2回
2017/08 訪問
ジャンルを超えた料理の波
2017年8月の夜です。
晴海通りから旧ソニービルとエルメスの間の通りに入ってまもなくのところにある雑居ビルの6Fにこのお店はあります。
今年2月に開店して間もなく予約が取れない人気店となった「盡」。お店が元々あった神戸では名店と名高かったということです。
幸いなことに1ヶ月前の電話で席を予約することができ、胸を高鳴らせながらその晩銀座に足を踏み出しました。が、道に迷い1本東側の道を行ったり来たりし挙げ句の果てにはお店に電話して場所を尋ねる始末。危うく遅刻するところでした。
本当に銀座ではありふれているであろうビルの一室の戸を開けるとそこは別世界。これからの素晴らしいひと時を想像させるようなシックな作りで迎えてくれます。
6席しかないカウンター席の中にいる店主の佐藤さんの物静かでありますが、凛とした佇まいが心地よい緊張感をもたらしてくれます。
そしてそこからスタートした料理は圧巻の一言。
その日の仕入れで料理が決まるため同じ料理は出ないというコースです。
魚のアラから取ったスープでまずは胃を温めてウォーミングアップ。
そこから珠玉の料理の数々です。
この日の魚は淡路産で統一されていたみたい。
淡路産ヨコワは米粉をまとって揚物に。
同じく淡路の太刀魚は焼き物になっていますがしっとりとした味わい。
鮨屋でも和食でもパリッとした焼物の太刀魚お馴染みでしたがこの味わいは初体験、そして今までにない美味しさ。
雲丹は小椀は合わせたソースが絶妙。
鮑と肝の取り合わせも定番なのに異次元の美味しさ。
バター、パンは自家製です。
クリーミーで絶妙な塩分のバターをたっぷり挟んだパンの美味しさはたまりません。カリっ、モッチリしたパンとバター。あまりパンが好きな方ではないのですが、これだけで何個も食べられちゃう。
そしてやはり淡路の鰯を用いたブイヤベースは脂がのった鰯とのマリアージュに舌鼓。
口直しのトマトのカッペリーニを挟んで阿蘇の赤牛の炭焼き
最後はスープで炊いたご飯と脂がのった喉黒でした。1杯目は喉黒と、2杯目は雲丹をたっぷりのせていただきました。
素材は和食、でも用いられている手法は和食に限定されない、様々な料理から得たインスピレーションがお皿に落とし込まれています。
まさに食べていて楽しくなり、次に何が出てくるんだろう?そんなワクワクするような気持ちにさせてくれる2時間半でした。
1回の訪問でこのお店の真価を推し量るのは困難です。次に訪れた時にはまた別の料理で楽しませてくれるのは間違い無いでしょうし、さらに進化して新しい顔を見せてくれるでしょう。
普段は2か月先の予約なんて予定がわからないから取らないのですが思わず次回の予約を取っちゃいました。来年1月です。
それでも訪れる価値があるお店だと思いました。
ごちそうさまでした。
2017/09/16 更新
2018年1月の夜です。
仕事を終えて足早に数寄屋橋の交差点を渡ります。
何せ今日は4ヶ月ぶりの盡の予約日。4ヶ月先の予約なんて取ったことがなかったのに昨年8月の初訪問で思わず先の予約を取ってしまいました。
エルメスの脇の通りにある雑居ビルのエレベーターに飛び乗ると魅惑の佐藤ワールドが待ち構えていました。
先日と同じく穏やかな物腰の佐藤シェフの繰り出す一皿一皿を堪能させてもらいました。
◇竹岡の黒ムツでとった出汁
ほのかな魚の味を感じる出汁でお腹のウォーミングアップ完了
◇風連湖のワカサギのフリット 米粉をまとわせて米油で揚げたもの
米粉と米油を使ってあげた後にバルサミコ酢で味付け。さらに柑橘系(酢橘だったか?)を霧吹きでさっとかけてあります。米粉、米油とともに軽くフルーティーな味わい。
◇噴火湾の桜海老と白子の茶碗蒸し
白子茶碗蒸しの上に桜海老がふんだんに載ります。シェフのおすすめに従って匙で全体を良くかき混ぜてからいただきます。
◇淡路島の黄鯵のワインビネガー〆 上には海苔をかけて
根付きの鯵の脂のノリが〆たことでいい塩梅にとろけます。普通の酢ではなくワインビネガーを使うところにシェフのワイン愛を感じます。
◇串本のクエをシャンパンで蒸して
シャンパンで蒸したクエの下にはホタテでとった出汁が隠れています。ホタテの旨味とシャンパンの風味がクエに注がれて美味しい!
◇淡路島の太刀魚のブイヤベース
皮目もパリッと焼かれた太刀魚。こちらは兵庫の時からご縁がある淡路の方から仕入れたそう。
ことこと煮込まれたブイヤベースの複雑に織り込まれた旨味が脂ののった太刀魚と合体してなんとも言えない美味しさですね。
◇長崎のノドグロ ブルゴーニュで蒸した後に焼いています
普通のお店であれば脂のノリを強調する具材ですが、ここでは強すぎる脂を落とすため一旦蒸してから焼いています。しかもブルゴーニュで蒸したところがまたすごい。
確かに脂は適度に落ちてノドグロ本来の美味しさが滲み出てくる一皿。皮のパリッとした食感も際立つ。
◇蝦夷鹿の肉 焼いた後に牛のコンソメをかけて
職人集団エレゾから仕入れた蝦夷鹿の肉。思ったよりクセがなくあっさり。
それを補うようなコンソメが絶品。このコンソメでスープが飲みたい。
◇厚岸の雲丹リゾット
この日の〆はなんとリゾット。まさかリゾットが出てくるとは。雲丹と海苔のハーモニーに思わず2回お代わりしちゃいました。
◇花びら餅
佐藤シェフから交代した職人さんが作る最後のお菓子は1月らしく花びら餅です。
中の味噌餡と外の皮のもちっとした食感がたまりません。
1月という季節を感じました。
最後はお茶でおしまいです。
今日も佐藤シェフの手元から繰り出される料理の数々に魅了されました。
そして我々の遠慮のない質問にもサラリと、時には冗談も交えながら答えてくれるシェフ。
和とも洋とも言えないイノベーティブな料理とシェフのファンにますますなっちゃいました。
今年の予約はすでにいっぱい、来年の予約は12月ということで予約開始日を覚えているか心配ではありますがまた来たいと思います。
ごちそうさまでした。