2回
2025/10 訪問
至高のスープ、麺、具材の饗宴
「塩そば(手もみ麺)」1,400円
浅草橋駅から程近く、ラーメン界に名を轟かせる「くろ喜」に念願の初訪問。和モダンに洗練された店内には、数多くのラーメンどんぶりや製麺機がガラスケースにインテリアとして飾られている。オープンキッチンは高級和食料理店のような設えで、数万円のコースが出てくるような雰囲気すら感じる。
ひときわ目立つモヒカン頭の店主が黒木さん。和食やイタリアンを経てラーメンでミシュランを獲得した有名料理人だ。常連客と和やかに談笑しながら、料理人としての厳しい眼差しを垣間見せ、スタッフへの指示も的確で鋭い。なるほど、隅々までピリッと神経が行き届いたこの空気から最高のラーメンが生み出されるのだ。
調理する過程も見ていて楽しい。具材が丁寧に仕込みされており、流れるような所作で一杯の芸術品が仕上げられていく。チャーシューを載せる前に、軽くスープをくぐらせるなど全てが計算し尽くされている。
店主自ら提供してくれた「塩そば」は、とにかく美しい。白磁の器に琥珀色のスープと具材がバランス良く配され、一幅の絵画のようでもある。食べる前から“総合優勝間違いなし”だ。
スープは“おいしい”としか恥ずかしながら表現のしようがない。ダシのうまみ、まろやかな塩味、ふくよかな鶏油、全てが渾然一体となっていて究極のバランスを保っている。そこには至高のエキスだけを抽出した黄金比の結晶のようだ。
さらに特筆すべきは麺。オススメの“手もみ麺”を選択したが、柔らかくプルプルで啜るのが快感になってくる。まるで“赤ちゃんの柔肌”のような極上麺。こんな麺は今まで食べたことがない。
デフォルトで3種トッピングされるチャーシューも、しっとりして肉のうまみが凝縮された完成度。ドライトマトの上にあるタマネギと生の胡椒を溶かせば、和食が一気にイタリアンの風貌になり、一杯で二度楽しめる趣向だ。
“饗(もてなし)”とは、ごちそう、もてなすなどの意味を持つ漢字だが、まさに黒木さんの「最高のラーメンでもてなしたい」という熱い想いに溢れた日本ラーメン界屈指の名店である。今後も時が許せば是非通いたいと意を強くしました。本当においしいラーメンを、ご馳走さまでした。
2025/10/13 更新
「松茸と鴨の塩つけそば+鴨ロース増し2枚」3,200円+250円
限定メニュー目当てだったが、さすがに3,200円という価格はためらった。清水の舞台から飛び降りるつもりで、私史上最高価格のラーメンを注文。結論として、全くこの値段に遜色ない素晴らしい一杯であった。
まず驚いたのが松茸の多さ。ざく切りの松茸が浮かんでいるが、ほぼ一本分はあるのではないだろうか。ベースとなる塩つけ汁は、ダシのうまみが凝縮された素晴らしい味。そこに松茸の風味が加わることによって、土瓶蒸しがさらにバージョンアップしたような絶品スープとなっている。
綺麗に折りたたまれた低加水の細麺は、蕎麦のような舌触りで和風のつけ汁に相性抜群。すだちを搾ると爽やかな酸味が加わり、さらに料亭の逸品のようなクオリティーに昇華する。
驚くべきは鴨チャーシューの火入れ。絶妙なレア具合で、しっとりとしながら、柔らかさと歯ごたえのバランスが完璧。2枚増しで250円とは破格の安さである。
極上の食材たちの饗宴に思わず脳がバグってくる。松茸、麺、鴨、春菊、メンマ、つみれ、スダチ。どれをどのように組み合わせて、どんな順番で頂くのか、ワクワクが止まらない。どれも最高の“仕事”がされており、単品でもおいしいものを、自らの好きなように合わせながら頂く贅沢に、思わず笑みがこぼれてくる。
締めは麺を浸した利尻昆布水をつけ汁に注いで、スープ割りとして頂く。塩つけ汁と昆布、松茸にスダチが奏でるハーモニーが五臓六腑に沁み入ってくる。はぁ〜おいしい。
くろ喜主人の食材への目利きと、その可能性を最大限引き出す技術に感服の逸杯。毎回驚きと感動をありがとう。ご馳走さまでした。