5回
2019/01 訪問
洋食、料理というもの、手間暇を掛けるということ
トップフォト 世界最強のフィッシュフライ
正月明け、久しぶり~
セッティング
ベイク・ド・ポテト
グラスワインの品質を超えた赤
タンシチュー
本日のお姫様♡
鮃のブレゼ
やはりこちらのバターソースは天下一品!
アスピックではない冷製コンソメ
極上近江牛ロースステーキ
本日は淡路島の姫様
でも珍しく食い込む雌で長期肥育
この照り、この艶
舌平目のフライ タルタルソース添え
舌平目のフライ
これが本物のタルタルソースだ!
ミニバーグ
ご飯
赤出汁(カク九)
香の物
佐賀ほのかのケーキ
コーヒー
ごちそうさまでした
またね♪
2019/02/21 更新
2018/12 訪問
食べてもらうこと、食べること
「お客さんに出した皿は空にして返して欲しいですもん。」
この一言に親父さんの全てが込められている思いがした。
この一言に我は震えた。
結構な価格帯で提供されているステーキ店でも、山中の親父さん程しっかりと丁寧に脂と筋取りを丹念にされている店を当方は知らない。
ブロックから切り出す店は数あるが、カットしたらそのまんまで後は塩と胡椒を施して焼きに入る料理人が少なくない。
手間暇掛かって面倒臭いのと成形後の見てくれが悪くなることからであろうか。
どんなグルメ番組でも料理番組でもカットしたらせいぜい肉を常温に戻す程度で焼に入る。
当方が店で筋取りをされている料理人を見たのは同じ京都は祇園にあったステーキ左近(2009年閉店)のみ。
当方は脂は兎も角、脂身と赤身の狭間にある硬い皮筋と身筋が一番嫌で脂共々デーンと皿の上に残して退席する。
こんなモノ食えっかぁーー!と言わんばかりに。
しかし初訪からくいしんぼーでは一度たりとも口に障る筋や部位、脂身は一度たりとも無いし感じさせもしない。
これがプロだ!本物の料理人だと思った。
そして年が明ければ15年という長いくいしんぼー通いとなるが、この丁寧な筋取りについてお話したところ、上記のようなお返事があった。
「自分が出されて嫌だと思うものは出したく無い」
何だかもう救われる様な気がしたなぁ。
こういう実直に食材とお客に向き合っている料理人がまだ少なからずも存在する事に、居てくれる事に心から感謝したい。
なので心が共鳴して震えたのと同時に心躍った。
本日の姫君は淡路島産但馬素牛を近江のマルキ牧場で精魂込めて30ヶ月飼育された38ヶ月ものとのこと。
この日は親父さんが少し趣向を変えて提供してくれた。
◉ベイクドポテト
定番。
懐石の如し、空腹の胃にいきなり強い料理を入れない様クッションを作る心配り。
◉ローストビーフ
ローストビーフは噛んで美味しい旨味のジュースがジュワッと溢れ出てくる。
付け合せの蓮根の酢の物が最高の口直し。
◉明石産真鯛のブレゼ
親父さんが珍しく
「今日はホンマ素晴らしく良え鯛が入ってます!」
という程の神魚。
京都の人は魚は熟成とかヘタっているものを好まず、"イカっている"のが好みなのだという。
今朝〆の死後10時間程経っているだろうか丁度イノシン酸が花開く頃合いだ。
ソテーだと身がイカっているので反り返ってしまうので、くいしんぼーではブレゼで仕上げるのだ。
軽くフライパンで焼き色を付けたら親父さん渾身の出汁⇒ヒュメ・ド・ポアソンと白ワインで蒸し煮していく。
熱々の皿に真鯛を置いて仕上げに特製バターソースを回し掛けて完成だ。
もうずっとこのバターソースを味わって来ているが、乳製品、とりわけバターが大好物の超力が他のあらゆる料理屋の中でも一番と確信しているくいしんぼーのバターソースだ。
魚の風味を掻き立て、そして優しく寄り添い、共に喉元へ幸せを運んでくれる。
まるで男女の仲の様に。
真鯛への火入れが独特だ。
中心はレアに近い熱の入れ様で、フィッシュソーススプーンで切れる程。
プリッとした弾力に真鯛の力強き風味が波の様に押し寄せてくる。
美味しい波が単発ではなく、一段、二段、三段と断続的に旨味が湧き出てくる。
フンワリと火の入った食感とほんのりレアのカルパッチョの様な食感とが相俟って愉しい口当り。
◉冷製コンソメ
もうこれこそ同じ処女牛のNBCをたっぷり使ったものでないとこれを超える事は絶対に不可能だね。
素材本来の素直な味わい、即ち健康に人工的な措置を施されていない澄んだお味だ。
◉淡路島産38月ロース ステーキ
噛んで適度な歯応えがあり、噛み締めて美味い!と思える稀有な姫君。
また逢えたね。
時間が経っても最後まで美味しく戴ける。
◉淡路島産38月ロース カツ
「カツ焼きます〜」
カツは揚げるのでは無く、焼くのである。
酸化した油で揚げ続けるフライヤー全否定だ。
デミグラスの奥深く深遠な旨味、不自然さなど無いスッキリとした透明感あるキレ。
肉の火入れはジャストで完璧!
ヘット(牛の脂)で揚げ焼きされたカツは、カリッとした衣で肉の風味が閉じ込められて最高の仕上がりを魅せる。
◉真鯛アラ潮汁
「今日の鯛はホンマ良えんで、アラで潮を作ります」
と当方もこちらでは初めてかもしれぬ程記憶に無い真鯛の潮汁を戴く事に。
アラは熱湯を掛けて素早く冷水に浸して綺麗に掃除する。
鍋に掃除し終えたアラを入れて日本酒を振り入れてからしっかりエキュメ(灰汁と余分な脂取り)せなあかんと。
仕上がった潮汁はクリアーで透明度は高いが真鯛の旨味成分がしっかりと出ており、まるで割烹料理屋か料亭で戴くが如し洗練された澄ましの手法。
和食料理屋顔負けの美味、流石である。
◉苺のケーキ
野田さんの佐賀ほのかを使用されているが、他には松永さんところで2軒しか出荷されていない苺とのこと。
甘さだけでなく酸味とのバランスと歯触りが良い。
◉プリン
洋酒が利いている大人のプリン。
ラムかなとも思ったらキルシュ(サクランボの蒸留酒)を使ったとの事。
◉コーヒー
2019/01/01 更新
2017/12 訪問
初めての逢瀬 PART2
2017年も一月を切る前に山中の皆さんの顔が見たくなり、12月は久しぶりに夜に訪れて腰を落ち着けて親父さん渾身のお料理を頂戴することに。
今回は今までにお逢いした事が無い程のお姫様とご対面することになるのだが、それは後ほど。
また、無理を申してしまって年末の高騰期なのにご配慮頂き大変恐縮であり、かつ恐悦至極であった。
【この日の献立】
◉ベイクドポテト
定番。
空きっ腹にいきなり重たい物を入れるのではなく、ほっこりポテトで軽く胃を落ち着けてから。
◉かわらのローストビーフ
かわらとはリブロースの上にあり、その前後にあるそうなのだが、前方が柔らかくて美味いとのこと。
今回はその前方をご用意してくださっていた。
以前はこのかわらをタルタルステーキにして提供していたのだが、現在は例の法規制があり提供出来なくなってしまったという。
当方は2004年からお邪魔をしているが、残念ながらこのタルタルは未食であり、只々残念無念である。
◉伊勢海老1
重さは前回同様なのだが、更に身の質、旨味、特に頭の味噌が大変美味で前回を超える素材にお逢い出来た!
これは今まで数少ないが食べて来たなかでもNo.1である事は間違い無い。
他割愛。
(※頼む人は事前に要連絡と、値段は言うまでも無く時価で高騰期にはそれなりの覚悟を持ってご注文されてくだされ。)
◉コンソメ
言わずもがなの名品。
これ以上のものは無い。
◉養父(やぶ)産38ヶ月育成 ロース
今回の姫様は山中さんに通わせてもらってからも記憶に無い、正直初めて観る挿しの入り具合の霜降り肉で驚いた。
これがBC牛なら気持ち悪くて食べられないが、こちらの姫様は言わずと知れたマルキ牧場で人工的、作為的な操作で挿し等入れない自然に近い環境の中、ストレスを姫様に与えない手法で育て上げているので心配ご無用!
よーく眼を凝らしてみて欲しい。
一般的な牛肉は白っぽいピンク色か下手したら真っ白ケッケで蝋燭みたいな色であるが、こちらは挿し以外はしっかりと小豆色を保っているのだ。
これが後の味わいに響いてくる。
親父さんも牛本来の力のみで自然に入った挿しならば、いくら入っても美味いよと太鼓判を押されている。
それ位に普段の育成方法では強く挿しなど入らないのだ。
そんな中たまーにこういった神降りとも言える程の肌理細やかな挿しが入る姫様が稀に御誕生されるのだという。
こちらの店では普段御目にかかる事はほぼ無い希少な姫様との出逢いは正に僥倖と言えよう。
とはいえ、当方的にはこの挿しの入りはかなり躊躇する範疇で、本当に胃の腑にこれを流し込んで胃もたれしないかという一抹の不安は一寸あった。
絶妙な焼き加減で仕上がり、お化粧直しされたお姫様と再びご対面。
見事な焼き上がりで数枚写真を撮らせて頂きさっそく一口。
やはりBCな牛とはチト違う。
何が違うって、肉の食感と風味が全然違う。
あっちは口に入れて「あ~トロけるぅ~♪」だが、こちらは牛本来のコシと粘りがあるのだ。
しっとりとした中でもキチンと噛んで但馬牛としての独特の食感が歯に伝わり、心地良い噛み心地を与えてくれる。
そして挿しからジュワっと溢れ出る綺麗でクドく無い脂の旨味、肉の旨味と相互に混ざり合って口内を愉しませて喉元へ流れ込んでいく。
しかも食後、翌日と胃もたれなど皆無であったことに再度驚く。
トロけて云々で後胃もたれな牛肉は幾度となく食して来ているが、こんな食感に旨味と食後感の霜降り肉は初めてだ。
◉伊勢海老2
前回を超える美味しい個体で味噌が絶品!
またカクキュー(◻︎の中に久)の八丁味噌との相性が抜群で、強い旨味の八丁味噌と合わせて負けないか前回は心配したのだが、そんな事は心配御無用!
風味、甘味が半端無く、残らず綺麗に頂戴した。
◉ご飯 香の物 サラダ
◉デザート
・佐賀ほのか苺のケーキ 林檎のシャーベット ビターチョコレート
・くいしんぼー特製プリン
すべてが親父さん手作りで心のこもったお味。
言うまでも無く絶品だ。
◉コーヒー
今回もカウンター越しに親父さんや女将さんと忌憚ない食のお話を伺え、また情報交換し、大変寛ぎに満ちた安らぎの時間を過ごさせて頂いた。
有難いことに京都にはいくつか行きつけのお店があるが、その中でも突出してこちらでのお食事は開襟して全てを曝け出して寛げる時間を提供して頂け、第二の我が家の様な、そんなホッと落ち着ける当方にとって唯一無二のお店である。
トップフォト 養父のお姫様
セッティング いつものお席で
超力セット(笑)
本日のお姫様とのご対面
定番
ローストビーフ(かわら)
???
伊勢海老1
コンソメ
お色直し後のご対面
養父産38ヶ月育成 ロース
サラダ ドレッシングが美味い
伊勢海老2 味噌がたっぷりで極旨!
至上最強の一汁一菜
コーヒー
佐賀ほのか苺のケーキ他
特製プリン
2018/01/19 更新
2017/02 訪問
初めての逢瀬
今回のお目当は栄螺さんなのだが、この日は無性にヒレを食べたくなった。
それは先日某店でも美味いヒレを戴いて食べ比べてみたくなった食いしん坊の性(さが)と言うもの。姫様、お赦しくだされぃ!
そういえば、ヒレをメインのステーキで戴くのはここに来てから14年目にして初めてだ。
焼く時間を逆算してベイクドポテトを食べている辺りから大きな一本のヒレの塊から食べる分をカット。
初めは落ち着いた深い小豆色なのだが、段々と時間が経って肉が常温になるにつれ肉の表情が変化してくる。
室温に馴染んで来る過程で発色していき、鮮やかな小豆色となり表情を変えてくる。
さらに経過すると薄っすらと微粒子レベルのシットリとした微汗を掻いたかの如く肉の表面が輝いてくる。
そろそろ焼いてくれ~という肉からの合図だ。
この見極めが肉職人のタイミングでズレれば食べ頃を外し、未到達だと旨味が完璧に開花しない。
毎年それ程来られる訳では無いが、親父さんの仕事振り→焼きに入るタイミング≒肉の囁きの具合で黄金のチャンス(時間)を逃さずに焼きに入り、塩と胡椒は鉄板に肉を置いてから施す姿を具(つぶさ)に観てきた。
肉の囁きの場面に幾度と無くカウンター越しに立会い、拝見させて貰ってきた結果、当方にも肉からの囁きが通っていく毎に少しづつ観聴出来る様になってきた。
そんなモン誰も教えてくれるものでは無いので何となくの感覚だがね。
【今回戴いたメニュー】
◉ベイクドポテト
◉南勢町の栄螺 ブルギニオン仕立
1月下旬から登場の栄螺。
出自は例の伊勢海老の仕入先と同じ船頭から仕入れていると。
口を開けて身を取り出し、肝や砂袋を取り外して身は綺麗に掃除。
無塩バターにニンニク、エシャロット、パセリを刻んだモノを混ぜ合わせ、塩・胡椒で味を整えたブルギニオンバターを、殻に栄螺の身を戻した上に添えてオーブンで火入れする。
プツプツと気泡が立ってニンニクの香ばしき芳香が垂涎物ではないか!
殻から丁寧な仕事を施した栄螺さんを引き摺り出して一噛み。
美ん味ぁ~~い♡
栄螺の磯の香りと質の高いバターに熱が入って活性化した旨味とニンニクとエシャロットの魅惑的な香ばしさ。
5個も食べれば満足出来るでしょとタップリと用意して頂いてよくおわかりで♫
あっという間に平げてしまった。
当方の某友人がこれを食べたら絶対にこう言うであろう。
これ、バケツで食えるわ!
◉ビーフシチュー
以前は頬肉での提供だが、今回は”蛸足”でやってみたところ抜群に美味かったのでと正式に提供。
蛸足(たこあし)とは蛸の足の様な風体から名付けられた部位で、肋の骨と骨との間にある肉のこと。
例えば鮪で言えば中落ちの様なモノ、大仰に言えばロケット、ミサイルの様な形容か。
蛸足の根元部分は塩して焼肉にしたら滅法美味いそうで、先の方は煮込むと抜群に美味なる味わい。
肉の繊維も程よく、滑らかな舌触りでコク深き味。
部位を問わず、こちらの仕入れ肉で煮込めば超短時間で柔らかくなり、味も落ち着くのだ。
ソースも煮て漉して煮て漉してと何日も掛ける必要はなく、フレッシュな物が断然美味いという。
詳細は以前のレビューを御覧くだされ。
◉淡路島真鯛のポアレ
釣った真鯛で白子が小さかったのでまだいけると。
提供は雌で美味しい真鯛のポアレだった。
もちろんヒュメ・ド・ポワソンが決め手のバターソースも別格の美味さ!
◉コンソメ
いつもながら見事な出来栄え!
◉ヒレ
今回の姫は初の逢瀬で但馬家畜市場(せり市)のある"養夫(やぶ) "産の未経産素牛。
それを近江で精魂込めて育て上げた姫を落としてから3日目とのこと。
親父さん曰く、ヒレで食べるには落として3日目が一番美味いと。
今回も不自然な手が入っていない本来の牛の味を安心して味わえた。
リソレされた表面はメイラード反応が最適に起こっており、素敵な焼き色だ。
外側の小気味良い食感に、モチっとしたヒレの何とも言えない心地良き弾力と柔肌の如し肉の滑らかさを併せ持つ素晴らしき素材と施しだ。
しかし抵抗無く歯がスーッと入り、癖など感じさせない綺麗な牛の味を噛み締める。
ヒレには独特の軽い肉の粘りもあり、旨味が舌を覆うが切れが半端無く良いため、旨味の余韻はスッと消えていく。
姫もにこやかに旅立たれたであろう。
◉ガーリックライス
もうこれガーリックライスの範疇を超えとるよ。ビーフピラフだね。
かなり久しぶりに食べたけど、かなりの肉が入った豪華版。
ステーキ用の枝に整形する際に削ぎ落とした肉だが、同じ近江牛の美味しいところなのだ。
米と肉をしっかりと咀嚼して融合させて味わえる。
◉味噌汁(赤出汁)
もう自動で出てくるある意味コンソメとのツートップの美味しさ。
◉香の物
◉苺のケーキ
あまおうとカスタードのバランスの取れた甘味と酸味が交差する美味しさ。
◉コーヒー
◎赤ワイン
トップフォト 栄螺のブルギニオン
トレードマーク♪
セッティング
赤のグラスワイン
ベイク・ド・ポテト
栄螺のブルギニオン
サザエさん♪
本日の姫様
ビーフシチュー 新バージョン
本日の姫様 良い感じに成ってきた♪
真鯛のポアレ
コンソメ
ヒレ ステーキ
最高の焼き上り♪
お食事
ガーリックライス
あの味噌汁
香の物
デザート コーヒー
苺のケーキ
コーヒー
クリームはキチンと本物だ
2017/03/01 更新
2016/10 訪問
本物の牛肉とは何ぞや!?それは牛の能力だけで美味くなる手塩に掛けた箱入り娘だ!!
【28.11.6追記】
今回の目玉は伊勢海老。
某所で10/28に解禁になったばかりの伊勢海老が食べられるとヒョンなところから情報が入り、即座に訪問。京都へ行く予定もあったので正しく天啓である。
そして今回も素晴らしき素材と邂逅。
当方がお昼の開店前に到着する20分前に旧南勢町(現南伊勢町で以下"南勢町"で記載する)の船頭(漁師)から送られたばかりの伊勢海老。しかも500gという何とも立派な体躯。この大きさに成長するまでどの位の年月がかかっているのだろうか。少なくとも7〜8年は掛かっているのだろう。400gあれば縁起物とされる上物で触角も歩脚も折れておらず、身に張りがあり艶やかで見事な小豆色。牛肉でも伊勢海老でも美味しい物って小豆色をしている事が多いと思わせてくれるねぇ。ギィィシ、ギィィシと言う伊勢海老の鳴き声(?)も勇しく活の良いヤツを早速調理して頂いた。
親父さんから小さなサイズでは料理しても美味しく仕上がらないので大きなサイズとなったとご説明頂いたが全く問題無し。むしろこんなに素晴らしいピンの中のピンを選りすぐって即刻送って頂いた漁師さんと親父さんには感謝の言葉しか出てこない。500gで2人前分だが今回は当方1人で戴いてしまうという何とも贅沢な。バチが当たらないか心配だ。
漁獲量は現在千葉県に1位を譲っているが、伊勢海老が美味しく育つ環境は伊勢志摩が断然トップであると親父さんは仰る。伊勢志摩はリアス式海岸で複雑に入り組んだ地形をしている上、南勢町の熊野灘には黒潮も流れ込むため良質なプランクトンも多く餌も豊富、気候も温暖で伊勢海老が生活するのに最も適した最上の場所なのだ。釣り船(廃業)の船頭から紹介して貰ったという南勢町の伊勢海老の船頭からずっと買い付けてされているとのことで、味も昔から変わっておらずに大したもんだと素材に厳しい親父さんが珍しく褒めている数少ない食材産地の1つだ。
またロブスターとの違いは、ロブスターには足に斑点があるが、伊勢海老には無いのが特徴ということも蛇足だが騙されないように付け加えておく(分類も下目(ザリガニ)からして違う)。伊勢海老と言って実はロブスターだったなんてことも事実あったので。
伊勢海老の尾の身の部分は殻付きのままサッと一寸熱湯に潜らせる。オリーブオイルにニンニクのスライスを少々入れて香りが出てきたところで殻を剥いた身を軽くソテー。最後にコニャックでフランベして香り付けしたら身を適度な大きさに切り、ソースアメリケーヌで提供。
禁漁の間タップリと養分を身に蓄えた伊勢海老の美味いこと美味いこと!!もう美味いと言う言葉しか出て来ないねぇ。色艶良く加熱することによる身肉の活性化と火入れ味付け等熟練の調理技術が織り成す見事な仕上り。伊勢海老しか持っていない独特の風味と至高の甘味。プリっとした筋肉質で歯に跳ね返る身の適度な弾力ある食感は素晴らしい。ソースアメリケーヌは伊勢海老のガラと新鮮な渡り蟹を炒めて、親父さん渾身のヒュメドポアソンで煮詰めて新鮮なトマトを加えてから更に詰めて完成。甲殻類の香ばしい風味と甘露な旨味をトマトの酸味が引き締めてくれており、しつこく無いバランスの取れた旨味タップリのソースである。出来の悪い生臭い苦いしつこいアメリケーヌも数多あるが、選び抜かれた素材と地道に真面目に取り組まれて来た料理人の腕に掛かるとこうも別物のソースが出来上がるのかと感心する。
頭の鬼殻は最後に味噌汁で頂いた。いつも戴いている留椀の更に上のハイグレードバージョンだ。海老味噌も甘味と特有の渋味が渾然一体となって得も言われぬ。こんな見事で美味い伊勢海老料理は東京では食べれないな。当方の為に身を捧げてくれた全ての食材に感謝して、綺麗に頂戴した。
ローストビーフもコンソメも本日の但馬見方郡180gロース(未経産)も大変素晴らしい出来の逸品揃い。今回も言うこと無しの美味さとおもてなしに大満足の昼下がりとなった。
本当にご馳走様でした!!
※なお、伊勢海老は常時用意されているものでは無く10月末から1月下旬頃に漁れたてで鮮度の良いものを直送してもらうため事前の予約が必須となる。かつ値段も相応にかかるため本物の価値をわかり、食べる事に対して四の五の言わない人にお勧めしたい。また正月前は値段が高騰するのでお勧めしないことを申し添えておく。
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【28.7.31追記】
半年ぶりに山中さんへ。
今回の目玉は以前よりずっと聞いてきた夏の美味い魚『あこう』を戴くことだ。事前に親父さんに連絡を入れて、良いあこうが揚がったらまともなあこうを食べたことがないので刺身でもいただけるようお願いしておいた。年に数回だが10年以上京都に訪れたら必ずこちらの店に継続的に来店し、親父さんや女将さんと色々なお話をさせていただいた信頼関係もあって用意していただけた。40年以上の付き合いをしている魚屋と親父さんとの信頼関係も強く、魚には滅法詳しくうるさい(?w)親父さんを納得させる品なので当方も全幅の信頼を寄せている。見えずとも、遠方から来店する当方のために色んな方々が全力で一つの良き物を作り出し、提供しようと一丸となって持てる力を発揮されている事に感動する。
「ええあこうが入っております!」と親父さんの言葉に雀躍した。ええもんが入らないと他の物(例えば今の時期だと鱧)になるからだ。本日のあこうは最上級物として有名な瀬戸内産の800gで、釣って来た漁れ漁れのあこうの活の物を朝締めて当方のため夜に提供する頃に死後硬直が解けて旨味が出てくるタイミングを見計らって提供された。
親父さん曰く20~25年程前までは関西の和食屋で夏の高級魚といったら”あこう(赤魚)=雉子羽太(きじはた)”であったという。旬は夏で羽太の中でも随一の美味さである。関東ではあまり馴染みはないかもしれないが、中華料理で高級魚の蒸し物(清蒸)ですぐに思い浮かぶのが雉子羽太である。夏真っ盛りのこの時期の刺身といえば、京都の高級店から普通の店は大体鱧か真鯛を使っている。特に真鯛など夏の時期は味が落ちているのに明石の真鯛やどこそこのだといって1年中真鯛を出す店もある。正直今時期の真鯛は脂も旨味も抜けて美味くない。夏に真鯛を出すのも養殖物を出す店が多く、真面目にあこうを出すより儲かるからだという。それも和食が世界遺産となってしまってから免罪符になってしまった嫌いがある。お墨付きを得たので救いようがない。
刺身、ブレゼ、アラ汁と戴いたが、旨味は初めから強いものでは無く、徐々にエンジンがかかり始め、噛んでるうちに旨味エキスで口内が占拠されている。まるで舞妓から艶冶な芸妓へと変貌を遂げていくようだ。鮮度の良い最高級のあこうは身の色がやや桃色掛かって頬を赤らめた少女のようだ。他で見たあこうはこんな桃色掛かっておらず白っぽかったなぁ。生の刺身をブラインドで食したらファーストコンタクトで風味と舌触りが似ている真鯛と答えるかもしれない程。刺身のサビは本山葵の極上品で食べてみれば真っ当な鮨屋に頻繁に行かれている経験のある御仁であればすぐに理解できるであろう品質だ。醤油は親父さんの幼少期から食べ慣れた馴染みのある大醤(大阪堺)。旨味とコクが深くてどんな素材の物でも美味しく底上げする力をもっている。削ぎ切りされたあこうの身は組織が潰されておらず滑らかで醤油を付けても過度に留まらないので丁度良い味加減で戴ける。これじゃ高級和食屋も形無しだ。素材力も何もかも。また、身に熱を加えるとこれが全く別の表情を浮かべる。羽太の食感は真鱈のホロホロと身離れの良い物に似ており、亜門までは真鱈と一緒の脊椎動物である。真鱈よりも身はやわらかなのが特徴。
こちらの店で仕入れる魚は生け簀物ではなく漁れ漁れの活魚のためポアレだと生きが良すぎて反り返ってしまうため、ブレゼにしている。あこうの一番美味い真ん中の身をバターを敷いて軽く焼き、白ワインで香り付けしたら鱧の出汁で取ったというヒュメドポアソンを身の半分位になるまで掛けて蓋をしてオーブンで蒸し焼きにする。写真でもおわかりの通り、身が厚くてブリっとしているが身離れが良いのがあこうの特徴。そして加熱することによって真冬の明石の真鯛と互角かそれ以上の旨味と滋味溢れる深き味わいを醸し出す。皮目のゼラチン質が堪らなく美味いのだ。毎回こちらのバターソースが何故に美味しいのかも上記のとおりヒュメドポアソンに秘訣があったことも納得の味だ。鱧も韓国産の物がもてはやされるのは濃厚な脂の乗りということもあるが第一に皮が薄いため、和食で使うには重宝することだという。こちらではブレゼするため皮が薄くなくてもいいのだと。また淡路島のが近いし鮮度、品質、活魚の面から絶対淡路だと言い切るポリシーは素晴らしいし感服する。昨年頂戴した淡路島産鱧のブレゼもどこの料理屋の物より数段格の違いを見せつける美味であったことも記憶に新しい。あこうのアラは最後に当方が大好物なカクキューの八丁味噌汁の出汁として使われていた。この頬から鰓(えら)の部分の味わいと言ったらとんでもない物だ。アラは先に酒で煮て下処理をした後に八丁味噌と合わせているのだが、味噌の強い味に負けること無く旨味が半端無く出ているのである。出汁にも凄い美味しいエキスが交わり得も言われぬ幾重にも旨味の相乗効果が折り重なっているのである。なのでハンバーグは不要で白飯と香の物でフィニッシュ!
付け足しとなってしまうが、本日の生まずの牛肉も『絶好調でっせ!』の素晴らしい物で、見方郡の38ヶ月飼育物。落としてから本日で丸5日で重さは380kg。
見方郡に限らず但馬純血素牛の仔牛をマ○キでは半年間は乾草だけを餌としてのびのびと育成させるのだという。青草だと肉に臭みが出て駄目だと。大体ベコ(素牛仔牛)が売りに出されるのが10ヶ月前後のため飼育は28ヶ月が基本的で合わせて38ヶ月だという。人工的な手を加えず自然飼育で840~850日大事に丁寧に育て上げた一匹の仔牛も産んでいない未経産牛のみを提供している。一大ブランドのA5ランクで有名な某県の○△牛などは飼育18ヶ月(大体500日)のうちに600kg以上に飼育して出荷するのである(やり方は人工的にA欠やらホルモンバランスやらetc)。それも去勢か経産牛。ここ数年ベコの仕入値が格段に上がってきている中でそういった業者は飼育を短縮して13ヶ月にして出荷するというとんでもない業者もあるのだと。味は今更言うことでもないが、本日の見方郡は肉質がサクサクと歯切れ良い食感で、噛めば噛む程に旨味エキスがジュワッと出てくる。同時に親父さんがよく言われている肉の心地良い粘りが口内を滑らかに絡み、スーッと消えていく。時間が経っても変に肉に熱が行き過ぎず、旨味汁が流れ出すことも無い。脂身もさらりしてクドさは皆無。ジャンルとしてこれが本来の日本の和牛の真の姿であり、今では貴重希少な唯一無二の肉になってきてしまっているのが悲しい。もっと皆に識ってもらい、愚直だが真面目に牛を育て、その肉を提供している人々を食を通して応援してもらいたいと切に願う。
最後の付け足しとなってしまうが、デザートのメロンのケーキが半端無く美味かった。ここのデザートも全て親父さんの手作りだ。静岡のメロンを使われているが、親父さんが使われて40年以上経つが味が全く変わらず落ちることなく美味いままなので感服しているとのこと。夕張は売りのプレゼンが上手なだけで本質的な美味さからすると全然静岡の方が美味いという。以前も最高級品を取り寄せて果物屋と一緒に味見したが全然格が違ったと。黄桃はコンポートに、白桃はジェラートで提供されたがそれぞれ美味い。しかも、チョコレートまで手を加えられており、親父さんは大のチョコレート好きなのだがご自分でテンパリングをして最適な口溶けと滑らかさ、カカオの含有量等を調節してクーベルチュールに再構築した一欠片だった。エンローバー(被覆)させたチェリーボンボンと清見オレンジのピール(皮)も味見させて戴き山中ワールドを味わい尽くした。もちろん口溶けと味わいは最高の品であったことは言うまでも無い。
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【27.12.13追記】
長年の取引先であるマ○キの福○さんに山中さん用の子牛(雌)を買い付けてもらったものが先日あがったばかりとのこと。今回戴いたベッピンさんは『但馬豊岡産(純血)の未経産38月育成』とのこと。こちらのは本当に一頭たりとも産まずの処女牛である。2頭までは産んでも未経産といって売り出す悪質な業者もいる。子供を産むと肉質はガラッと変わると親父さんは言う。食べれば分かるがそうもいかないため、その場合は産道を観ればわかるというが、1頭産みは見極めが難しいらしい。わかりにくいので2頭くらいならばということである。処女じゃないじゃん。マルキでは購入した子牛一頭一頭の特性を見極め、其々で育成期間を設けているとのこと。他社はある程度でグループ分けをして決められた期間内で効率的に飼育終了となるという。マルキでは仕入れてから半年間は乾草を食べさせ、仔牛にストレスを与えない自然的な昔ながらの丁寧な飼育をしているため効率的では無く、無理強い無く育てているためせいぜい380kgで400kgも取れれば御の字だという。他所ではどうだろうか?
【今回戴いたメニュー】
◉ローストビーフ(ランジリ、ヒレミニョン)
◉同個体のタン
◉明石産真鯛の蒸焼きバターソース、銀杏
◉冷製コンソメ
◉ロースステーキ(豊岡)、サラダ
◉ハンバーグステーキ(ミニ)
◉ご飯、香の物、赤出汁
◉苺(あまおう)のケーキ、コーヒー
◎赤のグラスワイン
ランジリはサーロインと直結している尻近くの部位。サーロインよりあっさり。ヒレミニョンはヒレでも先端部のごく一部についている部位であまり取れない。頭から腰にかけてあるヒレのなかでも太い部位から中心部がシャトーブリアン、トルヌードとなり、その両先端部となるそうだ。旨味が凝縮しており、ステーキより刺身やロースト、叩きでポテンシャルを発揮する逸品。タンは舌の付け根の中央部の極一部しか取れない柔らかく旨味が凝縮しているところしか使わない。こんなベッピンさんのタンなど長年の付き合いの賜物で親父さんに対するマルキさんの信頼の証である。まぁ今回は一頭丸々親父さんの牛なので手には入るが極限られた数しか提供出来ないため、有る時はかなりラッキーである。当方でも通って10年は経つが無くて食べれないこともしばしば。サックリと歯切れ良い噛み応えにクド過ぎないが凄い旨味が後から後からやってくる。これ以上のタンは絶対無いと言い切れる逸品。
ロースを大きな塊のブロックからカットし、丁寧に余計な脂や筋を除去。切る前からもう見事な小豆色。これ程素敵で素晴らしい小豆色の肉は滅多にお目にかかれないよ。そしてカットしてから5分も満たない位で鮮やかなルビー色に艶やかな色に変わっていく。『これが生きている肉なのです』と親父さん。落として輸送して3〜5日位のものでないとこう艶やかな色は魅せてくれないという。
空気に触れた冷凍肉を真空パックしたものはドス黒い色になるため、ほとんどの肉は着色されているとも。げに恐ろしきことその1である。しっかり室温に戻して『早く私を焼いてチョーダイ!』と声が掛かりそうな肉の頃合いを見て、焼きに掛かる。肉がしっとりして瑞々しい色艶が出てきた頃が焼き頃。当方が親父さんの繰り出す絶品料理に舌鼓を打つ時間帯もしっかり計算された戻し。焼き具合は必ず聴いてくれるが、親父さん達が丹精込めて育て上げたベッピンさんのことを一番分かっている親父さんに全てお任せしている。ヘッドでニンニクの旨味を抽出した後に肉を焼きはじめ、この時に塩胡椒を施す。特製の醤油を一垂らしして酒でフランベして完成。ベストのタイミングで焼き上がる。周りは焼き固められ、中はキチンと火の通ったレアで芯は温か。フレッシュな肉の風味とサクっと歯に返ってくる心地良き触感が素晴らしい。噛めば噛む程肉の旨味が次々と溢れてくる。サラリとした脂で胃がもたれない。脂身も臭く無く、クドく無く旨味だけが溢れる。添えてある辛子やフライニンニクはあまり使わなくてもよいくらい。180〜200g位焼いてくれたのでタップリと堪能できた。最後は定番の岡崎の八丁味噌『カクキュー』の赤出汁と白いご飯、壬生菜の漬物で〆る。お腹に余裕があるためハンバーグのミニも戴いた。肉の甘味、フォンがしっかりしたソースの甘味が絶品。玉子に絡めてまた甘味が増す。旨味は甘味であると熟思える。
付け合わせにも隙が無い!ローストビーフの添えられた里芋、ステーキの大根は鰹のお出汁でコトコト煮込んだもので最適な味付け具合。人参のグラッセや南瓜の煮物なんか涙ものである。
魚の話も記さねば!
今回もう1つの目玉は『明石の真鯛』。
巷に明石の真鯛がかなり出回っているが本当に明石なのだろうか。そして最適な時期、処置のものなのだろうかと。釣り師を50年以上やって漁師の知り合いも多く、どの料理人よりも魚について熟知されている親父さんから一番美味い時期は11月下旬から1月末までと教えてもらい、今年も戴いた。色艶良い肌の張りもある良い明石が入っていると。見た目を綺麗に仕上げるには背の身なのだが、脂の乗った腹身の方が美味いと超力用に厚めにカットされた真鯛をフライパンで皮目をソテーし、ワインを振り掛け蓋をした後にオーブンで芯に到達するまでじっくり火を通す。蒸し焼き上がった真鯛ちゃんは特製バターソースで供される。真鯛は厚みがあってもしっかり火が通っているが、しっとりと焼き上がって瑞瑞しきことこの上無し!身から溢れる旨味は超上質なイノシン酸で甘味が強い。真鯛はタウリンを豊富に含んでいるため血中コレステロールも低下してくれ、心臓病や糖尿病等成人病予防に効果的。バターソースで戴いても鯛の王者明石のピンで他の真鯛の追随を許さない程の旨さと栄養価である。それにこの鯛は朝揚がったものを夜に提供している点も重要。今は空前絶後の熟成ブームで誰でも彼でも何でもかんでも熟成に走る嫌いがある。親父さんが強く訴えていることは、処理、処置をどう為されたのか!?である。船上で釣り上げた魚はどう処置されたのかと。今回戴いた鯛は船上で釣り上げたら直ぐに脳天から脊髄にかけて神経打ちを施し〆る。次に血抜きを完璧に行い、内臓を全て取り去る。ここまで綺麗に処理できたら氷漬けする。こういった一連の作業を施された明石の真鯛は更に高見に到達し、親父さんの元に届けられ、夜にお客様へ提供される頃には身もフレッシュで死後硬直も解け始め頃合いとなるという。他店で熟成○○日といったものが流行っているが、船上、遅くとも陸揚げされてからどのような処置をされているのかが重要なのである。そうでないと釣り上げ前後で暴れて身が自分の体温で焼けてしまう身焼けを起こす。どんな魚でも40度位に達するそうだ。鮪は体温28度だと初音の仲治親方が語っていが、この処置如何では身焼した物に何をしても美味いもんなど出来ないのである。どれだけ寝かせればアミノ酸が活性化し旨味が増すということは二の次なのである。そこの本質を捉えられなければ、料理人の元に届くまでどのような工程で処置を施され届けられたかを熟知していなければ本当の意味で美味いものとは言えない。
今回もかなり本質的な確信をついた面白いお話を色々と聴かせて戴いた。他にも牛肉業界のさらなる闇、悪い方へ向かっていることを。F1、F2、ET等々凄い話ばかりだ。文が長くなり過ぎるため、記載できる事は機会をみて。
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こちらの店に寄らせてもらってもう11年になろうか。2004年に本当に本物の美味い牛肉を食べさせてもらえる真っ当な商売をされている店を探してここに辿り着いた。
元来私は牛肉に良い思い出は無く、肉屋の前を通ると生臭い牛肉独特の匂いが大嫌い。小さい頃、某百貨店の牛肉屋を通った際にあまりにも不快な臭いだったため吐いてしまった程。特に脂身など臭くてクドくて不快な食感で不味くて大嫌いである。そんな嫌な思い出満載の当方を満足させられる店など有るのだろうか?東京の某有名店の数々で食べた際にも食べてる間の独特の牛の嫌な臭い、サシ、脂身のクドさから食後感悪く、胸焼けも何度もした。ここもダメならスパイスで誤魔化されたハンバーグや赤身でも臭いもない味気無い牛肉を食べていくしかないと覚悟していた。しかし、ここを知ってから、自分の中の牛肉の概念が一変したのだ。
恰幅良く迫力あるご主人の山中康司さんが、一見の自分に対して丁寧に接してくれ、しっかりと確かな説明も頂いたため、このおやじさんに全てをお任せしたことから今日までの山中通いがスタートしたのであった。肉は注文を受けてから大きな枝ブロックからカット。そして丹念に肉の手入れをする。余分な脂身を取り、筋を余す事なく全て除去する。もちろん冷凍などではない本当の生の状態で冷蔵庫にストックされている。このおやじさんの仕事が丁寧なこと、レストラン内からとても良い香りがしてくること。肉や魚等材料の生臭みなど一切無い!これだけでも信頼における人であり店で有ることが良くわかる。蒸したてのジャガバターを平らげた後に提供されたのは、信じられない代物。生の牛刺しが出てきたのだった。しかしこいつは只の牛刺しではない。ヒレの中でもとても希少な部位のヒレミニオンを提供してくれた。『牛刺しならヒレミニオンが一番美味い!』とおやじさん。覚悟を決めて口に放り込んだ。何だこれは!?これが牛肉なのかと思った。生臭さもクドさも気持ち悪い食感も無い。牛特有の匂いはあるが爽やかなのが印象深い。味は甘味が有り、特有の旨味がありクドさは微塵も無かった。またホースラデッシュを添えて特製の醤油につけて食べるととんでもない極上の美味さ!鮪の刺身よりあっさりしていて身の質がしっとりしていてきちんと歯応えもあり牛を食べている実感があった。
その後はおやじさんが繰り出す牛肉料理をお腹一杯頂き、牛肉が大好きになっていたのだ。しかし、この牛肉は一体何なのだ。今まで食べてきた牛肉は何だったのだと疑問が強くなった。おやじさんから驚くべき事実が明らかになった。『スーパーや普通の肉屋では廃用牛ですわ』と。廃用にも色々あって経産牛もおやじさんから言わせれば廃用牛である。産ませ牛はお産出来る限りは飼育し続けるからであり、5頭6頭出産は当たり前なのである。庶民的なものであれば廃用牛のホルスタインや黒毛単体か、ホルスタインと黒毛雄と掛け合わせたもの(F1)がほとんど。他には去勢の雄。雄は雌と比べて肥育が早くあがるため低コストで販売できる。
一番大事なことは牛の力だけで入るサシ(霜降り)だけで、肉の色は鮮やかな小豆色をしている事が重要なのであると。大きな枝ブロックから注文の度にカットし、室温に戻していくと更に鮮やかな小豆色となっていく。江戸前鮨の高級店では鮪の柵から切りつけた身をしばらく室温に戻していく。ネタがどんどん鮮やかな色に変化していき、それは正に美味しさを告げるシグナルのよう。肉も同じで、常温に戻してから調理した方が旨味を逃さず、肉汁も閉じ込められて食感も断然違う。
霜降り肉はピンク色か、下手したら真っ白白である。今の牛肉業界は霜降り第一主義のため、どれだけサシを入れるのかを人工的に手を入れて強制的霜降り肉が出来上がり高値で取引されるためほとんどの業界や牧場農家がこの製法、飼育をとっているのであるという。A欠や♀ホルモン添加が代表的な手法。聞けば聞くほど牛肉業界は毒されていると思う。絶対に必要な条件は未経産牛であること。箱入り娘をありがたく頂くのである。
そんな娘なので驚くほど融点が低く、人の体温で脂が溶けてしまうのである。24度前後らしい。他の牛肉は体温以上の融点のため胃もたれも胸焼けもするわけだ。下手したらずっと体内に残ることになり不健康極まりない!肉質、コク、香り、色艶照り等全てが超越した肉であるため、熟成などせず屠殺後3日程度でお客様の元に供されるのだ。ここは創業時に昔ながらの美味い牛肉が手に入らず困り果てた頃に今取引している◯ル◯さんに出会ってからレストランをやっていく自信がついた。昔ながらの手法、飼育で手塩に掛けて育て上げ、自然に備わった力のみで勝負しているのである。正に今まで私は不自然な物、紛い物等を食べて牛肉を評価していたのだ。本当危うく間違った判断をしてしまうところであった。
本物を食べたことのある人はどれだけいるのだろうか?高額であれば本物が出てくるなど安易な時代はとうに終わっている。特に牛肉はパチものばかり。それはプロ、アマに限らない。魚でも天然物はアッサリしているため、出自を明かさず食べ比べすると驚くべきことに養殖が好みの人が多い。肉、特に牛肉も霜降り至上主義の世の中で今度は赤身が流行りだとマスコミも煽る。食べ物の好みは本当に難しい。食べ手の力量が強く問われる時代なのである。
トップフォト 至高の逸品
カウンター 開店前の静けさ
セッティング ベイクドポテト
ローストビーフ
昼営業前に届いたばかりの活伊勢海老
旧南勢町の船頭直送の活きの良い500gの大物
一寸ボイルした後は・・・
殻から身を外して・・・
軽く塩胡椒を施してソテー
南伊勢町(伊勢志摩)産伊勢海老のソテー ソースアメリケーヌで
この大きさを一口で味わえる幸せ・・・
ソースはパンに付けて全て刮げ(こそげ)とろう!
本日のべっぴんはんは見方郡の箱入り娘♡
ビーフコンソメの冷製
野菜サラダ ドレッシングも絶品
これも忘れてはあかんよ!
但馬見方郡素牛のロース
完璧な焼き具合でドリップ無し 旨味が完全に閉じ込められている証拠。噛めば肉汁と旨味が口一杯に広がる♡
ちゃうみりゃう
鬼殻置き場 味噌穿(ほじく)り出し用のスプーン
頭の部分は味噌汁で 味噌もたっぷりで甘い
全く付け合わせの山椒は要らなかった
紅玉のタルト
フォトトップ
セッティング
ベイクドポテト、バター
近江牛(素牛は見方郡38ヶ月育成未経産380kg、5日寝せ)
丁寧に筋を抜き、余分な脂身を切り落とし整形
ローストビーフ 付け合せは冬瓜の軽い含ませ煮
瀬戸内産赤魚(あこう=雉子羽太) 刺身
極上の本山葵と醤油は親父さんの幼少の頃からの馴染みである大醤(大阪堺で創業200年を超す)。旨味のある出汁要らずの醤油。
赤魚(あこう=雉子羽太)のブレゼ(蒸し焼き) バターソース
バターソースが堪らなく美味い‼︎
かなり身の厚い、ゴツくて精悍な身肉だが身離れと口溶けが他の魚類と桁違いの素材。
ビーフコンソメの冷製スープ 本日の見方郡の牛を材料に丁寧に取られたスープは済み切って滋味深い。
野菜サラダ
赤ワインを凄く美味しくする牛ちゃんだ
近江牛(素牛は但馬純血見方郡未経産(処女)38ヶ月育成380kg、5日寝せ)
外側はカリっと、中はほんのり温かくジューシー
赤魚のアラ汁(八丁味噌) 御飯 香の物
赤魚(あこう)のアラ汁 骨がシッカリと硬く、身はハラリと解けフワッと柔らかな旨味が射出される。
静岡産メロンのケーキ 黄桃のコンポート 白桃のジェラート 再構築のチョコレート 全てにおいて手作り
コーヒー
被覆させたチェリーボンボンと清見オレンジピール(皮)
こんな美味い天然ボンボンは初めて食らうたわ!
トップフォト
今日のお供
ベイクドポテトにバター
この見事な小豆色をした処女のベッピンさんを観よ!(ꐦ°ϖ°ꐦ)カッ!
ローストビーフ
手前はヒレミニョン、奥はランジリ
絶品タン
サクっとした歯触りが心地良く旨味タップリ♡
赤ワインで更に素材が引き立つ
主役とも呼べる明石産真鯛のブレゼ(蒸し焼き) バターソース
この身のプリプリ感が堪らない(*´ェ`*)
厚みもあり旨味を堪能
手間暇かけた極上ビーフコンソメ
すっきり爽やかなビーフの旨味いっぱいである
小豆色からサファイア色へ。何とも言えぬ艶やかな色合い。しっとりとした身に恍惚となる我…
但馬純血豊岡産未経産(処女)近江牛
これは赤ワイン無くてはいられない…
最高の焼き加減╭(`・ϖ・´)و ̑̑ グッ !"
中はしっとりレアで温かい♡
噛めば噛む程旨味に溢れる。筋や余分な脂が無いので安心して食べることに集中できる!( •̀ .̫ •́ )
サラダ。手作りドレッシングで。
〆の定食(笑)
ハンバーグ(ミニ)
岡崎はカクキューの赤出汁
ご飯も艶やかでやや硬めで美味い!
真ん中の玉子がトロ~リと…(*´ェ`*)
トロけた君(黄身)に寄り添う僕(ハンバーグ)。最高のタッグパートナーだね♡
壬生菜の漬物
デセール&テ
苺(あまおう)のショートケーキ
2014年1月年始に訪れた際のもの。小さな盆栽が可愛い。親父さんの御手並。
舌元極中心部だけの希少部位
ハンバーグ
ええ小豆色しとるがなぁ。肌艶良い処女牛。
極上特選近江牛未経産(処女)サーロイン(但馬(美方郡))
ステーキアップ
2016/11/08 更新
今回は洋食としての一面も観たいという事で、タルタルソースをどの素材、料理と合わせてくるかという事を楽しみに参上した。
もう一つのお楽しみだったクリームコロッケは、良い渡り蟹が手に入らなかったのでまた次回と相成った。
当方も親父さんの納得のいく食材で全力調理してもらいたいし、味わいたいので今回食べれなかった事は次回の楽しみということで。
ステーキ、洋食屋として、ステーキの牛肉は素材自体が素晴らしい物でほとんど手を掛ける、時間を掛ける必要の無い神素材ではあるが、脂身や筋、筋膜は丁寧に取り除き、的確な温度に戻してから調理する。
ガルニ(付け合せ)もただカットするのではなく味が乗りやすい様に多面的にカットしたり隠し庖丁を入れたり。
茹でるにしてもただお湯で茹でるだけでなく、グラッセにしたり炒め煮にしたり出汁に含ませ煮にしたりと和洋の技を駆使して最高の付け合せを添えてくる。
タルタルソースは本格的な洋食屋へ行ってもイマイチなソースが少なく無いが、くいしんぼーではマヨネーズからして親父さん独自のレシピで店の自家製マヨネーズが極ウマだから、他の調味料やスパイスは強く利かさなくても済むがバランスの良い調味である。
どこぞの茹で卵ばかりが目立ってマヨネーズの味がイマイチわからんという事も無い。
無理せず、今在るもの、許されるもので最大限素材と対峙し、存分に腕を振るって頂くのが最良である。
◉ベイクドポテト
◉タンシチュー
1時間30分しか煮込んでいないという究極の神素材のなせる技と味わい。
トロトロの煮込みとは違った、ムチッとした噛みごたえにタンのコクがジュっと滲み出る綺麗で澄んだ旨味に喜びを覚える。
グラスワインのレベルを超えたボディもタンニンも程良く利いた赤ワインと合わせると、旨味が共鳴する。
◉鮃のブレゼ バターソース
本日のお魚は今が絶好調の鮃。
このイカッた身はソテーにするとどうやっても身が反り返ってしまうのでブレゼでの調理。
鮃の身だけでなく縁側もブレゼしてくれていて添えてくれているところが親父さんの憎いところ。
縁側は鮨でくらいしか戴いた事が無いが、ヒュメ・ド・ポアソンで蒸し焼きされた縁側にクドさや臭味は皆無で只只旨味の宝庫。
身は筋肉質でブリッとしているが、歯はスーッと抵抗なく入り、心地良き押し返しを愉しみ、溢れる旨味を謳歌する。
◉冷製コンソメ
先月のアスピックなあれは一体何だったのであろうと思わせてくれる本物の味。
素材の持てる力の差である。
湧き出てくる澄んで芳醇な旨味に絶妙な塩分濃度。
◉ステーキ ロース
珍しく42ヶ月肥育の淡路島産但馬素牛
稀に食べ込む牛がいるのだとか。
食べなくなった牛はもう落とすしかなく、ペットではないため無理に飼育出来ない。
鉄板で片面7割火を入れて、もう片面は3割程度で焼き上げるのが一番美味い調理法と親父さん。
挿しも良い感じで入っており、旨味十分だがしつこく無いサラリとした口当り。
自然な粘りと照りも極上品ならでは。
◉舌平目のフライ タルタルソース添え
本日の隠れメインディッシュ。
鮮度抜群の最高品質の舌平目はかなり大き目のものをステック状にして高温で一気にカリッと揚げるのがコツだという。
下味も美味しく付いているのでそのままでも十分に美味しい。
未成熟のレモン掛けるとキリリと引き締まって更に美味さが上がる。
しかし当方リクエストのタルタルソースを付けて美味しい逸品なので、ソースと合わせて何ぼのもん。
タルタルソースをたっぷりと付けて戴いてみた。
こ、これは•••
う、ま、い、ぞぉおおおーーー!
タルタルソース単体で戴いてもとても美味しい。
舌平目だけでも十分に美味い。
しかーし!
双方を合わせて食べた時に目を見開いた!
マヨネーズは親父さんのオリジナルレシピで作られた自家製。
そこに茹で卵に玉葱、香草、ケッパー等々秘伝の黄金比率で混ぜ合わせてあり、良く練れたタルタルソースだ。
正に当方の理想に近いお味だ。
それをカリッと揚がった衣にたっぷりと掛けて戴くのだから堪らない。
しかもたっぷりと掛けられても舌平目の衣の中の瑞々しい美味さはちっとも色褪せ無いから不思議。
当方用に作ってくれた小さ目な茶碗くらいは有ろうかというタルタルソースの量に大感激!
だって皆もそうであろう。
洋食屋でタルタルソースが足りなかった時、追加注文は断られる事もある。
最初からドーンとどうだと言って頂いた様で凄い嬉しい。
冗談抜きで、このタルタルソースで飯食えるよ(笑)
◉ハンバーグ ミニ
幸せの美味しさ。
炒め玉葱は入っているがつなぎはゼロ。
しっとりして柔らかくしなやかさがある。
弾力はあるが硬くない。
デミグラスソースも完璧で、ハンバーグからの肉汁をしっかりと受け止め、玉子の黄身のコクも受け止める。
これをご飯と合わせて戴く幸せったら無いよ、ホント。
◉ご飯、赤出汁、香の物
今日は丁度良い炊き加減。
◉デザート
あの苺をふんだんに使ったケーキ。
甘さと酸味とコクのトータルバランスが素晴らしい!
◉コーヒー