A270さんが投稿した飄香 広尾店(東京/広尾)の口コミ詳細

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飄香 広尾店広尾、恵比寿/四川料理

1

  • 夜の点数:3.9

    • ¥40,000~¥49,999 / 1人
      • 料理・味 3.9
      • |サービス 3.8
      • |雰囲気 3.6
      • |CP 3.5
      • |酒・ドリンク 4.0
1回目

2025/05 訪問

  • 夜の点数:3.9

    • [ 料理・味3.9
    • | サービス3.8
    • | 雰囲気3.6
    • | CP3.5
    • | 酒・ドリンク4.0
    ¥40,000~¥49,999
    / 1人

ひと皿ごとに物語が宿る——飄香広尾、記念日の静かな一夜

広尾の隠れ家中華「飄香」。四川料理をベースに、素材と技法に遊び心を添えた全12皿は、ひと皿ごとに詩のような余韻を残します。

ーー

記念日ディナーでお伺いしました。お店は、ビルの中なのにひっそりとした佇まい。当日はお店の外でお店の方にお出迎えいただき、スムーズに入店できました。

キッチンを囲んで、テーブル席が5つくらいの店内です。流行りの劇場型カウンターではないですが、キッチンが見渡せてシェフの距離も近い。程よく落としたライティングとエクレクティックな音楽が、期待感を盛り上げます。

手元のメニューカードも、想像を掻き立てるような単語ばかり。「想念」のようなコンセプトから、「李白」のような固有名詞までありますが、一切食材名はありません。解説はQRでも見ることができますが、敢えて想像に任せるのも楽しい。

●雪華
アスパラガスのムースで烏骨鶏の塩漬けアイスクリームを包み、キャビアあしらったもの。紫蘇に似た中華のハーブオイルで風味付け。アスパラガスのムースはフレンチのようなのだけど、玉子の濃厚な風味にキャビアが拮抗し、アスパラガスが両者繋ぎます。ハーブの爽やかさが、中華らしさをプラスし、平凡に終わらない一品。

●五辛
花ニラなど春の野菜と塩漬け燻製肉、筍を、クレープ風の生地で包んでいただきます。椒麻ソースはミニマムの量で、ザクザクした野菜と筍の食感と香りが勢いよく口中に広がります。野生をそのままに口に含んだような。雪華からのコントラストが非常にドラマチック。

●漩渦
渦の正体は、栄螺。まんまる緑のパイは、栄螺と根セロリ、蕗の薹など、春をそのまま包みこんで。同じ春野菜のお皿でも、こちらは柔らかくふっくらとした味わい。

●根源
名前の由来は、2500年前から伝わる調理法、鹵水(るーすい)から。鶏や豚の出汁に各種香辛料を入れて長時間煮込む調理法だそう。日本の地鶏と烏骨鶏のの血を引く大分冠水鶏は、滑らかで柔らかいのに力強い味わい。皮の旨味がじんわり染みる鶏です。洗練を感じさせつつ、伝統的な味わいに心が和みます。

●李白
酒、月、山を詠んだとされる李白にちなんだ、活渡り蟹。高麗人参、茅台酒、紹興酒に漬け込んだ酔っ払い蟹。茅台をショットで合わせていただくと、これ以上ないハーモニー。ねっとりした蟹の味わいを追いかけて、茅台を舐めるように味わうと、脳に響く旨さ。永遠にループしたい組み合わせです。

●養生
ここで箸休めのような一品、スープがサーブされます。蝦夷鹿の滋味をそのままに、身体を温めるお味です。

●茘枝
浜名湖のすっぽんを使った、四川定番の味付けの一品。すっぽんの様々な部位をぎゅっと凝縮し、味わいも食感もとても充実した一品。

●貴妃
貴妃とは、かの楊貴妃。実は四川省出身なのだとか。そのイメージを湛えたお料理。先ほどまで生きていたというオマール海老と、十時間煮詰めるというビスク風のソース。それに甘やかな自家製の乳酸発酵玉ねぎが寄り添います。敢えてフレンチビスクまで華やかにしない海老の滋味を生かした味わいに、付け合わせの糯米の旨味がしっとりと馴染みます。

●経典
名前から無限に想像が広がり、楽しみにしていたお皿。シストロン産のラムをフレンチのように火入れして、伝統的四川の干煸ソースでいただきます。そのままでもおいしいラム、最初はソースよりラムの主張を感じていましたが、いつの間にかソースの虜に。あしらわれたドクダミの葉フライもおいしくて、もっと掛けてもらってもうれしいかもしれません。

●翡翠
こちらは定番蚕豆、フェンネルの組み合わせの和え麺。大ぶりの北寄貝が贅沢なトッピング。青山椒と蚕豆のペーストなのか、ジェノベーゼのように全身で青みを感じるソース。ただただ美味しい。美しい色合いも相まって、春をそのままいただいているような麺料理。

●想念
コース終盤、デザートは、よもぎのアイスクリームに汁粉のような餡。桜の葉チップスをあしらったもの。四川にも草餅はあるのだそう。きっとそこから伝来したのですね。草餅そのものと思わせるアイスクリーム、桜の葉のほどよい塩気が味を引き締めつつ、桜の甘い香りがふわっと鼻に抜けます。シンプルに見えて、シンプルではない、でも郷愁を感じるおいしさ。

●芙蓉
最後のお茶菓子は、苺大福。蓮の実とムース状の餡がとろりと溢れるリッチな苺大福です。崩れそうな柔らかな生地に詰まった爽やかなのに濃厚な味わい。大紅袍のお茶と一緒にじっくり味わいます。

ペアリングのお飲み物は、シャンパーニュから始まって、中盤は日本酒、紹興酒、ワインと、それぞれお料理をそっと後ろから支えるような美しい競演でした。ソムリエの方の、お料理への深い愛情を感じるような合わせ方に思えます。愛情といえば、器の美しさも特筆に値します。ただ上質な器というだけでなく、一つ一つが、お料理を際立たせるために生まれた舞台のよう。


全12品、くっきりとしたストーリーを感じる構成です。四川料理なのだけれど、食材の声をものすごく丁寧に聴いているお料理。だからこそ調理法がフレンチのようになったり。そのときどきのベストな形になっていくのでしょう。何千年もの歴史と、そこから生まれる新しい歴史にゆったり身を任せているような。そんなドラマチックな物語の展開を感じるひとときです。
また、ぜひ再訪したいお店が増えました。

2025/05/18 更新

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