12回
2025/02 訪問
魅力あふれるお蕎麦やさん
連日寒い日がつづきますね、この日は学芸大学のやっ古さんへ、ちょうど半年ぶりの訪問です。マイレビ様の蕎麦の師匠が直前に訪問なさっておられたこともあり、今月のメニューの予習をして期待に胸が高鳴っていた次第です。カウンターにつき早速ビールを、ハートランドの軽くあっさりした口当たりがいいですね。
この日いただいたものですが、
◆ 三点もりあわせ(とりレバー山椒煮、なすとベビーホタテ、うどのきんぴら)
酒好きにはたまらない酒肴のラインナップ、山椒の香りがさわやかな身のしっかりしたレバー、春をかんじるうどのシャキシャキとした食感、ぴりりとした味付けが特徴のなすとベビーホタテ
◆ 牛肉とごぼう、せりの柳川
かつお出汁のかおりがよい柳川、牛のうまみ、ごぼうの滋味、さっぱりとしたせり、出汁の風味、卵ととじのまろやかさが一体となったセンスの良さをかんじる一品
◆ 野菜の天ぷら(タラの芽、まいたけ、つぼみ菜、メヒカリ)
タラの芽の春の香り、つぼみ菜のかすかな苦み、マイタケはおろしで滋味を、メヒカリはたんぱくなふんわりとした身がよい、軽く揚げられた天ぷらは食材の魅力を損なわない
◆ 白菜の漬物
柚子の香りがさわやか、塩と辛味のバランスのよい浅漬け
◆ イカの塩辛
身のしっかりしたスルメイカ、塩分は控え目でねっとりとした食感と独特の香りを楽しむ
◆ もりそば
伝統の水腰そば、蕎麦の師匠によれば店主の方なりの解釈や技法で再構成されている由であるが、凡人である小生にはそこまではわからない、しなやかな蕎麦ののど越しがよい、そばつゆは出汁とかえしのバランスが絶妙で蕎麦湯を注げばまったりとしたうまみがひろがる
◆ かけ蕎麦
本枯節のかおりが鮮烈、あたたかい蕎麦はそば粉をかんじることができ印象的、しなやかさは健在で出汁の味、かおり、深みが際立つ
ちょうど1年前にもおじゃましていましたが、蕎麦前はそのときとは異なるものが用意されており、店主の方の引き出しを多さをかんじます。この日は柳川に舌鼓を打ちましたし、素材の魅力を損なわない天ぷらも魅力的でした。あとはなんといっても蕎麦ですね、かけ蕎麦の出汁のうまさは鮮烈でした。
酒は、ビールの後、墨廼江(にごり)、黒龍といただきましたが、すすみすぎて困るくらい魅力的な
蕎麦前。お料理には女性らしい優しさをかんじる味付けがとてもいいですね。
この日もとてもいいい時間を過ごすことができ感謝です。
2025/02/15 更新
2024/08 訪問
真夏ののど越し
前回から半年ほど経ってしまいましたが、真夏の蕎麦前、蕎麦を楽しみにしておりました。お店のある学芸大学は、小生にはアクセスがいいわけでないのですが、お店に魅力をかんじており定期的な訪問です。
席につきさっそくビールを、こちらはハートランドの小瓶です(途中から冷酒、賀儀屋、大信州)。
本日いただいたものですが、
◆ いそ粒貝の煮びたし
かつお出汁がしっかりと染みたつぶ貝、コリコリとした食感もよく磯の香りがひろがる
◆ ゴーヤ、タコ、みょうがの梅和え
ゴーヤのさわやかな苦み、茗荷の夏の香り、タコのうまみを梅肉がまとめてくれる一品
◆ フグの煮凝り
フグで深みを増したかつお出汁の煮凝り、フグの皮の食感を楽しむ
◆ 夏野菜の天ぷらとひろうす
夏野菜は万願寺、かぼちゃ、茄子、軽く香りのよい油で揚げられた薄い衣、夏野菜の甘味、うまみが広がる
ひろうすはやわらかく、やさしい口あたり、包み込まれた具材の食感もよい
◆ もずく酢
しっかりした身のもずく、しょうが・茗荷とともにかつお出汁のきいた二杯酢でいただくが、食感・かおりがよい
◆ 焼き茄子
上質なかつおの削り節と生姜でいただく焼き茄子、身がしっかりと残る食感で夏の香りがひろがる
◆ 豚の麹醤油焼き
豚のもつ滋味を麹が引き立てる、かつお・昆布出汁のしみたツルレイシとともにいただく
◆ 水茄子
浅漬けされた水茄子、さっぱりとしつつも風味はしっかり
◆ もりそば
かつおだし、かえしのバランスが申し分ないつけ汁、のど越しは比類ない
◆ おろしそば
最後はそばの香りをおろしそばでたのしむ
こちらは蕎麦はもちろんですが、ご主人にお作りいただく蕎麦前がなんといっても出色。かつおや昆布の出汁をうまくつかい素材の魅力をひきだしてくれますが、味付けは控え目でやさしいところがいいですね。いただいていて飽きることはありません。今回は天ぷらもよかった、薄い衣でからりとあがった天ぷら、さらに腕をあげておられるようです。
真骨頂は水腰そば、とても高い加水率でうたれる蕎麦は扱いがむずかしいものと思いますが、ごく細く切りそろえられた蕎麦は角がたちほんとうにうつくしい。高い加水率のしなやかな蕎麦だからこその「のど越し」はこちらのお店の大いなる魅力です。石井名人の伝承者ですね。
これからも通い続けたいお店の一つです。
2024/08/17 更新
2024/02 訪問
魅力あふれる蕎麦前
今週は降雪やら寒波やらにさらされた一週間でした。こうしたときは温かみを感じる空間が広がるお店ですごしたくなります。久しぶりのやっ古さんにお邪魔することとしました、前回は夏でしたので今回は冬・早春の蕎麦前が楽しみです。
学大前から数分、古民家のような引き戸から店内へ。今回は奥のテーブル席へ案内され、早速ハートランドを。
◆ 菜の花とごぼうの白和え
シャキシャキとした菜の花は春の香り、ごぼうの滋味との対比を楽しむ
◎ 日高見 深みのある辛口
◆ 牡蠣とごぼうのオイル煮
牡蠣はじっくりと丁寧にオイル煮されうまみが凝縮、菜の花のおひたしがさっぱりとした口直し
◆ 桜海老・豆腐・九条葱の煮物
上質なかつお出汁が走りの桜海老と九条葱のうまみ・香りを引き出してくれる
◆ わさび漬け
つんと鼻に抜けるとてもフレッシュで甘味すらかんじるわさび漬、ささかまぼこが辛味を中和してくれる
◎ 仙禽(ご存じの方も多いと思いますが、オーガニック栽培の米・米と同じ場所水脈の仕込み水、生もと造りと自然派の日本酒、口当たりはやわらかくなめらかでバランスがとてもよい)
◆ 白魚・丸十・つぼみ菜の天ぷら
軽く揚げられた天ぷらは香りもよい、白魚は春のかおり、丸十は蜜のような甘味、つぼみ菜は苦み・滋味がとてもよい
◆ にしんの甘露煮
山椒のかおりが添えられた甘露煮、甘さはほどほどにして素材のうまみをひきだしている
◆ つけもの
白菜はゆずの香りがよい、たまり醤油漬けされたきゅうりはさっぱりと
◆ もりそば
細くうつくしく切りそろえられた水腰そば、加水率のたかい細打ちされた蕎麦ならではの軽快なのど越しと芳醇な蕎麦のかおりは水腰そばの真骨頂
こちらは蕎麦が出色なのはもちろんですが、蕎麦前がとても充実しています。この日のメニューも魅力的なものがならび、どれをいただくのかしばし悩むほど。引き出しの多さ、考案力・応用力・開発力には舌を巻いてしまいます。瞠目させられるのは、これだけのメニューをすべておひとりで対応されておられ、一品一品の質のたかいこと。ちなみに、メニューのかわいらしい文字は店主の直筆ですが、これも魅力的です。
この日もたいへん充実した時間を過ごすことができ感謝です。
2024/02/10 更新
2023/08 訪問
新境地
夏のやっ古さん、落ち着いた雰囲気の中、じっくりと杯を傾けうまい酒肴と夏蕎麦をいただきたく訪問。学芸大学から歩いて5分ほどですが、夕刻とはいえ、むっとするような熱気を逃れすずしい店内にはいるとほっとします。
カウンターにつき早速ハートランドを、ホップの爽やかな苦味と麦芽のコク、かるい飲み口はこの季節ぴったりですね。
さっそく蕎麦前から。
◆ 稚鮎のオイル煮
稚鮎よりもさらに小型、オイル煮でじっくりと鮎のうまみを引き出した一品
◆ 鯵の南蛮漬け
旬の鯵をさっと揚げ、出汁の効いた南蛮漬けは酢のさわやかさがありながらも深い味
◆ 河豚の煮凝り
蕎麦汁がベースとなった煮凝りは香りもよく上品、薬味の洋辛子にセンスを感じる
◆ 蕎麦鮨
酢がほんのりと効いた蕎麦鮨、切りそろえられた蕎麦が玉子・小海老・お揚げとともに海苔でまかれた一体感がよい
◆ 太刀魚と野菜の天ぷら
衣をうっすらとまとい揚げられた天ぷらは、油の切れもよくさっくりとした食感、敷紙に油はつかずさらに腕をあげられた印象
◆ 胡瓜の酢醤油
蕎麦をいただくまえにさっぱりと、元気な胡瓜のシャキシャキとした食感
◆ ゴーヤ・茗荷・イカの梅和え
ゴーヤのほんのりとした苦み、茗荷の香り・色合い・食感、イカの甘味を梅和えで味をととのえる、これもセンスを感じる一品
◆ もり
切り口が均一でうつくしい蕎麦、汁は深みがありつつも尖ったところがまるでなく出汁とかえしのバランスが絶妙、蕎麦を1/3ほど浸しいただくが、香りは時期的にやや落ちるものの、さっぱりとした味とあいまってのど越しは軽快
ここで蕎麦湯をいただくが、自然体な蕎麦湯で甘味すらかんじる汁をのばしていただく、出汁とかえしの香りと蕎麦の香りがとけあい、至福のうまさ
◆ 山かけ蕎麦
夏らしい一品、野趣に富んだ自然薯の濃厚な風味と、蕎麦の香りが絶妙、汁は上質な鰹のつよい深みを感じ最後の一滴までいただく
途中から冷酒に。この日は瀧自慢と風の森。瀧自慢は辛口ながら香りもよくなめらかな飲み口。風の森は気に入った銘柄の一つ、微発砲のきれいな酒、濃厚なうまみとはつらつとした切れがよい
この日はお店の都合でお客さんを絞っておられましたが、その分、店主の方とすこし話をすることができ、こうした至福の時間は何物にもかえがたい喜びです。実は昨年の夏も訪問していましたが、お料理はがらりと代わりつつ、一品一品の完成度が高く、店主の研究熱心さとセンスが随所にかんじられました。蕎麦そのものもそうですし、まろやかな汁にも店主の個性がかんじられ、一つ上のステージ、新境地にはいられた感さえあります。
今後もかよいつづけたいお店です。
2023/08/19 更新
2023/02 訪問
天才の系譜7
如月のやっ古さん、前回から半年ぶりですが、石井仁氏直伝の蕎麦をいただきたくなり訪問。こちらは蕎麦はもちろんのこと、蕎麦前にも魅力的なお料理が多く訪問は毎回たのしみです。学芸大学から数分あるき、古民家を思わせる入口の暖簾をくぐります。
寒い1日でしたが、店内はとても暖かく、カウンターにつきまずはハートランド 。
◆ 本日の盛り合わせ
煮物、茄子とふきのとうの炒め煮、太刀魚の粕漬、新じゃがの甘辛煮、玉子焼、こんにゃく煮
どれもとても丁寧に仕事された品々、菜の花や新じゃが、ふきのとうなど春を感じる、太刀魚の粕漬は魚のうま味が凝縮した一品
◆ しめ鯖炙り
そのままでもいいと思うが、皮目をほんのり炙ることで脂が溶け出し味が深まっている
◆ 天ぷらもりあわせ
きびなご、ふきのとう、つぼみな、まいたけ、丸十
とてもうまく水分を抜く揚げ方で薄くまとった衣が素材の味をひきだす、フォルムも美しいふきのとうが印象的、ほとんどを塩でいただくが、丸十はほんのりとした上品な天汁で
◆ きゅうりの酢醤油かけ
ぴりっと唐辛子の効いたさっぱりとした味付け
◆ わさび漬け
とてもよく効くわさび漬けだが、ささかまと一緒にいただくとうまみが増す
◆ もり
きれいに切りそろえられうつくしさを感じる
つゆは抽出されたかつお出汁とかえしのバランスが絶妙、まずはつゆをほとんどつけずにいただく、香り・食感・味とも文句なしだが、やはり喉越し、水腰そばの真骨頂
◆ きつねそば
あたたかいそばは悩んだ末に、たまには普段いただかないものにしようと選択、丁寧に取られた出汁のおかおりがつゆいっぱいに広がり、おもわず嘆息をもらすほど、煮含められたおあげは甘くやさしい
お酒ですが、こちらのお店はお酒のラインナップも魅力のひとつ、店主の気に入ったお酒が並びますが、今回は鶴齢(ゆきおとこ)と仙禽、どちらも甘味と酸味のバランスがいいですね。
総じてですが、蕎麦前は魅力的な品々がおおく選択に迷うほどですが、どれも素材をいかしたほんのりとした味付けにとても魅力を感じます。天ぷらの揚げ具合も申し分なく、さらに腕をあげられた印象です。もちろん、主役はそば、この日も石井さん直伝の水腰そばですが、しなやかさも出て、店主自らの持ち味もかんじられました。
次回も楽しみです。
茄子とふきのとうの炒め煮、太刀魚の粕漬、新じゃがの甘辛煮、玉子焼、こんにゃく煮
煮物(本日の盛り合わせの一品)
炙りしめ鯖
てんぷらもりあわせ(ふきのとうのフォルムがうつくしい)
きゅうりの酢醤油かけ
わさび漬け
もりそば
きつねそば
2023/02/11 更新
2022/08 訪問
天才の系譜6
夏のやっ古さんははじめて、昨年はコロナでいけませんでしたが、こちらは蕎麦前が楽しめるお店。夏の食材を楽しみに訪問。猛暑日だったこの日、まずはハートランド。一本では足りませんね、二本目に入り一息ついたところでメニューを眺めつつ、作戦を練ります。
◇ 本日の盛り合わせ
・ タコときゅうりの三杯酢
・ つるむらさきのおひたし
・ 茄子のきんぴら
・ かぼちゃの煮物
・ 切干大根とズッキーニの
きんぴら
・ イワシの梅煮
店主一人のオペレーションで
よくこれだけの種類を用意なさるなと
思いますが、酒飲みの琴線に触れる
一品料理にうなります
とくにイワシの梅煮がよかった
随所にひかれたかつお出汁が料理の
品の良さを演出
◇ 白瓜とみょうがの浅漬け
白瓜のしゃきしゃき感とみょうがの
さわやかさを、ぴりっとしたショウガが
ひきしめてくれます
◇ 稚鮎の唐揚げ
ミズゴケの香り・苦味がとてもよい
◇ そばみそ
ほんのり香る柚子が味に深みをあたえる
◇ 水茄子の漬け物
フルーツのような風味、昆布でしっかり感を
◇ もりそば
◇ おろしそば
蕎麦前とともに冷酒へ、ゆきの美人と風の森。
今回は夏の蕎麦前を楽しみにうかがいましたが、期待以上でした。本日の盛り合わせはこちらのお店の眼目と思いますが、師匠の天才蕎麦職人石井仁氏のもとで修業なさったセンスの良さ・丁寧な仕事が光ります。
水腰そばは、夏蕎麦特有の力強く若々しい味わいで、真骨頂である究極ののど越しを存分に楽しみます。
次は新蕎麦かな、次回の訪問が楽しみです。
そばみそ
白瓜とみょうがの浅漬け
タコときゅうりの三杯酢
つるむらさきのおひたし
茄子のきんぴら・かぼちゃの煮物・切干大根とズッキーニのきんぴら・イワシの梅煮
稚鮎のから揚げ
水茄子の漬物
もりそば
おろしそば
2022/08/11 更新
2022/05 訪問
天才の系譜5
本日は早めに仕事を切り上げて終了間近のトーハクへ、空也上人の柔らかな恍惚とした表情、解脱し究極の境地へはいられた方のみが成しえるであろう表情に圧倒されました。
その後夕闇せまった上野から学大へ、都心の東から西へと結構な移動ですので、少し遅い時間の入店となりました。
奥のテーブル席にすわり、さっそくハートランドを。汗ばむくらいの気候の中を歩き回ったせいか、ハートランドの軽さがとてもよい。この時期に天才蕎麦職人 石井仁氏系譜のやっ古さんを訪問するのは初めてですが、初夏のメニューを眺め作戦を練ります。この季節らしい品々に心も踊りますが、本日いただいたのは、
◇ おひたし(蕪・ウルイ・毛ガニ)
上品なカツオ出汁のジュレととともに
さっぱりといただく
◇ 花わさびとホタテ
つんとくる花わさびが、どこまでも甘い
ホタテをひきたてます
◇ ヤリイカの印籠
豆腐・野菜を詰めたヤリイカの印籠、
とても手の込んだ一品ですが、
濃い目のジュレとよく合う
◇ カツオたたき
のぼりカツオのさわやかな脂と香り
◇ 山菜の天ぷら
軽い揚げ具合で、タラの芽・ウド・
タケノコの風味がとてもよい
◇ つけもの
ワサビ菜・蕗・大根・みょうが
◇ もり蕎麦
香り・のど越し・歯ごたえが比類ない
◇ おろしそば
辛味大根と水腰そば、これ以上の
くみあわせはない
こちらでは一品一品手の込んだ蕎麦前がとても楽しみですが、佳作でお酒がすすみます。ヤリイカの印籠は新鮮さを生かした特徴ある一品ですし、カツオのたたきはきれいな脂・香り。
そして何といっても水腰そば、のど越し・香り・歯ごたえが比類なく、天才蕎麦職人 石井仁氏の匠の技が確実に伝承されているのは、ほんとうにうれしいものです。
冷酒は、風の森・みむろ杉・蒼空といただきました、ラインナップもいいですね。
初夏のやっ古さん、今回も大満足でした。
2022/05/07 更新
2022/01 訪問
天才の系譜4
前回訪問は秋でしたが、季節も変わり、冬の味覚をいただきたく訪問。年越し蕎麦をスキップしたこともあり、今回の訪問を楽しみにしておりました。蕎麦は定期的に訪問していたところもありますが、いまは天才蕎麦職人 石井仁氏 の流れを組むこちらのお店です。こちらのご主人の腕が、訪問する都度上がっていることを実感するのも楽しみの一つです。
まずはビール、ハートランドを飲みつつメニューを眺めます。これまでコースでしたが、今回はアラカルト。
蕎麦前は冷酒(手取川・鄙願)とともにいただきます。
◇ 前菜盛り合わせ(にしん、鴨、太刀魚、ポテサラ)
◇ 寒ブリのヘシコ
◇ しめ鯖
◇ 天ぷら盛り合,わせ(太刀魚、インゲン、ヤーコン、茄子、舞茸)
◇ もりそば
◇ おろしそば
今回とくに印象に残ったのは、へしこ(塩辛さの中にも寒ブリ特有のうまみが凝縮)としめ鯖(ごく新鮮な鯖をほんの少しの酢じめ、身の美しさとともに軽くしめられた鯖のさわやかさ)、そして天ぷら(太白油で丁寧にあげられ素材の良さが引き出されている)。蕎麦前は、かつお出汁のうまみや西京味噌の隠し味など店主のセンスと技量が随所に感じられうれしくなりました。
ただし、真骨頂は水腰そば。かおり・歯ごたえとともにのど越しが比類なし。とくにおろしそばは、店主の師匠でもある石井仁氏のお店でもたいへん楽しませていただいた一品。
今回もたいへん満足した訪問となりました。
2022/01/08 更新
2021/10 訪問
天才の系譜3
前回から半年以上たってしまいました。
こちらは石井仁氏系譜のお店として定期的に伺いたいお店ですが、蕎麦前に酒なしは想像できず。禁酒令もようやく解除され、喜び勇んでの訪問です。
学芸大学駅前の喧騒を抜けたあたりにひっそりとお店はありますが、古民家風の趣のある店構えです。
まずはビール、ハートランドをいただきました。
今回もコースでしたが、順番に、
〇 冷やしトマトそば
鰹出汁のよくきいた汁、トマトとよく合うんですね、なかなかさわやかな一品
〇 前菜
湯葉、鳥ハム、子持鮎、鰹フライ
湯葉は生そのものでとても濃厚、出汁のきいたジュレが味を深めています
鳥ハムはささみのたんぱくさを生かした一品
子持鮎は出汁でうまく炊いており、鮎の芳香を引き出しています
鰹フライは鰹のうまみが凝縮
ここで冷酒を、最初は仙禽 ひやおろし あかとんぼ
〇 鰹のたたき
戻り鰹の脂ののった深い味、酒が進みます
〇 九条ネギ、桜エビの湯豆腐
九条ネギの歯ごたえ、桜エビの香りが印象的
〇 てんぷら
かぼちゃ、おくら、ししとう、まいたけ、四方竹(マコモ竹)
野菜そのもの味・素材をよく引き出した揚げかた
〇 水腰そば
香り、キレ、のど越しと比類ない、さらに腕があがっているように感じました
〇 にしんそば
水腰そばの香りを楽しみつつ、にしんのうまみ・甘味が鰹出汁のきいたつゆにあふれ出ています、完成度は高い
〇 デザート
あずき・バニラアイス
あずきは甘すぎず上手に炊いてあります、バニラの甘味と調和
コースは以上ですが、全体としてよくまとまっていて、蕎麦前としてとても満足できるものでした。水腰蕎麦は、新蕎麦には少し早いですが、真骨頂のテクスチャー・喉越しは比類ない、店主はさらに腕をあげたように感じました。
次回の訪問も楽しみです。
2021/10/16 更新
2021/02 訪問
天才の系譜2
前回から3か月ぶりの訪問です、前回は初めてのほうもんでしたが、この上なく好印象でしたので再訪を楽しみにしておりました。学芸大学駅前のにぎやかな一角を歩きつつほんじつの夕餉に思いを馳せます。
店内はそれほどひろくはないですが、店主の目が行き届きやすいだろうとかんじています。
今回は奥のテーブル席へ案内いただきましたが、さっそくビールを注文。
前回同様ですが、お店のエッセンスを満喫したくコースでお願いしました。
〇 おひたし(かぶ、菜の花、アスパラ)
かつおだしのあんかけがよく絡みます、かぶは甘く、菜の花のほんの少しの苦みに
春を感じます
〇 季節の盛り合わせ(グラタン、太刀魚のフライ(出汁のジュレとタルタル)、
白麹漬けポークの炙り、ブリのへしこ)
グラタンにはふきのとう・タラの芽、太刀魚のフライはカリッとしておりかつおだしの
ジュレ・控えめなタルタルが引き立ててくれます、白麹漬けのポークは個性がくっきり、
へしこは少し塩味が強めですがお酒をちびちびやるにはうってつけ
〇 玉子焼き
出汁の主張はそれほどつよくなく、むしろ素材としての卵をたのしみます
〇 十割そばのそば寿司
玉子・きゅうり・エビ・油揚げといった具材が凝縮され一体感を感じます
〇 太刀魚・レンコン・ししとうの天ぷら
軽い油で揚げられており、脂ののったかおりのいい太刀魚が際立ちます
〇 水腰そば
水腰そばはとても高いレベル、石井さんをほうふつさせます
つゆはかえしが控えめで主張せず
〇 あたたかいそば
本日は白みそ仕立ての出汁に牡蠣、牡蠣の地味深さを楽しみつつ
そばはそば粉を感じる深い味わい
〇 デザート いちご
水腰そばの真骨頂はのど越しと感じていますが、丁寧にうたれたしなやかな蕎麦はそうした特徴を具現しており、今回も2種類の蕎麦を堪能しました。お料理の品々も随所に工夫が感じられ店主のセンスの良さ・技量の高さを垣間見ることができました。
石井さんの下で厳しい修行だったと思いますが、いまはご自身の料理へと昇華され、とても一体感のあるコース料理でした。
お酒のほうは鄙願と風の森、鄙願は大吟醸ですが辛口でしっかり・料理の邪魔をしません、一方の風の森は微発砲ですがきれいな香り・ボディはありますが微発砲で飲みやすい。
今回もとても満足いく訪問でしたが、こちらには季節ごとにお邪魔したいと思っています。
2021/02/13 更新
2020/11 訪問
天才の系譜
そばといえば以前日本橋にあった天才そば職人石井仁氏の「仁行」によく通いましたが、天才は同時に流浪のそば職人でもあり、ほどなく閉店。こちらのお店のご主人は石井仁氏の下、古拙・仁行と4年間修行されたとのこと。仁行にいらっしゃった頃は、重なった時期に訪問していたと思います。ということで、今回の訪問はとても楽しみにしておりました。
学芸大学から数分のしずかな一角、店構えもなかなか雰囲気があります。
早速ビールをオーダー、今回はコースでいただきました。
手羽のスープ
生姜がよく効いておりおり体が温まります。
前菜
おひたし・わかさぎの南蛮づけ・牛時雨・さといも・アケビみそ和え・鯖のフライ
一品一品が手が込んでおり、丁寧に作られています。
そば寿司
十割そばの風味を楽しみながらいただきます。
ひろうす
しっかりと甘みを含んでおり美味しさが増しています。
水腰そば
細切りのそばが美しく供せられますが、まぎれもない水腰そば、天才の系譜を実感。
温かいかけそば
そばの香りを楽しみます。
デザート
この日はコースとしたことで、こちらのお店のエッセンスを堪能しました。お料理の品々もクオリティが高く酒が進みましたが、やはり水腰そばが真骨頂です。味・香り・テクスチャー・のど越しと比類のないレベルの高さでした。
酒は播州一献(兵庫、深みのある辛口)・風の森(奈良、名前のごとくさわやかな微発泡)をいただきました、お料理とともによく進みました。
久しぶりにいいお店に出会うことができ、たいへん満足した夜でした。
2020/11/07 更新
この日は出張帰りのサラリーマン、北陸から東京にもどりそのままやっ古さんへ。疲労感ありますが、それよりもうまい蕎麦をいただく期待感の方が勝っています。
学芸大学へ移動、駅からは数分です。
カウンターにつき早速ビールを、こちらではハートランドですが、グリーンのボトルが涼しげでいいですね。
本日いただいたものですが、
◆ 八種の野菜の和風ラタトゥイユ
たまねぎ、トマト、インゲン、茄子、南瓜、人参など8種類のお野菜、和風出汁の味付けは、やさしく、お野菜の甘味がひろがる
◆ 河豚の煮凝り
かつお出汁がくっきりししながらも、上品な甘みが見事、河豚出汁で深みのある味、皮はどこまでもやわらかい
◆ 稚鮎の唐揚げ
この時期にあるのがうれしい、今年は稚鮎をいただく機会がなかったな、と思い出す、清らかな香り、ほんのりとした苦み、そして川魚の甘味が印象的
◆ 牛肉とレンコン
牛肉の滋味、深みがしっかりと広がりつつ、ほんのりとした山椒のかおりと葱がさわやかな薬味、レンコンの食感もよい、酒がすすむ
◆ 煮豚
やわらかく煮込まれた豚はやはりやさしい味付け、豚の甘み、うまみがじっくりとひろがる、つるむらさき、おくらなどの夏野菜もたっぷりと出汁を吸い、野菜の味をたのしむ
◆ 夏野菜と太刀魚のてんぷら
夏野菜は茄子、レンコン、ゴーヤ、ゴーヤの夏らしい苦み、レンコンはシャキシャキとした食感と特有の甘味、茄子は滋味とふっくらとした繊維質のやわらかさ、しっかりとした身の太刀魚の白身魚の上品な甘み、うまみが口中にひろがる
◆ 水茄子ときゅうりのつけもの
水茄子は糠のほんのりとした香りがひろがり食感もとてもよい、きゅうりはたまり漬け、ピリリとしたアクセントもよい
◆ もりそば
この日のハイライト、切り口のそろったうつくしい水腰そば、みずみずしさ、しなやかさな腰、そして比類のないのど越し、蕎麦は1/3ほどつけていただくが香りもとてもよい、つけ汁は出汁とかえしのやわらかでやさしい香りがひろがる
◆ おろしそば
シャキッとした蕎麦の食感、大根の辛味、そして上質なかつおの削り節のイノシン酸のうまみ、三位一体となった調和のとれたうまみが口中にひろがり、のど越しを楽しむ
こちらには何度もかよっていますが、あらためて気づいたこととして、どのお料理も味付けがとてもやさしく、そして、やわらかい。さりとて、素材本来の味をしっかりとして引き出しており、いただいていて、温かく、穏やかな気持ちとなります。天ぷらはうすい衣で揚げられており、腕も確かですね。なによりも水腰蕎麦がすばらしい、加水率が高く、扱いが難しいとおもいますが、見事に切りそろえられた切り口、そして何よりも比類のないしなやかさ。店主の方の個性、独自性がしっかりと蕎麦に表現されているな、と感じています。
また、蕎麦前は季節季節の旬の食材を丁寧に手間暇をかけておつくりいただいており、どれをいただいても店主の方の思いが伝わってくるようにかんじています。
これからも通い続けたいお蕎麦屋さんです。