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夜の点数:4.1
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料理・味 -
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北海道屈指の酒場でがっつきにがっつく。
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2020/10/17 更新
昭和50年代。こどものころの実家の食卓にはにしんがよく出された。
真ん中で切った半分のにしん。こどもには内臓は苦いだろうと、家では尾に近いところを出してくれていた。
にしんを食べなくなった。日本中がそうなのだ。郷愁を誘う焼き魚になってしまった。
北海道へ行ったらにしんを食べると決めていた。
そして、食べる店はここと決めていた。
夜8時を過ぎてようやくたどりついた酒場は、磨き込まれた黒色で、しっとりとこちらの心を落ち着けていく。
焼き場に立つ人、テーブルの注文をとる人、みんな静かに働いている。カウンターの向こうには和装の美しいひとが立っていた。
その人の前に通された。
知的にたたずむ妙齢のその人の前で、あろうことかがっついた。まさしくがっつきにがっついた。
〆にしん、身欠きにしん、新子焼き、切り込み…。
うますぎた。
昭和50年代の東京の片隅で、家族で囲んだ食卓にのったにしんとは比べものには当然ならない。
特筆は〆にしん。小骨の多いにしんの歯ごたえ、脂の甘さ、乗り、そして〆具合、お見事という他なかった。
新子焼きも絶品。上手な煮物のような火の通し、皮の焼き方、甘辛いたれ、量の多さ…。これまたお見事。
まぁ我ながらよく食べた。
引き上げる気になったころ、くだんのカウンターの女性、銀髪の妙齢の女将さんに「にしんが好きなんです」と伝えた。
「もう一品ありますよ」とその人がいう。
そして、自分の一瞬の逡巡を待ってから、「またお越しの時に」とにこやかにおっしゃった。
またすぐにでも行きたくなった。はるかに遠い旭川の地なのに。
宿への帰り道、冬の入り口で襟をかき集めたくなる旭川の街がなんだかとてもきれいに見えた。満たされた気持ちだった。
きっとここが北海道の、いや、日本屈指の名酒場なのだと思う。
また行けるといいなぁ。
そう、書き忘れたが金髪の青年の店員さん、この人の気配りとたたずまいもたいそう素晴らしかった。