レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
5回
2019/01訪問 2019/02/21
今回は洋食としての一面も観たいという事で、タルタルソースをどの素材、料理と合わせてくるかという事を楽しみに参上した。
もう一つのお楽しみだったクリームコロッケは、良い渡り蟹が手に入らなかったのでまた次回と相成った。
当方も親父さんの納得のいく食材で全力調理してもらいたいし、味わいたいので今回食べれなかった事は次回の楽しみということで。
ステーキ、洋食屋として、ステーキの牛肉は素材自体が素晴らしい物でほとんど手を掛ける、時間を掛ける必要の無い神素材ではあるが、脂身や筋、筋膜は丁寧に取り除き、的確な温度に戻してから調理する。
ガルニ(付け合せ)もただカットするのではなく味が乗りやすい様に多面的にカットしたり隠し庖丁を入れたり。
茹でるにしてもただお湯で茹でるだけでなく、グラッセにしたり炒め煮にしたり出汁に含ませ煮にしたりと和洋の技を駆使して最高の付け合せを添えてくる。
タルタルソースは本格的な洋食屋へ行ってもイマイチなソースが少なく無いが、くいしんぼーではマヨネーズからして親父さん独自のレシピで店の自家製マヨネーズが極ウマだから、他の調味料やスパイスは強く利かさなくても済むがバランスの良い調味である。
どこぞの茹で卵ばかりが目立ってマヨネーズの味がイマイチわからんという事も無い。
無理せず、今在るもの、許されるもので最大限素材と対峙し、存分に腕を振るって頂くのが最良である。
◉ベイクドポテト
◉タンシチュー
1時間30分しか煮込んでいないという究極の神素材のなせる技と味わい。
トロトロの煮込みとは違った、ムチッとした噛みごたえにタンのコクがジュっと滲み出る綺麗で澄んだ旨味に喜びを覚える。
グラスワインのレベルを超えたボディもタンニンも程良く利いた赤ワインと合わせると、旨味が共鳴する。
◉鮃のブレゼ バターソース
本日のお魚は今が絶好調の鮃。
このイカッた身はソテーにするとどうやっても身が反り返ってしまうのでブレゼでの調理。
鮃の身だけでなく縁側もブレゼしてくれていて添えてくれているところが親父さんの憎いところ。
縁側は鮨でくらいしか戴いた事が無いが、ヒュメ・ド・ポアソンで蒸し焼きされた縁側にクドさや臭味は皆無で只只旨味の宝庫。
身は筋肉質でブリッとしているが、歯はスーッと抵抗なく入り、心地良き押し返しを愉しみ、溢れる旨味を謳歌する。
◉冷製コンソメ
先月のアスピックなあれは一体何だったのであろうと思わせてくれる本物の味。
素材の持てる力の差である。
湧き出てくる澄んで芳醇な旨味に絶妙な塩分濃度。
◉ステーキ ロース
珍しく42ヶ月肥育の淡路島産但馬素牛
稀に食べ込む牛がいるのだとか。
食べなくなった牛はもう落とすしかなく、ペットではないため無理に飼育出来ない。
鉄板で片面7割火を入れて、もう片面は3割程度で焼き上げるのが一番美味い調理法と親父さん。
挿しも良い感じで入っており、旨味十分だがしつこく無いサラリとした口当り。
自然な粘りと照りも極上品ならでは。
◉舌平目のフライ タルタルソース添え
本日の隠れメインディッシュ。
鮮度抜群の最高品質の舌平目はかなり大き目のものをステック状にして高温で一気にカリッと揚げるのがコツだという。
下味も美味しく付いているのでそのままでも十分に美味しい。
未成熟のレモン掛けるとキリリと引き締まって更に美味さが上がる。
しかし当方リクエストのタルタルソースを付けて美味しい逸品なので、ソースと合わせて何ぼのもん。
タルタルソースをたっぷりと付けて戴いてみた。
こ、これは•••
う、ま、い、ぞぉおおおーーー!
タルタルソース単体で戴いてもとても美味しい。
舌平目だけでも十分に美味い。
しかーし!
双方を合わせて食べた時に目を見開いた!
マヨネーズは親父さんのオリジナルレシピで作られた自家製。
そこに茹で卵に玉葱、香草、ケッパー等々秘伝の黄金比率で混ぜ合わせてあり、良く練れたタルタルソースだ。
正に当方の理想に近いお味だ。
それをカリッと揚がった衣にたっぷりと掛けて戴くのだから堪らない。
しかもたっぷりと掛けられても舌平目の衣の中の瑞々しい美味さはちっとも色褪せ無いから不思議。
当方用に作ってくれた小さ目な茶碗くらいは有ろうかというタルタルソースの量に大感激!
だって皆もそうであろう。
洋食屋でタルタルソースが足りなかった時、追加注文は断られる事もある。
最初からドーンとどうだと言って頂いた様で凄い嬉しい。
冗談抜きで、このタルタルソースで飯食えるよ(笑)
◉ハンバーグ ミニ
幸せの美味しさ。
炒め玉葱は入っているがつなぎはゼロ。
しっとりして柔らかくしなやかさがある。
弾力はあるが硬くない。
デミグラスソースも完璧で、ハンバーグからの肉汁をしっかりと受け止め、玉子の黄身のコクも受け止める。
これをご飯と合わせて戴く幸せったら無いよ、ホント。
◉ご飯、赤出汁、香の物
今日は丁度良い炊き加減。
◉デザート
あの苺をふんだんに使ったケーキ。
甘さと酸味とコクのトータルバランスが素晴らしい!
◉コーヒー
「お客さんに出した皿は空にして返して欲しいですもん。」
この一言に親父さんの全てが込められている思いがした。
この一言に我は震えた。
結構な価格帯で提供されているステーキ店でも、山中の親父さん程しっかりと丁寧に脂と筋取りを丹念にされている店を当方は知らない。
ブロックから切り出す店は数あるが、カットしたらそのまんまで後は塩と胡椒を施して焼きに入る料理人が少なくない。
手間暇掛かって面倒臭いのと成形後の見てくれが悪くなることからであろうか。
どんなグルメ番組でも料理番組でもカットしたらせいぜい肉を常温に戻す程度で焼に入る。
当方が店で筋取りをされている料理人を見たのは同じ京都は祇園にあったステーキ左近(2009年閉店)のみ。
当方は脂は兎も角、脂身と赤身の狭間にある硬い皮筋と身筋が一番嫌で脂共々デーンと皿の上に残して退席する。
こんなモノ食えっかぁーー!と言わんばかりに。
しかし初訪からくいしんぼーでは一度たりとも口に障る筋や部位、脂身は一度たりとも無いし感じさせもしない。
これがプロだ!本物の料理人だと思った。
そして年が明ければ15年という長いくいしんぼー通いとなるが、この丁寧な筋取りについてお話したところ、上記のようなお返事があった。
「自分が出されて嫌だと思うものは出したく無い」
何だかもう救われる様な気がしたなぁ。
こういう実直に食材とお客に向き合っている料理人がまだ少なからずも存在する事に、居てくれる事に心から感謝したい。
なので心が共鳴して震えたのと同時に心躍った。
本日の姫君は淡路島産但馬素牛を近江のマルキ牧場で精魂込めて30ヶ月飼育された38ヶ月ものとのこと。
この日は親父さんが少し趣向を変えて提供してくれた。
◉ベイクドポテト
定番。
懐石の如し、空腹の胃にいきなり強い料理を入れない様クッションを作る心配り。
◉ローストビーフ
ローストビーフは噛んで美味しい旨味のジュースがジュワッと溢れ出てくる。
付け合せの蓮根の酢の物が最高の口直し。
◉明石産真鯛のブレゼ
親父さんが珍しく
「今日はホンマ素晴らしく良え鯛が入ってます!」
という程の神魚。
京都の人は魚は熟成とかヘタっているものを好まず、"イカっている"のが好みなのだという。
今朝〆の死後10時間程経っているだろうか丁度イノシン酸が花開く頃合いだ。
ソテーだと身がイカっているので反り返ってしまうので、くいしんぼーではブレゼで仕上げるのだ。
軽くフライパンで焼き色を付けたら親父さん渾身の出汁⇒ヒュメ・ド・ポアソンと白ワインで蒸し煮していく。
熱々の皿に真鯛を置いて仕上げに特製バターソースを回し掛けて完成だ。
もうずっとこのバターソースを味わって来ているが、乳製品、とりわけバターが大好物の超力が他のあらゆる料理屋の中でも一番と確信しているくいしんぼーのバターソースだ。
魚の風味を掻き立て、そして優しく寄り添い、共に喉元へ幸せを運んでくれる。
まるで男女の仲の様に。
真鯛への火入れが独特だ。
中心はレアに近い熱の入れ様で、フィッシュソーススプーンで切れる程。
プリッとした弾力に真鯛の力強き風味が波の様に押し寄せてくる。
美味しい波が単発ではなく、一段、二段、三段と断続的に旨味が湧き出てくる。
フンワリと火の入った食感とほんのりレアのカルパッチョの様な食感とが相俟って愉しい口当り。
◉冷製コンソメ
もうこれこそ同じ処女牛のNBCをたっぷり使ったものでないとこれを超える事は絶対に不可能だね。
素材本来の素直な味わい、即ち健康に人工的な措置を施されていない澄んだお味だ。
◉淡路島産38月ロース ステーキ
噛んで適度な歯応えがあり、噛み締めて美味い!と思える稀有な姫君。
また逢えたね。
時間が経っても最後まで美味しく戴ける。
◉淡路島産38月ロース カツ
「カツ焼きます〜」
カツは揚げるのでは無く、焼くのである。
酸化した油で揚げ続けるフライヤー全否定だ。
デミグラスの奥深く深遠な旨味、不自然さなど無いスッキリとした透明感あるキレ。
肉の火入れはジャストで完璧!
ヘット(牛の脂)で揚げ焼きされたカツは、カリッとした衣で肉の風味が閉じ込められて最高の仕上がりを魅せる。
◉真鯛アラ潮汁
「今日の鯛はホンマ良えんで、アラで潮を作ります」
と当方もこちらでは初めてかもしれぬ程記憶に無い真鯛の潮汁を戴く事に。
アラは熱湯を掛けて素早く冷水に浸して綺麗に掃除する。
鍋に掃除し終えたアラを入れて日本酒を振り入れてからしっかりエキュメ(灰汁と余分な脂取り)せなあかんと。
仕上がった潮汁はクリアーで透明度は高いが真鯛の旨味成分がしっかりと出ており、まるで割烹料理屋か料亭で戴くが如し洗練された澄ましの手法。
和食料理屋顔負けの美味、流石である。
◉苺のケーキ
野田さんの佐賀ほのかを使用されているが、他には松永さんところで2軒しか出荷されていない苺とのこと。
甘さだけでなく酸味とのバランスと歯触りが良い。
◉プリン
洋酒が利いている大人のプリン。
ラムかなとも思ったらキルシュ(サクランボの蒸留酒)を使ったとの事。
◉コーヒー
2017年も一月を切る前に山中の皆さんの顔が見たくなり、12月は久しぶりに夜に訪れて腰を落ち着けて親父さん渾身のお料理を頂戴することに。
今回は今までにお逢いした事が無い程のお姫様とご対面することになるのだが、それは後ほど。
また、無理を申してしまって年末の高騰期なのにご配慮頂き大変恐縮であり、かつ恐悦至極であった。
【この日の献立】
◉ベイクドポテト
定番。
空きっ腹にいきなり重たい物を入れるのではなく、ほっこりポテトで軽く胃を落ち着けてから。
◉かわらのローストビーフ
かわらとはリブロースの上にあり、その前後にあるそうなのだが、前方が柔らかくて美味いとのこと。
今回はその前方をご用意してくださっていた。
以前はこのかわらをタルタルステーキにして提供していたのだが、現在は例の法規制があり提供出来なくなってしまったという。
当方は2004年からお邪魔をしているが、残念ながらこのタルタルは未食であり、只々残念無念である。
◉伊勢海老1
重さは前回同様なのだが、更に身の質、旨味、特に頭の味噌が大変美味で前回を超える素材にお逢い出来た!
これは今まで数少ないが食べて来たなかでもNo.1である事は間違い無い。
他割愛。
(※頼む人は事前に要連絡と、値段は言うまでも無く時価で高騰期にはそれなりの覚悟を持ってご注文されてくだされ。)
◉コンソメ
言わずもがなの名品。
これ以上のものは無い。
◉養父(やぶ)産38ヶ月育成 ロース
今回の姫様は山中さんに通わせてもらってからも記憶に無い、正直初めて観る挿しの入り具合の霜降り肉で驚いた。
これがBC牛なら気持ち悪くて食べられないが、こちらの姫様は言わずと知れたマルキ牧場で人工的、作為的な操作で挿し等入れない自然に近い環境の中、ストレスを姫様に与えない手法で育て上げているので心配ご無用!
よーく眼を凝らしてみて欲しい。
一般的な牛肉は白っぽいピンク色か下手したら真っ白ケッケで蝋燭みたいな色であるが、こちらは挿し以外はしっかりと小豆色を保っているのだ。
これが後の味わいに響いてくる。
親父さんも牛本来の力のみで自然に入った挿しならば、いくら入っても美味いよと太鼓判を押されている。
それ位に普段の育成方法では強く挿しなど入らないのだ。
そんな中たまーにこういった神降りとも言える程の肌理細やかな挿しが入る姫様が稀に御誕生されるのだという。
こちらの店では普段御目にかかる事はほぼ無い希少な姫様との出逢いは正に僥倖と言えよう。
とはいえ、当方的にはこの挿しの入りはかなり躊躇する範疇で、本当に胃の腑にこれを流し込んで胃もたれしないかという一抹の不安は一寸あった。
絶妙な焼き加減で仕上がり、お化粧直しされたお姫様と再びご対面。
見事な焼き上がりで数枚写真を撮らせて頂きさっそく一口。
やはりBCな牛とはチト違う。
何が違うって、肉の食感と風味が全然違う。
あっちは口に入れて「あ~トロけるぅ~♪」だが、こちらは牛本来のコシと粘りがあるのだ。
しっとりとした中でもキチンと噛んで但馬牛としての独特の食感が歯に伝わり、心地良い噛み心地を与えてくれる。
そして挿しからジュワっと溢れ出る綺麗でクドく無い脂の旨味、肉の旨味と相互に混ざり合って口内を愉しませて喉元へ流れ込んでいく。
しかも食後、翌日と胃もたれなど皆無であったことに再度驚く。
トロけて云々で後胃もたれな牛肉は幾度となく食して来ているが、こんな食感に旨味と食後感の霜降り肉は初めてだ。
◉伊勢海老2
前回を超える美味しい個体で味噌が絶品!
またカクキュー(◻︎の中に久)の八丁味噌との相性が抜群で、強い旨味の八丁味噌と合わせて負けないか前回は心配したのだが、そんな事は心配御無用!
風味、甘味が半端無く、残らず綺麗に頂戴した。
◉ご飯 香の物 サラダ
◉デザート
・佐賀ほのか苺のケーキ 林檎のシャーベット ビターチョコレート
・くいしんぼー特製プリン
すべてが親父さん手作りで心のこもったお味。
言うまでも無く絶品だ。
◉コーヒー
今回もカウンター越しに親父さんや女将さんと忌憚ない食のお話を伺え、また情報交換し、大変寛ぎに満ちた安らぎの時間を過ごさせて頂いた。
有難いことに京都にはいくつか行きつけのお店があるが、その中でも突出してこちらでのお食事は開襟して全てを曝け出して寛げる時間を提供して頂け、第二の我が家の様な、そんなホッと落ち着ける当方にとって唯一無二のお店である。
今回のお目当は栄螺さんなのだが、この日は無性にヒレを食べたくなった。
それは先日某店でも美味いヒレを戴いて食べ比べてみたくなった食いしん坊の性(さが)と言うもの。姫様、お赦しくだされぃ!
そういえば、ヒレをメインのステーキで戴くのはここに来てから14年目にして初めてだ。
焼く時間を逆算してベイクドポテトを食べている辺りから大きな一本のヒレの塊から食べる分をカット。
初めは落ち着いた深い小豆色なのだが、段々と時間が経って肉が常温になるにつれ肉の表情が変化してくる。
室温に馴染んで来る過程で発色していき、鮮やかな小豆色となり表情を変えてくる。
さらに経過すると薄っすらと微粒子レベルのシットリとした微汗を掻いたかの如く肉の表面が輝いてくる。
そろそろ焼いてくれ~という肉からの合図だ。
この見極めが肉職人のタイミングでズレれば食べ頃を外し、未到達だと旨味が完璧に開花しない。
毎年それ程来られる訳では無いが、親父さんの仕事振り→焼きに入るタイミング≒肉の囁きの具合で黄金のチャンス(時間)を逃さずに焼きに入り、塩と胡椒は鉄板に肉を置いてから施す姿を具(つぶさ)に観てきた。
肉の囁きの場面に幾度と無くカウンター越しに立会い、拝見させて貰ってきた結果、当方にも肉からの囁きが通っていく毎に少しづつ観聴出来る様になってきた。
そんなモン誰も教えてくれるものでは無いので何となくの感覚だがね。
【今回戴いたメニュー】
◉ベイクドポテト
◉南勢町の栄螺 ブルギニオン仕立
1月下旬から登場の栄螺。
出自は例の伊勢海老の仕入先と同じ船頭から仕入れていると。
口を開けて身を取り出し、肝や砂袋を取り外して身は綺麗に掃除。
無塩バターにニンニク、エシャロット、パセリを刻んだモノを混ぜ合わせ、塩・胡椒で味を整えたブルギニオンバターを、殻に栄螺の身を戻した上に添えてオーブンで火入れする。
プツプツと気泡が立ってニンニクの香ばしき芳香が垂涎物ではないか!
殻から丁寧な仕事を施した栄螺さんを引き摺り出して一噛み。
美ん味ぁ~~い♡
栄螺の磯の香りと質の高いバターに熱が入って活性化した旨味とニンニクとエシャロットの魅惑的な香ばしさ。
5個も食べれば満足出来るでしょとタップリと用意して頂いてよくおわかりで♫
あっという間に平げてしまった。
当方の某友人がこれを食べたら絶対にこう言うであろう。
これ、バケツで食えるわ!
◉ビーフシチュー
以前は頬肉での提供だが、今回は”蛸足”でやってみたところ抜群に美味かったのでと正式に提供。
蛸足(たこあし)とは蛸の足の様な風体から名付けられた部位で、肋の骨と骨との間にある肉のこと。
例えば鮪で言えば中落ちの様なモノ、大仰に言えばロケット、ミサイルの様な形容か。
蛸足の根元部分は塩して焼肉にしたら滅法美味いそうで、先の方は煮込むと抜群に美味なる味わい。
肉の繊維も程よく、滑らかな舌触りでコク深き味。
部位を問わず、こちらの仕入れ肉で煮込めば超短時間で柔らかくなり、味も落ち着くのだ。
ソースも煮て漉して煮て漉してと何日も掛ける必要はなく、フレッシュな物が断然美味いという。
詳細は以前のレビューを御覧くだされ。
◉淡路島真鯛のポアレ
釣った真鯛で白子が小さかったのでまだいけると。
提供は雌で美味しい真鯛のポアレだった。
もちろんヒュメ・ド・ポワソンが決め手のバターソースも別格の美味さ!
◉コンソメ
いつもながら見事な出来栄え!
◉ヒレ
今回の姫は初の逢瀬で但馬家畜市場(せり市)のある"養夫(やぶ) "産の未経産素牛。
それを近江で精魂込めて育て上げた姫を落としてから3日目とのこと。
親父さん曰く、ヒレで食べるには落として3日目が一番美味いと。
今回も不自然な手が入っていない本来の牛の味を安心して味わえた。
リソレされた表面はメイラード反応が最適に起こっており、素敵な焼き色だ。
外側の小気味良い食感に、モチっとしたヒレの何とも言えない心地良き弾力と柔肌の如し肉の滑らかさを併せ持つ素晴らしき素材と施しだ。
しかし抵抗無く歯がスーッと入り、癖など感じさせない綺麗な牛の味を噛み締める。
ヒレには独特の軽い肉の粘りもあり、旨味が舌を覆うが切れが半端無く良いため、旨味の余韻はスッと消えていく。
姫もにこやかに旅立たれたであろう。
◉ガーリックライス
もうこれガーリックライスの範疇を超えとるよ。ビーフピラフだね。
かなり久しぶりに食べたけど、かなりの肉が入った豪華版。
ステーキ用の枝に整形する際に削ぎ落とした肉だが、同じ近江牛の美味しいところなのだ。
米と肉をしっかりと咀嚼して融合させて味わえる。
◉味噌汁(赤出汁)
もう自動で出てくるある意味コンソメとのツートップの美味しさ。
◉香の物
◉苺のケーキ
あまおうとカスタードのバランスの取れた甘味と酸味が交差する美味しさ。
◉コーヒー
◎赤ワイン
【28.11.6追記】
今回の目玉は伊勢海老。
某所で10/28に解禁になったばかりの伊勢海老が食べられるとヒョンなところから情報が入り、即座に訪問。京都へ行く予定もあったので正しく天啓である。
そして今回も素晴らしき素材と邂逅。
当方がお昼の開店前に到着する20分前に旧南勢町(現南伊勢町で以下"南勢町"で記載する)の船頭(漁師)から送られたばかりの伊勢海老。しかも500gという何とも立派な体躯。この大きさに成長するまでどの位の年月がかかっているのだろうか。少なくとも7〜8年は掛かっているのだろう。400gあれば縁起物とされる上物で触角も歩脚も折れておらず、身に張りがあり艶やかで見事な小豆色。牛肉でも伊勢海老でも美味しい物って小豆色をしている事が多いと思わせてくれるねぇ。ギィィシ、ギィィシと言う伊勢海老の鳴き声(?)も勇しく活の良いヤツを早速調理して頂いた。
親父さんから小さなサイズでは料理しても美味しく仕上がらないので大きなサイズとなったとご説明頂いたが全く問題無し。むしろこんなに素晴らしいピンの中のピンを選りすぐって即刻送って頂いた漁師さんと親父さんには感謝の言葉しか出てこない。500gで2人前分だが今回は当方1人で戴いてしまうという何とも贅沢な。バチが当たらないか心配だ。
漁獲量は現在千葉県に1位を譲っているが、伊勢海老が美味しく育つ環境は伊勢志摩が断然トップであると親父さんは仰る。伊勢志摩はリアス式海岸で複雑に入り組んだ地形をしている上、南勢町の熊野灘には黒潮も流れ込むため良質なプランクトンも多く餌も豊富、気候も温暖で伊勢海老が生活するのに最も適した最上の場所なのだ。釣り船(廃業)の船頭から紹介して貰ったという南勢町の伊勢海老の船頭からずっと買い付けてされているとのことで、味も昔から変わっておらずに大したもんだと素材に厳しい親父さんが珍しく褒めている数少ない食材産地の1つだ。
またロブスターとの違いは、ロブスターには足に斑点があるが、伊勢海老には無いのが特徴ということも蛇足だが騙されないように付け加えておく(分類も下目(ザリガニ)からして違う)。伊勢海老と言って実はロブスターだったなんてことも事実あったので。
伊勢海老の尾の身の部分は殻付きのままサッと一寸熱湯に潜らせる。オリーブオイルにニンニクのスライスを少々入れて香りが出てきたところで殻を剥いた身を軽くソテー。最後にコニャックでフランベして香り付けしたら身を適度な大きさに切り、ソースアメリケーヌで提供。
禁漁の間タップリと養分を身に蓄えた伊勢海老の美味いこと美味いこと!!もう美味いと言う言葉しか出て来ないねぇ。色艶良く加熱することによる身肉の活性化と火入れ味付け等熟練の調理技術が織り成す見事な仕上り。伊勢海老しか持っていない独特の風味と至高の甘味。プリっとした筋肉質で歯に跳ね返る身の適度な弾力ある食感は素晴らしい。ソースアメリケーヌは伊勢海老のガラと新鮮な渡り蟹を炒めて、親父さん渾身のヒュメドポアソンで煮詰めて新鮮なトマトを加えてから更に詰めて完成。甲殻類の香ばしい風味と甘露な旨味をトマトの酸味が引き締めてくれており、しつこく無いバランスの取れた旨味タップリのソースである。出来の悪い生臭い苦いしつこいアメリケーヌも数多あるが、選び抜かれた素材と地道に真面目に取り組まれて来た料理人の腕に掛かるとこうも別物のソースが出来上がるのかと感心する。
頭の鬼殻は最後に味噌汁で頂いた。いつも戴いている留椀の更に上のハイグレードバージョンだ。海老味噌も甘味と特有の渋味が渾然一体となって得も言われぬ。こんな見事で美味い伊勢海老料理は東京では食べれないな。当方の為に身を捧げてくれた全ての食材に感謝して、綺麗に頂戴した。
ローストビーフもコンソメも本日の但馬見方郡180gロース(未経産)も大変素晴らしい出来の逸品揃い。今回も言うこと無しの美味さとおもてなしに大満足の昼下がりとなった。
本当にご馳走様でした!!
※なお、伊勢海老は常時用意されているものでは無く10月末から1月下旬頃に漁れたてで鮮度の良いものを直送してもらうため事前の予約が必須となる。かつ値段も相応にかかるため本物の価値をわかり、食べる事に対して四の五の言わない人にお勧めしたい。また正月前は値段が高騰するのでお勧めしないことを申し添えておく。
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【28.7.31追記】
半年ぶりに山中さんへ。
今回の目玉は以前よりずっと聞いてきた夏の美味い魚『あこう』を戴くことだ。事前に親父さんに連絡を入れて、良いあこうが揚がったらまともなあこうを食べたことがないので刺身でもいただけるようお願いしておいた。年に数回だが10年以上京都に訪れたら必ずこちらの店に継続的に来店し、親父さんや女将さんと色々なお話をさせていただいた信頼関係もあって用意していただけた。40年以上の付き合いをしている魚屋と親父さんとの信頼関係も強く、魚には滅法詳しくうるさい(?w)親父さんを納得させる品なので当方も全幅の信頼を寄せている。見えずとも、遠方から来店する当方のために色んな方々が全力で一つの良き物を作り出し、提供しようと一丸となって持てる力を発揮されている事に感動する。
「ええあこうが入っております!」と親父さんの言葉に雀躍した。ええもんが入らないと他の物(例えば今の時期だと鱧)になるからだ。本日のあこうは最上級物として有名な瀬戸内産の800gで、釣って来た漁れ漁れのあこうの活の物を朝締めて当方のため夜に提供する頃に死後硬直が解けて旨味が出てくるタイミングを見計らって提供された。
親父さん曰く20~25年程前までは関西の和食屋で夏の高級魚といったら”あこう(赤魚)=雉子羽太(きじはた)”であったという。旬は夏で羽太の中でも随一の美味さである。関東ではあまり馴染みはないかもしれないが、中華料理で高級魚の蒸し物(清蒸)ですぐに思い浮かぶのが雉子羽太である。夏真っ盛りのこの時期の刺身といえば、京都の高級店から普通の店は大体鱧か真鯛を使っている。特に真鯛など夏の時期は味が落ちているのに明石の真鯛やどこそこのだといって1年中真鯛を出す店もある。正直今時期の真鯛は脂も旨味も抜けて美味くない。夏に真鯛を出すのも養殖物を出す店が多く、真面目にあこうを出すより儲かるからだという。それも和食が世界遺産となってしまってから免罪符になってしまった嫌いがある。お墨付きを得たので救いようがない。
刺身、ブレゼ、アラ汁と戴いたが、旨味は初めから強いものでは無く、徐々にエンジンがかかり始め、噛んでるうちに旨味エキスで口内が占拠されている。まるで舞妓から艶冶な芸妓へと変貌を遂げていくようだ。鮮度の良い最高級のあこうは身の色がやや桃色掛かって頬を赤らめた少女のようだ。他で見たあこうはこんな桃色掛かっておらず白っぽかったなぁ。生の刺身をブラインドで食したらファーストコンタクトで風味と舌触りが似ている真鯛と答えるかもしれない程。刺身のサビは本山葵の極上品で食べてみれば真っ当な鮨屋に頻繁に行かれている経験のある御仁であればすぐに理解できるであろう品質だ。醤油は親父さんの幼少期から食べ慣れた馴染みのある大醤(大阪堺)。旨味とコクが深くてどんな素材の物でも美味しく底上げする力をもっている。削ぎ切りされたあこうの身は組織が潰されておらず滑らかで醤油を付けても過度に留まらないので丁度良い味加減で戴ける。これじゃ高級和食屋も形無しだ。素材力も何もかも。また、身に熱を加えるとこれが全く別の表情を浮かべる。羽太の食感は真鱈のホロホロと身離れの良い物に似ており、亜門までは真鱈と一緒の脊椎動物である。真鱈よりも身はやわらかなのが特徴。
こちらの店で仕入れる魚は生け簀物ではなく漁れ漁れの活魚のためポアレだと生きが良すぎて反り返ってしまうため、ブレゼにしている。あこうの一番美味い真ん中の身をバターを敷いて軽く焼き、白ワインで香り付けしたら鱧の出汁で取ったというヒュメドポアソンを身の半分位になるまで掛けて蓋をしてオーブンで蒸し焼きにする。写真でもおわかりの通り、身が厚くてブリっとしているが身離れが良いのがあこうの特徴。そして加熱することによって真冬の明石の真鯛と互角かそれ以上の旨味と滋味溢れる深き味わいを醸し出す。皮目のゼラチン質が堪らなく美味いのだ。毎回こちらのバターソースが何故に美味しいのかも上記のとおりヒュメドポアソンに秘訣があったことも納得の味だ。鱧も韓国産の物がもてはやされるのは濃厚な脂の乗りということもあるが第一に皮が薄いため、和食で使うには重宝することだという。こちらではブレゼするため皮が薄くなくてもいいのだと。また淡路島のが近いし鮮度、品質、活魚の面から絶対淡路だと言い切るポリシーは素晴らしいし感服する。昨年頂戴した淡路島産鱧のブレゼもどこの料理屋の物より数段格の違いを見せつける美味であったことも記憶に新しい。あこうのアラは最後に当方が大好物なカクキューの八丁味噌汁の出汁として使われていた。この頬から鰓(えら)の部分の味わいと言ったらとんでもない物だ。アラは先に酒で煮て下処理をした後に八丁味噌と合わせているのだが、味噌の強い味に負けること無く旨味が半端無く出ているのである。出汁にも凄い美味しいエキスが交わり得も言われぬ幾重にも旨味の相乗効果が折り重なっているのである。なのでハンバーグは不要で白飯と香の物でフィニッシュ!
付け足しとなってしまうが、本日の生まずの牛肉も『絶好調でっせ!』の素晴らしい物で、見方郡の38ヶ月飼育物。落としてから本日で丸5日で重さは380kg。
見方郡に限らず但馬純血素牛の仔牛をマ○キでは半年間は乾草だけを餌としてのびのびと育成させるのだという。青草だと肉に臭みが出て駄目だと。大体ベコ(素牛仔牛)が売りに出されるのが10ヶ月前後のため飼育は28ヶ月が基本的で合わせて38ヶ月だという。人工的な手を加えず自然飼育で840~850日大事に丁寧に育て上げた一匹の仔牛も産んでいない未経産牛のみを提供している。一大ブランドのA5ランクで有名な某県の○△牛などは飼育18ヶ月(大体500日)のうちに600kg以上に飼育して出荷するのである(やり方は人工的にA欠やらホルモンバランスやらetc)。それも去勢か経産牛。ここ数年ベコの仕入値が格段に上がってきている中でそういった業者は飼育を短縮して13ヶ月にして出荷するというとんでもない業者もあるのだと。味は今更言うことでもないが、本日の見方郡は肉質がサクサクと歯切れ良い食感で、噛めば噛む程に旨味エキスがジュワッと出てくる。同時に親父さんがよく言われている肉の心地良い粘りが口内を滑らかに絡み、スーッと消えていく。時間が経っても変に肉に熱が行き過ぎず、旨味汁が流れ出すことも無い。脂身もさらりしてクドさは皆無。ジャンルとしてこれが本来の日本の和牛の真の姿であり、今では貴重希少な唯一無二の肉になってきてしまっているのが悲しい。もっと皆に識ってもらい、愚直だが真面目に牛を育て、その肉を提供している人々を食を通して応援してもらいたいと切に願う。
最後の付け足しとなってしまうが、デザートのメロンのケーキが半端無く美味かった。ここのデザートも全て親父さんの手作りだ。静岡のメロンを使われているが、親父さんが使われて40年以上経つが味が全く変わらず落ちることなく美味いままなので感服しているとのこと。夕張は売りのプレゼンが上手なだけで本質的な美味さからすると全然静岡の方が美味いという。以前も最高級品を取り寄せて果物屋と一緒に味見したが全然格が違ったと。黄桃はコンポートに、白桃はジェラートで提供されたがそれぞれ美味い。しかも、チョコレートまで手を加えられており、親父さんは大のチョコレート好きなのだがご自分でテンパリングをして最適な口溶けと滑らかさ、カカオの含有量等を調節してクーベルチュールに再構築した一欠片だった。エンローバー(被覆)させたチェリーボンボンと清見オレンジのピール(皮)も味見させて戴き山中ワールドを味わい尽くした。もちろん口溶けと味わいは最高の品であったことは言うまでも無い。
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【27.12.13追記】
長年の取引先であるマ○キの福○さんに山中さん用の子牛(雌)を買い付けてもらったものが先日あがったばかりとのこと。今回戴いたベッピンさんは『但馬豊岡産(純血)の未経産38月育成』とのこと。こちらのは本当に一頭たりとも産まずの処女牛である。2頭までは産んでも未経産といって売り出す悪質な業者もいる。子供を産むと肉質はガラッと変わると親父さんは言う。食べれば分かるがそうもいかないため、その場合は産道を観ればわかるというが、1頭産みは見極めが難しいらしい。わかりにくいので2頭くらいならばということである。処女じゃないじゃん。マルキでは購入した子牛一頭一頭の特性を見極め、其々で育成期間を設けているとのこと。他社はある程度でグループ分けをして決められた期間内で効率的に飼育終了となるという。マルキでは仕入れてから半年間は乾草を食べさせ、仔牛にストレスを与えない自然的な昔ながらの丁寧な飼育をしているため効率的では無く、無理強い無く育てているためせいぜい380kgで400kgも取れれば御の字だという。他所ではどうだろうか?
【今回戴いたメニュー】
◉ローストビーフ(ランジリ、ヒレミニョン)
◉同個体のタン
◉明石産真鯛の蒸焼きバターソース、銀杏
◉冷製コンソメ
◉ロースステーキ(豊岡)、サラダ
◉ハンバーグステーキ(ミニ)
◉ご飯、香の物、赤出汁
◉苺(あまおう)のケーキ、コーヒー
◎赤のグラスワイン
ランジリはサーロインと直結している尻近くの部位。サーロインよりあっさり。ヒレミニョンはヒレでも先端部のごく一部についている部位であまり取れない。頭から腰にかけてあるヒレのなかでも太い部位から中心部がシャトーブリアン、トルヌードとなり、その両先端部となるそうだ。旨味が凝縮しており、ステーキより刺身やロースト、叩きでポテンシャルを発揮する逸品。タンは舌の付け根の中央部の極一部しか取れない柔らかく旨味が凝縮しているところしか使わない。こんなベッピンさんのタンなど長年の付き合いの賜物で親父さんに対するマルキさんの信頼の証である。まぁ今回は一頭丸々親父さんの牛なので手には入るが極限られた数しか提供出来ないため、有る時はかなりラッキーである。当方でも通って10年は経つが無くて食べれないこともしばしば。サックリと歯切れ良い噛み応えにクド過ぎないが凄い旨味が後から後からやってくる。これ以上のタンは絶対無いと言い切れる逸品。
ロースを大きな塊のブロックからカットし、丁寧に余計な脂や筋を除去。切る前からもう見事な小豆色。これ程素敵で素晴らしい小豆色の肉は滅多にお目にかかれないよ。そしてカットしてから5分も満たない位で鮮やかなルビー色に艶やかな色に変わっていく。『これが生きている肉なのです』と親父さん。落として輸送して3〜5日位のものでないとこう艶やかな色は魅せてくれないという。
空気に触れた冷凍肉を真空パックしたものはドス黒い色になるため、ほとんどの肉は着色されているとも。げに恐ろしきことその1である。しっかり室温に戻して『早く私を焼いてチョーダイ!』と声が掛かりそうな肉の頃合いを見て、焼きに掛かる。肉がしっとりして瑞々しい色艶が出てきた頃が焼き頃。当方が親父さんの繰り出す絶品料理に舌鼓を打つ時間帯もしっかり計算された戻し。焼き具合は必ず聴いてくれるが、親父さん達が丹精込めて育て上げたベッピンさんのことを一番分かっている親父さんに全てお任せしている。ヘッドでニンニクの旨味を抽出した後に肉を焼きはじめ、この時に塩胡椒を施す。特製の醤油を一垂らしして酒でフランベして完成。ベストのタイミングで焼き上がる。周りは焼き固められ、中はキチンと火の通ったレアで芯は温か。フレッシュな肉の風味とサクっと歯に返ってくる心地良き触感が素晴らしい。噛めば噛む程肉の旨味が次々と溢れてくる。サラリとした脂で胃がもたれない。脂身も臭く無く、クドく無く旨味だけが溢れる。添えてある辛子やフライニンニクはあまり使わなくてもよいくらい。180〜200g位焼いてくれたのでタップリと堪能できた。最後は定番の岡崎の八丁味噌『カクキュー』の赤出汁と白いご飯、壬生菜の漬物で〆る。お腹に余裕があるためハンバーグのミニも戴いた。肉の甘味、フォンがしっかりしたソースの甘味が絶品。玉子に絡めてまた甘味が増す。旨味は甘味であると熟思える。
付け合わせにも隙が無い!ローストビーフの添えられた里芋、ステーキの大根は鰹のお出汁でコトコト煮込んだもので最適な味付け具合。人参のグラッセや南瓜の煮物なんか涙ものである。
魚の話も記さねば!
今回もう1つの目玉は『明石の真鯛』。
巷に明石の真鯛がかなり出回っているが本当に明石なのだろうか。そして最適な時期、処置のものなのだろうかと。釣り師を50年以上やって漁師の知り合いも多く、どの料理人よりも魚について熟知されている親父さんから一番美味い時期は11月下旬から1月末までと教えてもらい、今年も戴いた。色艶良い肌の張りもある良い明石が入っていると。見た目を綺麗に仕上げるには背の身なのだが、脂の乗った腹身の方が美味いと超力用に厚めにカットされた真鯛をフライパンで皮目をソテーし、ワインを振り掛け蓋をした後にオーブンで芯に到達するまでじっくり火を通す。蒸し焼き上がった真鯛ちゃんは特製バターソースで供される。真鯛は厚みがあってもしっかり火が通っているが、しっとりと焼き上がって瑞瑞しきことこの上無し!身から溢れる旨味は超上質なイノシン酸で甘味が強い。真鯛はタウリンを豊富に含んでいるため血中コレステロールも低下してくれ、心臓病や糖尿病等成人病予防に効果的。バターソースで戴いても鯛の王者明石のピンで他の真鯛の追随を許さない程の旨さと栄養価である。それにこの鯛は朝揚がったものを夜に提供している点も重要。今は空前絶後の熟成ブームで誰でも彼でも何でもかんでも熟成に走る嫌いがある。親父さんが強く訴えていることは、処理、処置をどう為されたのか!?である。船上で釣り上げた魚はどう処置されたのかと。今回戴いた鯛は船上で釣り上げたら直ぐに脳天から脊髄にかけて神経打ちを施し〆る。次に血抜きを完璧に行い、内臓を全て取り去る。ここまで綺麗に処理できたら氷漬けする。こういった一連の作業を施された明石の真鯛は更に高見に到達し、親父さんの元に届けられ、夜にお客様へ提供される頃には身もフレッシュで死後硬直も解け始め頃合いとなるという。他店で熟成○○日といったものが流行っているが、船上、遅くとも陸揚げされてからどのような処置をされているのかが重要なのである。そうでないと釣り上げ前後で暴れて身が自分の体温で焼けてしまう身焼けを起こす。どんな魚でも40度位に達するそうだ。鮪は体温28度だと初音の仲治親方が語っていが、この処置如何では身焼した物に何をしても美味いもんなど出来ないのである。どれだけ寝かせればアミノ酸が活性化し旨味が増すということは二の次なのである。そこの本質を捉えられなければ、料理人の元に届くまでどのような工程で処置を施され届けられたかを熟知していなければ本当の意味で美味いものとは言えない。
今回もかなり本質的な確信をついた面白いお話を色々と聴かせて戴いた。他にも牛肉業界のさらなる闇、悪い方へ向かっていることを。F1、F2、ET等々凄い話ばかりだ。文が長くなり過ぎるため、記載できる事は機会をみて。
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こちらの店に寄らせてもらってもう11年になろうか。2004年に本当に本物の美味い牛肉を食べさせてもらえる真っ当な商売をされている店を探してここに辿り着いた。
元来私は牛肉に良い思い出は無く、肉屋の前を通ると生臭い牛肉独特の匂いが大嫌い。小さい頃、某百貨店の牛肉屋を通った際にあまりにも不快な臭いだったため吐いてしまった程。特に脂身など臭くてクドくて不快な食感で不味くて大嫌いである。そんな嫌な思い出満載の当方を満足させられる店など有るのだろうか?東京の某有名店の数々で食べた際にも食べてる間の独特の牛の嫌な臭い、サシ、脂身のクドさから食後感悪く、胸焼けも何度もした。ここもダメならスパイスで誤魔化されたハンバーグや赤身でも臭いもない味気無い牛肉を食べていくしかないと覚悟していた。しかし、ここを知ってから、自分の中の牛肉の概念が一変したのだ。
恰幅良く迫力あるご主人の山中康司さんが、一見の自分に対して丁寧に接してくれ、しっかりと確かな説明も頂いたため、このおやじさんに全てをお任せしたことから今日までの山中通いがスタートしたのであった。肉は注文を受けてから大きな枝ブロックからカット。そして丹念に肉の手入れをする。余分な脂身を取り、筋を余す事なく全て除去する。もちろん冷凍などではない本当の生の状態で冷蔵庫にストックされている。このおやじさんの仕事が丁寧なこと、レストラン内からとても良い香りがしてくること。肉や魚等材料の生臭みなど一切無い!これだけでも信頼における人であり店で有ることが良くわかる。蒸したてのジャガバターを平らげた後に提供されたのは、信じられない代物。生の牛刺しが出てきたのだった。しかしこいつは只の牛刺しではない。ヒレの中でもとても希少な部位のヒレミニオンを提供してくれた。『牛刺しならヒレミニオンが一番美味い!』とおやじさん。覚悟を決めて口に放り込んだ。何だこれは!?これが牛肉なのかと思った。生臭さもクドさも気持ち悪い食感も無い。牛特有の匂いはあるが爽やかなのが印象深い。味は甘味が有り、特有の旨味がありクドさは微塵も無かった。またホースラデッシュを添えて特製の醤油につけて食べるととんでもない極上の美味さ!鮪の刺身よりあっさりしていて身の質がしっとりしていてきちんと歯応えもあり牛を食べている実感があった。
その後はおやじさんが繰り出す牛肉料理をお腹一杯頂き、牛肉が大好きになっていたのだ。しかし、この牛肉は一体何なのだ。今まで食べてきた牛肉は何だったのだと疑問が強くなった。おやじさんから驚くべき事実が明らかになった。『スーパーや普通の肉屋では廃用牛ですわ』と。廃用にも色々あって経産牛もおやじさんから言わせれば廃用牛である。産ませ牛はお産出来る限りは飼育し続けるからであり、5頭6頭出産は当たり前なのである。庶民的なものであれば廃用牛のホルスタインや黒毛単体か、ホルスタインと黒毛雄と掛け合わせたもの(F1)がほとんど。他には去勢の雄。雄は雌と比べて肥育が早くあがるため低コストで販売できる。
一番大事なことは牛の力だけで入るサシ(霜降り)だけで、肉の色は鮮やかな小豆色をしている事が重要なのであると。大きな枝ブロックから注文の度にカットし、室温に戻していくと更に鮮やかな小豆色となっていく。江戸前鮨の高級店では鮪の柵から切りつけた身をしばらく室温に戻していく。ネタがどんどん鮮やかな色に変化していき、それは正に美味しさを告げるシグナルのよう。肉も同じで、常温に戻してから調理した方が旨味を逃さず、肉汁も閉じ込められて食感も断然違う。
霜降り肉はピンク色か、下手したら真っ白白である。今の牛肉業界は霜降り第一主義のため、どれだけサシを入れるのかを人工的に手を入れて強制的霜降り肉が出来上がり高値で取引されるためほとんどの業界や牧場農家がこの製法、飼育をとっているのであるという。A欠や♀ホルモン添加が代表的な手法。聞けば聞くほど牛肉業界は毒されていると思う。絶対に必要な条件は未経産牛であること。箱入り娘をありがたく頂くのである。
そんな娘なので驚くほど融点が低く、人の体温で脂が溶けてしまうのである。24度前後らしい。他の牛肉は体温以上の融点のため胃もたれも胸焼けもするわけだ。下手したらずっと体内に残ることになり不健康極まりない!肉質、コク、香り、色艶照り等全てが超越した肉であるため、熟成などせず屠殺後3日程度でお客様の元に供されるのだ。ここは創業時に昔ながらの美味い牛肉が手に入らず困り果てた頃に今取引している◯ル◯さんに出会ってからレストランをやっていく自信がついた。昔ながらの手法、飼育で手塩に掛けて育て上げ、自然に備わった力のみで勝負しているのである。正に今まで私は不自然な物、紛い物等を食べて牛肉を評価していたのだ。本当危うく間違った判断をしてしまうところであった。
本物を食べたことのある人はどれだけいるのだろうか?高額であれば本物が出てくるなど安易な時代はとうに終わっている。特に牛肉はパチものばかり。それはプロ、アマに限らない。魚でも天然物はアッサリしているため、出自を明かさず食べ比べすると驚くべきことに養殖が好みの人が多い。肉、特に牛肉も霜降り至上主義の世の中で今度は赤身が流行りだとマスコミも煽る。食べ物の好みは本当に難しい。食べ手の力量が強く問われる時代なのである。
3位
1回
2017/07訪問 2017/07/19
サンライズ出雲から三江線の旅も本日が最終日。
前日の三次での唐麺尽くしの夜を経て、朝に若宮八幡神社へ参拝をした後、三次駅から芸備線で広島へ向かった。
たこつぼは1927年の創業で、現在はえびす商店街の中で出しゃ張らず、しかし瀬戸内海を中心とした広島近郊の精鋭達を用意して鋭意営業されている現在で三代目の名店。
割烹であるが、おでんや牛すじ煮込み等あるようで、どんな層でも柔軟に受け入れる懐の深い料理屋と観た!
たこつぼの名の由来は以前の店は袋小路になっていた事から。
こちらは昼にうかがったのだが、予約の際に夜のお任せをお願いすることが可能であるため色々と相談すると良い。
先に結論を述べるが、ここは理屈抜き、拘り抜きで心に響き、感銘を受けた。
とにかく美味さがド直球、言うなれば広島カープの炎のストッパー津田恒美の豪速球の様。
逃げの変化球は使わず、素材の本質に沿った味付け。しかし三代に渡って幾重にも考え抜かれた調理法の確立。
例えば何の変哲も無い真鯛の切り身かと思ったら、鯛の身は軽く昆布〆され、上に煎り酒をサラッと塗ってあり、添えられた薬味は山葵の葉の漬けた物、茎を叩いたもの、擂った身を合わせた物という大変手間暇掛かった料理であった。
素材に胡坐(あぐら)をかかない、素材を敬い称え、本質的な旨さを引き出すため常に労力を惜しまない姿勢がこの一皿でも垣間見える。
そして、こんなに広島をはじめ瀬戸内、周防の海の状況や魚達のことを三代目主人(以下"大将")から真剣にかつユーモアを交えて分かり易く勉強させてもらって何一つ無駄な事などなかった。
飲食店でこんなに勉強させてもらったのは京は桂の親父さんの処以来だ。
それだけでも広島に来た、たこつぼに来た甲斐があったというもの。
勿論人というのは相性が有るので、静かに料理に向き合って食事をしたい人や、大将や女将さんの人当たりに合わない人、矢継ぎ早に提供される非形式的なサービスが合わない人には全く向かないし評価出来ない店である。
また、上記の通り大将とのやりとりは真実と冗談が入り混じる独特な物なので、お話からの取捨選択と適度な会話術は必要とされるであろう。
当方的には全てのお話が面白くて、楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていった。
ここに集まった素材達の生育状況や環境、漁師や漁法等への熟知、大将の田中泰弘氏の素材のポテンシャルを引き出す大胆かつ丁寧な調理法、今まで出会った事の無いたこつぼオリジナルの料理の数々、うかがえばどの料理にも詳しく教えてくれるなど理由は色々とあるが、そんなこといちいち口に出して言う事が愚かしく些細な事と思える不思議な感じを得る。
一番関心したのは、その土地の美味いもの、即ち郷土広島を中心とした近郊の素材を提供してくれること。
本格志向の店(特に若手)でここ数年のトレンドとして、和食屋でも寿司屋でも産地直送で日本各地の美味いものが東京じゃ無くても集められる時代だ。
決して産直がいけないという事では無いが、そればかりだと現地の特色が無くなる(こちらの鰻は静岡産がメイン)。
下手したら地元の素材など一つも出て来ないで、提供された物は全て県外の物だったなんて笑えない話も実際にあった。
人にもよるが、基本的にはその土地に旅行に来たならば地元、地物の素材を使った料理を食べたいと思わないだろうか。
例えば広島に来て利尻・礼文島の蝦夷馬糞海胆や羽田や対馬の穴子、京野菜や鎌倉野菜、沖縄野菜等を食べたいなど思わない。
何だか飲食の普遍化とでも言おうか、東京化とも言おうか、どこの地方で食べても東京で食べているような妙な錯覚に陥る。
ここではそんな心配は皆無で郷土の素材を巧みな調理法で矢継ぎ早に来る料理をタップリと堪能させていただいた。
しかも東京などに流通させるだけの漁獲量は無い物、広島県内ですら入手困難な希少な物を90年を掛けて様々な人々との繋がりや信頼の上に成り立って一番良いものをたこつぼさんへと言う関係者が多くて素晴らしい珠玉の逸品、名品ばかりなのだ!
また、高いだけのブランド品にこだわらず、自分の舌で探し出したブランドを超えた大将品質の魚介類達とでも言おうか。
もちろん当方達はそんな珠玉の逸品達の怒涛の攻撃に備えるべく、三次の宿で朝は早めに風呂に浸かってじっくりと汗をかき、身体と胃の状態を整え、万全の状態で臨んだ。
大将の腕に掛かった美味いもん達の波状攻撃が凄まじく、初手からヤラレていると、二の手、三の手と更なる強豪達が押し寄せてくるのだ。
これに耐えられなければこちらでの食事は愉しめ無いので昼のお決まり品(鰻や穴子のひつむし等)で実力を見計らってからのがお勧めだ。
以下、この日に戴いた物を記す。
ただし、ここからは当方の完全なる忘備録であり趣味の領域なので文章が長い。
興味のある人、勉強したい人以外はサラリと読み流すかスルーする事をお勧めする。
【日本酒】
◉賀茂鶴 大吟醸 ゴールド
吟醸香は穏やかでサラリとしているが、旨味もキチンと舌奥に届いて飲み手の満足感を得られるであろう銘酒。
強く主張してこないので、あっさりとした先付がつづくたこつぼの前半の料理にぴったりのスターター。
◉賀茂泉 純米大吟醸(杜氏 新谷寿之)
吟醸味が強くてしっかりとしたボディ。
山田錦を100%使用した新酒を加熱殺菌せず瓶詰した生酒だ。
やっさん(泰弘さん)のために、たこつぼの料理に合う酒を作ってやると醸造元がたこつぼの大将の引いてくる魚介類や野菜達、技量を念頭に置き、どの素材、料理法にも耐え得る良き日本酒、しかし出しゃ張り過ぎない特別醸造したもので他では飲めないのだと。
後半の旨味が強くなる料理には強いボディの泉が最適であった。
然るにウチでは鶴と泉の2種で十分なのだという。
【料理】
[先付四種]
◉小烏賊と鯛の子の焚き合せ
初手からヤラれた。
小さな小鉢の中に様々な世界観があり、コンパクトに集約されている。
小烏賊の煮付け具合、甘辛加減が絶妙で仄かに香る青柚子が清涼感を醸し出し、胃を刺激し、食欲を唆る。
鯛の白子、真子、肝と美味い内臓のフルコースを小さな小鉢で味わえることが素晴らしい。
丸十の膨よかな煮上がり、鞘豌豆のシャキっとした歯触りに風味も立っており口直しも兼ねている。
◉小柱と鳥貝の本ニシ(赤ニシ貝)の酢の物
ヌタの様な感じだが、青葱が下に忍ばせてあり、酢味噌の酸味加減が絶妙で貝の旨味を邪魔せず引き立てている。
青葱は広島原産の観音葱というブランドで、辛味と甘味のバランスが非常に優れている物。
刺身の薬味等コースで何度かお目にかかることになるのだが、どの料理にも合うオールラウンダーだ。
広島でお好み焼きがこれだけ繁盛しているのはこの広島の観音葱が凄いからだという。
広島野菜の話も色々と教えてもらったが、長くなるのでまたの機会に述べよう。
◉青肌(青大豆) ≒ずんた
乾燥させた豆を水で戻した物。
合わせ醤油に山葵少々、散らした葱も美味しい。
お酒を召し上がる前に青肌を食べておくと、肝臓がアルコールを分解する酵素を出す手助けをするのだとか。
なのでビアホールで生ビールと枝豆というのは最高の組み合わせなのだとか。
◉長茄子の焼き浸し
関西以西に存在し、広島にもある30cmを超える物もあるというとても長ーい茄子だ。
外は30°を超え湿度も90%超えというこの日にぴったりの肴だ。
浸し地におろし生姜と擂り胡麻を合わせてあり、生姜でサッパリとしつつも胡麻のコクが長茄子を更に美味しくさせている。
しっかりと野菜も美味いのが嬉しい。
◉小鰯の刺身
これは唸った!
初夏に差し掛かる時期の物が美味いと出してくれた魚。
「いわしも八度洗えば鯛の味じゃけん」と先代が仰っていたというが、そんなに洗わなくても十分美味い。
でもイカナゴなどの小魚を食べて育っている環境の真鯛もいるので、言い得て妙なのだ。
関東で言う片口イワシ、シコイワシで当方にとっては馴染み深く大好物。
串に刺した中型の小鰯もあるが、刺身で食べるなら断然小型の物の方が美味いと大将は仰る。
3枚におろして流水で掃除して〆た小鰯はコクのある旨味が凝縮されている。
関東の片口より癖が無いのと、大将の庖丁の入れ方からか身の舌触りが心地良い。
プランクトンが豊富に湧く瀬戸内海の小魚の旨さにぶっ倒れそうだった。
◉栄螺の壷焼き
角が全く無いツルンとした貝殻。
何故他所の栄螺にはある角が無いかというと、潮の流れが優しいことと、餌となる沢山の若布に囲まれているため、角を出して自分の身体が流され無い様抑える必要がない為とのこと。
更に詳しく言うと、糸崎から西は海の底に棚があるというのがポイントだ。
★棚があると若布が生える。
→若布が生えると小海老が湧く。
→小海老が湧くと和布蕪(めかぶ)が太る。
→穏やかな流れの中、若布の林の中で生活しているために激流に流される心配が無い
→栄螺は角が要らない
となるという。
身の甘さが半端では無く美味いことは確かなのだが、更に一番驚いたのが肝の上品な薫りと美味さ。
当方は小さい頃海水浴といえば江ノ島で、江の島産の栄螺の刺身、壷焼きをよく食べていたが、肝は苦味があるのとジャリっとした歯触りに独特の癖のある臭いが大嫌いであまり得意では無かった。
しかしこちらの栄螺は『ルェベルが違うんだよお!ルェベルが!!』と外道様に怒られてしまいそうな程の明確な差が出ていた。
苦味、臭味など鼻や口に障るものは皆無で、ただただ清らかな味わい。
そして何気なくネットリとした粘液にコーティングされているような舌触り。
栄螺、鮑、海胆は草食で、餌も瀬戸内や周防灘のものは、天草、赤とさか、青とさか、海苔など色々な海藻があるが、若布と若布の根っこの”和布蕪(めかぶ)”が一番のご馳走であると言う。
良く肥えた和布蕪を食べていると、身体が苦くならなずに甘くなると大将は言う。
肝が苦くない理由に得心!
何気無く味わっているが、この壷焼きのタレも3種の醤油をブレンドして使っているという拘り。
後程刺身での醤油で更に驚く事に!
◉瀬付きの真鯵
回遊せずに岩国近くの由宇に住み着いている真鰺ですくい網で漁獲しているとのこと。
柔らかいポン酢の酸味が軽く酢で身を締めてあるかの如く鯵への酸味加減が素晴らしい。
鹿児島や島根近辺に居る真鰺の濃厚な脂の乗りとは全く異なり、こちらは脂はアッサリ目だが、身の旨味が濃い。
◉真鯛
ある意味これは驚いた。
こんな時期の鯛など栄養分を子に持っていかれて旨味などカスカスで身もスカスカだと踏んでいた。
事実そんな程度の物を提供して来た店も少なく無い。
しかし、こいつは違った。
旨味の伸び、余韻が素晴らしい。
特に目を引いたのは、皮を剥いだ身の赤身の強い色合いだこと。
この深い小豆のような赤色は淡路の極上品にも勝るとも劣らない魚体ではなかろうか。
そのまんまかと思った身は、上記で説明した通り昆布でチョイ〆状態に煎り酒の旨味がチョイと加えられ、特製山葵の薬味が添えられている。
これらの仕事がこの真鯛を更に上の素材へと進化させている。
これは一体どういう事なのか大将に話をうかがってみた。
これも瀬戸内の物の中では最高峰の物とのこと。
ただし同じ瀬戸内の続いた海でも漁れる場所によっては味が全然違うんだよと。
同時に上の潮流と底の棚の具合で物凄く美味しいお魚が育つんだと仰る。
更に詳しくお話をうかがっていると、この鯛のいきさつが理解できる。
春の桜が咲く頃に玉筋魚(イカナゴ≒コウナゴ)の群れを追って紀伊水道から入って来る鯛が瀬戸内の鯛。
兵庫~岡山県の沖辺りまでは玉筋魚を捕食しつつ、広島の沖に来て糸崎のラインを超えた辺りで玉筋魚から海老に切り替えて身体に赤みを増し、同時に身体に甘味を増していくのだと大将。
本日提供されている正にこの小海老を食べて真鯛も美味しくなっているのだ。
[小皿三種]
◉煽り烏賊の口
とんびとからすのくち
コリコリして烏賊の風味も強く出ている。
◉小海老
芳ばしく旨味が凝縮している。
糸崎から広島に入って来た鯛は、この小海老に餌をシフトさせて身を赤くするのだという。
◉フレッシュな青肌
生の青肌豆を茹でた物。
一般的な枝豆とは一味違う旨味とコクの延びが凄い。
◉やはぎ(すずめ鯛)の焼き煮
広島の初夏の魚で、すずめ鯛のことを”やはぎ”と呼ばれているとのこと。
博多から熊本にかけては”あぶってかも”と言うのだとか。
理由は噛むとカモの味がするだとか、炙ると骨まで食べる事が出来る(噛める)とか諸説あるようだ。
こちらでは焼きを入れた後に酢を利かせた煮汁で煮込んだ物でたこつぼオリジナルとのこと。
あぶってかもの名の通り、頭からガブリといってくださいとの仰せ。
おぉ!
酢の利かせ方が実に巧みで、やはぎの脂の乗った身が殊更美味しく酒も進んでしまう佳肴。
酢の効果なのかやはぎ自体が炙ると骨まで食べられるからか、骨が強く口に障る物では無い(多少は気になる骨もあるが)。
しかもこれ、冷めて食べても酢の煮汁が染み込んで美味いんだ。
大将もこの時期の脂の乗りが無いと、酢を入れてもただ酸っぱいだけで料理にはならないので、此れ位の身質と脂になった時が、たこつぼオリジナルとしてのやはぎの完成品だという。
◉板屋貝(いたやがい)
帆立貝に似た食感に味わい。
言うなれば瀬戸内の帆立。
可食部はほぼ貝柱で、小粒でも柔らかくて甘味があり、味が凝縮していて美味いのだ。
貝殻は片面が平らな面で、片面が膨らんでいるという。
貝殻節とは板屋貝のことだよと大将談。
大昔に日本海で板屋貝が大発生した時、昼夜を問わず、漁をする漁師の労働歌だったのだと。
かなりキツい重労働でその辛さを紛らわすために唄われた歌だったのだ。
◉広島牡蠣
広島牡蠣としては最高峰ものだと大将も胸を張る。
牡蠣殻のゴツい様相、プックラと身が大きく厚みもある体躯から岩牡蠣かと思ったが、違うという。
微塵切りにしたネギとおつゆと一緒に召し上がると美味いですよと。
火入れ具合が超絶的で、加熱して活性化した旨味と生のフレッシュさの両面を兼ね備えた物で、中の柱の太いこと太いこと!
身も深淵なる濃厚なコクと爽やかな磯の風味のバランスが超絶的で言葉が出ない。
酢、たこつぼの醤油に胡麻油と葱とさっぱりとした酸味の味付けが牡蠣の持ち味を存分に発揮している。
こんなに美味しい広島牡蠣を戴いたのはもちろん初めてだ。
いや、厚岸や陸前高田、唐桑と色々な土地や店で食べてきた牡蠣全般を総じても一番美味いのではと思わせる逸品。
出荷までの育成3年間の間に4ヶ所も筏を浮かべている場所をローテーションさせている手の込みようだ。
ローテーションの具合で味が全然変わってくるのだとか。
最後の一年を呉の沖の情島(倉橋島東斜め横)の北陰にもってくる筏がここ10年程前から一番美味い最高の牡蠣だという。
基本的にはGWには毎年終わるのだが、産卵を抑制して今日提供することが出来たと。
また、この時期に牡蠣を提供しているのはたこつぼだけ。
広島出身の友人からは、この時期に牡蠣などあり得ないでしょ~と窘(たしな)められてしまったのだが、こういう面白い素材達との出逢いというのもまた面白い。
しかもいつもあるとは限らないため毎回この時期にこの絶頂的な牡蠣が食べれるとは限らない。
ただ己の食運と、食と牡蠣の神のみぞ知る物ということを心得ておかなければならない。
◉ひらそ(平政)のカマの塩焼き
和歌山県の備長炭で焼き上げたその身は皮はパリッパリで香ばしさと活性化した皮下の旨味成分が厚い身に浸透していき、身はホッコリと瑞々しくも柔らかく仕上がっている。
【刺身】
ここで本山葵を添えて戴く刺身が登場。
刺身醤油は茨城、兵庫、広島、山口の4種の醤油を独自ブレンドでの提供。
じいさんの時代からやってきているというたこつぼオリジナルの刺身醤油だ。
これが相当に美味くて、"塩より醤油派"の超力としてはかなり嬉しいプレゼン。
ここ数年の傾向として塩で食べるのが最高だという風潮があるが、まぁ悪くは無いが当方は昔も今も断然醤油だ。
なのでここの店は良くおわかりで殊更嬉しい。
そして何よりも刺身の旨さを引き立てるのが本山葵。
安曇野まるち農園望月さんの本山葵は日本一甘いサビだと。
箸でサビを持ち上げると山芋を混ぜているかのようなネットリさと口の中でもネットリ。
そして辛味も利くが、甘さを携えているので嫌味でエグく尖った辛味では無い。
素材の本質を引き立ててくれる最高のサビだ。
◉海胆
赤海胆は周防大島(屋代島)山口県伊保田産。
日本一の海胆ですと更に胸を張る。
暖流に住む赤海胆がハイクオリティで、明礬や海水を使わずとも水分取らなくても身がしっかりしているのだ。
初手から凝縮させた旨味が口内で弾け、心に強く訴えかけてくる。
濃厚だがしつこく無い旨味。
凄い素潜りのベテラン名人が漁っているのだとか。
◉ナガニシ貝(赤西貝)
別名”夜鳴き貝”といわれる巻貝。
貝の蓋が擦れる音が鳴き声に似ているから。
よーく耳を澄まして聴いていると「してしておかわりおかわり」と鳴くとか鳴かぬとか(笑)。
見た目が栄螺と似ているので勘違いされている人が多いという。
鮑、栄螺、海胆は草食で海藻を食べて生きているが、ニシ貝、バイ貝の種類は肉食。
浅蜊や牡蠣などの二枚貝やプランクトンを食べて生きている。
身体の構造、肉質、性格、性質、真逆なのだと面白いことを教わった。
しかし新鮮で生きていたナガニシ貝のお味は思っていたより癖がなく、スッキリとした旨味に溢れた貝。
それに高タンパク低脂肪でビタミンB12(赤血球の形成に関与し、悪性貧血を防ぎ、神経細胞の核酸やたんぱく質を合成、修復する)の含有量が凄いのだと。
◉真鯛、鰈身と縁側
初夏に差し掛かる新緑の芽吹きの時期は「青葉鯛 さらねぶり 青葉鰈 さらねぶり」と称されるという。
さらねぶりとは、最後の最後まで食べ尽くしてしまいたいと思わせるほどの美味という意味。
皿をねぶる(舐める)ということ。
刺身では〆無く素のままで提供。
◉ひらそ(平政)
◉真鯵
◉茹蝦蛄(雄)と生子持ち蝦蛄(雌)
茹蝦蛄はツメで、生蝦蛄はたこつぼ特性醤油で戴く。
ここでの白眉は生の子持ち蝦蛄。
こんなの食べたことが無い!
とっても甘くて身が嫌みの無いネットリとして旨味が舌に艶めかしく絡みつく。
いつまでもこの旨味の余韻を愉しんでいたいと思わせる。
この甘味を奔流(ほんりゅう)と形容付けていた人も♪
そこで泉を食いっとやると堪らない。
甘海老の10倍は美味いんだと大将。
ポイントは妊娠7~8ヶ月までの良い奴を厳選することだという。
臨月のヤツは身の方がお留守になってしまって美味しくないと。
◉鮑
殻から取り出した身は冷水で洗って提供。
貝は二枚貝でも巻き貝でも死ぬと同時にすぐ傷む。
刺身で食べる限りでは動くぐらい生きていないと腸も肝も食べられないと大将。
肝と紐が切り身の上に添えられ、臭味とは無縁の肝がネットリとした食感を生み出しコクを与える。
最高級な和布蕪を食べている鮑の肝は房総の鮑の肝とはまた別物の美味しさ。
柔らかい磯の風味に甘味の強さが特色。
身と紐の、コリっとした食感と風味のコントラストが面白い。
最後に麻酔無しで抜歯した(笑)口も後程かるく焼いての提供してくれた。
軟骨のような触感と紐のような旨味が混ざり合ったようなお味だ。
◉真鯛の白子 尾札部真昆布敷
超白眉!
真鯛の白子とは思えない巨大な塊は虎河豚の最高級の白子かと間違えた程。
こんなオバケ白子が育つ程真鯛の生育状況が素晴らしい環境の元にあることがうかがえる。
白子は醤油と割り下と酒を振りかけながら焼いているとのこと。
ここまで凄い白子は青葉鯛さらねぶりの時期だけだって。
ここからは身が痩せて麦藁鯛になってしまうから。
尾札部昆布は出汁が濃くて幅が広くて薄いので白子の余計な水分を抜くと同時に旨味も底上げするのに最適だと。
先に鯛白子だけを食べて最後に尾札部昆布を食べてくださいと案内どおりに戴く。
何だこの途轍もない旨味は!
今まで食べてきた真鯛の白子、いや、河豚や真鱈の白子を含めても抜きん出た美味だ。
下に敷かれた尾札部真昆布がまた最高の旨味をアシストしている。
その昆布も最後に美味しく戴ける。
何故こんなに真鯛の白子が美味いのか大将にたずねてみた。
白子の最高峰は鯛と一点の曇りも無く仰る。
本当の白子の旨さは
鯛>鰆>河豚>鱈
の順らしい。
鯛と鰆は白子の取れる量が少ないので市場に出回らないという希少部位。
大将の言に嘘は無く、大きさも今まで以上で厚みもあり張りもある。
芳醇かつ膨(ふく)よかな旨味が非常に強く鯛の風味も秀逸。
更にクドすぎない綺麗な旨味を白子に移す真昆布の力も凄いなぁ。
◉小鰭
身の脂は穏やかだが酢の〆加減が程良く美味しい身の味わいを一層深めていた。
◉ひらそ(平政)のチョイ〆チョイ炙り、あかそ(間八)の皮の炙り
身には生姜の天酢漬けが噛ませてあり、一仕事も二仕事も工程を経ているのだ。
一見単純そうでかなり奥が深い。
もう美味く無いわけ無いでしょーwww
◉穴子のひつむし、浅蜊の赤出汁、香の物
正に梅雨穴子の面目躍如の旨さだ!
広島でも穴子の名産地で羽田や金沢八景の穴子、九州は対馬の穴子、そして広島の穴子が日本でもメジャーな産地だ。
以前宮島のうえので戴いたあなごめしも良かったが、たこつぼの方が数倍美味!
うかがったところ、豊島の穴子を好んで使っているとのこと。
穴子から滲み出る旨味の洪水、質の良い脂、ご飯の炊き加減も弾力を感じつつ噛めば甘味が出て来て穴子の旨さをしっかりと受け止める女房役だ。
米がしっかり美味いから穴子の美味しさもしっかりと映えるのだ。
刻み海苔は地元広島で製造されたもので、たっぷりと敷き詰められている。
穴子とクドく無いサラリとしたタレ、刻み海苔の複合的な旨味をご飯が受け止めて相乗効果を発揮するのだ。
また赤出汁が凄く美味い。
八丁味噌にふんわりと山椒を利かせた出汁が何とも言えない美味。
浅蜊も貝殻めんめんに身が詰まっていて、加熱しても全然縮まない凄い素材だ。
噛めば浅蜊から滲み出るコハク酸の味の濃い旨味がしっかりと残っている。
もちろん汁にも旨味は溶け込んでいて極上の赤出汁と化している。
香の物も大好物の糠漬けで胡瓜と瓜。
正直な話、ひつむしが美味しかったので口直しが必要無かったので食べ残していた。
それを甘味の黄な粉もちの口直しで食べたところ、美味いこと美味いこと!
鈍ら(なまくら)な浅漬けではなくしっかりとした漬かり具合でどこまで当方を喜ばせれば気が済むのか!!(笑)
◉黄な粉もち
上万糧食製粉所の青大豆を原料に作られている物でないとこの膨よかな旨味と青い黄な粉にはならないのだそうだ。
これも6~7割程度実ったら収穫するのがポイントでこの見極めが全ての味が決まると。
収穫したものを乾燥させて炒った物を粉にすると、こんなに青々とした爽やかな風味を醸し出す。
100%のパンパンに太ったところで収穫すると甘味が薄くて美味しくないし香りも弱いという。
残った黄な粉はスプーンですくって食べるという、これも一種のさらねぶりじゃけん。
何よりも餅自体が美味い!
搗き立ての様な餅米の風味、歯に押し返す弾力とツルリとした滑らかさを併せ持つ。
これは杵搗き餅に間違い無いと大将にうかがってみた。
島根県は奥出雲の頓原(とんばら)の餅で、農協と契約して搗いてもらっている杵搗き餅で、島根県でも有数な良室米産地の「飯南町」で収穫された餅米とのこと。
たこつぼは広島に来たら絶対外せない店になった。
最後にお囃子が聴こえてきたすぐ近くの胡子神社でお参りし、飲み過ぎな我を反省しつつ帰路についた。
4位
2回
2017/12訪問 2018/01/06
今2017年も終わりに近づいている。
この日はラスト末廣家でいつも通りの超力メニューで舌鼓を打ちまくる。
思えば2013年の夏に鮮烈オープンしてから初めのうちは様子見であったが、2014年からはほぼ毎週通っていると言っても過言では無い。
オープン3日間はラーメン一杯300円だった事も覚えている。
残念ながらそのオープン記念ラーメンは都合が合わずに戴いてはいないのだが、その後には初訪してデフォルトのラーメンとライス、海苔増しで味わっている。
ここのスープは通えば通うほどに本質が観えて来る。
ここまで4年半経っているが、一度もスープの旨味、キレが悪いなどと思ったことが一度も無い、ラーメン界では奇跡と言えよう。
味が落ちる店は沢山観てきたが、ここは創業時より旨味とキレが増しているのだ。
直系のスープは醤油を利かせたタレで塩分濃度が濃い目だが、末廣家のスープは決して塩分等の調味料に頼らずとも力強い旨味を発揮している。
味わいブレずに安定している上で、更に上を目指している末廣大将の熱い想いを機会がある毎に伺ってきた。
その一面を少し紹介しておこう。
創業時と比べて豚や鶏等大きく材料は変えていないとのことだが、スープに豚ガラや鶏ガラを投入する際の温度、スープを焚く温度等を色々と試行錯誤しながら細目にチェックし、現在に至っている。
家系のスープはどこも継ぎ足しで作っているが、休業日の日、特に正月休みや夏休み等の長い休みの日が最も苦労されているという。
スープの味は火が付いている間は料理人の腕次第だが、一度火を落してからは湿気や寒さ暑さ等気温によってスープが急激に劣化していく。
スープと脂が分離してしまうのだと。
脂にスープの旨味が取られてしまうため、攪拌して混ぜ込んだのだがスープに旨味が溶け込むことはもう無かったとのこと。
常に火を入れて面倒みてあげないと、そのスープがそっぽを向いて使い物にならなくなってしまうというのだ。
まるで駄々を捏ねる子供の様だ。
大きく変えていないという材料も、例えば九州の赤鶏の良い丸ガラを購入して焚いて凄く良い味を出す事で少し変化を加えたりしている。
スープの話ばかりしているとまた長文になってしまうので、また折をみて紹介していこう。
鶏脂(チーユ)も創業当時からは丼に合わすやり方を変えている。
今までの六角家をはじめとした家系で観てきたものは、スープと同じ寸胴(2本目)に鶏皮を大量に投入してグラグラ焚いて皮からチーユを抽出している光景だ。
しかし末廣家ではいつの間にかIHクッキングヒーターの上にチーユを入れた金属のタッパ鍋に入れて一定の温度でスタンバイしている。
観察しているとニンニクを皮付きのままチーユの中に投入している。
鶏脂は質が安定しないことが課題とのことで、旨味を大きくブレさせない為の工夫の1つだ。
また全てでは無いが、九州の赤鶏から鶏油を取り、コクが増幅しつつも透明感溢れるサラリとした力漲る風味だ。
創業当時は630円であったが、材料高騰でどうしてもと値上げせざるを得ない状況となった際でもたった10円、640円となり20円と小幅な上げ幅でなるべく客に負担を掛けないで美味しいラーメンを食べてもらいたいとする大将の心意気が凄くわかるし嬉しい(現在660円)。
使われている材料の質と技術のクオリティ、盛りを考えてもこの値段では他店では無理であろう。
先に述べた通り素材力も上がっており、ボリュームも以前より増して来ているので全く妥当な価格であり、逆に心配してしまう程だ。
とまぁ、2013年の創業当時から現在の2017年末までの店の軌跡を辿ってみた。
その中でも今年はあるトッピングにハマってしまい、今ではデフォルト注文をしている鉄板が万能ネギだ。
それもメガで。
普通の量の万能ネギでさえ、他店に行けばネギバカクラスの盛りである。
普通サイズの100円に80円をプラスするだけで、普通の倍の量が丼に配置される。
それは正にてんこ盛りだ。
2013年から全てのトッピングを試したが、末廣家渾身のスープに非常に馴染み易くて美味しくなるのは万能ネギだと確信した。
長葱よりも万能ネギは繊維が柔らかくもシャキッとした歯触りは心地良く、歯切れが良いので万能ネギの旨味が出やすくスープにエキスが溶け合い円やかさの中にもパンチを出す。
よく噛んでいるとニンニクの様な風味が発生してくるので、家系直系の名物薬味の生行者ニンニクや生姜を投入して味変をしなくても十分力を発揮して美味しさ極まる。
もちろんキャベツ(生)も忘れてはならない鉄板トッピングだ。
デフォルトのほうれん草だって、他店の家系店とは盛りが違うし質も違う。
スープが冷めぬ様小ロットづつ適度な温度の湯を掛けて温度を戻して盛り付ける細やかな配慮も味につながっている。
細かい事だが、ネギの切り方も当初の輪切りから小口切りに切り替えている。
スープとの馴染みが良く、ネギの風味も生かされるからだという。
野菜は全て国産の生を仕入れていることを付け加えておこう。
他店はほとんど中国産、下手したら冷凍物もある様だ。
丼も常温でただ積まれてある物をつかっていた初期から現在では事前に湯煎にかけておき丼を温めている。
ラーメン作成時に湯煎から出してタレ、スープを投入してあまり時間を掛けぬようになっている。
こうした変化の積み重ねが、修行店、将又有名ラーメン屋を超えていくのだ。
客も馬鹿では無いからよく観ているよ。
来年もこの万能ネギとキャベツのトッピングは鉄板で愉しませてもらおう。
末廣大将と末廣家のラーメンの成長はまだまだ伸び代があり、更なる高みを目指されていると期待したい。
今後とも末廣家から目が離せない!!
【28.12.30追記】
今年の総決算として本年最後の末廣家へ。
この日は師匠店『吉村家』との食べ比べで後攻でこちらへ。
腹ごなしに丁度良いので、吉村家から末廣家まで歩いて行ったが、50分かからず到着。
ほぼ毎週通い続けて末廣家の味をしっかりと舌にインプットされての食べ比べであったが、完全に末廣家の圧勝であった。
本日はラーメンにキャベツ(生)といつもの布陣(無いのはライスと海苔増しくらいw)。
やはりここは落ち着けるねぇ。もうここは当方のホームだ(笑)
店員は適度な緊張感と和みの会話はあるが、疲れたとか腑抜けた言い草は無し。そんなこと言っていたら大将の雷が落ちるであろうw
直系の流れを汲むラーメンだから麺相はほぼ同じなのだが、同一日に双方味わった当方が観た所ではこちらはスープの色が鮮やか。
あちらは普通の薄茶色でこちらはやや桃色掛った茶色とでも言おうか。
師匠店と弟子店の違いを簡単に言えば、スープの奥行き。
こちらは基軸のスープの乳化具合も良く、タレ、チーユ(鶏脂)との一体感、バランス感覚が素晴らしい。
良い豚肉の甘味のある香りが鼻をくすぐり、口に入れると細かい旨味の微粒子がパーンと咲き乱れるが如し。
その後の旨味の余韻も心地良く続く。師匠店のスープはこちらよりも円やかさを欠いており、そのため醤油の利きがよく目立ってしまうのであろう。旨味の余韻も浅かった。
そして連食のため後攻は不利なのに、こちらの麺がとても美味しく感じたのだ。
同じ酒井製麺のはずなのに、モチモチした食感に噛むと小麦の風味がフワリとしてきて。
何故だろう?と当方なりに考えたのだが、スープと麺との兼ね合いであると睨んでいる。
スープの出来、美味さ次第で麺を生かすことにも殺すことにも成るのだと改めて認識した。
以前大将に開業時と3年経った現在とでスープを取るのに変わったことは何かあるかお聴きしたことがあるが、基本的には同じだと言うことの後に、豚で言えば部位の割合を変えてスープを取っていますとのこと。
一番大事なのはスープを冷凍にした物は使えるかもしれないが、大将の考えている豚の甘い香りのする極上のスープとは別物になるため休日も大将1人出勤してスープの面倒を見ていることだ。
そして今年になってからの変化としては、1日でもスープの面倒が見れない場合には潔くスープを廃棄して、新しいスープを焚くのだと。
このフレッシュのスープが実に美味かったと。継ぎ足しでスープを焚いて取っていくが、火を入れて面倒見てあげないとすぐスープは自分が思っている様な味わいから遠ざかるのだと仰る。また、投入する生ガラはある温度で保冷した物でないとスープにばらつきが出て美味しく仕上がらないと言う。
師匠店を退店し、自分の城を持ち、直系家訓の”味は技なり”を守って研究に研究を重ねて3年経っても味がガタ落ちせず、緩やかだが上昇傾向に旨味を持って行っている稀有な店。
具材も以前にも増して美味しくなっている。野菜は国産のものにこだわられており、味の落ちる輸入物、冷凍物は一切使用しない。
なのでキャベツでも葱でも野菜本来の旨味が濃くて甘いのだ。本日は無農薬の鮮度の良いカイワレが手に入ったのでと試食させて戴いたのだが、これがキッチリとピリっと辛くて風味が素晴らしかった。コクのあるスープの余韻をエッジの利いたカイワレの辛味で口内がサッパリとし、リスタートさせてくれる優れものではないか。季節にもよるが、生で食べてもキャベツの甘味がこちらのスープと非常に合う。
これほど家系で野菜にこだわりを持って取り組んでいる店を当方は知らない。
ただ一点不満な点もある。
それはご飯の炊き上がりにムラが有り過ぎ、下手なときは米が柔らか過ぎていることだ。
ラーメン、スープと合わせて一緒に食べるのだから、炊き加減はやや硬めの方が良いと思う。
2度程経験したが、特にメッコの様なご飯だった時は流石に閉口した。スープご飯にしたらグチャグチャのネトネトになってしまう。
こんな出来損ないのご飯でチャーシュー丼をやってもらっても美味しく無い。それから当方はチャーシュー丼を食べていない。
当方の友人からもラーメンは良いがご飯がウィークポイントだねと言われているのも仕方が無い。その通りだから言い返せなかったし。
客も多いので中々大将に伝えることが出来ていないのだが、これはご飯メニューを出されている中で致命傷と心得てもらいたい。
米がスープを吸っても美味しく食べれる様に今後適切な炊き上がりを期待したい!(大将、頼みましたよ!)
とプロでも無い当方がこれだけ語らせていただくのも生意気ではあるが、ほぼ週1、少なくても月2〜3回は末廣さんのラーメンを食べて当方なりに辿り着いた3年間の総決算でもある。
このまま味を落とさぬ様、現状の味に満足せず、且つ大きく外すことはせずに精進をお続けいただきたい。
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【28.3.28追記】ガッツリ祭り‼︎
たま~に開催する『ガッツリ祭り‼︎』。今日は何故か照ノ富士が後ろで「ライス、大盛ね!ライス、大盛ね!」とずっと囁いていたw
ここはライス単品140円だが、大盛は無料なのだ。大将が心尽しとばかりにてんこ盛りに盛ってくれた。頼めば盛れる範囲でもっと盛ってもらえるかもしれないが、これでもこれ以上盛ったら崩れてしまうレベル。照ノ富士さんも満足そうな顔をしていらっしゃる。若い頃はこれに軽く麺中盛にしていたが、今は普通盛で十分。
御飯に一番合うラーメンは、当方は家系ラーメンだと確信している。その中でもここ末廣家のラーメンは日本一飯に良く合うのだ。日本一ということは世界一ということである。その根拠を説明しよう!下記①〜⑤の食べ方でここのが一番美味いし飯に合うからである。
①たっぷりスープを持ち上げた麺をライスにバウンドさせ、麺を啜り、間髪入れず飯を喰らう!
②スープに海苔を浸し、ライスにその海苔を巻いて喰らう!
③①と②の往復
④スープカレーの様にレンゲにライスを乗せて、スープに浸して喰らう。
⑤ライスのみ喰らう。そしてスープを啜る
⑥終盤に近づいたらライスにスープをぶっ掛け、残った海苔も乗せてスープ茶漬けにして喰らう!
と、こういった超力バリエーションを駆使して食べると在り来たりなラーメンと御飯が更に美味しく、楽しく食べれるではないか。当方も日本全国色々なラーメンと御飯を食べ歩いたが、御飯を美味しく食べる一翼を担うべきラーメンとしてここのが一番美味いなぁ。しかしあくまでも今のところである。この味の水準をしっかりと保ってこれからも精進していって頂きたいと切に願う。
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【28.2.24追記】
ほぼ注文するものはラーメン(たまに中盛や大盛)、キャベツ(生)、海苔、通常ラーメンの際のライスとなっている。今回味玉は特大サイズのものがあると言うので、通ってから初めて味玉を注文してみた。大きさは確かにデカイ!味付けはアッサリ目。黄身がかなりトロンとした生タイプで白身の周りの部分だけが固まっている仕様。あまり好みの味付けではないが、まぁ偶には良いだろう。
ラーメンの味は相変わらず美味いし安定している。開店して3年目だが、ここまで味のブレが無く一定のレベルを保って客に提供していること自体、今のラーメン業界でも珍しいものなのかもしれない。
ヤバい!末廣家ヤバい!w
【27.7.13追記】
本日はチャーシュー麺海苔多目とキャベツ(生)。今日は大将自ら麺場担当。久々である。
茹で上げのタイミング、動きはキレがある。
固めをオーダー。先にキャベツが来たが、当方いつも先にツマんでラーメンを待つことを観ていた大将が、『今のタレ掛かっているのか?』と店員に指摘。無かったので自ら当方に『タレはお掛けした方が宜しいのですよね』と丁寧な受け応え。どちらでも良かったが、いつもの提供をキチンと観て覚えていてくれていた大将に感謝しつつお願いした。鶏油とスープの投入の間の僅かな時間のやりとりだが、気遣いがとても嬉しい。中々どうして出来ないことである。久々の大将作のラーメンは麺茹でが完璧で麺の硬さが素晴らし過ぎる。
芯を残さず噛み応え十分に仕上げてある。硬めだと麺の風味も良く感じ取れて好きだなぁ。スープもシッカリと出汁が取れており旨味が抜群。チャーシューは言うこと無しに美味。精魂込めて作られている珠玉の一杯であった。
それにしても先日の六角家とこちらを比較して、こちらは豚骨を大量にグラグラ煮上げているが、不快な臭みは全くといってよい程感じなかった。
意識しなければかなり臭い系にナイーブな人でも特に問題無いと思われる。それだけしっかりと仕事後に掃除が徹底的になされていることがよくわかる。こういったガラ系を煮込む店が掃除を怠るとスグに臭い匂いが染み込んでいくから。
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【27.7.9追記】
喰い直しじゃ~!いやな気持ちを払拭するために喰い直しじゃ~!
六角家で悲しい思いをした翌日即訪問。ラーメン白髪ネギトッピングと窯焼きチャーシューめし。久しぶりなのでデフォルトで。チャーシューが香ばしくしっとりと焼き上がっていて堪らない。角切りになったチャーシューがゴロゴロと散りばめられて。マヨと輪切りのネギとチャーシューが良く合うんだなぁこれが。ラーメンも昨日の魂の抜けたようなスープとは打って変わり魂魄がしっかりと感じとれるwコク、キレ有りで安定しているホッとする味わい。家系でもこれだけ味の開きがあるものかと。麺も酒井製麺なのに違うのかな?同じ硬め注文なのにくぐらせるスープでこれ程までに食感と味わいが違うのかとつくづく思う。
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【27.6.30追記】
しばらくは、通った際に食した品のバリエーションを写真付きで掲載していこうと思う。
本日はラーメン固め海苔多め。キャベツ(生)とニラ辛子を別皿でトッピング。ここのラーメンには猛烈にキャベツと合う!それも生が良い。ニラ辛子は動物系スープの口直し効果が有り、ピリッと口中を引き締める。
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ここ白楽六角橋は、家系の雄『六角家』発祥の地であり営業中である。その横に堂々と同じ家系ラーメンの『とらきち家』が起業し、六角家を呑み込む勢いで客の胃袋を掴んでいる。両店より六角橋商店街寄りのここ『末廣家』は、家系ラーメン総本山の吉村家直系スタイル。吉村家が横浜に移ってきてから月1で食べていたが、こちらが出来てからは末廣家に通うようになった。多い時で週1、少なくても月1〜2回は交通費使って食べに行く。
しっかりと吉村さんの味を継承し、トッピングも安めに設定されている。スープはややマイルドで本家の醤油の尖った感じが取れていて自分的にはこちらの方が好み。他の家系のような動物系コッテリスープが前面に出すぎず、醤油をキリッと効かせて弛れた味に成らず全体を締めている。毎回感心するが、スープのブレが殆ど感じられない。毎回安定したスープの出来なのだ。大将がしっかりスープを管理しているので、骨の継ぎ足し時でも薄くならず臭くならずに一定の品質のスープが提供されることが素晴らしい!
麺は安定の酒井製麺。丸みを帯びた中太タイプのモチモチした食感。昔から食べてきた大好きな味。チャーシューも窯焼きされていて程良いスモーキーフレーバーを醸している。嬉しいことにほうれん草は他店より山盛りで提供されるのも良いポイント。
別売りトッピングで私の好きなキャベツは悲しいことに原価が跳ね上がって本日は100円となっていた。最安値の時は50円であったと記憶する。"白髪"ねぎと言いつつ青い部分も1/3は入ってきているが、花咲葱坊主が出来た屑葱の様な嫌な臭いは無いので許容範囲か。ライスは140円と高いが大盛無料。食べれない人には割高感があるだろう。とは言え総じてトッピングは安めで気軽に頼めるのが良い。御飯の最大の友である海苔も増して70円と妥当な値段。素材もよろしく安物の海苔のようにスープに浸したらスグにバラバラになることも無く、よーーくスープに浸した海苔を御飯に巻付けて食べるのが最高に美味い!
豚星(移転済)やくり山のような大行列はそうそう作られることはないが、店内はいつも程良く客が出て入り客足は絶えない。大将をはじめ店員の接客や雰囲気も昔の吉村家や六角家のようなトゲトゲしい感じは無くリラックスして美味しい家系ラーメンを食べられる最良店である。
5位
3回
2018/05訪問 2018/07/23
全国の食べログ574万人の超力ファンのみなさま!
(主催者発表)
本日は悲しいお知らせをしなければなりません。
それは•••
当方行き着けの店、タージマハール新橋店が6月をもって閉店されたとのこと。
昼夜通ってもうかれこれ4年程か。
5月末の夜にいつも通り電話予約して普通につまみとカレーを愉しんでいた時にはマスターからも貼り紙からも聞かされておらず、正に青天の霹靂。
まさか店を閉めるという事になろうとは。。。
9月中旬には場所も移転して心機一転、カレーの店『ガン爺』がオープン予定とあるがどの様なコンセプトの店なのだろうかまだ不明である。
カレーだけの提供なのか、夜はバル的要素を盛り込んだタージマハール時代と同じ様な形態となるのか…
当方的には夜はゆっくりとタルカリやジンガムンバイをつまみにハイボールや生ビールを嗜み、カレーで締めたい!
カレーだけだとパフォーマンス下がるけど、ここのカレーが食べられるだけ希望の光は消えない。
同じ形態での営業を祈りつつ、今まで掲出してこなかったメニューや最後の晩餐時の写真をアップしておこう。
予定通りのオープン心待ちにしつつ。
Hasta la vista.(アスタ ラ ビスタ)!
毎月通っているのでいちいちレビューしないがこの日は食べるのが好きな友人を連れ、ちょっとした(遊びのw)打合せも兼ねてガッツリと頂戴することとした。
【毎回定番】
◉チキンマサラ
◉ジンガムンバイ
◉ヤムナーパニール
◉タルカリ
これらをちょっと残しておいて、カレーを掛けて食べると滅茶苦茶美味し!
【お初メニュー】
◉チャナマサラ
つまみでの注文は初めて。
カレーの中に入っているものと同じ。
チャナ豆は柔らか目に戻され、タージ特製スパイスで軽めに味付けされたもの。
ネットリとした舌触りに豆のコクが広がる。
これを少し余らせて、後刻注文するカレーと合わせても美味しい。
【カレー】※全てカラ大掛
◉バラカリ
◉ムルギー
◉ライス大×2
◎大ピッチャー(生ビール 1,800ml)
いつもながら安定していて本当に安心して美味しく戴ける。
食べながら一口、また一口と恍惚と成って行く。
精妙に絡み合うスパイスは脳髄に響き、合法的に歓楽へと誘う。
バラカリの豚バラ肉から溢れ出す旨味がカレースープとのマリアージュで単体同士ではなし得ない更なる高みへと駆け登る。
逆にムルギーは絶妙な味付けだが、スープの味に素材からのエキスはあまり溶け出さず、シンプルに奥深く淡麗なカレースープを味わえる。
全て食べ終えた時に友人も良い具合に脱力し、恍惚に身を委ねていた。
もちろん当方も同様である。
【28.12.9追記】
待ちに待った一年に一月だけ、ランチタイムだけの特別メニュー"サブジキーマ"
もう何度も説明しているので過去レビューを参照されたし!
ライスの上に単体で掛けて食べても美味い!さらにルーを掛けて食べて更に美味さ爆発!!
本当この美味さは何物にも代え難い突出型、当方的に申さば『牙突型』の美味さ。
色んな料理を食べて来ているが、タージの夏冬のみのキーマは最後の晩餐に必食したい逸品だ!!超美味!!
しかし今冬の12月は土曜日の営業はしないとのことで有給使うか出張に託けて寄り道するしか手が無いなぁ。
しかも夜の部でも忘年会等で貸切の日が多く満席の可能性があるとのこと。行ってみて入店出来無いという悲劇に遭わぬよう、12月や1月のタージは電話で確認していくことがお勧めである。
あと一回くらい食べてこの冬を〆たいなぁ。
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【28.11.11追記】
この日はこちらに興味のある友人を誘い、ツマミを愉しんだ後カレーをガッツリと戴いた。ツマミは以下の通り
チキンマサラ(チキンムガール)
ごぼうちゃん
ヤムナーパニール
ジンガムンバイ
スタミナ焼き
チキンティッカ
ムルギー唐揚げ
タルカリ
ジンガナマク
初見はごぼうちゃん、チキンティッカ、タルカリ、ジンガナマク。
ごぼうちゃんは軽く衣を付けた牛蒡の素揚げで牛蒡の風味と甘味が引き出されている。生ビールのツマミにぴったりだ。
チキンティッカは照り焼き風のタレにジンジャーがマイルドに効いた一品。
タルカリは野菜炒めでガラムマサラでほんのりとスパイシーな衣を纏い、野菜は見事な炒め加減でシャッキリとしながらも野菜の甘味が引き出されていた。ジンガナマクは海老とベビー帆立の串焼きで塩味テイスト。特筆無し。
カレーはバラカリ、パコラ&茄子、キーマで大掛。カレーは言う事無しで食べてる感覚が無くなる程。退店する頃に腹が膨らんでいることをやっと認識。この日は寒気をもよおし咽喉も痛くなってきたのだが、こちらの料理を戴いて翌日、咽喉の痛みや悪寒は無くなり風邪の症状は小康状態になった。スパイスが身体の免疫を上げてくれたようで胃凭れも無く快調な1日となった。
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【28.6.17追記】
色々あってやっと再訪。
生ビールで喉を潤し、つまみにジンガムンバイとヤムナーパニールをお願いした。
ジンガムンバイはプリップリの海老の揚げ物で、海老がたっぷりと詰まっておりジュースィー。軽く塩胡椒も効いているのでそのまま食べても十分に美味い!一緒に付いてくるカレーソースやマヨネーズと合わせて食べてもなお美味しい。
ヤムナーパニールは春巻の様な皮でチーズを包み揚げてある。普通に美味いのでビールに合う。料理屋に入って酒を飲む時にチーズ揚げがあると必ず頼んでしまう程好きなのさ。
カレーは久しぶりにチャナ豆にしようかと思ったが売り切れのため、定番のムルギーに茄子トッピングの大掛、ライス大盛り、ミニサラダ。飲んだ後でもグイグイ入っていく美味さ!
帰りにお願いしておいた香りのスパイスを調達して店を出た。
【28.4.23追記】茄子カレー美味いナス♡
昼の限定で唯一食べれていなかった
『とんかつ』
を食べに。足掛け2年でやっとありつけた。
とんかつの部位は豚ロースで揚げ方も特に変わった点は無い厚みも普通のとんかつ。ただ1つ拘りがあり、「どんなに忙しくても揚げたてを提供する」こと。揚げおきは絶対にしないという。これは4月の昼だけの限定特別メニュー。カレーの具材の調理でも忙しい上、注文を受けてから衣をつけて揚げるため他の月にはとても出来ないという。マスターの話によると、この店をオープンした時にお客さんに少しでも喜んでもらえるようにと提供し出したもの。今はお昼は12時前より大行列を形成する店に成ったが開店当初はそれ程でも無かったので手間暇掛けての提供も無理無く出来たが今は困難ですと。そりゃそうだな。
とんかつは500円でトッピングとして注文可能。揚げたてのかつは衣はサクサクでロースは脂身も赤身も臭味が無く値段以上に満足出来る品物。こんな値段で提供されていたら赤字真っしぐらだよ。豚の単体としての味わいに特筆する点は無いがバラカリやスタミナの肉と同様と思われ、ここの辛口カレーとの相性が抜群に良いのである!サクサクの衣にカレーをソースの様に掛けて食べる幸せは4月の昼だけの特別の愉しみである。また来年に~♪
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【28.3.7追記】
2月末久々になってしまったタージ。昼には1度来ているが、夜に3度程満席で入店できなかったこともある。夜はインドバルとして単品料理で一杯やりながら〆にカレーという使い方が多く、団体さん等予約が多く入ると満席となり入店できないのだ。夜の訪問は事前に電話で問い合わせしてみるとよい。もちろんカレーだけの飲食だけでもOK!ただし全て単品となるのでご留意の程を!
今宵は定番のムルギーにパコラをトッピング。もちろん大盛大掛。美味い~!!
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【27.12.23追記】
1年間待ちに待ったこの12月。
そう、サブジキーマの月である!鶏挽肉のドライカレーで、具材は鶏挽肉、キャベツ、カシューナッツ、ニンニクの芽。こちらの香りのスパイス(クミン、コリアンダー)が効いたスパイス使い。具材の食感、風味、歯応えが最高!
夏キーマも最高だけど、当方は冬キーマのサブジが更に大好きだなぁ。
これはセットでしか食べれないというものでは無く、他のカレーのトッピングとして別注文も出来る弾力的なサービスも素敵だ。例えばスタミナや茄子のカレーにサブジ追加とかね。500円追加で食べれるので是非お試しあれ!
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【27.10.2追記】
今日は喉が渇いてたので、カレーの前に生中と、酒のお供にシークケバブを注文。生中はインド風の磁器で提供され雰囲気ある。孔雀が正面にドーンと!ケバブはコリアンダーがピリッと効いて臭みも無く最高に美味いね。ビールにはもってこいのツマミ。
カレーは最近の定番のムルギーに茄子トッピング。もちろん大盛り大掛けである。身体が欲していたのかあっという間に平らげてしまったのだった。
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【27.8.28追記】
先日は茄子大掛にハッサントッピング。お土産コーナーに『香りのスパイス』発見!迷わず購入。肉料理をはじめカレーに掛けてもスープに掛けても美味い。ただし、人によっては苦くなるため掛け過ぎ注意で。
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【27.8.11追記】
先日食べた今月のランチのチキンハッサンと先程食べてきたスタミナにパコラトッピング、大盛大掛を追加。夏キーマは残念ながら連投ならず。ハッサンも好きだからまぁいいか。
夜はゆったり一杯やりながら〆にカレーを食べれる。パコラは豚挽肉(鶏ではない)にクミンやコリアンダー等を効かせた味付け。インド風揚げ餃子だ。そのままでもいけるが、ここは辛口激旨カレースープに浸しながらカリカリの部分と柔らかくなった部分の両方の食感を楽しんで中身の具とカレーを馴染ませると美味い。3つなのが淋しいが、そこはもうひとつの主役であるスタミナちゃんに御活躍して頂こう。しっかり味の付いた豚肉をソテーし、カレーと合わせている。これもカレーとしっかり馴染むように計算されており、ライスとの相性も抜群。
ここのカレーの恐ろしさは、食べている最中は全く腹に貯まらないのだ。ペロリと平らげた後も思わず『おかわり!』と言い出しそうなことが何度あったか。それでも退店した後とぼとぼと歩いているときちんとお腹は満たされていることが分かるのだ。いやー恐ろしや恐ろしや。
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【27.7.21追記】
先日昼の相席時に、バラカリにチャナ豆トッピングして食べていた客が、『有り得無ぇ~、有り得無ぇぇぇ~』とガツガツと喰らっていたのを思い出し、注文してみた。チャナは煮込まれていてサクサクした食感は無く、煮た小豆のような食感と味であった。味付けは良いが食感は好みでは無かった。これは渋谷のチリチリのチャナの方が自分は好き。その分煮込みは無いけどね。
バラカリとの相性は悪くは無いが次も食べるかと言われたら茄子を選ぶであろう。チャナの他には玉ねぎと鶏肉がトッピング分。それにしても豚バラ肉の脂とタージの辛口カレールーとは超絶的に合うなぁ。
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【27.7.10追記】
私のキーマ好きはここの親父のキーママターを食べてからハマりにハマりまくった。そして、息子の店でもハマるとは…11:30なのに店内はほぼ満席で相席で座れた。
7月ランチは"夏キーマ"。鶏挽肉に茄子、ピーマン、赤と黄色のパプリカ、ニンニク等が入ったもの。スパイスは私が大好きな香りのスパイス(コリアンダーのホール)がメインにふんだんに使われており、単体でも十分美味いしご飯にも合う。飯にキーマを乗せてカレースープを掛けて食べたら得も言われぬ味。魅惑のスパイス達の融合。大盛大掛で注文しても物足りなさを感じるほど、グイグイと喉を通る、食欲を増進させる食べ物である。
本気でランチセットをお代わりしそうになったのは内緒w店を出た時には階段上の外まで並んでいた。
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【27.7.3追記】
昼には7月なのに夏キーマが登場。職場から距離があるため昼に行くには出張の時でないと無理。来週出張なので、絶対食べるぞーー!
と我慢できずに夜来てしまったw駄目元で夏キーマ残っているか聞いてみると『売り切れです』と•••。ならば夜のキーマで我慢しよう。ただ、夜のキーマはハンバーグなので皆さんがイメージするキーマでは無い。茄子トッピングでアクセントを付けて。これはこれで美味いなぁ。
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【27.6.16追記】
ここしばらくは"茄子"の美味しさにハマりつつある。油で茄子と鶏肉、玉葱、ピーマンを炒めてカレールーと合わせるだけのシンプルな作り。油が滲みた茄子に辛口のルーが混ざり合い、まろやかな味わいを形成しているのだ。
他のメニューの具材を単品で注文することも出来るし、昼の月代わりスペシャルランチの具材も単品で頼める。写真は5月の時のケララチキン。
これに特製スパイス(コリアンダー)をミルで挽いてフレッシュな香りと鮮烈な刺激がまったり系のケララに良く合う。他にもこのスパイスは万能なため、色々な具材にもアジャストしてくる堪らないエッセンスである。
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昨年以来、毎週1度は必ず通っている程大好きなカレー。全ての食べ物を超越している。ここはカレーだけで☆5を付けている。ただし、ここのカレーの真価は"辛口"で、蒲田(閉店)の親父さんの味を受け継いだもの。新橋店では中辛や甘口は幅広く食べてもらいたいところで提供されている。
毎月昼の特別ランチもお得で美味い。夜でもつまみで注文可能なのが良い!昼は激混みで1時前にはカレーが売り切れになってしまう盛況さ。夜は落ち着いて食べれるが、カレーとライス、サラダは別注文になり割高。大掛け、大盛り料金も昼とは違うのでご注意あれ。
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26年9月、9年振りに新橋タージマハールを訪れる。
私の大好きだったカレーを作ってた親父さんが亡くなって何年が経つだろう。もう9年程か…
蒲田の東急ガードレール下で昼夜問わず私の胃袋を捉えて離さなかった『タージマハール』のカレー。
正直カレーなんぞ外で食う物でなく家で食べる物として全く興味がなかったものだった。しかし、ガードレール下にあったこのカレーを食べてカレーに対する思いは一変した。サラサラでトロミなど一切無く、甘味など微塵も無く潔い。色んなスパイスが調合されていてとても奥深い。しかし粉っぽくなく全てが洗練昇華されていて味に渾然一体となった見事さ。しかし激辛!この辛さも年々客に応えて柔らかくなっていったが本気の日のカレーは本当に恐れいった次第であった。
7年程昼に多い時で毎日だから週5日食べていたこともあり、しかも夜も連食したこともあったので7回を超えることも…しかし身体に良いスパイスなので胃もたれもなかった。
そんな日々との別れは突然やってきた。親父さんが体調を崩した。一時は復活して店も再開したが、数ヶ月後に再度体調を崩し店を休店。そのまま鬼籍に入り店は閉店となった。
この親父さんには息子がいて新橋にも同名の店を営業していた。『まぁ、たまには息子のカレーも食べに行ってやってくれよ』と親父さんが言っていたことを思い出す。親父さん亡き後このカレーが忘れられなく数ヶ月後に食べに行ったが似て非なるものという印象であった。何か残念な気持ちと、もう二度と親父さんのカレーは食べられないのだろうという悲しみ。何ともやりきれない気持ちであった。
それから9年程経った今、親父さんの店でカレーを食べている夢を見た。私もカレー、特にインドカレーは大好きで色んな美味いカレー屋へ食べに行った。そろそろまた息子さんのカレーでも食べに行ってみようと思い訪問した。懐かしの『スタミナ』(味付け豚肉のカレー)のルー大掛けライス大盛で注文。楽しみにしていたルーを一口…
!!!
味が親父さんのカレーに凄い近づいていた。
というよりほぼ親父の味がした。多少粉っぽさや調合歩合は違うかもしれないが、9年の月日がお互いのカレーの概念が近寄ってきたというのか。
息子さんも以前より美味しく調合研究をされたに違いない。私の味覚も懐かしさのあまり多少甘くなっているのかもしれないが、間違い無く親父さんのカレーの味に一番近いものになっていた。
身体が震えた!舌から脳、喉、胃へと味覚のシグナルは走り、身体全体が喜んでいた。涙が出るほど美味かったし嬉しかった。食べ物でこんなに感動することもそうそうあるまい。本当に食べたかったカレーは新橋にあった。
また近いうちに食べに来よう。
また大掛大盛で!
6位
5回
2018/03訪問 2018/08/28
桜も満開で例年より早く見頃を迎えた2018年春。
最近は両親がすっかりうのさんをお気に入りになって来ており、リクエストがあったので口開けからうかがった。
いつも通りの鉄板物にサッパリとしつつ深みのある鶏肉の味わいを愉しませてくれるさび焼き、香ばしく揚げの部分を焼き上げ中の豆腐がジューシーチュルンで堪らない厚揚げなどをお願いして。
◉さび焼き
◉かしわ
◉膝軟膏
◉長葱
◉砂肝
◉厚揚げ 生姜醤油で
◉食道
◉はつ
◉ソリ
◉チーズ
◉アスパラ
◉ねぎま
◉つくね
◉焼きおにぎり
◎松の寿 ひとごこち 純米 辛口 65% 栃木県松井酒造
◎亀の海 春うらら 純米吟醸 うすにごり生 59% 長野県土屋酒造
もうこちらでは食べたい物をリクエストして提供する順番はマスターに委ねているが絶妙で精緻な計算から繰り出される串の順。
もうあれこれとやかく言う事も無い。
自然体で最高に美味しい焼鳥と野菜串を味あわせてもらえて皆笑顔で店を後にする。
さて、桜が綺麗なので多摩川まで歩いて桜見物でもして帰ろう。
今年の1月下旬に器関連を一新されていた。
12月の時にはまだ以前の器だったので、おろしてから2週間も経っていないとの事。
受け皿は、塩のエリアとタレのエリアを分けて置けるように緩やかなカーブが施された造り。
一味唐辛子入、山椒入、楊枝入、串置きも一新。
◉クリームチーズの西京漬け
◉膝軟骨
◉せせり
◉そり
◉食道
◉あか
◉また
◉ねぎま
◉ハツ
◉つくね
◉ズッキーニ
◉金針菜
◉ヤングコーン
◉チーズ(ゴーダチーズ)
◉焼きおにぎり
醤油だけの円やかさとは違う味わいがしたので伺ってみたところ、おにぎりを焼きている合間に鶏油を塗ってコクを出されているとのこと。
細かく刻まれてインした高菜も良いアクセント。
◎風の森 秋津穂 無濾過無加水 50% ×2 秋田
◎南方 純米吟醸 無濾過生原酒 50% 和歌山
美冨久を味見でチョイと。
結構飲み過ぎた感が(笑)
何でも美味しいのでつい飲み食いが過ぎてしまうな。
ここは席が空いていれば月1か隔月で訪問している。
ここのところ当日電話しても満席のことが多くトンとご無沙汰になっていて淋しい限りである。
然るにしばし前の記録となるがレビューし漏れていたので公開した。
どの串も酒も美味しい本当にハマる味だ。
マスターの焼の技術の高さと素材への信頼感から苦手な皮にチャレンジしてみようと思わせる程のレベルの高さである。
という事で、今回は当方の鬼門→皮にチャレンジしてみた。
お味の感想は以下のとおり。
この日は"そり"が絶品!
ていうか毎回だけどね。
季節限定の日本酒のラインナップも素晴らしい。
◎生ビール
◉あか
◉せせり
◉かしわ
◉つくね
◉ねぎま
◉ハツ
こんなに瑞々しくもサックリとした歯応えの絶品ハツは初めてだ。
◉手羽先
ややレアな仕上がりながらムッチリとした弾力に滑らかな歯触り。
サラッとしているが濃厚な旨味も携える。
◉椎茸
肉厚の椎茸に酢橘が添えてあるのがグーだ♪
◉ヤングコーン
◉金針菜
◉チーズ
◉そり
白眉!
腿の付け根の腰付近にある希少部位。
よく動かす部分で筋肉質だが嫌な硬さや強張りは無く、程良き弾力のある歯応えに、ジュワッと旨味エキスが溢れ出す。
美味しさを閉じ込めて客が口に入れて噛み締める際に旨味の洪水が訪れるように仕上げている。
◉皮
幾度か他店でチャレンジして来たが悉く敗退している当方が、これはいける!と思わせてくれた仕事。
軽くレモンの絞り汁を掛けた皮は全く臭み無く、嫌な食感も無く程良き弾力感と外側はカリっとコーティングさせた香ばしい焼き上がり。
皮大嫌いな当方の苦手な要素を全て取り払ってくれたマスターは凄いね。
極意をお聞きしたところ、皮をカリっとさせなければならないが、完全に脂を落としてカリカリさせてしまうとカスカスな皮となってしまい旨味成分も抜けてしまうので適度なバランスを保って焼き上げているとのこと。
また酢橘を掛けたら更に美味のレベルがアップした。
◉食道
シコシコシャッキリとした食感にネットリとコクのある美味さ。
ホルモンっぽい感じであるが癖は無く、あっさりとしたタレとの相性ともバッチリで只々旨味だけが味わえる。
これに椎茸に添えてあった酢橘を掛けたら更に香り高くサッパリと美味しくなっていた。
◉焼おにぎり
中に刻んだ高菜と、添えてある野沢菜の菜っ葉コンビが良い仕事をしており、白米だけの焼おにぎりとは一重も二重も美味さが重なり合っていた。
◎獺祭 純米大吟醸50
ネットリと舌に絡みつく旨味が凄い。
米のフルーティな香りに辛さの中に魅惑的な甘味が口内を席巻する。
辛味と甘味のトータルバランスが素晴らしい。
マスター曰く以前の50はもっと甘味の強い酒だったが大人しくなってバランス良くなったと当方と同意見。頓珍漢な事言っていなくて良かった~♪(;^o^)ホッ
初訪の7月から何度うかがっただろうか。
ここは席が空いていればほぼ毎月か隔週で訪問している。
もうここに来れば最高の旨味ある伊達鷄に最高の技術と素晴らしいサービスで満足度も高いため、他の有名店に行ってみようという気も起こらない状態だ。
酒も美味しい本当にハマる味だ。マスターの焼の技術の高さと素材への信頼感から苦手な部位にもチャレンジしてみようと思わせる程のレベルの高さ。
季節限定の日本酒のラインナップも素晴らしい。
1人の場合は当日でも間隙を縫って入れることもあるので焼鳥を食べたくなったらちょくちょく電話している次第である(とはいえ12月はいつも満席で入店叶わなかった。)
今年初めての訪問であったが、当方の好きな部位のモノは揃っていて本日は満足度も非常に高い!
本日戴いたものは
◉つくね
◉かしわ
◉ぼんじり
◉あか
◉膝軟骨
◉せせり
◉ヤングコーン
◉ズッキーニ
◉チーズ
◉食道
◉ねぎま
◉うずら卵
◉マタ
◎生ビール
◎田酒
総合力が素晴らしい均衡のとれた日本酒
◎雪の茅舎 半分以上
田酒の後で戴いたが、独特の酸味と鋭角な風味がよく理解できる。下手に甘過ぎず、辛過ぎないが生搾り特有の癖も旨味のうち。
◎おまけ 胸肉タタキ
食道はシャクシャクコリコリとした食感にレバーのようなネットリとした濃厚な味わい。
マタは脚と胴体の付け根の肉であまり取れない部位とのこと。脂分は少ないが旨味は強く、ジューシーで繊維質なシャクっとした食感も良い。
うずらの玉子は白身の皮目のシャクシャクシコシコとした食感は初めて味わう食感で面白い。黄身がギッシリでトロリと黄身が流れ出すかのギリギリの火入れだが白身と黄身の融合度が高く金柑のような食感も良い。
ずっと気になっていた鷄のたたきをマスターからお凌ぎで提供してくれた。
火入れの加減が申し分無く中心部のレアな部分のサラリとした口当りに外側の炭火で炙られた薫香を纏った香ばしい風味から胸肉皮目からの甘味ある味わいがスッキリとしているが滋味溢れる旨味のささ身と融合してこの上ない満足感を食べ手に与えてくれる。
伊達鷄は胸肉が一番旨味のある部位なのでたたきにすると最高に美味いと。全く同感である。
奥沢に只者では無い焼き鳥屋があるとは聞いていたが中々伺う機会が無かった。ある日何気なく電話したところ、短い時間になりますがとタイミングがあってソロ訪問。奥沢駅南口から入船寿司の右側から先の最初の十字路の左斜めの地下1階に店はある。
はじめにご主人の宇野さんからご挨拶があり、おしぼりを頂戴してメニューを眺める。串焼は焼き鳥のメニューで25種類に鶉卵、野菜が14種類に蓬麩とチーズと多岐にわたる。当方本格的な焼き鳥屋や高級店には来た事が無いので部位についてはトンとわからぬ。そんな時でも店員が親切に教えてくれるので安心だ。面倒臭い場合にはお任せという手もあるが、ここは好みで戴きたい。飲み物を注文して提供されるも先ずはお通しが2種登場する。野菜のピクルスは酸味が控え目な万人受けするタイプ。胡瓜、蕪、パプリカ、プチトマトの構成。もう1つは大根おろしでやや粗めの削り具合。双方とも焼き鳥の脂をサッパリと口直しさせる機能を果たし、リセットさせる優れもの。好みの観点からすればピクルスはもう少し酸味を利かせて頂くと更に脂切れが良くなると思う。それでもこの2品から見える心遣いは流石と言えよう。
鶏肉は福島産の伊達鶏で健康的な筋肉がモリっとした質で風味が良い!焼き鳥は全体的に肉質は力強く程良い弾力が心地良く、噛むとジュワッと旨味汁が溢れ出す。紀州備長炭を使用して丁寧な素材への火の通し具合、美味しいエキスを逃さず内に閉じ込め焼き固める技量は見事である。大きな団扇を絶えず操り、鶏の仕上がりをベストに引き上げている。ほとんどの鶏への調味はタレはなく塩で今回当方が食した物は全て塩。何を食べても美味しい串だ。一串づつのコメントがかなり被ってしまっているが、焼き鳥経験値が極めて低い超力なので御容赦の程を!
焼きの最中にも予約電話が幾度か掛ってきたが、そのほとんどはご主人自らが出られて対応されており、顧客に対しての想いが伝わってくる。その姿勢に祇園の阪川さんを思い出す。店のスタッフは居るのにどんな時も御自分で顧客と向い合うスタイルをずーっと継続されている。こういう所から当日のサービスに繋がっていくのだ。また、日本酒を注文した際に当方は何も言っていないのに、チェイサーにお冷もどうぞとさり気なく水を提供してくれた事もかなりポイント高い。生ビール一杯で相当顔が赤くなる当方を観ての気遣いかもしれぬし、定例的なサービスかもしれないが酒に弱い人間にとっては何とも有難いサービスではないか!会計後にも宇野さんから丁寧な挨拶もあり大変心持ちは良い。職場からの通勤圏内からも極近いこと、ソロなら間隙を縫って入店するチャンスはあるので、また何度も伺わせてもらおうと思わせてくれる一時であった。
【お通し】
◉自家製ピクルス
◉大根おろし
◉ねぎま
挨拶がてらあっさりとした部位かと思いきや、どうしてどうして肉の旨味と弾力が印象深い一串。皮もパリッと焼けていて香ばしい。
◉つくね
肉の挽き方が今まで食べたつくねと違う。食感はフンワリしつつ完全には挽き切っていない不揃いな感じが歯応えのアクセントとなっている。しっかりと肉汁は閉じ込められており、噛むとジュワッと旨味が溢れる。
◉れば
外側を軽く炙り、トロっとした食感で濃厚な旨味に溢れる鮮度の良さがわかる一串。パサつきや臭味は皆無で別物を食べているようだ。
◉手羽元
よく動かす部位のためしっかりとした弾力のある歯応えだが噛んだ時の旨味汁の噴出具合が半端無い。
◉あか(腿の中心部の肉)
肉の繊維質が嫌な硬さでは無く適度な歯応えで、肉の旨味が充実しており噛めば噛み締める程に美味い!
◉ヤングコーン
醤油味で風味が強くて柔らかい美味しさ
◉金針菜
それ程香りは強く無いが炭火で引き出された個性的な香りが素晴らしい
◉ズッキーニ
瑞々しく香り高い
◉茄子
柔らかしっとり
◉アスパラ
瑞々しく香り高い
◉蓬麩
普通
◉チーズ
トロける美味さ。炭火で炙られたスモークの旨味が爆発。どんな酒にも合う最高の肴だ。
◉抱き身(胸肉の皮付き)
柚子胡椒添え。さび焼きの部位とほぼ同じなので迷ったがこちらに。皮もパリッと焼けているので気にならず、こちらもあっさりとしている。
◉かしわ(脹脛)
部位は脹脛とのこと。これが思った以上においしくて、値段も手頃。
◉そで(腕の付け根)
皮が多目でもっちりとした食感だが、見た目よりクドくなくあっさりいける。
◉生ビール スーパードライ
◉琥泉(こせん) 純米吟醸原酒 ※メニュー外のお勧め
やや甘めのフルーティな香り。舌に絡みつく米の旨味の余韻は強い。
7位
1回
2017/11訪問 2017/11/22
東武浅草駅から日光までスペーシア(けごん21号)の個室を借り切って乱痴気騒ぎ(爆)
その日光のB級グルメとカフェを堪能した後に15:50間藤行きのバスに乗車。
そのままギリギリで16:31間藤駅からわたらせ渓谷鐵道へ飛び乗り、16:36通洞で下車。
通洞と言えば、かつては足尾銅山の玄関口であり、廃坑を利用した洞内観光で有名だ。
ほとんどは観光バスでの利用が多いが、渋いローカル線のこの沿線でホルモンが美味いことと、90歳を超えたおばあちゃんがお一人で取り仕切るお店が有ると言うことでもちっとは知られている。
ここを知ったきっかけは吉田類の酒場放浪記。
初回放映時は2014年3月時点で90歳という事なので、現在なら少なくとも93歳となろう。
(今年で御歳94歳)
都心であれば考えられない事である。
大体16:30頃には店は開店しているようだが、件の理由で開店時間がずれ込むことも念頭に置いておこう。
当方等は17時前に到着し、見事赤提灯と暖簾が掲げられていたことに感謝して入店。
それは後程おばあちゃんから今年に入って体調を崩して40日間店を閉めていた事もあったということをお聴きしてからも、お年から体調次第では店が開けられないことも有ると言う事(5月に再開)。
事前にお店には電話をして行く日を伝えて開店することを聞いてはいたが、開店していたことは幸運であると心得る。
店内は適度に整理されて掃除も行き届いており、ホルモン屋でよく遭遇する脂でベトベトしている感じは無かった。
ノスタルジックな雰囲気で創業当時そのままという。
創業してから59年目だそうだ。凄い!
という訳で、体調を崩してから餃子の仕込みは辛くて出来なくなってしまったとおばあちゃん。
然るに現在の食べ物メニューは『ホルモン』と『とんそく』、『つけもの』の3点のみ。
ホルモンは豚のミックスホルモンでおばあちゃんチョイスで色んな部位の美味しいところを入れてくれる。
基本部位単品のメニューは無い。
以前は可能であった様だが今は不明。
先ずはビールの大瓶(キリンラガービール)で乾杯。
程なくしてホルモンが登場。
お手伝いさんは居らず、本当に配膳も料理の用意も会計も全ておばあちゃんお一人で取り仕切っている。
足取りもお年とは思えない丈夫で、受け答えは耳は遠いが問題無いしこちらの質問にも大体の事は応えられていた。
矍鑠というよりはおっとりと優しい雰囲気で、田舎のおばあちゃんの家に遊びに行った感じと言おうか。
ホルモンは豚で、カシラ、シロ、ハツ、タン、レバ-、コブクロ、ガツ、頬肉etcと盛りだくさん。
先ずタレに絡まったホルモンの焼ける匂いからして良いね~♪
この時点でこちらのホルモンが間違い無く美味いことを教えてくれる。
昔ながらのガス台で焼くのだが、両端しか火が出ないので、焼くのは両端で焼けたら中心部に寄せてねとおばあちゃんから教えてもらった。
タレは末広特製の味噌ダレで甘辛さが絶妙である。
このタレにホルモン達を付けて食べると非常に美味で箸が止まらなくなるとても相性が良いのだ。
思わずうめーー!!と声が出てしまう程。
良いホルモンは臭味は皆無で、程良い歯応えと歯切れが良い。
何よりもホルモンに対する処置が見事で、口に当たる物、障る物が全く無い完璧な施し。
流石に創業60年近くもホルモン一筋でやってこられただけの手練れであり、年齢など全く関係無いね。
箸が止まらずすぐにホルモン達が無くなってしまう。
特にカシラと頬肉が超白眉で、円やかで脂っこく無いのにコク深く旨味のあるホルモンだ。
おばあちゃんが大好物だというコブクロも、他所では癖のある部位であったりするのだが、こちらのコブクロは程良い脂の旨味と歯応えが堪えられない。
当方は正直ホルモンは得意では無く苦手な分野である。
何故か?それは臭いのとゴムみたいに歯切れが悪いホルモンが跋扈しているからだ。
確かに名店と言われるホルモン屋に行けば牛豚鳥を問わず鮮度抜群の美味しいホルモンもあることを知った。
然程ホルモン店を巡っている訳では無いのだが、そんな店って意外に値段が高かったりする店も多い。
ある程度ホルモン耐性を上げてきた状態であったのだが、こちらではそんな考えは無用であった。
ホルモンの質の高さに驚き、おばあちゃんにお話を伺ってみた。
桐生は養豚場も多く屠場が有り、そちらに落したての物を週2回送ってもらっているとのこと。
注文した翌日に届くので、処置を施し瞬間冷凍されているそうだ。
お年からしてここまでの流れるような説明で皆驚かされる。
結局5人前を食べて〆。
途中から「軟骨は好きですか?」と聞いてくれたので大丈夫であることを伝えてお願いした。
この軟骨も絶品で、肉付のやつなんか堪らない美味さだ。
お酒も末広という日本酒があったので飲んでみたのだが、程良い甘味と辛味のある良き酒だった。
これだけ飲み食いして1人3,000円以下だ。
ちなみにご飯はメニューに無い為、唯一持ち込みが可能ですとの事。
ご飯だけはお客さんが何人来られるのかわからないので、そうそう炊けないのよと。
酒は売る程有るのでもって来ちゃ駄目よ♪
こちらのホルモンは何を食べても美味いし違和感を感じる物など1つも無いという当方にとって稀少な店。
何よりも店主戸川ヨシイばあちゃんの温かい話っぷり。
どちらから来られたのということで横浜からと伝えると、何と以前おばあちゃんは横浜は六角橋で御菓子屋を営んでいたとのこと。
六角橋に路面電車が走っていた頃で、再開発により店を閉めて足尾は通洞に移ってこの末広を開業したのだという。
色んな意味でおばあちゃんとはちょっとした縁で繋がっていた事もあって驚き、お互いに喜んだ。
おばあちゃんに喜んで頂けたことが何か何よりも嬉しかったなぁ。
お会計をお願いした後に、「今日はこちらでお泊まり?」と聞いてこられたので、某宿に宿泊するために通洞駅に指定の時間に来てもらうように連絡していることを伝えると、「駅は寒いから、ここで温まっていなさい。宿に電話してここに来てもらうから」とわざわざ宿に電話してくれてこちらに来てもらおうと仰る。
流石に悪いので遠慮していたのだが、チャっと携帯を取り出し、ピッポッパッと電話していた。
恐縮しながらも有り難いおばあちゃんの対応に感謝しつつ、店内で待たせてもらう事にした。
程無くしてお宿のご主人がみえられた。
おばあちゃんに再度御礼とお別れを伝えると、「うちも(宿の主人に)ホルモンを買って貰えて商売になったので何でもないよ。」と。
何とも最後まで微笑ましい。
色々なホルモン屋が日本には数多有るが、ここより美味い店はまず無いであろうな。
当方の美味いというのは、ホルモンの質や処置、タレの味だけでは無く、提供者の温かさ(人柄)が大事である。
人の心も味あわせて戴くのである。
いくらピンの素材で調理技術が抜群の天才が調理した料理でも、人格が最悪では舌だけはそれなりに美味いと感じるかもしれぬが、心が満足しない。
酷い時には心が舌を鈍くする事だってあろう。
例えば嫌いな人や上司といくら美味い酒や飯を食べても心から愉しめず、本当に美味いと感じるだろうか?
どうだ!美味いだろう!とグイグイ押してくる店主や料理人がいたらそれだけで味が不味くなる。
時に自尊心に凝り固まって天狗になっている勘違い料理人も世の中に少なくなかろう。
そんな人物の料理を食ったとしても当方はちっとも美味いと感じない。
逆に不味く感じてしまうのだ。
そんな意味も込めて当方としてホルモン店では比類無き店として5.0を授けたい。
何よりまた必ず来たい店である。
それまでお身体を御自愛頂き、いつまでもお元気で!
8位
2回
2018/02訪問 2018/03/05
秋以来の大黒屋。
いつも通り生ラム成吉思汗に今回はショルダーステーキに前回売り切れていた数量限定の厚切りラックをお願いした。
相棒は生ビールで。
こちらはサッポロが無いのが唯一残念な点。
なので北海道に来たらClassic(クラシック)を戴いているのだが仕方が無い。
生ラム成吉思汗は厚切り肩ロースで、値段の割に非常に美味しい。
兎に角羊臭さなど皆無で柔らかなラムの風味に鮮度抜群で柔らかな噛み応えの肉質は日本全国のラム肉屋、ジンギスカン屋の中でもかなりのトップクラスと思える。
これに大黒スパイスを掛けて食べると無敵である。
またタレもチョイ甘で当方の好みとピッタリで食が進み、ビールも進む。
これはお代わり必須だ。
ショルダーステーキは脂が一切無いラム肉本来の赤身の旨味と言おうか血の旨味と言おうか、狼が羊に喰らい付いている感じ(笑)
〆に厚切りラック(アバラ肉)を持ってきたのだが、脂身の占める割合が半端無い。
確かにこちらの品質のラム肉は風味、旨味とも文句無しなのだが、当方的には脂身があまりにもToo muchな分量であった。
脂身を先によく焼き、赤身の部位はなるべく火を通さない様に野菜を敷きながら温度調整しつつ焼き上げた。
ただ、焼いている間にも脂は鍋の溝を通り下へ流れてる。
そこに脂のプールが出来上がり、野菜を焼いていると必要以上にどんどん脂を吸っていってしまうのだ。
上にのせた羊脂も同様なので、脂身の多い部位を多く焼いていると鍋底の野菜エリアが大変な事になる。
正直今回食後に胃がもたれた事も有り、当方はやはり脂身に対して極端に弱いのだという事、必要以上の脂身の摂取は危険だと改めて実感した。
その場合は店員に鍋底の脂を拭き取ってもらう様お願いする事が大事である。
また肉を追加する際に鍋に肉が引っ付かぬ様新たに羊脂を貰って上手く調整しながら焼くと良い。
歩人で振られ、唯我独尊でガッツリと食べてしまったため9時過ぎまでお腹が減らずに夕食をパスしようかとも思ったのだが、宿でジックリと湯に浸かり、身体をほぐして胃を整えて10時前に宿を出て大黒屋へ向かった。
本店は老朽化のため閉店しており現在では5丁目支店のみの営業となっているここ大黒屋。
ここのジンギスカンなら胃に盛られないし、少しだけでもお好みで食べられるのが再訪のポイント。
10時に入店してみると、祝日の夜も更けてくる時刻のため流石にカウンターはほぼ居ない。
カウンターの真ん中のあたりに通される。
飲み物は一番搾りフローズンを所望したのだが、8月で終了とのことで普通の一番搾りを。
サッポロを置いていないのがマイナス点だが、まぁ色々と付き合いもあるのだろう。
羊肉は厚切りラック(骨付き)が売り切れとのことで、生ラム成吉思汗、ショルダーステーキ、ハーブ生ラムを1人前づつお願いした。
1人前に6枚セットされ、一枚の切り身も大きく厚みも申し分無い。
七輪に乗ったカンカンに焚かれた成吉思汗鍋に羊の脂を馴染ませ、野菜が敷かれて先ずは生ラムとショルダーがを焼いていく。
初めは店員が焼いてくれるが、後は客の好みで焼いていく。
ここの肉は生のブロックの捌き立てなので、然程焼かなくても食べれる。
当方はチョイ焦げ目が付いた方が好みではあるが、最初の一切れは店員が焼いて頃合いの物を戴くとする。
ちなみに野菜は大黒屋の気持ちということで無料サービスとなっている。
玉葱が多めで人参、さつまいもが次ぎに多く、キャベツと長葱がほんの少し。
柔らかジューシ~で美味ぁ~い♡
何この風味と旨味はーー!!
ここのラム肉、こんなに美味かったっけ?!
大黒スパイス(大黒屋特製調味塩)と特製ダレと双方戴いたが、この日の超力はスパイス塩とのマリアージュが凄く美味しく感じた。
そういえば前回伺った時にはこの大黒スパイスなるものは無かったと記憶するので、ずっとタレで食べていた(当たり前だが)。
もちろんタレも甘過ぎないがコクのあるスッキリとした特製ダレも大変美味しいのだが、それ以上に羊肉本来の風味が一層引き立つのはこの大黒スパイスで食した方だ。
これは美味い!美味いですよ~社主ぅ~♪
と富井副部長が出てきそうな勢いだ。
ショルダーは脂身が一切無くサッパリとした赤身だが、淀み無き美味さで香りも良く鮮度が素晴らしいことを証明してくれる。
それでもこちらの看板メニューの生ラム成吉思汗は適度な脂身がコクを増し、羊肉自体のきめ細かい柔らかさと滑らかな舌触りで恍惚となる。
大黒スパイスと合わせると日本全国の羊肉の店は数多あれど、ここの美味さに比肩する店はそうは存在しまいと思わせる。
それ程腹も減って居なかった当方に、これ程美味しくジンギスカンを食べさせてくれた事にも感嘆した。
もう1つのハーブ生ラムは生ラム成吉思汗にハーブの味付けをしたもので、これまた美味い。
ここの羊肉は何を食べても美味いね~。
1枚でボリュームのあるラム肉を戴き追加注文無しで満足感も高く会計を済ませた。
以前より100円程度
遅い時刻でチョップ(厚切りラック)が無かったのだけが非常に悔やまれる。
それ以外は総じて満足だ。
当方の好きなスタウトもあるので次回は苦み走った奴をグイっとやりながら、美味いラムでも突こう。
◉車海老、長芋、しめり海苔、美味出汁ジュレ
◉墨烏賊おかき揚げ、愛知県産藤九郎素揚げ
柔らかくもムチムチとした歯触り。
◉柿膾、大根、人参、胡瓜、水前寺海苔、アーモンド
胡麻クリーム
◉毛蟹の椀 鶯菜
ほとんどが毛蟹の贅沢な椀
◉青森の鮃、北海道の真鱈白子
醤油、ポン酢
◉大間産90kg背トロ
今週ほとんど鮪が取れなかった中での苦肉の部位だが流石の味。
やや筋はあるが硬さは上手く熟れており口に障るというレベルでは無いのも巧み。
◉柳鰈の一夜干し、蕪餡、新いくら、黄柚子
海水と同じ濃度の塩水に一晩浸けて焼き上げる。
背の身と腹の身のセット。
◉但馬牛A5のすきしゃぶ仕立、敷き豆腐、舞茸
◉羽田産穴子の煮焼き、焼き茄子、春菊、銀餡
◉淡路島産真鯛の鯛茶漬け
蕪かつら剥きに水菜、燻り人参、胡瓜
◉シャインマスカット、La France
La Franceと洋梨のすり流し、ワインジュレ
【日本酒】
◎天青 辛口純米
◎澤屋まつもと 純米大吟醸
◎横山五十 純米大吟醸
恒例の両親と盛夏時のまき村を味わう。
◉シマボタンエビ
芋茎
長芋
梅肉ジュレ
◉ゴールドラッシュ(玉蜀黍)手毬揚げ 新銀杏(翡翠銀杏)
◉島根産小豆羽太1.2kgの椀
加熱調理を経ると白身の王様の風格漂う小豆羽太。
まき村の吸い地とベストマッチ。
◉銚子外湾真子鰈 朝7時〆
塩昆布、塩、酢橘、山葵
◉噴火湾産40kg本鮪
湿り海苔 山芋 山葵
◉大原産雌貝鮑と利尻島産蝦夷馬糞海胆、冬瓜の吉野煮
もう言うことない美味!
◉鱧の炙り鮨
ポン酢、梅肉
◉鮎の一夜干しと天ぷら
一夜干し美味し!
◉但馬牛のすきシャブ風
◉羽田沖穴子のご飯、牛蒡、山椒
こ、これは•••
途轍も無く•••
う、ま、い、ぞぉおおおーーー!!!
もうこれは今まで食べてきた超力史上一番美味い穴子飯である。
江戸前独特の香りと牛蒡の根菜独特の香りが実にマッチしていて最高に美味い!
そう言えばどぜう鍋でも牛蒡は抜群に合うので欠かせないな。
◉岡山の桃のコンポート、シャインマスカット
桃は煮過ぎないで半生の状態
◎天青
◎越乃寒梅 無垢 純米大吟醸
◎墨ノ江 谷風
◎墨ノ江 600k
この日は両親と定番のまき村の料理を愉しむ。
梅雨時のまき村さんでの楽しみとは•••♪
【30年6月の献立】
◉【先付】3種
•南京、長芋、赤パプリカ、若布、生姜の酢の物
•玉蜀黍のかき玉揚げ
•皐月和え(白和え)
新蓮根、胡瓜、大根、アーモンド
◉【椀】
千倉産黒鮑と玉子豆腐の椀 吸い口 青柚子
夏の定番スペシャリテのなりつつある椀物。
◉【向付1】
天草産鱧
こちらの鱧は湯に落としていない。
水っぽくなるから。
塩で戴くと身がネットリとして来て奥底の旨味がグッと引き立てられてくる。
香りも塩の方が素材本来の風味をより強く感じられる。
◉【向付2】
佐渡産本鮪 剣先烏賊
定置網の30kgだったかな。
中坊サイズ以下で凄い旨味。
夏の国産本鮪としてはかなりレベルの高いもので、鮨屋も裸足で逃げ出す質。
銀座某鮨屋の親方からうかがった話では、鮪でも名を馳せた水谷翁もここの鮪美味ぇなぁと褒めていた程。
板長の話では、以前南大井に水谷翁が住居を構えていた頃はよく旧店にお見えになっていたという。
そう、ここまき村でも鮪の卸は当時藤田水産だったから卸繋がりでもあったのだ。
◉【蒸物】
4時間蒸した黒鮑 根室馬糞海胆 肝ソース
これは超白眉!!!
これも牧村板長のスペシャリテと言っても過言では無い、昨年も戴いた逸品。
もう何も語る必要の無い超絶美味。
器が鮑の形をしたもので裏にも趣向が施されていて観て楽しい、食べて楽しいの一時である。
◉【凌ぎ1】
江戸前梅雨穴子の一本寿司
加賀太胡瓜と新生姜の巻物
獅子唐揚げ
この独特の土臭い野趣溢れる風味と脂の乗りは江戸前でも羽田沖ならではの味わい。
梅雨時の栄養分を蓄え始めた頃の穴子は非常に美味。
昨年も戴いている羽田沖穴子の一本寿司は美味くて和食屋ナンバー1!
鮨屋ではないのでシャリは和食屋の味付けと炊き加減だ。
◉【凌ぎ2】
石川輪島産鰧(おこぜ)の色々
これは白眉!!
捌いてもずっと生きてた程の生命力豊かな魚でしたと。
身と内臓全てをこの一皿に盛り込む。
身には子を塗してあり一仕事されて美味しい。
皮は軽く炙って香ばしさを出したりと部位によって手当。
ポン酢と出汁の調合具合も申し分無く鰧を引き立てている。
食べ終わると皿が番傘模様であった楽しい趣向。
◉【強肴】
但馬牛イチボのローストビーフ
焼き茄子
イチボも美味いもんだ。
美味出汁も超美味い。
茗荷と和辛子が凄い良い働きをしている。
◉【食事】
岐阜長良川産鮎のご飯
これも昨年頂戴しているが、何と言っても蓋を開けた瞬間立ち昇って来る高貴な香りが堪らなく良い!
そして口の中いっぱいに広がる香魚たる鮎の風味。
丁寧に骨抜きした後に一夜干ししてイノシン酸を増幅させている。
◉【デザート】この日は珍しく2種
•静岡産マスクメロンのクラウン
スイカ
•牛乳プリンと小豆 抹茶ソース
◎【日本酒】
・天青風露 特別本醸造
・五凜 純米大吟醸 磨き45%
・澤屋まつもと 守破離
今日一は桑名産本蛤の椀。
これ程までに蛤の持ちうる要素がギュッと詰まった吸物は戴いたことが無い。
蛤特有の香りと強過ぎない絶妙なコハク酸の旨味の抽出バランスが優れていた。
この椀は長らく通い続ける当方にとっても初めての逢瀬であった。
◉ 【先付1】
・宮城県産紫海胆 生湯葉 菜の花 美味出汁
◉ 【先付2】
・飯蛸 ウルイ 辛子酢味噌
◉【椀】
桑名産本蛤の椀 若布 木の芽
◉【向付1】
豊後水道産2.0kg火曜日締め4日目虎河豚
余市の鮟肝
◉【向付2】舞鶴産30kg本鮪 赤身中トロ大トロ
◉【焼物】
甘鯛の焼き浸し 香味野菜黒胡椒掛け
独活、椎茸、京人参、牛蒡、三つ葉、さやえんどう
◉【焚物】車海老の叩き真薯 鹿児島産筍 薇 銀餡
◉【強肴】 但馬牛A5ランプ肉 低温真空調理 長崎県産アスパラガス バター
◉【凌ぎ】
喉黒炙り 湿り海苔
◉【食事】
・鯛茶漬
・南魚沼市塩沢産コシヒカリ
・香の物
本日の真鯛は淡路島産
香の物はキャベツで胡瓜、ラディッシュをサンドした物
と大根の糠漬
◉【デザート】
村田農園の苺と小豆餡 杏仁豆腐
◎【日本酒】
・澤屋まつもと 純米大吟醸
・日高見
・墨之江 谷風
・乾坤一 純米吟醸
※半合づつ
年明け早々まき村さんへ。
【30年1月の献立】
◉【先付】3種
•数の子ポテト和え
数の子と合わせるは、少々マヨネーズを入れたポテトサラダ風にしたもの。
•車海老 梅出汁ジュレ掛け 山芋 おくら
ジュレには梅を合わせてあるが、酸味が出過ぎぬ様抑えてサッパリと戴ける。
•生鱈子の炊いたもの 菜の花 胡麻クリーム
◉【椀】豊後水道産天然虎河豚の白子と自家製唐墨
唐墨椀は何度も戴いてきているが、虎河豚白子と合わせた椀は初めて。
吸い地には軽く葛でトロみを付けている真冬の椀らしい一品。
かなりのグレードアップ品であるが、サラマンダーで軽く焦げ目を付け香ばしさを出した白子は出汁の邪魔をせず浸透し、味に深みを与える。
エグい個性を立たせずに椀の世界の一役を担う一員としての存在。
あくまでも主役は吸い地をどう演出するか、コーディネートするかだ。
そこにはフンワリと摺り下ろした大根の存在が全ての素材の鎹(かすがい)となって見事に一つの世界へと纏め上げている。
言うなれば総監督の様な存在。
唐墨と河豚白子の二大スターにどうやってこの椀という世界を引き立て合い、演じてもらうか!
二大スターは椀の世界を壊しすぎぬ様、トロみが利かせてある吸い地の緻密な計算。
いき過ぎる(トロみが強すぎる)と二大スターを袖にするマドンナに成ってしまうところであるが、それでは物語が成り立たない。
ジャケにし過ぎず、絡むところは絡み、必要に応じて甘えていく巧みな操縦術と言うべきか。
また、吸い口の黄柚子や鶯菜の名バイプレーヤーぶりも忘れてはならない!
物語、世界観の中の一服の清涼感を醸し出す。
今回の椀も面白き趣向で恐れ入った。
◉【向付1】豊後水道天然虎河豚(2.0kg)
ポン酢には軽く叩いた余市の鮟肝が添えてある。
これを添えて戴くと、虎河豚のまた違った一面が垣間見れる。
それにしてもこの余市の鮟肝と自家製ポン酢との相性は神懸かり的な美味さ!
これだけで酒が進む(笑)
◉【向付2】舞鶴産本鮪(30kg)
◉【焼物】まき村風ぶり大根(氷見の寒鰤、風呂吹き大根 菠薐草)
寒鰤は軽く照り焼きにし、単体で戴いても十分に美味しいのだが、一緒に戴けば、お口の中で即席ぶり大根になる趣向。
ご飯と合わすほどの濃い照り焼きの味付けでは無く、あくまでもコースの中の一員としての立場を貫き通す。
◉【焚物】鹿児島産寒中若筍と若布 木の芽
早春への思い
◉【凌ぎ】豊後水道天然虎河豚の頭
アラの中でも河豚の頭の部位を丸ごと戴くのは初めて。
河豚本来の旨味とコクが力強い味わいで、そのままでも十分美味い。
まき村自家製のポン酢に合わせて食べると更に美味い!
◉【強肴】但馬牛A5のすきしゃぶ 白菜の芯
◉【食事】鯛茶(淡路島)
◉【デザート】紅マドンナ(苺)、クラウンマスクメロン、蜜柑のアングレーズソース
濃厚なアングレーズソースに負けない風味の果物に、仄かに利かせたミントの香りが心地良い。
◎澤屋まつもと 純米大吟醸
◎五凜 純米大吟醸 磨き45%
◎墨廼江 600k 大吟醸原酒
冬の食材を楽しみにまき村さんへ。
【29年12月の献立】
◉【先付】柿と紅白膾の胡麻クリーム掛け
これは昨年も戴いたまき村定番となりつつある先付。
観て鮮やか、食べて満足、正に誇れる日本料理!
大根と京人参は軽く酢漬けされており、ソースには酢は加えられていない。
短冊型に切られた柿は硬過ぎず柔らか過ぎずに適度にサックリとした歯触りが心地良く、甘味、旨味のバランスが素晴らしい。
柿の程良い糖度と大根と京人参の紅白膾の仄かな酸味が胡麻クリームとの融和を図っており、それはまるで胡麻ソースにはフルーツが入っているのかと錯覚してしまう程。
料理全体のバランスを取るためにそれぞれに施された切り付け、味付けが見事にお味に反映されている。
柿にコクがあるため、大根と京人参で酸味を、胡瓜は瑞々しく軽いタッチで柿と寄り添う。
緑のもみじと合わせるかの様に、緑々しい胡瓜を用いているのが憎い演出。
最後にアーモンドを散らして香ばしさを出し、水前寺海苔で塩の香りもアクセントにして風味に奥行きを持たせていた。
紅葉の器も翌日で今年のお役御免とのこと。
深い秋のひと時の爽やかな風の様に料理に彩りを与え、器も己のみでは射出せない膨よかな色合いを共に照らし合わすかの様に生き生きとしていた。
2枚だけ若い緑の葉との対比も良く、胡瓜と呼応していた。
◉【椀】車海老真薯の椀 鶯菜 黄柚子
何度か戴いている椀種だが、以前よりグレードアップされているこの椀。
3/2程は活の車海老をブツ切りにし、残りを擂鉢で当たって滑らかにつなぎとしての役割を果たす。
全てが車海老100%の素材の旨味が全面的に押し出してくる。
吸い地の昆布と鰹のバランスも良く、比重としてはやや昆布の割合高めに車海老の旨さを引き立てていた。
◉【向付1】豊後水道天然虎河豚
今回は1.3kgとやや小振りだが、以前より牧村さんはあまり大きな虎は使われない。
せいぜい2kg程だ。
しかし味わい至って深く、イノシン酸の旨味がジンワリと舌を覆っていく。
先ずはそのまま戴いてジンワリ、次に分葱を巻いてポン酢に付けて戴き更にジンワリとした旨味が口一杯に広がっていく。
三河と遠江も良いお味だ。
◉【向付2】氷見産寒鰤
虎河豚からの流れが見事で自然と鰤に舌がアジャストしていく
何たる綺麗な身の旨味、何たる綺麗な脂のコクで間違い無く今季一!
魚体12kgの堂々たる風格で切り身からも煌々と光を放っており、牧村板長の庖丁の冴えで切断面の滑らかにして口当りは撫でやかに心地良い。
背と腹と愉しめる様になっているのも嬉しい。
身と脂のバランスも神掛かっているね。
年を越すとバランスが脂の方に傾いていくため、刺身で戴くには12月までがベスト!
添え物の大根おろし、拍子木切りの山芋、本山葵、そして忘れてはならぬしめり海苔を乗せて戴いたところ、更に奥行きのある深遠なる旨味に天壌無窮(てんじょうむきゅう)が如し余韻に酔いしれる。
そこで手取川をキュッとやって味を膨らませつつも未練無く余韻を断ち切る。
また、深い紫蘇色の器が寒鰤の色合いと見事に調和している所も見逃せない。
◉【強肴】佐島産甘鯛、椎茸、江戸春(春菊)、蕪のソース
蕪のソースが秀逸で、すりおろした蕪を出汁で伸ばし、軽く吉野葛で整えた物だ。
出汁は蕪の個性を消さない程度に旨味を利かせてあり、蕪の風味を最大限に引き上げる仕様。
更にしっとりと焼き上がった甘鯛を優しく包み込み、脂と溶け合って旨味を伸ばしていく。
肉厚の椎茸が美味しいこと!
口直しの春菊は江戸前の物で、苦味やエグ味が柔らかく、風味があるのが特徴。
◉【酢物】津居山産松葉蟹
提供温度が冷た目であったのだけが残念。
身の入りや旨味は相応。
三国や間人等の近場の漁場物と比べればそれなりだが、十分に味わいある蟹だ。
◉【焼物】秋田産鴨葱、リンゴおろし、藤九郎銀杏
本日一の白眉!
肉厚で弾力のある見事な鴨肉には的確な火入れが施され、噛むとジュッとフレッシュな旨味が溢れ出てくる。
色々な所で鴨肉は好物なので戴いて来ているが、これ程しっとりとして瑞々しく旨味溢れる焼き方の鴨肉を戴いたのは正直初めてかもしれない。
皮目はカリッと焼き上げ、身と皮の間のゼラチンが上手く活性化しており艶めかしくネットリとしつつもサラリとした脂の旨味がまた身のコクのある美味しさを引き立て、口内は幸福感で満たされる。
また、葱は芯を抜いて美味しい外側だけをチョイこんがり焼いて、一口大に切られた鴨肉の上に鎮座し、葱の甘味と香ばしさが更なる旨味をアシストする。
添えてある大根おろしが憎い演出。
ただの大根おろしかと思いきや、すりおろした中に賽の目に林檎が仕込まれていた。
鴨肉ってちょっとした甘味を展開すると旨味が倍加してくる。
もう一つの添え物の銀杏も、大きな藤九郎銀杏だ。昔から変わらぬ一品で美味い!
控えめながらも華のある円形の器は九谷焼とのこと。
これ初めて観た!
◉【蒸物】湯葉と雲子 美味出汁餡
冬の味覚の雲子(真鱈の白子)にトロリとコクのある湯葉を合わせて蒸し上げ、仕上げに美味出汁餡を掛けた一品。
極少量の生姜の利かせ方が野暮ったく無くて良い。
これは身体の芯から温まる逸品だ。
こんなシンプルな一品にも我々素人目からは想像し得ない様な幾通りの工夫が凝らされているのであろう。
◉【食事】津居山産香箱蟹と松葉蟹の蟹飯
香箱蟹を使いたいがどうするかを考えた所、ご飯にする事で蟹の旨味を味わってもらう事となったという。
雌の内子と外子、松葉蟹の胴の部分をご飯と混ぜて戴く。
ご飯の出汁も蟹を使って旨味を利かせてほんのりと仕込まれた生姜も出しゃばらずに良いアクセントとなっている。
蟹の旨味がギュっと詰り、お焦げでは凝縮した香ばしい旨味を愉しめた。
◉【デザート】越後姫と山形ラフランス、ラフランスのソース
満足感のある甘味と後口のほんのりと酸味のバランスが素晴らしい均衡を保っている。
板長も越後姫と出会ってからは味のバランスに惚れ込み、仕入れているとのこと。
ラフランスもバランスの良い塩梅。
下のラフランスソースと上の白ワインのジュレが果物の旨さを引き立てている。
【日本酒】
◎天青
◎手取川 石川
色々とご配慮頂き、牧村板長を交えての料理談義、食材談義も愉しく、今回も豊かな時間を過ごさせて頂いた。
この日は両親を伴って定番のまき村へ。
ここが一番美味いし落ち着いて料理を愉しめるとずーっと好評を得ている。
さて、秋の味覚、頂戴しよう。
それにしても松茸をお願いしていたこともあり牧村板長とママさんから伺ったのだが、創業してから今年程松茸の不作の年は無く、また価格も酷く高騰してしまっており不本意ながらお客様にご負担を掛けてしまうことになってしまってと。
この時期、頼りの国内でも有数の松茸の産地の長野産は虫喰いで中にスが入ってしまっているのが多くてとてもお料理の前面に出せる代物ではないとの事で使えず。
しかも松茸が店頭に並んでいないという緊急事態が発生したのも板長の料理人人生でも初めてという松茸未曾有の年。
本日の品は長年のおろし業者の付き合いから岩手産の選りすぐりを調達可能となって今日お出しする事が叶いましたと。
傘の開いていない物は茶碗蒸しに、開いた物は土鍋ご飯で提供され、用途によって使い分けされていた。
【先付】車海老、帆立の酢ジュレ、山芋叩き、若芽
文句無しの美味しさで、酸味が程良く利いていてスタートとしてベストチョイスの先付だ。
海老も帆立も頗る甘い。
【椀代り】松茸の茶碗蒸し
香り鮮烈味深淵。
蓋を開けて香りがググンと立ち昇る。
こう来たかーと思った。
そして板長のニヤリと笑顔がw
松茸は傘が開いていない物を薄くスライスした生という今までこちらで戴いた事の無い新たなる試み。
土瓶蒸しでも松茸の良き香りや味は出汁に滲み出て最高に美味しいのだが、純粋に松茸の風味を愉しむのなら断然こちらが上だ。
出汁代わりの茶碗蒸しの熱で程良く蒸された松茸は単体では発揮し得なかった高貴なる香りを射出して旨味も活性化させていた。
ポイントはこの切り方だ!
薄くスライスする事で、熱を入り易くして旨味と香りの活性化を図っているのだ。
これは今まで有る様でお目にかかった事の無い逸品であった。
【向付】大間産本鮪(赤身、中トロ、大トロ)、鮃、達磨烏賊
この時期の大間にしてみればかなり美味い鮪だ。
上から赤身、中トロ、大トロと配置されており、鮪の部位違いの味を愉しめる配慮。
昔から牧村さんの鮪を戴いているか、一貫して味わいに疑問符が残るような物は無い事が凄い。
それは鮪おろし先が変わっても、それを客に悟られない様に質を落さず厳しく選び抜かれている眼力と人柄があっての事であろう。
有名おろしからピンの鮪を仕入れていてもいずれは自分の店が傾いてしまう。
愚かなピン争奪戦からは早々に撤退し(元々参加していないが)、そこで自分のコースの一員として担う役割を果たせなくなったところは、数多ある市場内の業者から適正価格で入れられるおろしから調達すれば良い。
またこの達磨烏賊(剣先)の庖丁の入れ方が見事で口の中でネットリと旨味が絡み付く。
【焼物、揚物】梭子魚若狭焼き、松茸コロッケ、和栗
松茸のコロッケはお初だ!
熱いうちにとのことで初めに手を付けた。
程良くマッシュされたジャガイモ、そっと後ろで引き立て役を買っている牛肉のミンチ、そして薄切りながら存在感を十二分に発揮している松茸とのコラボはコロッケ界の貴公子とでも言おうか。
大変バランス感覚に優れた配合だ。
旨味の強過ぎるジャガイモや牛肉だと松茸の存在感が希薄になり、何を主眼としているのかボヤけてわからなくなる。
また松茸もコロッケという料理の概念からはみ出さぬ様ある意味制御された感を受けた。
それが超絶的なバランスを生み出しているのだ。
梭子魚(かます)の質も良く、最高の火の入れ方で皮目香ばしく中フックラふわふわジューシーなのだ。
口直しの和栗も絶品!
【煮物】大原産雌貝鮑、芋茎
シーズン終盤になるが、立派な雌貝をじっくり蒸した物だ。
3時間程蒸し上げたものだ。
鮑の馥郁たる香り、ムチっとして歯に押し返してくる弾力は味付けは違うがしみづの蒸し鮑に似ている物がある。
初夏に戴いた千倉の黒鮑も秀逸であったが、蒸したり煮たりする素材としては雌貝の方が口当たり柔らかでムッチリとした弾力感も愉しめる。
芋茎の煮浸しも単品でも注文したい美味さ。
シャキッとした食感を残し、出汁を良く染み込ませてある。
【蒸物】毛蟹真薯 蟹味噌 銀餡掛け
周りのコーティング部分だけ擂り身で、中は全て毛蟹という贅沢極りない真薯だ。
上にタップリと添えられた蟹味噌は蟹と海のエキスが詰まった極上の旨味。
銀餡も良い。
【強肴】松坂牛シャトーブリアンの芯の芯
茄子の煮浸し、無花果胡麻だれ
今までジャンルを問わず食べて来た東京の牛肉の中でも一番美味いシャトーブリアンだった。
肉の表面は良い具合にカラメル化させて旨みを閉じ込めに成功しており、その後遠火でじっくりと火を通し、中のレアな部分はほんのりと温かい。
ここはお魚でもそうだが肉への火入れが絶妙で、当方の好みに合う。
赤ちゃんの柔肌の様な肌理の細かい舌触りと、牛肉の噛み締める美味さも愉しむことが出来た神牛だ。
そこから容赦無く肉の旨味エキスがジュワッと出てくる。
挿しの部位ではないので垂れる程ではないが、皿に肉汁が溢れること露一つ無く、肉の組織全体にエキスを纏わせている、内包させているという表現の方がピッタリと来る。
これを特製醤油と和芥子で戴くのだから泣かせる。
牧村板長は当方の泣き所(好み)を熟知されているので、塩とかでは無く和食屋の腕の見せ所の醤油をあてて来たことが嬉しい。
いちいち聞かなかったが、醤油もこだわりの料理屋なら自分の所で複数の種類を調合しているものだ。
かく言う火入れも凄い、肉質は元より極上、食べ方も申し分無い。
板長の料理の技術や感性のみならず、素材の調達力も十二分にうかがえる逸品であった。
口直しの域を超えた焼き茄子の煮浸しも瑞々しいが余分な水分は抜けて旨味が凝縮した物。
もう一つの口直しの無花果の胡麻だれは、コースの一品料理と言われても遜色のない出来と美味さ。
余計な水分を排し、旨味が凝縮して濃厚な無花果の風味と甘味を愉しむ。
胡麻だれにはアーモンドスライスもさり気なく散らされており、味に一層の深みを与えていた。
【食事】岩手産松茸ご飯
今日の食事は鯛茶漬けかと思いきや、留椀の味噌汁が提供され、これはと思った!
板長直々に配膳頂いた土鍋の蓋を開ける。
本日の主役はここでも登場で、たくさんの松茸に彩られた炊き込みご飯に皆声が上がる。
客が見える前からご飯を研ぎ、出汁に浸し、客の食の進み加減で炊き上げ始められた、正に我々の行動に寄り添う様にライブの調理が施された松茸ご飯。
松茸以外余計な物は一切排除された、先程の椀代りの茶碗蒸しと通ずる潔さ。
松茸の香り鮮烈、歯応え活き活き、出汁の旨味濃過ぎず薄過ぎず絶妙と松茸のコラボ、土鍋で圧力を掛けてふっくらツヤツヤな見事な炊き上がりに惚れ惚れする。
美味いとしか形容のしようが無い。
【デザート】岡山産シャインマスカットと梨のオーロラ
松茸が不作の中、これ程までに考え尽くされ、無いなら無いなりに別の角度で料理を構築する臨機応変に対応するまき村の料理で今回も両親は大変満足していた。
いつもよりやや値段が上がってしまったが、常識の範囲内で店の利益の方が減ってしまっている事を理解せねばなるまい。
おろし業者も損をしていれば、大岡越前の三方一両損だ。
それぞれで損はするが丸く収まる。
いつ来ても何か新たな発見のある、長年通っている常連でも新しいお客さんでも双方愉しめる、そんなお店だ。
初夏のまき村で、酷暑を迎え撃つお料理に舌鼓
【先付】玉蜀黍の手毬揚げ、蓴菜と夏野菜、胡麻和え
初夏の先付としては口当たりの良い身体に馴染みやすい物ばかり。
牧村さん定番の玉蜀黍の手毬揚げは当方が初めて食べた糖度が半端なく濃厚なポタージュを戴いている錯覚に陥ったものだ。
出汁と酢の加減も程良き塩梅でお腹がこれからのご馳走を受け入れ易くするための胃の柔軟体操をさせてもらっている様だ。
叩いて丸くなったオクラは単体で戴いてもよし、他の夏野菜にソースの様に付けて戴いてもよしで面白い趣向だ。
胡麻和えは椎茸の旨味とアーモンドが心地良いアクセントとなって複合的な美味さを奏でる。
【椀】千枚鮑の薄口仕立て(黒鮑と玉子豆腐)
以前にも椀で玉子豆腐の組み合わせはあったが、鮑とのコンビネーションは初めて。
飾り包丁を入れて薄切にされた鮑は軽く葛粉を纏わせてあるが、出汁に己の旨味を即座に馴染ませ、且つ葛粉のコーティングでカスカスになり過ぎぬ程度に旨味の排出を抑えてある。
加えて食感も良くし味蕾への旨味の到達を早めていた。
出汁は椀種からの旨味も融合してこの上無き美味さ。
【向付1】天草産活鱧の焼き霜造り
これから旨味を増していくのであろうなという味わい。
梅肉ポン酢でサッパリと戴くのだが、下味だけのお味でも十分美味しい。
【向付2】気仙沼産鰹、舞鶴産達磨烏賊(剣先)
達磨烏賊のモッチリとしてネットリと濃厚に舌に絡み付く旨味は艶めかしく艶冶。
塩で戴くと更にネットリ感が増す。
鰹も初春のものから初夏へ向けて養分を蓄えてきたもので、赤身の旨味が濃くなってきている。
佐賀の湿り海苔をちょっと付けて食べると味わいアップ!
【蒸物】千葉県千倉産蒸し鮑と宮城県産紫海胆、長芋拍子木
鮑の殻を模した鮑貝皿の波模様、彩りを考慮しつつ立体的な素材の盛り付けが見事だ。
鮑は黒鮑を使用し、4時間蒸したものを大振りにカットして口福感で一杯となる趣向。
美味出汁ジュレの利かせ方も秀逸で肝ソースとの相性も良好でバランス感覚に優れた皿だ。
鮑、海胆、長芋、肝ソース、美味出汁ジュレに散らされた穂紫蘇の苦味も加えて全て口に含ませ、噛合わせた時の幸福感たるや筆舌し難し!!
それにしても椀の時の顔と、蒸し物になった時の顔とは全くの別人(別貝?)で、個性の引き出し、引き立て方の素晴らしい演出を観せてもらった。
【凌ぎ1】羽田沖穴子の炙り寿司
ほぼ一尾を使用した贅沢な一本握りだ。
今年の羽田沖は赤潮が大量発生して今後は漁が出来ないため本日が最後になる予定ですと牧村板長より説明あり。
今夏を振り返ると夏場は羽田沖をはじめとした江戸前穴子を愉しむ唯一の時期なのにそれが叶わなかった。
というわけで、こちらで今夏最後の貴重な沖穴子ちゃんを♪
焼きにした時の初夏の江戸前産は何とも抜群の香りで満ち溢れるね~♡
煮炊きには脂分の多い対馬も捨て難いが、焼きについては羽田や富津等の江戸前野趣溢れる風味に筋肉質且つ繊細な身の肉質は唯一無二だ。
そして蒸しと炙りの仕事を施した穴子の筆舌し難い爆発的な旨味は梅雨穴子の真骨頂と言ったところ。
漬け焼きのタレはサッパリとして穴子の邪魔をしないが香ばしさと軽い旨味の添加の役割を果たす。
軽く振られた擂り青柚子の爽やかな香りも食欲を増す。
酢飯は砂糖の甘味も抱持し、酢の酸味は穏やかで、あくまでも和食のコースの中の一員であることを確証付けていた。
【凌ぎ2】銚子産金目鯛の炙り寿司
金目鯛も炙りを入れると余計な脂が抜けて旨味が凝縮する。
ちょい甘酸っぱ味の和食のシャリともバッチリ合う完成度の高い和食屋の寿司だ。
【焼物】広島産真魚鰹の漬け焼き
花菖蒲の絵皿に盛られた真魚鰹は、漬け焼きの味噌の調味が良く、上手い具合に身へ味が浸透している。
シットリホックリとした焼き上がりで瑞々しい。
添えられた大根おろしの他、鰹節を塗した伏見唐辛子の輪切りの仄かな苦味がよい口直しとなり、更に真魚鰹を美味しくさせてくれる装置となっている。
【強肴】佐賀牛ザブトンのローストビーフ、焼き茄子
脂肪分の少ないザブトンの部位にジックリと火を通し、程良い肉の繊維を残して噛んで歯応えを愉しみ、旨味が溢れ出す事を愉しむ。
グレイビーソースではなく鰹と昆布の出汁の餡が上手くまとめており、和芥子のアクセントで肉の風味を引き立てていた。
焼き茄子の瑞々しい甘味とホロ苦い風味で口直しにもなり、肉の旨味を際立たせる。
【食事】長良川産鮎御飯
超白眉!
土鍋の蓋を開けた瞬間、皆の歓声が湧いた。
何とも豪勢でダイナミックな鮎御飯なのだろうと。
当方も長年通っているが、これ程までに鮎を敷き詰めた鮎御飯は観たことが無い。
(1人2尾の計算)
鮎は一夜干しして旨味を凝縮させている。
牧村さんの魚の一夜干しはどんな魚でも絶品だからなぁ♡
鮎は卸してから丁寧に小骨を抜き、内臓と塩水を混ぜたに汁に漬けてから一晩干したものだ。
御飯の炊き上がるタイミングを見計らって直前に炙り、炊き上がったばかりのご飯の上に乗せ、再度蓋をして軽く蒸らして味を馴染ませる。
客の前で初めて鮎と御飯を混ぜ合わせて供する。
半身は御飯の上に添えられた。
肝の苦味と旨味が愉しめ無いのは残念であったが、鮎そのものの素材の味をここまで引き出しておられることに凄味を感じた。
下地の御飯への味付け具合も鮎を邪魔すること無く、主役を引き立てる秀逸な味わい。
それは旦那が外で思いっきり能力を発揮させられる様そっと寄り添う出来た伴侶の様な。
鮎自体タンパクな風味と味わいの素材をこれ程までに旨味を開花させ、小骨一つ無い安心感と信頼感で一杯な鮎御飯は牧村夫妻そのものの優しさが一杯詰まった超絶美味い御飯だった。
【デザート】クリームチーズのムース、マンゴー、ワインゼリー
最後まで手抜き無しの牧村さんのコースの締めにふさわしいデザートだ。
クリームチーズを口当たり良くムースにして酸味を和らげ、マンゴーの甘味を上手くコントロールして別次元の味わいへと昇華させている。
【日本酒】この日のメニュー外まき村セレクト
◎五凛 純米大吟醸
◎墨廼江 吟星四十
◎墨廼江 600k 大吟醸原酒(お味見♪)
3月のまき村へ
この日は雛祭り仕様の献立。
◉帆立、紫海胆、山芋の美味出汁ジュレ掛け
◉津居山産松葉蟹真薯の椀 鶯菜 柚子
ほとんどが松葉蟹の贅沢な真薯。
◉青森産鮃、壱岐産鮪40kg、佐島産障泥烏賊
創業時より藤田の鮪であったが、現在は米彦の鮪とのこと。
この米彦の鮪も中々侮り難しで小型のチュウボウなのに旨味をしっかり主張してくる良品。
◉鰆の付焼き 蕗の薹 大根おろしに山椒
付焼き地に蕗の薹の身を浸して旨味を地に移したモノを繰り返し塗って仕上げる。
身のしっとりとした火入れも素晴らしいが、蕗の薹の柔らかい苦味が甘味のある鰆の脂と相まって新たな味覚を愉しむ。
◉八寸
•桑名の蛤、独活・山芋・油揚の刻んだモノ
•室津産赤貝、若芽、加減酢(”生姜)
酢は千鳥酢でマイルドな酸味に甘味も程良く赤貝の甘味を牽引する。生姜の風味がアクセント。
•大分産車海老 菜の花 豆腐と白胡麻の白和え
•淡路島産飯蛸 ウルイ 梅肉ジュレ
◉桜の葉寿司
竹岡産細魚、出水産春子、空豆、薑
◉鹿児島蒲生の筍と山形のタラの芽の天麩羅
◉但馬牛のしゃぶすき仕立 トマト アスパラ
◉松葉蟹の蟹味噌
◉鯛茶漬
淡路島産真鯛、南魚沼産こしひかり、香の物(大根と胡瓜の糠漬)、刻み海苔
◉デザート
くろばくらぶの栃乙女、トチオトメのプリン、苺ソース、ワインのジュレ
◎鄙願 大吟醸 半合
◎五凜 純米大吟醸 磨き45% 1合
◎澤屋まつもと 純米大吟醸 半合
この日は再確認も含めて牧村板長と出汁談義をし愉しい一時であった。
2月のまき村へ。
今日がお初の友人を伴って。
今回目を引いたのは、2種の梅の器。
それに伴って梅を巧みに使った料理に早春を感じる。
◉前菜
[その1]牡蠣の海苔巻き、空豆、河豚の煮凝り、フォアグラゼリー、玉子、赤ワインで煮た小梅
1月にも出たラインナップ。
人気の声が大きくリクエストに応えて今月もという事になったと。
[その2]竹岡産細魚の昆布締め梅肉ジュレ
多面的な梅の器が目を惹き、梅のジュレとの親和性を深くする。
梅ジュレは出汁に梅肉を濾して馴染ませたモノで、クエン酸の嫌味な角は取れており美味出汁と完璧に融合。
軽く塩と昆布で〆られた肉厚な細魚の旨味を控え目にアシストして魅力を演出している。
叩いた山芋も良きアクセント。
◉椀
鹿児島産活車海老と玉子豆腐の椀 芋茎の葉 柚子
椀種と椀妻が平置きとなって意表を突かれた配置。
普通であれば、玉子豆腐を下に敷き、車海老を上に置き妻と吸い口をあしらうかと思われるが理由を聴き損ねてしまった。
単なるビジュアル的なためだけとは思えない牧村さんの深謀が込められていると推察する(意外と理由は無いかもしれぬがw)。
椀種の車海老は先程まで生きていた活のモノで葛粉を塗してさっと湯に潜らせて甘味が極限にまで引き上げられている。
もう一つの椀種の玉子豆腐に妻の芋茎の先端の葉の青み、吸い口の柚子があしらわれている。
豆腐は円やかでくど過ぎない吸い地と馴染んで染み染みと旨さを堪能する作りとなっている。
また双方同時に味わうと甘味の幅が限り無く広がる何とも奥床しき椀だ。
◉向付
・豊後水道の天然虎河豚薄造り
1.6kgで3日寝かせたモノ
塩でも試してみたくなり、ご用意頂いたモノは対馬の塩とのこと。
塩だと身がネットリとしてくるから面白い。
・長崎壱岐産30kg本鮪
チュウボウクラスでこれ程旨味ある鮪は記憶に少ない。
赤身だけで無く、中トロ、大トロと部位ごとの提供で食べ手の心を掴んで離さない心憎い演出。
しかし突出し過ぎない統制の取れた旨味は牧村さんのコースを通しての一品の位置付けとしてよく理解出来る。
それはこちらに初めて来店して食べたコース料理としてのワンパーツ→鮪の美味しさの意味合いから変わらない概念。
今は藤田ではないが、しっかりとした卸より厳しい目で選び抜かれたモノであることは間違い無い。
◉焼物
山口産ぐじ若狭焼き
◉八寸
•根室産馬糞海胆と生湯葉の美味出汁ジュレ
•噴火湾産甘海老と芋茎の美味出汁ジュレ 調味梅肉添え
•煽烏賊のおかき揚げ
•ほうれん草ともやしの共和え
•ドンコ椎茸の白和え(豆腐)
•浅蜊と蕗の薹のマリネ
煽烏賊のムチっとした肉厚な食感は適度な歯応えで抑えられ、身肉の歯切れよく衣の香ばしい風味が烏賊のポテンシャルを最大限に引き出されていた。
調味梅肉は、数種類の梅肉の果肉取り出し裏漉ししたものを合わせて、酒に梅の種を入れて煎り酒とし、梅肉と合わせた物を梅肉と合わせた物を出汁ジュレに添えているとのこと。
浅蜊と蕗の薹の旨味と苦味の利かせ方が超絶的で印象深く舌と心に刻まれる。
突出し過ぎない絶妙な苦味は心地良き大人の味わいで牧村さんの技量の高さを改めて感じ入った次第だ。
◉強肴
天然虎河豚の腹出しの白子焼き
そのままでもイノシン酸が十二分に顔を出している旨味が凝縮された虎河豚。出汁のポン酢も美味!
◉強肴
宮崎牛のしゃぶすき仕立て 白菜の芯
◉食事
鯛茶漬け(本日は淡路島のモノ)
伊賀焼きの土鍋
水分量を吸い込む量が違う
中蓋無くても上手に炊ける釜
◉デザート
いばらキッス(苺)
ペルーのビーナスマンゴー
愛媛のせとか(柑橘)
ヨーグルトソース
白ワインのジュレ
単なるフルーツの寄せ集めの様な感じも受けるが牧村さんの手に掛かるとかなりクリエーティブな仕事をされていることに気付く。
ヨーグルトは自家製で酸味を程良く抑えたソースとしての役割を担い、酸味の利いた物には円やかにし、甘味が立つ物には酸味をプラスしてくれる良い意味で中庸化させた旨味の演出。
特にせとかの酸味に滑らかなヨーグルトソースが渾然一体となって小躍りしそうな程の一体感が創生されていた。
またワインジュレが鋭角的に香りは立たせているが軽く煮切ってあるためアルコール分は飛ばして旨味を残したジュレとなっており、ヨーグルトとは別角度からの仄かな酸が全体の味を引き締める。
◎日本酒
•日高見 1合
•澤屋まつもと 1合
•天青 茅ヶ崎 半合
お初の可愛い鳩型の酒器(鳩燗)は直に土や炭に入れて燗酒に出来るモノだ。
今回は酒に合う料理に磨きがかかったモノであったことと楽しいひと時に酒が進み過ぎてしまった。
松が明けて1年振りに両親を伴いまき村へ和食初め。
献立の内容は1月初旬なこともあって正月料理の様相もチラホラあったが、まき村さんらしい緻密な仕掛けもあったり定番モノがあったりと緩急織り交ぜて愉しませてもらった。
【まき村2017年1月の献立】
【先付】鹿児島産車海老の梅肉和え
うるい、叩き山芋、美味出汁ジュレ掛け
梅干と梅干の種を一日煮出して旨味エキスを車海老と和え、ジュレと合わせた一品
普通の車海老のジュレ掛けに見せて、初手から仕掛けをバシバシと掛けてくる業師だ。
【椀】唐墨と焼餅の薄葛仕立ての椀
大根おろし、鶯菜、柚子
以前にも戴いた記憶のあるスペシャリテな椀だが、バージョンが変わっている様な。
先ずはフワリと吸い口である黄柚子の香りが鼻腔を通り、薄く葛でとろみが掛った吸い地を味わう。
玄妙にして深淵、正に和食の華。
そして、当方の一番大好きな調味"King Of WAN”だ!
どこで食べてもここの椀の吸い地の美味さには勝てない当方基軸の出汁だ。
香ばしくて柔らかい。
餅は焼かれているが、滑らかで障りない舌触りでまるで搗(つ)きたての餅みたいだ。
何気ないようで、これは凄い技だわ。。。
焼けた硬い部分ははがしたのだろうか?将又遠火で炙って硬くなるギリギリで引き上げたのか?この微妙絶妙の狭間の戦いだ。
そこに大根おろしをふんわりと盛り、雪鍋の様で雪鍋でない不思議な感触。
一寸蕪蒸かと思わせるような舌触り。
【向付】大間産鮪と青森産鮃
しめり海苔、酢橘、山葵
京焼の緑緑とした器で刺身が映える。
向付の大間の鮪はまだ12月の力のある旨味と肌理の細かい舌触り。寒鮃は絶好調だ。
山葵はしっかりと辛いだけではなく、奥底に甘味もあり、ネットリと粘り気がある優れもの。
また、この海苔と一緒に鮪を食すと鮪の香りが更に引き立ち、旨味を増す。
【焼物】まき村風氷見産鰤大根
大和芋、青海苔、春菊若芽
これも何気ない寒鰤の照り焼きなのだが、身のふっくら感とシットリとした保湿量で口の中は旨味のエキスで溢れかえる。
敷き大根の出汁の含ませ方など超絶的で、鰤と一緒に戴くと双方の旨味が更に上がる。
【八寸代り】
{一皿目}海老と春子の手鞠寿司 菜の花西京漬 マイクロトマト
{二皿目}フォアグラゼリー、カステラ玉子、蒲鉾、小梅赤ワイン煮、千社唐(チシャトウ)の西京漬、蕪サーモン、数の子ポテト
{三皿目}黒豆・空豆を炊いたモノ、干し無花果のワイン煮
簡素で質素にみえるが、どれもこれも一手間も二手間も加えられた家庭では決して真似の出来ない逸品ばかり。
観る人が観れば絶対に分かるであろう。
これを普通という観念からしか捉えられない御仁はまだまだ修行不足だ。
例えば、フォアグラゼリー。
これは鶏をミンチにしてレーズンと胡桃を入れて炊く。
型に一度流してフォアグラを真ん中に入れて固めて、上にポルト酒のゼリーを流して固めて完成する。
複雑多岐にわたる幾層もの複合的な味わいは幸福を感じずにはいられない美味さである。
小梅は針で細かく刺した物をワインで煮てほんのりと甘い仕上がりになっている。
千枚蕪をサーモンで巻いたモノも美味しかった。
聴きそびれたが、カステラ玉子の仕事は江戸前鮨の玉子焼きとは全く違った方向の仕事で、焦げ一つ無い見事な仕上がり。
凄いフワフワなのだが適度なムッチリと弾力もある何とも不思議な食感。
そして口の中でシュワッと無くなってしまうのだ。強いて言えばハンペンをムッチリとさせた様な食感。
焼いているのか蒸しているのか。。。しかしカステラは型に流して焼く物だからなぁ。
味は抜群に美味く、先月戴いた銀座しのはらの玉子焼きの上を行く仕事。
【炊合】鹿児島県姶良市蒲生産の早掘り初筍含ませ煮
若芽、木の芽
正に新春の幸の味!
寒風にさらされず、外気より暖かな土の中で温々と滋養を蓄えて成長してきた山の恵みを頂戴した。
若い味だが3月以降の成熟したモノには無い柔らかな身と風味が素晴らしい。
【強肴】佐島産天然虎河豚の白子焼
佐島でも虎河豚捕れるんですかい?!と思わず聞いてしまったあまり知られていないと思われる佐島の天然虎河豚。
その白子を軽く焼いて美味ポン酢で戴いた。焼き白子って何だか焼きおにぎりや焼餅のような薫り高い香りが堪らない。
【強肴】佐賀牛(A5)すきしゃぶ仕立
白菜の芯(しん)
昨年も戴いた、これも定番化しつつある肴。
通い始めて以来、最後に追加注文対応で牛肉を用意されていたが、現在はおまかせコースの1パーツとして登場する。
牛肉で蕊を巻いて食べると非常に美味い!
牛のコク深い味わいを蕊がしっかり受け止め、サラリとした旨味に落ち着かせている。
牛と蕊への加熱加減が素晴らしいため、この組み合わせが成り立つ。
また、割り下に和芥子を少量溶いてあるのが憎い演出で牛肉を重くさせない工夫がここでも観える。
【食事】鯛茶漬け
香の物、海苔
今更何も言うことの無い美味さだが、1月の真鯛の美味さは本当に別格で海の魚の王者だ。
それにテッパンの胡麻ダレの美味さと相まって、炊きたてのご飯の美味しさと美味出汁と合わさって美味さの四重奏だ。
今回初めてお目にかかったのは、人参の燻りガッコ。これだけでご飯一膳いけちゃうぞ!
【水菓子】こみつ林檎、越後姫苺、松浦さんの紅マドンナ
水菓子まで手抜き無しの選び抜かれたフルーツ達。
お初のこみつ林檎の甘くて且つ爽やかな酸味もあるバランスのとれた素晴らしい林檎だ。
【日本酒】
◎獺祭 発泡にごり酒 山口
◎横山 五十 純米大吟醸 長崎
◎澤屋まつもと 純米大吟醸 京都
【28.11.25追記】
今回は初めてお誘いを受けての素敵な方々と嬉しい訪問。
久方ぶりのまき村を愉しませてもらう。
どの品も隙の無い美味しさで巧みに旨味を引き出された。レビューされている他のレビュワー様方よりも此方には相当古くから来させてもらっているが、本質を捉える基本軸は変わら無い中で新たな仕事もチラホラと散見されて古い客にも飽きさせないご主人牧村さんの枯渇しないアイディアとホスピタリティの素晴らしさに毎回感じ入る。
また新しい顏でママさんのサービスに惚れて今はアルバイトで勉強し、来年度からこちらで勤める事になった可愛い仲居さんも登場して益々目が離せなくなった(笑)
【まき村2016年11月の献立】
◉柿の胡麻和え、大根と京人参の酢漬、胡瓜、水前寺海苔、アーモンド
皿から楓の赤が映える紅葉に実りの秋の象徴の一つ"柿"がメインの前菜皿。中に2枚だけ葉が若い緑な物があり対比が良いね。素材に柿と京人参の橙色と赤色、胡瓜の緑色との対比とも繋がっているのも見逃せない。
短冊切にされた柿に紅白膾(大根、京人参)の酸味の濃淡の付け方が憎い演出。さっぱりと清涼感のある胡瓜に磯の香りが仄かに香る水前寺海苔。アーモンドの香ばしいアクセントも見逃せない。
これらを纏め上げるマエストロは白胡麻を軽く煎った物を擂鉢で丹念に当たった調味ペースト。柿の甘味、膾の酸味、水前寺海苔の塩味、口直し的な爽快感ある胡瓜と一見バラバラな素材に軽く下味をつけて胡麻ペーストと馴染みやすくしてある点も見逃せない!
システマティックな話を例えにすると、柿の胡麻和えという完成された料理は一つのシステムだ。
柿を始めとする野菜・藻類は主役のソフトウェア(アプリケーション)、調味はミドルウェア、胡麻ペーストはOSであろう。どれが欠けてもシステムは成り立たない。どれかのバランスが悪ければ上手く機能しない。
特に料理人の腕の見せ所はミドルウェアの当て方だ。ここを間違うとどんなに高級なソフトを導入しても料理の完成形となるシステムに対するパフォーマンスも下がり、献立たるハードを制御するファームとも上手く噛み合わないことにも繋がる。
まぁ、例え話が過ぎたが要は料理人の施し一つで最高品質の素材の生き死にが決まるという事だ。
◉車海老の椀 (輪島塗)、鶯菜、(吸い口)黄柚子
只々感嘆、正に日本料理の華。
これは以前に数度出逢っている椀種であるが、まき村の椀の3本の指に入る程大好きな味わいだ。
車海老から射出される甘味が半端無い。
真薯は口当りも完全に擂鉢で当たったフワフワな口当りな物と庖丁で粗めに叩く程度に留めてプリっとした食感を残して別角度からの旨味の捉え方が素晴らしい。
そして何よりも当方には牧村さんの吸い地が好きで好きで堪らない。井之頭五郎ならば「この吸い地、俺にドンピシャ!」と心で呟き捲るであろうこと必定。これぞ椀の吸い地と言える鋭敏なバランス感覚に溢れる超絶的な出汁加減。旨味をキチンと利かせ、塩分の乗り加減も程良いので物足りなさは皆無。始めから最後まで全く飽きる事無くいつまでも吸っていたい出汁だ。椀種と合わさって更に旨味を増すこの感動は社会人としてヒヨッ子だった頃から現在に至っても少しも変わっていない稀有な存在である。
◉大間の鮪と舞鶴産九絵 (器は乾山写し)
鮪は大間で赤身部分からは酸味がキリッと利いて且つ脂の旨味が広がる。シットリとした身の肌理細やかさに喉を通ったあとの心地良い旨味の余韻。しかしコースの中の一部として出しゃばった旨味では無い健気さを兼ね備える秀逸な鮪だ。
やはり鮪を選び抜く牧村さんの目利きの確かさが如実に現される魚だ。とても1.6kで提供される鮪の旨味ではない。既知の事だが改めて鮪は京都より東京だと思わされる。
九絵の身は柔らかくシットリとしているが淡味。身の旨味はこれから徐々に乗って来るであろう。ポン酢は美味いのでやや勝ってしまうので酢橘をチョッと絞って少しだけ付けて食べるのが良い。
◉津居山産松葉蟹
本日津居山から届いた活の松葉蟹を店で茹で上げる。
今日の蟹は良いですよ~と牧村さんが太鼓判を押された蟹は殻からはちきれんばかりのぷっくらとした身。身離れも良く、一噛みするその刹那、爆ぜる炭の如く瞬く間に蟹の旨味が広がる。茹で加減が丁度良い!只々甘い蟹身はそのままでも美味いのだが牧村さん特製の蟹酢に付けると身の甘味に統制が取れて別次元の味へと変化する。この蟹酢が只者では無く、酸味が非常に柔らかく角が取れており、生姜の絞り汁を一垂らし程度に落としてあって仄かだが爽やかな生姜の香りが愚直な甘味を引き締める。
また爪の身に蟹味噌も乗せてあってこれがまた得も言われぬ美味さ。チョイと味噌だけ味わい、ニンマリとして酒を呑む。そしたら贅沢にも爪の身と味噌を一口でやっつけてしまった!一口の幸福がカラダ全体を駆け巡る最高の逸品。
◉鰆の柚子幽庵焼き、茸のディップ(松茸、舞茸、椎茸、シメジ)、烏賊の塩辛(1日前に仕込んだフレッシュな塩辛)、いくら酢飯
幽庵地の柚子の効かせ方が神業で、ほんのり香る爽やかな風味がアッサリとした幽庵地のレベルアップを図り、鰆の本質的なポテンシャルを一にも二にも引き出していた。単体でも十分に美味しく、鰆の質の良さを如実に表されていた。皮目が美味いねぇ。
また、茸のディップが物凄い働き!当方もこちらには長く通っているが、この仕事は初めてである。松茸、舞茸、椎茸、シメジと4種の茸から射出されて幾重にも折り重なるグアニル酸の旨味が半端無く美味!そのままつまんでも物凄く美味いのだが、このディップを鰆に添えて食べるとイノシン酸とグアニル酸の旨味が見事に融合して複合的な美味さが顕現するのだ。籠めた力が此一時に発現するかの如しだ。
塩辛は提供前の前日に仕込んだフレッシュな肝。烏賊は軽く塩をして旨味を凝縮させてあり、新鮮な肝と合わさり酒が止まらなくなる。いくらは素材本来の旨さを邪魔しない塩がメインの控え目な塩梅で、以前のいくらと調味が違う。猪口の下に忍ばせている柔らかい酢飯と合わせての計算尽くの塩梅なのであろう。
◉帆立の煎餅揚げと海老芋揚げ出しの銀餡掛け 藤九郎銀杏 針柚子
微小に砕いた煎餅の衣の歯触りと、揚げたことによる香ばしい風味が大変素晴らしく、銀餡のビタっと来る塩梅と合わさってただの帆立が極上の逸品と化していた。帆立の甘味が半端無く、揚げの熱の入れ加減が絶妙でほんのりレアな感じと外側のホロリとした熱の入った貝柱の美味さったら他の帆立料理と比べてもレベルの違いを観た。
◉三重松坂牛のシャトーブリアン、茄子
醤油 辛子
癖の無い松坂牛の風味と旨味が外側をコーティングする焼き方で封じ込められており、噛むと肉汁が口内で弾け飛ぶが如く溢れ出すのだ。また風味良し辛味良しの辛子と醤油が単体で食べるヒレ肉よりも数倍にも倍加させた旨味と変化させる。牛肉と醤油って物凄く相性が良く当方はこの組合せが一番好きな食べ方である。何気に茄子の煮浸しも最高に美味い。
◉淡路島産真鯛の茶漬
今更何も言う事はない美味さ。
淡路島はこれからグングン脂と旨味が増してくる時期物として絶好調になる産地。この日の真鯛も素晴らしい品質で牧村さんの目利きの凄さに驚嘆する。これを戴くと京都をはじめ関西の料理屋にも全く引けを取らないと思わせてくれる。
なんせ創業から一貫して超一流の鯛茶漬を提供し続けられておられる。40代前半の新進気鋭の頃からずっと味あわせて戴いている身としては白身は関西なんて言う言葉も敬意はありつつも、東京でも美味い真鯛を出す店があるぞと強く言い続けて来たことが皆に評価されると当方の事の様に嬉しいのだ。
◉越後姫とラフランス ワインゼリーとラフランスのすり流し
最後のデザートまで隙が無い。
越後姫はお初だが糖度が凄いのに酸味が程良く利いてクドく無い口当り。ラフランスのすり流しソースも素晴らしい。
【日本酒】
◎獺祭スパークリング
◎加賀鳶 純米吟醸
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【28.2.3追記】
年明けてからのまき村で、大事な客人と舌鼓を打ち鳴らした。総じて味の強弱、バランス感覚が優れているなぁと感じるコース仕立てだった。
【まき村2016年2月の献立】
◉厚岸産牡蠣のと芹の湯葉蒸し 卸し生姜
寒いこの日のスタートとして好ましい品。大きな牡蠣はふっくらとしておりトロットロの湯葉が旨さを優しく包み込む。少量の生姜が全体を引き締めて良き仕事をしている。美味出汁餡は味強目だが、熱い料理でメリハリつけるには良い塩梅であった。芹の風味が春の訪れを予感させる。
◉竹岡産細魚と菜の花の梅肉ジュレ和え
昆布〆は3時間程。〆具合、脱水加減が丁度良く旨味を最大限に引き出していた。梅肉ジュレとの親和性も頗る高かった。
◉佐島産甘鯛の椀 芽蕪 大根 椎茸 (吸い口)柚子
備長炭で焼かれた甘鯛香ばしい香りが椀内を席巻しており、蓋を開けた瞬間に甘鯛とお出汁の複合的な香りが一気に立ち昇る。柔らかい吸い地の心地良さとの調和が素晴らしかった。下に敷かれていた大根の含め煮も絶品!椀は山中塗りの寒椿。ちなみに甘鯛だが、日本海側の甘鯛が有名だが、鮮度や輸送の事から近場の佐島であがる甘鯛は刺身などで使う事が多いとのこと。今回は椀種として焼き入れての扱い。
◉豊後水道虎河豚1.8kg
3日熟成のもの。牧村さんにお聞きすると外海より内湾の豊後水道や瀬戸内海あたりで揚がったものが美味いので好んで使っているとのこと。身によるが、良い天然虎河豚は最低3日間は寝かさないと身が活かって包丁が上手く入らないとのこと。また死後硬直も溶けて美味しい成分(イノシン酸)も存分に発揮されるとのこと。今回の皿は牧村さんお気に入りの物で、6枚しか手に入らなかったものとのこと。
◉山口県仙崎産本鮪 熊本の生海苔
この時期の鮪は段々濃厚な旨味は落ちてくるが、鮪の風味も良くサラリとした良質な脂が心地良く躍る。辛口の乾坤一が脂を拭い、旨味を引き立てる。しかも赤身は一切れで、他は上質な大トロ霜降りがふんだんに盛り付けられて幸せ一杯!またこの大トロは単体で食べてもクドくなくしっとりとした肌理と脂が美味い。鮪のトロが苦手な人は今の時期から夏場の物がお勧め。鮪の価格高騰は今に始まった事ではないが、現状のコースで今の金額での提供となると、以前の◉◎水産の鮪は仕入れられなくなったという。某有名高級鮨屋達が金に糸目を付けずに仕入れて行くので値段が吊り上がるようだ。しかし本日の鮪はや◎幸や◎田◉産にも引けを取らない良い鮪であった。牧村さんの眼力と引きの強さを改めて感じた次第である。
また、添え物の生の海苔が素晴らしい味わい。海苔の形に成形する前のもので軽く味が付いている。以前から美味しい鮪は提供されていたが、通常の海苔を正方形に切った物と山芋等がは添えられていたが、今回は生海苔と趣向を変えて出てきた。こいつを鮪と山葵をつけて戴くと、鮮烈かつ風味も豊かな味わいで鮪のお味が数段階アップするのだ。本当、鮪と海苔の相性って凄い合うのね♡
◉鰆の蕗の薹焼きと丹波黒豆
幽庵に近い地に蕗の薹をカラッと揚げたものを付けて鰆を漬ける。蕗の薹の苦味が鰆の、特に皮下の旨味の脂を苦味が和らげて調和させていた。
◉鹿児島産若筍と山口産車海老、空豆の銀餡掛け 木の芽(山椒の若芽)
車海老には葛粉を打って餡の乗りを良くする技法。若筍の鮮烈な香り、甘味、仄かな独特の風味が春の訪れを感じさせる。木の芽と戴くと更に春が近づく♪銀餡の塩梅はスタートの湯葉蒸しとは正反対に出汁の旨さがメインの柔らかな味付け。ちなみに筍は早いところでは11月あたりから出荷されているとのことで鹿児島等の九州、四国、また京都でも出始めるのだとか。お値段も高そうだ。
◉豊後水道虎河豚の白子
濃厚な白子の旨味を一口で頬張る幸せ。そして激熱かと思われた白子は口内で丁度良い温度加減になっていた心使いに感心した。
◉豚の角煮にポテト餡掛 京人参 菠薐草
豚の角煮は3時間程煮込み余分な脂を落とす。甘過ぎない豚の味わいを引き立てる味付け。ポテト餡がコクを増して和芥子がピリッと引き締め役。人参を炊く際に梅干しを入れ、途中で抜くとのこと。これで人参独特のエグ味や臭みを取り除くという。
◉鯛茶漬け
本日は淡路島産の真鯛1.8kg。大体2kg前後のものを朝〆して夜に使っているとのこと。
特製の土鍋で炊いたお米の蓋を開けた時の香りたるや堪えられ無い良い香り。炊き具合も硬さ、甘さ、香り、旨味、そして張り。トータルバランスが完璧で、このご飯だけでフィニッシュしても全然惜しく無い出来。胡麻ダレを塗した鯛をご飯に乗せて食べる幸せ、ご飯に乗せた身に熱々の出汁を掛けて食べる幸せ、最後にお焦げの香ばしい香りとパリっとした歯触りの心地良さ。この一品だけでもあぁ、ここに来て良かったなぁ〜と毎回毎回染み染みと思わせてくれる。
◉苺ミルクプリンと蜜柑ゼリー
新作のデザート(ていうか自分が来れなくて食べていないだけか?)。特に愛媛産の蜜柑を丸ごと絞り、そのままの旨さをゼリーにして封じ込めているのだから自然な甘さと香りと酸味を感じれる。これが本当の素材の味。
【日本酒】
◎加賀鳶山廃純米
鮪トロや味わいの強い肴に切れ味鋭いこちらの酒がピッタリ
◎加賀鳶純米大吟醸
虎河豚刺しや細魚のようなあっさりだが旨味の強い魚にピッタリの酒
◎乾坤一 純米吟醸
加賀鳶より辛口の酒で、後半の虎河豚の白子や豚角煮のポテト餡掛けの濃厚な味を引き立てて余韻をスパッと切るのに打ってつけの酒
総じてコース内容にメリハリがあり、強く押してきたと思ったらサラッと引いたり、全てを味わい尽くして完成するものだと感じさせてくれる。最近は材料自慢のどれもこれも強い旨味ばかりを提供する店も増えている。こういったコースの妙を手頃な値段で味あわせてくれる貴重な店である。今晩もご馳走様でした!
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【27.12.1追記】
1年数ヶ月振りのまき村へは両親を連れて再び帰って来た。今回は個室を用意して頂いた。先ずはママさん、次いでご主人の牧村さんが御挨拶にみえられた。御二人とも20年前とちっとも変わっていない。若々しくて優しくて。そして温かい。この御二人の提供される料理を戴けると思うだけで心躍る。弟子は今2人のようだが両人ともにこやかでサービスも丁寧。ご主人とママさんの薫陶を受けているだけあって大変人あたりが良い。本日の献立は以下のとおり。
【まき村2015年12月の献立】
◉車海老と湯葉の美味出汁ジュレ掛け
岩海苔、芹(先端の細身の部分)
◉鱈白子と唐墨の蕪みぞれ椀
◉青森産寒鮃、塩昆布、浅葱、酢橘
◉大間産鮪、のす前の海苔、山芋
◉子持ち柳鰈、大根、京人参
◉津居山産背子蟹、蟹酢ジュレ
◉仙台牛すき焼き風2枚、白菜ずい 70度の温度でシャブシャブする。余分な脂だけ落ちて旨味だけが残る。
◉鯛茶漬け
◉洋梨(ラフランス)のすり流しとカボチャのプリン
◎日本酒:獺祭発泡にごり酒
◎加賀鳶純米大吟醸
どれも手の込んだ、食べる客のことを思って丁寧に作り込まれた料理の数々。
才巻の車海老の甘さと湯葉の甘味が美味出汁のジュレをかすがいにして複合的な味わい。穂先の芹も香りとサクサクとした食感が良いアクセント。真鱈白子と唐墨を椀種に、すり流した蕪のみぞれ椀。白子のコクと唐墨のまったりとした旨味を蕪のみぞれが出汁に溶け合っていた。
青森の寒鮃は塩昆布に酢橘を一垂らししたものが、鮃のグルタミン酸の美味さを倍加させていた。大間の鮪も絶好調ではないか。牧村さんのコースの一品としての鮪は100kgを超えるとバランスを崩すとのことで、最良サイズで80kg台と聞いたことがある。初めはあっさり、そしてじわじわと両端の舌が旨味で席巻されていくのだ。本当に100kg以下の鮪とは思えない美味だった。
柳鰈は子持ちで。軽く一夜干しされていそうな身の熟れ、子のほっくりした旨味、薄めの銀餡が風味を増す。京人参の仄かな酸味は梅干で味付けされているのだそう。含め煮の大根の出汁の含ませ方といい味付けといいほっこりと安心できる味。食べていてどんどん身体の強張りが無くなっていくような、リラックスできる味わい。今日は蟹食べれるかなと話していたら、津居山港であがった背子蟹の外子、内子、味噌、身と余すところなく全てを味わえる逸品。味付けもサッパリで、蟹酢のジュレが酢の物らしさを演出してすっきりとする程。仙台牛は熱の通し具合がよろしく、70度のすき焼き風の出汁にくゆらせる仕事。熱の通ったレアな仕上げで肉の旨味を活性化させる。大きな薄切りの肉に潜んでいたのは白菜の蕊(ずい)の部分。サッパリしているが甘味のある蕊と仙台牛を供に食べると肉の脂を蕊が受け止めて1つの味を形成している。
食事の用意は特製の土鍋で炊き上げたご飯の登場。蓋を開けた瞬間から米の良き香りが鼻腔をくすぐる。メインの鯛茶漬けだが、一杯目はそのまま白ご飯に特製胡麻ダレにまぶした真鯛を乗せて食べるだけでも最高の美味さ!2杯目は数枚乗せて出汁を掛ける。米の香りと甘味が出汁を掛けてもご飯が決して負けずに存在感を更に高めていく。最後に御焦げの部分を戴き、残りの鯛の身を乗せて出汁を掛けても御焦げの香ばしさがまた別の美味さへと繋げていく。
日本酒は獺祭発泡にごり酒、加賀鳶純米大吟醸の2種を愉しんだ。発泡にごり酒はフルーティで辛味より米の甘味が前面に出たもの。炭酸もあいまって胃も活発化し、食前酒にはぴったりの酒。加賀鳶はこちらではよく飲む日本酒。辛口が飲みたいというとママさんが、こちらか乾坤一をすすめてくれる。店内のラインナップで一番辛口なのは乾坤一なのだそう。適度な辛味とキレのバランスが良くてどの料理にも合う優れものだ。
今回も総じて満足。いつも食べ物にはうるさい両親もここでは美味いの連発で、にこにこ顔である。とある割烹料理屋の1人分の御会計がここの3人で頼んだ料理及び酒代を入れて似たような数字になるので、かなり適正価格でCPも良いと思うが如何に!次回の予約も辛うじてゲットしたため、更に2月後にまた再訪する。
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【27.11.20追記】
まき村の予約が12月に取れたし、忘れぬうち昨年再訪した時のメニューをレビュー。
【まき村2014年6月の献立】
◉玉蜀黍揚、無花果の胡麻ソース、穴子と胡瓜の酢の物
◉鮑葛打と玉子豆腐の椀(越前塗の夏椀)
◉真子鰈と白烏賊
◉毛蟹の三杯酢
◉賀茂茄子の揚げ浸し、美味出汁
◉岐阜若鮎の一夜干しと芋茎の三杯酢(萩焼の紫陽花柄)
◉鮑の塩蒸しと蒸し馬糞海胆、稲庭うどん、肝ソースとジュレ掛け
◉宮崎牛あっさり出汁煮込とトマト、アスパラ
◉小芝産穴子の炊込みご飯
◉宮崎産マンゴーと苺、グレープフルーツ、のマンゴーソースとヨーグルトソース
◉日本酒:黒龍、乾坤一
1年前の話なので少しだけ…
岐阜の若鮎の際の皿はまき村さんお気に入りの皿で萩焼の紫陽花柄である。一夜干しにより良い具合に水分が抜けて旨味が凝縮していた。芋茎の三杯酢でサッパリして口内がリセットされる。
食事は前回鯛茶で間も無いし、良い穴子を仕入れてきたため本日は穴子飯をお勧めしますとのこと。もちろん乗っかり!
穴子のトロリとするがサッパリした脂とほっくりした身の旨味があっさり目の出汁で焚かれた南魚沼産の飯と良く合っていた。
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ここの鯛茶漬けが日本で、いや世界で一番大好きで堪らない。それは初めて鯛茶漬けなるものを食べた時といささかも変わっていない。今は全然食べれなくて正直イライラしている(笑)。
もう20年前になるだろうか。私が新人の頃本格的な日本料理を食べてみたくて色々と探し出した店の1つで、職場も大森であったこともあり定期的に通っていた。値段も手頃で本物の日本料理を頂き、大人の仲間入りをした気分になったものだった。ご主人牧村彰夫さんも当時は気鋭の若手ではあったがキレのある椀に味わい深き煮物が私の心と胃袋をグッと掴んだ。素材も値段と比較してもかなり良いものを厳選されていた。今ではミシュランの星が増えるごとに予約が取りにくくなり、移転して席数を減らし、1回転となってから尚更だ。今では2月前から取らないと満席になってしまう。特に3つ星になってから予約困難となり、昨年6月以降うかがえていない。以前はお品書きが一組毎に提供され、何がどういう名前の料理なのかよくわかる日本料理初心者には本当にありがたい店であった。
懐かし話ばかりしてても仕方が無いので、先ずは昨年4月に訪れた時の話を。以前の店と比較すると、カウンターが現在は6席と半数近く減らし、テーブル席も4エリアあったのを個室2部屋にして、今では1回転のみの営業。以前は席が空いていれば2回転目も受けてくれたがその分予約が今は取れない。私はおまかせの13,000円(サ、税別)でいつも腕をふるってもらっている。前は足りなければその日のおすすめの品(大体4品程)から別注文出来たが3つ星取った今はどうだろうか?誰か教えてくださいなw
【まき村2014年4月の献立】
◉車海老、帆立、蟹の土佐酢ジュレ掛け梅肉仕込
◉塚原物集女産筍の椀、蕨、木の芽
◉向付1:周防灘の赤貝と佐島の障泥烏賊
◉向付2:勝浦産鰹挟み造りの葛胡椒醤油
◉真名鰹のしとめ焼きと蕪油焼き、タラの芽、車海老頭素揚
◉高知県徳谷産トマトとジュレ
(本体とジュレはトマトの種類が別)(写真失念•••)
◉宮崎牛網焼きと空豆の甘煮
◉江戸前穴子とアスパラ、蕗味噌の銀餡掛け
◉鯛茶漬け
◉宮崎産マンゴーとグレープフルーツ、メロン、苺、アングレーズソースとミントジュレ
忘備録からおこしたが、今思い出してもよだれが出てくるよ(笑)。特に塚原の白子の筍の柔らかさと甘味といったら他の筍とか別格。軸の部分と穂先の部分を巧みに使い分けて味わいと食感を楽しめるようになっていた。椀の出汁もいつもの牧村さんのキレのある昆布と鰹節の見事な調合がもたらす味わい。苦目な蕨や木の芽が筍の甘味を引き締め出汁が全てを繋ぐかすがいとなって一体感のある見事な椀であった。本当に椀の中は小宇宙の如しやw。トマトは物凄く甘くて今までに食べたことの無い物。色々とイタリアンも食しているがこれ程までの強い甘味と旨味を併せ持った素材は無かった。宮崎牛は辛子醤油とジュレ状ポン酢の2種で、大き目なブロック状の香ばしく網焼きされた牛ちゃんをサッパリと食べれて脂のキレも良し。食べ手を飽きさせない牧村さんの優しさと工夫が現れていた。鯛茶は安定した美味しさ。新店になって御飯も土鍋で炊くようになり、お焦げというオマケが登場しはじめた。一年中鯛茶は食べれるが、私は冬の子を身籠るまでの間の真鯛が一番美味しいと思っているし、実際そうである。産地は佐島がメインだが、その都度時期により最良のものを仕入れている。
ママさんには、いつも優しく接して頂き感謝しています。牧村さんも以前と変わらず優しき笑顔と腰の低さで只々感心する。正に実った稲穂の如しや(笑)。昔から若い衆も無駄口を叩かずキヒキビしており、また柔らかなサービスでストレスを感じさせない。うちの家族は全員この店が大好きです。だから早く予約取らせてまた鯛茶を食べさせてーなー(涙)