ged02710さんが投稿した南洋叔叔肉骨茶(東京/新大久保)の口コミ詳細

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グルメ吟遊詩人~摩天楼一郎のレストランガイド

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南洋叔叔肉骨茶新大久保、大久保、西武新宿/東南アジア料理

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  • 夜の点数:4.3

      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2026/01 訪問

  • 夜の点数:4.3

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-

薬喰(くすりぐい) 骨に残りし 寒(かん)の午後

新大久保、雑居ビルの深淵で「肉の骨」を啜る午後

平日の午後3時、新大久保。この街は、もはや日本のパスポートでは入れない特区のような趣がある。行き交う人々の8割以上が東南アジア系の若者たちで、日本語はかろうじて標識に残るのみ。一棟がまるごと向こう側の店、ってのが軒を連ね、アジアの熱気とスパイスの匂いに占拠されている。

改札から徒歩30秒。店内に入ると、先客はわずか1名。午後の静謐がそこにはあった。考えてみれば、日本人は「集団の調和」という名の見えない糸で縛られ、一斉に入店し、一斉に咀嚼し、一斉に店を出るというマスゲームのような「一斉行動」の群れをなす。

だが、国外に出れば事情が一変する。彼らは群れないのではない。「個」を尊重した結果、自然とバラバラになるのだ。そんなことを思い出しながら、私はこの貸切状態の贅沢を噛み締めることにした。


✅実食レポート
✨スペアリブ肉骨茶セット 1,580円 + 豚ガツトッピング 300円 + 生ビール(中) 450円

まずはビール450円。この新大久保という「異界」の物価は、時に驚くほど良心的だ。NYならチップだけで消えてしまう額である。

運ばれてきたクレイポットは、グラグラと煮え立っている。その表面を、青々としたレタスがぴっちりと蓋をしている。初見の私は驚いた。だが、これこそがマレーシア・クラン(Klang)の矜持ということらしい。レタスの蓋は蒸気を閉じ込め、スープの香りを肉の深部へと押し戻す、極めて合理的な「装置」なのだという。レタスの蓋をかき分けると、中から「肉骨」、すなわち骨付きスペアリブが3本と、山盛りの「豚ガツ」堂々と姿を現した。

ここで少し、この料理の出自を反芻してみよう。

19世紀、マレー半島の港で働いていた苦力(労働者)たちが、安く手に入る骨の周りの肉を、故郷の漢方で煮込んだのが始まり。つまりこれは「生きるためのスープ」なのだ。

「茶」と名が付くが、茶葉は入っていない。当時の店主の名前に由来するという説が有力だが、要は「スタミナドリンク」の「鍋」バージョンと思えばいい。

食べ方にはコツがある。

客が調味料をコネコネと調合する「錬金術」を楽しむ店も多いが、ここ違う。店主が「これが黄金比だ」とばかりに調合済みのタレを差し出してくる。我々はただ、その完成された意思に従い、肉をダイブさせればいい。肉骨初心者にはこの方がありがたい。

セットに付いてくる油条(ヨウティアオ)という揚げパンは、迷わずスープの深淵に沈める。スープを限界まで吸い込んだそれは、もはやパンではなく「旨味のスポンジ」となる。

さらに、鶏油などで香り付けされた油飯(ライス)。これに最後の一滴までスープをぶっかけるのが、この劇の正しい終演(フィナーレ)である。

完食。一滴も残さず平らげた。満足である。肉骨茶の具材は実にたくさんある。人気の「豚バラ肉骨茶」を楽しみに、再訪したい。


✅総評
現在、東京で「肉骨茶」を供する店は、専門店からアジア料理店まで含めても、せいぜい30店舗程度だろうか。しかもその多くは、シンガポール式の胡椒が効いた「白バク」だ。

しかし、この『南洋叔叔肉骨茶』が守り抜くのは、漢方のコクが五臓六腑に染み渡るマレーシア式の「黒バク」である。

NY帰りの私には、この「異質なもの」が混ざり合い、しかし互いに干渉しない静かな空間が、たまらなく愛おしい。

日本の同調圧力に息が詰まったら、新大久保の雑踏に酔い、このビルへ駆け込むといい。そこには、骨と、肉と、魂を浄化する黒いスープが待っている。


✍️食後の一句
薬喰(くすりぐい) 骨に残りし 寒(かん)の午後

19世紀にマレーシアの港町へ渡った中国の労働者たちが、安価な骨付き肉を故郷の生薬で煮込み、過酷な労働に耐える「飲む点滴」としたのがバクテーの始まりです。

この歴史は、かつての日本で冬の滋養強壮として密かに肉を食した「薬喰」の文化に驚くほど重なります。

この黒いスープと対峙すれば、あなたもきっと異国の香気に神秘を見出しつつ、骨に齧り付く野生味に情趣を感じ取るに違いありません。

命を繋ぐ「薬」として昇華させた、名もなき労働者たちの知恵。その重層的な歴史を、熱狂的なクレイポットの湯気の中に透かし見る……そんな風景を想像して頂ければ幸いです。


✍️攻略メモ
名物:スペアリブ肉骨茶
人気:15時頃は空席が多い自分時間
立地:新大久保駅から徒歩約2分/多国籍ビル地下
客層:東南アジア系の方も多く現地感溢れる
提供:クレイポットは激熱で供されるので注意
映え:レタスが蓋をするクレイポットの迫力
注文:メニュー表から口頭注文
混雑:ランチタイムは混雑が予想される
注意:漢方の香りが服に移るかも
動線:階段を下るとどんどんマレーシアに近づく


☝️良い点
本場クランの味を忠実に再現した濃厚な黒スープ
生ビールが450円という非常に良心的な価格設定
セットの油飯と油条のバランスが完璧


⚠️気になる点
初めての人には漢方の香りが薬っぽく感じるかも
地下に続くディープな入口が入りにくい雰囲気
混雑時は提供まで少し時間がかかる場合がある


☺️タグ遊び
#新大久保マレーシア飯
#南洋叔叔肉骨茶の衝撃
#クラン式黒バクテー
#レタスの蓋を剥ぐ午後
#骨付き肉のスタミナスープ
#摩天楼一郎味覚詩行

2026/02/14 更新

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