超力招来さんが投稿したたこつぼ(広島/堀川町4)の口コミ詳細

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超力招来のレストランガイド

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超力招来 (男性・神奈川県) 認証済

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たこつぼ胡町、八丁堀、立町/日本料理、うなぎ、あなご

1

  • 昼の点数:5.0

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 4.5
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク 4.0
1回目

2017/07 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気4.5
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク4.0
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

広島及び近郊の美味い物の波状攻撃に酔いしれろ!

サンライズ出雲から三江線の旅も本日が最終日。
前日の三次での唐麺尽くしの夜を経て、朝に若宮八幡神社へ参拝をした後、三次駅から芸備線で広島へ向かった。

たこつぼは1927年の創業で、現在はえびす商店街の中で出しゃ張らず、しかし瀬戸内海を中心とした広島近郊の精鋭達を用意して鋭意営業されている現在で三代目の名店。

割烹であるが、おでんや牛すじ煮込み等あるようで、どんな層でも柔軟に受け入れる懐の深い料理屋と観た!
たこつぼの名の由来は以前の店は袋小路になっていた事から。

こちらは昼にうかがったのだが、予約の際に夜のお任せをお願いすることが可能であるため色々と相談すると良い。

先に結論を述べるが、ここは理屈抜き、拘り抜きで心に響き、感銘を受けた。
とにかく美味さがド直球、言うなれば広島カープの炎のストッパー津田恒美の豪速球の様。
逃げの変化球は使わず、素材の本質に沿った味付け。しかし三代に渡って幾重にも考え抜かれた調理法の確立。
例えば何の変哲も無い真鯛の切り身かと思ったら、鯛の身は軽く昆布〆され、上に煎り酒をサラッと塗ってあり、添えられた薬味は山葵の葉の漬けた物、茎を叩いたもの、擂った身を合わせた物という大変手間暇掛かった料理であった。

素材に胡坐(あぐら)をかかない、素材を敬い称え、本質的な旨さを引き出すため常に労力を惜しまない姿勢がこの一皿でも垣間見える。
そして、こんなに広島をはじめ瀬戸内、周防の海の状況や魚達のことを三代目主人(以下"大将")から真剣にかつユーモアを交えて分かり易く勉強させてもらって何一つ無駄な事などなかった。
飲食店でこんなに勉強させてもらったのは京は桂の親父さんの処以来だ。
それだけでも広島に来た、たこつぼに来た甲斐があったというもの。

勿論人というのは相性が有るので、静かに料理に向き合って食事をしたい人や、大将や女将さんの人当たりに合わない人、矢継ぎ早に提供される非形式的なサービスが合わない人には全く向かないし評価出来ない店である。
また、上記の通り大将とのやりとりは真実と冗談が入り混じる独特な物なので、お話からの取捨選択と適度な会話術は必要とされるであろう。
当方的には全てのお話が面白くて、楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていった。


ここに集まった素材達の生育状況や環境、漁師や漁法等への熟知、大将の田中泰弘氏の素材のポテンシャルを引き出す大胆かつ丁寧な調理法、今まで出会った事の無いたこつぼオリジナルの料理の数々、うかがえばどの料理にも詳しく教えてくれるなど理由は色々とあるが、そんなこといちいち口に出して言う事が愚かしく些細な事と思える不思議な感じを得る。

一番関心したのは、その土地の美味いもの、即ち郷土広島を中心とした近郊の素材を提供してくれること。
本格志向の店(特に若手)でここ数年のトレンドとして、和食屋でも寿司屋でも産地直送で日本各地の美味いものが東京じゃ無くても集められる時代だ。
決して産直がいけないという事では無いが、そればかりだと現地の特色が無くなる(こちらの鰻は静岡産がメイン)。
下手したら地元の素材など一つも出て来ないで、提供された物は全て県外の物だったなんて笑えない話も実際にあった。
人にもよるが、基本的にはその土地に旅行に来たならば地元、地物の素材を使った料理を食べたいと思わないだろうか。
例えば広島に来て利尻・礼文島の蝦夷馬糞海胆や羽田や対馬の穴子、京野菜や鎌倉野菜、沖縄野菜等を食べたいなど思わない。
何だか飲食の普遍化とでも言おうか、東京化とも言おうか、どこの地方で食べても東京で食べているような妙な錯覚に陥る。

ここではそんな心配は皆無で郷土の素材を巧みな調理法で矢継ぎ早に来る料理をタップリと堪能させていただいた。
しかも東京などに流通させるだけの漁獲量は無い物、広島県内ですら入手困難な希少な物を90年を掛けて様々な人々との繋がりや信頼の上に成り立って一番良いものをたこつぼさんへと言う関係者が多くて素晴らしい珠玉の逸品、名品ばかりなのだ!
また、高いだけのブランド品にこだわらず、自分の舌で探し出したブランドを超えた大将品質の魚介類達とでも言おうか。

もちろん当方達はそんな珠玉の逸品達の怒涛の攻撃に備えるべく、三次の宿で朝は早めに風呂に浸かってじっくりと汗をかき、身体と胃の状態を整え、万全の状態で臨んだ。
大将の腕に掛かった美味いもん達の波状攻撃が凄まじく、初手からヤラレていると、二の手、三の手と更なる強豪達が押し寄せてくるのだ。
これに耐えられなければこちらでの食事は愉しめ無いので昼のお決まり品(鰻や穴子のひつむし等)で実力を見計らってからのがお勧めだ。


以下、この日に戴いた物を記す。
ただし、ここからは当方の完全なる忘備録であり趣味の領域なので文章が長い。
興味のある人、勉強したい人以外はサラリと読み流すかスルーする事をお勧めする。


【日本酒】

◉賀茂鶴 大吟醸 ゴールド
吟醸香は穏やかでサラリとしているが、旨味もキチンと舌奥に届いて飲み手の満足感を得られるであろう銘酒。
強く主張してこないので、あっさりとした先付がつづくたこつぼの前半の料理にぴったりのスターター。

◉賀茂泉 純米大吟醸(杜氏 新谷寿之)
吟醸味が強くてしっかりとしたボディ。
山田錦を100%使用した新酒を加熱殺菌せず瓶詰した生酒だ。
やっさん(泰弘さん)のために、たこつぼの料理に合う酒を作ってやると醸造元がたこつぼの大将の引いてくる魚介類や野菜達、技量を念頭に置き、どの素材、料理法にも耐え得る良き日本酒、しかし出しゃ張り過ぎない特別醸造したもので他では飲めないのだと。
後半の旨味が強くなる料理には強いボディの泉が最適であった。

然るにウチでは鶴と泉の2種で十分なのだという。

【料理】

[先付四種]
◉小烏賊と鯛の子の焚き合せ

初手からヤラれた。
小さな小鉢の中に様々な世界観があり、コンパクトに集約されている。
小烏賊の煮付け具合、甘辛加減が絶妙で仄かに香る青柚子が清涼感を醸し出し、胃を刺激し、食欲を唆る。
鯛の白子、真子、肝と美味い内臓のフルコースを小さな小鉢で味わえることが素晴らしい。
丸十の膨よかな煮上がり、鞘豌豆のシャキっとした歯触りに風味も立っており口直しも兼ねている。

◉小柱と鳥貝の本ニシ(赤ニシ貝)の酢の物

ヌタの様な感じだが、青葱が下に忍ばせてあり、酢味噌の酸味加減が絶妙で貝の旨味を邪魔せず引き立てている。
青葱は広島原産の観音葱というブランドで、辛味と甘味のバランスが非常に優れている物。
刺身の薬味等コースで何度かお目にかかることになるのだが、どの料理にも合うオールラウンダーだ。
広島でお好み焼きがこれだけ繁盛しているのはこの広島の観音葱が凄いからだという。
広島野菜の話も色々と教えてもらったが、長くなるのでまたの機会に述べよう。

◉青肌(青大豆) ≒ずんた

乾燥させた豆を水で戻した物。
合わせ醤油に山葵少々、散らした葱も美味しい。
お酒を召し上がる前に青肌を食べておくと、肝臓がアルコールを分解する酵素を出す手助けをするのだとか。
なのでビアホールで生ビールと枝豆というのは最高の組み合わせなのだとか。

◉長茄子の焼き浸し

関西以西に存在し、広島にもある30cmを超える物もあるというとても長ーい茄子だ。
外は30°を超え湿度も90%超えというこの日にぴったりの肴だ。
浸し地におろし生姜と擂り胡麻を合わせてあり、生姜でサッパリとしつつも胡麻のコクが長茄子を更に美味しくさせている。
しっかりと野菜も美味いのが嬉しい。


◉小鰯の刺身

これは唸った!
初夏に差し掛かる時期の物が美味いと出してくれた魚。
「いわしも八度洗えば鯛の味じゃけん」と先代が仰っていたというが、そんなに洗わなくても十分美味い。
でもイカナゴなどの小魚を食べて育っている環境の真鯛もいるので、言い得て妙なのだ。

関東で言う片口イワシ、シコイワシで当方にとっては馴染み深く大好物。
串に刺した中型の小鰯もあるが、刺身で食べるなら断然小型の物の方が美味いと大将は仰る。
3枚におろして流水で掃除して〆た小鰯はコクのある旨味が凝縮されている。
関東の片口より癖が無いのと、大将の庖丁の入れ方からか身の舌触りが心地良い。
プランクトンが豊富に湧く瀬戸内海の小魚の旨さにぶっ倒れそうだった。

◉栄螺の壷焼き

角が全く無いツルンとした貝殻。
何故他所の栄螺にはある角が無いかというと、潮の流れが優しいことと、餌となる沢山の若布に囲まれているため、角を出して自分の身体が流され無い様抑える必要がない為とのこと。

更に詳しく言うと、糸崎から西は海の底に棚があるというのがポイントだ。

★棚があると若布が生える。
→若布が生えると小海老が湧く。
→小海老が湧くと和布蕪(めかぶ)が太る。
→穏やかな流れの中、若布の林の中で生活しているために激流に流される心配が無い
→栄螺は角が要らない
となるという。

身の甘さが半端では無く美味いことは確かなのだが、更に一番驚いたのが肝の上品な薫りと美味さ。
当方は小さい頃海水浴といえば江ノ島で、江の島産の栄螺の刺身、壷焼きをよく食べていたが、肝は苦味があるのとジャリっとした歯触りに独特の癖のある臭いが大嫌いであまり得意では無かった。
しかしこちらの栄螺は『ルェベルが違うんだよお!ルェベルが!!』と外道様に怒られてしまいそうな程の明確な差が出ていた。
苦味、臭味など鼻や口に障るものは皆無で、ただただ清らかな味わい。
そして何気なくネットリとした粘液にコーティングされているような舌触り。

栄螺、鮑、海胆は草食で、餌も瀬戸内や周防灘のものは、天草、赤とさか、青とさか、海苔など色々な海藻があるが、若布と若布の根っこの”和布蕪(めかぶ)”が一番のご馳走であると言う。
良く肥えた和布蕪を食べていると、身体が苦くならなずに甘くなると大将は言う。
肝が苦くない理由に得心!

何気無く味わっているが、この壷焼きのタレも3種の醤油をブレンドして使っているという拘り。
後程刺身での醤油で更に驚く事に!

◉瀬付きの真鯵

回遊せずに岩国近くの由宇に住み着いている真鰺ですくい網で漁獲しているとのこと。
柔らかいポン酢の酸味が軽く酢で身を締めてあるかの如く鯵への酸味加減が素晴らしい。
鹿児島や島根近辺に居る真鰺の濃厚な脂の乗りとは全く異なり、こちらは脂はアッサリ目だが、身の旨味が濃い。

◉真鯛

ある意味これは驚いた。
こんな時期の鯛など栄養分を子に持っていかれて旨味などカスカスで身もスカスカだと踏んでいた。
事実そんな程度の物を提供して来た店も少なく無い。

しかし、こいつは違った。
旨味の伸び、余韻が素晴らしい。
特に目を引いたのは、皮を剥いだ身の赤身の強い色合いだこと。
この深い小豆のような赤色は淡路の極上品にも勝るとも劣らない魚体ではなかろうか。
そのまんまかと思った身は、上記で説明した通り昆布でチョイ〆状態に煎り酒の旨味がチョイと加えられ、特製山葵の薬味が添えられている。
これらの仕事がこの真鯛を更に上の素材へと進化させている。

これは一体どういう事なのか大将に話をうかがってみた。
これも瀬戸内の物の中では最高峰の物とのこと。
ただし同じ瀬戸内の続いた海でも漁れる場所によっては味が全然違うんだよと。
同時に上の潮流と底の棚の具合で物凄く美味しいお魚が育つんだと仰る。

更に詳しくお話をうかがっていると、この鯛のいきさつが理解できる。
春の桜が咲く頃に玉筋魚(イカナゴ≒コウナゴ)の群れを追って紀伊水道から入って来る鯛が瀬戸内の鯛。
兵庫~岡山県の沖辺りまでは玉筋魚を捕食しつつ、広島の沖に来て糸崎のラインを超えた辺りで玉筋魚から海老に切り替えて身体に赤みを増し、同時に身体に甘味を増していくのだと大将。
本日提供されている正にこの小海老を食べて真鯛も美味しくなっているのだ。


[小皿三種]
◉煽り烏賊の口

とんびとからすのくち
コリコリして烏賊の風味も強く出ている。

◉小海老

芳ばしく旨味が凝縮している。
糸崎から広島に入って来た鯛は、この小海老に餌をシフトさせて身を赤くするのだという。

◉フレッシュな青肌

生の青肌豆を茹でた物。
一般的な枝豆とは一味違う旨味とコクの延びが凄い。


◉やはぎ(すずめ鯛)の焼き煮

広島の初夏の魚で、すずめ鯛のことを”やはぎ”と呼ばれているとのこと。
博多から熊本にかけては”あぶってかも”と言うのだとか。
理由は噛むとカモの味がするだとか、炙ると骨まで食べる事が出来る(噛める)とか諸説あるようだ。

こちらでは焼きを入れた後に酢を利かせた煮汁で煮込んだ物でたこつぼオリジナルとのこと。
あぶってかもの名の通り、頭からガブリといってくださいとの仰せ。
おぉ!
酢の利かせ方が実に巧みで、やはぎの脂の乗った身が殊更美味しく酒も進んでしまう佳肴。
酢の効果なのかやはぎ自体が炙ると骨まで食べられるからか、骨が強く口に障る物では無い(多少は気になる骨もあるが)。
しかもこれ、冷めて食べても酢の煮汁が染み込んで美味いんだ。
大将もこの時期の脂の乗りが無いと、酢を入れてもただ酸っぱいだけで料理にはならないので、此れ位の身質と脂になった時が、たこつぼオリジナルとしてのやはぎの完成品だという。

◉板屋貝(いたやがい)

帆立貝に似た食感に味わい。
言うなれば瀬戸内の帆立。
可食部はほぼ貝柱で、小粒でも柔らかくて甘味があり、味が凝縮していて美味いのだ。
貝殻は片面が平らな面で、片面が膨らんでいるという。

貝殻節とは板屋貝のことだよと大将談。
大昔に日本海で板屋貝が大発生した時、昼夜を問わず、漁をする漁師の労働歌だったのだと。
かなりキツい重労働でその辛さを紛らわすために唄われた歌だったのだ。

◉広島牡蠣

広島牡蠣としては最高峰ものだと大将も胸を張る。
牡蠣殻のゴツい様相、プックラと身が大きく厚みもある体躯から岩牡蠣かと思ったが、違うという。
微塵切りにしたネギとおつゆと一緒に召し上がると美味いですよと。
火入れ具合が超絶的で、加熱して活性化した旨味と生のフレッシュさの両面を兼ね備えた物で、中の柱の太いこと太いこと!
身も深淵なる濃厚なコクと爽やかな磯の風味のバランスが超絶的で言葉が出ない。
酢、たこつぼの醤油に胡麻油と葱とさっぱりとした酸味の味付けが牡蠣の持ち味を存分に発揮している。
こんなに美味しい広島牡蠣を戴いたのはもちろん初めてだ。
いや、厚岸や陸前高田、唐桑と色々な土地や店で食べてきた牡蠣全般を総じても一番美味いのではと思わせる逸品。

出荷までの育成3年間の間に4ヶ所も筏を浮かべている場所をローテーションさせている手の込みようだ。
ローテーションの具合で味が全然変わってくるのだとか。
最後の一年を呉の沖の情島(倉橋島東斜め横)の北陰にもってくる筏がここ10年程前から一番美味い最高の牡蠣だという。
基本的にはGWには毎年終わるのだが、産卵を抑制して今日提供することが出来たと。
また、この時期に牡蠣を提供しているのはたこつぼだけ。

広島出身の友人からは、この時期に牡蠣などあり得ないでしょ~と窘(たしな)められてしまったのだが、こういう面白い素材達との出逢いというのもまた面白い。
しかもいつもあるとは限らないため毎回この時期にこの絶頂的な牡蠣が食べれるとは限らない。
ただ己の食運と、食と牡蠣の神のみぞ知る物ということを心得ておかなければならない。


◉ひらそ(平政)のカマの塩焼き

和歌山県の備長炭で焼き上げたその身は皮はパリッパリで香ばしさと活性化した皮下の旨味成分が厚い身に浸透していき、身はホッコリと瑞々しくも柔らかく仕上がっている。

【刺身】
ここで本山葵を添えて戴く刺身が登場。
刺身醤油は茨城、兵庫、広島、山口の4種の醤油を独自ブレンドでの提供。
じいさんの時代からやってきているというたこつぼオリジナルの刺身醤油だ。
これが相当に美味くて、"塩より醤油派"の超力としてはかなり嬉しいプレゼン。
ここ数年の傾向として塩で食べるのが最高だという風潮があるが、まぁ悪くは無いが当方は昔も今も断然醤油だ。
なのでここの店は良くおわかりで殊更嬉しい。

そして何よりも刺身の旨さを引き立てるのが本山葵。
安曇野まるち農園望月さんの本山葵は日本一甘いサビだと。
箸でサビを持ち上げると山芋を混ぜているかのようなネットリさと口の中でもネットリ。
そして辛味も利くが、甘さを携えているので嫌味でエグく尖った辛味では無い。
素材の本質を引き立ててくれる最高のサビだ。

◉海胆

赤海胆は周防大島(屋代島)山口県伊保田産。
日本一の海胆ですと更に胸を張る。
暖流に住む赤海胆がハイクオリティで、明礬や海水を使わずとも水分取らなくても身がしっかりしているのだ。
初手から凝縮させた旨味が口内で弾け、心に強く訴えかけてくる。
濃厚だがしつこく無い旨味。
凄い素潜りのベテラン名人が漁っているのだとか。

◉ナガニシ貝(赤西貝)
別名”夜鳴き貝”といわれる巻貝。
貝の蓋が擦れる音が鳴き声に似ているから。
よーく耳を澄まして聴いていると「してしておかわりおかわり」と鳴くとか鳴かぬとか(笑)。

見た目が栄螺と似ているので勘違いされている人が多いという。

鮑、栄螺、海胆は草食で海藻を食べて生きているが、ニシ貝、バイ貝の種類は肉食。
浅蜊や牡蠣などの二枚貝やプランクトンを食べて生きている。
身体の構造、肉質、性格、性質、真逆なのだと面白いことを教わった。

しかし新鮮で生きていたナガニシ貝のお味は思っていたより癖がなく、スッキリとした旨味に溢れた貝。
それに高タンパク低脂肪でビタミンB12(赤血球の形成に関与し、悪性貧血を防ぎ、神経細胞の核酸やたんぱく質を合成、修復する)の含有量が凄いのだと。

◉真鯛、鰈身と縁側

初夏に差し掛かる新緑の芽吹きの時期は「青葉鯛 さらねぶり 青葉鰈 さらねぶり」と称されるという。
さらねぶりとは、最後の最後まで食べ尽くしてしまいたいと思わせるほどの美味という意味。
皿をねぶる(舐める)ということ。
刺身では〆無く素のままで提供。

◉ひらそ(平政)
◉真鯵

◉茹蝦蛄(雄)と生子持ち蝦蛄(雌)

茹蝦蛄はツメで、生蝦蛄はたこつぼ特性醤油で戴く。

ここでの白眉は生の子持ち蝦蛄。
こんなの食べたことが無い!
とっても甘くて身が嫌みの無いネットリとして旨味が舌に艶めかしく絡みつく。
いつまでもこの旨味の余韻を愉しんでいたいと思わせる。
この甘味を奔流(ほんりゅう)と形容付けていた人も♪
そこで泉を食いっとやると堪らない。

甘海老の10倍は美味いんだと大将。
ポイントは妊娠7~8ヶ月までの良い奴を厳選することだという。
臨月のヤツは身の方がお留守になってしまって美味しくないと。


◉鮑

殻から取り出した身は冷水で洗って提供。
貝は二枚貝でも巻き貝でも死ぬと同時にすぐ傷む。
刺身で食べる限りでは動くぐらい生きていないと腸も肝も食べられないと大将。
肝と紐が切り身の上に添えられ、臭味とは無縁の肝がネットリとした食感を生み出しコクを与える。
最高級な和布蕪を食べている鮑の肝は房総の鮑の肝とはまた別物の美味しさ。
柔らかい磯の風味に甘味の強さが特色。
身と紐の、コリっとした食感と風味のコントラストが面白い。
最後に麻酔無しで抜歯した(笑)口も後程かるく焼いての提供してくれた。
軟骨のような触感と紐のような旨味が混ざり合ったようなお味だ。

◉真鯛の白子 尾札部真昆布敷

超白眉!
真鯛の白子とは思えない巨大な塊は虎河豚の最高級の白子かと間違えた程。
こんなオバケ白子が育つ程真鯛の生育状況が素晴らしい環境の元にあることがうかがえる。
白子は醤油と割り下と酒を振りかけながら焼いているとのこと。
ここまで凄い白子は青葉鯛さらねぶりの時期だけだって。
ここからは身が痩せて麦藁鯛になってしまうから。
尾札部昆布は出汁が濃くて幅が広くて薄いので白子の余計な水分を抜くと同時に旨味も底上げするのに最適だと。
先に鯛白子だけを食べて最後に尾札部昆布を食べてくださいと案内どおりに戴く。

何だこの途轍もない旨味は!
今まで食べてきた真鯛の白子、いや、河豚や真鱈の白子を含めても抜きん出た美味だ。
下に敷かれた尾札部真昆布がまた最高の旨味をアシストしている。
その昆布も最後に美味しく戴ける。

何故こんなに真鯛の白子が美味いのか大将にたずねてみた。

白子の最高峰は鯛と一点の曇りも無く仰る。

本当の白子の旨さは
鯛>鰆>河豚>鱈
の順らしい。

鯛と鰆は白子の取れる量が少ないので市場に出回らないという希少部位。
大将の言に嘘は無く、大きさも今まで以上で厚みもあり張りもある。
芳醇かつ膨(ふく)よかな旨味が非常に強く鯛の風味も秀逸。
更にクドすぎない綺麗な旨味を白子に移す真昆布の力も凄いなぁ。

◉小鰭

身の脂は穏やかだが酢の〆加減が程良く美味しい身の味わいを一層深めていた。

◉ひらそ(平政)のチョイ〆チョイ炙り、あかそ(間八)の皮の炙り

身には生姜の天酢漬けが噛ませてあり、一仕事も二仕事も工程を経ているのだ。
一見単純そうでかなり奥が深い。
もう美味く無いわけ無いでしょーwww

◉穴子のひつむし、浅蜊の赤出汁、香の物

正に梅雨穴子の面目躍如の旨さだ!
広島でも穴子の名産地で羽田や金沢八景の穴子、九州は対馬の穴子、そして広島の穴子が日本でもメジャーな産地だ。
以前宮島のうえので戴いたあなごめしも良かったが、たこつぼの方が数倍美味!
うかがったところ、豊島の穴子を好んで使っているとのこと。
穴子から滲み出る旨味の洪水、質の良い脂、ご飯の炊き加減も弾力を感じつつ噛めば甘味が出て来て穴子の旨さをしっかりと受け止める女房役だ。
米がしっかり美味いから穴子の美味しさもしっかりと映えるのだ。

刻み海苔は地元広島で製造されたもので、たっぷりと敷き詰められている。
穴子とクドく無いサラリとしたタレ、刻み海苔の複合的な旨味をご飯が受け止めて相乗効果を発揮するのだ。

また赤出汁が凄く美味い。
八丁味噌にふんわりと山椒を利かせた出汁が何とも言えない美味。
浅蜊も貝殻めんめんに身が詰まっていて、加熱しても全然縮まない凄い素材だ。
噛めば浅蜊から滲み出るコハク酸の味の濃い旨味がしっかりと残っている。
もちろん汁にも旨味は溶け込んでいて極上の赤出汁と化している。

香の物も大好物の糠漬けで胡瓜と瓜。
正直な話、ひつむしが美味しかったので口直しが必要無かったので食べ残していた。
それを甘味の黄な粉もちの口直しで食べたところ、美味いこと美味いこと!
鈍ら(なまくら)な浅漬けではなくしっかりとした漬かり具合でどこまで当方を喜ばせれば気が済むのか!!(笑)

◉黄な粉もち
上万糧食製粉所の青大豆を原料に作られている物でないとこの膨よかな旨味と青い黄な粉にはならないのだそうだ。
これも6~7割程度実ったら収穫するのがポイントでこの見極めが全ての味が決まると。
収穫したものを乾燥させて炒った物を粉にすると、こんなに青々とした爽やかな風味を醸し出す。
100%のパンパンに太ったところで収穫すると甘味が薄くて美味しくないし香りも弱いという。

残った黄な粉はスプーンですくって食べるという、これも一種のさらねぶりじゃけん。

何よりも餅自体が美味い!
搗き立ての様な餅米の風味、歯に押し返す弾力とツルリとした滑らかさを併せ持つ。
これは杵搗き餅に間違い無いと大将にうかがってみた。
島根県は奥出雲の頓原(とんばら)の餅で、農協と契約して搗いてもらっている杵搗き餅で、島根県でも有数な良室米産地の「飯南町」で収穫された餅米とのこと。

たこつぼは広島に来たら絶対外せない店になった。
最後にお囃子が聴こえてきたすぐ近くの胡子神社でお参りし、飲み過ぎな我を反省しつつ帰路についた。

  • トップフォト 小鰯と賀茂鶴

  • 店構え

  • セッティング

  • カウンター

  • 賀茂鶴ゴールド

  • 小烏賊と鯛の子の焚き合せ

  • 小柱と鳥貝の本ニシ(赤ニシ貝)の酢の物

  • 長茄子の焼き浸し

  • 青肌を入れて先ずは4種出る

  • 小鰯の刺身 生姜 茗荷

  • 角の無い栄螺の壺焼き

  • 小海老、障泥烏賊の口、茹で青肌豆

  • 糸崎以西の瀬戸内~周防の真鯛

  • 由宇産瀬付きの真鯵

  • やはぎ

  • 板屋貝の焼物

  • 超絶美味い広島牡蠣

  • 岩牡蠣と見紛う立派な身質

  • 賀茂泉 純米大吟醸 たこつぼVer

  • 刺し盛り

  • 伊保田の赤海胆、本ニシ貝、広島真鯛

  • 鰈身と縁側、ひらそ、真鯵、茹蝦蛄

  • 生の子持ち蝦蛄

  • 和らぎ水

  • 真鯛の白子 尾札部真昆布敷

  • 鮑の身と肝

  • 鮑の口

  • ひらそのカマ焼き

  • 小鰭

  • ひらそのチョイ〆チョイ炙り、あかその皮チョイ炙り

  • 穴子のひつむし

  • ひつむし、浅利の赤出汁、香の物

  • 青肌豆の黄な粉餅

  • お茶で〆

  • 夜ノ準備 1

  • 夜ノ準備 2

  • カズヲさんと近しい時期に食事したのね

  • 大将の檜舞台

  • 看板

  • 外観(開店前)

2017/07/19 更新

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