4回
2024/10 訪問
たおやか
東京に居た頃から愛用してきたお店の一つ。年明け以来、9ヶ月ぶりの訪問。
ここ〈みずかみ〉の鮨の魅力は、「たおやか」とさえ言える気品と艶を備えた鮨の数々にあると思う。ここにしかない魅力があるお店で、何となしに繰り返し訪れてしまう。今回で四季を制覇。
季節ごとにヒネリの利いた酒肴も、このお店の欠かせない魅力の一つだ。
この日は5品の酒肴、鮨14貫で37,000円。初めて訪れた時からは値上がりしたけれど、このお値段設定は今時良心的とすら言えるかもしれない。
酒肴でお酒(この日は三重の〈作〉)をいただき、握りはお茶でいただく。白シャリの高い酸と日本酒を合わせるよりも、緑茶で受けたほうが、酸のカドが取れ美味しくいただける。酒を飲みたいという向きには不向きかもしれないけれど、こちらのお店はこれでいい気がする。(じっさい、私自身、鮨で酒を飲みたい時は別の店を使うし)
今回も気品と艶に溢れた握りが並んでいた。やはりこの店は、仙台から通い続けなければ、なんて思う。
また、参ります。
<いただいたもの>
・つまみ
①茄子揚げびたしと揚げ銀杏
②うにを使った小鉢(料理名仰っていたはずだが、忘れた…)
③粟麩と蛸の桜煮の炊き合わせ
④ほたてと雲丹の塩辛和え
⑤きんきの味噌焼き
・握り
①白川甘鯛
②赤身
③大トロ
④こはだ
⑤新いくら
⑥鯵
⑦車海老
⑧炙り秋刀魚
⑨しゃこ
⑩うに
⑪煮蛤
⑫北寄貝
⑬鰹藁焼き
⑭穴子
・汁物
追加① 真鯛
追加② 干瓢巻き
・玉、果物
茄子の揚げ浸しと揚げ銀杏
粟麩と蛸の桜煮の炊き合わせ
ほたて、うにの塩辛和え
きんきの味噌焼き
白川甘鯛
赤身
大トロ
こはだ
新いくら
鯵
車海老
炙り秋刀魚
しゃこ
うに
煮蛤
北寄貝
カツオ藁焼き
穴子
追加・真鯛
追加・干瓢
2024/10/31 更新
2023/04 訪問
気品、艶、粋
昨年からこっち、鮨屋を幾つか回ってみた結果、人によって色んな考え方はあるだろうけど、鮨については、私はあまり手を拡げなくてもいいかなと思った。
別に新規開拓をしないというわけではない。機会があれば、と見ている店はいくつもある。
しかし、鮨屋は常連を大事にする傾向がある。他の業態よりもその傾向が特に際立つ。新しい客に対する職人の緊張感は、それはそれで面白さの一部だが、顔見知りになって気心知れたお客さんと相対するほうが余裕があり、それゆえのアソビもあり、店によっては好みを踏まえて気を利かしてくれることもある。
そのほうが、こっちも楽だなと思うようになった。
そんな中、ここ〈みずかみ〉さんは、贔屓にしたい、通いたいと思う店の一つ。麹町に店を構えるというのもシブい。通いたいもう一つは神保町の〈はる駒〉さん。二つのお店は全く違う方向を向いている感じがするけれど、ともに私の感性にぴたっと嵌まるものがある。この二つの店があれば、私の鮨に対する欲求は99%満たされる気がしている。
昨年夏、ツマミから握りに到るまで、ぐうの音も出ないほどに圧倒された。完成度の高いツマミの数々と、気品と艶が薫る粋な鮨。重心が高く軽やかで、鮨ネタにきらめく艶と横を通り過ぎた美女の残り香のような気品。あれをもう一度味わいたい、と、1ヶ月ちょっと前に予約して行った。
今回も8品のツマミ、15貫+追加の巻物で圧倒的充実感のもとに2時間を過ごさせていただいた。このご時世で値段も上がったが、お酒も2合飲んでこの内容で諭吉先生4枚半。安いとは言わないが、クオリティなどを踏まえれば首肯できる範囲。
ツマミは冒頭から春らしく、それも桜散り、新芽が芽吹く今のこの時期を断面として切り取った感じ。春を感じる食材でこれでもかと春を感じ、堪能させてくれる。トドメに出て来るカジキの焼き物の絶妙な火加減。中身はフレンチ流に言えばミキュイ。魚を知り尽くす鮨屋の職人ならではの技が堪能できる。
握りも、マグロなどの花形のネタもさることながら、細工を施して出すアジやイワシ、コハダなどの青物、煮蛤などの伝統的な品、どれも素晴らしい仕上がり。起伏もありつつ、最初から最後まで寸分の隙もない展開で魅せてくれた。そんな中のこの日のトップ3は、思わず写真に納める前に掴んで食べてしまったトロ、見た目からして美しかったアジ、細工を利かせたイワシか。
値段が値段なので足繁く通うことはできないまでも、まずは残る秋と冬を制覇するところからかな。
筍土佐煮、蓬麩、菜の花
ボラの刺し身
サヨリ昆布〆の明太子和え
ホタルイカ
初鰹刺し身
子持ちヤリイカ
カジキ焼き物
真鯛
しろいか
赤身
中トロ。この後、大トロがあったのを撮り忘れる失態。
コハダ
アジ
車海老
イワシ
トリガイ
ウニ
煮蛤
さわら
穴子
追加・鉄火巻
玉子、大根のたまり醤油漬け
水菓子・パイナップル
2023/04/04 更新
2022/07 訪問
気品と粋
休暇の予定を考え始めた時、〈みずかみ〉へ行こうというのが一番にあった。
鮨屋を少し探究してみようと思い始めたころで、それも一人でも予約を受けてくれそうで、予約のリリースと同時に席が埋まるような場所ではない店。〈東京最高のレストラン〉で紹介されている文章を読んでも、点数をつけている人たちの点数以上に、マッキー牧元氏のコメントが私の期待を煽った。
2ヶ月くらい前に予約を入れていたのはやりすぎだったかもしれないが、それだけ思い抜いた鮨屋だ。電話を掛けるときは断られてもやむなしと思いながらかけた。柄にもなく緊張した。
メニューはおまかせのみで、ツマミありとなし。ツマミありの30,000円の予算のコースで予約。
さんざんコメントされているように〈すきやばし次郎〉で修行した水上さんが独立したお店という。
〈すきやばし次郎〉なんて遠い雲の上すぎて、水天宮の〈すぎた〉と同じく、恐らく一生縁のない店だろうなんて思っちゃいるし、少しでもその面影を感じたいなんて言った日にはこの貧乏人めと罵られそうだが、そもそも本家を知らないので何が面影なんだかわからないというお粗末。
とはいえ、乏しいなりに食べて来た食の経験に照らして思うのは、非常に気品のある鮨だなと。
私は一貫、一貫がズシンと来る、重心の低い鮨に親しんでいたが、主人、水上さんの握る鮨は軽やか。浮薄なのではなく、品のよい感じ。それも、相対した際にパッと感じる、満ち溢れた気品ではなく、過ぎ去った後に感得する気品。人でもあるじゃないですか。相対したときにはさほど感じないのに、別れてから「ああ、品のよい人だったなぁ」って後から感じる人。〈みずかみ〉さんの鮨はこれだと思う。そしてこれも、「粋」の在り方なのではと、無粋なおっさんは思うわけです。
ツマミのうち、メカジキのハラスのタタキは、天地がひっくり返るような美味しさ。醤油漬けにして皮目を炙って、生ハムみたいなねっとりと塩味の利いたテイスト、燻製香に近いフレイバーを振りまき、中々どうして、こういうツマミを作るに至ったのか。最初の旨みたっぷり、脂ものりのりのスズキの刺し身からしてただならなかったが、ここで完璧に「持って行かれた」感。
鮨は言うに及ばず。コダイに始まり、イカ、マグロ3種、コハダ、ミル貝、アジ、車えび、金目鯛、ウニ、シマアジ、煮蛤、イサキ、穴子。追加でイサキ。どれも納得の仕事が施されて美味だったが、個人的な好みで、アジ、金目鯛、イサキがトップ3。イサキは皮目を炙って香ばしい仕上がり。身の脂の照り映えも艶やかで色香漂う。最も、艶やかだったのはイサキに限らず、どれも気品のある色香を感じるものばかりだった。
酒を2合と1貫追加でお会計は36,000円余り。値段を考えればおいそれと来られる店ではないが、水上さんの握る鮨の気品を感じに、是非ともまた訪れたいもの。
スズキ。この前に枝豆があった。
えび、梅肉、長芋、おくら、いりこ酒
汲み上げ湯葉にウニ
ホタテ
ホタテのヒモの貝殻焼き
メカジキハラスのタタキ
メカジキの焼き物
お酒の最後に金の花。粋だね。
コダイ
イカ
マグロ赤身
中トロ
大トロ
コハダ
ミル貝
アジ
クルマエビ
金目鯛
ウニ
シマアジ
はまぐり
イサキ
穴子
追加のイサキ
玉子焼き
2022/07/19 更新
こちら〈みずかみ〉は、仙台へ行っても付き合いを切らさずに通い続けたいと思ったお店の一つ。
前回の訪問から8ヶ月。これまで季節を変えて通ってきたが、前回ようやく四季をすべて抑え、初めてこちらを訪れた季節である「夏」に再び訪れることになった。
日曜の夕刻に予約をして訪れた。
<いただいたもの>
・ツマミ
❶アスパラ、❷すずきの刺し身、❸しまえび、おくら、長芋と煎り酒、❹釜揚げしらすと大根おろし、❺マグロの生ハム、❻蛸の桜煮
・握り
①まこがれい、②いか、③マグロ赤身、④マグロ大トロ、⑤こはだ、⑥とりがい、⑦あじ、⑧車えび、⑨いわし、⑩うに、⑪いさき、⑫はまぐり、⑬かつお、⑭穴子、⑮(追加)マグロ中トロ、⑯(追加)干瓢
・〆
⑰お椀、⑱卵焼き、沢庵、⑲水菓子(パイナップルとメロン)
+お酒(作)1合
〈みずかみ〉は、握りの見事さは言うに及ばないが、同じくらいお店の魅力を支えているのが、季節を変えて繰り出されるツマミ。見た目の派手さはないがどれもひとひねり、ふたひねりされている。
初めて訪れた時に出逢い、衝撃を受けたメカジキハラスのタタキとよく味わいの似た❺に感銘を受ける。マグロの脂がこなれて、ハモン・イベリコのようで、それでいて生ハムと決定的に違う美味しさがある。脂の乗った、やわらかい唐墨のような、そんな味わい。
❸しまえびも弾力ととろっとした優しい食感がいい塩梅で、噛んで身をほぐすと旨みが弾ける。いつまでも噛んでいたい❻たこの桜煮も、和食屋で出逢えそうなものだけど、ここにしかない。
ツマミで酒を嗜み、握りになったら私はお茶に切り替える。こちらのシャリの酸がやや、酒と喧嘩するように感じる時があり、お茶のほうがカドが取れておいしくいただけるため。夏の楽しみ①まこがれいに始まり、寸分の隙もない。中でもこの日、⑧車えびの香りと甘さ、イチオシです、と言って目の前に置かれた⑨いわしの脂の旨さ(中に仕込まれたショウガとネギの香りも相俟って、特においしく感じる)が突き抜けており、この2貫は〈みずかみ〉さんでなければいただけないかもしれないな、と思う磨きこまれた気合の品。車えびは、「この甘さはこの温度でないと出ないんです」と、仕掛けをご披露いただく。
こちらは鮨の大きな魅力の一部に「香り」があることを確かめさせてくれるお店。皮目を香ばしく焼いた⑪いさきや、藁で燻した⑬かつおなども、素材に施した「仕事」がもたらす香りが、旨さの一部になっている。このお店の鮨に気品を感じるのは、この「香り」による部分は大きいかもしれない。
この日は、ちょっとしたアクシデントもあったけれど、お店(あるいはご主人)の対応が完璧。過ぎてみれば、笑い話だね。長くお店と付き合っていればそういうことは一度や二度、あるもの。ただ、次は来年3月かなぁ、と思っていたけれど、このまま年を越すのも何だし、暮れに行けるなら試してみようかなぁ、とも。
ま、成り行きで決めるかね。