30回
2021/05 訪問
皐月の味覚
2021年5月の夜です.
夕方の新橋に降り立って虎ノ門の方面に足を伸ばします. オフィス街から駅へと向かう人とすれ違う通りの両脇には灯が消えているお店もちらほら. この緊急事態宣言で営業を取りやめるお店もあれば、閉店の張り紙があるお店もあり業界の置かれた状況の厳しさが伺えます.
さて味享さんはと言えばこの日も満席. 席間には透明ビニルが垂らしてあって対策は万全です. 客は京味からの常連と思しき方が2組で、ご主人の気合いも一段と入っていたことでしょう.
この日も5月に相応しい料理の数々でした. この日の一通りは以下の通りです.
◇ちまきと空豆、笹ガレイ
端午の節句にちなんだ笹の中身はグジの寿司. 笹の爽やかな香りが清涼感を演出
◇雲丹茄子
京都の久世茄子にちょっと味噌を含ませてその上に雲丹をたっぷり. 茄子単体ではまだ味が弱いからと仰ってましたがこれは反則級の美味しさでした.
◇潤菜に鳥貝
三田産のトロトロ潤菜に鳥貝. 旬の組み合わせは文句なく美味しい.
◇蓮根饅頭
これも手間が掛かっている一品. 蓮根を粘りが出るまですりおろして繋ぎなしで饅頭に. 口にした時の繊維の感じが蓮根の感じを残してます. 餡もまた美味しい.
◇芋茎に毛蟹
芋茎を使う料理は毎回必ず出ますがこの日は白ダツです. それに北海道噴火湾の毛蟹の味をほぐして土佐酢ジュレで和えたもの. シャキシャキ感がいつものことながら良い.
◇天ぷら(コシアブラ、小柱、タラの芽)
そろそろ山菜も終わりと言っていましたが、秋田からいい物が送られてきたそう. コシアブラは苦味が程よく良かった.
◇お造り(真子鰈とカツオ)
この日は明石の真子鰈と千葉勝浦の鰹. 肉厚に切った真子鰈独特の味がたまりませんね. タタキにした鰹も脂のノリは弱いけど初夏の味.
◇お椀(鼈の木の芽仕立て)
鼈は手掴みにしてかぶりついて食べます. 意外と骨が少ない. 後半は脂が溶け出してちょっと味変.
◇焼物(琵琶湖の稚鮎 こごみと酢味噌)
この季節おなじみになった稚鮎. 頭からかぶりついて内臓の苦味まで味わうのがなかなか好き. 付け合わせもこの季節だからか山菜でした.
◇炊き合わせ(ゼンマイの信田巻き、蕗にばちこ)
味享さんで1番落ち着くメニューが炊き合わせ. この日は信田巻きに小芋と蕗. 蕗の中にはばちこが通してありましたがこれは京味風だとか. 出汁の塩梅もそうですが味のバランスがほっこりしていて好きです.
◇土鍋ご飯
艶があるご飯. 牛しぐれ煮と漬物でどんどんお腹におさまって、おかわりまでしてしまった. これから鉄火丼があるのに.
◇鉄火丼
土鍋ご飯の上に海苔、中落ち、中トロ部分と魅力たっぷり. もちろん大盛りにしてもらいました.
◇蕨餅
やはり炊き合わせなんかは高級食材を全面に押し出す他の和食店とは一線を画しているように思えて、そこが魅力的です.
次回は盛夏の味を堪能しにきます.
ごちそうさまでした.
2021/05/23 更新
2021/03 訪問
優しく舌に染み渡る味
2021年3月の夜です.
3ヶ月ぶりの味享さんです. 気がつけば3ヶ月空いてしまったという方が正しそう. この3月をどう調理されるのか楽しみです.
新橋の雑踏をかき分けてお店に入ると、2回目の緊急事態宣言を受けてカウンター席の間にビニールの幕が垂れています.
何か無粋ですみませんね、とご主人が頭を下げておられましたがお店もお客も安心して食事を提供し、食べるのが一番ですからやむを得ず.
さてこの日の一通りは以下の通りです.
◇若竹汁
3月とはいえまだ寒い夜はこの温かい汁物からスタート. まだ走りの筍ですがシャキシャキして味があります.
◇三点盛り(菜の花 ちらし寿司 ホタルイカ)
この日は雛祭りが近いのでちらし寿司も入ります. シャリはちらし寿司用にちょっと甘味を出して上品. 菜の花は少し辛めの味付け.
◇帆立とクエの土手鍋
グツグツと煮える鍋の中は帆立とクエ. クエは博多の弟さんから送ってきたそうです. 博多の市場でその日1番だったとか. 味噌のいい香りを鼻いっぱいに吸い込みながら味わう鍋は最高. 味噌のコクと合わさると帆立の甘さ、クエの旨味が引き立ちますね. こりゃたまらん.
◇筍豆腐
京味では3月になると出していたという料理です. 見た目は豆腐、口に入れると筍そのもの.
◇芋茎の葛餡仕立て
これも京味を受け継いだもの. ほぼ必ず出る一品ですがほっこりする味です. シャキシャキした歯応えと生姜で体温まります.
◇白魚と蕗の薹の天ぷら
ほのかに甘い白魚とほろ苦い蕗の薹に春の到来を感じます. 交互に食べるのが最高. サクサクっとした食感がいいです.
◇お造り(明石の鯛 伊勢海老昆布〆)
程よくコリコリした鯛を噛みしめて旨味を堪能した後にプリッとした伊勢海老の美味しさを堪能です.
◇お椀(野付の帆立真薯)
帆立の旨味と昆布、鰹節のアミノ酸の組み合わせは文句なし. 帆立の真薯を噛み締めると甘さが染み出します.
◇焼きスッポン
タレで漬け焼きにしたスッポン. 香りも良くムフフとかぶりついて骨までしゃぶっちゃいます.
◇わらびと湯葉の炊き合わせ
味享さんで1番好きなのはこの炊き合わせ. この日は少々甘めに炊いたわらびの味わいがタンパクな湯葉を引き立てます. 柚子の皮の香りとほろ苦さもマッチ. そしてのこ柚子の皮の手当てが凄い. 皮を卸金で落として裏の毛を残らず抜いて水につけてアク抜きしたとか. 仕事に手抜かりはないですね.
◇土鍋ご飯
アツアツご飯を牛肉の時雨煮で頂きます. この時雨煮は持って帰りたい.
◇鉄火丼
定番となった鉄火丼. 赤身、中トロ、中落ちと3つ美味しく頬が落ちそう.
◇わらび餅
裏からペッタンペッタンと練る音が聞こえてきます. きなこで頂きます.
この日は食材がいくつか被っていてさすがに味享さんでも献立に苦労するのかなと思ってしまいましたが、京味の流れを踏襲しようとする真摯な姿勢に変わりありません.
お酒を飲むとちょっと割高感があるかなというのが最近の感想ですが.
でもまだまだ伸びそうですね. また来ます.
ごちそうさまでした.
わらびと湯葉、柚子の皮の炊き合わせ
若竹汁
三点盛り
帆立とクエの土手鍋
筍豆腐
芋茎の葛餡仕立て
白魚と蕗の薹の天ぷら
お造り
帆立真薯のお椀
スッポン
ご飯のお供 牛時雨煮
ツヤツヤご飯
鉄火丼 色合いがたまりません
わらび餅
2021/04/02 更新
2020/12 訪問
優しく舌に胃に染み渡る
2020年12月の夜です.
今年の師走の和食第一弾で新橋に来ました. 9月に松茸に舌鼓を打って以来ですので3ヶ月ぶりです.
この日は火の前でビールを飲みながらご主人との会話が楽しめる特等席でした.
いつものように雑味を感じない洗練さと家庭のような何となく優しく懐かしさを兼ね備えた料理の数々を堪能した2時間半でした.
この日いただいたのコースは以下の通りです.
◇津居山の松葉蟹の身とみぞれ餡
寒くなるといつも体が温まる料理からスタートする味享さん. 松葉蟹の身の濃縮されたおいしさが際立ちます.
◇穴子の飯蒸し 柳鰈の一夜干し 隠元黒ゴマ和え クワイチップス
飯蒸しに穴子のトッピングは程よく穴子の塩気が出ています. 柳鰈は炙って旨味を引き出し、隠元は出汁の味は控えめですね. 散らされたクワイチップスはサクッとした食感と塩気でお酒が進みます.
◇津居山の香箱蟹
1杯に1.5杯分の身が詰まっています. 濃厚なコクを軽い酸味の土佐酢で楽しみます. 内子、外子に下に敷いた脚の身までこの季節の楽しみを堪能しました.
◇芽芋の茎 豆腐と胡麻餡
蟹の後は穏やかな味の一品. シャキシャキの芽芋の茎と優しい餡で舌をリフレッシュ.
◇鮟肝豆腐に生姜餡
鮟肝と白身魚の真薯です. 聞けばいつも京味では西氏と一緒にこの鮟肝の真薯を炊いていたとか. パサつかず柔らかすぎずの見事な食感で鮟肝のコクが引き立っています.
◇北寄貝と芹の葛粉揚げ
葛粉揚げは噛めば噛むほど甘い北寄貝と旬の芹
◇縞鯵と虎河豚
縞鰺は見事な脂です. まだまだ旬なんですね. 虎河豚の身は歯応えが魅力的でした.
◇真鱈白子のお椀
舟形昆布にのった雲子と京菊菜、なめこのお椀です. 透き通る出汁は昆布から出るエキスで徐々に味が変わっていきます. 出汁を最後まで飲み干すとほっこりとした気分です.
◇鰆の西京味噌漬け
焼き物は鰆です. 旬の鰆が味噌漬けになって旨味が増幅されています. 日本の技ですね. 付け合わせは菜の花のお浸し.
◇京蕪と原木椎茸、車海老の餡掛け
京蕪の炊き物です. そこに原木椎茸と車海老の餡をかけてあります. やはりご飯の前の炊き物はいつも優しい味でほっこりしますがこの日も実に見事.
◇鉄鍋御飯 牛時雨煮
お待ちかねのご飯のお供は今回久しぶりに牛時雨煮でした. 絶妙の甘辛さに粒が立ったご飯がどんどん胃に入ります. この後鉄火丼があることを忘れそう.
◇鉄火丼 大間の鮪
大間の鮪の鉄火丼は血合、赤身、中落ちの三段構え.
◇わらび餅
松葉蟹は香箱のみでしたがお話を聞くとどうやら不漁とGOTOで消費が増えて高値になっているとか. できれば適切な値段で提供したいというお考えでこの日は香箱蟹のみとなったとか.
確かに季節ものとはいえ法外な値段になっても困りますね.
次回年明けには蟹があるでしょうか. また来ます.
ごちそうさまでした.
2020/12/29 更新
2020/09 訪問
京味の薫陶を受けて忠実に
2020年9月の夜です.
新橋の味享さんに定期訪問です. 駅前のSL広場を通り
飲み屋街を抜けていきます. 東京都の飲食店営業時間
の制限が解けていない時期でしたが、ちょっとずつ
人出は戻っている様子.
お店はいつもよりちょっと席数が少なくゆったりと
していました. 弟さんが抜けた後は一人新人ホヤホヤ
の人が入って穴埋めされていました.
いつものように京味時代の西さんのお話を所々伺い
ながらの2時間半となりました. ご主人が京味時代に
忠実を心がけながらも自分の味を模索しているのが
いつもなんとなく伝わってきます.
この日頂いたものは以下の通りです.
◇カマス鮨 炊いたインゲンと冬子椎茸 柳鰈
八寸ですね. インゲン、椎茸等どれも主張しすぎない
味です.
◇芋茎吉野煮
京味系譜のこのお店の定番. 食べるとホッとします.
程よく生姜が効いていて肌寒かったこの日、体が暖ま
りました.
◇鱧のおとし 皮目炙り 淡路由良
皮目を炙った鱧です.
◇つぶ貝と莫大貝 土佐酢ジュレ
莫大海なんて初めての食材. こんなに美味しくなるのに
下処理がとても大変. そんな食材も使いこなしてます.
◇甘鯛湯葉巻き揚げ
この甘鯛は福岡の弟さんからおくられたとか. 上品な
甘鯛ですが湯葉をまとって油を吸ってコクが出ました.
◇鯛と赤雲丹 明石と藍島
雲丹は福岡の弟さんから送られたとか. 兄弟の繋がりの
強さを感じます. 濃厚な赤雲丹でした.
◇鱧松茸お椀
鱧と松茸の旨味、出汁と松茸の香りの相乗効果が素晴ら
しい.
◇鮎 常願寺川
鮎は富山の急流常願寺川の天然物. この季節でだいぶ
大きくなっているので骨を外して頂きましたが薫りと
風味豊かな鮎. 急流で鍛えられたのかな?
◇鰊と茄子の炊き合わせ
毎回この炊き合わせにほっこりさせられます. 鰊は
ホクホク、茄子はほのかに油をまとって美味しい.
◇松茸ご飯
土鍋ご飯の表面を埋め尽くす松茸は壮観. 立ち上る薫
りがたまりません. 松茸は中国産.
◇鉄火丼
〆は定番となった鉄火丼. 蕩ける脂とつやがある白ご飯.
たまらない組み合わせ.
◇わらび餅
莫大海も京味時代の食材なんですね. 楽しそうにお話
されながら食材を見せてくれたのが印象的です.
次回は蟹の季節. また来ます.
ごちそうさまでした.
2020/10/12 更新
2020/06 訪問
丁寧な仕事ぶりが光る
2020年6月の夜です.
この日は新橋の味享さんに来ました.
もともと7人入って一杯のお店ですが、キャンセルが出たところを埋めていないので席間はかなり余裕があります. 弟さんが福岡で自分のお店を持たれ独立されたので、スタッフの顔ぶれに少し変わりがありましたが、穏やかなご主人の人柄は変わりありません。
自主休業中はお客さんのリクエストに合わせて好みや予算に応じてお弁当を作っていたそうです。それを知った常連さんから「今年はおせちもできるね」と声をかけられてあたふたしていたのが印象的. おせち作ったらさぞ美味しいでしょうが作業量がお弁当とは桁違いでしょうね.
◇穴子と胡瓜の炊いたん
茗荷寿司
三陸鮑
先付で3種の料理. 茗荷寿司はシャリと茗荷の間に白身魚が挟んであります. どれも一手間かかっています.
◇根芋 吉野煮
定番の根芋ですが葛と生姜でさっぱりと. いつ食べてもほっこりとした味で気持ちが落ち着く一品.
◇鳥貝 肝つけ焼き
舞鶴産の鳥貝を肝のつけ焼きに. 鳥貝の甘味に肝の深みが合わさって日本酒が進みます.
◇新蓮根饅頭 雲丹
繋ぎを使わず蓮根だけの饅頭は蓮根の繊維質がシャキシャキしています. 穏やかな味の餡が上品.
◇噴火湾産毛蟹 三田の潤菜
ほぐした毛蟹に上品な酸味のジュレと潤菜. その上にさらに毛蟹の身.
◇玉蜀黍揚げ 揚げ空豆
旬の玉蜀黍は火が通ると甘くてたまりません.
◇コチ
明石産のコチのお造り. プリッとした弾力があります.
◇お椀 鼈玉子豆腐
椀種は玉子豆腐に鼈の身を混ぜ込んだもの. 固めの豆腐に香ばしい鼈が所々に出て来て飽きさせません.
◇琵琶湖の稚鮎揚げ ジャコと万願寺唐辛子を炊いたもの
稚鮎も美味しいのですが一緒に出てきたジャコを炊いたものが美味しくてたまりません. こういう一見地味な料理が美味しいのが味享さんの特徴.
◇石川芋 蕨のしのだ巻き サヤインゲン
炊き合わせも派手さはないですがとても美味しい. これからご飯というところの締めくくり.
◇ご飯
鉄鍋で炊いたご飯です. 艶があって美味しい上にご飯のお供が牛肉しぐれ煮だったので思わずおかわり.
◇鉄火丼
いつものようにご飯の後にはお腹に余裕があれば鉄火丼. 当然これもいただきます.
◇蕨餅
つるんとした蕨餅をきなこにつけて.
3ヶ月ぶりですが京味の系譜を継ぐ仕事ぶりは変わりません. 少しずつ自分の色も出してきているようです. 弟さんが独立されましたが、東京と福岡でお互い切磋琢磨して成長されていくのでしょう.
また来ます. ごちそうさまでした.
2020/07/13 更新
2019/12 訪問
京味の系譜を受け継ぐ
2019年12月の夜です。
新橋駅で降りて駅前の喧騒を抜けて虎ノ門方面を目指します。今年の春から始まった季節ごとの「味享」さん通いもこの日で季節一周となりました。
カウンターで常連さんとご主人との京味時代の昔話を聞きながら、それを受け継いで徐々に自分の色をつけていこうとする料理を味わうのが楽しみになりました。
この日頂いたのは以下の通りです。
◇湯葉の白味噌碗 鯛中骨出汁 辛子
寒い季節に体が温まる先付. 鯛の中骨からとったという出汁と白味噌の優しい味に癒されました. 辛子のピリッとした味もいいアクセント.
◇いくらの飯蒸し
半熟の状態に火を通したといういくら. 生とは違った独特の味わい.
◇松葉蟹 香箱蟹 津居山
松葉蟹の脚も香箱蟹の内子外子もさすがの味. そのままで食べても蟹酢につけてもお酒が進みます.
◇根芋 吉野煮
出汁のキリッとした味が根芋に染み込み後味まで優しい. 生姜の味と葛のとろみが体を芯まで温めてくれます. シャキッとした食感も活きていて何気にいつも楽しみにしている料理でもあります.
◇北寄貝と芹の葛粉揚げ
長万部産の北寄貝は肉厚で甘くワタの美味しさも素晴らしい. 添えられた芹の香りが食欲をそそります.
◇お造り(鰹 墨烏賊)
この時期にはいいものが入ってきた時だけ送ってくるという気仙沼の鰹. 当然脂がのって素晴らしい. 血合いも取り除いてあるのでクセもなく鰹の味を純粋に楽しめます. 墨烏賊の歯ごたえもなかなか.
◇お椀 甘鯛 菊花
お椀の中に昆布で器を作り甘鯛と菊花をその中へ. 徐々に昆布の味が出汁に染み出して味が変わっていきます. 甘鯛もふっくらしていていい塩梅.
◇鰤の柚子幽庵焼き
鰤は氷見産. 今年の鰤はどこで食べても美味しいですが、焼きは今シーズン初めて. 脂に火が通り香ばしい香りが口に広がります.
◇炊き合わせ 京かぶら 春菊
くり抜いたかぶらの中に車海老と椎茸の吉野煮を詰めています. ギリギリまで柔らかいかぶらとプリッとした車海老と椎茸の食感が素晴らしい. かぶらの甘さも繊細でいくらでも食べたい.
◇ご飯 鯛茶漬け 大間鮪漬け丼
南部鉄器で炊いたコシヒカリ. この日はめかぶはなく代わりに鯛茶漬けと牛時雨煮. どちらも味がはっきりと強調していますがそれを輪郭がはっきりしたご飯の味いが受け止めて美味しい. 鮪漬け丼は言うまでもない味わいです.
◇わらび餅
王道の美味しさ. 黒糖の甘さもちょうど良く〆にもってこい.
1年間各季節の味を堪能し、やっぱりこれからも通いたいお店ということを再確認。まだまだ進化を遂げそうな予感もあり楽しみです。
ごちそうさまでした。
2019/12/29 更新
2019/10 訪問
着実に京味の心を継ぐ店
2019年10月の夜です。
夜の新橋駅前の喧騒をくぐり抜けて虎ノ門方面へ急ぎます。今夜は季節1回は訪れたいと思っている味享さんで秋の味覚を楽しみに来ました。
修行先の京味の西氏が亡くなられて最初の訪問でしたが、京味時代からの常連さんと思い出話に花が咲くのを横で聞きながら松茸を始めとする秋の食材を楽しみました。
京味の料理を受け継ぐと同時にご自分の味を表現しようと少しずつですが工夫を凝らしているようです。まだもう一歩というものもありますが今後の進歩が楽しみです。
この日頂いたものは以下の通りです。
◇お浸し 芋茎 春菊 松茸
◇八寸
・稚鮎甘露煮
・新銀杏
・カマス鮨
・丸十天婦羅
・牡丹海老 北海道
◇ぐじ栗蒸し
◇柿の素揚げとあん肝白和え
◇松茸フライ 信州
◇茄子そうめん 雲丹
◇お造り
・アコウ鯛
・サゴシ
◇鮑お椀 卵豆腐 針ゆず 菊の花
◇鱧八幡巻 だだちゃ豆
◇炊き合わせ
・湯葉がんも
・合鴨つみれ
・冬瓜
・えんどう
◇ご飯
◇鮪漬け丼 イクラ
◇わらびもち
この日は芋茎がお浸しになって出てきましたが薄く削られた出汁加減が春菊や松茸といった旬の食材の味と香りをさっと引き立てて最初から期待を裏切らないスタートでした。
最後の鮪漬け丼はいつもの漬けだけでなく薄味に仕上げたイクラを裏ごししたものをアクセントに使い味に変化をつけて嬉しい締めの一品でした。
開店してまだ1年未満ながらしっかりとした道を歩まれているようです。
こちらも季節ごとに来たいお店になりました。
ごちそうさまでした。
2019/11/09 更新
2019/07 訪問
また美味しくなりました
2019年7月の夜の新橋です。
4ヶ月ぶりの味享に来ました。前回の食事からかなり待ち遠しかったこの日、体調も万全にして新橋駅からお店への足取りも軽くなります。
もうすっかり人気店となり予約を取るのもかなり困難になりつつあると聞いていますが、それは京味出身というネームバリューだけではなくご主人の実力もあってのことでしょう。
◇蓴菜の酢の物
兵庫県三田産の天然蓴菜にポン酢ジュレをかけた一品。マイクロトマトと梅酢漬けした岩梨も入っています。肉厚の蓴菜の歯ごたえはもちろんの事、爽やかで夏のコースの最初ににふさわしい一品。
◇八寸:白烏賊糸造りの昆布巻き 朝瓜胡麻和え 干笹鰈 玉蜀黍天ぷら 鱧寿司 冬茹椎茸
どれもお酒のつまみに最適でお酒が進んでしまうものばかり。こじんまりとしていますが端正な盛り付けもまたきれいです。
◇芋茎の吉野煮
京味ではこの味がない芋茎にどう味付けするかに工夫を凝らすとご主人がおっしゃっていましたが、何とも言えない優しい味わいに仕上がっています。お見事でした。
◇茄子田楽
北海道浜中産の雲丹を載せています。何とも甘い雲丹が柔らかな茄子とぴったり。
◇トコブシの唐揚とミニオクラの天ぷら
貝らしい甘さがあって火を通しても柔らかくて美味しいですね。
鮑とはまた違った美味しさです。
◇鱧(天草)の落としと焼き霜
途中で骨切りしていた鱧が出てきました。落としと焼き霜の2通りで食べさせてくれるのが嬉しい。山葵醤油で食べても梅肉で食べても美味しいですね。
◇椀物
椀種には長良川産の鮎を焼いて下には枝豆豆腐と新蓮根。どれも爽やかでじめっとしたこの季節には嬉しい味わい。吸い地もさっぱりとしていました。
◇鱸の焼き物
ふっくら焼いた鱸は蓼酢をつけていただきました。鮎以外にも合うんですね。これはびっくり。添えられたのは茗荷の甘酢づけとおかひじきの辛子和えです。
◇焚き合わせ
石川芋、粟麩、マダコの卵、車海老の焚き合わせ。彩もよく美味しい。さりげない食材使いなのにしっかり美味しいところに実力を感じます。
◇土鍋ご飯 魚沼産こしひかり
・ご飯のお供:梅紫蘇山芋・胡瓜浅漬け・鰻の山椒煮
・魯山人のご飯
・鮪丼
美味しい土鍋ご飯ですが3通りの食べ方で楽しめます。中でも刻み昆布と出汁を合わせたものを掛ける魯山人ご飯がたまりません。昆布と出汁の香りが立つのと出汁の効いたとろみが良いんです。もちろん鮪丼も欠かせません。
◇わらび餅
締めはきな粉をまぶしたわらび餅
2回目ですが初回以上の満足度。料理だけではなくご主人や弟さんの客対応も素晴らしく、何とかまた来たいと思った夜でした。
ごちそうさまでした。
〆の鮪丼
蓴菜ポン酢ジュレ
八寸
芋茎の吉野煮
茄子田楽と雲丹
トコブシ唐揚げとミニオクラの天ぷら
天草産鱧の落としと焼き霜
長良川産鮎と枝豆豆腐のお椀
鱸の焼き物
石川芋と車海老焚き合わせ
土鍋ご飯(魚沼産コシヒカリ)
土鍋ご飯
わらび餅
柵の鮪
2019/08/12 更新
2019/03 訪問
慈愛に満ちた味わい
2019年3月の夜です。
夜の新橋に来ました。正確に言うと内幸町です。
あまりご縁がない町でしたがどうしても訪れたいお店があり、運良く1ヶ月前に予約が取れたので訪問してきました。
同じく新橋にある和食の名店京味。そこから独立した料理人の方々は星野、笹田など名店揃いですが敷居が高くなかなか訪問する機会がありません。今回新しく独立されたということで電話すると1か月後の予約がなんとか取れました。
星野が移転した場所を居抜きで使っているお店は細長く狭いのですが、この日はコンロの目の前の席に座ることができました。ある意味特等席ですね。
頂いた料理は以下の通りです。
◇粕汁
◇氷魚・蛍烏賊・春子鯛の押し鮨
◇天然河豚の白子
◇車海老・茄子・鼈
◇筍とぐじの天ぷら
◇河豚刺し
◇椀物 あいなめと白木耳
◇モロコ 車海老の頭 河豚唐揚げ
◇湯葉と蕨
◇白魚の酢の物
◇ご飯 鰻の山椒煮 香の物
◇鮪漬け丼
◇わらび餅
寒い日と暖かい日が交互に来ていた来店日の週。
最初の一品を暖かいものにしようか迷っていたということですがこの日は夜になると肌寒く、岐阜の飛切りの酒粕を使った粕汁はほんのり甘く体が芯から温まります。
そんな心使いから始まった料理の数々は温かみに溢れていました。
京味では煮方だったというご主人の料理は強い主張はないですが、その個性を各料理に見事に織り込んでいます。
河豚の白子のような高級食材だけではなく湯葉や蕨といった脇役級の食材もうまくメインに仕立て上げる技は京味仕込みなのでしょう。特に蕨と湯葉を出汁で煮て合わせた一品は派手さは皆無ですが調和が見事に取れていました。この日一番の料理だったと言っても過言ではありません。
ご主人は若干33歳とか。弟さんとその奥さんとで切り盛りされているお店は狭くとも前途洋洋ですね。この日来た方はほとんど2回先の予約まで取られていましたが、そうもしないと予約できなくなりそうです。
ごちそうさまでした。
2019/04/05 更新
2021年7月の夜です.
2ヶ月ぶりの味享さんです. 7月になり鱧もそろそろ美味しくなる季節. 鮎も鰻も出るだろうかと楽しみにして来ました.
カウンター席を天井から下げたビニルカーテンで仕切った席の1番端に座りました. 火の前でご主人の仕事が見える特等席です.
入店時は一品目の賀茂茄子素麺の調理の真っ最中. そろそろ味享といえばこれ、という料理が欲しいと日々工夫を凝らされているようです.
この日の一通りは以下の通りです.
◇賀茂茄子そうめんとじゅん菜
片栗粉をまぶした細切りの賀茂茄子を茹でて冷水で〆ることでトロトロの食感に. じゅん菜と賀茂茄子のトロトロ食感の組み合わせですね.
◇前菜
柳鰈の一夜干し
鯛押し寿司に茗荷甘酢漬け
群馬産茶豆
◇鱧しゃぶ
淡路島の鱧を出汁でしゃぶしゃぶに. 美味しくなってきた鱧が出汁を纏ってうんまい.
◇白だつ 吉野煮
シャキシャキした食感ですが、これも出汁を吸い込んでいい味になってます.
◇雲丹と百合根のゼリー寄せ
甘く炊いた百合根の上に余市の紫雲丹をのせて鯛の出汁ゼリーで合わせてます. この百合根が絶品でした.
◇鮑と玉蜀黍の葛粉揚げ
鮑はコリコリの食感でいつまでも噛んでいたい. 玉蜀黍は山梨のゴールドラッシュで蒸してから一旦冷凍する手間をかけてます. 甘さ抜群でした.
◇明石の鯛
塩〆にした鯛の身はむちっとした弾力があって鯛本来の美味しさにあふれてます.
◇海鰻と湯葉、玉葱のお椀
広島の海鰻の美味しさが直球で伝わってきます. 尾瀬の水を使っている出汁は徐々に鰻の脂を吸ってコクが出てきました.
◇鮎塩焼き
新潟府屋大川の鮎. ふっくらした身と肝の苦みが美味しかった.
◇炊き合わせ
車海老
石川小芋
いんげん
煮蛸
蕨の信田巻
優しい出汁を含んだ小芋、信田巻はいつも通りほっこりする味.
◇ご飯
つやつやのご飯は香の物と牛時雨煮で. 甘い時雨煮でご飯が進みます.
◇鉄火丼
〆は鉄火丼. 漬けにした鮪と中落ちが美味.
◇わらび餅
目の前でぺったんぺったんとこねた餅はきなこを付けなくてもそれだけで美味しい. でもきなこも美味しい.
夏の味覚を堪能した夜でした. 開店してまだ3年足らず. ご主人の努力もありこれから益々発展しそうです.
次は秋の味覚です.
ごちそうさまでした.