11回
2024/03 訪問
お豆の舞踊
漸く暖かい日も少しづつ増えてきた3月中旬。
まだ冬の名残は感じるものの、日中の日差しに春の陽気を感じるようになった。
春の食材たちも芽吹き始め、飲食店のメニューも衣変えを始める時である。
「Pizzaria da Peppe Napoli Sta' Ca"」のメニューも変わっており、この日は冬の間にはなかったモルタッツァをチョイス。
具材は、モッツァレラ・モルタデッラ・リコッタ・ピスタチオ・バジル。
モッツァレラを乗せて焼き上げ、モルタデッラ、リコッタ、ピスタチオ、バジルを後乗せした1枚だ。
この日も生地の出来は抜群。
大きく膨らんだコルニチョーネはサクッと香ばしく、中はしっとりしてもっちり。
歯の上を勢いよく弾む弾力の後に、粉の旨味が迫ってくる。
それでいて口溶けも滑らかで、重たさを感じさせない。
もはやコルニチョーネを味わいたくて来ていると言っても過言では無い程、当店の生地が好きである。
勿論、具材も見逃せない美味しさ。
モルタデッラからは仄かなスパイスの風味が香り、味わいは赤身と脂身の均整が美しくて上品。
伸びの良い繊維質のモッツァレラと濃密な甘味を広げるリコッタと調和し、尾を引く旨味を作り出す。
その舞台上で、ピスタチオが軽快に舞踏し、ナッティーな風味で味わいを深くさせる。
色合いも鮮やかで食感も楽しい、華のある1枚だ。
2024/04/05 更新
2024/03 訪問
美味しい呪文
時折、私は愚図る。
「だっこ!だっこ!だっこしてー!!!」
身体の調子が悪かったり、気分が落ち込むと無性に抱かれたくなるのは何故だろうか。
無論、この歳の私を母親は抱いてくれないし、恋人はいない。
風俗という選択肢があるが、そこに愛はないので駄目だ。
では、どうするのか。
私は「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」に行く。
当店のPizzaは、大きなコルニチョーネが特徴の新潮流"コンテンポラーネア"と呼ばれるスタイルだ。
外はサクッと繊細に弾け、中はもっちり、ふっくら。
香ばしく温かい風味が広がり、歯がゆっくりと沈んでいけば、その瞬間、幼い頃母親に抱かれた時の温もりを感ずるのだ。
今回食べたのはビアンカベースの「玉ねぎの魔法」。
具材は、玉ねぎクリーム・燻製モッツァレラ・セミドライトマト・甘酸っぱい玉ねぎ・焦がし玉ねぎ。
まったりと甘いクリームは燻製モッツァレラの薫香と響き合い、溌剌として酸っぱいマリネはセミドライトマトに寄り添い、香ばしいコクがあるソテーは生地の香りと交錯する。
「ビビデバビデブー!」
魔術師ペッペの呪文によって甘味と酸味とコクの魔法陣が口の中で描かれる。
ハリーポッターの世界には無い、幸せを呼ぶ美味しい呪文である。
食後には波風立っていた心もすっかりと落ち着きを取り戻し、明日も頑張ろうと前向きになれた。
2024/03/27 更新
2024/02 訪問
アンミカ
数多くのピッツェリアが群雄割拠する東京にて、未だ少ないコンテンポラーネアが楽しめる「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」。
私のお気に入りのピッツェリアの一つであり、何度も訪問しているが、最近は生地の出来が以前よりもかなり良くなっている気がしている。
元々大きかったコルニチョーネは、はちきれんばかりに隆起し、その食感はもはや食べるyogibo。
ふっくらと歯を押し返すクッションの様な弾力で、口腔全体を満たす太く丸みのある粉の旨味は、「グルテンフリーなど糞○らえ」と叫びたくなる具合である。
これほどに生地が旨いと具材などいらないと思えてしまうが、具材にも魅力があるのが当店の特筆すべき点でもあり、私が愛してやまない理由でもある。
今回はロッサベースの「カラブリアの旅」
辛い料理が有名なイタリア南部のカラブリア州を由来とする旨辛ピッツァであり、多くのピッツェリアではカラブレーゼという名前でメニューにあることが多いが、当店のそれは全くの別物と言って良い。
具材は、トマトソース・モッツァレラ・サラミ・辛口リコッタ・糸唐辛子。
何よりも目を引くのは、糸唐辛子と辛味を練り込んだリコッタチーズだ。
糸唐辛子自体の辛味はそれ程に主張は強くないものの、独特な旨味は、情熱的なサラミの辛味を繊細に引き立てる。
リコッタは、乳脂の甘味と奥からじわじわと寄せてくる辛味が均整をとり、官能的なまろやかなテクスチャーで舌にじっとりと広がっていく。
この三者が織りなす辛味の展開は多種多様であり、咀嚼する毎に渾然一体となっていき、深みを増していく。
アンミカ氏が食べれば、きっと言うに違いない。
『辛味って200味あんねん!』。
2024/03/07 更新
2024/02 訪問
期間限定なのが惜しすぎる
冬の味覚が大好きだ。
ピッツァにおいては、フリアリエッリが特段好きだ。
数あるピッツァメニューの中でも一番と言っても過言ではない。
「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca" 」のレギュラーメニューには、フリアリエッリを使ったピッツァは無いが、この時期には期間限定でサルシッチャフリアリエッリが登場する。
具材は、サルシッチャ・フリアリエッリ・モッツァレラ・黒胡椒。
堤の様に大きく膨れ上がったコルニョーネに囲われたたっぷりのフリアリエッリ。
自生するかの如く生地を覆い尽くすその光景は圧巻であり、フリアリエッリ好きには堪らない。
葉の部分だけでなく、茎や穂先まで使われており、シャキっ、トロッとした多彩な食感は実に愉快。
クミンなどの多様なスパイスによって遇らわれているため、香りは複雑になり、鼻に抜ける芳醇に恍惚となる。
サルシッチャも通常メニューにはなく、実は初めていただいた。
自らの脂で艶めく肉は、噛むほどにジュワッと脂が溢れ出す。
フリアリエッリがその肉汁を吸い込むことで、ほろ苦さと甘味が溶け合い、後引く旨味が舌を渦巻く。
そして、何よりもこの日は、生地の出来にも目を丸くした。
これぞピッツァ・コンテンポラーネアと言わんばかりに膨らんだコルニチョーネの柔和な食感に歯が喜び、香ばしさを伴った小麦の温かみのある旨味に胃袋が快哉を叫ぶ。
期間限定なのがなんとも惜しすぎる1枚であった。
2024/02/22 更新
2024/01 訪問
とある負の解消
ふっくらとしたコルニチョーネと旨味たっぷりの生地、他店では味わえない具材の取り合わせが特徴の「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」。
そんな当店は、ビアンカベースの定番中の定番であるクワトロフォルマッジでさえ歴然とした個性がある。
その名を「炸裂フォルマッジ」。
具材は、モッツァレラ・ゴルゴンゾーラとグラナパダーノクリーム・ペコリーノドルチェ・アプリコットソース・コーヒーパウダー。
何よりも特徴的なのがモッツァレラ以外の3種のチーズがクリームに仕立てられている点とコーヒーパウダーとアプリコットソースが使われている点だ。
極限まで滑らかさを追求したチーズクリームは、蠱惑的な舌あたりで乳歯の甘みやコクがスムーズに広がり、乳歯のコクやゴルゴンゾーラの妖艶な芳香が鼻を抜けていく。
コーヒーパウダーは主張はそれほどないものの、さりげない香ばしさで喉に落ちた後の余韻を一層長くさせ、確かに全体を下支えする。
蜂蜜の代用として用いられたアプリコットソースは、その芳醇なチーズの風味をマスキングすることなく調和を果たし、乳の甘味を後引く甘美なものに仕上げる。
クワトロフォルマッジの醍醐味はチーズを味わうこと。
それに香りが強い蜂蜜が供されることに、チーズ好きとしては兼ねてから疑問を抱いていたが、当店はアプリコットソースという意外性でアプリコットが、その負を解消してくれた。
当店は星形ピッツァばかりが取り立たされているイメージがあるが、他のピッツァ達も取り上げるべきだとつくづく思う。
2024/02/08 更新
2024/01 訪問
女王のビスマルク
かねてから「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」でビスマルクを食べてみたかったが、遂に叶った。
生地のみならず、乗せる具材にも天賦の才を感じさせる当店のビスマルクには、肉は乗らない。
具材は、モッツァレラ・トリュフ・卵・クリームチーズ・バジル・ブラックペッパー。
肉の旨味と半熟卵の甘味の相思相愛があってこそのビスマルクだと思っていたが、その考えは誤っていた。
トリュフの妖艶、モッツァレラとチーズの甘味、クリームチーズのまろやかなコク。
三味が渾然一体となった甘美は、舌を優しく包み込み、喉に落ちた後の余韻は永遠を思わせるほどに長い。
きっとここに猛々しい肉の旨味があったら、これほどに上品ならず、恍惚とならなかったであろう。
以前「Pizza Studio Tamaki」のビスマルクを「食べ手を圧倒する王者」と称したが、当店のこれは、「高貴な品格と艶美を漂わせる女王」である。
2024/01/31 更新
2023/12 訪問
孤高の華
これまで数多くのピッツァを食べてきたが、これほどに色艶に満ちたピッツァは初めてだ。
「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」の「女主人」というピッツァである。
具材は、ペコリーノドルチェのクリーム・モッツァレラ・グアンチャーレ・紫じゃがいものパウダー・ミント・ローストアーモンド。
脂身豊富な豚の頬肉を熟成させたグアンチャーレは、本来脂っぽい筈なのにアーモンドやミントが微塵もそれを感じさせない。
口内のどこにも引っかからず、熟成香を漂わせながら甘く溶けていく豚脂の純粋のみを切り取り、チーズの乳脂と抱き合わせ、甘く切ない記憶を残して胸を焦らす。
この「女主人」は、溌剌として男共を尻に敷く、威勢の良い女将ではない。
透ける肌と流麗な仕草で男を魅了し従える、孤高の華である。
2024/01/19 更新
2023/12 訪問
野菜の讃美歌
飲食店の青い装飾はタブーとされている。
青は食欲を減退させる配色であるからだ。
だが、「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」においては、ピッツァの美味しさにそんなタブーなど関係なくなってしまう。
大きなコルニチョーネが特徴のコンテンポラーネアスタイルのピッツァは、歯の上を元気よく飛び跳ねる弾力に富んでいるが、重たさはない。
太い粉の旨味だけを残して、噛んでいくほどに溶けていく。
時間が経っても固くならず、最後までフワッモチッとした食感が楽しめるのも、なんとも嬉しいポイントである。
店名を冠した「ナポリスタカ」の具材は、ポルチーニクリーム・モッツァレラ・マッシュルーム・ドライトマト・ナスチップス・バジル・グラナパダーノ。
蠱惑的な香りを漂わせながら、旨味を伸ばすポルチーニクリームに、これまた香り高いフレッシュなマッシュルーム。
瑞々しい甘味のトマト、食感にリズムを生むナスチップスや爽快なバジルなど、各々が自身の持ち味を活かして、生地の上で調和を果たす。
口の中で野菜達が美味の讃美歌を高らかに謳う1枚だ。
2024/01/05 更新
2023/12 訪問
2023年ビアンカベースTOP3
日本におけるコンテンポラーネアの第一人者の1人であるペッペ氏による「Pizzeria da Peppe Napoli Sta' Ca"」。
持ち上げると重みを感じるが、食べれば軽くて心地の良い食後感は、まるで魔法の様だ。
大きく膨らみ、もちもちとしたコルニチョーネを口いっぱいにして噛み締めれば、多幸感が身体の底から湧き上がってくる。
この生地の美味さは、都内でもトップクラスだ。
生地だけではなく、乗せる具材にもペッペ氏のセンスが光る。
「ラリッチャ」の具材は、モッツァレラ・スカローラ・からすみパウダー・松の実・ピンクペッパー。
スカローラとはナポリの野菜であり、生だと苦みは強烈だが、火を通せば和らぎ、苦味の奥から甘味も感じられる。
ニンニクオイルと唐辛子で膨らんだ青味は癖になる味わいであり、カラスミパウダーの化粧によって、マイルドでありながらパンチのある深くてまろやかな旨味が舌を包み込む。
ほんのりと甘い松の実も食感にリズムを生んでいて楽しく、初めの一口から食べ終える未来を想って思わず、虚しさがこみあげてくる。
2023年で食べたビアンカベースの中でもTOP3に入る至極の1枚であった。
2023/12/25 更新
2023/10 訪問
新たな伝統。
伝統を重んじるナポリピッツァも、時代と共に変化している。
「コンテンポラーネア」と呼ばれる新しい流れは、風葉の様に膨らんだコルニチョーネと軽やかな生地が特徴的だ。
「Napoli Sta' Ca"」のペッペ氏は、その新潮流を日本でいち早く紹介した1人である。
長時間発酵させた生地は、ふわっもちっと歯の上を元気よく弾み、顎が喜ぶ。
粒だった打粉は舌を掴み、噛むほどにしぶとい小麦の旨味を滲ます。
それでいて、生地量250g以上あるとは思えない軽さがあり、食べ応えは充分だが、体への負担も少ない。
焼成温度も、伝統的なナポリピッツァよりも低く、焼成時間も長め。そうすることで、ソースの余計な水分が飛び、生地に密着して一体となる。旨味も凝縮してコク深い。
一方で、ミニトマトは溌剌としていて、潰れるたびに痛快な酸味を弾き出す。
糸を引く逞しい水牛の濃密な乳は、トマトと共鳴し、濃密と爽やかさが共存した旨味が口を巡り、頬が緩む。
「コンテンポラーネア」が、ナポリピッツァの新たな伝統として根付くのも、そう遠くはない。
2023/11/13 更新
モチモチ好きに勧めたいピッツェリアが此処。
ぷっくらとした耳が特徴の"コンテンポラーネア"スタイルのピッツァは、生地の逞しい食感に歯が喜び、太い旨味に舌が躍る。
"サルシッチャフリアリエッリ"は、フェンネル香る肉とほろ苦い青菜の相性がベストカップルな1枚。