさだ。
付け合せのサラダのドレッシングは醤油ベースに胡麻の風味と酸味をほんのりと利かせた口直しにピッタリな味わい。
◉かきフライ 2個
結構注文頂いているので人気なんですよ〜と大将が仰るので気になって仕方がなかった。
何故割烹でカキフライを注文するんだと自分でも逡巡したが、理由は単純。美味いから。
◉くじ唐揚げ ハーフ 万願寺
これは白眉!
10日ぶり日本海でようやく漁獲されたというぐじは香り高く揚がった鱗のパリパリから身のほっこりとした口当り、火入れによって立つ甘味からの旨味がぐじ好きには堪らなく美味い。
そのまま食べても良し、レモンを掛けて塩でも良し、吸い地の出汁に薬味を入れたモノにぐじを絡ませて食べても良しと何してもやられるわ♫
先に吸い地だけを味わってみたが、初めてきた時よりこちらの出汁の加減を愉しめるようになってきたわ。
相変わらず淡味で薄味だが、香りの立たせ方が素晴らしい。そして舌の奥に旨味の余韻を仄かに残して喉元を去る切れのある味。
◉すっぽん土瓶蒸し
酔い覚ましの〆に打ってつけで染み染みと美味!
丸の滋味溢れる旨味に生姜のホワンとしたアクセント、ゼラチン質で口がピタっとくっつく。
〆に最高な旨味の凝縮体だ。
【日本酒】
◎三千盛 一合
阪川一番の淡麗辛口とのこと。
辛味も利いているが後から旨味もじんわりやってくる。
◎二月四日 立春朝搾り 半合
香りも強く旨味がどっしりとした酒でパッと花が開くかの様(銘柄は失念)。
◎英勲 半合
どっしりとしているけどサラリとした旨味。
二月四日よりは大人しめ
【28.9.25追記】
電話するといつも満席で断られ続けて2年半も経っていた。今回台風と秋雨前線の影響から北アルプスの山々での晴天下の登山は望めない事から急遽中止し思い立って京都へ来たのだが、遅い時間なら大丈夫とのことで入店が叶った。訪問前から何食べよう、鱧は絶対だなとか思い巡らせながら入店。途中でこちらに足繁く通う京都の食べ友と合流。
いつもと変わらぬ大将の坂川さん(以下"大将")の柔和で暖かな対応で心身共に癒される。えらくご無沙汰なのだがつい先日に来たかのような雰囲気に自然と溶け込んでいく。決して広いスペースと空間の店では無いが、不思議に圧迫感や窮屈という感じは無いのだ。大将に過度なパフォーマンスは一切無く真摯に食材と相対し、的確に庖丁を入れていく。味付けは素材の持ち味を存分に引き出すことを主眼とし、適度な味の利かせ方(塩の振り方、調味ダレの塗り方等々)で足し引きされている。吸い、土瓶蒸し、鍋の出汁はかなり薄味だ。通年のメニュー構成や提供する品に変化球はあまり無いが直球の威力とキレがあり、常時150km台後半から時たま160kmを超えていくような素晴らしい食材と調理技術の折り合いが整った時などは他の店では有り得ない美味を堪能出来る。そして、チェンジアップや超スローボールも持ち合わせているため球の緩急で打者を打ち取るベテランピッチャーの老練な抑揚ある品々、味も持ち合わせている。それをどうチョイスいくかが監督である食べ手の力量が問われる、そんな店だ。
大将は基本魚の捌きや刺身を切り付けること等最重要部分以外は弟子に調理を任せ(ただし松茸だけは自らが手当)、手が空いたら食器の洗物を自ら行い、店へ掛かってきたどんな電話にも弟子や女将さんに取らせず必ず大将自らが全て対応されている。過度なおべっかやよいしょは無く、また客に緊張を強いる事も無い。例えば洗物を率先してやっている大将に客が感心していると、「私は洗物と電話に出ることしか出来ない雑用係ですから。それに洗物をしていないとやり方を忘れちゃうので。」と自然体でたわいも無い話をされて客を和ませている。これは当方初訪問の2007年時から全く変わっていない風景だ。弟子も無駄な動き無く、大将の指示をいちいち仰がないと何もできないということも無く皆が其々役割分担を的確に熟していることを実感。おまかせコース一辺倒の嫌いのある高級店のお仕着せ指向の店とは別格で、口煩い祇園の旦那衆や食べ慣れている食通、将又勘違いグルメヲタクや半可通の相手等で錬磨されているのが容易に推察出来る。ただ料理がどうこうということだけでは無く、こういった雰囲気や仕事振りを感じ取れない人には全くお勧めすることを憚られる大人の割烹店である。
今回のテーマは"鱧と松茸"をメインに当方が好き勝手に、大将と調理法等を見聞き話をしながら戴いた品を記しておこう。
◉先付
・白身の昆布締めと自然薯、グレープフルーツ
・鱧の子の玉締めと肝 葛固め
◉鱧の焼霜 酢橘 溜まり醤油で
ピンクの穂紫蘇を遇(あしら)った鱧焼霜は、淡白なようで旨味の凝縮度が半端無い。
脂の乗った韓国産の上物で皮目を軽く香ばしく炙り、余分な脂や癖を落とし締められた身は風味が増しており、締まった身と柔らかいレアな身の双方を愉しめる逸品。また、当方は脂の乗った魚は特に塩やポン酢でなく醤油で食べたい者なので、こちらではデフォルトで溜まり醤油と鱧の脂と身の旨味を最大限に引き上げるギアとなっている。大将解ってるなぁ。この一皿を戴いただけで阪川に来て良かった、いや、京都に来て良かったなぁと思わせてくれる。
◉すっぽんの東寺むし
東寺(湯葉)で煮凍りを包み込んだものを軽く揚げてすっぽんの旨味を閉じ込め、蒸し上げた一品。吉野葛でまとめた出汁餡も生姜がエグくない処理をされているのも見事!まる(鼈)の旨味が凝縮した大好きな味。
◉加茂なす(田楽)
昨夜はにしかわで山科茄子の田楽を戴いていることもあり、食べ比べてみたくなった。肉厚で茄子の持っている甘味と程良い甘さ加減の白味噌ベースの田楽味噌とのマリアージュも見事に決まっている。こういうシンプルな素材にどう対処されているかを観るに打ってつけの食材と料理法。身がグダグダになり過ぎず、形を保った火入れ具合も素晴らしく皮まで美味しい。
◉長野産松茸焼き(64gハーフ)
松茸の美味しい食べ方は焼きに限りますと、そして焼きには絶対蕾の物を使うと大将は言う。傘が開いた物とは風味や旨味、瑞々しさが別格である。力強き赤松から生命力を吸い上げた清廉な旨味と柑橘系のような独特の風味が身を割いた瞬間から癒される高貴な薫りを漂わし、食べ手を魅了すること間違い無し。塩を振った松茸は七輪の炭火でホイルを掛けられて5分もかけずに蒸焼きにする。その松茸を噛むとジュワッとした美味汁が一気に口内を迸る。塩加減が絶妙で酢橘要らずの火入れも感心する逸品。当方は長野に親族がおり昔は長野の松茸を食べる機会も有り、また大好きな信州は上田の別所温泉には学生時代何度も遊びに来て別所産の松茸は何度も戴いている。丹波篠山は別格とは言え当方は長野物は縁も深く大好きな味、というか身体に染み込まれた親和性のある味なのだ。
ここ数年松茸は出始めが遅く、終わりも早くなって来ているとのこと。今年も出始めは遅かったという。
◉鯛せんべい(大盛)
◉鱧せんべい
旨味溢れる大人のスナック菓子。其々で頼んでハーフ&ハーフで♪
鯛は叩いて薄くした身をカラっと揚げて軽やかさを、鱧はザクザクとした心地良き食感から魚其々の個性が引き立つ仕様。昨日食べた西川さんのところの鱧揚げよりこちらの方が食感、味わい、旨味と全て好み。これは日本酒に合うが、生ビールやハイボールの強炭酸の酒で合わせてみたい。
◉松茸のフライ ハーフ ウスター
◉鱧のフライ ハーフ ウスター&マヨネーズ
これぞ鍛えられたカウンター割烹の極みの味!
松茸のフライは以前こちらで戴いて一気にファンになった食べ方。鱧のフライはお初で友人が居るお陰で一品づつ頼んでハーフ&ハーフにして頂いた。この食べ方は祇園の舌の肥えた旦那衆が普通の食べ方に食べ飽きた中で産まれた遊び心もある名品。
フライの場合の松茸は傘が開いている物を使用する。其々下味で塩をしてあるのでそのまま食べても美味いし素材本来の風味、旨味をダイレクトに感じ取れる。次に酢橘を掛けてそのままでも良し、ウスターに漬けて食べても香りが別な側面から引き立てられている。ウスターはスパイシーさは程々に旨味を効かせてた物で松茸や鱧の風味の損ねるような邪魔をしない出しゃばり過ぎない味わいだが、旨味はしっかりとしているので、美味しいご飯にこのウスターを掛けて戴いても満足出来よう。マヨネーズは鱧の時に添えられる。鱧の脂と卵由来のマヨネーズとの相性は見事に合っている。
【日本酒】
◎三千盛 純米大吟醸
◎黒龍 純米吟醸 ※半合
初めに鱧松鍋を食べると宣言していたのだが,
切り身といい提供される量はボリューム有り、しっかりと味わえて満足出来る内容なので、結構お腹一杯になって来た事もあり受け入れ側のコンディションが万全で無い中で最高の物を戴くのは食材に対しても大将に対しても失礼に当たるため今回は断念しここで終了。
多客もサッと引きが良くカウンターは早目から我々だけになったので大将を交えて心行くまで話が出来たことは代えられぬ財産だ。色々な話をしたなぁ。
今年はもう一回こちらに寄せて頂き、長年の宿題である冬の鉄板"間人蟹"を心行くまで愉しみたい!
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【26.1】
初訪問は2007年で、当時から祇園の煩さ方の旦那衆を満足させる店として名を馳せていた。ご主人の坂川浩和さんは祇園地区北側にあるなか川で腕を振るった後に独立。どの店もおまかせコースのお仕着せばかりで内心辟易していた部分もあった当方だったが、こちらは単品でもOK!(他にはさか本、おかだ、藤原くらいしか単品で愉しめる店を知らない)。京都に訪れる際に予約が取れればうかがうことにしている店である。以前は開店の17時か20時過ぎだと空いていることがよくあったのだが、ここ数年はそれも難しくなってきた。なので最後の訪問は2014年1月。なんとも淋しい限りだが、かなり早めに取るか、空いている日を聞いてそこで訪問するしか手は無い。
こちらも2年前の情報になるため食べた物をサラッと記載しておく。料理はおまかせコースが3つあるが、こちらでの醍醐味は単品!おこのみで自分の思うがまま、食べたい物を自分で組み立てて注文するのが愉しい。また、当初はカウンターでの写真撮影は問題無かったが、現在は基本NGである。ただし他客がいない場合はOK!また、1枚だけなら許可してくれることあり。ご主人に確認してから撮影するのが望ましい。
【この日戴いたもの】
◉先付(鮟肝、白和え)
◉虎河豚の白子焼き
◉丸吸(すっぽんの吸い物)
◉琵琶湖産モロコ焼き
◉虎河豚の炭火焼き
◉鯛茶漬け
17時の開店よりやや前に入店させて貰えたので、仕込みを拝見しながら坂川さんと色々話しながら経木のメニューを見て食べたい物を注文。この日は山口の方から大変質の良い虎河豚が入っているとのことで、2品を構成に入れてみた。
坂川さんの切り付け方は豪快で、刺身にしろブツにしろ旨味をしっかりと味わえる最適な大きさなのが大好きだ。この日の虎河豚は白子にしても身やアラの周りにしても旨味が凝縮したもの。また特製の漬けダレも濃すぎず薄過ぎず最高の味付け具合。決して素材の邪魔をする味付けはしない。身とアラは炭火で軽く焼き色をつけた後、アルミホイルで包み込んでじっくりと蒸し焼きされた。仕上がりは外側は香ばしく、中はしっとりふっくらと仕上がっており瑞々しい虎河豚の強烈な美味さに卒倒しそうになった。旨味成分が凝縮された美味さなのだ!
琵琶湖のモロコは当方はそれ程モロコは好みでは無いが、この品はお勧めとのことで思わず注文してしまった物。坂川さんが丁寧に一尾一尾焼き目をつけ火を入れていく。特製の酢醤油を絡めて。モロコの独特の柔らかな風味がファンには堪らないのだろうなぁ。
〆の鯛茶漬けは明石の物で胡麻醤油に軽く漬け込まれたもの。ガッツリ美味い魚を食べた後でも素晴らしい味。
丸吸や丸鍋、椀物や煮物等出汁の効かせ方は比較的あっさり目で淡い。そこをどう捉えるかだ。足し算より引き算の味付けと言おうか過度な付け加えはしない。特に野菜鍋はかなりのあっさり。物足りない感も否めないが、ジンワリと野菜からの滋味を味わう一品。結構好みが別れると思う。椀物や煮物はにしむらやにしかわの方が好みかなぁ。ただこちらの良さは質の高い魚介類を豪快に炭火焼きにしたり刺身で食べたり焼いたりと縦横無尽に単品で戴ける点であろう。
次回の京都訪問では是非とも再訪して味わいたい。
10位
3回
2018/05訪問 2018/07/23
全国の食べログ574万人の超力ファンのみなさま!
(主催者発表)
本日は悲しいお知らせをしなければなりません。
それは•••
当方行き着けの店、タージマハール新橋店が6月をもって閉店されたとのこと。
昼夜通ってもうかれこれ4年程か。
5月末の夜にいつも通り電話予約して普通につまみとカレーを愉しんでいた時にはマスターからも貼り紙からも聞かされておらず、正に青天の霹靂。
まさか店を閉めるという事になろうとは。。。
9月中旬には場所も移転して心機一転、カレーの店『ガン爺』がオープン予定とあるがどの様なコンセプトの店なのだろうかまだ不明である。
カレーだけの提供なのか、夜はバル的要素を盛り込んだタージマハール時代と同じ様な形態となるのか…
当方的には夜はゆっくりとタルカリやジンガムンバイをつまみにハイボールや生ビールを嗜み、カレーで締めたい!
カレーだけだとパフォーマンス下がるけど、ここのカレーが食べられるだけ希望の光は消えない。
同じ形態での営業を祈りつつ、今まで掲出してこなかったメニューや最後の晩餐時の写真をアップしておこう。
予定通りのオープン心待ちにしつつ。
Hasta la vista.(アスタ ラ ビスタ)!
毎月通っているのでいちいちレビューしないがこの日は食べるのが好きな友人を連れ、ちょっとした(遊びのw)打合せも兼ねてガッツリと頂戴することとした。
【毎回定番】
◉チキンマサラ
◉ジンガムンバイ
◉ヤムナーパニール
◉タルカリ
これらをちょっと残しておいて、カレーを掛けて食べると滅茶苦茶美味し!
【お初メニュー】
◉チャナマサラ
つまみでの注文は初めて。
カレーの中に入っているものと同じ。
チャナ豆は柔らか目に戻され、タージ特製スパイスで軽めに味付けされたもの。
ネットリとした舌触りに豆のコクが広がる。
これを少し余らせて、後刻注文するカレーと合わせても美味しい。
【カレー】※全てカラ大掛
◉バラカリ
◉ムルギー
◉ライス大×2
◎大ピッチャー(生ビール 1,800ml)
いつもながら安定していて本当に安心して美味しく戴ける。
食べながら一口、また一口と恍惚と成って行く。
精妙に絡み合うスパイスは脳髄に響き、合法的に歓楽へと誘う。
バラカリの豚バラ肉から溢れ出す旨味がカレースープとのマリアージュで単体同士ではなし得ない更なる高みへと駆け登る。
逆にムルギーは絶妙な味付けだが、スープの味に素材からのエキスはあまり溶け出さず、シンプルに奥深く淡麗なカレースープを味わえる。
全て食べ終えた時に友人も良い具合に脱力し、恍惚に身を委ねていた。
もちろん当方も同様である。
【28.12.9追記】
待ちに待った一年に一月だけ、ランチタイムだけの特別メニュー"サブジキーマ"
もう何度も説明しているので過去レビューを参照されたし!
ライスの上に単体で掛けて食べても美味い!さらにルーを掛けて食べて更に美味さ爆発!!
本当この美味さは何物にも代え難い突出型、当方的に申さば『牙突型』の美味さ。
色んな料理を食べて来ているが、タージの夏冬のみのキーマは最後の晩餐に必食したい逸品だ!!超美味!!
しかし今冬の12月は土曜日の営業はしないとのことで有給使うか出張に託けて寄り道するしか手が無いなぁ。
しかも夜の部でも忘年会等で貸切の日が多く満席の可能性があるとのこと。行ってみて入店出来無いという悲劇に遭わぬよう、12月や1月のタージは電話で確認していくことがお勧めである。
あと一回くらい食べてこの冬を〆たいなぁ。
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【28.11.11追記】
この日はこちらに興味のある友人を誘い、ツマミを愉しんだ後カレーをガッツリと戴いた。ツマミは以下の通り
チキンマサラ(チキンムガール)
ごぼうちゃん
ヤムナーパニール
ジンガムンバイ
スタミナ焼き
チキンティッカ
ムルギー唐揚げ
タルカリ
ジンガナマク
初見はごぼうちゃん、チキンティッカ、タルカリ、ジンガナマク。
ごぼうちゃんは軽く衣を付けた牛蒡の素揚げで牛蒡の風味と甘味が引き出されている。生ビールのツマミにぴったりだ。
チキンティッカは照り焼き風のタレにジンジャーがマイルドに効いた一品。
タルカリは野菜炒めでガラムマサラでほんのりとスパイシーな衣を纏い、野菜は見事な炒め加減でシャッキリとしながらも野菜の甘味が引き出されていた。ジンガナマクは海老とベビー帆立の串焼きで塩味テイスト。特筆無し。
カレーはバラカリ、パコラ&茄子、キーマで大掛。カレーは言う事無しで食べてる感覚が無くなる程。退店する頃に腹が膨らんでいることをやっと認識。この日は寒気をもよおし咽喉も痛くなってきたのだが、こちらの料理を戴いて翌日、咽喉の痛みや悪寒は無くなり風邪の症状は小康状態になった。スパイスが身体の免疫を上げてくれたようで胃凭れも無く快調な1日となった。
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【28.6.17追記】
色々あってやっと再訪。
生ビールで喉を潤し、つまみにジンガムンバイとヤムナーパニールをお願いした。
ジンガムンバイはプリップリの海老の揚げ物で、海老がたっぷりと詰まっておりジュースィー。軽く塩胡椒も効いているのでそのまま食べても十分に美味い!一緒に付いてくるカレーソースやマヨネーズと合わせて食べてもなお美味しい。
ヤムナーパニールは春巻の様な皮でチーズを包み揚げてある。普通に美味いのでビールに合う。料理屋に入って酒を飲む時にチーズ揚げがあると必ず頼んでしまう程好きなのさ。
カレーは久しぶりにチャナ豆にしようかと思ったが売り切れのため、定番のムルギーに茄子トッピングの大掛、ライス大盛り、ミニサラダ。飲んだ後でもグイグイ入っていく美味さ!
帰りにお願いしておいた香りのスパイスを調達して店を出た。
【28.4.23追記】茄子カレー美味いナス♡
昼の限定で唯一食べれていなかった
『とんかつ』
を食べに。足掛け2年でやっとありつけた。
とんかつの部位は豚ロースで揚げ方も特に変わった点は無い厚みも普通のとんかつ。ただ1つ拘りがあり、「どんなに忙しくても揚げたてを提供する」こと。揚げおきは絶対にしないという。これは4月の昼だけの限定特別メニュー。カレーの具材の調理でも忙しい上、注文を受けてから衣をつけて揚げるため他の月にはとても出来ないという。マスターの話によると、この店をオープンした時にお客さんに少しでも喜んでもらえるようにと提供し出したもの。今はお昼は12時前より大行列を形成する店に成ったが開店当初はそれ程でも無かったので手間暇掛けての提供も無理無く出来たが今は困難ですと。そりゃそうだな。
とんかつは500円でトッピングとして注文可能。揚げたてのかつは衣はサクサクでロースは脂身も赤身も臭味が無く値段以上に満足出来る品物。こんな値段で提供されていたら赤字真っしぐらだよ。豚の単体としての味わいに特筆する点は無いがバラカリやスタミナの肉と同様と思われ、ここの辛口カレーとの相性が抜群に良いのである!サクサクの衣にカレーをソースの様に掛けて食べる幸せは4月の昼だけの特別の愉しみである。また来年に~♪
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【28.3.7追記】
2月末久々になってしまったタージ。昼には1度来ているが、夜に3度程満席で入店できなかったこともある。夜はインドバルとして単品料理で一杯やりながら〆にカレーという使い方が多く、団体さん等予約が多く入ると満席となり入店できないのだ。夜の訪問は事前に電話で問い合わせしてみるとよい。もちろんカレーだけの飲食だけでもOK!ただし全て単品となるのでご留意の程を!
今宵は定番のムルギーにパコラをトッピング。もちろん大盛大掛。美味い~!!
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【27.12.23追記】
1年間待ちに待ったこの12月。
そう、サブジキーマの月である!鶏挽肉のドライカレーで、具材は鶏挽肉、キャベツ、カシューナッツ、ニンニクの芽。こちらの香りのスパイス(クミン、コリアンダー)が効いたスパイス使い。具材の食感、風味、歯応えが最高!
夏キーマも最高だけど、当方は冬キーマのサブジが更に大好きだなぁ。
これはセットでしか食べれないというものでは無く、他のカレーのトッピングとして別注文も出来る弾力的なサービスも素敵だ。例えばスタミナや茄子のカレーにサブジ追加とかね。500円追加で食べれるので是非お試しあれ!
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【27.10.2追記】
今日は喉が渇いてたので、カレーの前に生中と、酒のお供にシークケバブを注文。生中はインド風の磁器で提供され雰囲気ある。孔雀が正面にドーンと!ケバブはコリアンダーがピリッと効いて臭みも無く最高に美味いね。ビールにはもってこいのツマミ。
カレーは最近の定番のムルギーに茄子トッピング。もちろん大盛り大掛けである。身体が欲していたのかあっという間に平らげてしまったのだった。
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【27.8.28追記】
先日は茄子大掛にハッサントッピング。お土産コーナーに『香りのスパイス』発見!迷わず購入。肉料理をはじめカレーに掛けてもスープに掛けても美味い。ただし、人によっては苦くなるため掛け過ぎ注意で。
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【27.8.11追記】
先日食べた今月のランチのチキンハッサンと先程食べてきたスタミナにパコラトッピング、大盛大掛を追加。夏キーマは残念ながら連投ならず。ハッサンも好きだからまぁいいか。
夜はゆったり一杯やりながら〆にカレーを食べれる。パコラは豚挽肉(鶏ではない)にクミンやコリアンダー等を効かせた味付け。インド風揚げ餃子だ。そのままでもいけるが、ここは辛口激旨カレースープに浸しながらカリカリの部分と柔らかくなった部分の両方の食感を楽しんで中身の具とカレーを馴染ませると美味い。3つなのが淋しいが、そこはもうひとつの主役であるスタミナちゃんに御活躍して頂こう。しっかり味の付いた豚肉をソテーし、カレーと合わせている。これもカレーとしっかり馴染むように計算されており、ライスとの相性も抜群。
ここのカレーの恐ろしさは、食べている最中は全く腹に貯まらないのだ。ペロリと平らげた後も思わず『おかわり!』と言い出しそうなことが何度あったか。それでも退店した後とぼとぼと歩いているときちんとお腹は満たされていることが分かるのだ。いやー恐ろしや恐ろしや。
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【27.7.21追記】
先日昼の相席時に、バラカリにチャナ豆トッピングして食べていた客が、『有り得無ぇ~、有り得無ぇぇぇ~』とガツガツと喰らっていたのを思い出し、注文してみた。チャナは煮込まれていてサクサクした食感は無く、煮た小豆のような食感と味であった。味付けは良いが食感は好みでは無かった。これは渋谷のチリチリのチャナの方が自分は好き。その分煮込みは無いけどね。
バラカリとの相性は悪くは無いが次も食べるかと言われたら茄子を選ぶであろう。チャナの他には玉ねぎと鶏肉がトッピング分。それにしても豚バラ肉の脂とタージの辛口カレールーとは超絶的に合うなぁ。
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【27.7.10追記】
私のキーマ好きはここの親父のキーママターを食べてからハマりにハマりまくった。そして、息子の店でもハマるとは…11:30なのに店内はほぼ満席で相席で座れた。
7月ランチは"夏キーマ"。鶏挽肉に茄子、ピーマン、赤と黄色のパプリカ、ニンニク等が入ったもの。スパイスは私が大好きな香りのスパイス(コリアンダーのホール)がメインにふんだんに使われており、単体でも十分美味いしご飯にも合う。飯にキーマを乗せてカレースープを掛けて食べたら得も言われぬ味。魅惑のスパイス達の融合。大盛大掛で注文しても物足りなさを感じるほど、グイグイと喉を通る、食欲を増進させる食べ物である。
本気でランチセットをお代わりしそうになったのは内緒w店を出た時には階段上の外まで並んでいた。
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【27.7.3追記】
昼には7月なのに夏キーマが登場。職場から距離があるため昼に行くには出張の時でないと無理。来週出張なので、絶対食べるぞーー!
と我慢できずに夜来てしまったw駄目元で夏キーマ残っているか聞いてみると『売り切れです』と•••。ならば夜のキーマで我慢しよう。ただ、夜のキーマはハンバーグなので皆さんがイメージするキーマでは無い。茄子トッピングでアクセントを付けて。これはこれで美味いなぁ。
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【27.6.16追記】
ここしばらくは"茄子"の美味しさにハマりつつある。油で茄子と鶏肉、玉葱、ピーマンを炒めてカレールーと合わせるだけのシンプルな作り。油が滲みた茄子に辛口のルーが混ざり合い、まろやかな味わいを形成しているのだ。
他のメニューの具材を単品で注文することも出来るし、昼の月代わりスペシャルランチの具材も単品で頼める。写真は5月の時のケララチキン。
これに特製スパイス(コリアンダー)をミルで挽いてフレッシュな香りと鮮烈な刺激がまったり系のケララに良く合う。他にもこのスパイスは万能なため、色々な具材にもアジャストしてくる堪らないエッセンスである。
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昨年以来、毎週1度は必ず通っている程大好きなカレー。全ての食べ物を超越している。ここはカレーだけで☆5を付けている。ただし、ここのカレーの真価は"辛口"で、蒲田(閉店)の親父さんの味を受け継いだもの。新橋店では中辛や甘口は幅広く食べてもらいたいところで提供されている。
毎月昼の特別ランチもお得で美味い。夜でもつまみで注文可能なのが良い!昼は激混みで1時前にはカレーが売り切れになってしまう盛況さ。夜は落ち着いて食べれるが、カレーとライス、サラダは別注文になり割高。大掛け、大盛り料金も昼とは違うのでご注意あれ。
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26年9月、9年振りに新橋タージマハールを訪れる。
私の大好きだったカレーを作ってた親父さんが亡くなって何年が経つだろう。もう9年程か…
蒲田の東急ガードレール下で昼夜問わず私の胃袋を捉えて離さなかった『タージマハール』のカレー。
正直カレーなんぞ外で食う物でなく家で食べる物として全く興味がなかったものだった。しかし、ガードレール下にあったこのカレーを食べてカレーに対する思いは一変した。サラサラでトロミなど一切無く、甘味など微塵も無く潔い。色んなスパイスが調合されていてとても奥深い。しかし粉っぽくなく全てが洗練昇華されていて味に渾然一体となった見事さ。しかし激辛!この辛さも年々客に応えて柔らかくなっていったが本気の日のカレーは本当に恐れいった次第であった。
7年程昼に多い時で毎日だから週5日食べていたこともあり、しかも夜も連食したこともあったので7回を超えることも…しかし身体に良いスパイスなので胃もたれもなかった。
そんな日々との別れは突然やってきた。親父さんが体調を崩した。一時は復活して店も再開したが、数ヶ月後に再度体調を崩し店を休店。そのまま鬼籍に入り店は閉店となった。
この親父さんには息子がいて新橋にも同名の店を営業していた。『まぁ、たまには息子のカレーも食べに行ってやってくれよ』と親父さんが言っていたことを思い出す。親父さん亡き後このカレーが忘れられなく数ヶ月後に食べに行ったが似て非なるものという印象であった。何か残念な気持ちと、もう二度と親父さんのカレーは食べられないのだろうという悲しみ。何ともやりきれない気持ちであった。
それから9年程経った今、親父さんの店でカレーを食べている夢を見た。私もカレー、特にインドカレーは大好きで色んな美味いカレー屋へ食べに行った。そろそろまた息子さんのカレーでも食べに行ってみようと思い訪問した。懐かしの『スタミナ』(味付け豚肉のカレー)のルー大掛けライス大盛で注文。楽しみにしていたルーを一口…
!!!
味が親父さんのカレーに凄い近づいていた。
というよりほぼ親父の味がした。多少粉っぽさや調合歩合は違うかもしれないが、9年の月日がお互いのカレーの概念が近寄ってきたというのか。
息子さんも以前より美味しく調合研究をされたに違いない。私の味覚も懐かしさのあまり多少甘くなっているのかもしれないが、間違い無く親父さんのカレーの味に一番近いものになっていた。
身体が震えた!舌から脳、喉、胃へと味覚のシグナルは走り、身体全体が喜んでいた。涙が出るほど美味かったし嬉しかった。食べ物でこんなに感動することもそうそうあるまい。本当に食べたかったカレーは新橋にあった。
また近いうちに食べに来よう。
また大掛大盛で!
今回は洋食としての一面も観たいという事で、タルタルソースをどの素材、料理と合わせてくるかという事を楽しみに参上した。
もう一つのお楽しみだったクリームコロッケは、良い渡り蟹が手に入らなかったのでまた次回と相成った。
当方も親父さんの納得のいく食材で全力調理してもらいたいし、味わいたいので今回食べれなかった事は次回の楽しみということで。
ステーキ、洋食屋として、ステーキの牛肉は素材自体が素晴らしい物でほとんど手を掛ける、時間を掛ける必要の無い神素材ではあるが、脂身や筋、筋膜は丁寧に取り除き、的確な温度に戻してから調理する。
ガルニ(付け合せ)もただカットするのではなく味が乗りやすい様に多面的にカットしたり隠し庖丁を入れたり。
茹でるにしてもただお湯で茹でるだけでなく、グラッセにしたり炒め煮にしたり出汁に含ませ煮にしたりと和洋の技を駆使して最高の付け合せを添えてくる。
タルタルソースは本格的な洋食屋へ行ってもイマイチなソースが少なく無いが、くいしんぼーではマヨネーズからして親父さん独自のレシピで店の自家製マヨネーズが極ウマだから、他の調味料やスパイスは強く利かさなくても済むがバランスの良い調味である。
どこぞの茹で卵ばかりが目立ってマヨネーズの味がイマイチわからんという事も無い。
無理せず、今在るもの、許されるもので最大限素材と対峙し、存分に腕を振るって頂くのが最良である。
◉ベイクドポテト
◉タンシチュー
1時間30分しか煮込んでいないという究極の神素材のなせる技と味わい。
トロトロの煮込みとは違った、ムチッとした噛みごたえにタンのコクがジュっと滲み出る綺麗で澄んだ旨味に喜びを覚える。
グラスワインのレベルを超えたボディもタンニンも程良く利いた赤ワインと合わせると、旨味が共鳴する。
◉鮃のブレゼ バターソース
本日のお魚は今が絶好調の鮃。
このイカッた身はソテーにするとどうやっても身が反り返ってしまうのでブレゼでの調理。
鮃の身だけでなく縁側もブレゼしてくれていて添えてくれているところが親父さんの憎いところ。
縁側は鮨でくらいしか戴いた事が無いが、ヒュメ・ド・ポアソンで蒸し焼きされた縁側にクドさや臭味は皆無で只只旨味の宝庫。
身は筋肉質でブリッとしているが、歯はスーッと抵抗なく入り、心地良き押し返しを愉しみ、溢れる旨味を謳歌する。
◉冷製コンソメ
先月のアスピックなあれは一体何だったのであろうと思わせてくれる本物の味。
素材の持てる力の差である。
湧き出てくる澄んで芳醇な旨味に絶妙な塩分濃度。
◉ステーキ ロース
珍しく42ヶ月肥育の淡路島産但馬素牛
稀に食べ込む牛がいるのだとか。
食べなくなった牛はもう落とすしかなく、ペットではないため無理に飼育出来ない。
鉄板で片面7割火を入れて、もう片面は3割程度で焼き上げるのが一番美味い調理法と親父さん。
挿しも良い感じで入っており、旨味十分だがしつこく無いサラリとした口当り。
自然な粘りと照りも極上品ならでは。
◉舌平目のフライ タルタルソース添え
本日の隠れメインディッシュ。
鮮度抜群の最高品質の舌平目はかなり大き目のものをステック状にして高温で一気にカリッと揚げるのがコツだという。
下味も美味しく付いているのでそのままでも十分に美味しい。
未成熟のレモン掛けるとキリリと引き締まって更に美味さが上がる。
しかし当方リクエストのタルタルソースを付けて美味しい逸品なので、ソースと合わせて何ぼのもん。
タルタルソースをたっぷりと付けて戴いてみた。
こ、これは•••
う、ま、い、ぞぉおおおーーー!
タルタルソース単体で戴いてもとても美味しい。
舌平目だけでも十分に美味い。
しかーし!
双方を合わせて食べた時に目を見開いた!
マヨネーズは親父さんのオリジナルレシピで作られた自家製。
そこに茹で卵に玉葱、香草、ケッパー等々秘伝の黄金比率で混ぜ合わせてあり、良く練れたタルタルソースだ。
正に当方の理想に近いお味だ。
それをカリッと揚がった衣にたっぷりと掛けて戴くのだから堪らない。
しかもたっぷりと掛けられても舌平目の衣の中の瑞々しい美味さはちっとも色褪せ無いから不思議。
当方用に作ってくれた小さ目な茶碗くらいは有ろうかというタルタルソースの量に大感激!
だって皆もそうであろう。
洋食屋でタルタルソースが足りなかった時、追加注文は断られる事もある。
最初からドーンとどうだと言って頂いた様で凄い嬉しい。
冗談抜きで、このタルタルソースで飯食えるよ(笑)
◉ハンバーグ ミニ
幸せの美味しさ。
炒め玉葱は入っているがつなぎはゼロ。
しっとりして柔らかくしなやかさがある。
弾力はあるが硬くない。
デミグラスソースも完璧で、ハンバーグからの肉汁をしっかりと受け止め、玉子の黄身のコクも受け止める。
これをご飯と合わせて戴く幸せったら無いよ、ホント。
◉ご飯、赤出汁、香の物
今日は丁度良い炊き加減。
◉デザート
あの苺をふんだんに使ったケーキ。
甘さと酸味とコクのトータルバランスが素晴らしい!
◉コーヒー
「お客さんに出した皿は空にして返して欲しいですもん。」
この一言に親父さんの全てが込められている思いがした。
この一言に我は震えた。
結構な価格帯で提供されているステーキ店でも、山中の親父さん程しっかりと丁寧に脂と筋取りを丹念にされている店を当方は知らない。
ブロックから切り出す店は数あるが、カットしたらそのまんまで後は塩と胡椒を施して焼きに入る料理人が少なくない。
手間暇掛かって面倒臭いのと成形後の見てくれが悪くなることからであろうか。
どんなグルメ番組でも料理番組でもカットしたらせいぜい肉を常温に戻す程度で焼に入る。
当方が店で筋取りをされている料理人を見たのは同じ京都は祇園にあったステーキ左近(2009年閉店)のみ。
当方は脂は兎も角、脂身と赤身の狭間にある硬い皮筋と身筋が一番嫌で脂共々デーンと皿の上に残して退席する。
こんなモノ食えっかぁーー!と言わんばかりに。
しかし初訪からくいしんぼーでは一度たりとも口に障る筋や部位、脂身は一度たりとも無いし感じさせもしない。
これがプロだ!本物の料理人だと思った。
そして年が明ければ15年という長いくいしんぼー通いとなるが、この丁寧な筋取りについてお話したところ、上記のようなお返事があった。
「自分が出されて嫌だと思うものは出したく無い」
何だかもう救われる様な気がしたなぁ。
こういう実直に食材とお客に向き合っている料理人がまだ少なからずも存在する事に、居てくれる事に心から感謝したい。
なので心が共鳴して震えたのと同時に心躍った。
本日の姫君は淡路島産但馬素牛を近江のマルキ牧場で精魂込めて30ヶ月飼育された38ヶ月ものとのこと。
この日は親父さんが少し趣向を変えて提供してくれた。
◉ベイクドポテト
定番。
懐石の如し、空腹の胃にいきなり強い料理を入れない様クッションを作る心配り。
◉ローストビーフ
ローストビーフは噛んで美味しい旨味のジュースがジュワッと溢れ出てくる。
付け合せの蓮根の酢の物が最高の口直し。
◉明石産真鯛のブレゼ
親父さんが珍しく
「今日はホンマ素晴らしく良え鯛が入ってます!」
という程の神魚。
京都の人は魚は熟成とかヘタっているものを好まず、"イカっている"のが好みなのだという。
今朝〆の死後10時間程経っているだろうか丁度イノシン酸が花開く頃合いだ。
ソテーだと身がイカっているので反り返ってしまうので、くいしんぼーではブレゼで仕上げるのだ。
軽くフライパンで焼き色を付けたら親父さん渾身の出汁⇒ヒュメ・ド・ポアソンと白ワインで蒸し煮していく。
熱々の皿に真鯛を置いて仕上げに特製バターソースを回し掛けて完成だ。
もうずっとこのバターソースを味わって来ているが、乳製品、とりわけバターが大好物の超力が他のあらゆる料理屋の中でも一番と確信しているくいしんぼーのバターソースだ。
魚の風味を掻き立て、そして優しく寄り添い、共に喉元へ幸せを運んでくれる。
まるで男女の仲の様に。
真鯛への火入れが独特だ。
中心はレアに近い熱の入れ様で、フィッシュソーススプーンで切れる程。
プリッとした弾力に真鯛の力強き風味が波の様に押し寄せてくる。
美味しい波が単発ではなく、一段、二段、三段と断続的に旨味が湧き出てくる。
フンワリと火の入った食感とほんのりレアのカルパッチョの様な食感とが相俟って愉しい口当り。
◉冷製コンソメ
もうこれこそ同じ処女牛のNBCをたっぷり使ったものでないとこれを超える事は絶対に不可能だね。
素材本来の素直な味わい、即ち健康に人工的な措置を施されていない澄んだお味だ。
◉淡路島産38月ロース ステーキ
噛んで適度な歯応えがあり、噛み締めて美味い!と思える稀有な姫君。
また逢えたね。
時間が経っても最後まで美味しく戴ける。
◉淡路島産38月ロース カツ
「カツ焼きます〜」
カツは揚げるのでは無く、焼くのである。
酸化した油で揚げ続けるフライヤー全否定だ。
デミグラスの奥深く深遠な旨味、不自然さなど無いスッキリとした透明感あるキレ。
肉の火入れはジャストで完璧!
ヘット(牛の脂)で揚げ焼きされたカツは、カリッとした衣で肉の風味が閉じ込められて最高の仕上がりを魅せる。
◉真鯛アラ潮汁
「今日の鯛はホンマ良えんで、アラで潮を作ります」
と当方もこちらでは初めてかもしれぬ程記憶に無い真鯛の潮汁を戴く事に。
アラは熱湯を掛けて素早く冷水に浸して綺麗に掃除する。
鍋に掃除し終えたアラを入れて日本酒を振り入れてからしっかりエキュメ(灰汁と余分な脂取り)せなあかんと。
仕上がった潮汁はクリアーで透明度は高いが真鯛の旨味成分がしっかりと出ており、まるで割烹料理屋か料亭で戴くが如し洗練された澄ましの手法。
和食料理屋顔負けの美味、流石である。
◉苺のケーキ
野田さんの佐賀ほのかを使用されているが、他には松永さんところで2軒しか出荷されていない苺とのこと。
甘さだけでなく酸味とのバランスと歯触りが良い。
◉プリン
洋酒が利いている大人のプリン。
ラムかなとも思ったらキルシュ(サクランボの蒸留酒)を使ったとの事。
◉コーヒー
2017年も一月を切る前に山中の皆さんの顔が見たくなり、12月は久しぶりに夜に訪れて腰を落ち着けて親父さん渾身のお料理を頂戴することに。
今回は今までにお逢いした事が無い程のお姫様とご対面することになるのだが、それは後ほど。
また、無理を申してしまって年末の高騰期なのにご配慮頂き大変恐縮であり、かつ恐悦至極であった。
【この日の献立】
◉ベイクドポテト
定番。
空きっ腹にいきなり重たい物を入れるのではなく、ほっこりポテトで軽く胃を落ち着けてから。
◉かわらのローストビーフ
かわらとはリブロースの上にあり、その前後にあるそうなのだが、前方が柔らかくて美味いとのこと。
今回はその前方をご用意してくださっていた。
以前はこのかわらをタルタルステーキにして提供していたのだが、現在は例の法規制があり提供出来なくなってしまったという。
当方は2004年からお邪魔をしているが、残念ながらこのタルタルは未食であり、只々残念無念である。
◉伊勢海老1
重さは前回同様なのだが、更に身の質、旨味、特に頭の味噌が大変美味で前回を超える素材にお逢い出来た!
これは今まで数少ないが食べて来たなかでもNo.1である事は間違い無い。
他割愛。
(※頼む人は事前に要連絡と、値段は言うまでも無く時価で高騰期にはそれなりの覚悟を持ってご注文されてくだされ。)
◉コンソメ
言わずもがなの名品。
これ以上のものは無い。
◉養父(やぶ)産38ヶ月育成 ロース
今回の姫様は山中さんに通わせてもらってからも記憶に無い、正直初めて観る挿しの入り具合の霜降り肉で驚いた。
これがBC牛なら気持ち悪くて食べられないが、こちらの姫様は言わずと知れたマルキ牧場で人工的、作為的な操作で挿し等入れない自然に近い環境の中、ストレスを姫様に与えない手法で育て上げているので心配ご無用!
よーく眼を凝らしてみて欲しい。
一般的な牛肉は白っぽいピンク色か下手したら真っ白ケッケで蝋燭みたいな色であるが、こちらは挿し以外はしっかりと小豆色を保っているのだ。
これが後の味わいに響いてくる。
親父さんも牛本来の力のみで自然に入った挿しならば、いくら入っても美味いよと太鼓判を押されている。
それ位に普段の育成方法では強く挿しなど入らないのだ。
そんな中たまーにこういった神降りとも言える程の肌理細やかな挿しが入る姫様が稀に御誕生されるのだという。
こちらの店では普段御目にかかる事はほぼ無い希少な姫様との出逢いは正に僥倖と言えよう。
とはいえ、当方的にはこの挿しの入りはかなり躊躇する範疇で、本当に胃の腑にこれを流し込んで胃もたれしないかという一抹の不安は一寸あった。
絶妙な焼き加減で仕上がり、お化粧直しされたお姫様と再びご対面。
見事な焼き上がりで数枚写真を撮らせて頂きさっそく一口。
やはりBCな牛とはチト違う。
何が違うって、肉の食感と風味が全然違う。
あっちは口に入れて「あ~トロけるぅ~♪」だが、こちらは牛本来のコシと粘りがあるのだ。
しっとりとした中でもキチンと噛んで但馬牛としての独特の食感が歯に伝わり、心地良い噛み心地を与えてくれる。
そして挿しからジュワっと溢れ出る綺麗でクドく無い脂の旨味、肉の旨味と相互に混ざり合って口内を愉しませて喉元へ流れ込んでいく。
しかも食後、翌日と胃もたれなど皆無であったことに再度驚く。
トロけて云々で後胃もたれな牛肉は幾度となく食して来ているが、こんな食感に旨味と食後感の霜降り肉は初めてだ。
◉伊勢海老2
前回を超える美味しい個体で味噌が絶品!
またカクキュー(◻︎の中に久)の八丁味噌との相性が抜群で、強い旨味の八丁味噌と合わせて負けないか前回は心配したのだが、そんな事は心配御無用!
風味、甘味が半端無く、残らず綺麗に頂戴した。
◉ご飯 香の物 サラダ
◉デザート
・佐賀ほのか苺のケーキ 林檎のシャーベット ビターチョコレート
・くいしんぼー特製プリン
すべてが親父さん手作りで心のこもったお味。
言うまでも無く絶品だ。
◉コーヒー
今回もカウンター越しに親父さんや女将さんと忌憚ない食のお話を伺え、また情報交換し、大変寛ぎに満ちた安らぎの時間を過ごさせて頂いた。
有難いことに京都にはいくつか行きつけのお店があるが、その中でも突出してこちらでのお食事は開襟して全てを曝け出して寛げる時間を提供して頂け、第二の我が家の様な、そんなホッと落ち着ける当方にとって唯一無二のお店である。
今回のお目当は栄螺さんなのだが、この日は無性にヒレを食べたくなった。
それは先日某店でも美味いヒレを戴いて食べ比べてみたくなった食いしん坊の性(さが)と言うもの。姫様、お赦しくだされぃ!
そういえば、ヒレをメインのステーキで戴くのはここに来てから14年目にして初めてだ。
焼く時間を逆算してベイクドポテトを食べている辺りから大きな一本のヒレの塊から食べる分をカット。
初めは落ち着いた深い小豆色なのだが、段々と時間が経って肉が常温になるにつれ肉の表情が変化してくる。
室温に馴染んで来る過程で発色していき、鮮やかな小豆色となり表情を変えてくる。
さらに経過すると薄っすらと微粒子レベルのシットリとした微汗を掻いたかの如く肉の表面が輝いてくる。
そろそろ焼いてくれ~という肉からの合図だ。
この見極めが肉職人のタイミングでズレれば食べ頃を外し、未到達だと旨味が完璧に開花しない。
毎年それ程来られる訳では無いが、親父さんの仕事振り→焼きに入るタイミング≒肉の囁きの具合で黄金のチャンス(時間)を逃さずに焼きに入り、塩と胡椒は鉄板に肉を置いてから施す姿を具(つぶさ)に観てきた。
肉の囁きの場面に幾度と無くカウンター越しに立会い、拝見させて貰ってきた結果、当方にも肉からの囁きが通っていく毎に少しづつ観聴出来る様になってきた。
そんなモン誰も教えてくれるものでは無いので何となくの感覚だがね。
【今回戴いたメニュー】
◉ベイクドポテト
◉南勢町の栄螺 ブルギニオン仕立
1月下旬から登場の栄螺。
出自は例の伊勢海老の仕入先と同じ船頭から仕入れていると。
口を開けて身を取り出し、肝や砂袋を取り外して身は綺麗に掃除。
無塩バターにニンニク、エシャロット、パセリを刻んだモノを混ぜ合わせ、塩・胡椒で味を整えたブルギニオンバターを、殻に栄螺の身を戻した上に添えてオーブンで火入れする。
プツプツと気泡が立ってニンニクの香ばしき芳香が垂涎物ではないか!
殻から丁寧な仕事を施した栄螺さんを引き摺り出して一噛み。
美ん味ぁ~~い♡
栄螺の磯の香りと質の高いバターに熱が入って活性化した旨味とニンニクとエシャロットの魅惑的な香ばしさ。
5個も食べれば満足出来るでしょとタップリと用意して頂いてよくおわかりで♫
あっという間に平げてしまった。
当方の某友人がこれを食べたら絶対にこう言うであろう。
これ、バケツで食えるわ!
◉ビーフシチュー
以前は頬肉での提供だが、今回は”蛸足”でやってみたところ抜群に美味かったのでと正式に提供。
蛸足(たこあし)とは蛸の足の様な風体から名付けられた部位で、肋の骨と骨との間にある肉のこと。
例えば鮪で言えば中落ちの様なモノ、大仰に言えばロケット、ミサイルの様な形容か。
蛸足の根元部分は塩して焼肉にしたら滅法美味いそうで、先の方は煮込むと抜群に美味なる味わい。
肉の繊維も程よく、滑らかな舌触りでコク深き味。
部位を問わず、こちらの仕入れ肉で煮込めば超短時間で柔らかくなり、味も落ち着くのだ。
ソースも煮て漉して煮て漉してと何日も掛ける必要はなく、フレッシュな物が断然美味いという。
詳細は以前のレビューを御覧くだされ。
◉淡路島真鯛のポアレ
釣った真鯛で白子が小さかったのでまだいけると。
提供は雌で美味しい真鯛のポアレだった。
もちろんヒュメ・ド・ポワソンが決め手のバターソースも別格の美味さ!
◉コンソメ
いつもながら見事な出来栄え!
◉ヒレ
今回の姫は初の逢瀬で但馬家畜市場(せり市)のある"養夫(やぶ) "産の未経産素牛。
それを近江で精魂込めて育て上げた姫を落としてから3日目とのこと。
親父さん曰く、ヒレで食べるには落として3日目が一番美味いと。
今回も不自然な手が入っていない本来の牛の味を安心して味わえた。
リソレされた表面はメイラード反応が最適に起こっており、素敵な焼き色だ。
外側の小気味良い食感に、モチっとしたヒレの何とも言えない心地良き弾力と柔肌の如し肉の滑らかさを併せ持つ素晴らしき素材と施しだ。
しかし抵抗無く歯がスーッと入り、癖など感じさせない綺麗な牛の味を噛み締める。
ヒレには独特の軽い肉の粘りもあり、旨味が舌を覆うが切れが半端無く良いため、旨味の余韻はスッと消えていく。
姫もにこやかに旅立たれたであろう。
◉ガーリックライス
もうこれガーリックライスの範疇を超えとるよ。ビーフピラフだね。
かなり久しぶりに食べたけど、かなりの肉が入った豪華版。
ステーキ用の枝に整形する際に削ぎ落とした肉だが、同じ近江牛の美味しいところなのだ。
米と肉をしっかりと咀嚼して融合させて味わえる。
◉味噌汁(赤出汁)
もう自動で出てくるある意味コンソメとのツートップの美味しさ。
◉香の物
◉苺のケーキ
あまおうとカスタードのバランスの取れた甘味と酸味が交差する美味しさ。
◉コーヒー
◎赤ワイン
【28.11.6追記】
今回の目玉は伊勢海老。
某所で10/28に解禁になったばかりの伊勢海老が食べられるとヒョンなところから情報が入り、即座に訪問。京都へ行く予定もあったので正しく天啓である。
そして今回も素晴らしき素材と邂逅。
当方がお昼の開店前に到着する20分前に旧南勢町(現南伊勢町で以下"南勢町"で記載する)の船頭(漁師)から送られたばかりの伊勢海老。しかも500gという何とも立派な体躯。この大きさに成長するまでどの位の年月がかかっているのだろうか。少なくとも7〜8年は掛かっているのだろう。400gあれば縁起物とされる上物で触角も歩脚も折れておらず、身に張りがあり艶やかで見事な小豆色。牛肉でも伊勢海老でも美味しい物って小豆色をしている事が多いと思わせてくれるねぇ。ギィィシ、ギィィシと言う伊勢海老の鳴き声(?)も勇しく活の良いヤツを早速調理して頂いた。
親父さんから小さなサイズでは料理しても美味しく仕上がらないので大きなサイズとなったとご説明頂いたが全く問題無し。むしろこんなに素晴らしいピンの中のピンを選りすぐって即刻送って頂いた漁師さんと親父さんには感謝の言葉しか出てこない。500gで2人前分だが今回は当方1人で戴いてしまうという何とも贅沢な。バチが当たらないか心配だ。
漁獲量は現在千葉県に1位を譲っているが、伊勢海老が美味しく育つ環境は伊勢志摩が断然トップであると親父さんは仰る。伊勢志摩はリアス式海岸で複雑に入り組んだ地形をしている上、南勢町の熊野灘には黒潮も流れ込むため良質なプランクトンも多く餌も豊富、気候も温暖で伊勢海老が生活するのに最も適した最上の場所なのだ。釣り船(廃業)の船頭から紹介して貰ったという南勢町の伊勢海老の船頭からずっと買い付けてされているとのことで、味も昔から変わっておらずに大したもんだと素材に厳しい親父さんが珍しく褒めている数少ない食材産地の1つだ。
またロブスターとの違いは、ロブスターには足に斑点があるが、伊勢海老には無いのが特徴ということも蛇足だが騙されないように付け加えておく(分類も下目(ザリガニ)からして違う)。伊勢海老と言って実はロブスターだったなんてことも事実あったので。
伊勢海老の尾の身の部分は殻付きのままサッと一寸熱湯に潜らせる。オリーブオイルにニンニクのスライスを少々入れて香りが出てきたところで殻を剥いた身を軽くソテー。最後にコニャックでフランベして香り付けしたら身を適度な大きさに切り、ソースアメリケーヌで提供。
禁漁の間タップリと養分を身に蓄えた伊勢海老の美味いこと美味いこと!!もう美味いと言う言葉しか出て来ないねぇ。色艶良く加熱することによる身肉の活性化と火入れ味付け等熟練の調理技術が織り成す見事な仕上り。伊勢海老しか持っていない独特の風味と至高の甘味。プリっとした筋肉質で歯に跳ね返る身の適度な弾力ある食感は素晴らしい。ソースアメリケーヌは伊勢海老のガラと新鮮な渡り蟹を炒めて、親父さん渾身のヒュメドポアソンで煮詰めて新鮮なトマトを加えてから更に詰めて完成。甲殻類の香ばしい風味と甘露な旨味をトマトの酸味が引き締めてくれており、しつこく無いバランスの取れた旨味タップリのソースである。出来の悪い生臭い苦いしつこいアメリケーヌも数多あるが、選び抜かれた素材と地道に真面目に取り組まれて来た料理人の腕に掛かるとこうも別物のソースが出来上がるのかと感心する。
頭の鬼殻は最後に味噌汁で頂いた。いつも戴いている留椀の更に上のハイグレードバージョンだ。海老味噌も甘味と特有の渋味が渾然一体となって得も言われぬ。こんな見事で美味い伊勢海老料理は東京では食べれないな。当方の為に身を捧げてくれた全ての食材に感謝して、綺麗に頂戴した。
ローストビーフもコンソメも本日の但馬見方郡180gロース(未経産)も大変素晴らしい出来の逸品揃い。今回も言うこと無しの美味さとおもてなしに大満足の昼下がりとなった。
本当にご馳走様でした!!
※なお、伊勢海老は常時用意されているものでは無く10月末から1月下旬頃に漁れたてで鮮度の良いものを直送してもらうため事前の予約が必須となる。かつ値段も相応にかかるため本物の価値をわかり、食べる事に対して四の五の言わない人にお勧めしたい。また正月前は値段が高騰するのでお勧めしないことを申し添えておく。
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【28.7.31追記】
半年ぶりに山中さんへ。
今回の目玉は以前よりずっと聞いてきた夏の美味い魚『あこう』を戴くことだ。事前に親父さんに連絡を入れて、良いあこうが揚がったらまともなあこうを食べたことがないので刺身でもいただけるようお願いしておいた。年に数回だが10年以上京都に訪れたら必ずこちらの店に継続的に来店し、親父さんや女将さんと色々なお話をさせていただいた信頼関係もあって用意していただけた。40年以上の付き合いをしている魚屋と親父さんとの信頼関係も強く、魚には滅法詳しくうるさい(?w)親父さんを納得させる品なので当方も全幅の信頼を寄せている。見えずとも、遠方から来店する当方のために色んな方々が全力で一つの良き物を作り出し、提供しようと一丸となって持てる力を発揮されている事に感動する。
「ええあこうが入っております!」と親父さんの言葉に雀躍した。ええもんが入らないと他の物(例えば今の時期だと鱧)になるからだ。本日のあこうは最上級物として有名な瀬戸内産の800gで、釣って来た漁れ漁れのあこうの活の物を朝締めて当方のため夜に提供する頃に死後硬直が解けて旨味が出てくるタイミングを見計らって提供された。
親父さん曰く20~25年程前までは関西の和食屋で夏の高級魚といったら”あこう(赤魚)=雉子羽太(きじはた)”であったという。旬は夏で羽太の中でも随一の美味さである。関東ではあまり馴染みはないかもしれないが、中華料理で高級魚の蒸し物(清蒸)ですぐに思い浮かぶのが雉子羽太である。夏真っ盛りのこの時期の刺身といえば、京都の高級店から普通の店は大体鱧か真鯛を使っている。特に真鯛など夏の時期は味が落ちているのに明石の真鯛やどこそこのだといって1年中真鯛を出す店もある。正直今時期の真鯛は脂も旨味も抜けて美味くない。夏に真鯛を出すのも養殖物を出す店が多く、真面目にあこうを出すより儲かるからだという。それも和食が世界遺産となってしまってから免罪符になってしまった嫌いがある。お墨付きを得たので救いようがない。
刺身、ブレゼ、アラ汁と戴いたが、旨味は初めから強いものでは無く、徐々にエンジンがかかり始め、噛んでるうちに旨味エキスで口内が占拠されている。まるで舞妓から艶冶な芸妓へと変貌を遂げていくようだ。鮮度の良い最高級のあこうは身の色がやや桃色掛かって頬を赤らめた少女のようだ。他で見たあこうはこんな桃色掛かっておらず白っぽかったなぁ。生の刺身をブラインドで食したらファーストコンタクトで風味と舌触りが似ている真鯛と答えるかもしれない程。刺身のサビは本山葵の極上品で食べてみれば真っ当な鮨屋に頻繁に行かれている経験のある御仁であればすぐに理解できるであろう品質だ。醤油は親父さんの幼少期から食べ慣れた馴染みのある大醤(大阪堺)。旨味とコクが深くてどんな素材の物でも美味しく底上げする力をもっている。削ぎ切りされたあこうの身は組織が潰されておらず滑らかで醤油を付けても過度に留まらないので丁度良い味加減で戴ける。これじゃ高級和食屋も形無しだ。素材力も何もかも。また、身に熱を加えるとこれが全く別の表情を浮かべる。羽太の食感は真鱈のホロホロと身離れの良い物に似ており、亜門までは真鱈と一緒の脊椎動物である。真鱈よりも身はやわらかなのが特徴。
こちらの店で仕入れる魚は生け簀物ではなく漁れ漁れの活魚のためポアレだと生きが良すぎて反り返ってしまうため、ブレゼにしている。あこうの一番美味い真ん中の身をバターを敷いて軽く焼き、白ワインで香り付けしたら鱧の出汁で取ったというヒュメドポアソンを身の半分位になるまで掛けて蓋をしてオーブンで蒸し焼きにする。写真でもおわかりの通り、身が厚くてブリっとしているが身離れが良いのがあこうの特徴。そして加熱することによって真冬の明石の真鯛と互角かそれ以上の旨味と滋味溢れる深き味わいを醸し出す。皮目のゼラチン質が堪らなく美味いのだ。毎回こちらのバターソースが何故に美味しいのかも上記のとおりヒュメドポアソンに秘訣があったことも納得の味だ。鱧も韓国産の物がもてはやされるのは濃厚な脂の乗りということもあるが第一に皮が薄いため、和食で使うには重宝することだという。こちらではブレゼするため皮が薄くなくてもいいのだと。また淡路島のが近いし鮮度、品質、活魚の面から絶対淡路だと言い切るポリシーは素晴らしいし感服する。昨年頂戴した淡路島産鱧のブレゼもどこの料理屋の物より数段格の違いを見せつける美味であったことも記憶に新しい。あこうのアラは最後に当方が大好物なカクキューの八丁味噌汁の出汁として使われていた。この頬から鰓(えら)の部分の味わいと言ったらとんでもない物だ。アラは先に酒で煮て下処理をした後に八丁味噌と合わせているのだが、味噌の強い味に負けること無く旨味が半端無く出ているのである。出汁にも凄い美味しいエキスが交わり得も言われぬ幾重にも旨味の相乗効果が折り重なっているのである。なのでハンバーグは不要で白飯と香の物でフィニッシュ!
付け足しとなってしまうが、本日の生まずの牛肉も『絶好調でっせ!』の素晴らしい物で、見方郡の38ヶ月飼育物。落としてから本日で丸5日で重さは380kg。
見方郡に限らず但馬純血素牛の仔牛をマ○キでは半年間は乾草だけを餌としてのびのびと育成させるのだという。青草だと肉に臭みが出て駄目だと。大体ベコ(素牛仔牛)が売りに出されるのが10ヶ月前後のため飼育は28ヶ月が基本的で合わせて38ヶ月だという。人工的な手を加えず自然飼育で840~850日大事に丁寧に育て上げた一匹の仔牛も産んでいない未経産牛のみを提供している。一大ブランドのA5ランクで有名な某県の○△牛などは飼育18ヶ月(大体500日)のうちに600kg以上に飼育して出荷するのである(やり方は人工的にA欠やらホルモンバランスやらetc)。それも去勢か経産牛。ここ数年ベコの仕入値が格段に上がってきている中でそういった業者は飼育を短縮して13ヶ月にして出荷するというとんでもない業者もあるのだと。味は今更言うことでもないが、本日の見方郡は肉質がサクサクと歯切れ良い食感で、噛めば噛む程に旨味エキスがジュワッと出てくる。同時に親父さんがよく言われている肉の心地良い粘りが口内を滑らかに絡み、スーッと消えていく。時間が経っても変に肉に熱が行き過ぎず、旨味汁が流れ出すことも無い。脂身もさらりしてクドさは皆無。ジャンルとしてこれが本来の日本の和牛の真の姿であり、今では貴重希少な唯一無二の肉になってきてしまっているのが悲しい。もっと皆に識ってもらい、愚直だが真面目に牛を育て、その肉を提供している人々を食を通して応援してもらいたいと切に願う。
最後の付け足しとなってしまうが、デザートのメロンのケーキが半端無く美味かった。ここのデザートも全て親父さんの手作りだ。静岡のメロンを使われているが、親父さんが使われて40年以上経つが味が全く変わらず落ちることなく美味いままなので感服しているとのこと。夕張は売りのプレゼンが上手なだけで本質的な美味さからすると全然静岡の方が美味いという。以前も最高級品を取り寄せて果物屋と一緒に味見したが全然格が違ったと。黄桃はコンポートに、白桃はジェラートで提供されたがそれぞれ美味い。しかも、チョコレートまで手を加えられており、親父さんは大のチョコレート好きなのだがご自分でテンパリングをして最適な口溶けと滑らかさ、カカオの含有量等を調節してクーベルチュールに再構築した一欠片だった。エンローバー(被覆)させたチェリーボンボンと清見オレンジのピール(皮)も味見させて戴き山中ワールドを味わい尽くした。もちろん口溶けと味わいは最高の品であったことは言うまでも無い。
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【27.12.13追記】
長年の取引先であるマ○キの福○さんに山中さん用の子牛(雌)を買い付けてもらったものが先日あがったばかりとのこと。今回戴いたベッピンさんは『但馬豊岡産(純血)の未経産38月育成』とのこと。こちらのは本当に一頭たりとも産まずの処女牛である。2頭までは産んでも未経産といって売り出す悪質な業者もいる。子供を産むと肉質はガラッと変わると親父さんは言う。食べれば分かるがそうもいかないため、その場合は産道を観ればわかるというが、1頭産みは見極めが難しいらしい。わかりにくいので2頭くらいならばということである。処女じゃないじゃん。マルキでは購入した子牛一頭一頭の特性を見極め、其々で育成期間を設けているとのこと。他社はある程度でグループ分けをして決められた期間内で効率的に飼育終了となるという。マルキでは仕入れてから半年間は乾草を食べさせ、仔牛にストレスを与えない自然的な昔ながらの丁寧な飼育をしているため効率的では無く、無理強い無く育てているためせいぜい380kgで400kgも取れれば御の字だという。他所ではどうだろうか?
【今回戴いたメニュー】
◉ローストビーフ(ランジリ、ヒレミニョン)
◉同個体のタン
◉明石産真鯛の蒸焼きバターソース、銀杏
◉冷製コンソメ
◉ロースステーキ(豊岡)、サラダ
◉ハンバーグステーキ(ミニ)
◉ご飯、香の物、赤出汁
◉苺(あまおう)のケーキ、コーヒー
◎赤のグラスワイン
ランジリはサーロインと直結している尻近くの部位。サーロインよりあっさり。ヒレミニョンはヒレでも先端部のごく一部についている部位であまり取れない。頭から腰にかけてあるヒレのなかでも太い部位から中心部がシャトーブリアン、トルヌードとなり、その両先端部となるそうだ。旨味が凝縮しており、ステーキより刺身やロースト、叩きでポテンシャルを発揮する逸品。タンは舌の付け根の中央部の極一部しか取れない柔らかく旨味が凝縮しているところしか使わない。こんなベッピンさんのタンなど長年の付き合いの賜物で親父さんに対するマルキさんの信頼の証である。まぁ今回は一頭丸々親父さんの牛なので手には入るが極限られた数しか提供出来ないため、有る時はかなりラッキーである。当方でも通って10年は経つが無くて食べれないこともしばしば。サックリと歯切れ良い噛み応えにクド過ぎないが凄い旨味が後から後からやってくる。これ以上のタンは絶対無いと言い切れる逸品。
ロースを大きな塊のブロックからカットし、丁寧に余計な脂や筋を除去。切る前からもう見事な小豆色。これ程素敵で素晴らしい小豆色の肉は滅多にお目にかかれないよ。そしてカットしてから5分も満たない位で鮮やかなルビー色に艶やかな色に変わっていく。『これが生きている肉なのです』と親父さん。落として輸送して3〜5日位のものでないとこう艶やかな色は魅せてくれないという。
空気に触れた冷凍肉を真空パックしたものはドス黒い色になるため、ほとんどの肉は着色されているとも。げに恐ろしきことその1である。しっかり室温に戻して『早く私を焼いてチョーダイ!』と声が掛かりそうな肉の頃合いを見て、焼きに掛かる。肉がしっとりして瑞々しい色艶が出てきた頃が焼き頃。当方が親父さんの繰り出す絶品料理に舌鼓を打つ時間帯もしっかり計算された戻し。焼き具合は必ず聴いてくれるが、親父さん達が丹精込めて育て上げたベッピンさんのことを一番分かっている親父さんに全てお任せしている。ヘッドでニンニクの旨味を抽出した後に肉を焼きはじめ、この時に塩胡椒を施す。特製の醤油を一垂らしして酒でフランベして完成。ベストのタイミングで焼き上がる。周りは焼き固められ、中はキチンと火の通ったレアで芯は温か。フレッシュな肉の風味とサクっと歯に返ってくる心地良き触感が素晴らしい。噛めば噛む程肉の旨味が次々と溢れてくる。サラリとした脂で胃がもたれない。脂身も臭く無く、クドく無く旨味だけが溢れる。添えてある辛子やフライニンニクはあまり使わなくてもよいくらい。180〜200g位焼いてくれたのでタップリと堪能できた。最後は定番の岡崎の八丁味噌『カクキュー』の赤出汁と白いご飯、壬生菜の漬物で〆る。お腹に余裕があるためハンバーグのミニも戴いた。肉の甘味、フォンがしっかりしたソースの甘味が絶品。玉子に絡めてまた甘味が増す。旨味は甘味であると熟思える。
付け合わせにも隙が無い!ローストビーフの添えられた里芋、ステーキの大根は鰹のお出汁でコトコト煮込んだもので最適な味付け具合。人参のグラッセや南瓜の煮物なんか涙ものである。
魚の話も記さねば!
今回もう1つの目玉は『明石の真鯛』。
巷に明石の真鯛がかなり出回っているが本当に明石なのだろうか。そして最適な時期、処置のものなのだろうかと。釣り師を50年以上やって漁師の知り合いも多く、どの料理人よりも魚について熟知されている親父さんから一番美味い時期は11月下旬から1月末までと教えてもらい、今年も戴いた。色艶良い肌の張りもある良い明石が入っていると。見た目を綺麗に仕上げるには背の身なのだが、脂の乗った腹身の方が美味いと超力用に厚めにカットされた真鯛をフライパンで皮目をソテーし、ワインを振り掛け蓋をした後にオーブンで芯に到達するまでじっくり火を通す。蒸し焼き上がった真鯛ちゃんは特製バターソースで供される。真鯛は厚みがあってもしっかり火が通っているが、しっとりと焼き上がって瑞瑞しきことこの上無し!身から溢れる旨味は超上質なイノシン酸で甘味が強い。真鯛はタウリンを豊富に含んでいるため血中コレステロールも低下してくれ、心臓病や糖尿病等成人病予防に効果的。バターソースで戴いても鯛の王者明石のピンで他の真鯛の追随を許さない程の旨さと栄養価である。それにこの鯛は朝揚がったものを夜に提供している点も重要。今は空前絶後の熟成ブームで誰でも彼でも何でもかんでも熟成に走る嫌いがある。親父さんが強く訴えていることは、処理、処置をどう為されたのか!?である。船上で釣り上げた魚はどう処置されたのかと。今回戴いた鯛は船上で釣り上げたら直ぐに脳天から脊髄にかけて神経打ちを施し〆る。次に血抜きを完璧に行い、内臓を全て取り去る。ここまで綺麗に処理できたら氷漬けする。こういった一連の作業を施された明石の真鯛は更に高見に到達し、親父さんの元に届けられ、夜にお客様へ提供される頃には身もフレッシュで死後硬直も解け始め頃合いとなるという。他店で熟成○○日といったものが流行っているが、船上、遅くとも陸揚げされてからどのような処置をされているのかが重要なのである。そうでないと釣り上げ前後で暴れて身が自分の体温で焼けてしまう身焼けを起こす。どんな魚でも40度位に達するそうだ。鮪は体温28度だと初音の仲治親方が語っていが、この処置如何では身焼した物に何をしても美味いもんなど出来ないのである。どれだけ寝かせればアミノ酸が活性化し旨味が増すということは二の次なのである。そこの本質を捉えられなければ、料理人の元に届くまでどのような工程で処置を施され届けられたかを熟知していなければ本当の意味で美味いものとは言えない。
今回もかなり本質的な確信をついた面白いお話を色々と聴かせて戴いた。他にも牛肉業界のさらなる闇、悪い方へ向かっていることを。F1、F2、ET等々凄い話ばかりだ。文が長くなり過ぎるため、記載できる事は機会をみて。
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こちらの店に寄らせてもらってもう11年になろうか。2004年に本当に本物の美味い牛肉を食べさせてもらえる真っ当な商売をされている店を探してここに辿り着いた。
元来私は牛肉に良い思い出は無く、肉屋の前を通ると生臭い牛肉独特の匂いが大嫌い。小さい頃、某百貨店の牛肉屋を通った際にあまりにも不快な臭いだったため吐いてしまった程。特に脂身など臭くてクドくて不快な食感で不味くて大嫌いである。そんな嫌な思い出満載の当方を満足させられる店など有るのだろうか?東京の某有名店の数々で食べた際にも食べてる間の独特の牛の嫌な臭い、サシ、脂身のクドさから食後感悪く、胸焼けも何度もした。ここもダメならスパイスで誤魔化されたハンバーグや赤身でも臭いもない味気無い牛肉を食べていくしかないと覚悟していた。しかし、ここを知ってから、自分の中の牛肉の概念が一変したのだ。
恰幅良く迫力あるご主人の山中康司さんが、一見の自分に対して丁寧に接してくれ、しっかりと確かな説明も頂いたため、このおやじさんに全てをお任せしたことから今日までの山中通いがスタートしたのであった。肉は注文を受けてから大きな枝ブロックからカット。そして丹念に肉の手入れをする。余分な脂身を取り、筋を余す事なく全て除去する。もちろん冷凍などではない本当の生の状態で冷蔵庫にストックされている。このおやじさんの仕事が丁寧なこと、レストラン内からとても良い香りがしてくること。肉や魚等材料の生臭みなど一切無い!これだけでも信頼における人であり店で有ることが良くわかる。蒸したてのジャガバターを平らげた後に提供されたのは、信じられない代物。生の牛刺しが出てきたのだった。しかしこいつは只の牛刺しではない。ヒレの中でもとても希少な部位のヒレミニオンを提供してくれた。『牛刺しならヒレミニオンが一番美味い!』とおやじさん。覚悟を決めて口に放り込んだ。何だこれは!?これが牛肉なのかと思った。生臭さもクドさも気持ち悪い食感も無い。牛特有の匂いはあるが爽やかなのが印象深い。味は甘味が有り、特有の旨味がありクドさは微塵も無かった。またホースラデッシュを添えて特製の醤油につけて食べるととんでもない極上の美味さ!鮪の刺身よりあっさりしていて身の質がしっとりしていてきちんと歯応えもあり牛を食べている実感があった。
その後はおやじさんが繰り出す牛肉料理をお腹一杯頂き、牛肉が大好きになっていたのだ。しかし、この牛肉は一体何なのだ。今まで食べてきた牛肉は何だったのだと疑問が強くなった。おやじさんから驚くべき事実が明らかになった。『スーパーや普通の肉屋では廃用牛ですわ』と。廃用にも色々あって経産牛もおやじさんから言わせれば廃用牛である。産ませ牛はお産出来る限りは飼育し続けるからであり、5頭6頭出産は当たり前なのである。庶民的なものであれば廃用牛のホルスタインや黒毛単体か、ホルスタインと黒毛雄と掛け合わせたもの(F1)がほとんど。他には去勢の雄。雄は雌と比べて肥育が早くあがるため低コストで販売できる。
一番大事なことは牛の力だけで入るサシ(霜降り)だけで、肉の色は鮮やかな小豆色をしている事が重要なのであると。大きな枝ブロックから注文の度にカットし、室温に戻していくと更に鮮やかな小豆色となっていく。江戸前鮨の高級店では鮪の柵から切りつけた身をしばらく室温に戻していく。ネタがどんどん鮮やかな色に変化していき、それは正に美味しさを告げるシグナルのよう。肉も同じで、常温に戻してから調理した方が旨味を逃さず、肉汁も閉じ込められて食感も断然違う。
霜降り肉はピンク色か、下手したら真っ白白である。今の牛肉業界は霜降り第一主義のため、どれだけサシを入れるのかを人工的に手を入れて強制的霜降り肉が出来上がり高値で取引されるためほとんどの業界や牧場農家がこの製法、飼育をとっているのであるという。A欠や♀ホルモン添加が代表的な手法。聞けば聞くほど牛肉業界は毒されていると思う。絶対に必要な条件は未経産牛であること。箱入り娘をありがたく頂くのである。
そんな娘なので驚くほど融点が低く、人の体温で脂が溶けてしまうのである。24度前後らしい。他の牛肉は体温以上の融点のため胃もたれも胸焼けもするわけだ。下手したらずっと体内に残ることになり不健康極まりない!肉質、コク、香り、色艶照り等全てが超越した肉であるため、熟成などせず屠殺後3日程度でお客様の元に供されるのだ。ここは創業時に昔ながらの美味い牛肉が手に入らず困り果てた頃に今取引している◯ル◯さんに出会ってからレストランをやっていく自信がついた。昔ながらの手法、飼育で手塩に掛けて育て上げ、自然に備わった力のみで勝負しているのである。正に今まで私は不自然な物、紛い物等を食べて牛肉を評価していたのだ。本当危うく間違った判断をしてしまうところであった。
本物を食べたことのある人はどれだけいるのだろうか?高額であれば本物が出てくるなど安易な時代はとうに終わっている。特に牛肉はパチものばかり。それはプロ、アマに限らない。魚でも天然物はアッサリしているため、出自を明かさず食べ比べすると驚くべきことに養殖が好みの人が多い。肉、特に牛肉も霜降り至上主義の世の中で今度は赤身が流行りだとマスコミも煽る。食べ物の好みは本当に難しい。食べ手の力量が強く問われる時代なのである。