3回
2020/12 訪問
感動がそこにはある
前回来てから4ヶ月ぶりの訪問です。2020年で色々なお寿司屋さんに伺いましたが、こちらがNo. 1だと言う結論を確かめる為に再訪しました。ワクワク。
ビールで喉を潤しながらのトップバッターは鳥取の松葉蟹と数の子とのっけからフルスロットル。蟹自体が相当に甘く、また蟹味噌と和えられていてしっかりと旨味もあります。数の子の食感も良い。私は蟹に有難みをそれ程持っていないのですが、思わず唸りたくなる程美味しい。味がしっかりしてるので、のっけから日本酒に行きたくなります。
続いては西対馬で取れた穴子のたたき。橙をかけて山葵で頂きます。身がぷりぷりと弾け、脂も抜群。その脂を橙とワサビが見事に中和。全盛期のアイドルの様な弾ける元気と可憐さが何故か脳裏に蘇りました。ちなアイドルオタクちゃうからな。
もう我慢できず日本酒へ。庭のウグイス。へー、美味しいなこれ。純米じゃ無いみたい。
牛深のクエ。2週間寝かせたものをしゃぶしゃぶで頂きます。最初はポン酢と紅葉おろしの風味ですが、徐々にクエ自体の旨みと脂がぐわーっと出てきます。クエってそれほど旨味が強いイメージはありませんでしたが、これはかなり強い。また薬味やポン酢がキツ過ぎずフレッシュなのが良いですね。
天草の白甘鯛。本当に天草の白甘鯛は香りが良いですねえ。こちらも最初は出汁の味が主体的ながら、咀嚼していると白甘鯛の優しい味が出てきます。脂が上品で香りが良いという白甘鯛の特徴が見事に出ていました。
天草の蒸し鮑に肝醤油。以前食べた時もそうだったのですが、鮑が信じがたいほど濃厚。肝醤油はほんの香りだけで、鮑の味が特濃ともいうべきレベル。なんやこれ美味すぎる。
五島列島の喉黒。なんだかオールスターみたいなラインアップになってきました。昆布締めしてから焼いているそうで、脂はたっぷりですがくどくなくスッキリ。むしろ残った脂を飲みたくなるほどです。
脂がしっかりした魚になると途端に酒が乾く。という事で写楽。大好きなお酒です。
こちらは喉黒の肝だそう。初めて頂きますが、濃厚と言うよりクリアーな味わいで、臭みなど露ほどもありません。何というかあん肝や皮剥などより、更にフォアグラに近い印象。樽の効いたシャルドネでも抜群に合いそうです。
さて握りに。その前にガリが美味しい。酢がしっかり効いて、生姜の香りも強い。甘さは控えめで、口直しにも酒のつまみにもぴったり。これだけで永遠に飲めそう。
握りのトップバッターは先程も頂いたクエを漬けにして炙ったもの。炭の香りが素晴らしくやはり旨味が強い。また、ここのシャリは本当に美味しい。赤酢の主張が控えめで、米が少し硬め。主張は強くありませんが、ネタとの相性は抜群です。
こちらは天草のアオリイカ。咀嚼すると濃厚な液体に変わっていきます。ああ、美味いと思わず溢してしまう。
天草の鰤。これは鰤の香りが抜群ですねえ。冬の鰤とは脂を食べるものだと思っていましたが、それ以上に香りが抜群。2週間寝かせてるとは思えないぐらいフレッシュな握りでした。
来ました、天草の鯵。最初は生姜の香りから怒涛のように青魚特有の強い香り。マッチョな食感と相まって問答無用の美味しさ。シャリを巻くようにネタを握ってるのでネタが大きく、ネタの香りを存分に感じられるんですね。鮨食べてる感が強いのも特徴です。
酒が進む。私は幸せだ。
天草の天然の鯛。以前もそうだったのですが、淡白なはずの鯛が、こちらに来るとびっくりするほど旨味の濃い魚に変身。奴寿司でも鯛がむちゃんこ美味しかったので天草近海の特徴なのかも知れません。
天草の車海老。むぎゅと詰まった身にエビ特有の甘味。私は生の海老が好きなのですが、これなら蒸し海老でも良いと思わず掌返しする様な味わいでした。
天草の紫雲丹。前回同様、そして鮑同様信じがたいほど濃い。雲丹の中の雲丹。あと5貫ぐらい食べたい。
青森の本鮪。前回、前々回とイマイチだった鮪が良くなってますねえ。やはり季節が良いのでしょうか。脂と鉄分のバランスが良く、香りが抜群。やはりこの店は何を食べてるかすぐ分かります。これってすごく大事。
鰆。炭の香りが良いなあ。さっきから思ってるのですが、こちらの魚は脂が乗り過ぎず、香りがとにかく良いんですよね。鰆がこんなに美味しく感じるんだもの。
穴子。ああもうフィナーレはすぐそこ。お腹いっぱいだけどまだまだ食べたい。私の心は高校時代のデートの別れ際ぐらい切ない気持ちでいっぱいです。
干瓢巻き。なるほど、これは海苔を食べる巻物である。干瓢を凌駕する海苔の香り。なんやこれ。この海苔だけで飲めそう。
と聞いたらこれも熊本の河内という所で取れる海苔だそう。海苔というと有明が有名ですが、有明から近いこの河内の海苔は毎年最高値の落札額になるそうです。あまりに美味しかったので、次の日ちょうど河内を通りかかったので道の駅で鬼の様に買い込みました。ちなみに冬場は蜜柑も名物だそうで合わせて買ったらこれもすごく美味しかった。観光大使です。
味噌汁。鰆で取った出汁だそうです。山椒が効いてまだ食べれそうな錯覚に。明日の朝も飲みたい。というか明日の朝も今日と同じコース食べたい。
玉。鱧を使っておりふわふわ。一本食い出来ます。
さて、コース一通りにビール小瓶2本、日本酒5芍3杯で2万円弱。前回より少し高いのは酒とネタが少し豪華になったからでしょうか。いずれにしてもめちゃくちゃなコスパ。2021年は熊本移住するか。
冒頭でNo. 1の寿司屋かどうか確認すると言いましたが、結果圧倒的No.1でした。夏でも美味しかったのに、冬になって更なる高みへ行ってしまいました。
冬らしく脂が乗っているのですが、それを感じさせないフレッシュさであり、いつまでも食べられる様な錯覚に陥ります。鮪は赤身だし、冬の定番蟹は無いし、インスタ映えはしないかも知れませんが、これ以上なく贅沢な味わいでした。写真見返してこれ書いてますがお腹が減り過ぎてもはや苦行の様です。
ネタの香り、新鮮な薬味、シャリを包むように大きいネタ。赤酢が効き過ぎず、ネタの香りをうまく引き出すシャリ。味にグラデーションがあり、一つのつまみ、握りを食べているだけなのに、口の中で味わいと香りが変化していきます。それなのに今自分が食べているのは何なのかがすぐにわかる。なんと豊かなお寿司なのか。
それほど詳しくありませんが、日本酒も割と香りがしっかりしたものを揃えてる気がします。私の様に味の輪郭がはっきりしていて、香りを重要視する人には間違いなくオススメできる。というかそもそもの魚が美味しすぎるんですよね。天草の魚って九州以外では滅多に聞かないんですが、個人的には日本でNo. 1だと思います。
ただ食べるだけのことではありますが、感動を覚えます。なんでこんなに美味しいんだろう。なんでこんなに香りが良いんだろう。そういった感想がどんどん湧き上がってくる。
2021年も必ず伺います。次は春かな。御馳走様でした。
2021/02/16 更新
2020/08 訪問
何かの間違い
熊本の繁華街近くにあるこちらにお邪魔しました。ミシュラン一つ星です。カウンターが8席程に半個室のテーブル席が一つあり、清潔感がある正に寿司屋というインテリアです。
まずはビールで乾杯。今宵もビールが染みる。
トップバッターは長崎の鮑。この鮑ですが、水も入れず6時間蒸したものだそうです。これが信じがたいほど濃厚で美味い。鮑の味がこれでもかと凝縮されています。一幸の鮑より美味しかったかも。一幸の大将の言う通り、美味しい鮑には肝ソースなど不要です。
続いては大目鯛の刺身。昼に締めたそうで、フレッシュな弾力と程良い脂のノリがたまりません。
こちらは鰆。皮目を炙っており身も少しだけ火に通してあります。鰆というと文字通り春の魚の印象がありますが、九州では寒鰆といって秋にも取れるそうです。ポン酢やもみじおろし、ネギと気前よくかかっていますが、肝心の身の味が負けていません。さっぱりとしながら味が濃く酒が進む進む。
茶碗蒸しは渡蟹。渡蟹だけでも嬉しいのに、穴子、銀杏、果てや餅まで入っています。なんちゃらの宝石箱やんこんなん。蟹の出汁も良く出ており、見た目以上に食べ応えのある茶碗蒸しでした。
煮蛸。身は柔らかいのに吸盤は口の中にひっついてくる様な感覚があります。日本酒いきましょう。
メニューにも日本酒は幾つかあるのですが、大将は下駄を預けるとオススメを出してくれます。
出ました、キンキです。まず見た目が美しい。一口噛むと脂が爆ぜ、それを日本酒で流し込みます。何と幸せなんでしょうか。塩味が控え目なのも魚の味を引き立たせ、心の底から幸せな溜息が出てきます。
今度は生で蛸が出てきました。先程とまた違いグニグニと咀嚼する度に滲み出る潮の香りがたまりません。日本酒に合うなあ。
さて握りに。まずは大目鯛。刺身もそうですが、この鯛は美味しいですねえ。香りが良く、甘味を感じ、脂のノリも良い。赤酢のシャリによく合います。
日本酒追加。大吟醸とかを安易に出してこない所に好感が持てます。
白海老。白海老らしいねっとりとした食感。甘味は流石にもう少しといった所か。季節が流石に厳しいでしょうか。
つるんとした見た目のこちらは新イカ。ねっとりというよりさっぱりで正に夏らしいイカ。これはこれであり。
車海老。これは普通かなあ。味わいというよりはぶりぶりとした食感を感じるものでした。エロい。
こちらは太刀魚です。太刀魚と言えば大体皮目を炙ったものが多いですが、こちらは蒸しています。身がふわふわなのは勿論、香りが良いですね。この食べ方は断然あり。
天草の赤雲丹。4日間ドリップシートで水分抜いてるそうですが、これがむちゃんこ美味しい。とにかく濃厚です。この夏は北海道、東京、九州など色んなところで様々な雲丹を頂きましたが、No. 1だったかも知れません。
中トロ。脂がすんごい。ちょっとクドいですが酒を飲ませるという意味ではありでした。
小肌。1時間しか締めてないそうですが、青魚なんだなと思わせる美味しさです。正に私好み。酢で締めすぎてよく分からない小肌が多い中で、こちらが私の中でのベストな締め方でした。
穴子。もう終わりかと寂しい気持ちになりますが、これも美味しいですねえ。ツメがはっきりとした甘さで穴子のふわっとした食感も良い。ああ、もっと食べたい。
お吸い物。出汁が美味しいなあ。和食屋さんのお吸い物と遜色ありません。
玉。海老の香り。お腹はいっぱいですがまだ食べたい矛盾。
という事でコースを一通り頂き、ビール小瓶一本と日本酒2杯で17000円です。
神かよ。びっくりしました。そういえばコース13000円だった事をこの時思い出しましたが、にしても安い。食べてる間にその味からすっかり忘れてしまいました。しかも酒も安い。日本酒もモノによりますが1合で1000円程度なのではないでしょうか。
まずネタの一つ一つの香りがとても良い。何の魚を食べてるのか口に入れるとすぐに分かります。薬味はフレッシュで、出汁もしっかりとっており、仕事として手を抜いていないのがよく分かります。こちらの寿司を食べていると寿司酢というのはあくまでネタを引き立たせるものであって、その単体で香るものではないという事を実感します。
大将の実直な仕事スタイルも心に残ります。口下手なのかあまり多くを語るタイプでは無いと思いますが、言葉の端々に寿司や魚への愛を感じます。私はいつも言っていますが、「料理への愛情が技術を育み、その技術が食べる者を感動させる」正にこの言葉通りです。
にしてもこのコスパです。私はこの数ヶ月散々色んな所で寿司を食べ歩いていましたが、味だけで言えば鮨一幸と同レベルだと感じました。それでいて費用は半分とは何かの間違いでは無かろうか。東京の寿司屋なんてコースだけで3万、4万取るのが当たり前な中、熊本とは言えこの価格は奇跡としか言いようがありません。
全体的に味わいがはっきりとしているので好みは当然あるかと思います。お酒好きの人は好きなんじゃないかなあ。大将も酒好きなんだろうなと感じる握り、料理です。
味、価格、雰囲気、サービス、総合的に見て私の中でNo. 1のお寿司屋さんです。予約が取れなくなると困るのですが、評価されるべきお店は評価されるべき。これからも熊本に行く機会では伺おうと思います。御馳走様でした。
2020/10/17 更新
今年の末も鮨なかむら。私がこよなく愛するお寿司屋さんです。このお店に来る為に無理やり九州来たぐらい好きです。危うく今年は一回も来れない所でした。
まずはビール。ああ、美味い。
余談ですが、この日泊まったビジネスホテルでたまたまエレベーターで居合わせたおっちゃんに「どこから走ってきたの?」と話しかけられました。私は良く話しかけられますが、九州、それも熊本と鹿児島で圧倒的に話しかけられる率が多いのは県民性なのでしょうか。ちなみに私に話しかけてくる人は大抵おっちゃんで皆一様にびっくりします。
トップバッターは牛深のクエ。あっさりしているのにじわじわと味が滲み出てきます。カットが厚く食べ応えがあるのが良いですね。
天草の鯛。脂が乗っていて、そこに自家製のゆずポン酢の円やかが上手く調和しています。鯛の脂でこんなに良い香りのするものは初めてだったかも。
天草のヤイトカツオ。この美しいグラデーションよ。最初に脂が来て徐々に鉄分に変わっていくのも見た目通り。橙でさっぱりさせるのも良いですね。
我慢出来ないので日本酒。大将に下駄を預けます。
先程の牛深のクエを炊いたもの。先程とは違い所謂バラの部分ですが、そこの筋が煮込まれた事によってゼラチンに代わってプルプル。出汁も相当に美味しい。幸せの溜息が出てきた。
天草の平目。ゆずの香り、脂、咀嚼するたびに染み出る旨味。やっぱこれよ。天草の白身魚の底力です。
ここの日本酒のチョイスも私好み。絶対大将ワイン好きだと思うんだけどな。
焼き物は太刀魚。お皿が出てきた瞬間から太刀魚特有の香りが襲ってきます。太刀魚はやっぱり焼きか天ぷらが至高。ああ、成生行きたい。
唐墨。今年は日照時間が足りず中が半生になってしまったとの事。しかしこれはこれでありですねえ。良い意味で塩辛くなく、粒々感が心地良い。当然に酒が進みます。
唐墨が来たので日本酒を追加。いつか唐墨一本で四合瓶飲むのをやってみたい。四合瓶じゃ足りないか。
握りに行く前にガリでウォーミングアップ。
握りのトップバッターはアオリイカ。ねっとり甘く赤酢のシャリとのマッチが絶妙。冬だなあ。
出ました、キングオブ白身魚である天草の白甘鯛です。嬉しすぎて写真がブレてしまいました。甘い香りと上品な脂、強い旨味とバランスが完璧。ちなみに私の大好きな三心と同じ漁師さんから仕入れてるそうです。
真鯵。生姜、次にネタとシャリの間に潜ませたネギ、そして最後に鯵の香りと見事なグラデーション。こういう握りが私は好き。
天草の鰤。メタボというよりは程良く、そして満遍なく脂が乗っていてどこかフェミニンな印象。
刺身、お椀でも出たクエが握りでも。炙った炭の香り、そして脂が乗った身。クエ一つでこんなに楽しめるんだと気付きがありました。
日本酒。本当はもっと飲みたいのですが、熊本に来ると必ず行くワインバーがあるので控えめに。もう2合だけど。
マカジキマグロ。さっぱり。鮪というより鰤なんかに近い印象でした。
天草の海老。むぎゅっと詰まった身。凝縮感がいつもより強い気がしたのは気のせいかな。
鰆。これも脂がすごく乗ってるというよりバランスが良く上品。酢の使い方が上手いんでしょう。
三厩の本鮪。今回はその本鮪以外は全て天草近海もの。流石に美味しい。やっぱりクロマグロisキング。
穴子。ふわふわ。見た目ほどツメが濃くないのも良い。
クエで取った出汁で味噌汁。美味いに決まってるやん。ラーメン丼で出てきても完飲出来る自信があります。
最後は手巻きの鉄火。ああ、もう終わってしまうのか。いつもこの瞬間が寂しい。
卵。鱧を使っているそうで、かなりふわふわ。また香りが良くて仄かに甘い。これぞ卵焼き。
以上、ビール2杯、日本酒五勺4杯で占めて21000円。相変わらず素晴らしいコスパです。
2021年も色んな寿司屋に行きましたが、色んな所へ行けば行く程、このお店の事が好きになっていきます。味、香り、サイズ、サービス、値段、雰囲気、全てが理想的。
こちらと奴寿司、そして三心に伺ってから本当に天草の魚が好きになりました。種類も豊富で、どれもバランスが良く、何でもない魚がとにかく美味しいのが特徴。魚と言えばサスエも有名ですが、寿司という意味では天草がNo. 1です。
最後はご夫婦揃ってお見送り。今年も年末最後に伺う事が出来て良かった。2022年も一度と言わず二度三度と伺いたいと思います。御馳走様でした。また宜しくお願いします。