3回
2024/11 訪問
蟹、蟹、サーモン、蟹
蟹の季節です。しばらくご無沙汰していた白燕で、今年は上海蟹をお願いしてみました。11月初旬の土曜日夜、他にお客様は一組。奥のお席へ通していただきました。
スペシャリテの「リンゴアメ」から宴は幕を開けます。続いて、上海蟹の紹興酒漬け。濃厚な蟹の甘みを余すところなく味わえます。
前菜、スペシャリテはよだれ鶏、チャーシューとサーモンの腐乳合え。チャーシューは、シェフが滞在していたカナダ出会ったメープルシロップで仕上げているそうです。優しい甘みでちょっと無国籍風なチャーシュー。
この日のスープは、呼吸器によいという和梨や胡桃の組み合わせ。胡桃の風味が際立ちます。薬膳では蟹は体が冷えるといいますので、スープがちょうどよいかもしれません。
続いて、上海蟹の豆腐蒸し。豆腐からお店で仕込まれたそうで、構造としてはがんもどきのような形。豆腐生地の中に、上海蟹や刻んだ野菜が入っています。上海蟹の味噌もたっぷり。蟹でとったスープを餡にしてあります。ものすごく優しいお料理。豆腐自体も豆のお味が大変濃いものでした。
ここで、サーモンのお料理がでました。ふんわり揚げ、揚げ出し豆腐のような衣。あれ?予約時のお品書きでは蟹のオーブン焼き書いていたような。お味はよかったですが、サーモンがかなり脂の載ったもの。この手のお料理にしては少ししつこく、ボリュームも多かったので途中で少ーし飽きてしまい残念。
メインは、蒸し上海蟹。こんもりと、かなりのボリュームです。コクのある蟹味噌を十分に味わえました。実は前日はひょんなことでタラバガニだったのですが、蟹の種類が違うと蟹続きでも飽きないものだと感心してしまいます。
〆は蟹のスープ味ラーメン風(正式名称失念)です。これは癖になるお味。海老ラーメンよりパンチは控えめですが、上品な旨味で美味。フルサイズの丼で頂いてみたいです。
杏仁豆腐は、以前より手が込んだもので、シャインマスカットの上にエスプーマ化した杏仁豆腐をのせ、金木犀の花を散らしたもの。工夫はすごく感じますが、普通の杏仁豆腐でもよかったかな。ともあれ、おいしい杏仁豆腐です。
こちらの上海蟹コースは初めてでしたが、色々な形で味わえてよかったです。反面、ちょっと途中で方向性違うお料理もあり、いつもより期待外れな部分も。
しかしながら、今回はお祝い用途だったのですが、とても素敵なメッセージプレートをお出しくださって感激。後半はワンオペだったにも関わらず、素晴らしいサービスでした。
次回は、新登場の北京ダックコースをお願いしてみようかなと思案中です。
2024/11/22 更新
2023/07 訪問
愛すべき稲荷町の名店
まだ私たちが稲荷町に住んでいた頃に、近所に開店したこちらのお店。目立たないビルの2階でしたが、何故か気になるお店で、コロナ禍でテイクアウトをされていた際に初めて利用しました。
黒い炒飯とラム肉の煮込みは深い旨味を湛えており悶絶するほどのおいしさで、お替りまで買いに行ったほどです。
以降、何かしら特別なポジションのお店として心の中にいつもある中華料理店。色々な中華料理店を訪れても、こちらのお店は依然として「戻って来る場所」のようです。
毎回、コースのアミューズにはフォアグラが仕込まれたりんご飴、また前菜のよだれ鶏とそのタレでいただく点心が組み込まれています。定番となったこれらのお料理は何度いただいても笑顔になれる、満たされるお味です。
そのときどきのメインコースや〆料理には、シェフの新しいお料理が毎度展開されます。異なる地方料理の技法や味付けは新鮮であり、旅の気分も味わえます。
これからもきっと進化するお店、楽しみです。
2024/01/04 更新
前回の訪問から早くも約一年。今回のコースは、前回一押しと仰っていた北京ダックコースにしてみました。数量限定だそうで、一か月ほど前に予約しました。
当日は土曜日でしたが、先客が一組のみ。現在予約営業のみだそうです。奥の端のテーブルにご案内いただきました。
コースはいつも通り、滑らかなフォアグラがいっぱいに詰まったりんご飴から始まります。
前菜は定番のよだれ鶏に加えて、くらげの冷菜。かぼちゃ豆腐には家鴨の卵の塩漬けが練り込まれています。こちらのよだれ鶏は、辛さより旨さがしっかりしたタイプ。このタレをつけて、次の水餃子をいただきます。
もちもち感が満点の皮は、癖になる味わい。
この日の薬膳スープは、梨、棗、肉団子。しっとりと体を潤す素材で、来たる北京ダックへコンディションを整えます。
さて、ここからが本番です。まずは家鴨半身分の北京ダックが大皿にドンと運ばれてきます。さあクレープ、と思いきや、最初に目の前に現れたのは北京ダックにキャビア。下には白いキラキラしたグラニュー糖。頬張ると、グラニュー糖の甘みが脂の甘さと相俟って独特のハーモニーです。キャビアのアクセントが憎い演出。
続いて、熱々のクレープと、付け合わせには梨、きゅうり、ネギ、アボカド。タレにもラ・フランスが使われており、フルーティさがうれしい。噛み締めると、サクサクの皮の食感に脂の甘みがジュワり。アボカドは意外な組み合わせですが、脂x脂の組み合わせがこれほどに合うとは。クレープを包む手が止まりません。
思う存分いただいた気分になっているところへ、さらなる家鴨のお皿。香港ダックと仰っていたと思いますが、家鴨をローストする際に溢れる旨味を使った濃厚なスープをソースにしたお料理。重厚な味わいに思わず唸ります。クレープでは食感と脂を味わい、こちらでは旨味にフォーカスする。そんな流れです。
更にもう一皿、またも北京ダックですが、今度はバターの風味も絡めた濃厚な照りのソースで。万願寺唐辛子や蓮根で食感や爽やかな青みを加え、肉の濃密さとバランスを取っています。たたみかける旨味の頂点です。
最後に、白湯麺。白湯は当然ながら家鴨で取っているそうです。岩海苔の軽やかな磯の風味が新鮮。スープは深くコクがありつつ、先ほどまでの炸裂する脂や旨味を少し宥めるような滑らかで穏やかな味わい。ほっとするひとときです。これだけを単品でも頂いてみたくなる絶品麺でした。
北京ダックの全容を、表から裏から巡ることができるコースでした。今までいただいた北京ダックって何だったのだろう、という衝撃レベル。
お伺いしたところによると、北京ダックはもともと北京の乾燥地帯のお料理なので、日本の湿潤気候はちょっと不利。そのため、乾燥した天気の続く秋の時期がベストシーズンなのだそう。ならば、来年からも11月は北京ダック固定でお願いしようかな。
いつも通りの素晴らしいサービスとお気遣いもありがたく、心もお腹もいっぱいになるディナー。感謝でいっぱいです。