P.R.ねるそんさんが投稿したコロンビアエイト 堺筋本町店(大阪/堺筋本町)の口コミ詳細

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コロンビアエイト 堺筋本町店堺筋本町、長堀橋、松屋町/カレー、インドカレー

1

  • 夜の点数:4.0

    • ¥1,000~¥1,999 / 1人
      • 料理・味 4.0
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 4.0
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク 4.0
1回目

2025/11 訪問

  • 夜の点数:4.0

    • [ 料理・味4.0
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気4.0
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク4.0
    ¥1,000~¥1,999
    / 1人

右手にスプーン、左手にししとう

その日、僕は堺筋本町のビル街を歩いていた。
昼の熱気とアスファルトの匂いに混ざって、
ふと鼻先をかすめたスパイスの香りが、僕の足を止めた。

「コロンビアエイト」。
看板の小さな文字を確かめるように扉を開けると、
街の喧噪がすっと遠ざかり、空気が香辛料の音で満たされた。

店内はカウンター五席、壁際に五席。
照明は低く、BGMは静かなギターのアルペジオ。
バーのように落ち着いていて、
その中でただ一人、キャップをかぶったマスターが黙々と鍋をかき混ぜていた。
まるで自分の中だけにリズムを持つミュージシャンのように。

「初来店ですか?」
女性店員の明るい声が、その沈黙をやわらかく切り裂いた。
「はい」と答えると、彼女は軽やかに笑い、
「右手にスプーン、左手にししとうですよ」と言った。

僕はカウンターに座り、
キーマカレー(レモネード付き)に、トッピングでゆで卵を追加して注文した。
やがて、皿とレモネードが並んで運ばれてくる。
氷がカランと鳴り、その音がスパイスの香りに混ざった。

黄金色のターメリックライスのまわりを、サラサラのルーが囲む。
ナッツ、ゴマ、ハーブ、そして白いゆで卵。
中央のししとうは、まるで指揮棒のように皿の上に横たわっていた。

僕は左手でししとうをかじり、右手のスプーンでカレーをすくった。
瞬間、香りが爆発した。
クミン、カルダモン、ナツメグ、そしてフェンネル。
スパイスが舌の上で音を奏で、
それぞれの香りが旋律のように重なり合う。

辛さよりも、香りが熱い。
和風だしのような優しさが奥に潜み、
ゆで卵の黄身が一瞬、静寂を与える。
そしてレモネードを一口。
酸味が残り香を洗い流し、
また新しい一拍目のようにカレーの味が蘇る。

マスターは終始、無言のままだった。
ただ、キャップのつばの下からこちらを一瞬だけ見て、
「スパイスは音楽ですよ」
──そう言っているように感じた。

その言葉は空気に溶けて、BGMと一緒に店の中を漂った。
店を出ると、堺筋本町の風が少し冷たかった。
だが僕の舌の上では、まだスパイスのリズムが鳴り続けていた。

──右手にスプーン、左手にししとう。
それは、音楽のように味わうカレーの世界への、最初の一拍だった。

2025/11/16 更新

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