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昼の点数:4.0
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¥2,000~¥2,999 / 1人
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料理・味 4.0
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.0
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|酒・ドリンク 4.0
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[ 料理・味4.0
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| サービス4.0
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新世界で串かつに刺さる僕
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2025/09/20 更新
――僕と彼女は、新世界にやってきた。
まるで探検隊だ。だが目当てはジャングルの秘宝でもなく、地底湖の怪魚でもない。
「元祖串かつ だるま 新世界総本店」である。串かつである。
三連休の人波はまるで通天閣の麓にできた人間の万里の長城。
僕らはその末端に取り込まれ、律儀に一時間半、行列に立ち尽くした。
日傘がなければ、僕の顔は大阪のたこ焼きと同じ焼き色になっていただろう。
彼女は「これが修行よ」と笑った。
串かつを食うのに修行がいるのか。
ようやく店内に吸い込まれ、僕らは「新世界セット」を頼んだ。
1760円。どて焼きと串九本の堂々たる布陣である。
まるで戦国大名が九人の槍衆を従えているようだ。
まずはどて焼き。
牛すじが甘辛い味噌で煮込まれ、舌の上でふわりと溶ける。
僕は思わず「殿、これは名将の采配にございます」と口走った。
彼女はすかさず「下々はありがたく頂戴しなさい」と、殿様口調で返してくる。
ふたりの芝居はエアコンの風より涼しかった。
串の中では、もちを塩で食べた瞬間、僕の心は跳ねた。
油にまみれた餅が、塩ひとつで清少納言のように気品を帯びるのだ。
エビは逆にソースをまとって海老蔵並みの迫力で襲いかかる。
衣のさくさくが、口の中で万博の花火のように弾けた。
「やっぱり、どて焼きが一番ね」
彼女は最後に断言した。僕も黙ってうなずく。
串かつの軍勢も餅もエビも、すべてはどて焼きの影武者だったのかもしれない。
外に出ると、まだ長蛇の列が続いていた。
僕らは日傘をくるりと回し、行列の人々に「串かつ修行は報われますよ」と心の中でエールを送った。
こうして僕と彼女の新世界探訪は幕を閉じた。
胃袋には油の輝き、心には大阪人のしたたかで陽気な魂が、しっかりと刺さっていた。
――串かつは、人生である。いや、人生が、串かつなのだ。