3回
2019/09 訪問
味の深さ
ただでさえ三連休前の金曜日ともなると気分は浮かれる。そして午後にあまり重いミーティングがないとなると、もう昼を過ぎたら気分は揚がる一方。こんな日はお昼どきにミーティングが入っていたって気にしない。14時過ぎになれば自由の身になれるのだから。
14時過ぎて外に出る。こんなときに食べたいものはLANDのカレーだ。多少待ったって構いやしない。現にお店につくと自分の前には3人並んでいる。そこへお店の人がメニューをもって注文をとりにやってくる。ポークカレーは終わりましたが他の物ならまだありますと。ポークは試してみたいと思っていたのでいささか残念だったが、ここはチキンカレーにしておこう。どうやらこのチキンも自分のがラス1だったらしく、後ろの人には行き渡らなかったようだ。ドラフト1位は外したが、外れ1位が当たりだったみたいな感じか。
待つこと7-8分、チキンカレーにグリーンチリを少々添えられたものが提供された。この日も変わらず脱帽。スパイスの調合が本当にきちんと味の深みを出すところまで計算されているのだろう。本当に「深い」というのが自分にとってはピッタリ来ている。舌の表面でピリピリビリビリさせるスパイスカレーは多いものの、バランスがとれていないがゆえに舌の表面だけで遊んで終わることが多い。ここのカレーは舌だけで感じるだけでなく、もっとその先に味を伝えてくるのだ。
店内で働かれている方の数も増えたのだろうか。提供も回転も心なしか早くなった気がする。こちらのカレーを食べられる機会が増えたということか。それはありがたい。ごちそう様でした
2019/09/15 更新
2019/02 訪問
目黒最強カレーを食べるまで
インドへ向けた修行の身としてこの店を外すわけにはいかない。とはいえ人気店。攻略するには知恵と運が必要だ。大袈裟な話だが。
昼前には行列が伸びて一階のラーメン屋の客足を塞ぐほど。この時間帯に行ってはいけない。13時以降なら多少は客足も鈍るはず。できれば14時近くまで粘りたい。
天気も大事だ。雨の日を狙いたい。二階にあるこの店。並ぶ羽目になると外階段は雨にうたれる。自ずと雨の日の方が客足少ないように感じる。万が一を考えて雨合羽を持参するのもよいだろう。
そしてほぼカウンターしかない店内を想定するなら一人で行きたい。人気店のカレーだ。お喋りなどせずにしっかりと味うのだ。またその方がすんなり空きスペースに入りやすい。
これだけ入念に店に入る準備が整えば後は食べるだけだ。辛さ控え目のチキンカレーが好み。スパイスを何種類も調合して作ったカレーは多いが、その調合が美味さに直結しているケースは稀なのではないか。LANDのカレーは味がピタッと決まっているところに凄みがある。寄り道をしている味が無いとでも言うか。全てのスパイスが美味しさを作り出すというベクトルに向けて機能している。中に入っているチキンもホロホロとスプーンで押すだけでほぐして食べられるのだ。
目黒に数あるカレーの中でも最強だと思われる。やはり入念な準備はかかせないのだ。
ごちそう様でした。
2019/03/03 更新
春らしい陽気がようやく出てきた。こんな陽気なのに街の雰囲気はどうも曇ったままだ。変なウィルスが世の中に蔓延して、みんな思うように動くことができない。人と接触を避けられるのは僕にとってはありがたいのだけど、来週からは全員在宅勤務になる。会社に来て昼休みに食べ歩くことが、まるで大罪を犯したように見られるなんてひどい世の中だと思わないかい?君たちのことがとても心配だからだ、と偉い人は言うけれど、なんてことは無い、やつらは正しそうなことを言っている自分に酔っているだけなんだよ。
もうしばらく目黒には来られないや、と思うといてもたっても居られなくなった。そんなケチな判断を聞いた後、僕は思わず会社を飛び出してLANDの店の前に立っていた。だって、そうだろう?もう街中で自由にごはんを食べられないとしたら何を選択するかなんて明白じゃないか。
時間が遅かったせいか、選択肢はポークカレーかエビとアボカドのカレーだけだった。このお店の鮮烈な印象を残しておきたい僕は辛さの強いポークカレーを迷わず選んだ。もちろんトッピングの温泉卵とチーズは忘れてはいけない。
一つの芸術作品が生み出されるようにカレーが作られていく様を僕はカウンター越しに眺めるのだった。ごはんの盛り付けをし、カレーをよそい、スパイスをまんべんなく散りばめ、ごはんの形状を整えた上で温泉卵を落とす。そして仕上げにチーズをかける。このプロセスを目の当たりにすると、僕の食欲はカレーが来るタイミングでは臨界点に達するのだった。
スパイスの絶妙な混ざり具合、それが五感を深いところで刺激してくる。スプーンを口に運ぶ動作はどんなにめんどくさがりの僕でも喜びの所作でしかない。次第にポークカレーは身体の内側に熱をもたらしてくる。それをまた温泉卵とチーズが包み込むようにまろやかにしてくれる。このカレーが食べられることは喜びでしかない。
完食して思わず涙が頬を伝うのが自分でもわかった。
泣いたのは本当に久し振りだった。
でもね、いいかい、来週からの在宅勤務に絶望して泣いたわけじゃないんだ。
僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。
僕は・LANDのカレーが・好きだ。
あと10年も経って、食べログや僕のこのくだらない投稿や、
そして僕のことを覚えていてくれたら、僕のいま言ったことも思い出してくれ。
ごちそうさまでした。