2回
2018/11 訪問
想いを贈る。パート1.
2019/01/25 更新
2018/11 訪問
想いを贈る。・・・続き。
パート2ですです・・・。
ではでは、続きを どうぞ。
★ 「秋刀魚 秋茄子 秋の炭火焼 秋の落とし物 銀杏と浅利のおから を添えて」
カリカリに揚げられた秋刀魚の背骨が、伊達の正宗の兜の前立て、引き締まった弓の様に見える「弓張月」のよう・・・。
ちょうど、土台となる秋茄子をクルリと巻いた秋刀魚も、焼き色の深く黒い締まりを見せるので、余計にそう見えるのかも。
しばらく、その成り立ちを眺めたくて、白いおからの山から突き崩しだす・・・。
で、衝撃! くちどけ滑らか~♡
喉に詰まらないで、スルリとトロリと通り抜ける「おから」なんて・・・ここでしか出会ったことはない。
いや、似たようなのは・・・出会っているけど、粒子の大きさが桁違いに小さく細かい・・・。
液体窒素で凍らせて粉砕しても、ここまで滑らかになるか?・・・~♡
喉越しで味わう「おから」など、簡単に常識を超えてくるから、味わいで脳が嬉しくなってくる~♡
脳が喜ぶ美味しさ♡
茄子を巻いた秋刀魚にかじりつく。秋刀魚、茄子、おから・・・。家庭料理の頂点と言うか、至高の突き当りと言うか・・・。
目指している方向性が、奇をてらうモノではなくて、シンプルに突き詰めるとこうなったと言う味わい・・・。
秋刀魚には、一片の小骨も感じない。身は柔らかくギリギリのほころびが舌の上で広がり、
ちょっとした塩味が秋刀魚の良い所だけを教えてくれる。
そこにあわせる茄子のトロトロ感。瑞々しい長所を残したままギリギリまで美味しさを搾り上げたようで、
柔らかさの中に歯ごたえがふんわりと残る。不思議な食感。
秋を楽しむとは・・・こういう事なのかと・・・納得する♡
・・・。
「H美」と、「S海」と、私の三人の関係性で、共通点をイロイロと考える・・・。
「H美」は・・・、美術の方向性で、絵を描いたり・・・。アートの世界を引き合いに、彼女のことを誰もが話すだろう。
「S海」と言えば・・・、誰でもギターと音楽の素養を語るだろう・・・。ひっきりなしに祝い事では歌をせがまれるほどの芸達者だし、人前で絵になるタイプだし。
私は・・・、多分、体形に合わないけど、結構激しいスポーツとか武道的なことを言われるだろう・・・か。
いや、二人には、私の秘密・・・「本」の世界、マニアの文学の世界を見られているから・・・、
「本」との関係を言われるかも・・・。
三人の共通点は・・・、難しい。ははっ。
意外と、ガッツリと四つに組む感じではなく、三点がそれぞれ重なり合う部分がちょっとづづある感じかも・・・。
3DやITとMacintoshの果たした役割と文化までの高まりと、今後の秩序の分岐点大切さ、ネット社会の今とこれからの分析解説なら、「H美」のスキルは抜群。紙幣の印刷と仮想通貨の変換は新しい秩序の構築・・・。ハッカー?と言われる人達の本当の役割を丁寧に大臣クラスに説明させたら右に出るモノはいなかった・・・。
音楽の話なら「S海」が中心になり、「Queen」のフレディの魅力を教えてくれたり、日本人なら「長渕剛」のギターテク、アーティストしての見せ方と、録音時の弾き方の違いを解説してくれた。グルーブの楽しみ方をコンサート会場のリアルに連れ出してくれて、みせてくれた。身体を音に向か合わせて全身で体感する楽しさを教えてくれた・・・。
私は、二人に・・・何か伝えたり教えたりしたことがあっただろうか? 好きな本の魅力も、好きな歴史や古典の話も・・・していなかったかも・・・。私ごときが、何かを説明して話すなど・・・。二人の優秀さに嫉妬していたのかな・・・。ただ、二人の持つ世界観が圧倒的過ぎて・・・、私ごときパリピ―あがりでは・・・何か気後れしていたかも・・・。今になって、つくづく、二人の懐の深さ大きさに感謝する・・・。
ドコに行っても・・・興味あること好きなことは出来るけど、協調性とか調和とかが苦手だった・・・私。スグに感情的になって泣き叫び、何日でも自分の殻に閉じこもって、ヘソを曲げてしまう・・・。ただの子供で、社会性の欠片も無かった私・・・。二人は、簡単に私の病気的な気質を見抜いて、上手に社会のルールとか人付き合いとか、教えてくれていたと・・・今更ながらに・・・気がつく。
優しくされると、人は甘えてしまう。
でも、優しく教えてくれると・・・、人は実行したくなってしまう・・・。
でもでも、優しい人が周りにいると・・・、自分も優しく、したくなる・・・。
私は、二人から貰ってばっかりで・・・、何もあげるモノを持っていない・・・。
いつか・・・あげれるモノが・・・あると・・・いいな・・・ははっ・・・。
・・・。
★ 「鱶鰭 フカヒレの椀」
テーマの設定が、一皿一皿にあって・・・、その意図した思いを楽しむことも「龍吟」様では格別の味わい~♡
出汁を味わうには、素材と如何に組み合わせるかの妙技がセンスと思ったりする。
フカヒレは、上質なモノは淡く甘い。
その微妙な甘味をどういった相乗効果で浮かび上がらせるかが、腕の見せ所。
すり流しのような見立てに、緑の糸葉と小さい食花がチラチラと・・・。
秋の到来を伝えてくれるコスモスのイメージに感じる♡
餡のとろみが出汁の香りを封じている。
口に含むとフカヒレの食感の間から甘味とコクがにじんで来る。
じわりじわり・・・と、動かす顎に同調して、甘味がヒラヒラと広がりだす。
箸先で、椀の底に乗った餡の一滴一理をぬぐって口に運んでしまう・・・。
「フカヒレ・・・美味しい・・・」と、ポトリと口から音を無意識に落としてしまう♡
・・・。
「H美」との思い出で、一番衝撃と言うか、リアルに空気感まで覚えていることがある。
冬でチラチラと雪が降っていた夜。
いつもお世話になってばっかりで悪いと、祖母と母が作る手料理を実家で食べてもらった帰り・・・。
私の運転で「H美」を送っていた時、何の話の流れか、二人の結婚観の話になった。
私は、この通りで、
「私より背が高くて、スタイルが良くて、ちょいロン毛で、ジーンズが似合って、指が長くて・・・」
とか、イメージとしては銀河英雄伝説のキルヒアイスを思い描いていたが・・・、
「私は、結婚したら旦那さんを思いっきり大事にする」
と、「H美」は、ぼそりとだけど、ハッキリと言い切った。
私は、キャリアなのに「旦那さん」と言った事に単純に驚いた。
誰かと人生を供にする覚悟と言うか、全てを捨てても、逆に全てを受け入れても、
伴侶を「大事にする」と言いきった強い意志に・・・女をみた。
そして・・・「本当にイイ人」なんだと、曇りなく思った。
人の愛し方まで・・・教えてもらっていた気が・・・する♡
・・・。
★ 「赤く深く 蝦夷鹿 角立ちの藁焼き」
ジビエの良さ、美味しさが通る味わい♡
癖が強いハズなのに、透明感が先に立ち、土の味わいが別の出会い方でハッとする。
基本的な美味しさだけを残して、余計なモノも洗練して・・・残している。
くどさ、えぐみ、それすらも仲間に入れて、大事な役割、仕事を与えている。
結果として、調和となった一つの味わいになり・・・まとまっている。
肉の美味しさは、噛み込む食感とシミ出る汁の味わい。
ワサビ醤油がまた、深く肉の真意を引き込む。
肉が美味しくて、醤油が美味しいと、口の中が波打ち、心が熱くなってくる。
美味しいと、口は、美味しさが逃げないように閉じてしまうようだ・・・。ははっ~♡
真ん中に置かれた、ずんだ、豆の緑がまた爽やか。
赤身と緑の両立が、箸先を惑わす。
・・・。
「S海」は、いつもは飄々として、同調とか協調とかの雰囲気をグループ内に作り出すのが上手。
羊飼いが優秀な犬を巧みに使うように、ふんわりとした言葉や笑顔や笑いを巧みに扱って、
私の様に、動くモノに誘われるようにフラフラと群れを離れそうになる羊を、ちゃんと見張って誘導してくれる。
ある時、人が自然に集まる魅力的な「S海」を見ていて・・・気がついたことがある。
彼女は、「独」の持つ二つの意味を具現化しているから・・・人の和の中心に居るのだと・・・。
「独」には、そのまま「孤独」と言う意味がある。
もう一つの意味は、「絶対」とか「独立」とかの誰の支配も受けない及ばない、「独立者」の意味。
「S海」の全身からよどみない「慎独」の清らかさが伝わってくる。育ちの良さと言うか・・・。
多分・・・、それを「品」と言うのだと思う。
人が見ていようが、見ていまいが自身の絶対的な「慎独」の本質を「S海」からは伝わってくる。
誰かに頼られたり、人が寄って来る中心に居る人には、皆、真の強さが備わっている。
安心感と言うか、優しさと言うか、集団の中に居ての「独」の強さが際立っている。
皆、力あるモノには・・・引き寄せられてしまう。
だから、引き寄せる者は・・・より、「独」に凄味が無いと・・・中心に居ることは出来ない。
「S海」は、それを知っている。だから、ブレないし惑わない・・・。
人をまとめるために・・・存在しているのだと、思う。
・・・。
★ 「鯛のしっかり入った釜飯 国花の菊の椀 三色三味の箸が迷う菜々漬」
大葉をたっぷりと敷き詰めた土鍋に、鯛の身がざっくりとこれでもかと入ったご飯が見え隠れしている。
炊き立ての米の香りが豊かな出汁の風味と相まって、ふんわりより、強めに香って来る。
鯛のぽっくりした甘味の香りも続いて香って来る。何とも贅沢な米の装い。よそってもらうのが待ち切れない。
味わいは、湯気とともに頬うばれば、強くてキレの強い海の味わい。
少し、湯気が落ち着けば、甘味が強く、何層にも積みあがった旨味の固まり・・・。
一椀のご飯でも、食べ出しと、食べ終わりでは、風味も味わいも変化して、
出汁で炊いたご飯の骨頂は、そこが美味しくも楽しい♡
豆腐を菊にみたてたお椀が美しい。豆腐百珍の世界が目の前で花開いている。柚子の香りも素晴らしい。
表現したいことが、明確に在り・・・なんとなく作りだしたらこうなった・・・的な曖昧さは、ソコには無い。
箸を突き刺して崩すのをためらう・・・。
日本の心とか和の精神とか大和魂とか・・・そういった気概を飲み込んでいるようだ・・・。
正直、涙が・・・こぼれ落ちそうになる・・・♡
そんな表情を気取られないように奈々漬に箸を飛ばす・・・。
でも・・・、フッと顔をあげると・・・。ほかの二人も神妙な顔で、椀の中をのぞいていた。
・・・。
味わい尽くしても、尽くせないモノ・・・料理以外にもある。
「言葉」の持つ威力も、その一つにあると思う。
交渉の席で、国益とか社益とか私益とか・・・当然、脳裏をヨギリまくる。私は欲の塊だから・・・。
「いかに善をなすか では無い いかに善であるか。何を成すか では無い 何であるか」
4つ返す。2つ返す。・・・多分、1つも返ってはこない・・・。
でも、前に進むには、場を話しを言葉を重ねないと・・・、何も始まらない。
始める意義と意味を簡単に否定してくれる・・・世の賢い人達は。
前の喧嘩で負けたから、いまだに睨まれたカエルになっていると、カエルの背中に生えた苔が笑っている・・・。
どんな場所にでも、自由に秘密の基地を作っていいよと、約束があるから・・・の意見も間違いではない。
丁度、境目境界があるのなら・・・ソコに誰だって作るだろう。
でも、実際にそんなものが必要な時代がいつまでも続くだろうか?
時代を変えたり動かすのは誰?
口先だけで重い腰をあげないカエルの背中に生えた・・・苔では無いのは・・・確か。
睨み返すか、または噛みつけるのは・・・カエルしかいない・・けど・・・どう思う?
何度かカエルは立ち向かった・・・。
ぺしゃんこに潰されたけど・・・ネ。
でもね・・・あきらめない、あきらめることを許されない人達も・・・いるんだよ♡
「おい、ちょっと、手を貸せ。それと、三日分くらいの代えの服を持って来いよ」
とだけ言われて、呼ばれる人達だけど・・・ネ~♡
ははっ~♡
・・・。
★ 「黒いちじく すだち 和三盆」
酸っぱさが、ほぼ淡いアクセントで、甘さの綺麗な潤いの いちじく。
風味がまた、山の秋をそのまま卓上に広げた豊かさで、舌のうねりが緩くとも強めになってしまう。
一滴と、すだち を落とすと、落ち葉を踏みしめるような軽い弾力をほのかに味わいに感じる。
甘さの手に、恥ずかしがり屋酸っぱさの手が、しっかりと握られているのを・・・理解する。
甘くて酸っぱいが、この器の中で踊っている。
強めに感じだ甘さは、おどけた笑いではなく、酸っぱさに対する気遣いで優しさと思い直す。
口の中の興奮が、その酸っぱさで、ちょっとだけ落ち着く。
美味しさの絶叫で、後先考えずに振り上げた拳の置き場所を的確に教えてくれるようだ・・・。
・・・。
三人で、カラオケで熱唱をよくした。
「H美」と、「S海」は、元々歌の素養があるから上手。何でも歌えて、スグに取り込める。
私は、ある音域の音が半音下がるのか上がるのか分からないけど、ちょっと変な感じになってしまう。ははっ~♡
歌える歌も沢山ある方でも無かったし、二人の競演を見ているのが楽しかった♡
ドライブも楽しかった。「S海」の日産パオのカチャカチャミッションの軽快な手さばきで、遠出も楽しかった。
車の中で知らない音楽を聞かせてもらうのも楽しかった。
「H美」とゲームもよくやった。「ぷよぷよ」とかなんか古いゲームとかパソコンにあげて、対戦した。毎回、ボコボコに私が負けて、部屋の隅ですねていた・・・。ははっ~♡
食べ放題に行くブームみたいのも、ある時期あって、よく行っていた。ははっ。
焼肉の食べ放題なのに、最初からスポンジが3M社製のような強度あるケーキを食べまくり、土にかえるBB弾のようなタピオカの入ったトロピカルミックスジュースをがぶ飲みして、薄いタン塩一枚だけ食べて・・・お腹一杯になり、二人に説教されたことも・・・あったっけ。ははっ。
クリスマスなのに仕事で残業で・・・、日をまたぐ前に居酒屋に飛び込んで、日本酒をがぶ飲みして、後から、がぶ出ししたなぁ・・・。日本酒の美味しさとか、飲み方とかは「H美」に教えてもらった。真似してスルスル飲んで、酷い目に何度かあったけど・・・。それで、かなり鍛えられた気がする。「S海」にはスイーツを教えてもらった。デメルとかは、もろ「S海」の影響。いっつもバックに入っていたから・・・私も真似をして・・・。ははっ。
遊んだ記憶ばっかりだな・・・。ははっ。
そう言えば、回って来た先輩のしくじりの報告書を二人に手伝ってもらって書いた記憶が・・・。何枚だっかなぁ・・・。クアラルンプールの伝説の大失敗で2000枚くらい書いたような気がする・・・、二人が・・・。ははっ。
ハマってはいけない、罠と言うか、落とし穴に、もれなくハマり、確実に落ちる私を二人に毎回、引き上げてもらっていた・・・。なんか・・・悲しくなるなぁ・・・自分の無能な無力さを。
私は、ソコで何をしていたのだろう? ひたすらに好きな本を読みあさり・・・ははっ・・・。笑うしかない♡
・・・。
★ 「たい焼き最中 小豆を敷き詰めた寄木細工の箱に入れて」
目の前にそっと置かれる寄木細工の見事さに、目を奪われる。
その隙間なく整った美しさに平常の心を思い出させる。
舞い上がった気持ちの整理に、文様の幾何学的な装いは、効果が表れる。ははっ。
箱を開けると、敷き詰められた小豆の上に・・・鯛焼きが一匹。
じっとりとしながらも切れのある餡が、薄く軽い皮に挟まれている・・・。
ヤバい・・・。10個とか20個とか・・・何にも話さないで、淡々と食べ続けてしまう・・・味だ・・・。
餡がアツアツで、バニラの風味も微かに残り、
その先の甘さがサクサクの皮を咬みしみる度に、
雪綿のように舞い上がる。
紅葉に乗った初雪のような味わい。
季節の変わり目、バトンタッチを味で表現している・・・。
餡子にバニラとか・・・野暮ったさが普段は魅力と思っていたけど・・・、
こうなると、唸る気持ちも失せて、ただ名残の余韻を長く楽しむために、
ゆっくりと、ゆっくりと、一口を小さく、味わいを長く楽しんでしまう~♡
・・・薄茶を頂きながら、余韻を楽しむ~♡
「龍吟」様のお料理を総括するつもりは毛頭ない。
「龍吟」様のお料理は、山本さまの気合にみなぎっている・・・。
だから、ただただ、元気がもらえる。
また、頑張ろうかな♡ とか、気持ちが前向きになれる。
ねじ伏せる、有無も言わさぬ洋の料理もたまには好きだけど・・・。
やっぱり、日本料理の味わいの方が、私は好きだ♡
お酒のつまみ的な、技の料理も好きだけど、
食事として、「満腹」を「綺麗に仕立て上げる」そんな日本料理は・・・「龍吟」様だけだと・・・、
私は、思っている~♡
二人の友人と私。
たまに会うだけでも、一瞬で昔を思い出し時間が巻き戻る。
それぞれがそれぞれの足で踏み出した世界で生きているけど、根っこの部分は同じ。
「今、自分が照らしている部分は片隅であったとしても、
懸命に迷いなく、天命が尽きるまで必死に照らしたい。
それが、どんなにちっぽけで誰も気づけない片隅であったとしても、
その片隅こそ世につながる片隅と信じて、ほのかに照らしたい。」
私達三人の想いは、いつも・・・同じ。同じモノを見ている。
2019/01/25 更新
・・・ははっ。長すぎて・・・パート1とパート2に分けました・・・。ははっ~♡
では、パート1を どうぞ。
・・・。
「福茶して 先づ一笑や 雨靜か」 村上鬼城(1865-1938)
正に、このまんまの気持ち~♡
「龍吟」様のウエルカムドリンクは、「梅昆布茶」。
祝い事には「福茶」は付き物。
日常を離れた階上の空間に、身も心を置いて、懐かしい友とのひと時、・・・それだけですでに、祝い事。
まずはと、そそがれた「梅昆布茶」を「福茶」として堪能。
★ 「龍吟 梅昆布茶」・・・。
厚手のグラスにそそがれた淡い吐息のような琥珀。
口にする前の見た目で、味わいを想像し、重厚な厚みや重さを思い描いてしまうのは、
手に持ったガラスの重量感が琥珀の色合いに、さらにとの期待を乗せてしまうから。
グラスの縁、唇へのアタリがソフトで、逆に口の中に流し込む勢いの調整を戸惑ってしまう。
自然に、ごくごく自然に、口の中で決まっていたかのように、流れ込んだ梅昆布茶は順次席に着く。
舌に触れる部分に座ったのは、表面張力程度の腰の強さを感じる癖の無い純な旨味。
口蓋に触れる上部は手を伸ばし、ほのかにくゆんだ磯の香りと立ち込める甘味を焚き上げている。
思わず、我慢できない舌先が、全体を混ぜ返すように動いてしまう。
もっと、舌全体で味わいたい願望に負けて。
そこで、大きく梅昆布茶が動き、初めて梅の残り香が鼻に華として香る。
梅は、味では無く、香り風味として参加していると気がつく。
昆布の味わいは層の様に重なり合って、何種か地域か、味に抑揚がある。
揺らぎの様に舌をその中で踊らせると、味わいが楽しそうに、一緒に踊ってくれる。
こちらの気持ちと一緒に、楽しく踊ってくれる味わいの「梅昆布茶」。
そんな始まりで、「龍吟」様はもてなしてくれる~♡
・・・。
7階までのエレベーターは、ストレスなく速く、空間を空気ごとズバッと切り取った移動の仕方。
上昇の動きがしなやか過ぎて、自分のアゲアゲ気分の肩の揺れが、同乗者にバレてしまう・・・。
心が踊る・・・、いや、そんなモノでは無いなぁ・・・この感じは・・・。
さっき化粧室で直した額から鼻筋のテカリを確認するべく、
スマシタ顔で、エレベーター内の奥の鏡を首だけ捻って見てみる。
笑みが全身から飛び出すのを抑えているのが・・・自分でも分かった。
鏡の中に、楽しみオーラがちゃんと映っていた。ははっ~♡
そう・・・。無心で狂ったように心が踊り暴れまくるお店は、
私の中で「龍吟」様しか・・・ない。はい♡
何度か、その美味しさにふれる機会はあったけど・・・、誰かの采配とか、誰かの懐とか、中々に大人の付き合いと社会的なマナーの色合いで、自分で支払い、あらためてレビューを書くとこまで、たどり着くことが出来なかった・・・。
が、今回、満を持してやっと書くことが出来る時が来たぁー!
そう、支払いを自分でした・・・のだ。ワリカンだけど。ははっ~♡
・・・。
南に北に、イロイロと仕事が一区切り。
今日は、同期入省で知り合い、それぞれ卒省したのに、今回の特別チームで無理矢理呼び戻された二人の友と慰労会をかねて~♡
疲れた脳と良く働いた口先に栄養を補給するべく、たどり着いたのは、言わずと知れた
天下の 「龍吟」様。
移転してから3度目の口福を得るべく、また山本様のご尊顔を拝見させて頂いて、さらなる力を頂くべく、足を軽やかに踊るように運ぶ~♡
茨城から参加した「H美」とは下で、たまたま降りたタクシーの前後で一緒になった。
今日の慰労会にかける意気込みと、「龍吟」様への熱い思いを語り合いながら、そのまま並び足並みを揃えた。
この期に及んで、仕事が押して少し遅れると、静岡から出向してきた「S海」から連絡が入る。
・・・お店の前で迷ったが、事情を話して「龍吟」様のウェイティングルームで「リュウちゃん」と「ギンちゃん」の二匹のフクロウさんに挨拶しつつ待たせてもらう・・・。
前の六本木のお店のテイストも立ち昇る気合がそのまま具現化した空間で、その中に居るだけで元気になれて大好きだったけど、新店舗の年齢を重ねた厚みのような落ち着きと、「余裕」がにじみ出るひそみのような空気感も素敵に感じる~♡
それと・・・、充満している「湿度」~♡が、心地良い。
「湿度」の抵抗感が、店内で踏み出す足取りに、空間を切り進む「前進」の心地よさを感じさせてくれるので、「前向き」とか「ポジティブ」とか「進む」意識が自然に湧き起こり、お料理対しての期待感がさらに高まる。タマラナイ~♡
よく、和風とか和tasteとか、日本国外からの目線で日本を表現する、またはその表現に出会うことがある。
だいたいは、意義とか異論はないのだけど・・・、
私は、「和」は「湿度」だと思っている。
日本は、四季があるし独特の文化や、他国には無い「人と人の絶妙な距離感」がある国と、思っている。
この国では、「何を言わんとしているか」を感じとる事で、「物事」の大抵は進む。
そんな「気づかい」や「言葉の無い会話」が、例外なくある珍しい国、珍しい文化を持つ国だと思っている。
それは、「空気感」や「場の空気」とか言い表されたりもする。
「湿度」というとジメジメとかヌルっととか、触感があまり良くない感じで伝わりそうだけど・・・。ははっ。
でも、人と人との関係はその「湿度」でつながっている。
温度だけ伝わっても雰囲気だけ伝わっても、真意は中々伝わらない。
人と人の接触は、どんな時でもどんな部位でも「湿度」「潤い」があって・・・初めて成り立つものである。
その、感覚的な表現は、「人と人の接触」に重きを置く人生を送っていると、リアルな世界の本質だと理解できると思う。
・・・。
★ 「胡麻豆腐」・・・。
選ばせて頂いた箸を使い、最初に触れる箸先は、四角い器に四角に置かれた揚げ出し豆腐。
私の感性が正しいかどうかは別として・・・、
胡麻豆腐をカリッと揚げてあり、その上に彩のシャキリ野菜が白ごまをまぶされて積んである。
綺麗に乗っている野菜を崩すのも、カリカリの表面の豆腐を割るのもためらってしまう。
・・・心を整えて・・・、気合を入れて・・・、「えいっ!」
サクサクと薄く淡糸の繭の感触の進みで、簡単に箸は通り、
下に広げられたゴマのソースまで一気に箸先は到達してしまう。
割れた豆腐はトロトロで、湯気を一本ゆらゆらと細く伸ばす。
気がはやる私の鼻息で消してしまわないように、素早くきざみ野菜でソースをかき集め、
豆腐のやわやわの一片に乗せて、生唾ゴクリのスピードを追っかける様にして頬うばる・・・。
胡麻の風味が、みずみずしい野菜の隙間を縫うように羽ばたいている。
歯で噛み砕だいては、隙間から何かが漏れそうな感じがして、
舌の全面を上顎に押し付けるように、得たモノを逃さないようにサンドして味わう。
よじる様なねっとり感が、胡麻の濃厚な厚みを伝えてくるが、
標識の様に立っているきざんだ秋の野菜たちが、
粋な苦味とキレ良い歯ごたえで、味わいを組み立ててくれる・・・。
最初から・・・箸が止まらない。食べたしたら・・・器を舐め尽くしたい衝動にかられる・・・。
・・・。今回の仕事で、茨城から呼び寄せられた「H美」は、お酒が好き。
種類、銘柄問わずに、何でもスルスル飲む。
そして・・・強い。お酒に強いのは、とっても良いことだ♡
話が白熱するお酒の席で、冷静に場を動かせる人は、供に飲み供に語らう人。
「H美」は、飄々と飲み語らい、いつの間にか話を納まるとこに納めてしまう・・・。
人柄の良さを前面に出して、天賦の才をひけらかすことなく、
冷静に冷静に読み解き、人の懐に入り、信頼を作る才能に恵まれている。
マジで・・・尊敬する。
誰にでも、裏表なく接するのは・・・難しい。誰にでもだ。誰にでも。
自分に本当の自信と能力が無いと、大抵、人は無意識に攻撃的になってしまう・・・。
開けっぴろげで、誰でも分け隔てなく受け入れるスタンスは、
憧れであり、私の理想的な姿・・・。ひたすらに、素敵すぎて・・・私の目標だったりもする♡
・・・。
★ 「越前蟹 雌 セイコ蟹♡」
切子の綺麗な「クロッシュ(cloche)」・・・それだけで、マジで驚く!
全く完璧な贅沢で、中にひそむ価値あるモノを封印の重き装いで、魅力的に提言している・・・。
光を放つ切子の美しさが、見た目と口に運ぶ期待感をひとさらに増幅させてくる。たまらん~♡
味は、上海ガニにも負けてはいない。
中には、甲羅の器にたっぷりのほぐし身と内子と蟹味噌。
綺麗に剥いてある足は、一匹分10本ほどになるだろうか・・・。
それと、ゴルフボールの様に丸められた外子。
なんと贅沢な味わい~♡
口に含めば、蟹の全てを余すことなく一瞬にして広がりだす。
噛み込むほどに、蟹独特の静かなのに伸びの良い透明感のある豊香が、
子供の時、日に日に朝夕の寒さが増す晩秋の時を思い出させる。
その寒さの中、日中に一瞬差す、強い日差しの暖かさが全身を包み込ると、
懐かしい前の季節の太陽の香りをちょっとだけ思い出させてくれる、あの感じに・・・味わいが似ている。。
気がつかないようで、確かにそこにある蟹の美味しさの膨らみと伸びに表れる喜び・・・。
蟹、特有のあっさりとしながらも他を圧倒する透明な美味しさ~♡
目を閉じて、わずかに耳に届く蟹の身のキレ音と、外子のプッチリ音を静かに楽しむ・・・。
・・・。静岡から呼ばれた「S海」は、ムードメーカーであり、話題の中心にも聞き役にでもなれる稀有な存在。
多趣味で、音楽、映画、芸術系の繊細さと、逆に全体を見回しての大胆な判断力を持っている。
繊細なのに大胆とは・・・、相反するようでも、実際は良く物事の流れを見ている証拠・・・。
石橋を叩いて、確実に渡ることほど確かなことは無い。
チームでの仕事で、大抵、暴走するのは・・・私で・・・、ははっ。
そのブレーキと言うか、騎手になって手綱を上手に操り、
私の鼻先を右に左に案内してくれる。ははっ。有難いことだ・・・。
リーダーでもあり、プレイヤーである存在は、とっても貴重。
ドコに居てもどんな場面でも、重宝がられ、格の部分に据えられる。
安定感とブレない存在感は・・・真似できない♡頼りになる。
・・・。
★ 「雲子 白子の香煎」
麦焦がし・・・大麦を煎って粉に、サックリと大き目の白子につなぎ目なくまぶして、カリッと揚げてある。
色合いと熱々の出来立ての香りが、喉を鳴らさせ・・・まくる。
一口、ビールなり日本酒なりで潤して、そのままガブリとかじりつく。
切り分けては、勿体ない。
唇にも前歯にも熱々の喜び、白子の温められた甘さと濃潤な生命感をおすそ分けしないと♡
一瞬だけ、パリっと抵抗があったが、その後はトロリトロリとアツアツを
頬を膨らましハァフハァフと熱を出し入れしつつ、
高く脈打つ香りと、少しずつ温度が下がり明確になる甘さを楽しむ。
皿も熱く、口に届いても熱く、「熱」を楽しみ全身を「熱」の美味しさが踊り巡る。
何たる、美味しさ。イエーイ♡
酒が・・・進む。すすむ。
・・・。あんまり、人あたりとか・・・正直、人見知りの私は、最初が肝心と、
入省前に何度かあった合同の説明会で「H美」に話しかけた。
「あの・・・試験の時・・・居ましたよネ?」
「・・・ははっ・・・はぁ。居ました・・・けど・・・」
確かに、「H美」のことは、試験の受付で私の前に並んで居たのを覚えていたのだけど・・・。
試験を受けたから、ここに居るわけで・・・「試験の時に居ましたよネ?」とは、ホントに変な話かけで・・・。
自分の隠し切れないコミ障っぷりが、今考えても・・・笑える。ははっ~♡
私を含めて、三人とも同じ歳で、同じ学年。同じ省に入る女の子が、三人とも同じ歳は当時でも珍しかった。
説明会のちょっとした休憩時間。
皆、それぞれの説明会場とか連絡先とか行動の予定をメモにまとめている時、早速、これ幸いと金魚の糞のように私は「H美」の側から離れず、行動を真似して「次は、ドコに行くでござるか?」とついて回っていた。ははっ。
そんな、変な二人組を不思議そうに見ていた「S海」が、「二人はどちらの出身? 私は・・・、よろしくね」と、エリートスマイルではない、「ちょっと、あんた達、何がそんなに面白いの?」的な純粋に興味が有ります的なナチュラルな感じで、話しかけてくれた・・・。
私は、「S海」のニコニコと光る笑顔のキュートさと、ちょっと長めの髪、細身でスタイル抜群の存在感に圧倒されたのに、「H美」は、身体の正面を話しかけた「S海」に向き直り、ちゃんと自己紹介を始めたことをナンカ・・・覚えている。私が「・・・えっと、その、パコ崎ッス・・・」みたいな挨拶しか出来なかったから・・・余計に覚えているのかもしれない♡
でもでも、私が「H美」に話しかけたから始まりがあって、そこに「S海」が話しかけてくれて・・・とか、三人の関係を話す時だけは、私は鼻の穴を膨らませて自慢げに言う~♡
「私が最初に「H美」に話しかけたから、次に「S海」も話しかけるキッカケになって三人になったのヨ~♡」
とか・・・。
二人は、
「いやいや、そもそも・・・○○省に立場の同じ女が三人しか居ないんだから・・・普通は話すだろ・・・」
とか、言わないで、
「そうね♡ 有難う♡」
と、言ってくれる。ははっ~♡
単純な話でアレだけど・・・自分が動くと、周りも動くものだ。ははっ~♡
ではなく・・・、三人の関係性が・・・、なんとなく分かる感じがする。はい。
・・・。
★ 「車海老 甘鯛 鮑 の土瓶蒸し」
早速のメイン感がタマラナイ。
ゆっくりとじっくりと、出汁の変化を味わいたいから、逆に一口目は、机に置かれたと同時に器にそそぎ出す。
そそぎながら、その重さから感じるたっぷりの出汁に笑みが止まらない。ニコニコ。
経験上、時間の経過とともに、こちらの土瓶蒸しの出汁は変化する。
最初は、ソプラノの高音で伸びやかに、ドコまでも遠くに響いていく。
一秒ごとに確実に変化はしている。
5分もすると、テノールの低音で、厚みと底からの突き上げのような納得感がにじんで来る。
甲乙つけがたく、どちらにもどちらの魅力がある・・・とか、考えつつ、蓋をはずして、
信じられないくらいの柔らかい大ぶりカットの鮑、身持ちのしっかりとした甘鯛、
色と香りが強い海老、アクセントの茸や銀杏を楽しむ。
準備の行き届いた味わい。
出汁の組み合わせは粘りと強さを感じて、唸ってしまう。
途中から普通はスダチを入れ出して味わうけど、こちらには搾ったりはせずに、
口に運ぶ器の周りに、くるりとスダチ断面を這わせ、香りだけを口元に運ぶ。
スダチの味は・・・この出汁には・・・香りだけで十分。
「龍吟」様は、「出汁が一等」と経験から思うので、私は出汁を存分に味わいたい~♡
もう一度・・・出汁が・・・、たっぷりなのが・・・超うれしい~♡
・・・。三人での思い出は多々ある。
一番は何か?・・・。
迷う・・・。
三人とも三様の思い出があるだろうし・・・。ははっ。
仕事をしていく上で、それぞれの目的があった・・・と、思う。
ただ、世間で言われる「出世競争」は、明確に三人とも無かったと思っている。
今、それぞれが卒省してやっていることを見れば、理解できる。
「たまに、呼び戻される距離感がイイ」と、二人は言う・・・。
私だけが・・・ズルズルと片足を入れたまま宙ぶらりんな感じだ・・・。
昔、仕事が終わると、「H美」の家によく行った。
ほぼ、たまり場のような居心地の良さで、多分、顔を出さないのは年間でも数日だった・・・そんな何年間があった♡ やりきれなくて持ち帰った仕事を三人でやったこともあったし、
「ドウとでもなれ!」
と、夜中にカップラーメンとおにぎりを食べたり、
買いに行くのがメンドクサイと、
茹でたパスタにバターと醤油だけで味付けしたものに、
これまた握ったおにぎりをバターと醤油で焼いたものを、ムサボリ食べたことも一度や二度では無かった・・・。
大抵、次の日、物凄い形相で、胸焼けから、こみ上げるゲップを必死で抑え込むのだが・・・。ははっ~♡
鍋もよくやった。鶏の団子鍋・・・。
器用な「H美」が親指と人差し指で作ったワッカの中から、団子をキュッと絞り出して、
ポンポンと煮た立った鍋の中に入れて行くのを見るのも好きだった。
新鮮でひき立ての鶏肉の出汁が美味しくて、結構、疲れた身体には沁みて元気の元になった。
「S海」の提案で、その出汁を吸わせるために、大根、豆腐、それと白菜くらいにして、
最後に鍋をさらうように、乾麺を入れて味わい尽くす食べ方も好きだった。
三人いれば文殊の知恵と、言うが、鍋料理一つとっても、
三人いると、アイデアどんどんとカスタマイズされて行き、無限の可能性となる感じがする♡。
・・・。
★ 「お造り 明石の鯛 あん肝 鰹の炙り」
「龍吟」様で提供される一皿、一皿。その全ての一皿が「メイン」と言われても、普通は通用すると思っている。
人により価値観はイロイロで、誰かの価値観を否定するつもりは全くない。
でも、ただ、
「ちょっとだけでいいから、龍吟様のお造り、お刺身、食べてみて」
と、勧めることはする。
明石の鯛は、「鯛のブリブリ」と言われる漁師料理の塩で揉んだ粘りと甘さが感じられた。
ただの熟成ではないのだろう。
包丁の入り方が舌のアタリを予測して先回りしている・・・。
舌全体が受容器となり、迎い入れる態勢を作り出しているのが分かる・・・。
あん肝・・・。しつこさと物足りなさの中間の、ほどよい加減の・・・塩梅の良い味。
何を言うコトがあろうか・・・。
ねっとりとも濃厚とも違う、もう一つの何か表現がありそうだ・・・。痒い所に手が届く味とも言うべきか・・・。
酒が・・・進むゼ、マジで。
待っていてくれた、鰹の炙り。時期が時期だが、磯と潮の香りがバランス良く感じる味わい。
歯のたて方を自然にイロイロと試してみたくなる。
前歯で裁断し、舌先で味をねぶって甘味を楽しんで見たり、
奥歯で炙りごと身をつぶし、芳醇に近づいている旨味を呼び戻してみたり・・・。
ただ、ただ、噛んで飲み込んでは芸が無いと、自戒してしまう・・・。
・・・。
私にとって山本様はスターだ。
今は無き、「日本料理 小山」の本当の意味での看板だった時から、私の中でスターだ。
中学生そこそこの時の話で、とっても生意気な話だが、山本様の「お造り」を初めて食べた時、子供ながらに箸先に伝わる切り身の弾力と粘りが別格だった衝撃をいまだに覚えている。
かなり、それだけで視線を箸先に集中して、切り並べられたそれぞれの切り身の断面を不作法でも、ビトっビトっと、触れて確認しないではいられなかった。
そもそも・・・子供時分、生の魚がそれほど好きでも無かったし、ワサビの強さと醤油のくるみでなるべく歯をたてないで、口の中に生臭い味わいを広げないように食べていた。お刺身を。
料理を生業にしている祖母や母に、綺麗に切り取られたお刺身は、切り口の角が立ち、断面はラップをひいたみたいに輝き、醤油を弾くもの。迷いや戸惑い無く、香りすら身に閉じ込めるように、包丁をひくと教わっていた・・・。
でも、山本様の生み出す「お造り」「お刺身」は、違った。
光の反射は切り身の断面には無く、表面によく見る綺麗なラップの広がりのような膜は無かった。
逆に、光だけではなく音も時間も吸い込む強さを感じた。
箸先に触れる感触は、どこまでも柔らかく、進み込む。
張りがあり、弾くような断面なのに、箸先が不思議と表面から中に押し込むと、抵抗なく少し進み、そこで止まる・・・。
表面に細かく隠し包丁が、断面に入っていた。
見た目は、普通の「お造り」「お刺身」。でも、醤油やワサビ、塩や生姜のなじみが違く、さらに口に入れると舌のアタリは粘りのようでいて、口蓋には、ふんわりと押し上げ弾く。歯の通りは途中までは無抵抗で、最後の最後に最小限の時間で最高峰の抵抗をみせる。
音にすれば、「すーっ」と来て、「ストっ」と言う感じに。
マグロ、イカ、ブリ、ヒラメ・・・。どれもが、「こんな味だったのか・・・」と、子供ながらに味わいの違いを理解し、それまでの常識と思っていたことが簡単にくつがえされることが、衝撃だった・・・。~♡
単純に、隠し包丁の切込みの多さが、接触する味わいの表面積を増やしている・・・
では、無い・・・ことを、
子供ながらに気がついた。
マグロは、浅く隠し包丁の幅は広い。ヒラメは、ギリギリまで深く隠し包丁の幅も究極まで狭く細かい。
それは、
マグロは、常に泳いで筋肉を収縮させている魚。赤い身。
ヒラメは、普段はじっとして餌が近づくと瞬発的に筋肉を働かせる魚。身は白い。
赤身の魚と白身の魚がある。色がなぜ違うのか?
色の違いは筋肉の性質の違い。
赤身は遅筋、持続的な運動に適している。
白身は速筋、瞬発的で力強い運動に適している。
よく聞く話・・・。
では、味わいの違いは?
赤身は、血液中のヘモグロビンに似た酸素と結合するミオグロビンという蛋白質を多く含んでいる。
ミオグロビンは酸素を蓄えてエネルギーを得る。乳酸も少なく鉄を含むタンパク質に富む。
中性脂肪が多く、グリコーゲンが少ない。
鉄が表すように、味わいは重厚でとどまりが強く、脂の質と伸びによっては満足度が何段飛びのように押し寄せてくる。
白身は、クレアチンリン酸の分解によってエネルギーを得るので、無酸素的能力が高い。細胞内の構造が濃密なぶん、身に強さとしなやかさがある。グリコーゲンの含有はきわめて高く、中性脂肪は少ない。
そのまま、淡白でねじり込んだり圧倒する味わいではないが、グリコーゲンの味わいが持ち味。
グリコーゲンは単体では無味無臭だけど、他の味や香りに触れると、突然、コクと旨味があふれ出す。
この二つの違う素材に、それぞれピッタリあった隠し包丁を入れるとしたら・・・
どんな幅で入れる?・・・どうする?
なんとなく・・・とか、そう習ったから・・・とか、誰々がやっていたから・・・とか・・・、・・・、・・・。
最初は、人真似だとしても、そこからどうオリジナルにするのか、どう、自分の中で消化して形作るのか・・・。
私は、口先だけで商売をしているから・・・、職人さんとか技術者さんとか、そして料理人さんに敬意と尊敬を持っている。
その中でも、山本さんは別格だと思っている。
味わいを知った三人の兄弟弟子の中でも・・・、別格だと思っている。
頭抜けた センス 努力
そして・・・一番大事な 「神様に愛されること」 を
シンプルに山本さんは、持っていると思っている。
・・・。
パート2に続く・・・。