2回
2021/04 訪問
一品の逸品、構成の攻勢、巧整
フレンチを食べに行く、わたくしにはちょっとした非日常の体験です。以前より行ってみたかった「Du Vin HACHISCH」、やっと訪問の機会に恵まれました。しかもこのたびは「ハッシッシスペシャルコース」を頂くことになり、テンションはだだ上がりです。予約の際、ある程度のリクエストを受け付けてくれるコース、では遠慮なくリクエストいたしましょう。わたくしのリクエストは「前菜にアスパラを」というものでしたが、そのときにはまだヌーベルキュイジーヌの実力をまざまざと見せつけられることになるとは、思いも寄りませんでした。まさしく、非日常の体験の始まりです。
モダンな店構え、恐る恐る扉を開けて入店します。テーブルに案内され着席すると、テーブルの上に置かれている、コースの料理内容が記されたリーフレットに目がいきます。料理内容に一通り目を通した頃、シェフがテーブルに来て、料理全体の説明をしてくれます。さらに料理への期待は高まり、その勢いは止まりません。その勢いは庶民のわたくしには刺激が強過ぎ、食べる前から来て良かった〜とHiで幸せな気持ちになってしまいます。
いよいよコースが始まります。アミューズにはトマトと紋甲烏賊を酸味のあるソースで和えたものが登場しました。トマトの甘味と烏賊の甘味が酸味のソースによって十全に引き出され、食欲がさらに増進されます。次にアスパラを使った前菜、アスパラのブランマンジュが登場すると、その美しさに目が釘付けとなります。白と緑の鮮やかな色彩、キャビアの黒、雲丹の金による差し色、皿に描かれた絵画のようです。すぅーと口溶けのよいブランマンジュに、グリーンアスパラのソース香りが絡まり、春の息吹が身体の隅々にまで行き渡ります。
アスパラの料理はもう一品、魚料理の前に登場しました。「ホワイトアスパラのロースト、サヴァイヨンソース」、おそらく、太めのホワイトアスパラに軽くフォンを染み込ませたのちにローストしたものでしょう。アスパラを口に入れ、噛むとじゅわっとジュースが滲み出てきます。それを卵黄を使った濃厚なソースと合わせて食べ進めるのも、生ハムとの塩気と合わせて食べ進むのも、単独で食べても組み合わせても美味しいものは美味しい、ソース、生ハムに負けることなくアスパラがどどんと春の主役としてわたくしの味覚に訴えかけます。
他のお皿も、桜肉を九条ネギのオイルと併せたり、オマールを桜海老のソースと、仔牛をモリーユと空豆のソースと、どのお皿もソースを楽しむフレンチの王道は勿論のこと、素材の良さを引き立てるシェフの技量は敬服に値します。お皿一品一品を運んでくれるときも料理について丁寧に分かりやすく説明してくれ、料理への熱意が伝わりました。
そして、デセールでもさらに驚かされます。なんと、ペパーミントグリーンの色のアイスクリーム、「ふきのとう」で作られていました。フォンダンショコラのショコラの苦味とふきのとうの苦味、大人のデザートです。最高のデセールでコースを締めくくり、店を出るときには、舞台を見終わったときの高揚感にも似た感慨深いものが込み上げました。
スタッフ全員で店の外まで見送ってくださり、本当に温かい春風にも包まれた気持ちになれました。本日もご馳走さまでした。リピート確実です。さすが名店。
2021/04/18 更新
今年の夏は処暑を越えても、まだ灼熱地獄が続いています。夏バテする前にと庶民のわたくしですが、奮発してフレンチをいただきに参ります。
初めての店をとも思ったのですが、失敗はしたくないと珍しく攻める姿勢を放棄して、確実な店をリピートすることにしました。デュヴァンハッシシ、この店なら間違いないという期待のもと訪問した次第です。
いつもの丁寧なお迎え。飲み物の後に前菜が始まります。
ウニ、キャビア、フォワグラ、トリュフ、とうもろこし、ゼリー寄せにしたり、アイスクリームにしたり、ブリュレにしたり、パートナーはニタリとしたり顔。涼しげでどれも美しいし、美味しい。最高の冷たい前菜です。
次に登場したのが、鮎の冷製パスタ。鮎の甘み、苦み、トマトの甘み、混然となって清流のような爽やかさが口の中に広がります。今までいただいてきた冷製パスタの中で最も感動を覚えました。
ここから温かいディッシュへと切り替わります。前にもいただいたオマール海老のビスク風ソース。揚げたカダイフが良いアクセントになります。鰻のフリカッセ。枝豆の濃厚クリームソースがスモークした鰻の香ばしさと鰻の脂に対立することなく、その旨みを引き立てています。
魚料理はヒラメ。火の通し方は秀逸。夏のヒラメの淡白さを補うサフランソースにはムール貝が宝石のように散りばめられています。貝の旨みがソースに溶け込んでおり、旨みの多重奏の中に新たな「爽」が加わります。
メインは、鴨ロースト。胸肉でしょうか。これも火の通し方が完璧で、パサつくことなくジューシーなローストとなっております。ソースペリグー、トリュフの香りがふわっと漂い、ここまでずいぶん食べているはずなのに、さらに食欲を刺激します。シェフの話によると季節が逆のオーストラリア産、旬のトリュフを使っているとのことです。
デザートはトロピカルフルーツの和え物。単純に和えたものではなく、甘さ、酸味ほろ苦さが計算尽くされた最高の領域展開→「涼」域展開です。身体の中に爽快な風が吹き抜けるようです。
本日も期待を裏切られることなく、期待以上の満足感が得られました。おかげで夏の暑さも乗り越えられそうです。本当に美味しく楽しく食事ができました。ごちそうさまでした♪