2回
2018/07 訪問
日本が誇る乾貨を圧倒的な美味に仕上げる老舗
香港に詳しい方に、広東料理では福臨門とここは別格と聞いたことがあります。当然敷居は高いと思い込んでいて福臨門には行ったことはないのですが、ここはHPで全メニューを公開していて、一人用のセットメニューもあるので訪問が可能かと思い、実際に初めて訪問したのが2年前、それから虜になってしまい、今回は3度目の訪問です。毎回公式HPの予約フォームを通じて予約しています。
一人用のセットメニューはありがたくはあるのですが、必ず洋風の肉料理とフカヒレ料理がついてきます。肉は要らないのでアラカルトでの注文です。今回お願いした料理は文末に記載します。
一つ目のお皿には2つの料理が乗せられており、干し鮑、ナマコ、ガチョウの水かき、といった布陣です。見栄えはいいとは言えませんが、この一皿で13,000円ほどというとっても高価なお皿です。この料理がもう圧巻で、これまで生きてきて最高の一皿と言っても過言ではないほどです。
まずは干し鮑、大船渡市三陸町の吉浜産という最高の産地のものを使用しています。かなり高価なこともありますが、ナイフで小さく刻みながら少しずついただくと美味しさをより感じられると思っています。これがもう絶品でして、干しでない鮑ではおそらく感じることのできないうまみがぐいっと引き出されているのです。この前日には南アフリカ産の干し鮑をいただきましたが、うまみの奥深さのレベルが違います。もうこれは、産地における干す技術、このレストランにおける戻す技術、これらがともに世界最高レベルであるからこその味と思われます。
ちなみにこの干し鮑、このレストランで一番小さいもので、それでも7,000円くらいします。大きいほど美味しいと言われていて、8段階ある一番大きなもの(大間産)は20万円近くします。でも、理性を忘れてしまいそうなほどの美味しさに、清水の舞台から飛び降りるつもりで2万円ぐらいのにでもすれば良かったなあ、と少し後悔しました。それでも小さいほうから3番目ですけれどもね。
ナマコについてはまだよく理解できていない食材でありますが、ここの食感は最高です。香港の著名なレストラン何ヶ所かでナマコの料理をいただきましたが、食感は硬めだったり柔らかめだったり様々です。そんな中こちらは、プリプリさを残しつつすっと柔らかい、という絶妙な食感で、ソースの味付けとの相乗効果で最高の美味しさです。
そしてガチョウの水かき、鳳爪(鶏の足)は最近日本でも見ることが増えてきましたが、ガチョウの水かきはその豪華版のような感じでしょうか。コラーゲン?たっぷりのプリプリの食感がたまりません。
これら素晴らしい素材を引き立てるソースは、オイスターソースと白湯が使われているようです。なんとも奥深く、濃厚な湯のお手本かのようです。
最初にいきなりクライマックスがきてしまって、ここからあとは下山するばかりですが、悪くはありません。冬瓜の料理は湯(スープ)が奥深い味わいでほっとしましたし、ハタの料理は食感と味のハーモニーが素晴らしく、麺は中華風ビスクとも言える濃厚さのスープに稲庭うどんがよく合っていました。
ということで、圧巻の料理を提供していただきました。正直言いましてここまで奥深い中華料理って日本では経験できないと思います。まあそれは仕方がないことですけれどもね。だから香港通いはやめられないのです。
以下は今回いただいた料理です。
日本皇冠特級吉品鮑 卅九頭
クラウンブランド特級吉浜アワビ 39 頭サイズ
Crown brand superlative dried abalone from Yoshihama, Japan 39pc/catty
北海道關東刺參扣 鵝掌
北海道産ナマコとガチョウの水かきの煮込み
Braised prickly sea cucumber with goose web
北海道鮮鱈場蟹腳 燴 濃雞湯 (伴蓮子、冬瓜)
北海道産タラバ蟹脚とトウガンの蒸し
Steamed Hokkaido fresh King crab leg with lotus seeds and wax gourd
黑魚籽豆腐蓉蒸星斑球
黒い魚卵、ハム、豆腐の蒸しハタ
Steamed spotted garoupa fillet with black fish roe, minced bean curd, ham, & egg yolk
蝦湯 鮮蝦水餃 稻庭麵
エビ団子、エビのスープで稲庭うどん
Stewed Inaniwa Udon and shrimp dumplings in shrimp stock
2018/07/22 更新
ここ数年お気に入りのこちら、約1年ぶりの訪問です。公式HPから一週間ほど前にオンライン予約しました。
セットメニューがいくつも設定されているのですが、あまり中華らしくない量がたっぷりの肉料理が含まれていることもあり、一人の訪問の場合でも最近はアラカルトでいただいています。
いつも鮑の料理をいただいていまして、8種類あるうちの1番安い、それでも約7,000円もするメニューを選択しているのですが、今回はもう少し上のランクを選ぼう、と決めていました。
ということでアラカルトメニューをながめて構成を考えながら、何となくセットメニューを見ると、なかなかいい構成のセットがあるではないですか。しかも鮑が含まれていて大きさを選択できます。選択できるのは8種類のうち安いほうから4種類、その中で一番高い鮑は単品だと2,880HK$、これに650HK$のフカヒレの料理など色々ついて3,680HK$、これはお得だと思って選択しましたが、中国茶をつけてサービス料を加算すると日本円で6万円弱、おそらく生涯ナンバーワンの高額支払いです。メニュー内容は最後に記載します。
ここはショッピングモールの中にあり、子供連れがいることも多いのではありますが、奥深い広東料理に合わせてか、雰囲気も重厚さがあるように感じます。サービスは過不足なく、でもどちらかというと素っ気ない印象もありましたが、今回は高額メニューを注文したからか、二人のベテランスタッフのどちらかが常にこちらを見ていて、適度に話しかけてきたり、必要なものをさっと先回りして出してきたりしてくれました。
さて、まずは「子豚のロースト」、と言いますかサックリングピッグ、なんかこれだけでも別次元の美味しさに感じられます。味付けによる香りが素晴らしいのと、薄いパン生地のようなものが添えられていて、これと一緒にいただく食感がたまりません。
次に「大フカヒレの姿煮」、ここで以前にもフカヒレの料理をいただいたことがあり、実はあまり好みに感じられませんでした。それは、このお店が、と言うより、日本でよくある上海風の白湯煮込みの味付けの方が、広東風の上湯スープの味付けより好みだからです。さて、まずは上湯スープを少し味見、おお、なんと奥深い、こんなによかったっけと期待以上の美味しさに嬉しくなりました。上湯のお手本のようです。
さて、本命の「クラウンブランド特級アワビ と ガチョウの水かき」、20頭になるとこんなに大きいのか、と驚きです。この前日に中東の鮑をいただいていて、それも素直に美味しかったのですが、吉浜産になるとぐっと味わいが複雑で深くなります。鮑は大きくなると指数関数的にお値段が高くなっていくのですが、大きくなるとこういった深い味わいが増してくるのかもしれないな、と感じました。ただ、今回やや残念だったのが、期待したより少し硬めの仕上げだったことです。大きくなってくるとこのあたり難しくなってくるのかもしれません。とは言え、大きいだけあって期待する食感の部分もあり、これはもういただいていて自然と笑みがこぼれてくる素晴らしさでした。なお、ガチョウの水かきのプリプリの食感やオイスターソースと白湯と思われる味付けはいつもながら、ここならではの素晴らしさでした。やはりこうした一皿に出会えるのは本場ならでは、と感じました。
気分的にはもうお腹一杯と思っていたところ、そのあとの2皿のポーションがかなり大きくてちょっと難儀しましたが、〆の「稲豚肉とナッツ入りの汁なし稲庭うどん」がやたら美味しくてほっとしました。ナッツが絶妙にいい仕事しているのと、乾物を使っているであろうベースの味がやはり素晴らしいです。
ということで、味的には圧倒的に素晴らしい広東料理の名店だと思います。自分には鮑はもう少し小さいものでアラカルトでの注文が合いそうなので、次回はそうしようかな、と考えています。
◯セットメニューの内容
片皮乳豬件 配 薄餅
子豚のロースト
Roasted suckling pig
紅燒大鮑翅
大フカヒレの姿煮
Shark’s fin in superior soup
日本皇冠特級吉品鮑 扣 鵝掌
クラウンブランド特級アワビ と ガチョウの水かき
Crown brand Yoshihama dried abalone and goose web
選用廿頭吉品鮑 (20 頭サイズ 20pcs/catty)
上湯焗原隻九州大蝦皇 配 鮮露筍
九州車海老とアスパラガスのソテー
Sautéed Kyushu whole King prawn and asparagus
二味嫩鴿(山椒焗鴿腿 \ 蜜餞煎鴿胸)配鮮露筍
2種の鳩料理アスパラ添え
Pigeon in 2 styles with asparagus
豚肉果仁燴稻庭麵
豚肉とナッツ入りの汁なし稲庭うどん
Stewed Inaniwa udon with pork and nuts
燕窩 生磨蛋白杏仁露
ツバメの巣と卵白入りアーモンドクリーム
Sweetened almond crème with egg white and bird’s nest
葡萄鮮果汁 伴 空運溫室水果
フレッシュフルーツの盛り合わせ
Fresh fruit platter