2回
2024/10 訪問
焼鳥が芸術の域まで昇華‼︎ 10品で構成する世界観が見事すぎて言葉を失ったひとときでした‼︎
さるお方からご紹介を受けて大変興味を持ち、その場で即予約、待つこと3ヶ月でようやくこの日が来ました。完全紹介制なので今回から次の予約ができるようになるのです。場所は三軒茶屋駅から徒歩3分程度、少し路地に入った場所で、店名は出ていますが扉は鍵がかかっているのでインターホンで呼び出します。
2階にあるカウンター11席の小さなお店の中は、古民家風で全体的に控えめな照明の中、テーブルとキッチンには温かみのある光が溢れていて期待度が上がります。メニューはワインペアリング付きお任せコース 14000円、今宵のテーマは「note(香り)」、前半は日本、後半は世界の香りを巡る仕立てです。
【食文化NOTE】
・だし-3種の神器-
・3種の神器と鶏卵の茶碗蒸し
自家ワイン醸造所のロゼワインと合わせる前菜は枕崎本枯節、利尻昆布、ドンコの出汁とアオサと鶏もも肉の茶碗蒸しです。
【里海NOTE】
・笹身と里海の磯辺
・砂肝、イワナガマス、ホタテ、雪桜ジュレのパルフェ
ワインはスペインのアルバリーニョ、僅かな塩味とミネラル香が海の幸にピッタリです。磯辺は実山椒、シラス、自家製カラスミをササミで挟み、海苔の磯の香り、カラスミの濃厚な旨み、ジューシーなササミが渾然一体、食べたことのない組み合わせですがこれを合わせるシェフの感性に脱帽です。パルフェはイワナガマス、バルサミコで漬けた砂肝とホタテをロゼワイン「雪桜」と出汁のジュレを合わせた冷製、微かな薫香も感じる複雑な風味は一期一会となる絶品でした。
【畑NOTE】
・セセリ
・神奈月の在来農場/3種の固定種~フェンネル、ディル、レモングラス~
・四季の果実の備長炭焼き
ワインは長野のソービニオンブラン、グリーンアロマで野菜に合うのです。セセリはマイルドなトマトソースと合わせ、ケール、ルッコラ、からしなのお浸しと里芋のチップスが添えられ、彩も鮮やかな一皿です。同じ皿にシャインマスカットの炭火焼きも添えてあり、弾けてほと走る果汁はセセリの塩焼きの贅沢なソースとして楽しめます。
【里山NOTE】
・今宵の地鶏/かしわ~秋香るジュ・ド・ヴオライ~
・栗の渋皮煮/キノコの備長炭焼き
ワインはフランス産ロゼ、脂分が多い鶏を酸味で抑えてさっぱりとさせてくれます。秋田の地鶏を丸ごと使ったジュ・ド・ヴォライユをスープ仕立てのソースとする感性、スープに仕込まれた山椒の爽やかな刺激が旨みを倍増させます。きのこの炭火焼きの下には栗の渋皮煮、キノコのエキスが栗に染み込み秋感全開です。
【オリエンタルNOTE】
・今宵の地鶏/抱き身~ヒヨリ・マカニソース~
・神奈月のアチャール
ここから世界の香りに旅立ちます。ワインはアロマティック発酵のカリフォルニアのシャルドネ、胸肉を皮で巻いた抱き身はバター風味のガラムマサラとクミンのインドのマカニソースでいただき、加賀蓮根のアチャールが箸休め的な良い仕事をしています。
【地中海NOTE】
・秋の手羽飯~イカスミソース〜
ワインはアルザスのナチュールのオレンジワイン、手羽飯とありますがイタリアとスペインをイメージした変形パエリアで、きのこご飯を手羽先に詰めて炭火焼きした手の込んだ一品です。北海道リンカトマトとイカ墨のソースとフルーティなオリーブオイルをかけてパルミジャーノでコクマシ、贅沢すぎる一皿でした。
【アフリカンNOTE】
・ちょうちん~ヒヨリ・デュカ〜
・ハツ焼き~マフェソース・エチオピアフムス〜
ニュージーランドのピノノワールと合わせるのは、エジプトのスパイスのデュカを塗して焼いた食道とフムス添えのキンカンを口内ミックスして食感とコクと香ばしさを、マフェソースと合わせるハツでエスニックな爽やかさを、ベビーリーフは「ブラックオリーブの土(調味料)」をつけて大地の香りを楽しむ壮大な世界観の一皿です。
【カリビアンNOTE】
ジャークメンチカツサンド~ヒヨリ・モレ~
カリブ海をイメージした庄内鴨のジャークメンチカツサンドにはカルフォルニアのジンファンデルです。チョコレートを使ったモレソース、生胡椒の爽やかな刺激、ビネガーマスタードのやわらかい苦みと酸味が素晴らしいハーモニーでした。
【民族NOTE】
•酸辣湯拉麵
食事は長野県高山村のシャルドネと共に酸辣湯ラーメンでした。マレーシアのラクサにインスパイヤされたココナッツミルクを使ったエスニックなラーメンで、鶏白湯に黒酢を合わせたスープが濃厚‼︎器もカップヌードルを模したカップで洒落ています。
【エッグNOTE】
・白レバーとカタラーナの最中
・エッグノート/トンカ豆プディング
ハンガリーのデザートワインと共に楽しむのは、ドライイチジクを練り込んだ白レバーとカタラーナの最中、レバーなのに生臭さは一切なし、かかっているフルーティなマンゴーのコンフィチュールがデザートワインとマッチします。エッグノートは珈琲豆、トンカ豆のプディングで、ワインとのマリアージュは今までにない組み合わせに驚愕でした。
食後は陳皮、とうもろこしなど25種のフレーバーのお茶で身体も心もリセット、狩野シェフの世界観に惹き込まれた至福の2時間半の魔法が解けた瞬間でした。和やかなご挨拶と共に店を後にしましたが、きっとまたすぐ伺うことになると思います。
2024/10/28 更新
前回は秋に伺ったこちら、季節を変えて梅雨時の再訪です。テーマは「NOTE」と前回から変わりませんが、素材は季節により変わるので、今回はどんな驚きに出会えるか、とても楽しみです。ひっそりと「会員制焼鳥」と書かれた表札、インターホンを押して出迎えてもらいます。
予約したのは全員ペアリングコースで、私は 〜鶏が旅する【NOTE/香調】の世界〜(ミックスペアリング) 15000円、日本酒とワインをそれぞれ料理に合わせてのペアリングです。お品書きは以下となります。
【食文化NOTE】JAPAN ROOTS NOTE
だし-3種の神を旬のフルーツトマト
【里海NOTE】JAPAN SEA NOTE
笹身-里海の磯込
セセリ/白いダイヤとつぶ貝餡
【畑NOTE】JAPAN FARM NOTE
ハラミーはさみケールー
~紫蘇と松の実のソース~
水無月の在来農場/3種の在来種
四季の果実の備長炭焼き
【里山NOTE】JAPAN MOUNTAIN NOTE
・今宵の地鶏/かしわ
~山薫るジュ・ド・ヴオライユ~
里山の宝石
【オリエンタルNOTE】ORIENTAL NOTE
今宵の地鶏/抱き身
・旬楽のアチャール
~マカニソース〜
【地中海NOTE】MEDITERRANEAN NOTE
手羽飯
バルミジャーノ
〜とうもろこしポタージュ~
【アフリカンNOTE】AFRICAN NOTE
デュカちょうちん
ムッサーア
~マフェソース~
【カリビアンNOTE】CARIBBEAN NOTE
ジャークチキンバーガー
~和のモレデミグラス~
【民族NOTE】ETHNIC NOTE
ラクサ拉麺
【エッグNOTE】EGG NOTE
旅の終わりのエッグパフェ
まずスターターに合わせるワインとして自家農園のロゼが出ました。濃い赤みのあるトロンとした風合い、ロゼにしては濃厚な味わいのワインで、これから始まる旅の始まりとして上々です。
そして最初は日本の伝統の出汁の世界です。利尻昆布、ドンコ、枕崎の鰹節の3種の出汁のたまご豆腐、そしてフルーツトマトと砂肝を黒酢とねり胡麻で和えたもの、和だけど和でもない独特の世界観の一皿です。
次は海、まずは手巻きスタイルでカラスミと海老を山形のシャモのササミで挟んだ焼き物、文字からは味を想像できないのですが、一口食べれば磯の香、塩味、谷中生姜の爽やかさ、素材の旨みが渾然一体となった海の世界に招かれるのです。もう一つはぶどうの枝木で燻製されたセセリ串のつぶ貝の銀餡かけ、セセリ串がほのかな薫香とつぶ貝とアオサ海苔の旨みたっぷりの餡で包まれ、合わせた白ワインともピッタリです。
次のテーマは畑、ハラミをケールと松の実のジェノバソースでいただくのです。新鮮な野菜は小松菜のお浸し、ズッキーニの南蛮、インゲンの生姜漬け、沖縄のパイナップルを焼いたものが添えられ、大地の恵みを味わうのです。
そして里山の世界は、濃厚な鶏白湯ベースの平茸と山椒のスープに浸したもも焼き、皮目がパリッとしていながら脂の滴るジューシーなもも肉が平茸の風味と相まって旨み炸裂です。付け合わせのインゲンの塩焼きが口の中をさっぱりとさせてくれて、次の世界へ準備が整うのでした。
ここから世界の旅に出ます。最初はオリエンタル、どちらかというと中近東系のイメージです。胸肉を首の皮で巻いた「抱き身」串をマカニソースをつけていただくのです。ガラムマサラ、クミン、キャラウェイをすり潰してまぶして食べれば、エキゾチックな世界にひとっ飛び、コリンキーと玉ねぎのアチャールが良い箸休めになります。そしてこれに合わせたお酒は、なんとどぶろく⁈予想外のお酒がエスニックによく合うのにはびっくりでした。
次は地中海に足を伸ばします。手羽飯は手羽先の中にとうもろこしご飯を詰めて備長炭で焼き上げたもの、手羽先餃子の中身がとうもろこしご飯になった、というイメージです。濃厚なとうもろこしソースが敷かれ、手羽先にはパルミジャーノがかかり、スペインのオリーブオイルをかけるのです。この組み合わせとプレゼンにはしてやられました‼︎
旅はアフリカへ続きます。さえずり串をチョウチンとピーナツベースのマフェソースで口内MIX、コクのあるソースと香ばしく焼かれたさえずりのコリコリ感が合体して最高の一品、そして鴨のつくねは茄子とトマトのソースと共にしっかりした肉感を楽しみます。
次は一気にカリブへ‼︎もも肉の挽肉のジャークバーガーにはきんぴらが刻み込み込まれていて複雑な食感と香りが素晴らしい‼︎
〆はラクサ、ココナッツと赤紫蘇のスープはクリーミーで刺激が心地よい‼︎そしてデザートとなり、白レバームース、カタラーナ、ピスタチオのプリンで、チャツネが白レバームースの匂いを消していてまるでジェラートのよう⁈目眩く3時間の旅でした。
この日も満席、時間差でお客さんがいらっしゃり、だからかキッチンの中もシェフやスタッフの動きの流れに変化があり、見ている私たちもまるで舞台の観客のようです。この一体感、そしてコースに誘われる世界の旅、シェフの世界観にまた出会えることを願いつつ店を後にしました。