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南青山の静かな通りに佇む「鮨 龍次郎」は、凛とした雰囲気の中に温かみがある正統派の江戸前鮨。カウンター越しに繰り広げられる職人の所作は丁寧で、ひと貫ごとに緊張感と安心感が同居する。 いきなり鮪の握りからスタート。ほんのりと漬けの香りを纏った赤身は、しっとりとした舌触りで、シャリの温度と酸味が絶妙に調和している。序盤からこの完成度に思わず頬が緩む。 イクラは粒が立ち、口の中でプチプチと弾ける。塩味よりも旨味が勝り、まるで海の香りがふわっと広がるよう。甘海老は名前通りの甘さで、とろけるような食感が印象的だった。 焼き物の鰻は、皮がパリパリに香ばしく焼かれ、中はふっくら。タレの甘辛さと焦げの香ばしさが絶妙で、そこにわさびを添えると一気に引き締まる。温かい煮物や揚げ出しなど、箸休めの一品も品格があり、食べ進めるほどにコースの流れの巧みさを感じる。 後半の握りでは、烏賊の一貫が印象的。透明感のある身に塩がわずかにあてられ、柚子の香りが爽やかに抜ける。締め鯖の酸味も鋭すぎず、丸みのある旨味が余韻を残す。 そして雲丹の軍艦。濃厚ながら雑味がなく、口の中で静かに溶けていく。海苔の香り、シャリの酸、雲丹の甘み、その三位一体のバランスが見事で、まさにこの店の真骨頂といえる一貫だった。 全体を通して、素材の良さに頼るのではなく、手仕事の緻密さで旨味を引き出す職人の腕が際立っていた。奇をてらわず、伝統の江戸前を真摯に守りながらも、流れに遊び心を感じさせる構成。終盤まで緩むことのない緊張感と、穏やかな満足感が共存する素晴らしい時間だった。 南青山らしい上品な空気と、真面目で誠実な鮨。まさに「ちゃんとした江戸前鮨」を体現する一軒。食後にふと「また季節を変えて訪れたい」と思わせる、記憶に残る名店だった。
2025/10訪問
1回
美味しくて楽しいフレンチ!じんわりと心に残るお店
2025/10訪問
1回
高度な技術の絶品握りコース
2025/09訪問
1回
食べログ イタリアン TOKYO 百名店 2025 選出店
広尾、恵比寿/イタリアン、イノベーティブ、パスタ
2回
「特別感」と「居心地の良さ」が見事に両立している稀有な店
2025/11訪問
1回
まさに、「日常に溶け込む非日常」。そんな言葉がふさわしい、心に残る鮨体験。