24回
2017/04 訪問
とろチャーシュー麺大盛 & チャーシュー丼(中)
先日『天理スタミナラーメン』へ行ったの『はっぴ』がお休みだったからだった。店のシャッターには火曜・水曜は定休日と書いてあるが、その日は月曜なのに閉まっていた。なぜなんだろう?ひょっとして何かあったのかな?と思っていたが、今日夜に店の前を通りかかるとちゃんと営業している!夕食もまだだったので入ってみることにした。
時刻は午後8時過ぎ、店内は奥の方に何人か先客がいるようだが、けっこう空いていたので一人だったが珍しくテーブル席へ案内された。
席に着くといつもの元気なママさんが注文を取りに来た。注文する前に先日月曜に空振りしたことを言うと、この店は月曜は昼しか営業していないとのこと。火曜・水曜は一日中定休日たがら、週休二日半ということになる。けっこう休みが多いんですね、と言うと、一日半は仕込みに必要で、実際には週一日しか休みは取れていないんだそうだ。なるほど、と一応納得はしたが、それなら表のシャッターの表記は修正した方がいいと思う。
さて、今回注文したのは「とろチャーシュー麺」(¥890)の大盛(+¥100)と「チャーシュー丼(中)」(+¥320)で、計 ¥1,310である。
この店のラーメンは美味しいけれど、これ!といった個性というかセールスポイントが無く、おとなしい感じがすると思っている。が、よく考えると僕はこれまで「だし醤油とんこつ味」のスープしか食べていない。その理由は簡単で僕は好みとして「みそ味」が苦手、「こってりとんこつ」の背脂も苦手だからだ。「和風」というのもイマイチピンと来ない。だから他の味を試していなかったのだ。
そこで、前回初めて別の味の「辛味噌牛すじ肉そば」を食べてみたのだが、これは辛いのはいいのだが辛さの種類が単調に感じられて合わなかった。その時隣に座った客が注文したのが今回の「とろチャーシュー麺」であり、しかも売り切れ完売だった。だから、次に来る時にはこれを注文しようと決めていたのだ。
サイドも餃子とメンチカツは既に食べていたので「チャーシュー丼」にしたが、あとから考えると豚だらけになってしまっている(笑)
ママさんに「今回はこれを狙って来たんですよ!」と言うと「そうなんですか!うちの自信作で人気なんです。」とニッコリ笑った。その返答に期待感がさらに高まる。
店が空いていたので料理が届くのも早かった。例によって手早く写真を撮りながら見た目を観察する。見た目は単純明快、大きな豚の角煮がドンと乗っている。スープは毎度の「だし醤油とんこつ味」のようだ。メニュー写真の並びから「こってりとんこつ」かな?と思っていたが、よく考えたら背脂と角煮は一緒にしないだろうなと。安心すると同時に違うスープも試してみたかったとちょっと微妙な気持ちである。
「チャーシュー丼(中)」は一面が海苔で覆われてチャーシューは見えない。端に乗った紅生姜が真っ赤で、妙に存在感を主張している。
さて、冷めないうちにさっそく実食である。
「とろチャーシュー麺」のスープはやはり「だし醤油とんこつ味」であったが、角煮から出ているであろう甘みが感じられてひと味違う感じがする。具は他にもやしと葱のみ。ひたすら角煮で勝負しようという姿勢が潔い。
いよいよ問題の角煮を食べてみる。端で簡単にバラせるほど煮込まれて、舌に乗せるととろとろにとろけるような食感。かなり甘く味つけられているが、豚の旨味もしっかり堪能できて絶品の美味!これならラーメンに乗せずに角煮だけを注文しても満足できるだろう。単品の角煮は¥400だそうだが、この美味しさなら納得である。
しかも、角煮から染み出したいつもの「だし醤油とんこつ味」スープにプラスされて良い効果を生んでいる。これは良い出来のラーメンだ。
一気に半分ぐらい食べて、今度は「チャーシュー丼」を食べてみた。一面の海苔の下には小さめに切ったチャーシューがたっぷり。食べるとこちらも柔らかいが、角煮よりは噛み応えがある。ただ、タレの甘さが豚肉の旨味にちょっと勝ち過ぎている感がある。海苔も切り方は大きめだが香りはさほど強くなくて、食べるのに若干邪魔。タレの味がここまで強いなら、錦糸卵でもあった方がいいと思ったし、海苔ももう少し細く切って量を減らしてもいいと思う。そして何より「とろチャーシュー麺」の角煮と一緒に頼んだ僕の注文が良くなかった。この角煮なら普通の白いごはんで食べた方がいいだろう。
丼を一気に食べて再びラーメンに戻り、10分かからずに完食した。
食べ終わった感想として、この角煮はインパクト十分で絶品!この店はチャーシューも美味しいし、豚肉の味に関してはかなりこだわりが感じられる。これならば仕込みに一日半かかるのも納得である。持ち前の優しい味のスープに染み出したタレがラプラスする効果も大きく、大満足であったら。
「チャーシュー丼」も決して悪くはないが、角煮とはバランスが悪いと思う。
ママさんに角煮がたいへん気に入ったと言うと、この店では角煮は数が限定されていることもあって三番人気らしい。二番人気が「こってりとんこつ」で一番人気はダントツで「肉そば」の和風なんだそうだ。僕が食べ続けてきた「だし醤油とんこつ味」は話題にも出なかった(笑)
やはり食わず嫌いはいけない。ママさんの話では「肉そば」は「こってりとんこつ」の倍以上出るとのこと。きっちりママさんのトークに乗せられている気がしないでもないが、次回はその「肉そば」を食べに来ると宣言して店をあとにした。
とろチャーシュー麺(¥890) 大盛(+¥100) とろけるような豚バラ角煮が乗った豚骨醬油ラーメン。甘く味つけされた角煮は箸で簡単に切れるほど柔らかく、舌の上でほろほろと崩れる。抜群に美味しい!
チャーシュー丼(中)(¥320) 角煮と同じ豚を使ったチャーシュー。やはり甘く味つけられているが、柔らかい中にも弾力がある。
とろチャーシュー麺大盛 & チャーシュー丼(中) 計 ¥1,310 注文してから気づいたが、豚肉だらけだった。それでも飽きが来なかったのは、味と食感が違うから。特に角煮は必食の逸品である。
2017/04/16 更新
2017/03 訪問
辛味噌牛すじ肉そば 大盛 & ミンチカツセット
園田近辺では僕が最も気に入っているラーメン屋の『はっぴ』ではあるが、これまで注文したのは夏場の「冷麺」を除けば毎回「半熟卵ラー麺」の大盛一本槍。それも判で押したように「ごはん」に「餃子」なのだ。僕は通常気に入った店があるとその全メニューを制覇したがる癖があるのだが、ことラーメン屋に関してはそのかぎりではなく安心して食べられるメニューを一つ決めて繰り返し頼むようだ。こんなところからも僕のラーメンに対する執着は薄いと感じたりする。
だが、この『はっぴ』の「ラー麺」を前回1月に食べた時、急に自らの冒険心の無さを改めようと決意した。次回からはしばらく「ラー麺」はお休みして、一通り全メニューを制覇するぞ!と。一つにはこの店の「半熟卵ラー麺」はよくまとまっていて美味しくはあるけれど、これ!というインパクトは欠けるような気がするから、というのもある。
どうせ味の変化を求めるならば、極端に大きく変化させてみようということで、次回は「辛味噌牛すじ肉そば」を食べてみようということにした。辛いもの好きとしては別メニューのチラシの厳重注意!という煽り文句に惹かれたというのもあるが、味噌や背脂、和風というのが僕はイマイチ苦手で食指が動かなかったというのもある。それでも次回からはサイドを含めた全メニューを制覇してみようと思う。
というわけで、今日は「はっぴ」全メニュー制覇の初日。目的は「辛味噌牛すじ肉そば」(¥980)の大盛(+¥100)ただ一つ!
勢いこんで店に入ったのは夜19時15分ぐらいだったが、店はほぼいっぱいの状態。ちょうど入れ替わりにカウンターの二人連れが帰ってくれたので待たずに座ることができたが、僕が店にいる間にも数多く客の出入りがあり、そのうち何人かは外で待ち状態に。かなりの繁盛ぶりで、人気店であることを再認識した。
混んでいたせいもあるが、注文をするまでに少し時間がかかった。繁忙な時間帯でもフロアはいつもの元気なお姉さんが一人だけ。実に明朗快活かつ迅速に働いてはいるが、やはり回っていない感はある。フロアを一人で回すには席数が多過ぎるし、奥に広い店の形も向いていない。ちょっと気の毒である。
注文まで間があったおかげでメニューをじっくり見直すことになり、おかげでこれまた食べたことがなかった「ミンチカツセット」(+¥500)も注文する気になったから、店としては待たせるのもマイナスばかりではないかもしれない(笑)
「辛味噌牛すじ肉そば」(¥980)大盛(+¥100)
「ミンチカツセット」(+¥500)の計 ¥1,580の注文である。ラーメン屋での僕の注文としてはけっこう張り切った金額である。
ここから料理が出てくるまでもまたいつもより時間がかかった。料理を待つ間、店内の様子を窺っていたのだが、客層はかなり若い。僕のようなおじさんは他に全然いないし、女性客もけっこう多いようだ。店内は小ざっぱりして清潔感もあるが特にお洒落でも若者向けでもないと思うのだが、なかなかの若者人気である。この店は僕の中ではライト豚骨系に分類されるのだが、こうした味は若者に好まれるのだろうか?
そんなことを考えているうちに料理の到着である。まずは「辛味噌牛すじ肉そば」が来た。例によって手早く写真を撮り外見を観察するのだが、そこから「ミンチカツセット」が出てくるまでさらにちょっと時間がかかった。これはちょっといただけない。待っていては麺が伸びるしスープもヌルくなってしまう。それならさっさとラーメンから食べ始めればよいのだが、試しに一口スープを啜って思ったのが、この辛さだとラーメンを先に食べるとミンチカツの味はわからなくなるかもしれないということだ。しかたなくセットの到着を待つことにする。この店に限ったことではないが、こうしたことに店側はもっと気を使ってほしいものだ。
幸いそこまで長く待たされることなくセットも到着。全景を写真におさめて、いよいよ実食である。
まずはミンチカツをがぶりと一口。サイズは大きいが厚みはそれほどでもない。衣も厚いめで、具がもっと欲しい感じはしたが、味は抜群に良い!たまたま目の前に来たフロアのお姉さんに「これ美味しいですね!」と言うと「ありがとうございます!ミンチカツは店内で一から手作りの自信作なんです。」とのこと。確かにラーメン屋のサイドメニューではなく洋食屋のレベルの味だと思えた。ただ、ラーメンとの相性という点はどうなんだろう?実はこの『はっぴ』では、ラーメン抜きでこのミンチカツに小ごはんと中華スープ、小皿の副菜が付いた定食を¥650で提供しているらしい。確かにそうするだけの価値のある美味しさなのは認めるが、ラーメンのサイドメニューとしては向いていないように思った。もしサイドメニューにするなら個数は一つにして値段も¥300ぐらいにすればいいと思う。
サイドメニューの話でちょっと脱線するが、この店のセットメニューには餃子付きの物が無いのだが、これは残念に思う。餃子の味は良いと思うのだが、店としては餃子よりチャーシューやミンチカツを推している感じで、お好きな方は単品でどうぞ!というスタンス。ラーメンとの相性から考えればもっと餃子を一生懸命売ればいいのに、ちょっともったいない。
客単価についてさらに脱線するが、ちょっと思ったのが今どきの若者はけっこうリッチなんだなということだ。周囲で飛び交う注文が聞くでもなく耳に入って来るが、ラーメン単品の注文というのはほとんど無い。店の自信作というミンチカツの注文こそ僕以外には無かったが、ビールや焼豚、餃子、ミニチャーシュー丼とのセット等複数の注文ばかり。たまにラーメンだけの注文があっても、各種チャーシュー麺やら色々とトッピングを加えた注文が実に多い。レジでのお勘定の声も漏れ聞こえてくるが、軒並み千円以上の客単価である。
僕が若い頃のラーメン屋と言えば注文はたいていの客が一番シンプルなラーメンのみ。夜遅くなればおっちゃんたちがビールにつまみで一杯飲ることもあったが、若者はたいがいラーメンだけをさっさと食べていたような印象がある。そのラーメンも大体¥500以下だったし、チャーシュー麺やら餃子やらを注文するのは仕送り直後やバイト料が入った直後ぐらい。いや、金がある時にはラーメンよりもっと値段の張る物を食べに行っていた。
当時よく通ったのが井の頭線渋谷駅を降りてすぐの立ち食いのラーメン屋だったが、確か一杯が¥180だったような…。だから、僕の中でのラーメンという食べ物のポジションは立ち食い蕎麦と同等かそれ以下、牛丼よりも明らかに下で、むしろハンバーガーのようなジャンクフードの類であったように思う。
それから十年以上のブランクがあって、また食べだしたのが関西に帰ってきてから、それも本格的に食べだしたのは両親が亡くなって自身が離婚して一人になってからだから、四十代半ばのことになる。
その間にラーメンという食べ物は驚くほど多様化し、進化した。今や「日式拉麺」という一種の日本食として世界中で認知されるまでに変貌したのである。
それでも僕の中ではどこかでラーメン=ジャンクフードという感覚が残っているようだ。だから今どきの若者の注文に驚いたりするわけで、こんなことを書いている自分が我ながら齢を取ったものだとつくづく思い知った気がする。
話の脱線があまりに長くなった。肝心の「辛味噌牛すじ肉そば」の味についても記しておくとしよう。
一口啜って辛さが強烈なのはわかったが、ミンチカツをひとしきり食べてから再度本気で食べ始めてみると、辛さの種類が唐辛子系だけでやや単調に感じるようになった。辛さとしては十分で汗も吹き出してはきたが、この辛さは食べていくうちに慣れてしまう辛さだ。
肉そばということで、具としてはこの店イチオシの焼豚ではなく、牛すじを煮込んだ物が乗っているのだが、これの味つけがこのスープに対しては弱過ぎる。もっと牛すじの旨味を感じられるならよかったのだが、残念ながら辛さに負けてしまっている。すじ肉らしい歯応えはあるのだが、旨味を感じられないし単に硬いとしか感じられなかった。
僕は『はっぴ』のラーメンは基本的には美味しいと思っている。ただ足りないものとして、これだ!というインパクトを求めていたわけで、その意味ではこの「辛味噌牛すじ肉そば」は確かにインパクトはあるだろう。だが、この店の基本形のラーメンにある例えば麺の味やスープの旨味を生かした上でインパクトを付加するのではなく、殺してしまっては意味が無い。
辛いものは大好きな僕だが、辛さの種類が合わなかったというのもある。そして、この店のラーメンの良いところは辛さを足す方向では生きてこないように感じた。
ミンチカツが期待した以上に美味しかったのは収穫だったが、辛い麺は口に合わないのは意外だったし残念だった。
次の来店時には別の方向のインパクトに期待して、次回は豚の角煮が入っている「とろチャーシュー麺」(この日は売り切れだった)に挑戦してみようと思う。
辛味噌牛すじ肉そば(¥980) 大盛(+¥100) 辛さはかなり強烈だが、種類として唐辛子系の辛さだけなのでやや単調。食べているうちに慣れてくるタイプ。メニューの煽り文句ほどの辛さではない。
ミンチカツセット(+¥500)のミンチカツ 自家製だというこのミンチカツはラーメン屋のサブメニューとは思えない美味しさで、完成度は洋食屋並み。値段は張るが、それだけの価値はあると思う。
辛味噌牛すじ肉そば大盛(¥1,080) & ミンチカツセット(+¥500) 計 ¥1,580 ミンチカツは美味しいが、ちょっと高くつくかな?ミンチカツは一つでもいいと思った。
2017/10/26 更新
2016/07 訪問
今年も冷麺がかなり美味しい!
今夏の冷麺行脚は早くも4軒目。今日は若王寺の交差点のちょい北にある『ラーメン工房 はっぴ』へ。
こちらのお店はかつて『ラーメン工房 あ』という名前だった。宝塚にも同名の店がありそちらの店には何度も行ったことがあったが、味はいわゆるライト豚骨系で、宝塚の場所柄に合わせたような小洒落た内装だった。その食べやすい味とラーメン屋らしからぬ雰囲気のせいか、女性客の多い繁盛店だったと記憶している。ただ、ラーメンの味は僕には軽過ぎてあまり印象に残っていない。
僕が園田に引っ越してきた頃はまだ『あ』という名前で、一度だけ入って味は宝塚と同じようなもんだなぁと確認したことがあった。その後しばらくして店名が『はっぴ』に変わっているのに気づいたが、外から覗いてみると内装はあまり変わっていないように思えた。それからしばらくは行く気が起こらなかったのだが、昨年春になって初めて入ってみた。食べてみると、『あ』と同じようなライトな豚骨ラーメンではあったが、豚骨の味が『あ』よりしっかりしていて僕の好みに合った美味しさだった。店員さんに尋ねたところ、経営者は『あ』の頃から代わっておらず、『あ』の系列店ではあることに変わりはないが、店名を『はっぴ』に改めて味も独自色を出そうと努力しているとのことだった。以来、そう頻繁にではないが何度か通っているお気に入りの店である。
店員さんは調理担当の男性が一人とフロア担当の女性が一人の計二人だけ。店内はそこそこ以上に広く席数もそれなりにあるため、ちょっと人手が足らない感じは否めない。接客に関してはやや物足らないところがあるし、商品提供の速度もちょっと遅いような気がする。味が気に入っているので、もったいないと思う。
それでもそうした欠点が致命傷になっていないのは、フロア担当の女性が一人でとにかく頑張っているからだろう。動きの機敏さや応対の明快さももちろんだが、非常によく気がきくタイプで、今日も久々に来店した僕に向かって「去年の夏も冷麺を召し上がっていただきましたよね!」とニッコリ笑って声をかけてくれた。こうした気遣いはやはりうれしいものだ。人手不足は解決した方がいいとは思うが、彼女がいれば大きな問題にはならないのかもしれない。
さて、今日の目的は「冷麺」(¥800)である。実は昨年夏にも食べたのだが、その時に聞いた話ではそれ以前には「冷やしラーメン」というメニューがあったがそれとは違う新たなメニューなんだそうだ。昨年食べた時の印象がかなり良かったので、今日も楽しみである。期待を込めて+¥100で大盛にしてみた。
まったくの偶然なのだが、この日が今年の冷麺提供の初日だったらしい。そのせいもあるのかもしれないが、待ち時間はやはりそれなりに長かった。待つこと十数分、「冷麺」の登場である。昨年撮った写メと比較したが、見た目は昨年と同じようだ。
一口食べて、昨年以上に美味しくなっているように思えた。女性店員さんに聞くとレシピは全く変わっていないそうで、あるいは錯覚なのかもしれないが、今年の方が麺自体がしっかり自己主張しているように感じられたのだ。やや色の濃い麺はしっかりと噛み応えがあり、小麦の味がちゃんとするように思える。これは麺自体の質や茹で加減の適切さもあるだろうが、なにより良く思えたのがスープとの相性だ。よくある醤油と酢がベースの甘酸っぱい冷やし中華のスープには違いないが、塩気も甘さも酸味もどれ一つ悪目立ちすることなく非常にバランスの良い味に仕上がっていると思う。他店の冷やし中華のスープは醤油系でも胡麻系でも甘さや酸味が勝ち過ぎているものが多く、それゆえ麺や具、スープの素材の味をスポイルしてしまっているのだが、この店の「冷麺」はスープの控えめな味つけのおかげでそれぞれの素材の確かさを確認できるのが良い。
具に関しては不満がないわけではない。まず、肉系の具がハムだけであること。叉焼の美味しさが売りであるはずのこの店で、これはもったいない気がする。それと味玉。店の自慢の味だから、こちらの方は味玉の形のまま提供されている。確かに味は良いかもしれないが、冷麺の具としてはいかがなものか?叉焼とは逆に、玉子に関しては錦糸卵にした方がいいのではないだろうか?中華クラゲのような違った食感の具を加えてみてもいいだろうし、具には検討の余地があるかもしれない。
それでも、トータルに見てかなりレベルが高いと思う。卓上の小パックのカラシを三つほど加えて混ぜると、あとは脇目もふらず一気に完食した。やはり美味しい、満足である。
自宅からさほど遠くない場所にこれぐらい美味しい冷麺を出す店があるのは本当にありがたいことだ。今年の夏は間違いなく何度も通うことになるだろうと思った。
2017/10/26 更新
前回の「とろチャーシュー麺」が気に入ったので、続けざまに訪店である。
今回はあらかじめ目的が決まっていて、前回ママさんから「当店断トツの一番人気です!」と紹介された「肉そば」である。
これまで僕はこの店では「だし醤油とんこつ味」のスープの物しか食べていなかった。味噌や背脂ははっきりと苦手なので食べなかったのはいいとして、この「肉そば」については「和風ラーメン」とジャンル分けされているのがなんとなく避けていた理由である。和風という表現には魚介系の出汁が想像される。これが僕は苦手なのだ。
近年ラーメンという食べ物は恐ろしいスピードで進化・多様化している。麺や具もそうだがスープは特に複雑化が進んでいて、かつての鶏や豚と野菜から取った単純なスープから数種類を混ぜ合わせた多層化スープを使うラーメンが実に多い。複雑なスープが悪いとは思わないが、僕自身の好みとしてはシンプルな方が断然いい。そして、ラーメンといえばやはり鶏や豚など動物系の出汁の食べ物であってほしいのだ。
和風という場合、昆布ダシの味まではぎりぎり許せるとして、魚介類のスープはどうも…。
最近鯛やら鯖やらの出汁を使った人気ラーメンも数多いのは知っているが、それなら魚介類だけか、せめて鶏まで混ぜるのは許せても、豚と魚介類を合わせるのはどうしても好きになれないのだ。
というわけで、これまで和風という言葉だけを理由にこちらの「肉そば」を避けてきたのだが、今日は挑戦である。
注文は「肉そば」(¥780)の大盛(+¥100)の計¥880である。注文をママさんに告げると
「今回は肉そばを召し上がっていただけるんですね。ありがとうございます!」とにっこり笑った。ママさんは相変わらず愛想が良くて陽気だ。これはこの店の大きな魅力の一つであると思う。
お店に入ったのは午後8時過ぎだったが、店内はいっぱいの満席状態。幸い僕が入るのと同時にカウンターの客が一斉に席を立ってくれたが、片付けるまでの間ちょっと待たされるほどの混雑ぶり。ママさんもフル回転しているし、料理が出てくるのにある程度は時間がかかるだろうと思ったのだが、注文してから5分も経たないうちに「肉そば」が出てきた。早い!
例によって手早く写真を撮りながら見た目を観察する。具は牛肉とワカメの葱だけ。至ってシンプルである。牛肉は近江牛だということだが、牛すじを細かく切ったもののようだ。もっと飴色の煮込みっぽい色の肉を想像していたが色はさほど濃くない。この肉は先日の「辛味噌牛すじ肉そば」にも入っていた牛肉と同じ物だろうと思う。
さあ、実食である。
まずはスープを一口。あれっ、美味しいぞ!ちょっと驚いたのはほんのり甘いことだ。和風出汁とのことで昆布や鰹節の味はするが、それが強過ぎない。イメージとしてはすき焼きのタレを昆布ダシで伸ばしたような味である。
よく考えたらすき焼きやしゃぶしゃぶだって和食なわけで、和食=魚が強いなどというのは偏見も甚だしい。牛肉と昆布ダシは合ってもなんの不思議もないのだ。鰹の風味もするが、牛肉とうまく調和している。このスープは秀逸!具のワカメもこのスープにはよく合っている。
スープのほんのりと優しい甘さはとても美味しいが、ちょっと優し過ぎる感があるので、味にアクセントが欲しい。だが、この味に胡椒を入れては台無しになりそうだ。で、調味料を見ると七味の小パックがある。あぁこれだな!と思い、通りかかったママさんに「この七味を加えたらいいんですよね?」と尋ねたところ、
「いえいえ、一緒にお持ちしたこちらをお使いください。「肉そば」のお客様には使っていただくことになってます。専用の七味です。」との答え。見ると、ラーメンの写真を早く撮ろうと必死で気づかなかったが、黒い七味の容器が傍に置いてあった。
それを加えて再度スープを一口。七味の香りと刺激が良い具合のアクセントになって、スープの味がさらに引き立つ。実に美味しい!これは気に入った。
だが不満もある。麺が弱い。他のラーメンと同じ麺なのか、それとも「肉そば」専用の麺なのかわからないが、麺が細く柔らか過ぎる。優しい味の麺でスープとの相性は悪くないが、ラーメンも麺料理の一種だと考える僕としてはもっと麺自体に食べ応えが欲しいと思った。
それでも、全体によく出来た美味しいラーメンだと思う。あっという間に完食、満足である。
ママさんがまた近くに来たので、美味しかった!と伝えると、前回の角煮の「とろチャーシュー麺」とどちらが気に入ったか?と訊いてきた。「どっちも気に入りましたよ!」と答えたが、後から考えると僕は「とろチャーシュー麺」の方が好きかなと。「肉そば」も美味しいけれど、麺が頼りなく感じたからだ。
食べ終わって思ったが、今日の「肉そば」にしろ前回の「とろチャーシュー麺」にしろ、実に美味しくて気に入ったが、やはりこの店のラーメンは押し出し・インパクトは強くないと思った。よく出来た、万人ウケするタイプの美味しさだし、実際それがあるだけで十分なのだが、もっと「これだ!食ってみろ!」と言わんばかりのセールスポイントに欠けるように思う。それが感じられるのが『名店』なんだろう。そこまで望むのは高望み過ぎるだろうか?
次回は苦手な背脂に挑戦することにしよう!なんだかんだ言いながらも通う気持ちになっているわけで、この店は気に入っているのは間違いない。