超力招来さんが投稿したさかい(長野/青木村その他)の口コミ詳細

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超力招来のレストランガイド

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超力招来 (男性・神奈川県) 認証済

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さかい別所温泉、八木沢、舞田/そば

1

  • 昼の点数:5.0

    • ¥1,000~¥1,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.5
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 5.0
      • |酒・ドリンク 4.5
1回目

2019/05 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.5
    • | 雰囲気4.5
    • | CP5.0
    • | 酒・ドリンク4.5
    ¥1,000~¥1,999
    / 1人

仏縁 大法寺が齎らした邂逅

1,001回目の新たなスタートとして、今回の上田の旅で心に強く響いたこの店を取り上げたい。


この日は富士屋ホテルから大法寺まで送って頂き、本堂参拝、見返りの塔を有難く拝見し、御朱印を拝受。
寺からはトボトボと当郷というバス停まで歩く。
バス停は流石大法寺の最寄りバス停ということで、木材で作られた小振りの待合所があった。

上田駅行きのバスはまだ15分は来ないので周りを見渡していると、対面の駐車場に"P そば処さかい"と書いてある立看板を発見。
何?!
この辺に蕎麦屋なんかあるのか?と思い近場を探索。
青木方面に歩いてみると黄色い幟の平屋建て住宅を発見!
そこには準備中の看板が掛かっており11時30分から2時の営業となっていた。
更に奥に入っていくと、『石臼挽十割そば』との標榜が…

さて、どうしたものか…
あと10分でバスが来てしまうが、上田駅の蕎麦はたかが知れているし、予定していた田中のソーセージハム男は駅近だし、また来る機会もあるだろう。
とはいえ、この店が本日営業するかを確認しないととんでもない悲しい結末になってしまうので早速電話してみた。
10コール程で親父さんが出た。
「今日はお店やりますか」(超力)
「やりますよ、もう少しお待ちくださいね」(お店)
とのこと。

これは神からの「寄っていけ!」というゴーサインなのではないか?
当方は今回この店は全くのノーマークであったし、上田からも別所からも離れた中途半端な場所で営業している店など余程のことが無い限り絶対に来る機会は無い。

これも何かの縁、しかも大法寺さんからの帰り際に偶然駐車場が目に入って見つけた看板からの仏縁とも言うべき邂逅。
こういうモノは見逃さずしっかりと掴んで行かないと、良い方向に事は進まない。
ここはひとつ仏縁に乗ってみるか~!
とバス停を後にして再度お店へ行ってみる。
まだ11時をまわったばかりで開店まではまだ30分ある。
外は相当に暑くて既に30℃を回っていた。

最奥に店の入口があるので行ってみると、親父さんが引戸を開けてくれた。
「まだ仕度が出来ていないけど、暑いから中で待ってて~。」と。
おぉう、何と優しい親父さんだ。
靴を脱いでお邪魔する。

後から聞いた話だが、こちらは親父さんが定年退職した後に、仲間との遊び部屋を作って好き勝手にやるためのものだったんだって。
板張りの座敷で囲炉裏もあって雰囲気がある。
好きな場所にどうぞというので手前のテーブル席に。
トイレを借りた時に親父さんの人生訓が木の切株に書いてあった事が胸に沁みる。
こんな日って色々な事が素直に胸に沁みていくなぁ。

メニューはそばとそばセットという説明を受け、もうそばセットしかないでしょ~とお願いした(笑)

『石うす挽き十割そばセット(懐石)』の内容は、
・先付
・揚げそばのすまし
・揚げそばがきの蕎麦蜂蜜掛け
・十割そば
となっている。

先ずはそば茶と先付がお母さんから供される。


何だこのそば茶!!
めちゃくちゃ美味いじゃないかーーー!!!

超力、そば茶からしてやられる。
こんなに風味の良い香ばしいそば茶は生まれて初めてだ。

どちらかといえば苦手な部類のそば茶がこんなに美味しいとは目から鱗だ。
そば茶のマイナス点苦味、臭味、クドい味が皆無で、何と言おうか非常にバランスの良い旨味のあるそば茶なのだ。
お茶を飲む限り、水も良さそう。
この当郷という地は、別所温泉からも田沢温泉、沓掛温泉にも近い地の利であり、泉質は単純硫黄泉のpH9前後のアルカリ質の高い湯である。
水脈も同様に捉えられるので、この地の水で打たれた蕎麦はさぞかし美味いのだろう。
なので別所でも青木村の方でも蕎麦屋が点在する。

これ、お土産で売っているなら書いたいなぁと思って後刻親父さんにうかがったところ、テイクアウトは用意していないとのこと。
残念!


そしてもう一つ眼を見張ったのは、何気なくテーブルの真ん中に置かれていた紫の壺。
玄そばを丸抜き(そば殻を全て取り除く)したもので、観るからに鮮度が良く、緑緑しているその実は一粒一粒輝きを放っている。
スプーンで掬って試しにこれはそのまま戴いてみた。


こ、これは・・・

う、ま、い、ずぉおおおーーー!!!


久々に出た村田源次郎こと味皇様が!!!


これは凄い!

こんな風味豊かで味の濃い蕎麦の実は生まれて初めてだ!
蕎麦の実をそのまま食べるという体験すら始めてなのだが、それを一噛み二噛みしていると、あっという間に蕎麦の実の持つ粘り気がジワリジワリと出て来て、次に蕎麦の鮮烈な香りが口だけで無く、鼻腔や喉にもやって来た!
この蕎麦の実にはデンプン質とルチンがたっぷりと含まれているので粘りがすぐに出て来て蕎麦の香りが口一杯に広がる。
旨味が濃くて膨よかで風味豊かな蕎麦の香りである。


『八ヶ岳原村産 信濃一号』を使っているとのこと。
今時の蕎麦屋は日本産だけでなく外国産を多く混ぜているか、全てが外国産だそうだ。

地元青木村でも"たちあかね"という新品種の蕎麦があるのだが、原村の在来種と比べると旨味も風味も大人しいので、自分はずっと原村の蕎麦を使っているとのこと。

蕎麦は標高が高い所が自分の身を懸命に守るために養分を蓄えて旨味が凝縮するので良いのだと長年そば打ちをやってきた親父さんの持論というより明白な事実だ。
これのおかげで定年から20年間元気にやってこれたのだと。

そのそば打ちの作業は親父さんが早朝5時から厳選した八ヶ岳山麓原村産の玄そばを丸抜き(そば殻を全て取り除く)し手で石臼を挽いているため、10人前が限度という。
今時用意する全ての蕎麦を完全手挽きでやるなんて、金儲けを考えていたら絶対に出来ない。
その原産の丸抜き100%を使って打つ。
蕎麦切りでは駒板は使わないらしい。
自分達が生活出来るだけで良いと、お客さんに本物で美味い蕎麦を食べてもらって喜んでもらいたいというある意味達観した想いがそこには有るのであろう。

自動式の石臼挽きは楽で良いのだが、加熱と塩で粉は劣化していくから手で石臼を挽いているのだと親父さん。
1分間にして24回転が良い蕎麦が打てる粉挽き状態という。
あまり丁寧に細粒に挽いても蕎麦の香りや旨味は飛んでしまうと仰っていたので、自分の目指す蕎麦を主眼に置いて、どこにベクトルを置くかで挽き方も変わってくるのだろう。

そのため大盛は出来ない(1人目は出来る時もある。2人目からは不可とのこと。あとは閉店時間でどれくらい残っているかであろう)。

見た目からも蕎麦は良く練れており、蕎麦切りもややシンメトリーに庖丁が入れられた少し平打気味、しっかりと角があって張りのあるテクスチャーだ。

先ずはそのまま蕎麦を一啜りしてみた。
何て膨よかな風味、何て甘味のある蕎麦なのだろう。
新そばでは無いのにこの強い蕎麦の香り、一体何なのだろうか?

いや、新そば云々等季節的な事も含めて、これは当方が今まで戴いて来た全ての蕎麦を超越している。
こんなに蕎麦の風味が豊かで粘りがあり、旨味のある蕎麦は生まれて初めてだ。

在来種ではない改良型なのに、在来種に勝るとも劣らないこの力強い風味と甘味、独特の粘りは何だ?!
これが原村の気候、風土で培われた味か!
そのまま戴いてもこの味わいとは、塩やつゆを付けて食べたらどれ位のポテンシャルなのだろう。
蕎麦の表面も滑らかでスルスルっと口に流れ込んでいく。
長さもコシも丁度良い。
一啜りするのに丁度良い塩梅だ。
茹で加減、冷水での〆加減も申し分無い。

次に塩で戴く。
初めに実で食べた時程では無いが、粘りと糖度が増して来て、口内はネットリとする。
これは正しく正真正銘の十割混じり気無しだ!
この豊富なルチンと澱粉質を含有した蕎麦が原村在来種の特徴なのだろう。

そして一番期待していない蕎麦つゆを付けて戴いてみる。


えっ?!!

これは!!!

う、ま、い、ずぉおおおーーー!!!

これは地方に行くとよく遭遇する甘さが突出した蕎麦つゆでは無い。
蕎麦つゆはかえしがしっかりとしており、嫌な甘さは皆無。
甘味はあるけど蕎麦の風味を引き立てる必然的な甘味のみで、不自然さを感じさせる甘味が無いのがかなりの超力好みだ!
このつゆはお江戸の藪系や布恒の辛つゆ程の強い物とは別物だが、適度に粘度があり旨味が凝縮しており、力強い香りの蕎麦に負けない蕎麦つゆだ。
かと言って蕎麦の風味を台無しにする事なく、ポテンシャルを引き上げ、開花させる機能を持つ素晴らしい蕎麦つゆだ。
これはつゆに浸けて食べた方が蕎麦の良さと美味しさが理解できる。

親父さんにうかがったところ、砂糖不使用で味醂だけと。
他には無添加無化調の醤油に5種類の鰹節を使って仕込んでいるという。
これを少なくとも1週間はねかせて旨味を練るのだそうだ。
今まで色々な地方の拘りの蕎麦屋を食べ歩いて来たが、こちらは断トツ!
全くノーマークで良い蕎麦屋を見つけたわ。

山葵は半ねりのもので市販品では無いとのこと。
これで山葵が本山葵であったらもう完璧である。
しかし、こちらの蕎麦とつゆが素晴らしく美味いので薬味は無くても良い。

竹酒について伺うと、冬季限定のもので、竹を採取するところから始まるので前日までに要予約とのこと。
これは絶対に飲みたい!

「風土に合ったものはその地で食べるのが良い。」
と親父さんが仰っられた言葉が耳から離れない。
全くもってその通りだ。

厳選された素材に、愛情を持って労苦を惜しまず手間暇全てを掛けた渾身の一笊だった。
ここに来なければこの親父さんの蕎麦には絶対に巡り逢えない。

何でもかんでも東京をはじめとした大都市に一極集中して様々な食を愉しむ事は出来るのだが、この穫れたての食材や挽きたてのそばはその土地土地にこちらから出向き、産まれたての蕎麦を味わい、田植えを終えた青々とした田園風景や懐深き山々を眺め、野鳥の囀りや蛙の鳴き声を聴きながら戴く食事は大変風情があって贅沢なものだ。
ただ美味いだの、豪奢な造りの店内、高層階から100万ドルの夜景を眺めながらの食事も良いが、どこか窮屈感があったりする。
身体の隅々まで副交感神経を開放して高められるのは、行き着くところは素晴らしい食材の穫れる素敵な場所なんだと改めて思わされたひと時であった。

  • トップフォト 十割そば

  • 店構え

  • やっていて良かった♡

  • ここが入口

  • 入口より中へ

  • 田舎のじいちゃん家の様だ

  • セッティング

  • このそば茶が凄過ぎる!!

  • 原村の蕎麦の実

  • 先付

  • そばのすまし汁

  • 揚げそばがき

  • 十割そば

  • そばつゆ

  • 辛味、甘味、旨味のバランスが単なる田舎そばの領域を超えている

  • オホーツクの塩

  • 湯桶

  • 蕎麦湯

  • そば茶もタップリと♪

  • 店からは眼前に実る稲穂を見ることも出来る。

  • 囲炉裏

  • くりそつ!

  • くりそつ2

  • お店の名刺。流派は何て読むのだろう(まふね流?)

  • お言葉、身に染みる

  • この駐車場の看板が目に入らなければ完全に知らないままであった。

  • 当郷の田園風景

  • 大法寺三重塔 こちらの仏縁と想える出逢

  • ごちそうさまでした!

2019/07/16 更新

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