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2025/08 訪問
自然への「誠実」が紡ぎ出す、置賜の芳醇な味わい ー Stanza della Sincerità
2025/08/18 更新
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数年前に泉質に感動してから、赤湯はお気に入りの温泉地の一つ。そんな赤湯でもひときわエクスクルーシブなお宿が、こちらOsteria Sincerità。敷地内に一歩足を踏み入れると、芝生の小径がお出迎え。小さいながらも、周囲の街並みを忘れてしまうようなアウトドア空間が広がります。
ディナーは、そんな特別感をさらに高めてくれます。ライブ感たっぷりのカウンター席に座ると、まず出迎えてくれるのは当地置賜地方の地図。素晴らしい食材を生み出すのは、この特殊な地形のおかげだそう。
お料理は、アミューズ三品から始まります。トマトのファルシは、季節野菜のカポナータで凝縮された野菜の旨味を閉じ込めて。続いては、鮎の蕎麦粉ガレット包み。シンプルな焼き魚を敢えてそのまま生かし、野性味抜群。何料理なのかということも忘れるような、ただシンプルにおいしい一皿。
続く前菜は、喉黒。こちらも地元の昆布風味の「だし」をベースに。
ここで、名産品である舟形マッシュルームが登場します。深くてシンプルなマッシュルームのコンソメのあと、パン粉とハーブを効かせたシンプルな香草グリルがサーブされます。バターやニンニク風味を強くせず、敢えてマッシュルームそのものの純粋な旨味を活かします。
パスタは、馬肉の冷製ソース。タルタル風の馬肉ですが、スパイスは効かせすぎずに濃厚な肉の味わいそのものがじっくり染み出します。
魚料理には、鯉。まずは、鯉のブロードと皮の唐揚げ。強い味付けにせず、敢えて鯉の旨味だけをじっくり抽出してあり、鯉の真髄を味わえます。そのあとに登場するフィレのコトレッタは、ふっくらカリカリ。万人受けする一皿になっているのですが、ブロードがあったからこそコトレッタにも鯉らしさをじんわり感じられる、そんなストーリーになっています。
お肉は、米沢牛二通り。最初は、定番のロースト。しかしなんといっても美しいのは、二皿目のボッリート風。
こちらは正肉に加えてトリッパやシマチョウも加わりますが、その澄んだ味わいは実はサラダの一部。頂くにつれて、体が軽くなるようです。
そこにそっと寄り添う菜飯は、ごま油の風味。コース終盤にもかかわらず、さらに食欲が湧いてくるような力強い味わい。
ドルチェは、シンプルにキャラメルジェラート、チョコレート、桃の三重奏。ディナーを締めくくるお茶菓子もまったく手抜かりなく、山形県産のヘーゼルナッツを使ったチョコレートサラミなど、ここでしか味わえない繊細な逸品揃いです。
ペアリングはワインを中心に、途中日本酒も加わって味に一層の広がりと深みを与えてくれます。置賜地方のワインとイタリアワインを料理に合わせてうまく配置し、それぞれの料理を生かす構成になっていました。
置賜の自然の恵みが、シェフの手にかかると魔法のように壮大なストーリーとなって紡ぎ出されていきます。こんな美しいテロワールが日本にあることに、感謝の気持ちが溢れるようです。コースには高級食材も使われていますが、どれが高級食材であるかさえ忘れるくらいに全体が統合され、異次元のおいしさを生み出しています。
次は季節を変えて、まだ知らない置賜の味わいに出会いたい。そう心に誓いました。