もう20年ほど前でしょうか、韓国の映画や音楽に夢中でした。いわゆる韓流ブームはもう少しあとで、そもそも韓流という言葉もなかったと思いますが、いずれにしましてもクオリティの高さにびっくりでした。好きな映画や音楽についてなんとなく書いてみます。
○映画
韓国の映画を知ったのは「シュリ(1999年)」の大ヒットがきっかけだったと思います。韓国では数百万人を動員し、日本でもかなり賑わっていましたが、その後の韓流ブームに比べるとまだ大したことなかったのかもしれません。
なお、わたくしは映画のあらすじを覚えることができないという特技?を持っていますので、ほとんどストーリーには触れませんがご了承ください。
・八月のクリスマス(1998年)
この映画は恋愛映画の大傑作だと思います。思い出してこの文章を書いているだけでも鳥肌がたってくるような素晴らしさです。主演(男性)のハン・ソッキュは「シュリ」でも主演だった俳優さんでして、言葉を発しなくても感情を表現できる素晴らしい演技力です。主演(女性)のシム・ウナは若くして引退した今や伝説の女優さん、その美しさだけでなく演技力も素晴らしいもので、彼への愛情をやはりしぐさで表現していました。
そう、この映画が素晴らしいのは、ラブシーンもないのに彼らの感情が手に取るようにわかることなのです。二人が触れ合うのは画面上ではほんの数秒、彼女が彼に腕を絡めるシーンのみなのにその愛情はプラトニックながらも実に深いものだったと言えると思えます。
カメラワークも秀逸で、淡い色彩、感情を適切に映し出す陰影、静かな画面の中の激しい動きで何が起きたかを想像させる描き方、その素晴らしさは挙げていくと枚挙にいとまがありません。
結局彼らは結ばれることはなく、悲しい結末ではあるのですが、なぜかハッピーエンドだと思わされるほっこりとした暖かい気持ちにさせてくれます。
とにかく何から何まで素晴らしい、映画史に残る大傑作と言ってもいいのではないでしょうか。
・手紙(1997年)
韓国には「催涙性メロドラマ」というジャンルがあります。この映画はその最高峰ではないでしょうか。映画館で観る機会があったら、ハンカチを何枚も用意していく必要があるでしょう。まあ、主要登場人物が死んでしまうのは韓国映画ではしばしばあり、そういう意味ではありきたりかもしれませんが。
この映画の素晴らしさの一つは主演女優チェ・ジンシルではないでしょうか。彼女は日本ではあまり知られていませんが韓国では絶大なる人気を誇り、美しさと可愛らしさを兼ね備えて演技もできる、という素晴らしい女優さんでした。ネット上での中傷がきっかけで自殺してしまったのは残念でなりません。
・イム・グォンテク監督の作品
韓国の黒澤明とも言われている偉大な監督です。わたくしが知ったのは日本でも評判になった「風の丘を越えて/西便制(1993年)」、韓国の伝統芸能であるパンソリの歌い手の少女の成長を描く作品でして、ある意味「春琴抄」のストーリーにも似た実にストイックな作品です。そのストイックさはまるで妥協がなく、だからこそ心に染み入るのだと思います。そういった作風にもかかわらずこの映画は韓国では大ヒットし、前述の「シュリ」に破られるまで観客動員数の記録を持っていたそうです。
もう一つ挙げさせていただくとしたら「春香伝(2000年)」でしょうか。李氏朝鮮を舞台とした映像美が上記作品同様の素晴らしい文芸作品に華を添えています。
・クァク・ジェヨン監督の作品
「猟奇的な彼女(2001年)」で一気に名を上げました。この作品はイメージ的には表題どおりととらえられていますが、その実、圧倒的なラブストーリーやその展開の重厚さに舌を巻きます。その傾向は「ラブストーリー (2003年)」「僕の彼女を紹介します (2004年)」にも見られていて、カジュアルそうでありながら重厚な恋愛映画を楽しみたいなら彼の作品がいいのではないでしょうか。
・ペ・チャンホ監督の作品
日本で一番有名な作品は「鯨とり(1984年)」ですがこれはまだ観たことがありません。観た中でわたくしがもっとも好きなのは「神様こんにちは(1987年)」、この作品はストーリーがあるようなないような奇妙なロードムービーでして、主演の一人アン・ソンギの演技が素晴らしいのです。
彼の作品を貫いているのは、一言で言うとヒューマニズム、全編にひとへの愛情があふれていて、とても暖かいのです。こういう監督、いそうであまりいないような気がします。
○音楽
「アジアNビート(1994-1998年)」というテレビ番組がかつてありまして、アジアのポピュラー音楽を幅広く紹介していました。もともと香港や台湾の音楽は聴いていましたが、この番組をきっかけに韓国やタイの音楽にも夢中になりました。
韓国のポピュラー音楽の特徴は、ヒップホップをアメリカとは違う形で取り入れることに成功したこと、美しいバラードが多いことでしょうか。最近はダンスミュージックがメインのようですね。
・Fin.K.L.
「アジアNビート」でもしばしば取り上げられていたS.E.S.というグループが日本デビューもしましたが、同時期のガールズグループとしては韓国ではおそらくFin.K.L.が圧倒的人気だったと思われます。
正統派アイドルながら圧倒的な歌唱力のメンバーもいたりと、まあ今の女性グループの元祖のような存在でしょうかね。
メンバーの一人、イ・ヒョリは社会現象にもなるような圧倒的な人気でしたけれども、日本にはあまり伝わっていなかったのが残念です。
・ヤンパ
確か高校生のときにデビューした女性シンガーです。バラードを圧倒的な歌唱力で歌い上げて一躍人気歌手になりました。中でもデビュー曲とも言える「ひよっこの恋」は名曲でして、わたくしも何度かカラオケで歌ったりしたものです。
・オム・ジョンファ
全盛期はファッションリーダーとも言える存在で、音楽もキャッチーなメロディーに最先端の音楽を取り入れて、韓国の音楽の中ではかなりオシャレな存在だったのではないでしょうか。
・チェ・リナ
もともとはRoo'Raという男女混成グループのメンバー、このグループも様々な音楽的要素を取り入れて素晴らしいのですが、彼女はその後独立してDIVAという女性3人のグループを作ります。まあ欧米ではありきたりの編成ではありますが、韓国語のラップへの乗せ方等、なかなか心地よいものでした。その後大病をわずらったりもしましたが、音楽シーンの中でさりげなく新境地を開いていく姿が印象的でした。
・チャウリム
当時は韓国では珍しいロックグループでした。紅一点でボーカリストのキム・ユナのカリスマ性あふれる美しさが印象的でしたが、音楽は一言で言うとその印象は「ダーク」、独特の沈み込むような素晴らしい音楽でした。
・ソニョシデ
時代は変わり、もう韓流にはほとんど興味をなくしていた時期にふと街中で流れてきた音楽に惹かれ、韓国の音楽であることはわかりましたがアーティスト名も曲名もわかりませんでした。しかしその後大ヒットとなったことによりその曲が「Genie」であることがわかりました。
この曲は、曲そのものも素晴らしいですが、やはりダンス込みでの素晴らしさでしょう。日本人アイドルでは到底できないであろう、日本人ダンサーによる難しい振り付けも難なくこなし、(いやらしい書き方で申し訳ございませんけれども)女性の肉体の美しさを存分に表現していると感じます。いやあ、ほんと美しいなあ、と思いながらたまに思い出したようにこの曲のPVなんかを見ています。