2回
2014/02 訪問
支那そば
高円寺『はやしまる』のレビューのときにも書いたのだが、僕は『たんたん亭』系列が好きだ。
この系列店で初めて食べたのは浜田山『たんたん亭』だ。つまりこの系列の総本山。大学入りたての時期で、まだまだラーメン通としても未熟だったが、高校の友人と予備校時代の友人と3人で訪れて感動したのを覚えている。
その『たんたん亭』創業者である石原氏が十数年前に新たに店を構えたのがここ『いしはら』。この日は朝からここに行くと決めていた。気合い入りまくり状態で仕事が手に付かないほどだった。定時で上がり職場の友人と合流して西荻窪に向かう。
鶏や豚、魚介に昆布、色々な旨味がどれも強く主張することもなく共存したスープ。至って素朴な味わいでありながら自然と体に染み込んでいくような美味さがある。
醤油の風味は丸みを帯びた優しさが感じられる。これはもしかしたら記憶の彼方にある『たんたん亭』の支那そばよりも優しい気がするが、どうだろう、昔の記憶で定かではない。
加水率の高い中細の麺は、啜ったときにその表面の柔らかさから優しい口当たりの印象を受けるが、噛んでみると程よいコシがあり、ただただ柔らかい麺とは違う。
店内はかなり狭い。この店内と外観だけで石原氏という人がどんな人か少しだけ理解できた気がする。客との近い距離、温かみのある食事と会話で心と体が感じる喜び、そんな人間臭い食卓。いつもひっそりここで客を待っている。そんな雰囲気だ。
何か畏れ多いがこっそりと「ええ店」に認定させてもらいます。
料理、あるいは飲食業という分野、あるいは食事という普遍的なテーマ、いずれにおいてもこの店から何か哲学的な1つの答えが得られそうな気さえする。この石原氏は偉大な人だなと素直に思う。
2020/12/10 更新
西荻窪『RAGE』に向かう。何やら列ばないで食べられたという口コミ情報を多数確認。店のツイッターにもある特定のメニューは終わったようだが「本日は21時まで、、、」と書いてある。これはもしや、、、と期待して向かう。駅北口のコインパーキングに車を止め早歩きで向かい19時23分到着したがスープ切れ、、、最後尾の人が気まずそうにしている。
というわけで『いしはら』へ向かう。車を止めたそばだ。一応ことわりを入れておくが、『いしはら』は決して消去法で選ぶべき店ではない。実際に僕は浜田山『たんたん亭』のファンである。だが新規開拓を優先しているという話。見苦しいがご理解いただきたい。
19時33分到着した。やっていてくれて良かった。男女2人の客が帰り男性客1人が入ったところ。7席のL字カウンターと、厨房には店主と女性スタッフの2人。どちらの方も厨房で腕を振るっている。
19時35分に『ワンタン麺(肉)』を注文した。寡黙な店主、この方はもはやレジェンドだ。威厳が感じられる。
僕の隣の男性客の麺が上がる。それにもやし炒めを乗せる。これは「もやし炒めスープそば」だ。
厨房を覗く(というか普通に座っていても見える)。まずネギが丼に入り、その後カエシがそっと注がれる。そして麺を鍋に落として茹で始める。丼にスープが注がれる。麺を上げる。平ザルで湯を切る。テボは使わない。
着丼は19時45分。トッピングはチャーシュー、メンマ、海苔、刻まれたネギ。
節系の香りが良い。この香りと器の感じ(大きさは違えど)『べんてん』の「ラーメン」を一瞬思い浮かべた。もちろん麺も味も違う別物だが。一口目、魚介の旨味と心地良い香り、そして昆布の出汁も効いている。優しい丸い味わい。
啜ると強く節系が香る中細ストレート麺。加水率は低くはないが、コシと柔らかさが同居した麺。ジューシーなワンタンの味わいは全体に比較して濃いめなので、このラーメンの主役となっている。美味い。
今回「ワンタン麺(肉)」を注文したわけだが、実は初めて。それまで『たんたん亭』系列全ての店舗では常にデフォルトの「支那そば」を注文していた。が、やはりこの系列の十八番でもあるワンタン麺を食べなくちゃね。
チャーシューは歯応えの良いもので、たまたま脂の多いところだったが、噛むと味わい深くじわじわ味が出てくる。
この『いしはら』はラーメンだけではない。「活つぶ貝刺」に「クジラ竜田揚」などお酒を飲む店でもある。「麻婆豆腐」まである。いつかここで友人と一杯やりに来よう。なんて贅沢な話なんだ。