5回
2021/01 訪問
静謐な日本料理5
2021/01/30 更新
2020/07 訪問
静謐な日本料理4
前回から久しぶりの訪問、表参道から雨の中を歩きます。交差点で根津美術館を横目で見つつ、しばらく行っていないな、と嘆息します。生活様式が一変してしまいましたね。
入口でお弟子さんに迎えられ店内へ、その瞬間懐かしくも、シックな空間に胸が高鳴ります。ご主人にご挨拶しつつビールをオーダー。この日いただいたのは、
汲み出し 八海山の原酒で作られた梅酒
アイスクラッシュに注がれ涼し気
先付け 毛ガニ・焼き茄子・オクラ
出汁がすばらしいジュレとまぜながらいただきます、
香りのいい焼き茄子がアクセント
造り 真子カレイ・中トロ
カレイは高いレベルの鮨屋で供せられるほどの淡白な甘さと旨さ
中トロは山幸さんですが、きめの細かい脂を堪能
椀 イセエビと冬瓜
ギリギリに抑えた出汁で素材を際立たせています
焼き物 アイナメの炙り
とても肉厚ですが限りなくレア、脂がたっぷりとのった身を味わいます
八寸 つぶ貝、黒あわび・肝、白エビ、バフンウニ、鯛の手毬鮨、ほおづきが二つ
(中には隠元・鱧の卵)
八寸には白と青の紫陽花が散りばめられ、目に鮮やかなほおづきとともに
プレゼンテーションが秀麗
鉢肴 郡上八幡の鮎
水苔のすばらしい香りを堪能します
炊き合わせ 加茂ナスと鱧
丁寧に骨切された鱧はテクスチャーも秀逸
強肴 トリガイの炙り
こちらも限りなくレア、柔らかさの中にしなやかな食感
噛む程に口中に広がる特有の甘さ
ご飯 にえばな
赤身ヅケ、鱧フライなどとともに、にえばなの香りを楽しみます
水菓子 巨峰、シャインマスカット、完熟マンゴーなど
いただいた冷酒は、春鹿と十四代。十四代は楯垂れ、筆舌に尽くしがたい搾りたての米の旨味と心地よさ、とはいっても料理のじゃまをすることは決してありません。
この日も卓越した技量で素材のよさを生かす宮坂さんの「引き算の美学」を満喫した夜でした。
2020/07/04 更新
2019/10 訪問
静謐な日本料理3
10月に入ったのに蒸し暑く感じるこの日宮坂に向かいました。前回は6月でしたが、季節も変わり今回はマツタケを目当てに入店、照明を落としやや黒っぽい原木一枚板のカウンターが広がるお店の雰囲気で空気の違いを感じます。
この日のお料理は
先付け まいたけ・しめじ・豆乳豆腐・クエの炊き合わせ
造り マグロ・鯛
椀 マツタケ(岩手)
焼き物 鰆
八寸 栗・銀杏・姫サザエ・平子・アナゴの煮こごり・ウニの湯葉のせ
ホタテ刺身・平目の手毬寿司
煮物 にしん・さといもの炊き合わせ
強肴 カワハギ刺身・カマスの炙り
追肴 金目鯛のフライ・マグロ漬け・イクラ
ご飯もの 煮えばな
甘味 栗菓子
水物 スモモのアイス・巨峰・マスカット
特に印象に残ったのは立派なマツタケがふんだんに使われた椀物でしょう。
マツタケは、香り・しっとり感・歯ごたえとも極めて上質のものでした。
また、造りでは目利きの仲卸として名高い「やま幸」のマグロは赤身の鉄分・中トロの
上品な脂を堪能しました。
その他の料理でも、宮坂さんの世界観が広がっていました。素材はいずれも第一級のものとかんじました。
お酒は十四代(吟醸・大吟醸)をいただき素晴らしい数時間を過すことができました。
2019/10/06 更新
2019/06 訪問
静謐な日本料理店2
梅雨のはっきりしない天気の中訪問。表参道から多少ありますが裏通りですのでそれほどの喧騒感はありません。
この日も凛とした空気の漂うカウンターにつきます。
貝炙り・炊き合わせ(トリガイ、鮑、タイラギ貝) 鮑の香りは今一つ
造り(マコガレイ、マグロ) マグロはやや凡庸だがマコガレイは爽やかな食感
椀(鱧、ジュンサイ) 鱧は肉厚で夏を堪能
焼き物(キンキ) キンキ特有のすばらしい脂ののり
八寸(ホタテ揚げもの、マコガレイ笹鮨、ウニ湯葉和え 他)
赤・青・紫の紫陽花が配され美的センスは抜群
炊き合わせ(鱧・京ナス)
焼き物(鮎) 郡上八幡の鮎、火入れもすばらしい
強肴(毛蟹)
煮え端(炊き上がり直後のご飯) 米の香りが印象的
デザート(蕨餅、果物)
食事の供せられる器は、一つ一つが逸品ですが、料理の見え方・映え方を念頭に置いた選択がなされており職人魂を感じます。
この日はビールでスタートし途中から冷酒へ(天明・而今)。天明の余韻のある辛口、而今はふくよかさ・奥の深さで料理の数々との相性も問題ありません。
この日も、素晴らしい時間を過せました。
2019/06/09 更新
2019/03 訪問
静謐な日本料理店
以前から興味があったお店ですがなかなか予約が取れず念願かなっての訪問です。表参道から徒歩約10分くらい、根津美術館のはす向かいで閑静な場所にあります。
照明はほの暗く静謐な雰囲気、スタッフもきびきびとした動作でこちらも背筋が伸びますが、決して堅苦しいという意味ではありません。カウンターの板は檜ではなく、オーナーが自ら見つけたというアフリカの原木の一枚板、ダークブラウンでお店の雰囲気にマッチしています。
お料理は上質な出汁をベースにしつつもそこかしこにオーナーのセンスが発揮されています。特に素晴らしく印象に残ったのは八寸のプレゼンテーション、季節がら桜の花も配された八寸はさながら小宇宙のような感さえあります。食材で印象に残ったのは、お造りのマグロ(300キロオーバー、赤身はきめ細かく中トロは上質な脂)・ヒラメ(身の引き絞まったうまさは絶品)、それから京都で修業なさったときの縁で入荷した筍、お椀のハマグリ、照り焼きされたサクラマスなど。
冷酒のラインナップも大変魅力的ですが、今回は而今と作をいただきました。お料理をたいへんよく引き立ててくれました。
噂に違わぬ名店です。
2019/03/30 更新
前回から約半年振りの訪問です。世の中がすっかり変わってしまい表参道もこころなしか人が少ないように感じます。禍に翻弄されていますが、表参道から街路樹を眺めながら歩きますと、自然界の中ではほんの一瞬のことのようにも感じました。
早めの時間に到着、ご無沙汰しておりましたが、懐かしい空間へ移動します。少し張り詰めたように感じる空間が宮坂さんらしいなと思い出しました。
時節柄カウンター席のスペースは取られていますが、この日はお客さんでぜんぶ埋まりました。
早速ビールいただきつつ、スタート。
◎ 汲み出し 香煎・小粒のあられ
ご主人はお茶を嗜んでおられますが、汲み出しを
いただくと背筋が伸びる思いです
◎ 先付け 白味噌椀 蕪と雲子
白味噌椀はかつお出汁・柚子でやさしい味わい、
蕪はとろけるやわらかさ・雲子はとても新鮮でクリーミー
◎ 造り 鯛と中トロ
鯛は淡路産、桜色が美しく朝〆でいい弾力、甘味・身のしまりも充分
中トロは房州、きめ細かな脂で濃厚
◎ お椀2 イセエビの真丈
かつお出汁のすばらしい香り、イセエビは丁寧にすり身され香り豊か
ゴロゴロと身も入りイセエビの甘味・香り・食感を楽しむ
◎ 焼き物 マナガツオ幽庵焼き
丁寧に漬け汁を塗りながら焼かれており柚子とともに香りがよい
マナガツオは脂がのっているが、身はしっかりで味わい深い
◎ 八寸 ワカサギ・鮟肝・赤ナマコ・もずく・ウニ・カラスミ・鯛の手毬鮨
半生のカラスミはプチプチとした食感、塩分控えめでねっとり
鮟肝は新鮮できれいな味わい
◎ 炊き合わせ 聖護院大根・京人参
京野菜特有の野菜本来の深い味わいを楽しみます
◎ 強肴 てっさ、煮凝り、皮
河豚そのものは味がするものではないですが、てっさは
ごく軽く炙られ、甘みを感じます。
むしろ煮凝りが風味が凝縮され味わい深い。
◎ にえばな 赤身づけ、金目鯛のフライ、香の物、赤だし
にえばなは芯がある状態から徐々に落ち着いてくる過程がいい
赤身は鉄分を感じる上質なもので、すすみます。
◎ 甘味 蕎麦がきと甘みを抑えた豆
◎ 水菓子 イチゴ・オレンジ・リンゴムース・キウイ
冷酒は、而今・作・十四代・まつもとといただきました。まつもとは京都の酒ですが、奥が深くしっかりとしが味わいが特徴、ただ微発砲なのですっといただけます。料理の進みに合わせて冷酒もすこしずつ変えましたが、なかなかいいラインナップでした。
禍という料理店にとっては逆境のなかにあって、強い志をもって続けておられるお店には頭が下がる思いです。今回は早い時間のスタートでしたが、お客さんもはいっておりよかったなとかんじました。
宮坂さんは京都時代の経験を下地にご自身の料理を昇華なさっており、それを堪能できるこちらのお店には今後も通いたいと思います。