3回
2017/01 訪問
青魚が旨くなってきた
年明け早々しみづへ。
魚は揃っていなさそうでそれなりに取り揃えられており流石である。
本日は外気温5度と寒いのでかなり久しぶりに熱燗でもらう。
鮪の『剥き(すき)身』はつまみとしてはこちらでは初めて戴く品。
海苔と山葵と鮪を煮切で繋いで見事な旨味のトライアングルを形成。
ちなみに剥き身とは、皮と身を切り分けた時に皮側に残っている身をスプーンや蛤の殻等でそぎ落とした物で、擦(こす)れば擦るほど脂が染み出して旨味も出てくる。よく『中落ち』と間違われるか混同される方が多いが、中落ちは主に脂分の無い赤身で3枚におろした際に骨と骨との間にある身をスプーンや蛤の殻等で刮(こそ)げ取る物だ。
牡蠣は昨年までの塩辛のような凝縮させた旨味を味わうタイプから蒸しに変更した。珍しさは影を潜めたが程々の旨味。
塩辛代わりの海鼠(なまこ)の海鼠腸(このわた)掛けも随分久しぶりに出会う。観て食べて青海鼠と判ったが、サクサクと心地良き歯切れは中々のもの。海鼠腸の旨味は普通
聞くところによると、青森は津軽海峡の青とのこと。先日某所で戴いた能登産の物とはまた違った歯応えに味わいで愉しめた。
握りでは大トロと鯖が良かった。
鮪は三厩で日本海側の物。
赤、中とも舌触りは肌理細かく素晴らしいが旨味の奥行きと余韻は例年より浅い。
しかし大トロは別格で、鮪らしい個性的な風味と甘味のある脂の廻り具合に肌理の細かさが上手く噛み合ってシャリとのマリアージュが完璧に決まっていた。
間違い無くしみづでは今季一番の良き鮪である。
鯖はこちらのスペシャリテとも言える出来栄えで巧みな〆仕事が光る逸品。
生半可な鯖は店の種札としてラインナップに乗せない上質な鯖は塩と酢で〆ることで脂の具合が濃縮して円やかになっている。
まるで旨味の塊を味わっているかの如しだ。
ここより高価で良い鯖はまだまだあるのだろうが、仕事を施して極上の逸品と為しているものは、ここの鯖以外でどれ程あるのだろうか。
【つまみ】
◉鮃
◉真蛸
◉鮪剥き身(すきみ)
◉蒸し牡蠣
◉青森産津軽海峡の青海鼠と海鼠腸
◉鰤焼
【握り】
◉細魚
◉墨烏賊
◉三厩産鮪赤身
◉中トロ
◉大トロ
◉小鰭
◉蛤
◉縞鯵
◉北寄貝
◉鯖
◉赤貝
◉車海老
◉海胆
◉穴子
【追加】
◉玉
◉干瓢、朧半巻
◎熱燗1合
蛤潮
2017/01/07 更新
2016/07 訪問
進化する男前な鮨
【28.7.26追記】
近頃巷に流行るもの
お任せ、お仕着せ、ブロイラー
正直者はアホウドリ
高級食材争奪戦
泣きをみるのもアホウドリ
新規開店蓋開けりゃ、お任せ一本、2万から
取れぬ取れぬと煽り立て、自分の予約は人任せ
神とも思えぬレビュー内容 、神も仏も無ぇものか
一部の神は紙の舌
上位店舗に舞い降りる、何処を観ても紙ブロガー
得点上がるその刹那、禿鷹共がやって来る
店の写真も悉く、禿鷹共が占拠せり
成金、痴れ者、経費族
身銭を切らぬ愚者(おろかもの)
カタログ網羅でヨロシク哀愁
クワバラクワバラ 云々
ここはお好みでも任せても客の好きな様に食べられる昔では当たり前だったのが、今と成っては稀有な江戸前鮨屋となってしまった。以前はここも3回転させて一時窮屈な気分にもなった嫌いがあるが、今は何時何分スタートとかいう完全ブロイラーでは無く、来店する時間帯によっては店側との都合さえ合えばいつでも入店可能である。そして使われているネタから比して会計は極めて適正価格だ。昔はもっとこういう店はあったと思うが、かの赤本が日本に上陸してから更に様相は変わってしまった。それも良い方向にとはとても言えない。お好み対応していた店が一斉にお任せお仕着せとなり、融通が利かなくなった。また予約しても半年後や一年後とかいう鮨屋もある程で常軌を逸している。
最近鮪の質が云々言う方々もおられるが、藤田から引いているので最上位顧客のすきやばし次郎や水谷に腹上一番は行ってしまうため、どうしても次の部位になってしまうのは仕方が無い。それでも十分満足の出来る質である。もちろん季節や環境を考えて召し上がられて仰られているのだろうとは思うが、必要最低限鮪の旬と産卵期はおさえて味わってもらいたい。
さて、夏の今時の鮪は産卵期も終えて秋から養分を蓄えて行く時期であるため、脂はサラッとあっさりしているのがこの時期の特徴。それでも脂が抜けた分、赤身の血の成分(ヘモグロビン)がこの時期はよく香りも上々なので通人や鮪を食べ慣れた御仁は冬より夏の鮪を好んで食べる人も多い。流石にこの時期の鮪を鶴八巻(鉄火太巻)で頼もうとは思わないが、自分が食べてみて「これは!!」と思う鮪であったならば是非お勧めする。赤身、中トロ、大トロと豪快に巻いていく。今は初音鮨をはじめ他の鮨屋でも同様な鮪太巻を提供している鮨屋はいくつかあるが、この形態の巻物は鶴八が元祖であると思われる。もし他にもっと古くから鮪オールの巻物を提供しているという店があれば御教示いただきたし。ついでに年末に食べた当方が美味い!と思った鮪を鶴八巻にして戴いた時の写真をUPする。ちなみに今月の鮪はもう佐渡では無く噴火湾の定置網だという。何だか季節が早まっているなぁ。以前は7月末ならまだ上等な佐渡の定置があったものだが…80kgに満たない魚体の物だったが大トロまで用意されていた。3連弾戴いて一番美味かったのは中トロ。今時の鮪にしてはコク深い脂に100kg超えの鮪には持ち合わせていない見質の肌理細やかさと夏鮪らしい酸味の加減。トータルバランスが素晴らしかった。
他のネタは房州の鮑が絶好調になってきており、馥郁たる香りで口内が席巻される。肝がもっとコクが出て来れば言うことなし!ネタが少ないからと仕込んだ煮烏賊は白烏賊(剣先)。以前は鯣でもやられていたが今年のバージョンはこちら。味わいの余韻の好みは分かれると思うが、見質の歯切れはこちらに軍配があがるね。
穴子がかなり美味い!この日は富津産とのこと。ここの煮方が穴子の持ち味を存分に引き出している。身はトロリと柔らかく舌で押し出しただけでホロホロと溶けていく様。あまりに美味いので久方ぶりに穴キュウ巻をお願いした程だ。縞鰺も太平洋側のものに風味と風格が出て来て夏のネタが揃い踏みとなり、楽しくなって来た!
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【28.4.15追記】
2月3月は忙しかったのと、店の空きが無くタイミングが合わなかったため鯖の時期を逃してしまった。4月は両親を連れて久々の訪問。この日は貝類が7種類もあり、貝大好きのうちの両親も御満悦。ちなみに貝は赤貝、水松貝、鳥貝、平貝、蛤、青柳、小柱。鮑は出始めているが、美味くなるのはGW明け辺りからと。
白魚と槍烏賊下足のオリーブオイルが出た。白魚は生だと最後に苦味が残るので熱を入れると美味しくなるのだと。白魚の良いのを天麩羅にすると美味い。こちらでは軽く塩茹でた白魚をオリーブオイルと合わせる。捥ぎたてのような鮮烈なオリーブオイルと白魚が良く合うのだ。白魚のフンワリとした身と旨味をオリーブオイルの円やかさとマリアージュすることで深みを増す味わいに。槍烏賊下足も甘味を増した。蛍烏賊ボイルと沖漬け(店漬け)も酒が進む。大好物の子持ちの槍烏賊に間に合った!子は程よく熱が通ってネッチョリせずにモチモチした食感に。ツメも山葵も美味い!子がスライムみたいな店や茹で過ぎカチカチの店ありと仕込みは様々であるが、しみづの子持槍烏賊が一番好っきやねん♡
お初のものが、髭鱈の酒蒸し。酒、出汁等に昆布を入れた調味液を掛けて蒸したもの。髭鱈は西でよく使われる素材だが、東京の日本料理屋でも近頃用いられているという。最後に浅葱が入ったポン酢を少し垂らし木の芽を添えて完成。馴染みの深い真鱈と比べると旨味が濃く身は柔らか。
お初がもう1つ、鰯の握りである。種札は白くて真新しいが、開店当初の17年前に書いてもらったものだという。種札が出ているということは握りが可能ということ。つまみで鰯は何度か戴いているが真鰯である。握りでは片口鰯(神奈川ではシコイワシ)を塩と酢で〆た物を片身で4枚(2尾)程を一貫で握る。大羽等の真鰯は何度も戴いてきているが、これは他では食べたことの無い独創的な握り。煮干しになる鰯になる位なので旨味の凝縮が凄い。〆加減が大変結構で、鰯の美味さを存分に引き出され、強いシャリとの相性もバッチリ決まっている。大羽ではやらないのか尋ねたところ、脂が強過ぎて握りに向かないんですと。真鯵も出水はもう脂が強過ぎて4月は仕入れていないという。この日は島根の浜田産。塩して軽く酢を潜らせ馴染ます程度で握る。もうこちらで戴く〆鯵の握りの絶品さ加減は半端無いなぁ。しかし今日の白眉は片口鰯であろう。両親も大変気に入ったと話していた。
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【27.12.22追記】
鮨好きレビュワーさんのレビューを見ていたら我慢出来なくなり電話したところ一席空いていたため速攻で訪問。
先付は滑子おろしに。もうそんな時期かと思い耽ると今日は冬至ではないか!冷を頼んでいつもどおり超力スタイルで切ってくれる。鮃もグンと旨味を増して来たが今日は縁側は無し。真蛸の美味さは他店では味わえない甲殻類のエッセンスがギッシリ。伊勢海老や蟹、鮑を喰らう海の王者というのもこちらの蛸を戴くと素直に頷ける。牡蠣の軽い塩辛も月毎に旨味を増して絶好調だが、ご主人曰く今月がピークで最後とのこと。鰤の炙りが出た。昨年は七味を供されていたが今回は和芥子。強過ぎないサラッとした脂だが、身のシットリ感がとても艶かしく口中を駆け巡る。旨味だけでなく舌触りや食感も非常に重要なファクターであることを改めて確認した形である。真鱈白子も以前は塩水でボイルしていたが今回の仕事は少し醤油を垂らしてボイル。見た目は塩水のものと変わらない。醤油の接点でポン酢との馴染み加減がしっくり合っていた。摩宙さんが立派な生きている本水松(ミル)貝を殻から外し、水管の黒い皮を丁寧に剥いでいた。こちらでは内臓の提供はしていない。していないが…
本日の鮪は赤身、中、大と大間ではあるが全て魚体が別物とのこと。赤身は90kgほどで小型だが、赤身独特のヘモグロビンの風味と旨味が強くシャリとのマリアージュも完璧。先日あらいで戴いた血合い岸の赤身も大変秀逸で一番と思ったが、これも負けていないなぁ。150kg級に負けない旨味。中トロと大トロは150kgで別魚体で中はかなり後から旨味が押し寄せて来た。競馬で言えば第4コーナーを回って猛追するサラブレッド、ミスターシービーのような強烈な追い上げ。大トロはミドルレンジで旨味が押し寄せる。口に入れた瞬間に心地良き脂の香りが席巻し、中盤から押し寄せる美味しさ。冬の鮪の美味さも千差万別で、毎年違う顔を見せてくれて大変愉しい。勿論このしみづのシャリが有ってのフルスロットルの美味さなのだ!他には別注の鰤が白眉。隣のお客さんとあれこれ話をしていて、チョット炙ってとリクエストが入り、当方も便乗注文した次第。つまみ単体でも美味かったが、シャリの酸味が甘く感じる程のコクの濃さと切れ味。忘れてはならない小鰭、鯖の旨味もギアチェンジして上がって来た。特に〆た鯖の香りとシャリによりサラッと感じさせる脂が泣かせる美味さ。先々週京・大阪でも鯖を戴いたが、素晴らしい鯖はキッチリ〆てあげないと、奥底に眠る本来のポテンシャルを引き出し切れないのではないかと思わせてくれる逸品!
また、こちらの貝類は比類無き美味さでどれも最上級品で銀座の超高級鮨店にも負けないというか勝る質。先程の剥き立ての水松貝を戴いたが、鮮烈で芳醇な海の薫りと甘味、歯切れの良い歯応えが得も言われぬ美味さなのだ。以前は黒皮を剥く前に軽く湯に通していたが、仕事と身の質を見直して今は生での提供とのこと。茹では甘味は広がるが鮮烈な香りは大人しくなってしまう。そしてシャリも強くなったことを勘案すると生での提供の方がより水松貝本来の旨味が愉しめると言えよう。赤貝はようやく閖上が上がって来たが、香りは大人しめ。穴子もまだまだ美味いが、ご主人も仰るように2月から子に養分がいくため5月あたりまでは弱くなると。それでも煮方が上手いので十分美味い。
今回の〆の巻物は紐キュウは次回以降にし、摩宙さんお勧めの胡瓜だけの半巻に干瓢も半巻で戴く。ご主人曰く夏場の露地物だと弛れた感じの物があるが、冬のハウスでもシャキッとした仕上がりになって風味も中々と。赤酢のシャリが胡瓜の風味を引き立ててるねぇ。こりゃ面白い!
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【27.10.27追記】
鮑はラインナップから消え、鰹も三陸から常磐、房州の良いものが無いため今秋はお終いとのこと(西ではまだ揚がっているが使わない。)。つまみでは今月より牡蠣の軽い塩辛仕立が出た。好い加減で脱水されており旨味が凝縮された一品。物によって塩する時間は違うが1日前後とのこと。牡蠣の内臓部分が物凄い旨味が濃く出ており、アミノ酸系のグルタミン酸含有量が高いことを実感できる逸品。秋刀魚の〆た炙りも極旨。酢〆加減が絶妙でこれまた酒が進むのだ。蝦蛄の煮浸しはつまみでも鮨でも戴いたが蝦蛄独特の風味と甘味がそのまま食べてもシャリに合わせても応えられない美味さ。
握りでは、こちらで初見参の甘鯛が中々良い。軽く塩をした後昆布で若干〆た物。ここのシャリと合わせても弾きかえされない甘味とネットリとした身肉の旨味が渾然一体となり喉を通り抜ける。蛤もやっと登場。汁物も蛤にチェンジ。
鮪は大間で130kg程の魚体。3連弾の中トロだけ別魚体で10日の熟成でギリギリとのこと。風味と脂の乗りが良かった。鯖も良かったが、本日のような良い物が中々無いのが考え物だと。小鰭は皮目から好い風味が有り良質な脂も乗り始めてキッチリ〆て旨味倍増。もう一貫おかわりして朧を噛ませて握ってもらった。強い酸味は朧が抑えてくれ、身肉と脂の旨さを感じやすくさせるための鎹である。
貝はまだまだと言うが赤貝などヘモグロビンの香りが嫌な匂いはせず胡瓜のような爽やかな香りと周りはネットリとした舌触りとサクっとした歯触りが良かった。また11月に訪問を期して店を出た。
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【27.9.25追記】
9月某日夜。鯖は残念ながら、まだご主人のお眼鏡に叶う物はなかったそうでラインナップに名乗りを上げていなかった。本日戴いたラインナップを一通り。
[ツマミ]
豆腐のオリーブオイル掛け、鮃、真蛸、房州蒸鮑と肝、秋刀魚炙り
[握り]
鱚昆布〆、墨烏賊、大間産120kg鮪赤身、中トロ、大トロ、小鰭新子、煮烏賊(白烏賊)、伊豆諸島先縞鯵、北寄貝炙り、赤貝、能登産真鯵酢〆、車海老、いくら、海胆、鰹、穴子塩とツメ、干瓢と朧半巻、玉子
[飲み物]
日本酒1、鮑汁
鰯は8月で終了し、今月は秋刀魚が登場。軽めに酢締めされた物を軽く炙って供する。外側を香ばしく炙り上げ、中はしっとりレア状態。煮切りと少々の浅葱が振り掛けられてある。毎年この肴を楽しみに来る常連も多いことであろう。当方もその1人である。ほんのりとした酢締めが脂の旨みを引き立て炙りで旨みも出易くなり活性化されている。これ握りでも食べたいなぁとご主人に申し上げたところ、ここの酢飯とはどこか合わないという認識のため、やってもそれ程味の膨らみはないであろうとのことで握らないと。目高鮑も最後の名残かなとご主人。肝も供され、海の滋味を味わう。来月あっても頭で終わりかとのこと。
握りで白眉は伊豆諸島の縞鯵。本日の大トロと引けを取らない程の質の良い脂の乗りと身の肌理細やかさ。外連味が全く無い。シャリとのマリアージュが完璧。大間の鮪も具合が良くなってきた。結構な魚体が揚がって市場に出回っているが、使える魚体は一握りであったと。赤身は夏場の物のような酸味の中に中トロを軽やかにしたような僅かな脂の旨みが乗ったもの。鮪3連弾の中では中トロの具合が一番良く、シャリとの融合が一番高い握りであった。貝類が少ないので北寄を仕入れて炙っていますと一貫。ここのエッジの効いた鋭角なシャリが炙って旨み成分を立たせた北寄の甘さを更に引き上げ、癖も無く一つの融合体を形成していた。赤貝は9/3より市場に出回ってきたものの、ようやく味わい的に提供出来る物が出て来たとのこと。肉厚で香りもまずまずであった。これからが楽しみ。
真鯵は能登産でもう名残のものですとご主人。そろそろラインナップから消える予定。それにしても淡路の鯵はもう大分前から具合が良くないらしく、一時期しみづでも8月の鯵は淡路だったのが、もう何年も使われていない。鰹は軽やかな酸味を携えつつ戻りの脂の旨味もある。少々の浅葱のピリッと軽やかな辛味が鰹の身の旨味を引き締め、シャリとの三位一体の味わいが絶妙であった。
いくらは新物で香りも旨みも良し!穴子もトロトロで脂も身もまだまだ美味い!最後は朧半巻、干瓢半巻きと戴き、玉子の握りで締め。
やはりここは鶴八系でもキングの風格、美味さ、値段もお値打ちであった。
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【27.7.26追記】
7月某日夜。ツマミで鰯の酢締めが出た。今まで食べた記憶がないが、以前にも提供していたとのこと。ただし、小骨が多いので握りでの提供は無く、ツマミのみと。他にも北寄の柱と紐の炙りも初。それと鰹は塩タタキとなっていた。藁炙り、生と食べてきたが今シーズンからだと。
握りでは海胆が紫と赤の2種あったので両方食べてみた。赤のが味が強くて濃厚。凝縮された旨味というのか。身質の詰りがあるため軍艦にせずそのまま握る。鮑もツマミで戴いたが握りでも食べたくなり一貫。ここの鮑の握りには煮切りでは無く鮑の自ら射出した煮汁を凝縮させて、ゼラチン状になったものを握りに一刷毛。これが鮑の味わいを更に深め香り倍増。他店では見ない仕事。
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【27.6.21追記】
今回は連れと夜訪問。一度リタイアしていた赤貝がラインナップに復活していた。たまたま良質な閖上産であったので仕入れしたが、これが売れ切れたら本当に終了ですと。真冬の鮮烈な香りや旨味と比べると大分おとなし目であったが、最後にも紐キュウ巻を頂いて違いを愉しんだ。
この日一番印象に残ったのは〆た真鯵。身が肉厚であったが軽めの塩と酢で〆てあって強目の脂も身の熟れも程良くなり、ここのシャリとの融合による味の調和が素晴らしかった。相方も食した16貫のうち一番好きと言っていた。私のこの時期に好きな鯵の産地である出水は4月に入って今年は脂が強過ぎるため使っていないとのこと。本日は長崎産ですと。小肌はもう新子も出始めているが、数少ないがまだ脂を蓄えた良い小肌でややソフトな〆上げ。鳥貝もそろそろ終了だが銚子の良いものがあるうちはラインナップに名を連ねているかもと。鳥貝の握りを初めて食べた相方が、身のこなれ、甘味と香り、シャリとの一体感に吃驚していた。しかし今年も舞鶴と宮津は品質が良くなくて使えなかったそうだ。来年に期待したい!貝類は蛤も今月一杯になり、大分姿を消しそう。貝類好きな人は早めに召し上がった方がよろしいかも。
真子鰈や鰹、鱚、目高鮑は安定の美味さ!車海老や穴子も甘味や香りが上ってきた。
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ここを初めて訪れたのは開店した1年弱後。初めは昼のお決まりから試し、ご主人清水邦浩氏の若手とは思えない落ち着きのある、しっかりとした男前な江戸前鮨に惚れ込み、月1回夜にうかがうようになり早10数年。
初めの頃は鶴八の仕事、味、握りの姿であったが、様々な店を食べ歩き、良き所を取り入れ、時には教えを請い、自分の仕事を昇華して今の姿がある。
顕著なのは店の命である酢飯。当初は修行先とほぼ変わらぬものであったが、色々研鑽を積み、種質を上げていく過程で少しづつ探りながら最終的に赤酢と塩をキリッと利かせた昔ながらの酢飯に辿りつかれた。今若手鮨職人の店で赤酢の酢飯の店は多いが、清水さんが導入した頃にこのような超個性的な酢飯を提供する店は本当に数える程しかなかった。今でも酸っぱ過ぎると賛否両論あるが、ここの種質、仕事との融合を考えるとこれくらいの強い酢飯でないと種に負けて下卑たる味になってしまうだろう。握りは当初の丸みを帯びた荒々しい形からはやや端正な形に。とはいえ大きさは銀座の高級店のような小指のような小さい鮨ではなく、しっかり、どっしりとした鮨。イケメンの鮨ではなく男前な鮨なのである。
酢飯にあわせて種の調整も色々されていった。特に小肌はキツめに締め上げて熟成させる。石丸親方の小肌をはるかに凌ぐ締め方。この締め方に耐えうる小肌は肉厚で脂もよく乗ったもの。ここまで強い締めは日本橋吉野鮨のものしか思いつかない。個性的な酢飯に個性的な締めの小肌と合わさることにより、身と脂の旨味が渾然一体となっている。玉子も厚焼きから薄焼きに変わり、握りを重視した形となっている。鱚の脱水加減、鮪の熟成加減、貝類のピークを見極めた仕込み等々枚挙に暇がない。
今の時期は締めた鯵が抜群に美味い!鮑も香り高く大き目に切られたものを口の中に放り込むと幸せ一杯になる。
長年にわたってこの店を見てきているが、ご主人の向上心はまだとどまる所を知らない。これからもこの店の鮨がどう進化していくのか楽しみである。
トップフォト 鶴八巻
鉄火太巻=鶴八巻[2014.12 大間]
鉄火太巻=鶴八巻[2015.12 大間]
おまけ[2008.12 大間]
鮑 肝添え
鰹
今シーズンから登場(?)の薬味ダレ。玉葱と生姜を合わせたもの。あっさりの鰹にはピッタリ。
塩辛
蛸
小鰭
煮烏賊(白烏賊)
フォトトップ 片口(シコ)
お年始の手拭
蛍烏賊ボイルと店漬けw
白魚と槍烏賊下足のオリーブオイル
子持の槍烏賊
髭鱈の酒蒸し
いわし(片口鰯)
店構え
鰤のつけ焼き。2015verは和芥子で。
こいつと日本酒が合うんだよなぁ。
真鱈白子。良い具合に継いでますね〜。
閂(細魚)
水松貝。超力の好みはこの水管部。コリコリと歯応え良く鮮烈な美味しさ!一番美味い貝。
車海老。本日は大分。冬の車は甘味と味噌のコクが増してくる瞠目する逸品!
鰤。今回はお隣の方に便乗して炙りで戴いた。香りが立って旨味が活性化して美味。この綺麗な脂の差し具合、マーベラスではないか!
小柱(大星)
本日の海胆は蝦夷馬糞。
モリモリ
胡瓜巻(半)
干瓢巻(半)
玉子で〆!昔の残虐超人の頃のラーメンマンみたいな様相。
牡蠣の軽い塩辛仕立
真蛸。海老の甲殻類の香りと皮のプルプルのゼラチンが心地良き美味さ
そろそろ終了の房州の雌貝鮑。肝を添えて。
でかい!
軽く炙った秋刀魚で一杯。一番酒に合う肴かも。
大間産大トロ
小鰭新子2枚付け
煮烏賊(白烏賊)
真鯵は日本海側に上がってきた。能登産。
肉厚で軽やかな脂の乗り。名残の鯵とご主人。
鰯酢締め
北寄の柱と紐
赤海胆(握り)
鮑(握り)
2016/08/02 更新
本日はしみづ未体験の友人をお連れしての訪問。
当方お目当の子持ち槍烏賊と鯖はしっかりと用意されており準備は万端。
この2品は当方からして今年の1月で17年目という歳月を経て継続して戴いてきた中でも真冬のしみづの龍虎であり双璧だ。
これらを初体験がてら、是非召し上がって頂きたく思っていたのでホッと胸を撫で下ろす。
また、本日はこの時期には有り得ない素材、持ち味を十二分に発揮し突破力に富んだ素材達が我々を歓迎してくれた揃えであったことも付け加えておく。詳細は後程。
今宵も当方ならではの視点からわかりやすく紹介しよう。
【つまみ】
◉菜の花芥子和え
春の訪れはすぐそこ♪
◉安房勝山産鮃 身と縁側
もう鮃は南下を始め、江戸前の千葉辺りのが質が良いとのこと。
良き白身の好みのポイントとして
①プリッとしてモチモチした弾力ある歯応え
②つるりとした滑らかな舌触り
③テンポ良く来る継続的な旨味
が挙げられるが全てを兼ね備えた品である。
また②は庖丁の入れ方も重要で、清水さんは以前にも増して素材への当たりのインパクトが最小限→組織の破壊も最小限になっていると見受けられ、ストレスを与えない切り口になっているのであろう。正に官能的♡
官能的な言い方をさせて頂くと、ディープキスの巧い女性が滑らかな舌を絡ませ合う時のあの恍惚とした気分と似ている。
気持ちの良い鮃の身が舌に絡んで口内と脳髄を恍惚とさせるのだ。
◉蒸し真牡蠣
以前までは塩辛的な仕事だったのだが、ノロウィルス対策で仕事を見直したとのこと。
蒸すことにより、旨味を大量に外に流出させる事無く旨味を引き立てられていた。
ホッコリとした身の旨味にサックリとした柱の心地良い歯触り。
◉子持ち槍烏賊
網で獲る漁のモノは6月くらいまで市場に出回るが、一本釣りする槍烏賊は3月末までが限界とのこと。
子への火入れ具合が抜群で生っぽくてゼリーみたいな食感では無く、加熱し過ぎてポソポソでも無く、モチモチと心地良い食感と旨味の出方のバランスが超絶的なのだ。
槍烏賊の身はパキッとした歯応えで食べる物を悦にすること請け合いだ。
◉焼津産〆鯖
久しぶりにつまみで戴いたが、他店のそれより群を抜く美味さ。
まだ脂が乗って美味いですよと親方も仰るとおりだ。
それ以上に脂の質が非常に良く、塩と酢で〆られた事により肉厚な身の旨味も活性化し、親方お勧めのタップリと山葵を乗せて戴くと山葵の辛味が身と脂の美味さを高みへと昇華させる。
辛味が全く感じず爽やかさのみが広がるのだ。
それにしても鯖、鯵、鰯、秋刀魚等の青魚の最上質な脂に塩と酢が交わると、搾りたての牛乳からとったバターや生クリームの様な乳製品を思わす滑らか且つ濃厚、それでいて爽やかさな旨味をまとったモノに化学変化が起こるなぁ。
◉ノレソレ加減酢
熱を入れて奥底の旨味を活性化させている。
加減酢の程良い酸味がノレソレの奥底の甘味を引き上げていた。
◉鮟肝 山葵と奈良漬で
美味いに決まってる♪
【握り】
◉細魚
◉墨烏賊 もう日によってアオリと墨との優劣の配分が変化しており、本日はパキッとした歯触りの良い墨烏賊ですと。
◉鮪赤身 千葉勝浦産150kg
◉鮪中トロ 島根県産80kg 頭部後方の背トロ
◉鮪大トロ 千葉勝浦産150kg
赤身と大トロが千葉勝浦産とのこと。
正に僥倖という言葉がピッタリと当てはまる逸材だ。
日本有数の鰹の水揚げで有名な産地であるが、この時期の千葉勝浦の鮪など食べた事は無いが当方の鮨喰史の中でも鮪の質がガタ落ちの1月以降のシーズンにこれだけの逸材が現れたのは4〜5年前の長崎で上がったモノ以来の凄い奴だ。
本当に極稀ではあるが、真冬物を凌ぐ化物が現れるのだとか。
特徴は旨味の初速と余韻の素晴らしさ。
赤身のこの時期に有り得ない酸味の効きが素晴らしく肌理細かいシットリとした鮪。
大トロの野武士の様な風味、脂の乗りから旨味への味蕾への到達速度の速いこと。
そして余韻が真冬の最も美味い時期の鮪と同格。
いや、今シーズンに限っては、色々な店で食べて来た中シーズンを通してナンバー1の旨味に溢れた恍惚として魂を奪われる美味き鮪だ。
これが藤田の鮪の真骨頂だと改めて思った次第。
餌についてお聴きしたところ、漁場では青森のようなスルメイカが生息していて捕食している様だとうかがい、得心。
◉小鰭
やっと旨くなってきたと親方。
今年はグッと旨味が増して来るのが非常に遅かったという。
例年では11月も後半になると小鰭は身も厚くなり旨味も増して来るのだ。そして春先には子を抱いてしまうため、味が抜けて来るのだ。
この美味しくなったこの時期をおいて最高の小鰭の握りを食べ逃すことは鮨喰いとして、我、最も此れを戒む!
◉蛤
レアな食感も残しつつ火入れで香りも旨味も際立った蛤はツメを伴い、最高のタッグパートナーのシャリと出逢って幸せを得る。
◉閖上産赤貝
今年の閖上は全然ダメだったが、やっと良くなって来ており本日はその閖上だと。
ネットリとした口当たりからサックリと噛み心地の有る食感を得、胡瓜の様な独特の風味が爽やかで旨味がグングンと押し寄せて来るのだ。
こちらの赤貝への手当は以前から存じ上げているが、他店では見掛けた事の無い仕事だ。
殻から剥きたてでは無いが、ほぼそれに準ずる風味が備わる。
エッジを利かせたシャリが、赤貝の甘味を更に引き上げている。
◉春子
本日のは魚体が大き目なので軽く昆布〆してからの提供。
いつもの酢〆の仕事とはまた別角度からのアプローチが面白い。
同じ種類の物でも素材の質や大きさ、脂の質等に合わせて手当を変えてくるところは流石だ。
◉野付産青栁
今季トップクラスの青栁で、珍しく親方が太鼓判を押されたモノだ。
先程の赤貝以上に甘味が強く、シャリの酸味が感じられぬ程だ。独特の潮の香りが堪らない。
歯切れも良くシャリとの馴染みがここ数年来のモノとは別格だ。
◉野付産大星小柱
サクッとした繊維質に甘味ある身の旨味が信条。
◉〆鯖
もう言うこと無い涙物の超絶美味。
シャリと合わさって更なる高みへと飛躍された味わいは達観の極み。
◉車海老
当然ながらに甘い!
◉大間産紫海胆
この海胆はこちらの煮切との相性が凄く自然で浸透性が高くアジャストした素晴らしく香りと甘味が絶品でシャリとのマリアージュが完璧。
◉対馬産穴子
煮方がやはり素晴らしく、脂の抜けを感じさせない仕事。ツメも絶品だ。
◉干瓢、朧を半巻づつ
◉玉子
◎日本酒1.5合
◉蛤汁