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夜の点数:4.0
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¥2,000~¥2,999 / 1人
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料理・味 -
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昼の点数:4.0
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 -
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[ 料理・味-
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2025/06/09 更新
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[ 料理・味-
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| サービス-
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| 雰囲気-
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| 酒・ドリンク- ]
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2024/11/01 更新
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[ 料理・味-
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| サービス-
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| 雰囲気-
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| 酒・ドリンク- ]
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2024/04/09 更新
『滝の下のポーク』
——SOUP CURRY & Asian Dining SHANTi 大通店にて
札幌の夜は、やわらかい。
なにかを責めたり、追い立てたりしない。街灯が交差点の角を丁寧になぞりながら、大通公園の並木が静かに揺れていた。
その夜、ぼくは理由もなく疲れていた。
決定的な失敗があったわけでもなく、明確な飢えがあったわけでもない。
ただ、身体の奥に、何かを満たしたい衝動だけが小さく、けれど確かに揺れていた。
adidas OriginalsとBILLY’Sが共催したパーティの会場は、テレビ塔だった。
音楽はまだ鳴っていて、知っている顔がまだ笑っていたけれど、ぼくの中で何かがふっと静かになった。
スニーカーの白さやグラスの煌めきが、急に現実から離れはじめるような、そんな瞬間。
ひとこと挨拶を残して、ぼくはひとり、会場をあとにした。
テレビ塔から歩く大通の並木道は、ほのかに湿っていて、やさしい風が吹いていた。
足元のタイルが雨に濡れたように光り、酔いも熱も、ゆっくりと抜けていく。
街は騒がしくなく、静かすぎもせず、ちょうどよい距離でぼくを包んでいた。
このままどこにも寄らずに帰ってしまえば、それも悪くはなかった。
けれど、今夜はスープのような何かが、どうしても必要だった。
信号を渡りながら、ふと目に留まったのがその看板だった。
「SOUP CURRY & Asian Dining SHANTi」
“SHANTi”、サンスクリット語で「平穏」。どこか忘れられた記憶の断片のような語感。
けれど実際には、ぼくにとって忘れようにも忘れられない店だった。
最初にこの店に来たのは、まだ西28丁目の雑居ビルの2階にあった頃だった。
看板は小さく、入り口は控えめで、知らない人は通り過ぎてしまうような場所だった。
それでも扉を開けた瞬間、空気が変わった。
クローブとターメリックが絡んだ熱気、厨房から漂う焦げかけのガーリックの香り、
そして、誰もが黙ってスープに集中している空間の沈黙。
あれは、ぼくの中の「スープカレー」という概念を書き換えた瞬間だった。
それから何度も通った。
季節が変わり、生活が変わり、店も変わった。
いまでは大通公園の真向かい。滝の映像が天井から流れるこの場所が、ぼくの“帰ってくる場所”になった。
店に入ると、空気がすっと変わった。
天井に映る滝の映像が、ゆっくりと、けれど確かに流れていた。
水音はない。でも、香りがある。
クローブ、バジル、カルダモン。
スパイスたちが名を名乗ることなく、静かに存在していた。
席に着き、メニューを開く。迷いはなかった。
スープカレーはポーク。
そしてライスは、+500円でカオマンガイに変えてもらう。
白米では足りない夜だった。米にも、物語が欲しかった。
ほどなくして、赤く深い陶器の器が置かれた。
湯気の向こうに、小さな山のようにポークが鎮座していた。
骨付きで、スプーンをそっと当てると、抵抗なく崩れる。
脂は香ばしく、赤身はしっとりしていた。
まるで、煮込みすぎたわけでもなく、狙ってやわらかくしたわけでもない、
ちょうどいいタイミングで「今が食べどき」と差し出されたような仕上がりだった。
スープをひと口。
静かに甘さが広がり、すぐあとからじんわりとした辛さが押し寄せてくる。
ただの刺激ではない。
複数のスパイスが立ち上がり、ぶつからず、混ざり合い、静かに深く沈んでいく。
この味を知っているはずなのに、毎回“最初のひと口”だけは、なぜか“初めて”になる。
その瞬間、ふとよぎる考えがあった。
「たぶん、このスープにはチキンのほうが似合っているかもしれない」
責めるでも、否定するでもない声だった。
前にも何度か同じことを思った記憶がある。
それでもまた、ぼくはポークを選んでいた。
なぜだろう。
おそらく、どこかで“確かめたい感情”がまだ残っていたのだろう。
カオマンガイは裏切らなかった。
ジャスミンライスの香りとしっとりと火の通った鶏肉、
そこに添えられた甘塩っぱいタレが、スープとは別の文化圏を形成しながらも、
ちゃんとひとつの皿として成り立っている。
カオマンガイが主役になったっていい。
そう思わせてくれるだけの説得力があった。
店内は静かだった。
土曜の夜だというのに、不思議なほど空いていた。
まるでこの店が「喧騒を好まない人たち」のためにだけ開いているようだった。
スタッフは控えめで、けれどちゃんと笑う。
その距離感がちょうどよくて、また来よう、と思わせてくれる。
スープの最後の一滴を飲み干すと、視界に滝が戻ってきた。
いつのまにか忘れていたその映像が、今度は意味を持って流れていた。
あの水は、ぼくのなかに溜まっていた何かを、
ひと匙ずつ洗い流していってくれたのかもしれない。
外に出ると、札幌の夜はまだ続いていた。
観覧車が遠くで、音もなく、ゆっくりと回っていた。
腹は満たされ、心はすこしだけ、軽くなっていた。
また来ようと思った。
今度はきっと、チキンを頼む。
でも、ポークの夜のことも、ちゃんと覚えていたい。
そんなふうに思いながら、ぼくは交差点の向こうへ、
またひとつのスパイスを、記憶の奥に忍ばせながら、歩き出した。