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夜の点数:4.0
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 4.0
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.0
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|酒・ドリンク 3.5
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[ 料理・味4.0
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| サービス4.0
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| 雰囲気4.0
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| CP4.0
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| 酒・ドリンク3.5 ]
草津・真咲雄にて発酵するスープ、呼び戻される僕
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2025/05/01 更新
車のハンドルを握りながら、僕はラーメンの亡霊に取り憑かれていた。
今日はとんこつ――しかも「発酵系呼び戻しスープ」なる怪しげな言葉を掲げた店があるという。
その名も「真咲雄」。まさお。
まるで柔道部主将のような響きだ。
到着したのは草津市穴村町。
舗装が甘いアスファルトの上に車を滑り込ませると、店の前にちょうど3台分の駐車スペース。
僕のライトバンはぴったり収まった。
ふと入口のガラスを見ると「裏にも10台駐車できます」と地図が貼ってある。
どこまでも駐車場に優しい。
それだけでもう、良い人に出会った気分だった。
店内はコンパクトで、カウンター5席にテーブルが2つ。
ラーメン屋らしい潔さで、味に集中しろという設計思想を感じる。
席に座ると、メニューを見ずに注文する。
「のうとん全部ちょいのせ、1050円で」。
"のうとん"とは“濃厚とんこつ”の略らしい。
ちなみに"ちょいのせ"は全部の具がちょっとずつ乗ってくる。
大盛りは出せないけど、欲は見せろという店側の教育的メッセージである。
厨房の奥ではスープが静かに発酵している気配がする。
火を入れ、寝かせ、また呼び戻し…その手間たるや、豚骨界のリサイクル哲学である。
「背脂もラードも使いません」なんて書いてあるが、つまり豚骨をなだめすかし、まるごと絞り尽くすということだ。
自然派というより、豚骨との対話だ。
シェフはおそらく骨と語り合える特殊技能を持っているに違いない。
そして、来た。
丼の中には、もはや粘度さえ感じさせるとんこつスープ。
そこに極細麺が沈み、チャーシュー、キクラゲ、味玉、青ネギと、ちょっとずつ乗った「全員集合」が控えめに自己主張している。
麺をすすると、ほどよい小麦の香りとスープの旨味が一斉に舌に突撃してきた。
加水率が低いせいか、噛むと小麦が「俺はここにいるぞ」と語りかけてくる。
スープは濃厚だが、後味はなぜかすっきりしている。
まるで飲み干していい理由が用意されたスープだ。
そして僕はその策略に乗り、気づけば器の底が見えていた。
少しざらっとした豚骨の残滓が、そこに静かに沈んでいた。
ああ、これが「真咲雄」の生き様か…。
ふと顔を上げると、隣には小学生の男の子とラーメンを啜る母親。
向こうのテーブルでは作業着のまま黙々と食べる中年の男。
皆、スープに集中し、無言で麺と向き合っている。
誰ひとりスマホも見ない。
ここでは「食う」ことだけが正義なのだ。
食後、外に出ると風が少し冷たくなっていた。
けれど僕の内臓はぽかぽかに発酵している。
また来よう、まさお。また呼び戻してくれ。