2回
2024/06 訪問
季節を具現化した料理の世界観に陶酔する
日本料理の名店で研鑽を詰んだ荻野氏が、旬の食材を最大限に活用し、季節感を重視した極上の日本料理を提供する。
店主の荻野聡士氏は京都の名店「嵐山吉兆」や「銀座小十」「銀座奥田」などの名店で修行を積み2020年東京赤坂に「赤坂おぎ乃」を独立開業。
開店以降コロナ禍を乗り越え、その卓越した技術と料理への情熱は美食家の心を捉え、今や予約の取れない人気店となっている。
今回、常連さんに有難くお誘い頂き初訪問。
白木のカウンターが眩い明るく清潔感のある7席のみの店内。
料理はおまかせコース一本。
荻野さんからの挨拶と料理の説明を受け、さらに期待が高まったところでコースがスタート。
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6月のは「夏越しの祓」の伝統的儀式「茅の輪くぐり」を夏の始まりのテーマとして料理が始まる。
半年間の穢れを祓い清め、残り半年の無病息災を願いに込めて、小さな茅の輪から手を伸ばして盃を手にする。
▪️赤紫蘇のジュース
・赤紫蘇の果汁を搾ったジュース
〇 プレミアムモルツ
▪️とうもろこしのすり流し
・愛媛の赤雲丹添え
・枝豆の屑豆腐
▪️夏野菜の和え物
・車海老添え
・出汁の中に山葵とすだち醤油
・氷に見立てたトマトのゼリー
・熊本の赤茄子
▪️お椀
・毛蟹の真蒸
・ずいき
・柚子の花と皮
・鰹の一番だし
〇 磯自慢 純米吟醸
▪️お造り
・いさき 神経締め熟成
・1枚はそのまま、もう1枚は熱した鉄棒で香ばしさを出したもの
・アオリイカ
・包丁の切れ目を細かく入れ甘くねっとり
・すだち&塩,醤油
▪️熊本天草 黄金鱧のおとし
・わさびと梅肉
▪️平貝の貝柱
・炭で香り付け
・煎りたての胡麻
▪️和歌山那智神楽の本鮪
・中トロと大トロ
・備長炭で香り付け
・自家製海苔の佃煮
・細かく刻んだ長芋
・黄身醤油
▪️蒸し鮑そうめん
・鮑のすり流し
・超極細のそうめん神杉
▪️八寸
・筏に新緑があしらわれた水辺のイメージ
・フルーツトマトのお浸しとじゅん菜
・能登のもずく酢はしっかりとした食感
・蛸と小豆を甘辛く炊いたもの
・揚げたアボカドに豆腐のソースの白和え
・但馬牛ヒウチの焼きしゃぶとホワイトアスパラガスのソテー
・煮穴子と蓮根の餅
〇 今西 純米酒 備前雄町
▪️シルクスイートの天ぷら
・焼き芋にしてから揚げたもの
▪️長野県天竜川の鮎
・成魚の塩焼き
・胡瓜の甘酢漬け蓼の葉添え
・鮎のおしりを少し上げて焼くことで、頭は唐揚げ状、お腹は塩焼き、おしりは干物状になる様に焼き方を変えている
・手で持って3口で部位ごとの焼きの違いを楽しむ
・鮎の苦味と相性が良い黒ビール
▪️太刀魚の天ぷら
・炭火で炙った賀茂茄子
・すじ青のり
・餡かけ
▪️鰻丼
・炊きたて白ご飯
・漬物
・味噌汁
▪️とうもろこしとキンキの炊き込みご飯
・万願寺とうがらし
・キンキの脂でご飯をコーティング
お代わりで鯛茶漬けやご飯のお供も沢山出してくれるがお腹が一杯で断念。
▪️水無月胡麻豆腐
・黒蜜
・大納言を炊いたもの
▪️天使音(あまね)マスクメロン
・世界一美味しいと言われるマスクメロン
・ココナッツのシャーベット
季節感を取り入れて見事なまでに料理として具現化する。
伝統的な技法と季節の恵みが融合した料理は、単なる食事ではなく、芸術作品のように美しく、味覚だけでなく視覚や嗅覚など五感を刺激する。
日本料理の真髄。
開放的な調理場の臨場感を味わいながら季節を感じつつ料理を嗜み、最高の時間を過ごせる至福の場所。
季節ごとに何度でも訪れたくなる。
36,600円
2024/08/12 更新
日本料理の名店で研鑽を積んだ荻野聡士氏が、旬の食材を最大限に活かし、季節感を重んじた極上の料理を提供する「赤坂おぎ乃」。
伝統と革新が調和する一皿一皿に、確かな技術と美意識が息づく。
季節ごとに通いたくなる、今もっとも輝く日本料理店の一つ。
店は東京・赤坂の一角にひっそりと佇む。
扉を開けると、白木のカウンターが眩いほどに美しく、清潔感に満ちた7席のみの空間が広がる。
店主自らが一つひとつの料理を目の前で仕上げ、香り、音、所作までもが五感を刺激する。
店主の荻野氏は、京都「嵐山吉兆」、銀座「小十」「奥田」などの名店で修業を重ね、2020年に独立開業。
コロナ禍を乗り越え、その確かな技と真摯な姿勢が多くの美食家を魅了し、いまや予約困難な人気店となっている。
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〇 生ビール
まずは、ビールをお願いして喉を潤す。
本日は重陽の節句。
邪気を祓うとされる菊をテーマにした献立。
荻野さんから料理の説明を受け、期待が高まる。
〇 菊酒
ひやおろしに菊の花の香りと共に、盃で一気に飲み干す。
上品な香りが鼻に抜け、秋の始まりを感じる一杯。
▪️先付
穴子に蓮根、蕎麦の実、山葵、菊の花を添え、とろみのある出汁餡でまとめる。
穴子の柔らかさと餡の旨味が調和し、口の中で優しく広がる。
▪️前菜
いくら、塩水赤雲丹、噴火湾毛蟹ほぐし身。
車海老、ほうれん草のお浸し、みずの実、炭火で炙った山えのき。
黒酢のゼリーとともにいただく。
海の香りと酸味のバランスが心地よい。
▪️椀物
白甘鯛に桜と松茸を添え、鰹節一番出汁を使用。
まずは出汁を一口。澄み切った旨味が体に染み渡る。
白甘鯛は愛媛の漁師・藤本純一氏からの仕入れ。
丁寧な仕事が伝わる一椀。
〇 王禄 八〇(はちまる)精米80%
ふくよかで奥行きのある香り。
食中酒として料理との相性が良い。
▪️お造り
お月見盆にうさぎの器を添えて。
三重産トロ鰆の藁炙りを、たら白子醤油またはちり酢ゼリーで。
藁の香りと鰆の脂が美しく交わる。
▪️お造り
北海道厚岸産 本鮪大トロ・中トロ。
備長炭で香りを纏わせ、自家製海苔佃煮と長芋を添える。
黄身醤油がとろりと絡み、上質な甘みを引き立てる。
▪️煮えばな
芯をわずかに残した炊きたてのご飯。
一瞬の火入れで、米の香りを最も感じる。
▪️焼物
アカムツ(ノドグロ)の味噌幽庵焼き。
蒸した栗を削って敷き、舞茸の素揚げと黒イチジクを添える。
甘辛い味噌と栗の甘い香りが調和する上品な一品。
▪️八寸
重陽の節句を映した美しい盛り付け。
菊や紅葉をあしらい、秋の川辺の情景を表現している。
彩りの豊かさに思わず顔がほころび、目にも楽しい一皿。
一品ごとに食感や香りが変わり、味の移ろいをゆっくり楽しめる。
・柿と豆腐ソースの白和えは、柿の甘みと豆腐の滑らかさが優しく溶け合う。
・小豆と煮込んだ蛸のやわらか煮は、ほのかなからしの香りが心地よい余韻を残す。
・焼き茄子と茶豆のずんだ和えは、香ばしさと青豆の風味が爽やか。
・トマトゼリーが全体を軽やかにまとめる。
・つぶ貝の肝和えは、煎りたての胡麻の香りが深みを加える。
・スッポンの茶碗蒸しは、葱と生姜を溶きながら味わうと、体が内側から温まる。
・鴨のローストは、赤ワインソースと粒マスタードの酸味が絶妙。
・5種の江戸ハーブサラダは、グリーンレモンの香りで清々しく締めくくる。
中でも印象的だったのは、スッポンの茶碗蒸しと鴨のロースト。
スッポンの茶碗蒸しは、出汁の深い旨味と生姜の香りが重なり、体の芯から温まるような味わい。
鴨のローストは、しっとりと火入れされた肉が驚くほど柔らかく、噛むほどに旨味と脂の甘みが広がる。
赤ワインソースの深みと粒マスタードの酸味が鴨の濃厚な風味を引き立て、八寸の中でも特に印象に残った。
▪️揚物
シルクスイートを使用した焼き芋の天ぷら。
外は軽く中はしっとりと甘い。
▪️揚物
タチウオの天ぷら。
トロ茄子、香茸(和製トリュフ)を添え、おろし餡で。
ふっくらとしたタチウオの身と、香茸の芳醇な香りが印象的。
▪️鍋物
鱧と松茸の鍋。
花のように開いた鱧の身が美しい。
この時期の鱧は脂の乗りもよく、旨味が濃い。
骨と頭からとった出汁に、すだちを搾って爽やかさを添える。
▪️ご飯物
炊きたての白飯に香ばしいうなぎを乗せた丼。
身はふっくらとして脂がほどよくのり、外はパリッと香ばしい。
焼きの技術も素晴らしく、炭の香りが後味に心地よく残る。
なめこ汁とぬか漬けを添えて、最後まで余韻を楽しんだ。
一切れは持ち帰りの弁当にし、翌日の楽しみにした。
▪️ご飯物
炭火焼ききのこ、鮭、いくらの土鍋ご飯。
炭の香りを纏わせた燻製ご飯に、フィンガーライムを散らす。
弾ける酸味が香ばしさを引き立てる。
おかわりには、鮪の漬け、いくら醤油漬け、卵黄、鰹節、鱧と松茸の雑炊など6種類。
とても食べたかったが、満腹のため、今回は断念。
▪️甘味
イチジクあんみつ仕立て。
黒イチジクと赤イチジクをキャラメリゼ。
くるみと和三盆糖蜜でまとめた上品な甘さ。
▪️甘味
有馬・利平栗を使用したアイスクリーム。
下高井戸の農園産の香り高い栗が印象的。
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どの皿も季節を見事に表現し、伝統的な技法と創意が融合している。
料理はまさに芸術作品のようで、味覚だけでなく視覚・嗅覚までも楽しませてくれる。
接客は程よい距離感で温かく、荻野氏の丁寧な言葉と所作に心が和む。
季節が移ろうごとに、また新たな表情を見せてくれる。
次はまた、その時季ならではの味を確かめに訪れたい。
45,300円/1人