2回
2023/04 訪問
「食とは何か?」を感じれる場所 おかあさん百選の作る手料理
注目ポイント 味4.3
初めに一言。食が心底好きなら行くべき場所です。
しかし、派手さやインパクトや映えが重要なら行くべきではありません。
私の拙著な文では伝わらない良さが間違いなくここにはあります。
食して心から「ああ…食べるって幸せだな」と感じます。
料理って奥が深いなとつくづく教わります。
利便性
国道112号選から3分。庄内あさひインターチェンジから10分。
古民家なのでバリアフリーではありません。和室での食事となります。
実は2度目の訪問となります。鶴岡に行くなら是非行きたいお店でした。残念ながら前回は他所で展示会開催だったらしく臨時休業でした。
前回伺ったために場所はわかりますが、少しわかりにくい場所になります。
駐車場に停めてもそれらしき建物はありません。
すると道路向かいに看板が。
とても細い小道を奥に進むようです(Instagramでは動画をあげてます)。
ちょうど咲いてる梅の木をくぐって、なんだか御伽話の世界のようでワクワクします。
昔ながらの古民家が見えてきました。
そこへ店主の長南(ちょうなん)さんが外で作業されてました。
実はこの長南さんがすごい方なんです!
この方の料理があまりに衝撃だったので、とても気になり店を後にしてからどんな方かを調べました。
なんと!2007年に農林水産省と国土交通省(2010年第3回には農林水産省と観光庁)が選ぶ【第1回農林魚家民宿おかあさん100選】へ全国からたった20名に選ばれた1人です。100選と言いつつも最初の20人に選ばれたのですね。(第2回で28名、第3回で50名追加)
料理本のノーベル賞であるグルマン世界料理大賞を受賞されたアルケッチャーノ奥田政行シェフも絶賛する方でした。
でも、見た感じは割烹着を着た普通のおばさんです。
本当に凄い人ってそんな感じですよね。
野外は自然味溢れるお庭ですが、家内に入るととても綺麗にされています。
純和風の部屋に通されると、なんだかちょっと品の良い親戚の家に来たような気分です。
先客は0。どうやら長期間展示会で閉めていたのと、午前中も冠婚葬祭で開店が遅れたとのこと。
私にとっては落ち着いた雰囲気でこちらの料理を食べれたのは最高でした。
メニューはありません。こちらを取材されたサイトによると
◯お昼の料理 1,320円
待つ事10分。待つだけでも心地よい部屋ですね。
配膳されると、派手さは全く無くごくごく普通の内容です。器が綺麗だけどいかにも田舎飯という品々。
なのに、何故か物凄く惹かれます。
見ただけで、これは絶対美味いと確信できました。
まずはご飯から。
うわぁぁ…紫蘇の実がご飯を何倍も美味しくしてくれてる。最高の組み合わせです。
そしてご飯のお供は第二陣もあります。ふき味噌です。
これも素晴らしい!今まで食べたフキノトウ料理で断トツの1位です。
フキノトウの苦味と風味が絶妙に味噌へ引き出され、味噌との違和感は全くありません。最初からふき味噌という1つの材料があるかのようです。
ニシンの煮付けは、ほんのり甘く醤油で味付けされてますが、食べた後の雑味が全くなく、口に残る嫌な甘味もありません。しかし、味はニシンの良さがしっかりと凝縮されていて優しい。
高野豆腐と人参と昆布としめじの煮物も凄い。一つ一つ丁寧な仕込みをされてるのが見てわかります。そして全く味の角がなく野菜や昆布から旨味を最大限引き出しています。それが高野豆腐に染み渡り、全品が一体となって相乗的に美味しくなってます。
細めですがゼンマイでしょうか?こちらの山菜も自然の力強さを感じるのに、とても調和がとれています。
ゴボウや大根も野菜本来の美味さがあふれてる。
味噌汁は田舎味噌っぽく、飲んだ瞬間はガツンとインパクトがありますが、その後は塩味がすぐに引けます。何品かの料理を食べ渡る上での箸休めとしてとても良い役割を果たしてくれますね。
そしてすべて無添加です。
食べて思わず目をつむってしまいました。
ああ…なんて贅沢な時間。
日本人に生まれ、和食という文化で本当に良かったと思います。
大袈裟かもしれませんが、目をつむって食べると食材の声が聞こえるかのような至福の時に出会えます。
感服です。心底来てよかった。
こんなに素朴な料理で極限まで素材の良さを引き出せる長南さんは、まさにお母さんさんの中のお母さんMother of Motherです。
あまりの感動に会計時には感謝の言葉を伝えました。
すると「こんなおばちゃんのただの田舎料理なのにありがとう」なんて謙遜をしてくれました。
いやいや、ここまでの料理に昇華するには真心を込めた仕込みがあるはずです。
特別な接客があるわけでは無いですが、何というか全てがちょうど良く居心地の良い空間と時間でした。
どちらのお店へも感謝はありますが、今回は更に心からご馳走様です。
絶対また来ます。
2023/12/06 更新
◆今回の品◆
いのちを繋ぐ1汁3菜と保存食 1,500円(税込)
◆評価◆
食べログ参考:3.55点(31人)
総合:4.3点
味:4.3点
サービス:3.8点
雰囲気:4.0点
コスパ:4.1点
◆こんな方にお勧め◆
素朴な和食の本質と丁寧な家庭料理を味わいたい方へ
◆注目ポイント◆
味 4.3点
作り手は【第1回 農林漁家民宿おかあさん100選】で、全国からわずか20名の一人に選ばれた長南 光さん。
噛みしめるほどに“温度”のある味。まず白米の完成度が圧巻で、一粒一粒が立ち、噛むたびに自然な甘みがふわりと広がります。そこへシソの実の塩味と香りが重なると、ただの白米とは思えない幸福感が生まれ、箸が止まらなくなります。味噌汁はなめこの旨みと味噌のコクが見事に調和し、しょっぱさ皆無の優しい味わい。体がすっと温まります。
そして主役級の存在感を放つのがニシン。驚くほどふっくらとし、箸で触れるだけで骨が外れるのに、身は一切崩れない絶妙な火入れ。皮まで旨みが染み、口に入れた瞬間の多幸感は格別です。菊の酢の物は香りと酸味のバランスが秀逸で、山形の季節そのもの。煮物は素材の輪郭を残しつつしっとり柔らかく、切り干し大根は噛むほどに旨みがにじむ見事な仕上がり。
どの一品も“家庭料理の最上位互換”ともいえる深いおいしさで、食べるたびに自然と目を閉じてしまうほど。丁寧とはこういう味のことだと改めて感じました。
◆本文◆
こちらは、私が山形県で出会った飲食店の中でも、揺るぎなく“最高点”を付けているお店。
外食という枠を越え、「家庭料理の到達点」と言いたくなるほど心に沁みる味わいです。
ずっと再訪したく思いながら、ようやく叶った2度目の訪問。12月から2月までは冬季休業とのことで、今年ぎりぎりのタイミングとなりました。
店主の長南 光さんは、2007年に農林水産省・国土交通省が選ぶ【第1回 農林漁家民宿おかあさん100選】で、全国からわずか20名の一人に選ばれた方。
また、グルマン世界料理大賞を受賞したアルケッチャーノ・奥田政行シェフも敬意を示す存在で、地域の食の伝承者ともいえる方です。
駐車場から店舗へは、柔らかい陽光に照らされた小道を抜けて進みます。
少し荒れた草むらの風情はかえって自然の懐に包まれたようで、木に掛けられた「知憩軒」の看板が出迎えてくれる瞬間、胸の奥がふっと温まります。
奥に佇む築年数を重ねた古民家は瓦屋根が美しく、店内に入ると障子と柱の木目が年月を語り、“祖母の家に帰ってきたような懐かしさ”が一気に広がります。
テーブルは囲炉裏の名残を生かした作りで、畳と木の香りが混ざる空間は、もうそれだけで癒やしです。
長南さんは以前と変わらぬ雰囲気で迎えてくださり、思わず「帰って来た」という気持ちに。
メニューは一種類。席に着き、お茶をいただきながら静かに待つ時間すら贅沢です。
待つこと8分。
運ばれてきた膳は、【いのちを繋ぐ1汁3菜と保存食】と銘打った通りで、決して派手ではありません。
ですが、日本人のDNAに深く刻まれた“正しい食の形”がそこにあり、思わず背筋が伸びる美しさです。
白米の光り具合と味噌汁から立つ湯気の香りだけで、「ああ、これは間違いない」と確信できます。
まずは白米から。
粒がひとつひとつ立ち、ふんわりと水分を含み、噛むほどに自然な甘みが広がります。
そこにシソの実の程よい塩味と爽やかな香りが重なると、ごく普通の組み合わせなのに、“食べる幸せ”がじんわりと胸の奥に広がる”ほどの完成度。
家庭料理でここまで感動できることがあるのかと驚きます。
味噌汁はなめこの風味が活きており、コクがありながらもしょっぱさは皆無。
味噌の旨みだけをきれいに抽出したような優しい味わいで、体の芯が温まる一杯です。
そして圧巻はニシン。
驚くほどふっくらとし、箸で軽くなでるだけで骨がスッと外れるのに、身は煮崩れしない。
どうしたらこんな火入れができるのか本当に不思議で、皮まで美味しく旨みがしっかり染みています。
菊の酢の物は、菊の香りと酢の酸味が完璧に調和。
鮮やかな紫と黄色が美しく、口に含むと「山形の秋」をそのまま食べているかのようです。
高野豆腐・人参・昆布の煮物、ゴボウと青菜の煮びたしも、柔らかいのに素材の味が全く飛んでいない。
それぞれの輪郭がくっきりと保たれ、丁寧で繊細な火加減に思わず唸ります。
赤かぶ漬けはパリッとした歯ざわりで、漬物の手本のような仕上がり。
切り干し大根は噛むと大根らしい繊維感が残りつつ、染み込み具合は完璧で、家庭料理という枠では語れない技術を感じます。
食べるほどに、自然と目を閉じたくなる美味しさ。
前回と同じように、いや、それ以上に「食べることは幸せだ」と心の底から実感しました。
外食の豪華さではなく、“人の手のあたたかさが宿った食の本質”がここにはあります。
この味、この空気、このひととき。
【食】という言葉の本来の意味をもう一度思い出させてくれる、唯一無二のお店です。
こんな素敵な料理に、おこがましくも私の料理がほんの少しでも近づけたら…とても幸せな事だと思いました。
⌘最後に⌘
「いただきます」の一言に込めた感謝を忘れず、
日々の食に敬意をもって、その魅力を丁寧にお伝えできれば幸いです。
皆さまのかけがえのない食の時間を、より心豊かに彩るお手伝いができればと願っております。
長文を最後までご覧いただきありがとうございます。
ご馳走様でした。