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昼の点数:4.2
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¥4,000~¥4,999 / 1人
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料理・味 -
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美味しさを超越する感動体験 違う時間軸に連なる異空間の蕎麦屋
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2025/04/21 更新
古都、奈良に位置する、関西を代表する蕎麦の名店、玄。理想の十割蕎麦を求めて、東京より遥々、奈良へ。
ここよりも感動する食事が、人生であと何度できるだろうか。もう、できないかもしれないのではないか。料理を堪能しながら、同時に、その場に流れる時間と空間に思いを馳せ、身体感覚全てで味わう圧倒的な食事体験。
古い日本式邸宅を改装した店舗。入店した時から、魂をわしづかみされたかのように、店の世界観に没入してしまう雰囲気と建物様式。蕎麦を食べにきた、ということにとどまらない。玄という店の演出する舞台に、自分が登場しにきたかのような思いさえしてくる。店の調度品や装飾がまた、小道具のように時代めいていて、現実感を一層失わせていく。
生業とする建築や都市デザインの仕事において、一番難しいことは、感覚やセンスを数値化、指標化することだ。それらは容易に言語化できないことで、なおのこと、数値化は難しい。ここを機械的に行うと、作り物めいた不自然な成果物ができることになる。それが街の風景にまで影響が及ぶと、誰も幸せにならない。
食べログのレビューも同じことが言える。美味しいとか、幸せとか、快適ということは、あくまで感覚の話なのに、最後は点数がつけられる。客観的に比較されるべき数値が、主観で感覚的につけられる。だから、往々にして、ユーザーが違和感を持つことになる。
中でも、玄で体験する全てのことは、極めて特別で、感覚的なことだ。あえて、言語化まではしてみても、数値化して指標に落とし込むことは、無理にしない方がいいように思える。25年4月時点で、東京一の蕎麦屋である渋谷の玉笑が4.12。そして、玄が3.90。参考まで、立地と空間の特別さで比類なき、うどんの名店、おめん銀閣寺本店が3.57。この数値はただの記号であり、なんら、私たちの感動を比較できる指標たり得ない、というのが私の考えだ。どの店も、唯一無二の、孤高の存在であり、そこに優劣などない。食べログの点数は、大都会の商圏にひしめく飲食店を効率的に並び変えるための数値であって、玄に当てはめることに、意味を感じない。
便宜上、玉笑と同じ点数を付けておく。しかし、食べログ全体の評価結果が3.5でも4.5でも、私は気にしない。なぜなら、評価結果はあくまで我々が暮らすこの時空間の中のひとつの事象に過ぎず、玄が存在する別な時空間、悠久の時間が流れ、玄がたゆたっているあの異世界には、その事象が入り込む余地はないだろうから。つまり、関係ない、ということだ。
2名で来店し、私が食したのは、梅たたきの水蕎麦、蕎麦がき、蕎麦豆腐うにのせ、蕎麦団子、キリンビール小ビン。蕎麦をそのまま、次に塩や水、そして梅とともに口にする。繊細で洗練された蕎麦の香り、余韻に残る豊かな風味を感じる。蕎麦を口へ運ぶたびに、その真価を逃すまいと、五感が研ぎ澄まされていく。「蕎麦を食べる」という行為が何を行い、何を感じることなのか、この店で生まれて初めて知った気がする。
蕎麦に対する意識が変わる時間であった。食後に、隣の敷地にある春鹿の酒蔵を視察し、日本酒を飲み比べるところまでを含めて、忘れられない体験ができる、かけがえのない旅となった。
玄に行ってみるといい。晴れ渡る空が広がる、のどかな風景の中、路地の奥に突如現れる蕎麦屋の門をくぐった時から、あなたはいつの間にか、異世界に足を踏み入れていることになるはずだ。