3回
2025/08 訪問
京都の美食、ここに極まる。高台寺和久傳で五感を解き放つ、至高の夏の夜。
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京都・東山の静寂に抱かれた名店「高台寺和久傳」。歴史と風格が漂うその空間で、日本の夏の美味を心ゆくまで味わうという、この上ない贅沢な一夜を過ごしました。
まず、青竹に注がれた冷酒が、清々しい香りと共に宴の始まりを告げます。
一品目に供されたのは、棘のついた殻の上に鎮座する鮮やかな黄金色の雲丹。見た目のインパクトもさることながら、口に運べば、磯の香りと濃厚でクリーミーな甘みが舌の上でとろけます。それを下支えする長芋の繊細な食感が絶妙なコントラストを生み出し、まさに海の宝石箱のような逸品でした。
続いての春巻には、良い意味で期待を裏切られました。パリッと軽やかな衣の中から現れたのは、枝豆やとうもろこしの甘みに、すももの瑞々しい酸味、そして大葉に巻かれた奈良漬けの深いコク。夏野菜の饗宴に果実の酸味と漬物の塩味と旨味が加わるという、意表を突く構成ながら、その計算され尽くした味覚の調和に思わず唸ります。
鯨の出汁で仕立てたという沢煮椀は、蓋を開けた瞬間に立ち上る芳醇な香りにまず心を奪われます。深く、そしてどこまでも優しいその味わいは、五臓六腑にじんわりと染み渡るよう。これぞ京料理の真髄と言える、丁寧な仕事が光るお椀です。
夏の京都を象徴する鱧は、皮目を香ばしく炙った焼き霜で。完璧な骨切りと絶妙な火入れが施された身は、ふわふわでありながらしっかりとした旨味を持ち、噛むほどに幸せが広がります。柔らかな鮑と出汁をたっぷり含んだ冬瓜の組み合わせも、夏の涼を感じさせる見事な一皿でした。
メインには、美しいサシの入った丹波牛のフィレ肉。しっとりと柔らかな赤身の濃厚な旨味に、熟成酒に漬け込んだというイチヂクの官能的な甘みが寄り添い、得も言われぬマリアージュを奏でます。
締めから甘味に至るまで、一皿ごとに季節の物語が紡がれていくようなコース構成。
選び抜かれた食材、それを最大限に活かす技術、そして料理を引き立てる美しい器。
すべてが完璧に調和した、記憶に深く刻まれる食体験でした。
伝統を重んじながらも、随所に光る革新的な感性。京都が世界に誇る美食の神髄を、改めて実感させられた夜でした
2025/09/08 更新
秋の京都、その風情と美食を一身に受け止める名店「高台寺和久傳」にて、日本の秋の象徴である松茸を心ゆくまで味わい尽くす、まさに夢のような時間を過ごして参りました。
季節の恵みを余すことなく引き出したお料理の数々は、ただ美味しいという言葉だけでは表現しきれない、日本の食文化の奥深さを改めて教えてくれるものでした。
まず供されたのは、香ばしい煎り米湯。これから始まる食の旅への期待感を優しく高めてくれます。
続いて現れた「すっぽんの煮こごり」は、見た目にも涼やかな一品。凝縮されたすっぽんの滋味深い旨味が口の中でとろけ、その奥深い味わいに思わずため息が漏れます。
そして、今回の主役である松茸の登場です。「長野県産松茸のフライ」は、サクッとした軽やかな衣を纏いながらも、一噛みすれば豊潤な松茸の香りが鼻腔を駆け巡ります。酢橘を絞れば爽やかに、特製のウスターソースをつければ洋の要素が加わり、一つの素材で二度、三度と楽しませてくれる心憎い演出です。
続く「豆腐と松茸のお椀」は、繊細な出汁と松茸の上品な香りが見事に調和し、日本人で良かったと心から思える瞬間でした。
「アオリイカのこの子和え」のねっとりとした旨味に舌鼓を打った後には、「青森県産焼松茸」が。
炭火で丁寧に炙られた松茸は、その芳醇な香りを最大限に放ち、シンプルながらも最も贅沢な味わい方かもしれません。
さらに「松茸と丹波牛のすき焼き」では、とろけるような丹波牛の甘みと、松茸の食感と香りが絡み合い、口福とはまさにこのこと。
箸休めの「蕪の冷煮フカヒレ餡」で一度心を落ち着かせた後は、「秋刀魚塩焼きと松茸ご飯」という、秋の味覚の最強タッグが登場。
脂の乗った秋刀魚の塩気と、土鍋で炊き上げられたご飯に染み込んだ松茸の香りが、えもいわれぬ美味しさを奏でます。
デザートの「おうきひ桃」の瑞々しさ、「銀杏餅」の素朴な甘さに癒され、最後にお抹茶で締めくくるまで、一瞬たりとも飽きさせることのない、計算され尽くしたコース構成でした。
季節の最高峰の食材を、最高の技術で昇華させる。
高台寺和久傳での一夜は、私の食体験の中でも忘れられない、特別な一頁となりました。これぞ、日本の秋が誇る美食の極みです。