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2025/12 訪問
寒空にも南仏の軽やかな風を ー スパイスに心温まるフレンチ Le Jardin de Kamo 水天宮前
2025/12/15 更新
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今年夏頃からずっとお伺いしたかったお店です。
南仏料理とのことで、暖かい時期がいいかなあと漠然と思っていましたが、冬でもとても魅力的なお料理でした。メニューは数か月毎に変わるそうです。
今年の冬メニュー、アミューズは小豆島産の生ハムとカスレ風白インゲン豆のコロッケ。たっぷりと掛かった生ハムがすっかりコロッケを覆い隠しています。生ハムはソフトでありながら、スペインのベジョータを思わせる旨味の爆弾級。アツアツのコロッケとのハーモニーも抜群です。
前菜一皿目は、キウイと牡蠣のセビーチェ風。一番下には春菊の軽いゼリーが仕込まれています。オイルも使われており、本場のセビーチェより柔らかな味わい。穏やかな冬を思わせます。
続く前菜もお魚で、寒鰤のミキュイ。何やら香ばしい香りが少し前から漂っていましたが、こちらの鰤を藁焼きにされていたそう。ですので、どちらかというとタタキの分類です。ブルーベリーと黒らっきょうのソルベ、山葵と、和のフレーバーを効かせた一皿。
ここでパンがサーブされます。カンパーニュは天然酵母でモチモチとした弾力と小麦の香りが芳しく、つい手が伸びます。
前菜最後は、イカ墨のリゾット。リゾットといってもスペルト小麦のため、粒の独立感と歯応えが際立つヘルシーな味わい。それを只者でない味わいに変化しているのは、ガラムマサラを軽く纏った白子。さらに赤ピーマン風味のアイオリがソフトな刺激感を添えます。一見スペイン料理風でありながら、スパイスと繊細さで一線を画しています。
お魚料理。甘鯛の鱗焼きは一見シンプルなヴィエルジュソース。ですが、複数の旬の柑橘が混ざり合い、軽やかさの中に複雑な風味をもたらします。そこに、ふっくらと完璧な火入れのお魚に、パリパリとした鱗の食感が見事に絡みます。リゾットが足し算ならこちらは引き算的なお料理とも言えそうです。
メインは美笑牛のロースト、香味野菜とトリュフのクルート。こちらは、一口いただいて言葉を失う美味しさ。旨味と脂のバランスがよく、程よい歯応えでお肉らしい満足感。クルートが旨味を包み込み、ポルト酒のソースがそれをさらに後押し。改めて牛の旨さに目覚めるような一皿です。
デセール。現れたのは黄色染まった果実。一見黄桃のようですが、聞けば洋梨のサフラン風味とのこと。カルダモンのミルクアイスクリームが添えられ、一気に中東風味を感じます。洋梨はカフェのガトーとも好相性。シェフによると、モロッコを意識した一皿だとか。なるほど納得です。
お茶菓子には、焼きたてホカホカのマドレーヌ。リンデンの蜂蜜が使われており、濃厚なのに後味爽やか。あお腹いっぱいでもスルリと胃に収まります。
素晴らしいディナーでした。個人的には、特に後半からデセールが印象深いです。どっしり古典的フレンチの土台の上に、南仏らしい軽やかさ、南欧の空気感を纏ったお料理の数々。カジュアル過ぎずフォーマル過ぎず、穏やかなサービスと空間。のんびりとワイングラスを傾けて時を過ごせば、まさに南仏そのものかもしれません。
季節折々のお料理をいただいてみたい、そんな気にさせられるお店です。