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THE TABELOG AWARDA BRONZE 2021-2025
イタリアンEAST百名店 2021・2023・2025
東北地方/イタリアン 2位
秋田県/イタリアン 2位
◆今回の品◆
ランチBコース メイン料理有り
7,260円(コペルト550円、サービス料10%、消費税10%込)
ノンアルコールワイン 990円
◆評価◆
食べログ全体評価195人 4.19
個人評価総合4.1
味4.1
サービス4.0
雰囲気3.9
コストパフォーマンス4.0
◆こんな方にお勧め◆
余韻で魅せるコースを静かに楽しみたい方
◆注目ポイント◆
味 4.1
前菜は、白桃とモッツァレラの柔らかな甘みを核に、燻香・海のミネラル・畑の青さが点描のように重なり、酸と甘みの振幅で食欲を開く。
鱧と舞茸のフリットは、軽やかな衣に旨みを閉じ込め、パプリカの甘酸で後口を整える。
発芽「亀の尾」のリゾットは、粒立ちと出汁の余韻が長く、土と海の旨さが同居。
キッタラは小麦の香りに、鱧とズッキーニの甘み、すだちの香酸が透明感を添える。
主菜の短角牛は、赤ワインの深みが繊維に染み、野菜の辛甘で輪郭が締まる。
栗のジェラートは穀物と豆の旨み、トリュフの土香が重なり、余韻を豊かに。
二皿目の小菓子は、洋梨×カントゥッチ、南瓜×ゴルゴンゾーラの甘塩コントラストが心地よい。
全粒粉パンは香り高く、ソースを受けて味に奥行きを作る。
コーヒーは、最初のシングルオリジンが蜂蜜の柔甘と石果の酸で皿をつなぎ、締めのNOMAが澄んだ酸苦で全体をリセット。
コースを通じ、甘味・酸味・旨味・香りの重ね方が精妙で、濃さよりも余韻で魅せる味設計。
◆本文◆
今回の秋田旅で、食のメインイベントに据えたのがこちら。
久しぶりにうかがう完全予約制のリストランテで、食べログのBronzeを五年連続受賞。
さらに10/1発表の2026ノミネートにも名を連ねる実力店です。
個人的にもイタリアンのBronze店は二軒目ということもあり、期待は高まるばかり。
思えば秋田は“隠れたイタリアン王国”。
東北で評価4.0以上のイタリアン五軒のうち三軒が秋田にあり、本店はその中でも二番目に高い評価という事実が、胸の高鳴りに拍車をかけます。
場所は大曲イオンモールから車で四分。
大きな看板はなく、外観はレストラン然としないさりげなさ。
開けた空と木々に抱かれた一軒家で、街の喧騒から半歩退いたナチュラルガーデンが迎えてくれます。
肩の力を抜いて扉を開けられる、穏やかなアプローチが心地よい。
店内は白いクロス、古梁、左官壁が重ねる新旧のレイヤーに、磨かれたグラスの透明感がよく映えます。
テーブルの花と余白を活かしたセッティングが皿の輪郭を際立たせ、点で落とす穏やかな照明が、声量を上げずとも届くちょうどよい距離感を育む——。
どこか南イタリアの陽だまりを思わせる温かな空気が、席につく前から食欲を目覚めさせます。
この日は私たちの到着が早すぎたうえ、スタッフのお一人が急遽不在とのこと。
準備に追われるなかでも、ホールの方は終始にこやかで話しやすく、料理説明は簡潔でいて要点が的確。
質問には一歩深い知見で丁寧に応じてくださり、その姿勢に安心感が宿ります。
こういう接客が、のちの満足度を確かに押し上げるのだと実感。
まずは飲み物を。
私はノンアルコールのワイン、妻はノンアルコールのスパークリングを選びます。
既存の銘柄からアルコールだけを抜いたタイプとのことで、香りは驚くほど豊か。
ひと口でノンアルと気づかないほどの充実感があり、食前の高揚を気持ちよく支えてくれます。
他の二組がそろい、ランチは一斉スタート。
完全予約制ゆえ、あらかじめメイン付きのコースをお願いしていました。
―― 前菜 ――
ガラスの編み目皿に初夏の色を点描のように散らし、色彩と質感の対比で魅せる一品。
白桃とモッツァレラが中央でやさしく溶け合い、周囲には一口サイズの甘味・香り・海のミネラルが軽やかに配され、オリーブオイルの艶が輪郭を整える。
ぶどうとバフンウニのひと口は余韻が長く、皿全体のアクセントとして印象を結びます。
―― 二皿目 ――
白岩焼の淡いトーンに包まれた皿で、鱧と舞茸のフリットが静かに佇む。
衣はサクッと軽く、内側の柔らかな旨みとのコントラストが鮮やか。
穏やかな甘みと酸を湛えたパプリカソースが香りを引き締め、後口に品よい余韻を残します。
―― パン ――
全粒粉。香りは力強く、内層のもちもちとした粘りが心地よい。
―― 三皿目(リゾット)――
楢岡焼に盛られたひと皿。
発芽させた“亀の尾”が一粒ずつ立ち、米そのものの甘みと香りを前面に。
魚介と野菜の風味が重なり、土と海の恵みを映しとるような滋味がじんわり広がります。
―― 四皿目(パスタ)――
キッタラは程よい厚みと弾力があり、噛むごとに小麦が香る。
ふっくらとした鱧、みずみずしいズッキーニ、仕上げのすだちが全体を軽やかに束ね、野菜由来の旨味がソースに奥行きを与える。
夏の光をそのまま閉じ込めたような一皿です。
―― 五皿目(主菜)――
放牧で育った日本短角種「かずの牛」を赤ワインでじっくりと。
繊維がほどける柔らかさの中に、肉本来の力強さが息づく。
深いコクのソースが滋味をやさしく包み、伝統野菜の凛とした辛みと甘みが輪郭を与えて余韻を伸ばします。
―― 六品目(ドルチェⅠ)――
山栗の香りを抱いたジェラートを中心に、カカオのメレンゲ、米のミルク煮、香ばしいとうもろこしと茶豆。
甘みのレイヤーに穀物と豆の旨み、温度と食感のゆらぎが重なり、仕上げのトリュフが土のニュアンスを添える。
秋の実りを端正にまとめ上げた一皿です。
―― コーヒー① ――
ペルー・アルトパロマール農園のシングルオリジン。
ストーンフルーツのような果実味と蜂蜜のような柔らかな甘み。
軽やかな酸とジューシーな余韻が、ドルチェの合間を上品に整えてくれます。
―― 七品目(ドルチェⅡ)――
銅にガラスコーティングを施したプレートに、小さな余韻を集めた菓子が並ぶ。
焼き洋梨の凝縮した果実味、カントゥッチの歯ざわり、小杯プリンの南瓜とゴルゴンゾーラの調和を、カラメルのほろ苦がきりりと締める。
金属とガラスの艶が大人びた後味を演出します。
―― コーヒー②(NOMAコーヒー)――
澄んだ液体のなか、果実の酸と透明感のある苦みが繊細に調和。
軽やかなフルーティさとやわらかなロースト感が、食後の余韻をより深く導きます。
白磁のカップに収まるその一杯が、コース全体の流れを静かに結び上げました。
そして締めくくりに。
器・食材・人の調和が隅々まで行き渡る、満ち足りた一席でした。
選ばれた器は料理に静かな余白を与え、地の恵みは滋味として一皿に息づく。
接客は温度と距離感が絶妙で、緊張と寛ぎのバランスが心地よかったです。
季節が巡る頃、またこのテーブルで余韻の続きを。
感謝を込めて——
⌘最後に⌘
「いただきます」の一言に込めた感謝を忘れず、
日々の食に敬意をもって、その魅力を丁寧にお伝えできれば幸いです。
皆さまのかけがえのない食の時間を、より心豊かに彩るお手伝いができればと願っております。
ご馳走様でした。