2回
2026/01 訪問
黄金の滴、血の通った揚げ物。福岡の夜に刻む鎮魂歌。
街の喧騒を背に、重い扉を叩いた。
ここには、ただ腹を満たすためだけの食事など存在しない。
あるのは、職人と食材が切り結ぶ、真剣勝負の火花だけだ。
まずは活車海老。指先に伝わる弾力は、まだ命の残り香を湛えている。
鰆の燻製パン粉揚げは、鼻腔を抜ける香りが過去の記憶を呼び覚ますようだ。
マグロを塩昆布で揚げるという無頼な発想も、ここでは必然の帰結として成立している。
だが、この夜のハイライトはここからだ。
うずらの卵。その上に鎮座する世界三大珍味。
小さな殻の中に閉じ込められた贅の極致が、口の中で静かに爆ぜる。
霧島無菌豚の串カツを、黒いダイヤの如きトリュフソースで潜らせれば、
野性味と気品が混ざり合い、抗いようのない旋風を巻き起こす。
極めつけは大和牛のシャトーブリアンだ。
牛カツという鎧を纏いながらも、その身は驚くほどに繊細で、甘い。
噛み締めるたび、この街の夜が一段と深く、濃くなっていくのを感じた。
予定調和な美食に飽きたなら、ここへ来ればいい。
硝煙の代わりに油の香りが、お前の乾いた心を潤してくれるはずだ。
悪いな、また付き合ってもらうぜ。
2026/01/31 更新
福岡・警固。都会の喧騒から少し離れたこの地に、大阪で俺の魂を揺さぶった名店がある。
「串揚げ キュイジーヌ・ド・オオサカ 福岡店」。
大阪と変わらぬ、あるいはそれ以上の矜持をその暖簾から感じさせた。
今宵も、その日の最高の素材を委ねる「ストップ制」で戦いを挑む。
薄い衣を纏い、絶妙な火入れで提供される串たち。
一串ごとに異なる表情を見せるソースや塩、そしてそれらをさらに引き立てるワイン。
福岡という地にあっても、その洗練されたスタイルに揺らぎはない。
特に印象に残ったのは、素材の持ち味を極限まで引き出した揚げの技術だ。
サクッとした食感の後に広がる、濃厚な旨味。
ソムリエが選ぶ一杯が、その余韻を美しく、そして深く刻んでいく。
贅沢な時間。だが、それを鼻にかけない潔さがこの店にはある。
独りでグラスを傾けるのも良し、大切な誰かと語らうのも良し。
この警固の夜が、いつまでも終わらなければいい……。
そう思わせるだけの魔力が、この店の串には宿っている。
大阪から福岡へ。
場所は変われど、俺がこの味に溺れることに変わりはないらしいな。
悪いな、また付き合ってもらうぜ