1回
2024/07 訪問
その時は本当に試練のようだったけれど、今思い返すと、函館で一番心に残る味になっている。
2025/05/02 更新
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店に入ると、すでに何人かの客がいて、みんな黙々とカレーを食べてはフーフーと息を吹き、無言で冷たい水を飲んでいる。ここは年末の北海道だよ？そんなに冷たい水を飲んで大丈夫？と心の中で思った。
私は窓際の席を選んで、ハンバーグカレーを注文した。
運ばれてきて、まず一口ルーを味わってみる。
「うわっ！」思わず声が出る。想像を超える辛さだった。東京ではなかなかお目にかかれないレベルで、真っ赤で見た瞬間に「これは危険」とわかるような辛さではなく、一見穏やかで波風立たぬ表面の下に、静かに潜む激流のような辛さ。
よく冗談で「軽度・中度・重度・インド」と辛さを段階で表現するけれど、この函館で食べたインドカレー『小いけ』は、まさに“インド”級の辛さを見事に再現していた。
一口食べるごとにフーフーと息を吹き、冷たい水をごくごく飲む。
結局、完食するまでにかなり時間がかかって、店内はすっかり客が入れ替わっていた。最初は一口ごとに爆発するような辛さで苦行のようだったのに、半分を過ぎた頃から、辛さの向こうにある深い風味がじわじわと舌にしみ込んでくる。「ああ、この香りは日本のカレーとは違うな。フェンネルの香りがしっかりしていて、ルーの中には細かく挽かれたスパイスがぎっしり……でもやっぱり、すごく辛い。」そんなことを思いながら食べていた。
その時は本当に試練のようだったけれど、今思い返すと、函館で一番心に残る味になっている。