1回
2025/11 訪問
揚げの美学が息づく、大人の隠れ家で味わう至福の一夜
活〆車海老
鯖のカダイフ揚げと梨の摺り下ろし
細海蘊と水晶文旦の三杯酢和え
極み鶉の玉子
かむい豚
甘鯛と松茸のお腕
松茸の香りふわぁ
黒トリュフのじゃがバター
熱々のバターがじゅわぁ
鰆のカラスミがけ
海苔と馬糞雲丹
海老の紫蘇巻き
穴子
金目鯛とイクラ 里芋のソース
卵黄の黒毛和牛巻き 玉葱のソース
海苔茶漬け
紅はるかとバニラアイス
ほうれん草のおひたしフルーツトマト茄子の生姜煮
ここから2時間かけてじっくり揚げられる紅はるか
2025/11/14 更新
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麻布十番の静かな通りにひっそりと佇む、8席だけの上質なカウンターがつくる贅沢な時間。
照明は柔らかく落とされ、油の香りすら上品に感じる洗練された空間。落ち着いた灯りが包み込み、料理の音も香りもゆったりと楽しめる大人の一軒です。
━━━━━━━━ 《コース》 ━━━━━━━━━
【おまかせコース】17,600円
◇沖縄県産 細海蘊と水晶文旦の三杯酢和え
◇活〆車海老
◇群馬県産 極み鶉の玉子
◇北海道産かむい豚
◇淡路島産 鯖のカダイフ揚げと梨の摺り下ろし
◇長崎県産甘鯛と京丹波産松茸のお腕
◇ほうれん草のおひたしフルーツトマト茄子の生姜煮
◇黒トリュフのじゃがバター
◇宮城県産鰆のカラスミがけ
◇海苔と北海道産馬糞雲丹
◇熊本県産 赤茄子
◇活〆車海老の紫蘇巻き
◇長崎県対馬産 穴子
◇千葉県銚子産 金目鯛とイクラ 里芋のソース
◇卵黄の黒毛和牛巻き 玉葱のソース
◇海苔茶漬け
◇茨城県産 紅はるかとバニラアイス
◆山崎ハイボール
◆作 純米大吟醸 (三重)
◆澤屋まつもと 純米大吟醸 (京都)
◆AKABU 純米吟醸 (岩手)
◆雁木 ORIGARAMI 純米酒(山口)
◆松の司 純米酒 (滋賀)
◆冩樂 純米吟醸 (福島)
━━━━━━━ 《それぞれの感想》 ━━━━━━━
◾️沖縄県産 細海蘊と水晶文旦の三杯酢和え
極細の海蘊はするりとほどけるような食感で、水晶のように透明感のある文旦の甘苦さと見事に溶け合う一皿。三杯酢の酸味がやさしく全体をまとめ、串揚げのコースの幕開けとして心と舌をすっと整えてくれます。
◾️活〆車海老
揚がった瞬間の衣は驚くほど軽く、噛んだ瞬間に海老の甘みと香ばしさがふわりと広がる一本。塩の指示で提供されるだけあり、素材の力をそのまま引き立てるシンプルな味付けが抜群。頭から尻尾まで香ばしく、余韻まで美味しい。
◾️群馬県産 極み鶉の玉子(出汁醤油)
サクッとした衣の中から、とろりと広がる濃厚な黄身が至福の一口。出汁醤油のやわらかな旨みと合わさり、小さな玉手箱のように豊かな味わいを閉じ込めています。
◾️北海道産かむい豚
衣の中からじゅわっと溢れる旨みが印象的なかむい豚。脂の甘さがくどくなく、噛むたびにやわらかい肉汁が広がる上品な仕上がり。ソースの酸味とコクが豚の甘みをふわっと引き立ててくれて、串揚げというより小さなトンカツ最上級形のような満足感がありました。
◾️淡路島産 鯖のカダイフ揚げと梨の摺り下ろし
細い糸のようなカダイフが軽やかに立ち上がり、噛むとふわっとほどけて中から鯖の旨みがじんわり。
青魚特有の香りは見事に抑えられ、脂のりの良さだけがきれいに残る。添えられた梨の摺り下ろしはみずみずしい甘さで、鯖のコクとカダイフの香ばしさをすっとリセットしてくれる、絶妙な組み合わせでした。
◾️長崎県産甘鯛と京丹波産松茸のお腕
ふたを開けた瞬間にふわっと立ち上る松茸の香りは、思わず息を呑む幸福感。
甘鯛はうろこを立てて揚げられており、外はサクッ中はふっくら。香り高い松茸と旨みのある出汁が重なり合い、揚げと椀物の良さをどちらも引き出す贅沢な一品でした。
コースの途中で体をそっと落ち着けてくれるような、温かみと華やぎのあるお椀です。
◾️ほうれん草のおひたしフルーツトマト 茄子の生姜煮
揚げ物の合間にそっと供される小鉢は、ひと休みのオアシス。フルーツトマトは皮ごと弾けるように甘く、ほうれん草のおひたしは出汁の香りがふわりとやさしい。茄子の生姜煮はじんわり染みた旨みと生姜の清涼感で、次の串への期待を静かに高めてくれる一皿でした。
◾️黒トリュフのじゃがバター
外はサクッと香ばしく、中はほくほく。
ひと口かじった瞬間、熱々のバターがとろりと溶け出す驚きの構造で、これはもう串揚げ界の小籠包。
濃厚なバターの旨みが広がる中に、黒トリュフの芳醇な香りがふわりと重なり、口の中でクリーミーさと香りの余韻が長く続きます。じゃがバターでありながら洋食のようなコクもあり、一口で心を掴まれる贅沢な仕上がりでした。
◾️宮城県産鰆のカラスミがけ
しっとりと揚がった鰆はふわっとした身質で、淡白さの中にきちんと旨みと香りを持つ上質な素材。
その上にたっぷりとかけられたカラスミの塩味とコクが重なり、一口ごとに風味がふくらんでいく贅沢な組み合わせです。
鰆の軽やかさとカラスミの濃厚さが見事に調和し、
酒肴としての完成度を強く感じる一本でした。
◾️海苔と北海道産馬糞雲丹
海苔を薄衣で香ばしく揚げた海のチップスの上に、馬糞雲丹がとことん山盛り。
噛んだ瞬間、海苔の香ばしさ → 雲丹の甘み → わさびの清涼感が三段階で波のように押し寄せてくる。
揚げた海苔のザクッと軽い食感が、雲丹のねっとり濃厚さに最高のアクセント。
串揚げで雲丹をこんな贅沢に楽しめるなんて……
ちょっと反則級の美味しさ。
◾️熊本県産 赤茄子
外はカリッ中はとろり。熊本の赤茄子特有のとろける甘さが、そのまま衣の中に閉じ込められている。
噛むたびにじゅわっと染み出す茄子の旨みと、ほのかな香ばしさが優しく広がる。茄子の本領発揮を目撃した一本。
◾️活〆車海老の紫蘇巻き
ぷりっ！じゅわっ！紫蘇の香りふわーーーっ！
海老の甘みを紫蘇がきれいにまとめてくれて、後味がすごく軽いから無限に食べられそう。思わずカメラを構えたくなる健気なビジュアルにも心奪われた一串です。
◾️長崎県対馬産 穴子
衣はほんのり薄く、口に入れた瞬間ふわっと軽くほどける食感。身はしっとりきめ細かく、脂の甘さがじんわり広がる。揚げ油の香りに負けない穴子本来の旨みが前面に出た一本で、塩で食べるとより一層その繊細さが引き立つ仕上がり。
◾️千葉県銚子産 金目鯛とイクラ 里芋のソース
金目鯛をふんわり包む衣の中から じわっと広がる脂の甘さ。そこにとろりとした里芋ソースが合わさって、優しい旨みの層が生まれる。
仕上げにイクラがこぼれるように乗せられ、噛むたびにぷちりと弾ける塩味が全体を引き締めてくれる。
口の中で金目×イクラ×里芋の三重奏がしっかり成立していて、串揚げでありながら和食の小鉢料理のような奥行きを感じる一皿。
◾️卵黄の黒毛和牛巻き 玉葱のソース
とろりとした卵黄があふれ出し、和牛の旨みと重なって濃厚なコクの波が押し寄せる。そこへ玉葱ソースの甘みと香ばしさが加わり、重さを感じさせない絶妙なバランスに。
濃厚なのに軽い。矛盾を見事に成立させた完成度の高い一本。
◾️海苔茶漬け
蓋を開けた瞬間、立ちのぼる湯気とともに海苔の香りがふわりと広がる一杯。
たっぷりの海苔が熱々のお出汁と溶け合い、まるで飲む海風みたいな心地よさ。
やさしい塩味と磯の香りが身体の奥まで染み込んで、コースの余韻をじんわりと締めくくってくれる、ほっとするお茶漬けでした。
◾️茨城県産紅はるかとバニラアイス
コースが始まってすぐ職人さんが手に取っていたあの紅はるか。まさか最後のデザートへ向けて、2時間もゆっくり揚げられていたなんて………。
じっくり火を通された紅はるかは、蜜がぎゅーっと濃縮。外は薄いパリッとした皮、中はねっとりホクホクで、まるで天然スイートポテト。濃密な甘みに冷たいバニラアイスが寄り添うと、焼き芋でもスイートポテトでもない、新しいさつまいもスイーツが完成する。優しい甘さが口いっぱいに広がりました。
━━━━━━━━ 《おわりに》 ━━━━━━━━━
木の温もりに包まれた凛としたカウンターがまっすぐに伸び、揚げ場を囲む席からは職人さんが一本一本に衣をまとわせていく所作を間近に眺められます。
一串一皿に込められた丁寧な仕事が放つ余白の美は、串揚げという枠を軽やかに越えて、揚げ物の美しさと和食の奥行きをあらためて感じさせてくれるコースでした。特別な日の食事にも、静かに心を満たしたい夜にも寄り添ってくれる、大切にしたい一軒です。
ご馳走さまでした。