A:おい、三丁目の角の家に貼ってある先週の日曜日のパーティの広告見たかい?
B:ああ見た見た、お前、先週の日曜日のパーティ、これから時間遡って参加してきたらどうだい。
A:いやあ、ああいうのはもうこりごりだよ。
B:何でさ?
A:だって、これから3日戻って、その3日をまた経験して、って面倒くささもあるし、何より信じてくれないよ。俺、1次元でしかタイムトラベルできないだろ? パーティの時間まで戻って参加しても彼の記憶が、俺が参加したって書き換わるだけで、そうするとあんな貼り紙しないんじゃないかな。
B:うん、そうかもしれないけど、パーティの前から貼り紙のことを企画してたとして、お前が「未来から来た」って言ったら証明になるんじゃないかな。
A:いや、それは、心を読むことと表面上は同じだろ?
B:それもそうかもしれないけど、違うところもあるんじゃないかな。
A:うーん、今はそれは思いつかないけど、例えばその場で逆にタイムトラベルすればわかるかな。
B:いや、わからないと思う。逆のタイムトラベルしたら、例えば料理は素材に戻るけど、逆の時間の方向のまま素材からの調理はできないだろ? だからリアルタイムでタイムトラベルしても彼には通常の時間の流れにしか感じられないよ。
A:そうかもね。でも何か違いを示せる方法がないか、ちょっと考えてみるよ。それより、2次元の時間軸を移動できるお前だったらなんとかできるんじゃないか?
B:もちろん2次元目をずらしてタイムトラベルすることはできるけれども、彼には、そして君にもそのことは理解できないよ。
A:どうして?
B:仮にね、彼や君の1次元の時間軸をそのままにしておいて、つまり、先週の日曜日のパーティは彼だけが参加したことにしておくんだ。そのまま僕が2次元目をちょっとずらして参加したら、彼にとっては、一人でパーティを開いたことと、僕が参加したパーティと、同じ場所の同じ時刻に複数の記憶ができてしまうんだ。きっと彼にはそれは理解できないよ。だいたい君は理解できるかい?
A:いいや、きっと混乱してしまうね。そもそもそのことを認識できないのかもしれないけど。
B:実際今君と同じ時間軸で2次元目を少しずらして、ただ聞いているだけの僕がいるんだけど、君にはわからないだろ?
A:うん、確かにわからない。
B:実際にはわかるようにすることもできるけれども、いろいろと面倒だからやめておこう。
A:うん、今はそうしてほしいな。でもわかるとどうなるんだろう。
B:そのことは僕にも君にも逆側の立場だからお互いのことはわからないが、たぶん、不思議なことって思っていたことがいくらかは説明できるのだと思う。
A:それはさっきの1次元だけで心を読んでいるかのように解釈できることもそうだよね。
B:たぶんそう。この1次元だけの軸だったらその程度の不思議さですむから、たぶん君のような1次元のタイムトラベラーは、もしかしたら無意識にしょっちゅうタイムトラベルしているのかもしれないね。
A:僕にはその意識はないけれども、確かにそういうことを感じることもあるね。
B:まあでも過去を書き換えたら、いいようにしかなっていかないはずだから、それはそれで悪くないよね。
A:そうだといいんだけどね。
B:頑張っているときになんだか棚からぼた餅のようにラッキーが降ってくることがあるだろ? あれって結局それを無意識にやっているんだよ。
A:いやあ、そうかなあ、そこまでは思わないけれども、でも矛盾はないのかもね。まあ、そうすると、やりたいこととかあったら、とにかく努力することが一番ってことだね。
B:なんだかタイムトラベルの話じゃない結論だけど、結局はそういうことかな。