9回
2024/03 訪問
レモンに萌える
「Pizzeria Parentesi」では、ついついビアンカベースに惹かれてしまう。
使っている食材の質の良さは勿論、フワッと舌に優しい生地とモチっとしたチーズが重なった、柔らかく弾む食感が堪らなく好きだからだ。
ビアンカだと生地の旨味が十分に味わえないという御人も居られるだろうが、当店ではそんな心配も無用。
収穫から10日内に挽いた国産小麦粉2種をブレンドした生地は、香りが立ち、旨味が活きている。
チーズに負けるどころか交錯し、更なる高みへと昇っていくのだ。
今回はビアンカベースのリモーネ。
具材は、モルタデッラ・レモン・リコッタ・モッツァレラ・バジル。
チーズはやはり濃い。
モッツァレラはむっちりとしてコクが深く、リコッタはねっとりとして甘い。
甘くジューシーなモルタデッラの脂と絡み合い、ふくよかで丸みのある濃密な旨味が舌の上に広がっていく。
細かく刻んだ檸檬に歯が当たれば、果肉から弾ける爽快な酸味が、アクセントとして良い存在感を発揮する。
熱が入っているので、さっぱりとした酸味の後には、フルーティーな甘味が追いかけてくる。
それが肉とチーズの甘美と響き合い、見事な調和を果たす。
濃厚だがさっぱり。
口の中で描かれる美しいコントラストに胸が昂る1枚であった。
2024/04/04 更新
2024/02 訪問
私的クワトロフォルマッジの頂点
あぁ。
食べた瞬間、感嘆のため息が漏れた。
「Pizzeria Parentesi」のクワトロフォルマッジは、私がクワトロフォルマッジに求める全てが詰まっている。
具材は、モッツァレラ・パルミジャーノ・リコッタ・ゴルゴンゾーラ。
別添えでクローバー蜂蜜。
まずは生地。
収穫から10日以内に石臼で挽いた新鮮な小麦をブレンドし、最新の電気釜で焼かれた生地は、生きた小麦の芳香が鼻を抜けていく。
ふっくらとした柔和な食感で歯を優しく包み込み、滲ませる旨味は太く、それでいて柔らかい。
何度食べても恍惚とさせられる素晴らしいものである。
次にチーズ。
モッツァレラはどこまでも伸びて乳の純真を讃え、パルミジャーノはコク深く、塩気が食欲を刺激する。
リコッタは爽快と芳醇が共存したもったりと濃密な甘味を広げ、ゴルゴンゾーラは勇ましい風味で強くキックする。
これらの個性溢れる4種が、生地の分量に対して惜しげもなくたっぷりと乗せられ、口腔の中で絡み合い、響き合う。
チーズに溺れる幸福が身体の奥底から湧き上がってくる。
極め付けはクローバー蜂蜜。
極めて高い粘度でチーズと抱擁する。
それでいて味わいはさりげなく、極めて上品であり、チーズの風味をマスキングする事なく、ふくらまし、官能的な甘味が花を咲かせる。
困ったもんだ。
口角が上がりっぱなしだ。
クワトロフォルマッジが美味しいピッツェリアを聞かれたら、まず当店を推したい。
My Best クワトロフォルマッジここにあり。
2024/03/20 更新
2024/02 訪問
プリングルズ!!
お髭のおじさんがピッツァになった!!
「Pizzeria Parentesi」にて、期間限定おすすめメニューから「自家製サワークリームとベーコンとローストポテトのビアンコ」である。
具材は、モッツァレラ・自家製サワークリーム・ベーコン・ローストポテト・フライドオニオン・ネギ・フェンネル。
収穫から10日以内に石臼で挽いた小麦2種をブレンドした生地は、太陽の香りが胃袋をくすぐり、噛めばもちもちとふかふかと歯の上を優しく飛び跳ね、旨味がとめどなく滲み出てくる。
何度食べても心が揺さぶられる、食べるたびに恍惚となる生地である。
そして、自家製のサワークリームはレモンをしっかりと効かせ、乳脂成分のまったりと深いコクと爽快な酸味の均整が美しい。
モッツァレラは甘く、生地と合わさることで一層もちもちと弾んで顎を喜ばせ、ローストポテトはほくほくと優しい。
ベーコンは脂がありながらしつこさは無く、あくまで控えめ。他の具材と調和を図るかの様である。
フライドオニオンは、カリッと油の香りを弾けさせ、食感にも彩りを与える。
サワークリームにモッツァレラ、ポテトやベーコン。
これらがまとまった味わいは、まさしくあれ。
そう、子供の頃大好きだった「プ○ングルズ」のサワークリームオニオンである。
だが、流石は「Pizzeria Parentesi」。
ネギとフェンネルを加え、後味に心地よい青い芳香を呼び込むことで、菓子のそれとは一線を画す。
まるで、あのチャーミングなお髭のおじさんがハットを被り、紳士に成ったかの様である。
2024/03/12 更新
2024/01 訪問
良い食材を確かな腕で
「Pizzeria Parentesi」のピッツァの魅力は、なんといっても収穫から10日以内に石臼で挽いた小麦の生きた旨味だが、この日はソーセージに全てをもっていかれた。
この日いただいたのはチーズベースのサルシッチャビアンカ。
具材は、秋田かわい農場オリジナルソーセージ・ルッコラ・ネギ・モッツァレラ・黒胡椒。
秋田のかわい農場とは、緑に囲まれ綺麗な清流が流れる美しい自然環境で種豚の改良、生産、ハムやソーセージの製造から販売まで一貫して行っている小さな農場である。
ソーセージ作りを担当するのは、本場ドイツでソーセージ作りを学んだ農場を営むオーナーの娘さん。
ドイツでは「農家のソーセージ」と呼ばれる粗挽きタイプのそれは、噛んだ途端に肉汁が湯水の如く湧き出てくる。
流れ出るその脂は、一切の雑味がない豚の純真であり、澄んだ甘味で舌を潤す。
肉自体に芳醇な香りがあるため、練り込むのはフェンネルのみだが、甘くスパイシーな草の香りが脂の甘味と共鳴し、肉の輪郭がより引き立っている。
これほどのソーセージには中々出逢えないだろう。
そして、このソーセージにルッコラとネギを合わせた岡井シェフも流石である。
甘味の対極である辛味と苦味を衝突させることで、其々が互いを持ち上げ、輝きを放つ。
さりげなく散らされた黒胡椒も良い。
どことなくネギ塩の近しい味わいが感じられ、イタリア顔だが日本人の琴線に触れてくるものになっている。
良質な食材はただ使えば良い訳ではない。
確かな技術とセンスがあってこそであり、「Pizzeria Parentesi」のサルシッチャビアンカはそれを体現した見事な1枚である。
2024/02/20 更新
2023/12 訪問
老舗にして尚進化を続ける。
平日夜でも予約で満席の「Pizzeria Parentesi」。
生きた小麦香るふわふわの生地は、一度食べたら病みつきになる中毒性がある。
素朴ながらに芳醇な小麦の香りに鼻腔のヒダが揺らされ、具材に負けない逞しい旨味が顔を崩れさせる。
また、いつ何時も焼きにムラがないのは、電子釜を使っているから。
日毎に変わる薪釜の気分を楽しむのも良いが、あえて電子釜を選択したのは、ピッツァの出来に明確な理想があるからだろう。
「アラビアータ」の具材は、トマトソース・モッツァレラ・パンツェッタ・ニンニク・唐辛子・卵。
モッツァレラと半熟卵が絡み合ったまろやかな甘味と、舌をつつく唐辛子やニンニクの刺激的な辛味のコントラストが美しい1枚だ。
食べてみれば、貴方も理想に向かって邁進する岡井シェフに、敬意を表したくなるに違いない。
2023/12/28 更新
2023/11 訪問
赤から橙へ
何度食べても当店の生地に毎回恍惚となる。
赤子の頬の様に柔和でありながら、滲む粉の旨味は逞しい。
薪釜ではなく、電気釜で焼き上げることで、香りはマスキングされず、強い小麦の香りに鼻腔のヒダが揺らされる。
女性的かつ男性的で、心を射止める色艶である。
「マルゲリータフレスカ」の具材は、モッツァレラ・マスカルポーネ・パルミジャーノ・トマト・バジル。
マリネされ熱されて甘味が頂へと達したトマト。
モッツァレラやマスカルポーネの純白。
両者が口の中で出会えば、鮮烈な赤が白と混ざり合い、橙へと色を変える美しい階調を描き出す。
思わず笑いが込み上げてくる1枚であった。
2023/12/13 更新
2023/11 訪問
美しきチーズの四重奏
前回はロッソをいただいたので今回はビアンカ。
生きた粉が香るふかふかの生地に、贅沢なチーズが合わない訳がないと踏んだが、想像以上だった。
2種類の国産小麦粉を収穫から10日以内に石臼で挽き、蜂蜜酵母で発酵させた生地は、しっとりとしたテクスチャー。
最新の電気釜でサクッと焼き上げたそれは、薪のフィルターが無い分、小麦が溌剌と香り、旨みを広げる。
口腔に満ちる粉の風味は、具材に負けないほどに逞しく、喉に落ちる瞬間に立ち込める太陽の香りに笑みが溢れる。
クワトロフォルマッジに使用するのはモッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、リコッタ、パルメジャーノの4種類。
旨味をのばすモッツァレラ
独特にフックするゴルゴンゾーラ
ほのかな慈愛のリコッタ
香り高いパルメジャーノ
生きた生地の指揮の下、4種類のチーズが奏でる美しい重奏が、琴線に触れてくる。
サラサラとして上品なクローバー蜂蜜を垂らしてみれば、チーズの甘みがクレッシェンドし、幸福のフィナーレに顔が崩れた。
2023/11/23 更新
2023/10 訪問
素朴さの中の豊穣
「この生地に具材は不要」
そう思わせられたのは、初めてだ。
「Pizzeria Parentesi」は、自然栽培した国産小麦を収穫から10日以内に石臼で挽いた小麦粉で生地を作る。
酸化する前の新鮮な粉は、具材以上に香りが立つ。
噛めば、ふわふわとして歯を抱き込み、燦々と降り注ぐ太陽のしぶとい旨みが舌に滲む。
薪釜ではなく電気釜を使っているため、小麦がダイレクトに味わえるからだ。
その風味は、飾り気のないも素朴さであり、奥底に大地の豊穣もがある。
この生地を堪能できるのが、マリナーラだ。
トマト缶に加えて、ピュレも使うことで、トーンの異なる酸味と甘味が舌の上でワルツを踊り、ニンニクとオレガノの溌剌が、トマトを彩る。
「Pizzeria Parentesi」のマリナーラは、都内でも指折りの逸品である。
2023/11/12 更新
うぅ…顔が弛緩した。
きっとこれ以上は無い、我が最高のクワトロフォルマッジである。
具材は、モッツァレラ・パルミジャーノ・リコッタ・ゴルゴンゾーラ。
別添えでクローバー蜂蜜。
生地量に対して、溢れんばかりに盛られたチーズ達。
折角のクワトロフォルマッジなのだから、チーズに溺れてしまいたい。
そんな欲望を満たすに、申し分ない量である。
渾然一体となった4種のチーズが、各々の個性を光らせながら
「美味しいでしょ?」
耳元で囁いてくる。
どこまでも伸びるモッツァラと香りを深めるパルミジャーノと濃密なリコッタと独特を広げるゴルゴンゾーラ。
そこには、ただ乗せているのではなく、各々の持ち味が生きる様に調節された繊細が確かに在る。
チーズに負けない濃厚な蜂蜜を垂らせば、熱い情を交わし、舌一面に甘美の花が咲き誇る。
我が最愛に輝く「Pizzeria Parentesi 」のクワトロフォルマッジ。