nobidogさんが投稿した蕎野(愛知/藤が丘)の口コミ詳細

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蕎野藤が丘/そば

2

  • 夜の点数:4.5

    • ¥2,000~¥2,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 4.0
      • |CP 3.2
      • |酒・ドリンク 4.0
  • 昼の点数:4.4

    • ¥1,000~¥1,999 / 1人
      • 料理・味 4.4
      • |サービス 3.7
      • |雰囲気 3.5
      • |CP 3.9
      • |酒・ドリンク -
2回目

2024/10 訪問

  • 昼の点数:4.4

    • [ 料理・味4.4
    • | サービス3.7
    • | 雰囲気3.5
    • | CP3.9
    • | 酒・ドリンク-
    ¥1,000~¥1,999
    / 1人

蕎麦を噛む

蕎麦は「すする」と言う。
たとえば「ご飯」であれば「茹でる」ではなく「炊く」とするように、ことばとことばの組みには決まりがあり、これをコロケーションと呼ぶ。なぜ「茹でる」ではダメなのか? 調べればもっともらしい語源説はいくつか出てくるが、実のところこうした決まりには説得力のある理由など無いことがほとんどだ。理由などないがそう決まっている。ことばは恣意的なのだ。
なので外国語はもちろん、国内でも方言であったり知らぬ文化に身を投じたとき、この「理由はないがそうなっている」ことがなかなか習得できず、よそ者や、文化に通じてない人、つまり半可通、野暮天の指標にもなる。

私はここの蕎麦を噛む。

もちろん啜っても美味なのだ。ほどよく蕎麦特有のぬめりをまとい、つるりと呑める。ささやかな甘味と香り。先っちょだけ浸らせたつゆがこの繊細な味を支えてくれる。これだけでいただくのが粋なのだろう。

しかし私はどうしてもここの蕎麦を噛みたくなるのだ。
やや硬めにしあがった、穀物味のある控えめな香りを噛むと、はじめは乾いた籾殻を思わせる。稲刈りの季節に夕方歩くような。それからナッツ。甘味がしっかり染み出した頃にはピーナッツの皮。かすかに干し葡萄にも似た。香りが瞬く間に爆発し、抑えられていた滋味が口中を満たす。この豊満はわずかひと時で、不思議と後味が残らない。これは、ただ粋に蕎麦を啜った時と同じだ。

野暮かもしれないが私はこんな蕎麦が好きなのだ。
かつて母方の郷里、長野の谷間で、地元の蕎麦屋に連れて行かれたことがある。蕎麦屋と言っても客商売でもないような、地元の農協がやっているのか、付近で働く農家の人が客の大半で、工事現場のような建物に看板も出してない。土の駐車場に軽トラが停まり、降りてきた人が蕎麦をパッと食べてパッと立っていくような店。
なんの飾りもなく、ただ蕎麦を出すだけなのだが、その蕎麦がじつに美味かった。蕎麦といえば繊細な風味と当たり前に思っていたのだが、むしろ野性か、強い香りと濃厚な味、しっかりした噛み応え。昔のことなのでだいぶ美化が入っているだろうが、これ以上ないほどの強烈な、蕎麦そのものを喰うという体験をした。

蕎野。蕎の野と書くこの店に、あの時の野性をどこか思い出してしまうのだ。

私はたぶん蕎麦好きだが、世間的な意味での「蕎麦好き」ではないのだろう。結局、蕎麦が旨いかどうかだけが、私の好みなのだから。
格好良くヌキか板わさなんかでツッと呑んでサッと帰っていく、落語のマクラで前置きされるようなツウ人にはとてもなれそうもない。

一般には蕎麦というとそうした「蕎麦文化」のようで、蕎麦そのものの味よりも「文化」に力を入れている店舗が散見する。食べログやその他のガイドでもその手の店がしばしば高評価されているが、しかし、蕎麦屋の天ぷらやおつまみがどれほど良くても、私にはたいして魅力的にも映らない。もちろんサイドも旨いに越したことはない、が、なにより蕎麦の味が第一に重要なのだ。ガイド頼りに蕎麦屋に行ってみたらそんな手合いで、天ぷらは美味いんだが肝心の蕎麦が。なんてことでガッカリさせられたのは一度二度ではない。そもそも天ぷらが食べたいときは私は天ぷら屋に行く。蕎麦の旨いのが食いたいから蕎麦屋に来たのだ。

この蕎野はまさに、その「蕎麦の旨い」店である。野暮な田舎者の食べ方かもしれないが、ぜひ当店の蕎麦を噛んでみてもらいたい。

2024/11/07 更新

1回目

2016/11 訪問

  • 夜の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気4.0
    • | CP3.2
    • | 酒・ドリンク4.0
    ¥2,000~¥2,999
    / 1人
  • 昼の点数:4.5

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気4.0
    • | CP3.8
    • | 酒・ドリンク-
    ~¥999
    / 1人

なにより「蕎麦」が美味しい

蕎野の魅力は何より蕎麦が美味しいことに尽きる。
正直、愛知は蕎麦不毛の地だと考えている。美味しい蕎麦屋が見当たらない。
評判の蕎麦屋に行ってみても「天ぷらやお刺身は美味しいけど、お蕎麦はね……」なんてお店ばかり。
蕎麦が食べたい蕎麦好きにとっては不満しか残らない(しかも高級店を気取って高い)店ばかりで辟易していたところに、この蕎野に出会った。
ここは蕎麦が美味しい。蕎麦がきちんと蕎麦の味がする。香りがある。蕎麦の味がある。タレもよい。
その蕎麦湯をいただくと、蕎麦がとてもよいものだったことを再確認できる。時に濃すぎてそのまま団子にでもなりそうなくらいの蕎麦湯だが、それがまたよい。
蕎麦が美味しくてはじめて、他のおつまみ、このお店であれば鴨なりつくねなり、お酒なりに目が行くというものだ。

残念なのは駐車場が少ないことか。昼時は混み合って入れないこともしばしばある。

2016/11/08 更新

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