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昼の点数：4.0
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～￥999 / 1人
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料理・味 4.5
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|サービス 4.0
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.5
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|酒・ドリンク 4.0
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［ 料理・味4.5
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| サービス4.0
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| 雰囲気4.0
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| CP4.5
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| 酒・ドリンク4.0 ］
丼の惑星、石津食堂
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2025/11/10 更新
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昼休みの空腹というのは、人間の判断力を狂わせる麻薬のようなものだ。
僕と後輩のH君は、潮来市の《石津食堂》へ車を走らせていた。
地元で噂の“盛りのいい食堂”であるらしい。
盛りがいい、という言葉ほど男を興奮させるものはない。
「先輩、あの店っすよ。看板、けっこう渋いですね」
「うん、ええが。地元密着いう感じで、期待できそうや」
店内は飾り気がなく、テレビの音と鍋の湯気が混ざり合う、生活の匂いがした。
カウンターの向こうでは、店主らしき女性が大鍋をまわしている。
券売機なんてものはない。メニューの短冊が壁に貼ってあるだけだ。
僕は迷わず 「玉子丼セット（900円）」 を注文した。
セットは うどん か ラーメン を選べるらしい。
「どっちにするんです？」
「そら、ラーメンよ。せっかくセットやけん、炭水化物を炭水化物で追い打ちせんと」
H君は呆れ顔だったが、僕の決断は揺らがなかった。
ほどなくして、店員さんが盆を持ってやって来た。
その瞬間、僕らは目を見張った。
「……先輩、これ、丼が…丼から…はみ出てません？」
「ほんまや。これは…山やな」
玉子丼が“あふれんばかり”どころか、もはや
丼という惑星から、玉子という大陸が隆起している景色
と言ってもよかった。
そして横に置かれたラーメンを見て、僕は確信した。
「ミニラーメン……ちゃうな。これ、フルサイズやろ」
「先輩、完全にレギュラーっすよ。あの、僕ら、昼休みですよね…？」
玉子丼の表面はふるふると揺れ、濃いめの出汁の香りが鼻を打つ。
一口ほおばると、甘辛い出汁が卵の柔らかい絨毯に染み込み、米の粒がそのすべてを受け止めた。
「うまっ……」
「先輩、この甘さ、危険っす。箸が止まりません」
途中でラーメンに箸を伸ばす。
鶏ガラの透明スープ、細めのストレート麺。
奇をてらっていないのに、妙に心に沁みる。
「なあH君、これでセット900円て……採算取れんのか？」
「たぶん、愛情と勢いで経営してるんじゃないですか？」
後半、僕たちの会話はだんだん減っていった。
胃袋が限界信号を送ってきたのだ。
「先輩……まだ、玉子が…」
「大丈夫や。腹に精神で押し込め」
僕らは無言でスプーンを動かし続けた。
玉子丼の大陸は広大だったが、ついにラーメンまで完食した。
席を立つと、店員さんが笑いながら言った。
「お兄さんら、よう食べたなぁ」
僕らは軽く頭を下げ、店を出た。
外の空気が肺にしみわたる。
「先輩、午後の仕事……大丈夫っすかね」
「眠気と戦いながら、社会と向き合うんや」
青空の下、満腹の胃袋を抱えながら、僕は思った。
石津食堂は“店”というより、戦場だった。
そして僕らは勝利した兵士なのだ。